JP5463134B2 - 熱転写受像シート - Google Patents

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Description

本発明は、熱転写受像シート及びその製造方法に関する。
昇華性染料を記録剤とし、これを基材に担持させた熱転写シートを用いて、昇華性染料で染着可能な熱転写受像シート上にカラー画像を形成する方法が知られている。これは加熱手段としてプリンターのサーマルヘッド等を使用し、加熱によって染料を受像シートに転写させてカラー画像を得るものである。このようにして形成された画像は、染料を用いることから非常に鮮明且つ透明性に優れており、中間色の再現性や階調性に優れることから、高品質の画像が期待できる。そのため、これらの性能を発揮するための熱転写受像シートが開発されている。
特許文献1には、得られた画像の退色性、転写濃度、感度及び剥離性の改善を目的として、セルロースパルプを主成分とするシート状支持体の少なくとも片面上に、断熱層、受容層が順次積層された感熱転写受像シートであって、断熱層が水溶性ポリマーと既発泡中空ポリマーとを含有し、受容層がビスフェノール骨格を含むポリカーボネート系ポリマーを固形物比率で30〜70質量%含有し、かつポリエステル系ポリマーを固形分比率で30〜70質量%含有する感熱転写受像シートが開示されている。
また、特許文献2には、染着性及び離型性の向上を目的として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有するアルコール成分と、脂環族カルボン酸を50モル%超含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルを含む樹脂と、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーンとを含有する熱転写受像シートの受容層用組成物が開示されている。
特開2008−6736号公報 特開2009−262337号公報
熱転写受像シートは、サーマルヘッドからの加熱によるインクリボンからの染料の染着により着色することにより、印刷が行われることから、加熱時のインクリボンと熱転写受像シートとが融着するという問題や、熱転写受像シートの染着状態が不良であると経時変化による印刷物の退色が生じるという問題があった。そのため、インクリボンとの融着を抑制する離型性、及び印刷物の退色を抑制する耐光性の優れた熱転写受像シートが望まれている。特許文献1及び2に開示された熱転写受像シートでは、離型性及び耐光性の両立という観点では不十分であった。
本発明は、離型性及び耐光性に優れた熱転写受像シート及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、離型性及び耐光性に影響する要因は、サーマルヘッドによる加熱時の染料受容層の状態にあると考えて検討を行った。その結果、特定のポリエステルを含む樹脂と、飽和脂肪族アルコールを含むアルコール成分と飽和脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分とを縮重合して得られる、特定範囲の融点を有する結晶性ポリエステルとを染料受容層に用いると、離型性及び耐光性が向上することを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]に関する。
[1]2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルを含む樹脂(A)、及び飽和脂肪族アルコールを70モル%以上含むアルコール成分と飽和脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むカルボン酸成分とを縮重合して得られる、融点が60〜150℃の結晶性ポリエステル(B)を含有する樹脂で構成された染料受容層を基材上に有する熱転写受像シート。
[2]下記の工程(1)〜(4)を有する、上記[1]に記載の熱転写受像シートの製造方法。
工程(1):前記樹脂(A)と前記結晶性ポリエステル(B)を有機溶媒に溶解し、更に塩基性化合物を添加し、溶液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた溶液に水を添加して樹脂分散液を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた樹脂分散液に造膜剤を混合して塗工液を調製する工程
工程(4):工程(3)で得られた塗工液を用いて基材上に染料受容層を設けて熱転写受像シートを得る工程
本発明によれば、離型性及び耐光性に優れた熱転写受像シート及びその製造方法を提供することができる。
本発明の熱転写受像シートは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルを含む樹脂(A)、及び飽和脂肪族アルコールを70モル%以上含むアルコール成分と飽和脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むカルボン酸成分とを縮重合して得られる、融点が60〜150℃である結晶性ポリエステル(B)を含有する樹脂で構成された染料受容層を基材上に有するものである。
以下、染料受容層、熱転写受像シート及びその製造方法について説明する。
[染料受容層]
本発明の熱転写受像シートを構成する染料受容層は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルを含む樹脂(A)「以下、単に樹脂(A)ともいう」、及び飽和脂肪族アルコールを70モル%以上含むアルコール成分と飽和脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むカルボン酸成分とを縮重合して得られる結晶性ポリエステル(B)「以下、単に結晶性ポリエステル(B)ともいう」を含有する樹脂からなり、優れた離型性と優れた耐光性を両立するものである。
本発明の熱転写受像シートが優れた離型性と優れた耐光性を両立する理由は定かではないが、次のように考えられる。
主として飽和脂肪族ジカルボン酸と飽和脂肪族アルコールから得られる「結晶性」のポリエステル(B)が、サーマルプリンター等を用いて熱エネルギーが加えられた際に結晶が融解し、染料受容層内部に染料が拡散、浸透した結果、耐光性が向上し、更に樹脂(A)は、いわゆるビスフェノールA骨格を有するポリエステルを含むため、その骨格由来と考えられる高い染着性を有するため、更に耐光性が良好となるものと考えられる。
樹脂(A)は、前記のような剛直な骨格のポリエステル構造を有するため、結晶が融解した状態の結晶性ポリエステル(B)を保持することができ、得られた受容層は離型性が良好となるものと考えられ、結晶性ポリエステル(B)も融点以下では結晶性を有するため、硬く、粘着性の低い樹脂となり、離型性が更に向上するものと考えられる。
本発明の染料受容層を構成する樹脂中の、樹脂(A)と結晶性ポリエステル(B)の重量比[樹脂(A)/結晶性ポリエステル(B)]は、熱転写受像シートの耐光性の観点から、好ましくは99/1〜50/50、より好ましくは97/3〜60/40、より好ましくは95/5〜70/30、更に好ましくは93/7〜85/15である。
熱転写受像シートの離型性の観点から、樹脂(A)及び結晶性ポリエステル(B)は、染料受容層を構成する樹脂中、合計で80重量%以上含有されることが好ましく、90重量%以上含有されることがより好ましく、実質100重量%を占めることが更に好ましい。
染料受容層を構成する樹脂は、熱転写受像シートの離型性を向上させる観点から、樹脂(A)は、架橋された樹脂であることが好ましく、後述するオキサゾリン基を有する化合物により架橋された樹脂であることがより好ましい。
(樹脂(A))
樹脂(A)は、原料モノマーとして2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル(以下、ポリエステル(A1)という)を含む樹脂である。
前記樹脂(A)としては、全てがポリエステル(A1)であってもよいが、熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステル(A1)と、ポリエステル(A1)以外の他の樹脂の少なくとも一部が結合した複合樹脂であることが好ましい。
−ポリエステル(A1)−
樹脂(A)を構成するポリエステル(A1)は、原料モノマーとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分を用いる。
ここで、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、具体的には式(I)で表される化合物が好ましい。
Figure 0005463134
一般式(I)において、R1O、R2Oはいずれもオキシアルキレン基であり、好ましくは、それぞれ独立に炭素数1〜4のオキシアルキレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基である。x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数に相当し、それぞれ正の数である。更に、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyの和の平均値は2〜7が好ましく、2〜5がより好ましく、2〜3が更に好ましい。
また、x個のR1O又はy個のR2Oは、各々同一であっても異なっていてもよいが、熱転写受像シートの耐光性及び中間層と染料受容層の密着性の観点から、同一であることが好ましい。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物としては、前記観点から、具体的には、R1O及びR2Oが同一であることが好ましく、オキシプロピレン基であることがより好ましい。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物においては、熱転写受像シートの離型性の観点から、前記プロピレンオキサイド付加物の含有量は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物中、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは実質的に100モル%である。他のオキシアルキレン基としては、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、オキシエチレン基、オキシトリメチレン基が好ましく、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、オキシエチレン基がより好ましい。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、熱転写受像シートの離型性及び耐光性の観点から、アルコール成分中に50モル%以上含有されるが、好ましくは70モル%以上含有され、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは実質100モル%含有される。なお、本発明において、アルキレンオキサイド付加物とは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンにオキシアルキレン基を付加したアルコール全体を意味するものである。
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物がアルコール成分中に50モル%以上であると、ポリエステル(A1)の全体にこの剛直であり染着性が高まる構造を効果的に付与することができるため、前記のように離型性及び耐光性が向上する。
ポリエステル(A1)の原料モノマーであるアルコール成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物とともにこれ以外の公知のアルコール成分を使用することができる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。前記アルコール成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ポリエステル(A1)の原料モノマーとしてのカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;アジピン酸、コハク酸や、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸類、デカリンジカルボン酸類等の脂環族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらの中でも、熱転写受像シートの耐光性の観点から、カルボン酸成分としては脂環族ジカルボン酸を用いることが好ましく、3価以上の多価カルボン酸を併用することがより好ましい。
3価以上の多価カルボン酸としては、安価で、反応制御が容易である観点から、トリメリット酸及びその酸無水物が好ましい。カルボン酸成分として3価以上の多価カルボン酸を使用する場合、その使用量は、熱転写受像シートの離型性及び耐光性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは0.1〜35モル%、より好ましくは15〜25モル%である。
前記カルボン酸成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カルボン酸成分とアルコール成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)に特に制限はないが、好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.8〜1.1である。
ポリエステル(A1)は、例えば、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じてエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステルはシャープな分子量分布を有することが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。
エステル化触媒としては、錫触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、2酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられるが、ポリエステル(A1)の合成におけるエステル化反応の反応効率の観点から、錫触媒が好ましい。錫触媒としては、酸化ジブチル錫、ジオクチル酸錫、これらの塩等が好ましく用いられる。
熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステル(A1)の軟化点は、好ましくは80〜165℃である。ガラス転移点は、好ましくは50〜85℃である。酸価は、好ましくは1〜35mgKOH/g、より好ましくは5〜35mgKOH/g、更に好ましくは10〜35mgKOH/gである。軟化点、ガラス転移点及び酸価は、いずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、染料受容層用分散液の造膜性の観点から、ポリエステルの数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。
尚、本発明において、ポリエステル(A1)は、前記範囲内において、実質的にその特性を損なわない程度に変性されていてもよい。変性されたポリエステル(A1)としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルが挙げられる。
−複合樹脂−
本発明においては、樹脂(A)として、前記ポリエステル(A1)と他の樹脂の少なくとも一部が結合した、複合樹脂が好ましく用いられる。
該複合樹脂としては、熱転写受像シートの離型性及び耐光性の観点から、ポリエステル(A1)と付加重合系樹脂(A2)の少なくとも一部が結合した複合樹脂であることがより好ましく、ポリエステル(A1)と付加重合系樹脂(A2)の少なくとも一部が、後述する両反応性モノマーを介して結合した複合樹脂であることが更に好ましい。
具体的には、(a)ポリエステル(A1)の原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂(A2)の原料モノマー、及び(c)カルボシキル基とエチレン性不飽和結合とを有する両反応性モノマー、を付加重合及び縮重合させることにより得られる複合樹脂が好ましく挙げられる。
本発明において、樹脂(A)中におけるポリエステル(A1)の含有量は、熱転写受像シートの離型性の観点から、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは30〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%、より好ましくは40〜75重量%、更に好ましくは50〜70重量%である。
(a)ポリエステル(A1)の原料モノマーとしては、前述の通りである。また、(b)付加重合系樹脂(A2)の原料モノマーとしては、スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有することが好ましい。スチレン誘導体としては、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等が挙げられる。(b)付加重合系樹脂の原料モノマーとしては、熱転写受像シートの離型性及びモノマーの原料価格の観点から、スチレンが好ましい。
スチレン又はスチレン誘導体の含有量は、熱転写受像シートの離型性及び樹脂の保存安定性の観点から、付加重合系樹脂の原料モノマー中、好ましくは55重量%以上、より好ましくは65重量%以上、更に好ましくは75重量%以上である。
スチレン又はスチレン誘導体以外の付加重合系樹脂の原料モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
なお、付加重合系樹脂の原料モノマーの付加重合には、公知の重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて使用してもよい。前記付加重合の際の温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、ジブチルパーオキサイド等の開始剤を用いる場合には、反応系内の粘度を下げ付加重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜170℃である。
(c)両反応性モノマーとは、前記(a)成分中のアルコール成分及び(b)成分の両方と反応し得る化合物であり、分子内に、カルボキシ基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物である。具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる。アクリル酸、メタアクリル酸の誘導体としては、クロトン酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、4−メチル−2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸等が挙げられる。このような両反応性モノマーを用いることにより、離型性に優れた熱転写受像シートが得られる。これにより、複合樹脂は、ポリエステル(A1)と付加重合系樹脂(A2)とが、その少なくとも一部で両反応性モノマーを介して結合する。
(c)両反応性モノマーの使用量は、ポリエステル(A1)への付加重合系樹脂(A2)の分散性と、付加重合反応及び縮重合反応の反応制御の観点から、前記の(a)ポリエステル(A1)の原料モノマーであるカルボン酸成分全量に対し、好ましくは1〜40モル%、より好ましくは5〜30モル%である。
樹脂の重合は、縮重合反応と付加重合反応を同一反応容器中で順次又は並行して行うことにより行われる。樹脂は、(c)両反応性モノマーを(b)付加重合系樹脂(A2)の原料モノマーと反応させ、該反応により得られた付加重合系樹脂(A2)に取り込まれた両反応性モノマー由来のカルボキシ基と、ポリエステル(A1)の原料モノマーのアルコール成分の末端ヒドロキシ基が反応することにより得られるものであることが好ましく、このような方法により得られるものであれば、付加重合反応と縮重合反応の開始、進行及び完結は、時間的に制限はなく、それぞれの反応に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させればよい。縮重合反応及び付加重合反応は、それぞれ前述の条件により行うことができる。
前記複合樹脂は、(1)(a)ポリエステル(A1)の原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂(A2)の原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸、及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる両反応性モノマー、を混合する工程、(2)主として付加重合反応により、両反応性モノマー由来のカルボキシ基を有する付加重合系樹脂(A2)を得る工程、及び(3)主として縮重合反応により、ポリエステル(A1)の原料モノマー及び前記カルボキシ基を有する付加重合系樹脂(A2)とを反応させる工程、を有する方法により得ることが好ましい。
なお、ここで「主として」とは、本発明の効果を阻害しない範囲において、同時にあるいは並行して他の反応が起こっていてもよいことを意味する。
工程(2)では主として付加重合反応が、工程(3)では主として縮重合反応が行われることが好ましい。
複合樹脂は、好ましくは、前記工程(2)の後、工程(3)を行う方法により得られる。
複合樹脂の製造方法は、より具体的には、まず、(b)付加重合系樹脂(A2)の原料モノマー、と(c)両反応性モノマーとを混合し、好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜170℃で主として付加重合反応させてカルボキシ基を有する付加重合系樹脂(A2)を得た後、(a)ポリエステル(A1)の原料モノマーを、好ましくは触媒を添加して、反応温度を、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜240℃、更に好ましくは175〜240℃に上昇させた後、主として縮重合反応によりポリエステルを形成させ、前記付加重合系樹脂(A2)のカルボキシ基と前記ポリエステルを反応させて行うことができる。(a)ポリエステル(A1)の原料モノマー、(b)付加重合系樹脂(A2)の原料モノマー及び(c)両反応性モノマーは最初に全て混合しておいてもよいし、また、例えば前記3価以上の多価カルボン酸又はその酸の無水物やアルキルエステル等を、付加重合及び縮重合反応の後に混合して、後から架橋させる方法をとってもよい。
本発明においては、(a)ポリエステル(A1)の原料モノマーの(b)付加重合系樹脂(A2)の原料モノマー及び(c)両反応性モノマーの両モノマーに対する重量比[(a)/((b)+(c))]は、熱転写受像シートの離型性を向上させる観点から、20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜80/20がより好ましく、40/60〜75/25が更に好ましく、50/50〜70/30がより更に好ましい。ポリエステル(A1)が付加重合系樹脂(A2)に対して多く存在する場合、ポリエステル(A1)中に付加重合系樹脂(A2)がより微細に、かつ均一に分散することができ好ましい。上記重量比は、ポリエステル(A1)と付加重合系樹脂(A2)との重量比に相当するものとする。
また、(b)付加重合系樹脂(A2)の原料モノマーの(c)両反応性モノマーに対する重量比[(b)/(c)]は、ポリエステル(A1)中における付加重合系樹脂(A2)の分散性と、反応の制御の観点から、80/20〜99/1であることが好ましく、89/11〜98/2がより好ましく、93/7〜97/3が更に好ましく、95/5〜97/3がより更に好ましい。
なお、ポリエステル(A1)と付加重合系樹脂(A2)の少なくとも一部が結合した複合樹脂は、本発明の効果を損しない範囲で他の樹脂を有していてもよい。他の樹脂としては、ポリエステル;ポリカーボネート;ポリメトキシスチレン、ポリエトキシスチレン、ポリt−ブトキシスチレン等のアルコキシスチレン誘導体;フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート等のフェノキシポリエチレングリコールアクリレート誘導体;フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシエトキシエチルメタクリレート等のフェノキシポリエチレングリコールメタクリレート誘導体;ポリヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらは単独重合体でも、他のモノマーとの共重合体であってもよい。これらの中でも、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、ポリエステル、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレートが好ましく用いられる。
熱転写受像シートの離型性の観点から、樹脂(A)の軟化点は、80〜165℃が好ましく、100〜150℃がより好ましい。実施例に記載の測定方法による吸熱の最大ピーク温度は、60〜150℃が好ましい。ガラス転移点は、50〜85℃が好ましい。酸価は、1〜35mgKOH/gが好ましく、5〜35mgKOH/gがより好ましく、10〜35mgKOH/gが更に好ましい。軟化点、吸熱の最大ピーク温度ガラス転移点及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、染料受容層用分散液の造膜性の観点から、樹脂(A)の数平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましく、2,000〜6,000がより好ましい。
(結晶性ポリエステル(B))
本発明に用いられる結晶性ポリエステル(B)は、飽和脂肪族アルコールを70モル%以上含むアルコール成分と飽和脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含む酸成分を縮重合して得られる、融点が60〜150℃の結晶性ポリエステルである。
ここで、結晶性とは、実施例に示す方法で測定されたポリエステルの軟化点と吸熱の最大ピーク温度(融点)との差が20℃以内であることをいう。
結晶性ポリエステル(B)と樹脂(A)は、特に樹脂(A)が前記複合樹脂であると両者は完全に相溶しないが、緻密に分散し合って、結晶性ポリエステル(B)が溶解状態であっても、樹脂(A)の強固な構造に保持されることで離型性も向上するものと考えられる。
結晶性ポリエステル(B)の原料モノマーのカルボン酸成分として用いられる飽和脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等が挙げられる。これらの中でも、熱転写受像シートの離型性及び耐光性の観点から、炭素数4〜18の直鎖アルキルジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12の直鎖アルキルジカルボン酸がより好ましく、セバシン酸が更に好ましい。
飽和脂肪族ジカルボン酸は、熱転写受像シートの離型性及び耐光性の観点から、カルボン酸成分中に70モル%以上含有されるが、好ましくは80モル%以上含有され、より好ましくは90モル%以上含有され、更に好ましくは実質100モル%含有される。
結晶性ポリエステル(B)の原料モノマーのアルコール成分として用いられる飽和脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール,1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等が挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜18の直鎖アルカンジオールが好ましく、炭素数4〜12の直鎖アルカンジオールがより好ましく、炭素数6〜10の直鎖アルカンジオールがより好ましく、1,9−ノナンジオールが更に好ましい。
前記直鎖アルカンジオールの水酸基は分子両端に存在することが好ましく、α,ω−直鎖アルカンジオールが好ましい。
飽和脂肪族アルコールは、熱転写受像シートの離型性及び耐光性の観点から、アルコール成分中に70モル%以上含有されるが、好ましくは90モル%以上、より好ましくは実質100モル%含有される。
結晶性ポリエステル(B)の原料モノマーであるカルボン酸成分及びアルコール成分は、本発明の効果を損なわない程度に前記樹脂(A)に用いたポリエステルの原料成分を用いてもよい。また、前記カルボン酸成分及びアルコール成分は、それぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記カルボン酸成分とアルコール成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)に特に制限はないが、0.9〜1が好ましい。
結晶性ポリエステル(B)の製造は、前記樹脂(A)のポリエステルの製造と同様に行えばよい。
熱転写受像シートの離型性及び耐光性の観点から、ポリエステルの軟化点は70〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。融点は、前述の通り60〜150℃であり、60〜120℃が好ましく、60〜100℃がより好ましく、60〜85度が更に好ましい。酸価は1〜35mgKOH/gが好ましく、5〜35mgKOH/gがより好ましく、10〜35mgKOH/gが更に好ましい。軟化点、融点及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、染料受容層用分散液の造膜性の観点から、ポリエステルの数平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、2,000〜10,000がより好ましく、2,000〜8,000がより好ましく、2,000〜6,000が更に好ましい。
(樹脂(A)及び結晶性ポリエステル(B)以外の樹脂)
前記樹脂(A)及び結晶性ポリエステル(B)以外の樹脂の具体例としては、塩化ビニル重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルアクリル共重合体、ポリウレタンが使用でき、熱転写受像シートの離型性の観点から、塩化ビニルアクリル共重合体が好ましい。
[熱転写受像シートの製造方法]
本発明の熱転写受像シートは、前記樹脂(A)及び前記結晶性ポリエステル(B)を有機溶媒に溶解して得られた塗工液、又は樹脂(A)及び結晶性ポリエステル(B)を有機溶媒や水に分散させて得られた樹脂分散液を含む塗工液を用いて製造することができる。環境性等の観点から、熱転写受像シートの製造には、樹脂分散液を含む塗工液を用いることが好ましく、下記工程(1)〜(4)を行うことによって製造することがより好ましい。
工程(1):前記樹脂(A)と前記結晶性ポリエステル(B)を有機溶媒に溶解し、更に塩基性化合物を添加し、溶液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた溶液に水を添加して樹脂分散液を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた樹脂分散液に造膜剤を混合して塗工液を調製する工程
工程(4):工程(3)で得られた塗工液を用いて基材上に染料受容層を設けて熱転写受像シートを得る工程
(工程(1))
工程(1)は、樹脂(A)と結晶性ポリエステル(B)を有機溶媒に溶解し、更に塩基性化合物を添加し、溶液を得る工程である。
両樹脂を溶解するための有機溶媒としては、両樹脂の溶解性及び乾燥時の溶媒の揮発性の観点から、ケトン系溶媒、トルエンが好ましく、ケトン系溶媒がより好ましい。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。これらの中でも、両樹脂の溶解性及び溶媒の留去の容易性の観点から、メチルエチルケトンが好ましい。
両樹脂を有機溶媒に溶解する方法としては、両樹脂と有機溶媒とを混合して、常温又は加温状態で攪拌して溶解させる方法が挙げられる。
塩基性化合物は、樹脂のカルボキシ基をイオン化し、次の工程で水を加えた後、水系に転相するために用いられる。
塩基性化合物としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、アリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、n−プロパノールアミン、ブタノールアミン、5−アミノ−4−オクタノール、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、ジグリコールアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等のアミン類等を挙げることができ、アンモニア水が好ましい。これらの中和剤の使用量は、少なくとも樹脂(A)及び(B)の酸価を中和できる量であればよい。
塩基性化合物の添加は、通常有機溶媒の1気圧での沸点以下の温度で行われる。
なお、工程(1)では、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂(A)及び結晶性ポリエステル(B)以外の樹脂を併用することもできる。
(工程(2))
工程(2)は、工程(1)で得られた溶液に水を添加して樹脂分散液を得る工程である。
具体的には、例えば、攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管のついた反応器を準備し、工程(1)で得られた樹脂及び塩基性化合物を含む溶液に、水を加えて水系に転相する。好ましくは、水を加えた後、有機溶媒を留去して水系に転相する。また、ここで用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
本工程で得られる樹脂分散液において、本発明の効果を損なわない範囲で、水以外の成分を含むことができる。
用いられる水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
樹脂分散液の分散媒体としては、水を主成分とするもの、すなわち、水が50%以上のものである。環境性の観点から、媒体中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%が更に好ましい。
樹脂分散液中の樹脂粒子は、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、その体積中位粒径(D50)が20〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは、50〜800nmであり、更に好ましくは80〜500nmである。ここで「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。その測定方法は実施例に示す通りである。
熱転写受像シートの離型性の観点から、樹脂分散液中の樹脂(以下、単に樹脂ともいう)の少なくとも一部を架橋する工程を有することが好ましく、オキサゾリン基を有する化合物(以下、「オキサゾリン化合物」ということがある)により架橋されていることがより好ましい。オキサゾリン化合物により架橋された樹脂は、水系媒体中で、前記樹脂粒子と前記オキサゾリン化合物とを混合して架橋反応させて製造することが好ましい。
オキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン基を複数含有するものが使用可能である。分子内にオキサゾリン基を複数含有する化合物としては、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス−2−オキサゾリン、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス−2−オキサゾリン等の2官能タイプ;オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合した多官能タイプ(重合体)が挙げられる。
オキサゾリン化合物としては、樹脂との架橋反応による架橋効果が効果的に発現しうる観点から、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましく用いられる。オキサゾリン基を含有する重合体は、例えば、オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合することによって得られる。必要に応じて、オキサゾリン基を有する重合性単量体と共重合可能な、オキサゾリン基を有しない重合性単量体との共重合によって得られる。
オキサゾリン基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが、工業的に入手しやすいため好ましい。
オキサゾリン基を有しない重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル及びその塩、(メタ)アクリル酸−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸塩;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン含有α,β−不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、ジビニルベンゼン等のα,β−不飽和芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
オキサゾリン基を含有する重合体は、その重量平均分子量は、樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、500〜2,000,000であることが好ましく、1,000〜1,000,000であることがより好ましい。
樹脂分散液において、オキサゾリン化合物は、樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、水性媒体中に分散又は溶解されたものとして含有されることが好ましい。
尚、オキサゾリン基を含有する重合体の一般的な市販品としては、日本触媒社製のエポクロスWSシリーズ(水溶性タイプ、主鎖アクリル)、Kシリーズ(エマルションタイプ、主鎖スチレン/アクリル)等が使用可能である。
前記オキサゾリン化合物の含有量あるいは添加量は、樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、樹脂分散液中、樹脂100重量部に対して、固形分として0.1〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。
樹脂にオキサゾリン化合物が適量添加され、かつ所定温度で混合することにより、樹脂分散液に分散している樹脂粒子の一部が架橋される。この時の温度は、60〜100℃であることが好ましく、より好ましくは70〜98℃である。前記温度に加熱して混合することで、樹脂の少なくとも一部がオキサゾリン化合物により適度に架橋される。オキサゾリン化合物による樹脂の架橋の存在は、架橋によって生成するアミド基の有無を分析することにより確認することができる。
こうして得られる樹脂分散液中の固形分のガラス転移点は、その保存安定性及び熱転写受像シートの耐光性の観点から、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜75℃である。また軟化点は、好ましくは80〜250℃、より好ましくは120〜220℃である。
前記樹脂分散液中の固形分濃度は、樹脂粒子の分散性及び生産性の観点から、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜40重量%、更に好ましくは30〜40重量%である。また、前記樹脂分散液の25℃におけるpHは、樹脂分散液の保存安定性の観点から、好ましくは5〜10、より好ましくは6〜9.5、更に好ましくは7〜9.1である。
(工程(3))
工程(3)は、工程(2)で得られた樹脂分散液に造膜剤を混合して塗工液を調製する工程である。
本工程で用いられる造膜剤としては、ブチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、ゼラチン等が挙げられ、受容層の強度及び離型性の観点から、ゼラチンが好ましい。
造膜剤は、塗工液中に、樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部含有する。
造膜剤を均一に溶解させる観点から、予め造膜剤を水に溶解しておくことが好ましく、前記分散液と造膜剤の水溶液を混合し、攪拌することが好ましい。好適に用いられる攪拌機としては、ボールミル等が挙げられる。造膜剤を溶解状態で均一に混合するために、攪拌温度は30〜60℃が好ましく、40〜50℃がより好ましい。
また、塗工液には、熱転写受像シートの離型性をより良好にする観点から、更に離型剤を含有させることが好ましい。離型剤としては、例えば、分散性あるいは水溶性の変性シリコーンオイル等を使用することができる。
離型剤は、塗工液中に、樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部含有することができる。
更に、塗工液には染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム等の顔料や充填剤を含有させてもよい。これらの顔料や充填剤は、本発明の熱転写受像シートの白色度の観点から、染料受容層用塗工液中に、樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部含有することが好ましい。なお、本発明の染料受容層用塗工液には、更に必要に応じて、例えば、触媒、硬化剤等他の添加剤を含有することもできる。
(工程(4))
工程(4)は、工程(3)で得られた塗工液を用いて基材上に染料受容層を設けて熱転写受像シートを得る工程である。
本発明の熱転写受像シートが有する染料受容層は、基材の一方の面(但し、後述の中間層を介していてもよい。)に工程(3)で得た塗工液を塗布及び乾燥して形成することによって得られる。例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布することが好ましい。
以上の如く形成される染料受容層の厚さは、一般には1〜50μmであり、画質及び生産性の観点から、好ましくは3〜15μmである。また、乾燥後の固形分量としては、染料受容層1m2当たり、好ましくは3〜15g、より好ましくは3〜10gである。
<熱転写受像シート>
本発明の熱転写受像シートは、基材上に染料受容層を有するものであるが、基材と染料受容層の間に中間層を有するものが好ましい。
中間層を用いることで、熱伝導率が適正化されるためか、熱転写時に染料の染着性が向上し、耐光性が向上するものと考えられる。
[基材]
基材としては、例えば合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフイルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フイルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。また、前記基材を組み合わせた積層体も使用できる。
これらの基材の厚みは、例えば、10〜300μm程度が一般的である。前記の如き基材には、染料受容層との密着力を向上する観点から、その表面にプライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
[中間層]
前記中間層は、中空粒子及び水溶性高分子を含有することが好ましい。
(中空粒子)
中間層に含有される中空粒子としては、少なくとも一部に空孔を有するポリマー粒子であれば、特に制限はない。例えば、(i)樹脂により形成された粒子隔壁内部に存在する水が、塗布乾燥後、粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空粒子、(ii)ブタン、ペンタン等の低沸点液体を樹脂で被覆した粒子を加熱することにより、粒子内部の低沸点液体が膨張して内部が中空となる中空粒子、(iii)前記(ii)をあらかじめ加熱発泡させた中空ポリマー粒子、(iv)樹脂粒子を形成する重合体に含まれる酸性基の少なくとも一部が中和されることによって形成される中空粒子、等が挙げられる。本発明においては熱転写受像シートの耐光性及び中間層と染料受容層の密着性の観点から、上記(i)又は(iii)の方法により得られるものが好ましく使用できる。
前記中空粒子を構成する材料については特に制限はなく、前記方法(i)〜(iv)に使用される種々の公知の材料、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル共重合体、それらの混合物等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体等がいずれも使用できるが、本発明においては、熱転写受像シートの耐光性及び中間層と染料受容層の密着性の観点から、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体等が好ましく、スチレン−アクリル共重合体がより好ましい。
前記中空粒子の形状は特に限定されず、球状はもちろん球状以外のいかなる形状のものであってもよいが、本発明においては、中間層と染料受容層の密着性の観点から、実質球状のものであることが好ましい。
また、中空粒子の体積中位粒径(D50)は、0.1〜5μmであり、中間層と染料受容層の密着性の観点からは、0.3〜3μmのものが好ましく、0.3〜1μmのものがより好ましい。この値は、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S-4800型)により測定することができる。
本発明においては、中空粒子としては、固形分濃度が好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%のものを用いる。
また、中空粒子としては、そのメチルエチルケトン(MEK)不溶分が70重量%以下であるものを使用することが好ましいが、熱転写受像シートの耐光性及び中間層と染料受容層の密着性の観点からは、MEK不溶分が10〜70重量%であるものがより好ましく、30〜70重量%であるものが更に好ましい。本発明において、「MEK不溶分」とは、25℃のMEK95重量部に対して、中空粒子2,000重量部を溶解させた場合の、中空粒子が有する不溶な中空粒子成分の重量割合で定義されるものである。
前記中空粒子のMEK不溶分は、例えば、これを構成する樹脂の架橋度を制御すること等により調整することができる。
本発明において、中空粒子は、水性媒体中の分散液として使用することが好ましく、好ましく使用できる市販の中空粒子として、例えば、日本ゼオン株式会社製の「Nipol MH8101」、JSR株式会社製の「SX8782(D)」等が挙げられる。
本発明における中間層においては、熱転写受像シートの耐光性及び中間層と染料受容層の密着性の観点から、上記中空粒子と水溶性高分子との重量比(中空粒子/水溶性高分子)は、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは40/60〜90/10、より好ましくは50/50〜90/10、更に好ましくは70/30〜90/10である。
(水溶性高分子)
水溶性高分子は、中空粒子を固定するバインダーとして用いられるもので、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、10〜30℃の室温付近に水溶液のゲル化温度を有するという熱特性の観点から、ゼラチンが好ましい。水溶性高分子の粘度は、熱転写受像シートの離型性及び造膜性の観点から、JIS K6503−2001で測定した粘度(60℃)が2.5〜6.0mPa・sであることが好ましく、3.0〜5.5mPa・sであることがより好ましい。
中間層における水溶性高分子の含有量は、当該中間層全体の1〜75重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることがより好ましい。
また、中間層に含まれる水溶性高分子は、アルデヒド類、エポキシ類、ビニルスルホン類、トリアジン類、カルボジイミド類等の架橋剤により架橋されていることが好ましい。
中間層には、その白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を含有することができる。これらの顔料や充填剤は、熱転写受像シートの白色度の観点から、中間層中に、水溶性高分子100重量部に対して好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部含有することができる。
中間層には、更に必要に応じて、グリコールエーテル類等の造膜助剤、離型剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
中間層は、熱転写受像シートの基材の少なくとも一方の面に、水溶性高分子及び必要に応じて用いられる各種添加剤を有機溶媒や水に分散あるいは溶解して、塗布し乾燥して形成することができる。
中間層の厚みは、クッション性、断熱性の観点から、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。また、乾燥後の固形分量としては、中間層1m2当り7〜70g/m2であることが好ましい。
中間層は、例えば、熱転写受像シートの基材の少なくとも一方の面に、ゼラチンを含む水溶性高分子、中空粒子及び必要に応じて用いられる添加剤等を水に溶解して、あるいは水に分散して得られた塗工液を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布し乾燥して形成することができる。
[転写シート]
前記の如き本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シート(インクリボン)は、通常、紙やポリエステルフイルム上に昇華性染料を含む染料層、及び染料を受像して得られた画像上に転写される保護層等からなるラミネート層を設けたものであり、従来公知の転写シートをいずれも使用することができる。
本発明の熱転写受像シートに対して好適に使用できる昇華性染料としては、例えばイエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系が挙げられる。
熱転写時の熱エネルギーの付与手段としては、従来公知の付与手段がいずれも使用でき、例えば、サーマルプリンター等の記録装置によって、記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって行うことが出来る。
以下に実施例等により、本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例等においては、各性状値は次の方法により測定、評価した。
[樹脂の酸価]
JIS K0070に従って測定する。但し、測定溶媒は、エタノールとエーテルの混合溶媒を、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
[樹脂の軟化点、吸熱の最大ピーク温度、融点、ガラス転移点]
(1)軟化点
フローテスター(株式会社島津製作所製、「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)樹脂(A)の吸熱の最大ピーク温度
示差走査熱量計(Parkin Elmer社製、「Pyris 6 DSC」)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料を速度10℃/分で昇温し、昇温過程で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度(吸熱の最大ピーク温度)を求めた。
(3)結晶性ポリエステル(B)の融点
示差走査熱量計(Parkin Elmer社製、「Pyris 6 DSC」)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料を速度10℃/分で昇温し、昇温過程で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度(吸熱の最大ピーク温度)を融点とした。
(4)ガラス転移点
示差走査熱量計(Parkin Elmer社製、「Pyris 6 DSC」)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とした。
[樹脂の数平均分子量]
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、結着樹脂をクロロホルムに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター[住友電気工業株式会社製、「FP−200」]を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
溶解液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製;2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス株式会社製;2.10×103、7.00×103、5.04×104)を標準試料として作成したものを用いた。
測定装置:CO−8010(東ソー株式会社製)
分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー株式会社製)
[樹脂粒子の体積中位粒径(D50)]
レーザー回折型粒径測定機(株式会社堀場製作所製、「LA−920」)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定した。
[樹脂分散液の固形分濃度]
赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製:FD−230)を用いて、分散液5gについて、乾燥温度150℃及び測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて、ウェットベース水分(重量%)を測定し、下記式に従って固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=100−M
M:ウェットベース水分(重量%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
[樹脂分散液のpH]
東亜ディーケーケー株式会社製のpHメーター「HM−20P」により、25℃で測定した。
製造例1(樹脂A-1(樹脂(A))の製造)
温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに、表1に示す配合量で、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を入れた。マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で攪拌しつつ、表1に示す配合量で、スチレン、アクリル酸及びジブチルパーオキサイドの混合物を滴下ロートより72ml/分の滴下速度にて1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、未反応のスチレン及びアクリル酸等の揮発性物質の除去を行った。その後、表1に示す配合量のジオクチル酸錫(II)塩を加え、230℃にて常圧(101.3kPa)で6時間反応後、8.0kPaにて1時間反応を行った。200℃まで冷却後、表1に示す配合量の無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、反応を行い、軟化点が131℃になったところで反応を終了し、樹脂A-1を得た。
Figure 0005463134
製造例2(ポリエステルB-1(結晶性ポリエステル(B))の製造)
温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに、表2に示す配合量で、1,9−ノナンジオール、セバシン酸及びジオクチル酸錫(II)塩を入れ、130℃で3時間反応させた後、160℃に昇温して10時間反応を行った。更に210℃に昇温し、1時間反応を行い、ポリエステルB-1を得た。
製造例3(ポリエステルB-2の製造)
温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積5Lの四つ口フラスコに、表2に示す配合量で、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、テレフタル酸及びジオクチル酸錫(II)塩を入れ、200℃で6時間反応させた後、210℃まで昇温して4時間反応を行った。更に減圧(8.3kPa)下で1時間反応を行い、ポリエステルB-2を得た。
製造例4(ポリエステルB-3の製造)
温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積5Lの四つ口フラスコに、表2に示す配合量で、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、フマル酸及びジオクチル酸錫(II)塩を入れ、130℃で8時間反応させた後、140℃に昇温して7時間反応を行った。更に200℃に昇温し、更に減圧(8.3kPa)下で1時間反応を行い、ポリエステルB-3を得た。
Figure 0005463134
製造例5〜7(樹脂分散液A〜Cの製造)
窒素導入管、還流冷却管、攪拌装置及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、表3に示す配合量で、樹脂A-1及びポリエステルB-1を入れ、50℃でメチルエチルケトン540gに溶解させ、25%アンモニア水を添加した(工程(1))。攪拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下、50℃でメチルエチルケトンを留去し、樹脂分散液A〜Cをそれぞれ得た(工程(2))。得られた樹脂分散液A〜Cの各々の組成、固形分濃度及びpH並びに樹脂粒子の体積中位粒径を表3に示す。
製造例8及び9(樹脂分散液D及びEの製造)
窒素導入管、還流冷却管、攪拌装置及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、表3に示す配合量で、樹脂A-1、及びポリエステルB-2又はB-3を入れ、80℃でメチルエチルケトン540gに溶解させ、25%アンモニア水を添加した。攪拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下、50℃でメチルエチルケトンを留去し、樹脂分散液D〜Fをそれぞれ得た。得られた樹脂分散液D及びEの各々の組成、固形分濃度及びpH並びに樹脂粒子の体積中位粒径を表3に示す。
製造例10(樹脂分散液Fの製造)
窒素導入管、還流冷却管、攪拌装置及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、表3に示す配合量で、樹脂A-1を入れ、25℃でメチルエチルケトン540gに溶解させ、25%アンモニア水を添加した。攪拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下、50℃でメチルエチルケトンを留去し、樹脂分散液Fを得た。得られた樹脂分散液Fの組成、固形分濃度及びpH並びに樹脂粒子の体積中位粒径を表3に示す。
製造例11(樹脂分散液Gの製造)
窒素導入管、還流冷却管、攪拌装置及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、表3に示す配合量で、樹脂A-1及びフタル酸ジフェニルを入れ、25℃でメチルエチルケトン540gに溶解させ、25%アンモニア水を添加した。攪拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下、50℃でメチルエチルケトンを留去し、樹脂分散液Gを得た。得られた樹脂分散液Gの組成、固形分濃度及びpH並びに樹脂粒子の体積中位粒径を表3に示す。
Figure 0005463134
製造例12〜18(熱転写受像シート用樹脂分散液H〜Nの製造)
表4に示す配合量で、それぞれ樹脂分散液A〜G、水溶性のオキサゾリン含有重合体(株式会社日本触媒製、「エポクロス(登録商標)WS−700」、オキサゾリン基含有重合体中のオキサゾリン基含有量:4.55mmol/g、数平均分子量:20,000、25%水溶液)を窒素導入管、還流冷却管、攪拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、攪拌下95℃で4時間反応させ、熱転写受像シート用樹脂分散液H〜Nをそれぞれ得た(工程(2))。得られた熱転写受像シート用樹脂分散液H〜Nの各々の組成、固形分濃度及びpH並びに樹脂粒子の体積中位粒径を表4に示す。
Figure 0005463134
以下の実施例及び比較例で得られた熱転写受像シートの離型性及び耐光性について、以下の様にして測定、評価した。
(離型性)
黒ベタ連続印画時のインクリボンと熱転写受像シートの剥離音から、下記基準に従って離型性を評価した。
A:異音はなく、剥離できる。
B:若干の異音があるが、剥離できる。
C:融着しており、剥離が困難である。
(耐光性)
下記条件のキセノンウェザーメーターを用いて、耐光性試験を行ない、色相変化量によって、耐候性を評価した。
・照射試験機:スガ試験機株式会社製「SX75」
・光源:キセノンランプ
・フィルター:内側=石英フィルター、外側=#275
・パネル温度:50℃
・槽内湿度:35〜50%RH
・照射強度:50(W/m2)、300〜400(nm)での測定値
・積算照度:10,000(kJ/m2)、300〜400(nm)での積算値
・色相変化量:光学濃度計(グレタグで測定)を用い、階調パターン印画物の黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B)の光学反射濃度を測定し、照射前の光学反射濃度が1.0近傍のステップについて、照射前後におけるL値を色彩色差計(グレタグマクベス社製)で測定し、下記式により、色相変化量を算出して、黒(K)+有彩色の各印画物の耐光性を評価した。色相変化量が小さい値ほど、耐光性が良好である。
なお、黒+有彩色の(各印画物の)耐光性とは、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B)の各色の色相変化を、合計した値である。
・色相変化量=[(a* 1−a* 22+(b* 1−b* 221/2
(照射前のL***値:L* 1、a* 1、b* 1
(照射後のL***値:L* 2、a* 2、b* 2
実施例1〜3及び比較例1〜4(熱転写受像シートの製造)
表5に示す組成及び配合量にて45℃で混合し、中間層塗工液を作製した。この塗工液を合成紙YUPO FGS−250(厚さ250μm、坪量200g/m2)にワイヤーバーにより乾燥後に20.0g/m2になるように塗布し、25℃5分で乾燥させて中間層塗工シートを得た。
表5に示す組成及び配合量にて25℃で混合し、染料受容層塗工液を作製した(工程(3))。この染料受容層塗工液の各々を前述の中間層塗工シートにワイヤーバーにより乾燥後に5.0g/m2になるように塗布し、50℃2分で乾燥させて熱転写受像シートを得た(工程(4))。この熱転写受像シートに市販の昇華型プリンタ(キヤノン株式会社製、SELPHY ES−2)を用いて各色(黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B))の階調パターンを印画し、耐光性を評価した。また、5×5cmの黒ベタを印画し、印画時のインクリボンとの離型性(熱融着性)を評価した。結果を表5に示す。
比較例5(熱転写受像シートの製造)
表5に示す組成、配合にて45℃で混合し中間層塗工液を作製した。この塗工液を合成紙YUPO FGS−250(厚さ250μm、坪量200g/m2)にワイヤーバーにより乾燥後に20.0g/m2になるように塗布し、25℃5分で乾燥させて中間層塗工シートを得た。
ワックス分散液(日本精蝋株式会社製、EMUSTAR−042X、マイクロクリスタリンワックス乳化物、不揮発分40%)を用いて、表5に示す組成、配合にて25℃で混合し染料受容層塗工液を作製した(工程(3))。この染料受容層塗工液の各々を前述の中間層塗工シートにワイヤーバーにより乾燥後に5.0g/m2になるように塗布し、50℃2分で乾燥させて熱転写受像シートを得た(工程(4))。この熱転写受像シートに前記の昇華型プリンタ(SELPHY ES−2)を用いて各色(K、Y、M、C、G、R、B)の階調パターンを印画し、耐光性を評価した。また、5×5cmの黒ベタを印画し、印画時のインクリボンとの離型性を評価した。結果を表5に示す。
Figure 0005463134
表5より、実施例で得られた本発明の熱転写受像シートは、比較例で得られた熱転写受像シートに比べて、離型性及び耐光性のいずれにも優れ、これらを両立できていることがわかる。なお、比較例4の様に、熱転写受像シートの染着状態を改善すべく、結晶性ポリエステル(B)の代わりにフタル酸ジフェニル(可塑剤)を用いて得られた樹脂分散液を利用した場合でも、実施例で得られた熱転写受像シートに比べて、耐光性が劣った。
本発明の熱転写受像シートは、離型性及び耐光性のいずれにも優れたものであることから、熱転写受像シートとして好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルを含む樹脂(A)、及び飽和脂肪族アルコールを70モル%以上含むアルコール成分と飽和脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むカルボン酸成分とを縮重合して得られる、融点が60〜150℃の結晶性ポリエステル(B)を含有する樹脂で構成された染料受容層を基材上に有する熱転写受像シート。
  2. 樹脂(A)が、(a)ポリエステルの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂の原料モノマー、及び(c)カルボキシ基とエチレン性不飽和結合とを有する両反応性モノマー、を付加重合及び縮重合させることにより得られる複合樹脂である、請求項1に記載の熱転写受像シート。
  3. 染料受容層を構成する樹脂が、樹脂(A)が架橋された樹脂である、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート。
  4. 樹脂(A)と結晶性ポリエステル(B)の重量比[樹脂(A)/結晶性ポリエステル(B)]が99/1〜50/50である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受像シート。
  5. 結晶性ポリエステル(B)の原料モノマーである飽和脂肪族ジカルボン酸が、炭素数4〜18の直鎖アルキルジカルボン酸である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写受像シート。
  6. 結晶性ポリエステル(B)の原料モノマーである飽和脂肪族アルコールが、炭素数4〜18の直鎖アルカンジオールである、請求項1〜5のいずれかに記載の熱転写受像シート。
  7. 結晶性ポリエステル(B)の数平均分子量が2,000〜10,000である、請求項1〜6のいずれかに記載の熱転写受像シート。
  8. 下記の工程(1)〜(4)を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の熱転写受像シートの製造方法。
    工程(1):前記樹脂(A)と前記結晶性ポリエステル(B)を有機溶媒に溶解し、更に塩基性化合物を添加し、溶液を得る工程
    工程(2):工程(1)で得られた溶液に水を添加して樹脂分散液を得る工程
    工程(3):工程(2)で得られた樹脂分散液に造膜剤を混合して塗工液を調製する工程
    工程(4):工程(3)で得られた塗工液を用いて基材上に染料受容層を設けて熱転写受像シートを得る工程
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