JP5756286B2 - 熱転写受像シート用樹脂 - Google Patents
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Description
特許文献2には、染料の染着性と離型性の改善を目的として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含むアルコール成分を含有するポリエステルの原料モノマーと、スチレン等を含有する付加重合系樹脂の原料モノマーと、アクリル酸等の両反応性モノマーを付加重合及び縮重合させることにより得られる、熱転写受像シート用樹脂が開示されている。
特許文献3には、記録適性と記録画像性質の改善を目的として、支持体上に色材転写シートからの転写像を受理する受像層を設けてなる熱転写記録用受像シートにおいて、該受像層が、水性媒体中に染着性樹脂、水性変性シリコンオイル及びこれらの少なくとも一方と反応する水性架橋剤とを含有せしめた水性系塗液を支持体上に塗布し乾燥することで形成されていることを特徴とする熱転写記録用受像シートが開示されている。
しかしながら、加熱により熱転写受像シート表面の物性が変化することが原因で、十分な染着性が得られず、端部ににじみが生じて、鮮鋭な画像が得られないという問題があった。また、着色時に、インクシートと熱転写受像シートとの間に融着が生じやすいという問題もあった。
ゆえに、にじみを抑制し、高い染料の染着性、及びインクシートとの融着を抑え離型性に優れた熱転写受像シートが望まれている。これらの性能の両立という観点では、特許文献1〜3に記載された熱転写受像シートには未だ改良の余地がある。
すなわち、本発明は、下記[1]及び[2]を提供する。
[1]ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマーを含有し、ガラス転移温度が50〜80℃であり、200℃における貯蔵弾性率G’(200)に対する140℃における貯蔵弾性率G’(140)の比〔G’(140)/G’(200)〕が1.0〜10.0であり、G’(200)が2.0×104〜3.0×105Paである、熱転写受像シート用樹脂。
[2]上記[1]の熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート。
すなわち、本発明の熱転写受像シート用樹脂は、サーマルヘッドによって加熱された際の80℃以上において、ガラス状態からゴム状態に変化し、実際に染料を転写する際の温度である140〜200℃において、貯蔵弾性率の変化が小さく、ゴム状態を維持されると考えられる。
これにより、印画時に樹脂が硬すぎたり、やわらかすぎたりすることがなく、いかなる濃度、いかなる色調の染料を用いた場合も、適切に染料を転写することができ、染着性に優れ、にじみを抑制し得ると考えられる。
更に高温においても液状になることなく、ゴム状態を維持することで、離型性にも優れると考えられる。
特に、本発明の熱転写受像シート用樹脂は、ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマーを含むため、セグメント(A1)のポリエステル部分が、染料層との親和性が高く、セグメント(A2)の付加重合系樹脂部分が、親和性が低いため、染着性と離型性のバランスが良好となる。そのため、本発明の樹脂を含む染料受容層内では、染料に親和性のある相とない相の微細な相分離が起こり、にじみも抑制されるものと考えられる。
本発明の熱転写受像シート用樹脂のガラス転移温度は、優れた染着性及び離型性を付与し、にじみを抑制する観点から、50〜80℃であり、好ましくは55〜80℃、より好ましくは58〜75℃、更に好ましくは60〜70℃、更に好ましくは65〜70℃である。
本発明の熱転写受像シート用樹脂の200℃における貯蔵弾性率G’(200)は、優れた染着性及び離型性を付与し、にじみを抑制する観点から、2.0×104〜3.0×105Paであるが、好ましくは5.0×104〜3.0×105Pa、より好ましくは5.5×104〜3.0×105Pa、更に好ましくは6.0×104〜2.0×105Paである。
また、140℃における貯蔵弾性率G’(140)は、優れた染着性及び離型性を付与し、にじみを抑制する観点から、好ましくは3.0×104〜3.5×105Pa、より好ましくは5.0×104〜3.5×105Pa、更に好ましくは5.5×104〜3.0×105Pa、更に好ましくは6.0×104〜2.0×105Paである。
なお、G’(140)及びG’(200)は、角速度6.28rad/s、毎分2℃昇温させる条件で50℃から200℃まで動的粘弾性測定を行った際の140℃及び200℃における貯蔵弾性率である。貯蔵弾性率の測定方法としては、例えば実施例で記載の方法が挙げられる。
また、後述のグラフトポリマー(P2)においては、数平均分子量を3000〜8000とし、酸価を5〜25mgKOH/gとし、グラフトポリマーを構成するセグメント(A1)とセグメント(A2)との重量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]を60/40〜90/10とすることによって、得ることが好ましい。
以上のように、調整することにより、上述のガラス転移温度及び貯蔵弾性率を有する樹脂が得られる理由は定かではないが、各樹脂の分子中に、相分離や化学結合による適度に架橋点となる部分が生じるため、温度変化によりガラス状態からゴム状態になった場合の変化が少なく、ゴム状態を維持できるものと考えられる。
本発明の熱転写受像シート用樹脂は、ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)からなるグラフトポリマーを含む。当該グラフトポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の熱転写受像シート用樹脂における当該グラフトポリマーの含有量は、優れた離型性及び染着性を付与し、にじみを抑制する観点から、好ましくは80〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%以上、更に好ましくは実質的に100モル%である。
また、セグメント(A1)がセグメント(A2)より多く存在することで、微細な相分離構造を形成しながらも、セグメント(A1)の分子構造に由来する染着性を十分に発揮させることができるものと考えられる。
グラフトポリマーの酸価は、分散安定性の観点から、好ましくは5〜40mgKOH/g、より好ましくは5〜35mgKOH/gである。
第1の態様としては、セグメント(A1)が主鎖であり、セグメント(A2)が側鎖であるグラフトポリマー(P1)である場合、第2の態様としては、セグメント(A2)が主鎖であり、セグメント(A1)が側鎖であるグラフトポリマー(P2)の場合である。グラフトポリマー(P2)は、セグメント(A1)が、架橋剤により架橋されてなるポリエステルである。
いずれの態様でも本発明の効果を発揮するが、なかでも、セグメント(A1)が主鎖で、セグメント(A2)が側鎖であるグラフトポリマー(P1)の方が、染着性及び離型性の観点から好ましい。
一方、グラフトポリマー(P2)の酸価は、上述の範囲のガラス転移温度及び貯蔵弾性率を有する樹脂を得る観点から、好ましくは5〜25mgKOH/g、より好ましくは8〜22mgKOH/g、更に好ましくは10〜20mgKOH/gである。
また、グラフトポリマー(P2)の数平均分子量は、離型性及び染着性の観点から、好ましくは3000〜8000、より好ましくは3000〜7000、更に好ましくは3000〜5000である。
これらの数平均分子量及び酸価は、実施例に記載の方法により求められる。
当該メチルエチルケトン不溶分は、グラフトポリマーの分岐及び架橋部分となる、後述の非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコール、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸、両反応性モノマー、及びオキサゾリン化合物等の架橋剤の量によって調節することができる。
以下、本発明の熱転写受像シート用樹脂の成分、各態様、及び熱転写受像シートについて説明する。
本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーを構成するセグメント(A1)は、ポリエステルからなるセグメントであるため、アルコール成分由来の構成単位及びカルボン酸成分由来の構成単位より構成される。以下に原料であるモノマーとして用いられる、アルコール成分及びカルボン酸成分について説明する。
x及びyは、アルキレンオキサイドの付加モル数に相当し、それぞれ正の数である。さらに、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyとの和の平均値は、好ましくは2〜7、より好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜3である。
また、x個のR1O又はy個のR2Oは、各々同一であっても異なっていてもよいが、熱転写受像シートの染着性及び熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層との密着性の観点から、同一であることが好ましく、オキシプロピレン基であることがより好ましい。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
具体的には、セグメント(A1)がグラフトポリマーの主鎖である場合、セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマー(以下、単に「セグメント(A1)の原料モノマー」ともいう)としては、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコール、例えば不飽和脂肪族アルコールを含むアルコール成分を用いることが好ましい。不飽和脂肪族アルコール中の炭素−炭素不飽和結合の部分は、前記グラフトポリマー中では、セグメント(A2)との結合部分となることができ、その場合、該不飽和結合は、飽和結合となる。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコール(不飽和脂肪族アルコール)としては、アリルアルコール等が挙げられる。
その他のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。前記アルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セグメント(A1)が前記グラフトポリマーの主鎖である場合、セグメント(A1)の原料モノマーであるカルボン酸成分には、上述のガラス転移温度及び貯蔵弾性率を有する樹脂を得る観点から、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸等の非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を含むことが好ましい。該炭素−炭素不飽和結合の部分は、本発明の熱転写シート用樹脂中では、セグメント(A2)との結合部分となることが好ましく、その場合、該不飽和結合は、飽和結合となる。
なお、ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマーのうち、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する原料モノマーとして、不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸、不飽和脂肪族アルコールから選ばれる1種以上を含めばよいが、反応性の観点から、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸を含むことが好ましく、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸のみであることがより好ましい。
また、染料受容層に用いた場合の造膜性の観点から、セグメント(A1)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000、更に好ましくは3,000〜5,000である。
本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーを構成するセグメント(A2)は、付加重合性モノマー(a2)(以下、モノマー(a2)ともいう)に由来する構成単位からなる付加重合系樹脂からなるセグメントである。セグメント(A2)は、上述のとおり、グラフトポリマーにおける主鎖又は側鎖のいずれであってもよい。
付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)は、ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)とは相溶しにくいため、微細な相分離構造を形成し、その界面からの染料の浸透性が高まり、染料受容層の表面にインクシートとの親和性に乏しい部分が配向する。これにより、熱転写受像シートの染着性及び離型性が大きく向上するものと考えられる。
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)としては、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。
これらのなかでは、スチレン類及び(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、なかでも、芳香族基を有する付加重合性モノマーがより好ましく、スチレン、メチルスチレン、ベンジルメタクリレート及びベンジルアクリレートが更に好ましい。これらのなかでも、モノマーの原料価格、熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点からは、スチレンがより好ましい。
芳香族基を有する付加重合性モノマー(a2)を由来とする構成単位の含有量は、熱転写受像シートの離型性及び染着性の観点から、セグメント(A2)中、好ましくは55重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは実質的に100重量%である。
なお、本発明の熱転写受像シート用樹脂がグラフトポリマー(P1)を2種以上含有する場合、「各グラフトポリマー(P1)の非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量(モル%)」に「配合割合(%)」を乗じた数の合計を、当該非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量とする。
本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーが、セグメント(A1)及び(A2)のいずれを主鎖ないし側鎖とするかによって、好ましい製造方法が異なる。以下、セグメント(A1)が主鎖である場合のグラフトポリマー(P1)、及びセグメント(A2)が主鎖である場合のグラフトポリマー(P2)の好ましい製造方法についてそれぞれ説明する。
セグメント(A1)を主鎖とし、セグメント(A2)を側鎖とするグラフトポリマー(P1)は、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して、ポリエステル樹脂(a1)(以下、樹脂(a1)ともいう)を調製し、該ポリエステル樹脂(a1)の存在下、付加重合性モノマー(a2)を重合する方法によって得ることができる。その重合方法に制限はなく、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを直接混合して重合する方法、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを有機溶媒に溶解して重合する方法等が好ましく挙げられる。本発明の熱転写受像シート用樹脂は、下記工程(1)及び(2)を有する方法によって得ることが好ましい。
工程(1):前記ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程。
工程(2):前記工程(1)で得られた水性分散液に前記付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合して熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を得る工程。
樹脂(a1)は、好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂であり、前記ポリエステル樹脂からなるセグメント(A1)を構成するのに好ましいものである。
ここで、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、前記セグメント(A1)と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じである。
その他のアルコールとしては、前記セグメント(A1)の場合と同様である。アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じであり、フマル酸がより好ましい。
カルボン酸成分中、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量は、好ましくは4〜45モル%、より好ましくは10〜45モル%、より好ましくは15〜45モル%、更に好ましくは18〜43モル%である。
その他のカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じであり、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。カルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステルはシャープな分子量分布を有することが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、二酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられる。ポリエステルの合成におけるエステル化反応の反応効率の観点から、スズ触媒が好ましい。スズ触媒としては、酸化ジブチルスズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等が好ましく用いられる。
また、本発明においては、縮重合における不要なラジカル重合を防止するため、ラジカル重合禁止剤を用いることが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、4−t−ブチルカテコール等が好ましい。
ガラス転移温度、軟化点及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、染料受容層に用いた場合の造膜性の観点から、樹脂(a1)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000、更に好ましくは3,000〜5,000である。
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)は、前記の付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)の原料モノマーとして記載したものと同じである。付加重合性モノマー(a2)中、芳香族基を有する付加重合性モノマーの含有量は、好ましくは55重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは実質的に100重量%である。芳香族基を有する付加重合性モノマーとしては、スチレン、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレートが好ましい。これらの中でも、モノマーの原料価格、熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点から、スチレンがより好ましい。
工程(1)は、ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程である。
前記ポリエステル樹脂(a1)を分散させる水性媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水の含有量が50重量%以上の媒体である。環境安全性の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは実質的に100重量%である。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の、水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
より具体的には、例えば、撹拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた反応器を準備し、ケトン系溶媒に溶解したポリエステル樹脂(a1)に、中和剤等を加え、カルボキシル基をイオン化し(すでにイオン化されている場合は不要)、次いで水を加えて水相に転相する方法が挙げられ、水を加えた後にケトン系溶媒を留去して水相に転相することが好ましい。
ポリエステル樹脂(a1)のケトン系溶媒への溶解操作、及びその後の中和剤の添加は、通常ケトン系溶媒の沸点以下の温度で行う。用いる水としては、例えば、脱イオン水等が挙げられる。
工程(2)は、工程(1)で得られた水性分散液に前記付加重合性モノマー(a2)を添加し重合して、熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(以下、水性分散液(A)ともいう)を得る工程である。
まず、付加重合性モノマー(a2)をポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に添加する。添加量は、ポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)の重量比[ポリエステル樹脂(a1)/付加重合性モノマー(a2)]で、好ましくは60/40〜90/10、より好ましくは65/35〜90/10、より好ましくは75/25〜90/10、更に好ましくは85/15〜90/10である。
また、撹拌の効率の点から、更に水等を加えてもよい。
重合には、公知のラジカル重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて添加することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、過硫酸塩を用いることがより好ましい。
前記のポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)とを含有する混合液を加熱することで重合反応を進行させる。重合温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、過硫酸ナトリウムを用いる場合には、重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。
水性分散液(A)の固形分濃度は、樹脂粒子の分散性及び生産性の観点から、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜40重量%、更に好ましくは30〜40重量%である。
水性分散液(A)の25℃におけるpHは、水性分散液(A)の保存安定性の観点から、好ましくは5.0〜10.0、より好ましくは6.0〜9.0、更に好ましくは6.5〜9.0である。
セグメント(A2)を主鎖とし、セグメント(A1)を側鎖とし、該セグメント(A1)が、架橋剤により架橋されてなる架橋ポリエステルであるグラフトポリマー(P2)は、カルボキシ基を有する付加重合系樹脂存在下でポリエステル樹脂(a1)の原料モノマーを縮重合反応させる方法や、カルボキシ基を有する付加重合系樹脂とポリエステル樹脂(a1)を得たのち、縮合させる方法等によって得ることができる。いずれの方法を用いてもよいが、操作効率の観点から前者が好ましい。なかでも、下記工程(3)及び(4)を有する方法によって得ることが好ましく、更に工程(5)及び工程(6)を行うことで水性分散液を得ることがより好ましい。
工程(3):付加重合性モノマー(a2)とカルボキシ基を有するビニルモノマーとから、付加重合反応により、カルボキシ基を有する付加重合系樹脂を得る工程。
工程(4):前記のカルボキシ基を有する付加重合系樹脂とポリエステル樹脂(a1)の原料モノマーとを縮重合反応により、グラフトポリマーを得る工程。
工程(5):工程(4)で得られたグラフトポリマーを有機溶媒に溶解し、さらに中和剤を添加し、グラフトポリマーの溶液を得る工程。
工程(6):工程(5)で得られた溶液に水を添加して熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を得る工程。
工程(3)は、付加重合性モノマー(a2)とカルボキシ基を有するビニルモノマーとから、付加重合反応により、カルボキシ基を有する付加重合系樹脂を得る工程である。
本工程において、重合開始剤、架橋剤等を用いてもよく、ジブチルパーオキサイド等が好ましい。反応温度は、重合開始剤の種類にもよるが、付加重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜170℃である。
カルボキシ基を有するビニルモノマーの使用量は、ポリエステル樹脂(a1)への付加重合系樹脂の分散性と、付加重合反応及び縮重合反応の反応制御の観点から、前記のポリエステル樹脂(a1)の原料モノマーであるカルボン酸成分全量に対し、好ましくは1〜40モル%、より好ましくは5〜30モル%である。
前記のカルボキシ基を有する付加重合系樹脂とポリエステル樹脂(a1)の原料モノマーとを縮重合反応により、グラフトポリマーを得る工程である。好ましくは触媒の存在下で反応させ、反応温度は、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜240℃、さらに好ましくは175〜240℃である。
工程(3)の後に工程(4)を行う場合、工程(3)の際に、付加重合性モノマー(a2)とカルボキシ基を有するビニルモノマーのみを用いて反応を行い、工程(4)で樹脂(a1)の原料モノマーを混合するか、工程(3)の際に、付加重合性モノマー(a2)、カルボキシ基を有するビニルモノマー及び樹脂(a1)の原料モノマーを混合し、付加重合反応は起こるが、縮重合反応の生じにくい温度と圧力に調整して、工程(3)を行い、その後温度と圧力を縮重合反応に適する条件にすることで、工程(4)を行う。
工程(5)は、工程(4)で得られたグラフトポリマーを有機溶媒に溶解し、さらに中和剤を添加し、グラフトポリマーの溶液を得る工程である。
有機溶媒としては、前記グラフトポリマーの溶解性及び乾燥時の溶媒の揮発性の観点から、ケトン系溶媒、トルエンが好ましく、ケトン系溶媒がより好ましい。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。これらの中でも、前記グラフトポリマーの溶解性及び溶媒の留去の容易性の観点から、メチルエチルケトンが好ましい。
前記グラフトポリマーを有機溶媒に溶解する方法としては、前記グラフトポリマーと有機溶媒とを混合して、常温又は加温状態で撹拌して溶解させる方法が挙げられる。
中和剤としては、工程(1)で用いたものと同じ化合物を挙げることができ、アンモニア水が好ましい。これらの中和剤の使用量は、少なくとも前記グラフトポリマーの酸価を中和できる量であればよい。
中和剤の添加は、通常有機溶媒の1気圧での沸点以下の温度で行われる。
なお、工程(5)では、本発明の効果を損なわない範囲で、前記グラフトポリマー以外の樹脂を併用することもできる。
工程(6)は、工程(5)で得られた溶液に水を添加して熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(以下、水性分散液(B)ともいう)を得る工程である。
具体的には、例えば、撹拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管のついた反応器を準備し、工程(5)で得られた溶液に、水を加えて水相に転相する。好ましくは、水を加えた後、有機溶媒を留去して水相に転相する。また、ここで用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
用いられる水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
水性分散液の分散媒体としては、水を主成分とするもの、すなわち、水が50重量%以上のものが好ましい。環境性の観点から、媒体中の水の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは実質的に100重量%である。
オキサゾリン化合物としては、樹脂との架橋反応による架橋効果が効果的に発現しうる観点から、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましく用いられる。オキサゾリン基を含有する重合体は、例えば、オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合することによって得られる。必要に応じて、オキサゾリン基を有する重合性単量体と共重合可能な、オキサゾリン基を有しない重合性単量体との共重合によって得られる。
水性分散液において、オキサゾリン化合物は、樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、水性媒体中に分散又は溶解されたものとして含有されることが好ましい。
前記オキサゾリン化合物の含有量あるいは添加量は、樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、水性分散液(B)中の樹脂100重量部に対して、固形分として、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部である。
水性分散液(B)の固形分濃度は、樹脂粒子の分散性及び生産性の観点から、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜40重量%、更に好ましくは30〜40重量%である。
また、水性分散液(B)の25℃におけるpHは、樹脂分散液の保存安定性の観点から、好ましくは5.0〜10.0、より好ましくは6.0〜9.5、更に好ましくは7.0〜9.1である。
本発明の熱転写受像シートは、基材上に、前記熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する。
基材としては、例えば、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフイルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フイルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。また、前記基材を組み合わせた積層体も使用できる。
これらの基材の厚みは、例えば、10〜300μm程度のものを用いることができる。前記の如き基材には、染料受容層との密着力を向上する観点から、その表面にプライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
本発明の熱転写受像シートにおける染料受容層は、本発明の熱転写受像シート用樹脂を含有する。
染料受容層は、樹脂を有機溶媒に溶解して得られた塗工液形態、又は樹脂の各々を有機溶媒や水に分散させて得られた樹脂分散液を含む塗工液形態で用いて製造することができ、環境安全性等の観点から、後者が好ましく、下記の工程(7)〜(8)を行うことによって製造することがより好ましい。
工程(7):工程(2)又は工程(6)で得られた熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を含有する染料受容層用塗工液を調製する工程。
工程(8):工程(7)で得られた染料受容層用塗工液を用いて染料受容層を設ける工程。
工程(7)は、工程(2)又は工程(6)で得られた熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を含有する染料受容層用塗工液を調製する工程である。
染料受容層用塗工液は、造膜剤を含有することが好ましい。造膜剤としては、ブチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、ゼラチン等が挙げられる。染料受容層の強度及び離型性の観点から、ゼラチンが好ましい。これらの造膜剤の含有量は、染料受容層用塗工液中、樹脂100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部である。
造膜剤を均一に溶解させる観点から、予め造膜剤を水に溶解しておくことが好ましく、前記熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液と造膜剤の水溶液とを混合し、撹拌して塗工液を得ることが好ましい。好適に用いられる撹拌機としては、ボールミル等が挙げられる。造膜剤を溶解状態で均一に混合するために、撹拌温度は、好ましくは30〜60℃、より好ましくは40〜50℃である。
離型剤を均一に分散又は溶解するために、ボールミル等の撹拌機を用いることが好ましく、分散又は溶解する温度は20〜40℃が好ましい。
これらの他の樹脂は、樹脂の製造過程で、本発明の熱転写受像シート用樹脂とともに有機溶媒に溶解させることにより染料受容層用塗工液に含有させることもできる。また、樹脂分散液としてから、熱転写受像シート用樹脂の水性分散液へ添加して混合することにより染料受容層用塗工液に含有させることもできる。
工程(8)は、工程(7)で得られた染料受容層用塗工液を用いて染料受容層を設ける工程である。
本発明の熱転写受像シートにおける染料受容層は、基材の一方の面に塗工液を塗布及び乾燥して形成することによって得られ、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布することが好ましい。また、後述するように基材と染料受容層との間に中間層を有する場合は、基材の一方の面に中間層用塗工液及び染料受容層用塗工液を重層塗布及び乾燥して中間層及び染料受容層をそれぞれ設けることもできる。
形成される染料受容層の厚さは、通常1〜50μmであり、画質及び生産性の観点から、好ましくは3〜15μmである。また、乾燥後の固形分量としては、染料受容層1m2当たり、好ましくは3〜15gである。
本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シート(インクリボン)は、通常、紙やポリエステルフイルム上に昇華性染料を含む染料層、及び染料を受像して得られた画像上に転写される保護層等からなるラミネート層を設けたものであり、任意の転写シートをいずれも使用することができる。
本発明の熱転写受像シートに好適な昇華性染料としては、例えば、イエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系が挙げられる。
(ポリエステル樹脂(a1)a、e、fの製造)
表1に示すフマル酸を除くポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒としてジオクチル酸スズ(II)塩を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気下、235℃で5時間反応させ、更に減圧して、8.3kPaの圧力下で1時間反応した。次いで、210℃でフマル酸及び4−t−ブチルカテコールを加え、5時間反応させた後、減圧して、20kPaの圧力下にて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで反応させて、ポリエステル樹脂(a1)a、e、fを得た。
(ポリエステル樹脂(a1)b、dの製造)
表1に示す無水トリメリット酸を除くポリエステル樹脂の原料モノマー及びジオクチル酸スズ(II)塩を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気下、235℃にて常圧で6時間反応させた後、減圧して、8.0kPaの圧力下で1時間反応した。ついで、200℃まで冷却後、表1に示す無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで、8.0kPaにて反応させて、ポリエステル樹脂(a1)b、dを得た。
(グラフトポリマーcの製造:工程(3)及び(4))
表1に示すポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びイソフタル酸を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気下、160℃の温度で撹拌しつつ、表1に示すスチレン、アクリル酸及びジブチルパーオキサイドの混合物を滴下ロートより70ml/minの滴下速度にて時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、スチレンの除去を行った。その後、表1に示すジオクチル酸スズ(II)塩を加え、235℃にて常圧で6時間反応させた後、減圧して、8kPaの圧力下にて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで反応させて、グラフトポリマーcを得た。
[樹脂の軟化点]
フローテスター(株式会社島津製作所製、商品名:CFT−500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、商品名:Pyris 6 DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、ベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
測定溶媒を、エタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更したこと以外は、JIS K0070に従って測定した。
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、樹脂をテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業株式会社製、商品名:FP−200)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
溶解液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の数平均分子量は、予め作製した検量線に基づき算出した。検量線は、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン;2.63×103、2.06×104、1.02×105(重量平均分子量)、ジーエルサイエンス株式会社製の単分散ポリスチレン;2.10×103、7.00×103、5.04×104(重量平均分子量))を標準試料として用いて作成した。
測定装置:CO−8010(商品名、東ソー株式会社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(いずれも商品名、東ソー株式会社製)
(ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液の製造:工程(1)、及びグラフトポリマーの水性分散液の製造:工程(5)及び(6))
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器及び熱電対を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに、表2に示す種類及び配合量でポリエステル樹脂(a1)a〜b、d〜fを入れ(製造例9においては、表2に示す可塑剤も同時に入れ)、25℃でメチルエチルケトンに溶解させた。次いで、25%アンモニア水を添加して、撹拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下60℃でメチルエチルケトンを留去した。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液(i)及び(iii)〜(vii)、並びにグラフトポリマーcの水性分散液(ii)をそれぞれ得た。
[樹脂粒子の体積中位粒径(D50)]
レーザー回折型粒径測定機(株式会社堀場製作所製、商品名:LA−920)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定した。
赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製、商品名:FD−230)を用いて、樹脂分散液5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、樹脂分散液のウェットベースの水分(重量%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(重量%)=100−M
M:樹脂分散液のウェットベース水分(重量%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
W0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製、商品名:HM−20P)により、25℃で測定した。
(熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(I)〜(VI)の製造:工程(2))
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、撹拌器及び熱電対を装備した内容積2リットルの四つ口フラスコに、表3に示す種類及び配合量で水性分散液、脱イオン水、付加重合性モノマー(a2)であるスチレンを仕込み、30分間撹拌を行った。窒素気流下、過硫酸ナトリウムを加え、80℃で6時間反応させた。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、グラフトポリマー(P1)を含有する熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(I)〜(VI)を得た。なお、各材料の配合量は、得られる水性分散液中の熱転写受像シート用樹脂におけるポリエステル樹脂セグメント(A1)と付加重合系樹脂セグメント(A2)との重量比が表3に示すようになるようにして決定された。
(熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(VII)の製造:工程(6)の架橋工程)
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、撹拌器及び熱電対を装備した内容積2リットルの四つ口フラスコに、表3に示す配合量で水性分散液(ii)、脱イオン水、水溶性のオキサゾリン含有重合体(株式会社日本触媒製、商品名:エポクロスWS−700)を仕込み、撹拌下95℃で4時間反応させた。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、グラフトポリマー(P2)を含有する熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(VII)を得た。
(熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(VIII)の製造:架橋工程)
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、撹拌器及び熱電対を装備した内容積2リットルの四つ口フラスコに、表3に示す種類及び配合量で水性分散液(iii)、脱イオン水、水溶性のオキサゾリン含有重合体(エポクロスWS−700)を仕込み、撹拌下95℃で4時間反応させた。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、架橋ポリエステル樹脂を含有する熱転写受像シート用樹脂の水性分散液(VIII)を得た。
[メチルエチルケトン不溶分]
熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、商品名:FDU−2100)を用いて−10℃で9時間凍結乾燥させ、蓋付の遠沈管(遠沈管の重量:W1)に、凍結乾燥した樹脂を0.5g(W2)を秤量し、16gのメチルエチルケトンを添加後、ミックスローターで3時間以上攪拌した。次いで、遠心分離機(ドイツ、SIGMA Laborzentrifugen GmbH製、テーブルトップ高速冷却遠心機:3K30C、ローター:S12158、いずれも商品名)にて25000rpmで30分間遠心分離し、デカンテーションにより、メチルエチルケトン不溶分と可溶分とに分離後、メチルエチルケトン不溶分にさらにメチルエチルケトン12gを加え、同様に遠心分離及びデカンテーションを繰り返すことにより、メチルエチルケトン不溶分と可溶分とに分離した。遠沈管とともにメチルエチルケトン不溶分を80℃で12時間以上減圧乾燥させた後、重量(W3)を測定し、以下の式に従って、メチルエチルケトン不溶分を算出した。
メチルエチルケトン不溶分(%)={(W3−W1)/W2}×100
粘弾性測定装置(レオメーター)ARES型(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて測定を行った。直径25mmのパラレルプレートを使用して、以下のように作成した試料を用い、以下の測定条件で行った。
測定試料:熱転写受像シート用樹脂の水性分散液を、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、商品名:FDU−2100)を用いて−10℃で9時間凍結乾燥させ、得られた凍結乾燥後の樹脂を1.0gを秤量し、加圧成型器により直径25mm、厚さ2mmの円盤状に成型して測定試料とした。
測定装置の条件については下記の通り設定した。
角速度:6.28rad/s
測定温度:50〜200℃
昇温速度:2℃/分
歪み:0.1%
(熱転写受像シートの製造)
表4に示した組成及び配合量のゼラチンとイオン交換水を25℃で30分間撹拌した後、50℃で加熱混合し均一に溶解させた。次に、表4に示す組成及び配合量で、45℃で混合し染料受容層用塗工液A1〜H1を作製した。なお、染料受容層用塗工液の作製に用いた熱転写受像シート用樹脂の水性分散液は、固形分濃度を30重量%に調整し、25%アンモニア水溶液でpHを9.0に調整した。また、染料受容層の調製には、造膜剤として以下のゼラチン、離型剤として以下のポリエーテル変性シリコーンを用いた。
ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製、商品名:G0886K、粘度4.4mPa・s)
ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF−615A)
前記染料受容層用塗工液の各々を合成紙(ユポ・コーポレーション社製、商品名:YUPO FGS−250、厚さ250μm、坪量200g/m2)にワイヤーバーにより乾燥後に5.0g/m2になるように塗布し、5℃で1分間冷却した後、50℃で2分間乾燥させて熱転写受像シートを得た。
得られた熱転写受像シートの染着性、離型性、及びにじみについて、以下の方法で評価した。結果を表4に示す。
(染着性)
作製した熱転写受像シートに、市販の昇華型プリンタ(アルテック株式会社製、商品名、MEGAPIXEL III)を用いて黒(K)の階調パターンを印画し、高濃度印画(18階調目(L=0:最高濃度))での転写色濃度をグレタグ濃度計(GRETAG−MACBETH社製)で測定し、染着性を評価した。濃度の値が大きいほど、染着性に優れる。
作製した熱転写受像シートに25℃50%RH(相対湿度)環境下で、5×5cmの黒ベタを印画し、黒ベタ連続印画時のインクリボンと熱転写受像シートとの剥離音から、下記基準で離型性(熱融着性)を評価した。
AA:異音はなく、剥離できる。
A:わずかに異音があるが、剥離できる。
B:明らかな異音があるが、剥離できる。
C:熱融着しており、剥離が困難で画像に欠けが見られる。
D:熱融着しており、剥離できない。
幅1mm、長さ5cmの細線を印画し、60℃85%に設定した恒温恒湿器(エスペック株式会社製、商品名、PR−1KT)内で168時間放置した後、目視にて画像のにじみを評価した。
A:全く滲みが確認できない。
B:わずかに滲みが確認できる。
C:明らかに滲みが確認できる。
Claims (8)
- ポリエステルからなるセグメント(A1)、及び芳香族基を有する付加重合性モノマーを由来とする構成単位を70重量%以上含有する付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成され、メチルエチルケトン不溶分が50〜85重量%であるグラフトポリマーを含有し、下記条件で測定されたガラス転移温度が50〜80℃であり、下記条件で測定された200℃における貯蔵弾性率G’(200)に対する140℃における貯蔵弾性率G’(140)の比〔G’(140)/G’(200)〕が1.0〜10.0であり、G’(200)が2.0×104〜3.0×105Paである、熱転写受像シート用樹脂を含む染料受容層を有する熱転写受像シート。
ガラス転移温度:示差走査熱量計を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した樹脂を昇温速度10℃/分で昇温し、ベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度として求めた。
貯蔵弾性率(G’(200)及びG’(140)):粘弾性測定装置を用いて、樹脂の水性分散液を凍結乾燥させて得られた凍結乾燥後の樹脂1.0gを加圧成型して直径25mm、厚さ2mmの円盤状に成型した測定試料を用い、角速度:6.28rad/s、測定温度:50〜200℃、昇温速度:2℃/分、歪み:0.1%の条件で測定する。 - 140℃における貯蔵弾性率G’(140)が3.0×104〜3.5×105Paである、請求項1に記載の熱転写受像シート。
- セグメント(A1)とセグメント(A2)との重量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]が60/40〜90/10である、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート。
- 前記グラフトポリマーが、
セグメント(A1)が主鎖であり、セグメント(A2)が側鎖であるグラフトポリマー(P1)、又は
セグメント(A2)が主鎖であり、セグメント(A1)が側鎖であるグラフトポリマー(P2)
である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受像シート。 - グラフトポリマー(P1)を構成するセグメント(A1)の原料モノマーとして用いられるカルボン酸中、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量が4〜45モル%である、請求項4に記載の熱転写受像シート。
- グラフトポリマー(P2)の数平均分子量が3000〜8000であり、酸価が5〜25mgKOH/gである、請求項4に記載の熱転写受像シート。
- グラフトポリマー(P2)が、更にオキサゾリン基を有する化合物で架橋されてなる、請求項4又は6に記載の熱転写受像シート。
- セグメント(A1)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルである、請求項1〜7のいずれかに記載の熱転写受像シート。
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