JP5624371B2 - 熱転写受像シート用樹脂 - Google Patents
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Description
特許文献2には、染料の染着性、転写シートとの離型性を改善し、優れた転写画像性能を得ることを目的として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分を用いて得られるポリエステルを含有する樹脂と、オキサゾリン基を有する化合物とを含有する熱転写受像シート用染料受容層組成物が開示されている。
特許文献3には、染着感度、画像の耐久性、保存安定性の改善を目的として、主鎖が不飽和結合を有するポリエステル、側鎖がラジカル重合性不飽和単量体の重合体であって、tan δのピーク温度が40℃以上且つガラス転移温度が15℃以上で且つ分子量が還元粘度で0.15〜1.5であるグラフト生成物を主成分とするポリエステル系樹脂および該ポリエステル系樹脂を含有する染着性樹脂を主体とする染着層を有する昇華転写受像体が開示されている。
本発明は、離型性、特に高温高湿度での離型性及び染着性に優れた熱転写受像シートを提供しうる熱転写受像シート用樹脂、及び当該樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シートを提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、下記[1]及び[2]を提供する。
[1]ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成される架橋グラフトポリマーを含有する熱転写受像シート用樹脂であって、セグメント(A2)が、芳香族基を有する付加重合性モノマーを由来とする構成単位を70重量%以上含有し、該架橋グラフトポリマーのメチルエチルケトン不溶分が50〜85重量%である、熱転写受像シート用樹脂。
[2]上記[1]の熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート。
本発明の熱転写受像シート用樹脂は、ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)(以下、単に「セグメント(A1)」ともいう)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)(以下、単に「セグメント(A2)」ともいう)から構成される架橋グラフトポリマーを含有する熱転写受像シート用樹脂であって、セグメント(A2)が、芳香族基を有する付加重合性モノマーを由来とする構成単位を70重量%以上含有し、該架橋グラフトポリマーのメチルエチルケトン不溶分が50〜85重量%である。
本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有される架橋グラフトポリマーは、本質的に芳香族基を有する付加重合性モノマーからなるセグメントとポリエステルからなるセグメントからなり、メチルエチルケトンに不溶な部分、すなわちゲル成分を比較的多く有する。この網目構造に浸透した染料が保持されるため、染着性が向上し、さらにシート表面に架橋され、高分子量となった樹脂が存在するため、印刷時の加熱融着によってもインクシートに樹脂が取られにくいため、離型性が向上する。更に芳香族基を有する付加重合性モノマーからなるセグメントは、一般に、極性基を有するインクシート樹脂との親和性が低いため、熱転写受像シートの離型性、特に高温高湿度での離型性が向上するものと考えられる。
本発明の熱転写受像シート用樹脂における前記架橋グラフトポリマーの含有量は、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%以上、更に好ましくは実質的に100モル%である。
当該メチルエチルケトン不溶分の樹脂は、グラフトポリマーの分岐及び架橋部分となる、後述の非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコール、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸、両反応性モノマー、及びオキサゾリン化合物等の架橋剤の量を調節することによって得ることができる。
また、本発明の熱転写受像シート用樹脂において、架橋グラフトポリマーのメチルエチルケトン膨潤率は、熱転写受像シートの離型性及び染着性を向上させる観点から、好ましくは170〜300重量%、より好ましくは188〜270重量%、更に好ましくは200〜260重量%である。該メチルエチルケトン膨潤率は、実施例記載の方法により求められる。
当該メチルエチルケトン膨潤率の樹脂は、前述のグラフトポリマーの分岐及び架橋部分となる化合物の量とグラフトポリマーの各セグメントの分子量によって調節することができ、分岐及び架橋部分の量が多ければ、膨潤率は減少し、各セグメントの分子量が大きければ、膨潤率は増大する。
以下に、本発明の熱転写受像シート用樹脂の成分、各態様、及び熱転写受像シートについて説明する。
本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有される架橋グラフトポリマーを構成するセグメント(A1)は、ポリエステル樹脂からなるセグメントであり、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂からなるセグメントである。セグメント(A1)は、本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーにおける主鎖又は側鎖のいずれであってもよい。
x及びyは、アルキレンオキサイドの付加モル数に相当し、それぞれ正の数である。さらに、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyとの和の平均値は、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜3である。
また、x個のR1O又はy個のR2Oは、各々同一であっても異なっていてもよいが、熱転写受像シートの染着性及び熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層との密着性の観点から、同一であることが好ましく、オキシプロピレン基であることがより好ましい。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
具体的には、セグメント(A1)が前記架橋グラフトポリマーの主鎖である場合、セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマー(以下、単に「セグメント(A1)の原料モノマー」ともいう)としては、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコール、例えば不飽和脂肪族アルコールを含むアルコール成分を用いることが好ましい。不飽和脂肪族アルコール中の炭素−炭素不飽和結合の部分は、前記グラフトポリマー中では、セグメント(A2)との結合部分となることができ、その場合、該不飽和結合は、飽和結合となる。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコール(不飽和脂肪族アルコール)としては、アリルアルコール等が挙げられる。
その他のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。前記アルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セグメント(A1)が前記架橋グラフトポリマーの主鎖である場合、セグメント(A1)の原料モノマーであるカルボン酸成分には、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸、例えば不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸を含むことが好ましい。該炭素−炭素不飽和結合の部分は、本発明の熱転写シート用樹脂中では、セグメント(A2)との結合部分となることが好ましく、その場合、該不飽和結合は、飽和結合となる。
なお、ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマーのうち、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する原料モノマーとして、不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸、不飽和脂肪族アルコールから選ばれる1種以上を含めばよいが、反応性の観点から、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸を含むことが好ましく、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸のみであることがより好ましい。
また、染料受容層に用いた場合の造膜性の観点から、セグメント(A1)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。
本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有される架橋グラフトポリマーを構成するセグメント(A2)は、付加重合性モノマー(a2)(以下、モノマー(a2)ともいう)に由来する構成単位からなる付加重合系樹脂からなるセグメントである。セグメント(A2)は、本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーにおける主鎖又は側鎖のいずれであってもよい。付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)は、ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)とは相溶しにくいため、微細な相分離構造を形成し、その界面からの染料の浸透性が高まり、染料受容層の表面にインクシートとの親和性に乏しい部分が配向する。これにより、熱転写受像シートの染着性及び離型性が大きく向上するものと考えられる。
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)としては、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;ポリエチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。
これらのなかでは、スチレン類及び(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、なかでも、芳香族基を有する付加重合性モノマーがより好ましく、スチレン、メチルスチレン、ベンジルメタクリレート及びベンジルアクリレートが更に好ましい。これらのなかでも、モノマーの原料価格、熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点からは、スチレンが特に好ましい。
芳香族基を有する付加重合性モノマーを由来とする構成単位の含有量は、熱転写受像シートの離型性、高温高湿度での離型性及び染着性の観点から、セグメント(A2)中、70重量%以上であり、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは実質的に100重量%である。
セグメント(A1)がセグメント(A2)より多く存在することで、微細な相分離構造を形成しながらも、セグメント(A1)の分子構造に由来する染着性を十分に発揮させることができるものと考えられる。
本発明の熱転写受像シート用樹脂は、架橋グラフトポリマーが、セグメント(A1)及び(A2)のいずれを主鎖ないし側鎖とするかによって、好ましい製造方法が異なる。
まず、架橋グラフトポリマーが、セグメント(A2)を側鎖とし、セグメント(A1)を主鎖とする架橋グラフトポリマー(P1)である第1の態様の場合、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して、ポリエステル樹脂(a1)(以下、樹脂(a1)ともいう)を調製し、該ポリエステル樹脂(a1)の存在下、付加重合性モノマー(a2)を重合する方法によって得ることができる。その重合方法に制限はなく、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを直接混合して重合する方法、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを有機溶媒に溶解して重合する方法等が好ましく挙げられる。本発明の熱転写受像シート用樹脂は、下記工程(1)及び(2)を有する方法によって得ることが好ましい。
工程(1):前記ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程。
工程(2):前記工程(1)で得られた水性分散液に前記付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合して熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を得る工程。
樹脂(a1)は、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂であり、前記ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)を構成するのに好ましいものである。
ここで、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、前記セグメント(A1)と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じである。
その他のアルコールとしては、前記セグメント(A1)の場合と同様である。アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じであり、フマル酸がより好ましい。
カルボン酸成分中、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量は、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは7〜25モル%、更に好ましくは8〜15モル%である。
その他のカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じであり、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。カルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステルはシャープな分子量分布を有することが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、二酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられる。ポリエステルの合成におけるエステル化反応の反応効率の観点から、スズ触媒が好ましい。スズ触媒としては、酸化ジブチルスズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等が好ましく用いられる。
また、本発明においては、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を用いるため、ラジカル重合禁止剤を用いることが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、4−t−ブチルカテコール等が好ましい。
ガラス転移温度、軟化点及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、染料受容層に用いた場合の造膜性の観点から、樹脂(a1)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)は、前記の付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)の原料モノマーとして記載したものと同じであり、芳香族基を有する付加重合性モノマーを好ましくは55重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは実質的に100重量%含有することが好ましく、芳香族基を有する付加重合性モノマーとしては、スチレン、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレートが好ましい。これらのなかでも、モノマーの原料価格、熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点から、スチレンが好ましい。
工程(1)は、ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程である。
前記ポリエステル樹脂(a1)を分散させる水性媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水の含有量が50重量%以上の媒体である。環境安全性の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは実質的に100重量%である。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の、水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
より具体的には、例えば、撹拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた反応器を準備し、ケトン系溶媒に溶解したポリエステル樹脂(a1)に、中和剤等を加え、カルボキシル基をイオン化し(すでにイオン化されている場合は不要)、次いで水を加えて水相に転相する、好ましくは水を加えた後にケトン系溶媒を留去して水相に転相する。
ポリエステル樹脂(a1)のケトン系溶媒への溶解操作、及びその後の中和剤の添加は、通常ケトン系溶媒の沸点以下の温度で行う。用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
工程(2)は、工程(1)で得られた水性分散液に前記付加重合性モノマー(a2)を添加し重合して、熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(以下、水性分散液(A)ともいう)を得る工程である。
まず、付加重合性モノマー(a2)をポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に添加する。添加量は、ポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)の重量比[ポリエステル樹脂(a1)/付加重合性モノマー(a2)]で、好ましくは55/45〜95/5、より好ましくは65/35〜95/5、より好ましくは75/25〜95/5、更に好ましくは85/15〜95/5である。
また、撹拌の効率の点から、水等を更に加えてもよい。
重合には、公知のラジカル重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて添加する。ラジカル重合開始剤としては、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、過硫酸塩を用いることがより好ましい。
前記のポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)とを含有する混合液を加熱することで重合反応を進行させる。重合温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、過硫酸ナトリウムを用いる場合には、重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。
前記水性分散液(A)の固形分濃度は、樹脂粒子の分散性及び生産性の観点から、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜40重量%、更に好ましくは30〜40重量%である。また、前記水性分散液(A)の25℃におけるpHは、水性分散液(A)の保存安定性の観点から、好ましくは5〜10、より好ましくは6〜9、更に好ましくは7〜9である。
架橋グラフトポリマーが、セグメント(A1)を側鎖とし、セグメント(A2)を主鎖とし、該セグメント(A1)が、架橋剤により架橋されてなる架橋ポリエステルである架橋グラフトポリマー(P2)である第2の態様の場合、カルボキシ基を有する付加重合系樹脂存在下でポリエステル樹脂(a1)の原料モノマーを縮重合反応させる方法、カルボキシ基を有する付加重合系樹脂とポリエステル樹脂(a1)を得たのち、縮合させる方法等、いずれの方法を用いても良いが、操作効率の観点から前者が好ましい。なかでも、下記工程(3)及び(4)を有する方法によって得ることが好ましく、更に工程(5)及び工程(6)を行うことで水性分散液を得ることがより好ましい。
工程(3):付加重合性モノマー(a2)とカルボキシ基を有するビニルモノマーとから、付加重合反応により、カルボキシ基を有する付加重合系樹脂を得る工程。
工程(4):前記のカルボキシ基を有する付加重合系樹脂とポリエステル樹脂(a1)の原料モノマーとを縮重合反応により、グラフトポリマーを得る工程。
工程(5):工程(4)で得られたグラフトポリマーを有機溶媒に溶解し、さらに中和剤を添加し、グラフトポリマーの溶液を得る工程。
工程(6):工程(5)で得られた溶液に水を添加して熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を得る工程。
工程(3)は、付加重合性モノマー(a2)とカルボキシ基を有するビニルモノマーとから、付加重合反応により、カルボキシ基を有する付加重合系樹脂を得る工程である。
本工程において、重合開始剤、架橋剤等を用いてもよく、ジブチルパーオキサイド等が好ましい。反応温度は、重合開始剤の種類にもよるが、付加重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜170℃である。
カルボキシ基を有するビニルモノマーの使用量は、ポリエステル樹脂(a1)への付加重合系樹脂の分散性と、付加重合反応及び縮重合反応の反応制御の観点から、前記のポリエステル樹脂(a1)の原料モノマーであるカルボン酸成分全量に対し、1〜40モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましい。
前記のカルボキシ基を有する付加重合系樹脂とポリエステル樹脂(a1)の原料モノマーとを縮重合反応により、グラフトポリマーを得る工程である。好ましくは触媒の存在下で反応させ、反応温度は、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜240℃、さらに好ましくは175〜240℃である。
工程(3)の後に工程(4)を行う場合、工程(3)の際に、付加重合性モノマー(a2)とカルボキシ基を有するビニルモノマーのみを用いて反応を行い、工程(4)で樹脂(a1)の原料モノマーを混合するか、工程(3)の際に、付加重合性モノマー(a2)、カルボキシ基を有するビニルモノマー及び樹脂(a1)の原料モノマーを混合し、付加重合反応は起こるが、縮重合反応の生じにくい温度と圧力に調整して、工程(3)を行い、その後温度と圧力を縮重合反応に適する条件にすることで、工程(4)を行う。
工程(5)は、工程(4)で得られたグラフトポリマーを有機溶媒に溶解し、さらに中和剤を添加し、グラフトポリマーの溶液を得る工程である。
有機溶媒としては、前記グラフトポリマーの溶解性及び乾燥時の溶媒の揮発性の観点から、ケトン系溶媒、トルエンが好ましく、ケトン系溶媒がより好ましい。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。これらの中でも、前記グラフトポリマーの溶解性及び溶媒の留去の容易性の観点から、メチルエチルケトンが好ましい。
前記グラフトポリマーを有機溶媒に溶解する方法としては、前記グラフトポリマーと有機溶媒とを混合して、常温又は加温状態で撹拌して溶解させる方法が挙げられる。
中和剤としては、工程(1)で用いたものと同じ化合物を挙げることができ、アンモニア水が好ましい。これらの中和剤の使用量は、少なくとも前記グラフトポリマーの酸価を中和できる量であればよい。
中和剤の添加は、通常有機溶媒の1気圧での沸点以下の温度で行われる。
なお、工程(5)では、本発明の効果を損なわない範囲で、前記グラフトポリマー以外の樹脂を併用することもできる。
工程(6)は、工程(5)で得られた溶液に水を添加して熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を得る工程である。
具体的には、例えば、撹拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管のついた反応器を準備し、工程(5)で得られた溶液に、水を加えて水相に転相する。好ましくは、水を加えた後、有機溶媒を留去して水相に転相する。また、ここで用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
用いられる水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
水性分散液の分散媒体としては、水を主成分とするもの、すなわち、水が50%以上のものが好ましい。環境性の観点から、媒体中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
オキサゾリン化合物としては、樹脂との架橋反応による架橋効果が効果的に発現しうる観点から、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましく用いられる。オキサゾリン基を含有する重合体は、例えば、オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合することによって得られる。必要に応じて、オキサゾリン基を有する重合性単量体と共重合可能な、オキサゾリン基を有しない重合性単量体との共重合によって得られる。
水性分散液において、オキサゾリン化合物は、樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、水性媒体中に分散又は溶解されたものとして含有されることが好ましい。
前記オキサゾリン化合物の含有量あるいは添加量は、樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、樹脂分散液中、樹脂100重量部に対して、固形分として0.1〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。
前記水性分散液中の固形分濃度は、樹脂粒子の分散性及び生産性の観点から、20〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜40重量%、更に好ましくは30〜40重量%である。また、前記水性分散液の25℃におけるpHは、樹脂分散液の保存安定性の観点から、5〜10であることが好ましく、より好ましくは6〜9.5、更に好ましくは7〜9.1である。
本発明の熱転写受像シートは、基材上に、前記熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する。
基材としては、例えば合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフイルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フイルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。また、前記基材を組み合わせた積層体も使用できる。
これらの基材の厚みは、例えば、10〜300μm程度のものを用いることができる。前記の如き基材には、染料受容層との密着力を向上する観点から、その表面にプライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
本発明の熱転写受像シートにおける染料受容層は、本発明の熱転写受像シート用樹脂を含有する。
染料受容層は、樹脂を有機溶媒に溶解して得られた塗工液形態、又は樹脂の各々を有機溶媒や水に分散させて得られた樹脂分散液を含む塗工液形態で用いて製造することができ、環境安全性等の観点から、後者が好ましく、下記の工程(7)〜(8)を行うことによって製造することがより好ましい。
工程(7):工程(2)又は工程(6)で得られた熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を含有する染料受容層用塗工液を調製する工程。
工程(8):工程(7)で得られた染料受容層用塗工液を用いて染料受容層を設ける工程。
工程(7)は、工程(2)又は工程(6)で得られた熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を含有する染料受容層用塗工液を調製する工程である。
染料受容層用塗工液は、造膜剤を含有することが好ましい。造膜剤としては、ブチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、ゼラチン等が挙げられる。染料受容層の強度及び離型性の観点から、ゼラチンが好ましい。
造膜剤を均一に溶解させる観点から、予め造膜剤を水に溶解しておくことが好ましく、前記熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液と造膜剤の水溶液とを混合し、撹拌して塗工液を得ることが好ましい。好適に用いられる撹拌機としては、ボールミル等が挙げられる。造膜剤を溶解状態で均一に混合するために、撹拌温度は、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜50℃である。
離型剤を均一に分散又は溶解するために、ボールミル等の撹拌機を用いることが好ましく、分散又は溶解する温度は20〜40℃が好ましい。
染料受容層用塗工液は、更に、染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム等の顔料や充填剤を含有することができる。これらの顔料や充填剤は、本発明の熱転写受像シートの白色度の観点から、染料受容層用塗工液中、樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部含有することができる。なお、染料受容層用塗工液には、更に必要に応じて、例えば、触媒、硬化剤等の他の添加剤を含有することもできる。
また、染料受容層用塗工液は、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の熱転写受像シート用樹脂以外の他の樹脂を含むことができる。前記他の樹脂の具体例としては、塩化ビニル重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルアクリル共重合体、ポリウレタンが挙げられ、熱転写受像シートの染着性及び耐光性、並びに樹脂分散液の分散性の観点から塩化ビニルアクリル共重合体が好ましい。
これらの他の樹脂は、樹脂の製造過程で、本発明の熱転写受像シート用樹脂とともに有機溶媒に溶解させることにより染料受容層用塗工液に含有させることもできる。また、樹脂分散液としてから、熱転写受像シート用樹脂の水性分散液へ添加して混合することにより染料受容層用塗工液に含有させることもできる。
工程(8)は、工程(7)で得られた染料受容層用塗工液を用いて染料受容層を設ける工程である。
本発明の熱転写受像シートにおける染料受容層は、基材の一方の面に塗工液を塗布及び乾燥して形成することによって得られ、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布することが好ましい。また、後述するように基材と染料受容層との間に中間層を有する場合は、基材の一方の面に中間層用塗工液及び染料受容層用塗工液を重層塗布及び乾燥して中間層及び染料受容層をそれぞれ設けることもできる。
形成される染料受容層の厚さは、一般には1〜50μmであり、画質及び生産性の観点から、3〜15μmであることが好ましい。また、乾燥後の固形分量としては、染料受容層1m2当たり3〜15gであることが好ましい。
本発明の熱転写受像シートは、基材と染料受容層との間に中間層を有することが好ましく、中間層は水溶性高分子及び中空粒子を含有することがより好ましい。
<水溶性高分子>
水溶性高分子は、中空粒子を固定するバインダーとして用いられるもので、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、これらの中でも、10〜30℃の室温付近に水溶液のゲル化温度を有するという熱特性の観点から、ゼラチンが好ましい。その粘度は、熱転写受像シートの離型性及び造膜性の観点から、JIS K6503−2001で測定した粘度(60℃)が、好ましくは2.5〜6.0mPa・s、より好ましくは3.0〜5.5mPa・sである。
中間層における水溶性高分子の含有量は、当該中間層全体の1〜75重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることがより好ましい。
また、中間層に含まれる水溶性高分子は、アルデヒド類、エポキシ類、ビニルスルホン類、トリアジン類、カルボジイミド類等の架橋剤により架橋されていることが好ましい。
中間層に含有される中空粒子としては、少なくとも一部に空孔を有するポリマー粒子であれば、特に制限はない。例えば、1)樹脂により形成された粒子隔壁内部に存在する水が、塗布乾燥後、粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空粒子、2)ブタン、ペンタンなどの低沸点液体を樹脂で被覆した粒子を加熱することにより、粒子内部の低沸点液体が膨張して内部が中空となる中空粒子、3)前記2)をあらかじめ加熱発泡させた中空ポリマー粒子、4)樹脂粒子を形成する重合体に含まれる酸性基の少なくとも一部が中和されることによって形成される中空粒子、等が挙げられる。本発明においては、熱転写受像シートの染着性、及び熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層との密着性の観点から、前記1)又は3)の方法により得られるものが好ましく使用できる。
また、中空粒子の体積中位粒径(D50)は、熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層との密着性の観点から、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.3〜3μm、更に好ましくは0.3〜1μmである。この値は、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、商品名:S−4800型)により測定することができる。
また、前記中空粒子は、熱転写受像シートの染着性、及び熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層との密着性の観点から、そのメチルエチルケトン(MEK)不溶分が、好ましくは70重量%以下、より好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは30〜70重量%である。本発明における「中空粒子のMEK不溶分」とは、25℃のMEK95重量部に対して、中空粒子2.0重量部を溶解させた場合の、中空粒子が有する不溶な中空粒子成分の重量割合で定義されるものである。
前記中空粒子のMEK不溶分は、例えば、これを構成する樹脂の架橋度を制御すること等により調整することができる。
中間層は、染料の染着性及び熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層との密着性の観点から、上記中空粒子と水溶性高分子との重量比(中空粒子/水溶性高分子)が、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは40/60〜80/20、更に好ましくは50/50〜80/20である。
中間層には、更に必要に応じて、グリコールエーテル類等の造膜助剤、離型剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
中間層の厚みは、クッション性、断熱性の観点から、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmである。また、乾燥後の固形分量としては、中間層1m2当り7〜70g/m2であることが好ましい。
中間層は、例えば、熱転写受像シートの基材の少なくとも一方の面に、ゼラチンを含む水溶性高分子、中空粒子及び必要に応じて用いられる添加剤等を水に溶解して、あるいは水に分散して得られた塗工液を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布し乾燥して形成することができる。
前記の本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シート(インクリボン)は、通常、紙やポリエステルフイルム上に昇華性染料を含む染料層、及び染料を受像して得られた画像上に転写される保護層等からなるラミネート層を設けたものであり、任意の転写シートをいずれも使用することができる。
本発明の熱転写受像シートに好適に使用できる昇華性染料としては、例えばイエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系が挙げられる。
表1に示すフマル酸を除くポリエステル樹脂の原料モノマー及びジオクチル酸スズ(II)塩を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積5リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気下、235℃で5時間反応させ、更に減圧して、8.3kPaの圧力下で1時間反応した。次いで、210℃でフマル酸及び4−t−ブチルカテコールを加え、5時間反応させた後、減圧して、20kPaの圧力下にて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで反応させて、ポリエステル樹脂(a1)a〜dを得た。
(グラフトポリマーe〜fの製造:工程(3)(4))
表1に示すポリエステル樹脂の原料モノマーを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で撹拌しつつ、表1に示す付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより70ml/minの滴下速度にて時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、付加重合系樹脂の原料モノマーの除去を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を加え、235℃にて常圧で6時間反応させた後、減圧して、8kPaの圧力下にて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで反応させて、グラフトポリマーe〜fを得た。
(ポリエステル樹脂(a1)gの製造)
表1に示す無水トリメリット酸を除くポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒(ジオクチル酸スズ(II)塩)を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、235℃にて常圧で6時間反応させた後、8.0kPaにて1時間、反応を行った。200℃まで冷却後、表1に示す無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで8.0kPaにて反応を行い、ポリエステル樹脂(a1)gを得た。
フローテスター(株式会社島津製作所製、商品名:CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、商品名:Pyris 6 DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
測定溶媒を、エタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更したこと以外は、JIS K0070に従って測定した。
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、結着樹脂をクロロホルムに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業株式会社製、商品名:FP−200)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
溶解液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の数平均分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。検量線は、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン;2.63×103、2.06×104、1.02×105(重量平均分子量)、ジーエルサイエンス株式会社製の単分散ポリスチレン;2.10×103、7.00×103、5.04×104(重量平均分子量))を標準試料として用いて作成した。
測定装置:CO−8010(商品名、東ソー株式会社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(いずれも商品名、東ソー株式会社製)
(ポリエステル樹脂(a1)a〜d及びgの水性分散液(i)〜(iv)及び(vii)の製造:工程(1)、並びにグラフトポリマーe及びfの水性分散液(v)及び(vi)の製造:工程(5)及び(6))
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器及び熱電対を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに、表2に示す種類及び配合量でポリエステル樹脂(a1)a〜gを入れ、25℃でメチルエチルケトンに溶解させた。次いで、25%アンモニア水を添加して、撹拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下60℃でメチルエチルケトンを留去した。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液(i)〜(iv)及び(vii)、並びにグラフトポリマーe及びfの水性分散液(v)及び(vi)をそれぞれ得た。
得られた水性分散液(i)〜(vii)のそれぞれの物性について、以下の方法により測定した。結果を表2に示す。
レーザー回折型粒径測定機(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−920)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定した。
赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製、商品名:FD−230)を用いて、樹脂分散液5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、樹脂分散液のウェットベースの水分(重量%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(重量%)=100−M
M:樹脂分散液のウェットベース水分(重量%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
W0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、商品名:HM−20P)により、25℃で測定した。
(熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(I)〜(VI)の製造:工程(2))
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、撹拌器及び熱電対を装備した内容積2リットルの四つ口フラスコに、表3に示す種類及び配合量でポリエステル分散液、脱イオン水、付加重合性モノマー(a2)であるスチレンを仕込み、30分間撹拌を行った。窒素気流下、過硫酸ナトリウムを加え、90℃で6時間反応させた。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、架橋グラフトポリマー(P1)を含有する熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(I)〜(VI)を得た。なお、各材料の配合量は、得られる水性分散液中の熱転写受像シート用樹脂におけるポリエステル樹脂セグメント(A1)と付加重合系樹脂セグメント(A2)との重量比が表3に示すようになるように決定された。
得られた熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(I)〜(VI)のそれぞれの物性について、前記及び下記の方法により測定した。結果を表3に示す。
(熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(VII)〜(IX)の製造:工程(6)の架橋工程)
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、撹拌器及び熱電対を装備した内容積2リットルの四つ口フラスコに、表3に示す種類及び配合量でポリエステル分散液、脱イオン水、水溶性のオキサゾリン含有重合体(株式会社日本触媒製、商品名:エポクロスWS−700)を仕込み、撹拌下95℃で4時間反応させた。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、架橋グラフトポリマー(P2)を含有する熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(VII)〜(VIII)、及び架橋ポリエステル樹脂を含有する熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(IX)を得た。
得られた熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(VII)〜(IX)のそれぞれの物性について、前記及び下記の方法により測定した。結果を表3に示す。
熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、商品名:FDU−2100)を用いて−10℃で9時間凍結乾燥させ、蓋付の遠沈管(遠沈管の重量:W1)に、凍結乾燥した樹脂を0.5g(W2)を秤量し、16gのメチルエチルケトンを添加後、ミックスローターで3時間以上攪拌した。次いで、遠心分離機(ドイツ、SIGMA Laborzentrifugen GmbH製、テーブルトップ高速冷却遠心機:3K30C、ローター:S12158、いずれも商品名)にて25000rpmで30分間遠心分離し、デカンテーションにより、メチルエチルケトン不溶分と可溶分とに分離後、メチルエチルケトン不溶分にさらにメチルエチルケトン12gを加え、同様に遠心分離およびデカンテーションを繰り返すことにより、メチルエチルケトン不溶分と可溶分とに分離した。遠沈管とともにメチルエチルケトン不溶分を80℃で12時間以上減圧乾燥させた後、重量(W3)を測定し、以下の式に従って、メチルエチルケトン不溶分を算出した。
メチルエチルケトン不溶分(%)={(W3−W1)/W2}×100
熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、商品名:FDU−2100)を用いて−10℃で9時間凍結乾燥させ、凍結乾燥した樹脂を約1gを内径25mmの打錠用プレス金型に表面が均一になるように投入し、かかる金型をプレス機にセットし10トンの加圧を1分間行うことにより、直径25mm、厚さ約1.7mmの樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットの重量(X1)を精秤し、20mlのメチルエチルケトンに入れ3時間放置した。次いで、200メッシュの金網で濾過し、10分後メチルエチルケトン膨潤物の重量(X2)を測定した。下記の式よりメチルエチルケトン膨潤率(wt%)を求めた。
メチルエチルケトン膨潤率(wt%)={(X2−X1)/X1}×100
(熱転写受像シートの製造)
まず、表4に示す組成及び配合量で、45℃で混合し中間層用塗工液を作製した。この塗工液を合成紙(ユポ・コーポレーション社製、商品名:YUPO FGS−250、厚さ250μm、坪量200g/m2)にワイヤーバーにより乾燥後に20.0g/m2になるように塗布し、25℃5分で乾燥させて中間層塗工シートを得た。
なお、中間層の調製には、中空粒子として以下のスチレンアクリル共重合体、バインダーとして以下のゼラチンを用いた。
スチレンアクリル共重合体(日本ゼオン株式会社製、商品名:Nipol MH8101、中空率=50%、固形分濃度=26重量%)
ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製、商品名:G0723K、粘度4.4mPa・s)
ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製、商品名:G0723K、粘度4.4mPa・s)
ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF−615A)
前記染料受容層用塗工液の各々を前述の中間層塗工シートにワイヤーバーにより乾燥後に5.0g/m2になるように塗布し、50℃2分で乾燥させて熱転写受像シートを得た。
(染着性)
作製した熱転写受像シートに、市販の昇華型プリンタ(アルテック株式会社製、商品名、MEGAPIXEL III)を用いて黒(K)の階調パターンを印画し、高濃度印画(18階調目(L=0:最高濃度))での転写色濃度をグレタグ濃度計(GRETAG−MACBETH社製)で測定し、染着性を評価した。濃度の値が大きいほど、染着性に優れる。結果を表4に示す。
作製した熱転写受像シートに25℃50%RH(相対湿度)環境下で、5×5cmの黒ベタを印画し、黒ベタ連続印画時のインクリボンと熱転写受像シートとの剥離音から、下記基準で離型性(熱融着性)を評価した。結果を表4に示す。
AA:異音はなく、剥離できる。
A:わずかに異音があるが、剥離できる。
B:明らかな異音があるが、剥離できる。
C:熱融着しており、剥離が困難で画像に欠けが見られる。
D:熱融着しており、剥離できない。
作製した熱転写受像シートを36℃80%RH(相対湿度)の高温高湿条件下で、24時間保存し、同一環境下で、前記昇華型プリンタ(MEGAPIXEL III)を用いて、5×5cmの黒ベタを印画し、黒ベタ連続印画時のインクリボンと染料受像シートとの剥離音から、下記基準で高温高湿環境下における離型性を評価した。結果を表4に示す。
AA:異音はなく、剥離できる。
A:わずかに異音があるが、剥離できる。
B:明らかな異音があるが、剥離できる。
C:熱融着しており、剥離が困難で画像に欠けが見られる。
D:熱融着しており、剥離できない。
特に、表4から以下のことがわかる。
[1]熱転写受像シート用樹脂における架橋グラフトポリマーのメチルエチルケトン不溶分が50重量%未満の場合、離型性及び高温高湿離型性に劣る(比較例1、3及び4)。一方、該メチルエチルケトン不溶分が85重量%を超える場合、染着性に劣る(比較例2)。
[2]熱転写受像シート用樹脂が、付加重合系樹脂セグメント(A2)を有するグラフトポリマーを含有しない場合、離型性に劣り、染着性にも劣る(比較例3及び4)。
Claims (5)
- ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成される架橋グラフトポリマーを含有する熱転写受像シート用樹脂であって、
セグメント(A2)が、芳香族基を有する付加重合性モノマーを由来とする構成単位を70重量%以上含有し、該架橋グラフトポリマーのメチルエチルケトン不溶分が50〜85重量%であり、
前記架橋グラフトポリマーが、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコール又は非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を含有する原料モノマーを重合させることにより得られるセグメント(A1)が主鎖であり、セグメント(A2)が側鎖である架橋グラフトポリマー(P1)、又はカルボキシ基を有するビニルモノマーを含有する原料モノマーを重合させることにより得られるセグメント(A2)が主鎖であり、セグメント(A1)が側鎖である架橋グラフトポリマー(P2)である、熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート。 - セグメント(A1)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂である、請求項1に記載の熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート。
- 架橋グラフトポリマー(P2)が更にオキサゾリン基を有する化合物で架橋されてなる、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート。
- セグメント(A1)とセグメント(A2)との重量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]が55/45〜95/5である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート。
- 前記架橋グラフトポリマーの、メチルエチルケトンに対する膨潤率が170〜300重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート。
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