JP6174990B2 - 染料受容層形成用水性分散液 - Google Patents
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Description
上述のカスレを抑制し、画質を向上させ、保存時のにじみを抑制するという観点では、特許文献1及び2に記載された熱転写受像シートには、未だ改良の余地がある。
ゆえに、高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートが望まれている。
その結果、熱転写受像シートの染料受容層の形成材料として、特定の2種類の樹脂から構成された樹脂粒子を含有する染料受容層形成用水性分散液を用いることで、上記課題が解決し得ることを見出した。
〔1〕非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマー(A)と、数平均分子量が6000〜100000である結晶性ポリエステル(B)を含む、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂粒子を含有する、染料受容層形成用水性分散液。
〔2〕基材と染料受容層とを有する熱転写受像シートであって、染料受容層が、非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマー(A)と、数平均分子量が6000以上100000以下である結晶性ポリエステル(B)とを含有し、前記染料受容層中における樹脂成分のガラス転移温度が60℃以上である、熱転写受像シート。
〔3〕下記工程(1)及び(2)を有する、前記〔1〕に記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
工程(1):非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する非晶質ポリエステル(a1)と前記結晶性ポリエステル(B)を混合し、更に水性媒体と混合して、樹脂混合物の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた樹脂混合物の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合して、前記グラフトポリマー(A)と前記結晶性ポリエステル(B)を含む前記樹脂粒子を含有する水性分散液を得る工程
〔4〕下記工程(3)及び(4)を有する、熱転写受像シートの製造方法。
工程(3):前記〔1〕に記載の染料受容層形成用水性分散液を用いて基材上に塗布膜を形成する工程
工程(4):工程(3)で形成した塗布膜を40〜110℃で1〜10分間乾燥し、染料受容層を形成する工程
本発明の染料受容層形成用水性分散液(以下、単に「水性分散液」ともいう)は、非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマー(A)と、数平均分子量が6000以上100000以下である結晶性ポリエステル(B)を含む、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂粒子を含有する。
本発明の染料受容層形成用水性分散液を用いて得られた染料受容層には、非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)と付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)とを有するグラフトポリマー(A)と、数平均分子量が比較的大きい結晶性ポリエステル(B)を含む樹脂粒子を含んでいる。
印画時の低濃度領域においては、転写に用いられる熱が少ないが、本発明の結晶性ポリエステル(B)は結晶部分が融解するため、シートの表面が急激に柔軟になり、染料がすばやく拡散するため、カスレが抑制でき、高画質な画像が得られるものと考えられる。更には、グラフトポリマー(A)の付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)は結晶性ポリエステル(B)との相溶性に優れ、融解した結晶性ポリエステル(B)を保持するため、多色印刷によって繰り返し加熱されても、カスレを常に抑制し、高画質な画像が得られるものと考えられる。
また、印画物を高温高湿度環境で保存した場合も結晶性ポリエステル(B)やグラフトポリマー(A)の付加重合系樹脂セグメント(A2)等の疎水的な成分が湿度による染料の拡散を抑制し、分子量の比較的高い結晶性ポリエステル(B)とガラス転移温度の比較的高い非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)が高温での染料の拡散を抑制するため、印画物の保存性にも優れるものと考えられる。
本発明に用いられるグラフトポリマー(A)は、非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)(以下、「セグメント(A1)」ともいう)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)(以下、「セグメント(A2)」ともいう)から構成される。
当該グラフトポリマー(A)は、構成するセグメント(A1)及びセグメント(A2)のどちらが主鎖であってもよいが、セグメント(A1)が主鎖であり、セグメント(A2)が側鎖であるグラフトポリマー(A)であることが好ましい。
非晶質ポリエステルは、高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートを得る観点から、この結晶性指数が、0.6未満又は1.4を超え4以下であることが好ましく、より好ましくは0.6未満又は1.5以上4以下、更に好ましくは0.6未満又は1.5以上3以下、より更に好ましくは0.6未満又は1.5以上2以下である。結晶性指数は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。
当該質量比が55/45以上であれば、非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)が高温での染料の拡散を抑制することにより、印画物の保存性に優れる。一方、当該質量比が95/5以下であれば、付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)が多いため、結晶性ポリエステルとの相溶性に優れ、融解した結晶性ポリエステルを保持することにより、多色印刷によって繰り返し加熱されても、カスレを常に抑制し、高画質な画像が得られる。また、疎水的である付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)が多いため、当該セグメント(A2)が湿度による染料の拡散を抑制し、印画物の保存性に優れる。
当該観点から、当該質量比は、より好ましくは60/40〜92/8、更に好ましくは70/30〜90/10、より更に好ましくは73/27〜87/13、より更に好ましくは75/25〜85/15である。
グラフトポリマー(A)中における、セグメント(A1)及びセグメント(A2)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
上記グラフトポリマー(A)を構成するセグメント(A1)は、非晶質ポリエステルからなり、該グラフトポリマー(A)における主鎖であることが好ましい。
セグメント(A1)は非晶質ポリエステルからなるため、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得ることができる。以下、セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマー(以下、単に「セグメント(A1)の原料モノマー」ともいう)として用いられる、アルコール成分及びカルボン酸成分について詳述する。
セグメント(A1)中における、非晶質ポリエステルの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、具体的には下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
x及びyは、アルキレンオキサイドの付加モル数に相当し、それぞれ正の数である。さらに、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyとの和の平均値は、好ましくは2以上であり、また、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
また、x個のR1O又はy個のR2Oは、各々同一であっても異なっていてもよいが、熱転写受像シートの染着性及び熱転写受像シートに後述の断熱層を設けた場合、当該断熱層と染料受容層との密着性の観点から、同一であることが好ましく、どちらもプロピレンオキシ基であることがより好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、本発明において、アルキレンオキサイド付加物とは、ビスフェノールAにアルキレンオキシ基を付加した構造全体を意味するものである。
その他のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、飽和脂肪族アルコール、水素化ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2以上4以下)オキサイド付加物(平均付加モル数1以上16以下)、アリルアルコール等の非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する不飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。
これらの中でも、高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートを得る観点から、水素化ビスフェノールAが好ましい。
なお、これらのアルコール成分は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、水素化ビスフェノールA及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物との質量比〔水素化ビスフェノールA/ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物〕は、高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートを得る観点から、好ましくは10/90〜70/30、より好ましくは15/85〜60/40、更に好ましくは20/80〜50/50、より更に好ましくは20/80〜30/70である。
これらの中でも、高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートを得る観点から、芳香族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸がより好ましく、イソフタル酸が更に好ましい。
セグメント(A1)の原料モノマーであるカルボン酸成分中における、芳香族ジカルボン酸の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、また、好ましくは97質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
セグメント(A1)中に含まれるカルボキシ基の含有量は、セグメント(A1)中の酸基の総量に対して、好ましくは90モル%以上100モル%以下、より好ましくは95モル%以上100モル%以下、更に好ましくは98モル%以上100モル%以下である。
また、セグメント(A1)に含有される酸基としてスルホン酸を含む場合、当該スルホン酸基の含有量は、セグメント(A1)中の酸基の総量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下、より更に好ましくは実質的に0モル%である。スルホン酸基を多く含むと、水溶性が高くなりすぎて、側鎖セグメント(A2)のモノマーとの反応性が乏しくなる。また、染料との相互作用が弱くなり、熱転写受像シートの染着性及び高温高湿下での保存性が低下する傾向にある。
上記グラフトポリマー(A)を構成するセグメント(A2)は、付加重合系樹脂からなる。このセグメント(A2)は、付加重合性モノマー(a2)(以下、「モノマー(a2)」ともいう)に由来する構成単位から構成され、該グラフトポリマー(A)における側鎖であることが好ましい。
セグメント(A2)中における、付加重合系樹脂の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
これらの中でも、芳香族基を有する付加重合性モノマー、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、芳香族基を有する付加重合性モノマーと(メタ)アクリル酸エステルを併用することがより好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチル及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸2−フェノキシエチルがより好ましい。
なお、本発明において、例えば、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の双方を示す語として用いている。
上述のグラフトポリマー(A)の製造方法としては、上述のアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する非晶質ポリエステル(a1)を調製し、該非晶質ポリエステル(a1)の存在下、付加重合性モノマー(a2)を付加重合する方法が好ましい。
付加重合性モノマー(a2)の詳細は、前述したとおりである。
非晶質ポリエステル(a1)は、前記アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するポリエステル樹脂であり、前記セグメント(A1)を構成するのに好ましいものである。
なお、「非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合」は、原料モノマーとして用いる、前述の不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸及び不飽和脂肪族アルコールから選ばれる1種以上に由来するものである。これらのなかで、反応性の観点から、不飽和脂肪族カルボン酸及び不飽和脂環式カルボン酸が好ましく、不飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。
また、非晶質ポリエステル(a1)は、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するものであり、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコールを用いることができる。
その他のアルコールとしては、前記セグメント(A1)の場合と同様である。
これらのアルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、これらのアルコール成分の好適な構造、及び含有量は、前述のセグメント(A1)と同様である。
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じであり、フマル酸がより好ましい。
その他のカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。カルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、これらのカルボン酸成分の好適な構造、及び含有量は、前述のセグメント(A1)と同様である。
縮重合時の温度は、高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートを得る観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
当該製造において、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を加えて、不活性ガス雰囲気中にて、上記温度まで加熱した後、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を加えて、反応させることが、目的の構造のグラフトポリマー(A)を得る観点から好ましい。
エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、二酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられる。
なお、本発明において、樹脂の軟化点は、実施例に記載の方法により測定された値である。
なお、後述の付加重合性モノマー(a2)の種類や配合量を調整することで、樹脂(A)のガラス転移温度を上述の範囲となるように調整することができる。
本発明において、非晶質ポリエステル(a1)におけるポリエステル部分の含有量は、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、更に好ましくは85質量%以上100質量%以下、より更に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。
グラフトポリマー(A)の重合方法に制限はなく、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを直接混合して重合する方法、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを有機溶媒に溶解して重合する方法等が挙げられるが、後述の工程(1)及び(2)を有する方法によって得ることが好ましい。
本発明に係る染料受容層形成用水性分散液に含有される樹脂粒子は、上記のグラフトポリマー(A)と共に、数平均分子量が6000以上100000以下である結晶性ポリエステル(B)を含む。
結晶性ポリエステル(B)の数平均分子量が6000未満であると、高温において染料が過剰に拡散し、印画物の保存性が悪くなる。また、数平均分子量100000を超えると、転写に用いられる熱の少ない低濃度領域において結晶性ポリエステル(B)が十分に融解せず、染料の拡散が遅くなるため、カスレが生じ、画質が悪くなる。
これらの観点から、結晶性ポリエステル(B)の数平均分子量は、好ましくは7000以上、より好ましくは8000以上、更に好ましくは8500以上、より更に好ましくは9000以上であり、また、好ましくは50000以下、より好ましくは30000以下、更に好ましくは20000以下、より更に好ましくは15000以下である。
結晶性ポリエステルは、(B)は、高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートを得る観点から、0.8〜1.3のものがより好ましく、0.9〜1.2のものが更に好ましく、0.9〜1.1のものがより更に好ましい。
結晶性ポリエステル(B)の軟化点は、染料をすばやく拡散させ、カスレを抑制すると共に、高温での染料の過剰な拡散を抑制して印画物の保存性を向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上、より更に好ましくは80℃以上であり、また、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下、より更に好ましくは90℃以下である。
結晶性ポリエステル(B)の酸価は、水性分散液の保存性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、また、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下である。
結晶性ポリエステル(B)の原料モノマーであるアルコール成分は、染料をすばやく拡散させ、カスレを抑制すると共に、高温での染料の過剰な拡散を抑制して印画物の保存性を向上させる観点から、炭素数8以上16以下のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含有することがより好ましく、炭素数8以上16以下のα,ω−アルカンジオールを70モル%以上含有することがより好ましい。
かかる脂肪族ジオールの具体例としては、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール等が挙げられ、上記と同様の観点から、これらの中では、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましく、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールがより好ましく、1,12−ドデカンジオールが更に好ましい。
結晶性ポリエステル(B)の原料モノマーであるカルボン酸成分は、炭素数8以上16以下の脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含有することが好ましい。
この脂肪族ジカルボン酸は、染料をすばやく拡散させ、カスレを抑制すると共に、高温での染料の過剰な拡散を抑制して印画物の保存性を向上させる観点から、好ましくは炭素数9以上、より好ましくは炭素数10以上であり、また、好ましくは炭素数15以下であり、より好ましくは炭素数14以下であり、更に好ましくは炭素数12以下であり、より更に好ましくは炭素数11以下である。
なお、本発明において、カルボン酸成分に記載したカルボン酸には、ポリエステルを製造する際の原料として用いることができる、遊離酸、これらの酸の無水物、及び酸の炭素数1以上3以下のアルキル基を有するアルキルエステルを含む。
かかるジカルボン酸の具体例としては、好ましくはセバシン酸、ドデカン2酸、アジピン酸、コハク酸であり、より好ましくはセバシン酸、ドデカン2酸、アジピン酸であり、更に好ましくはセバシン酸である。
なお、この結晶性ポリエステル(B)の製造方法には特に制限はなく、公知の製造方法を適用することができる。
本発明の染料受容層形成用水性分散液は、前述のグラフトポリマー(A)と前述の結晶性ポリエステル(B)を含む、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂粒子を含有する。
ガラス転移温度が60℃未満であると、加熱により染料が過剰に拡散してカスレが生じ、画像が低画質なものとなる。高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートを得る観点から、樹脂粒子のガラス転移温度は、好ましくは62℃以上、より好ましくは64℃以上、更に好ましくは65℃以上、より更に好ましくは66℃以上であり、また、好ましくは90℃以下、より好ましくは82℃以下、更に好ましくは80℃以下、より更に好ましくは78℃以下である。
この樹脂粒子のガラス転移温度の測定方法は、実施例に記載のとおりである。
また、染料をすばやく拡散させることで画像濃度、すなわち染着性を向上させる観点からは、好ましくは55/45〜95/5、より好ましくは55/45〜90/10、更に好ましくは55/45〜80/20、より更に好ましくは55/45〜75/25、より更に好ましくは55/45〜70/30である。
樹脂粒子中における、グラフトポリマー(A)及び結晶性ポリエステル(B)の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
なお、本発明において、「体積中位粒径」とは、体積分率で測定した累積体積頻度が、粒径の小さい方から累積して50%になる粒径を意味し、その測定方法は、実施例に記載のとおりである。
これらの中でも、樹脂の物性に大きな影響を与えずに粒径を容易に調整する観点から、樹脂を水系媒体中で乳化する際の、分散エネルギー、活性剤の量や種類、温度、中和剤の量や種類、溶媒の量や種類を1つ以上変更することにより調整する方法が好ましく、樹脂を水系媒体中で乳化する際の分散エネルギーを変更することにより調整する方法がより好ましい。
なお、当該分散エネルギーの変更は、例えば、超音波ホモジナイザー等を用いて、当該超音波ホモジナイザーの運転条件(装置の出力、超音波の周波数、運転時間等)を調整することにより行うことが好ましい。
また、本発明の染料受容層形成用水性分散液は、熱転写受像シートの離型性を向上させ、にじみを抑制する観点から、離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
離型剤の含有量は、熱転写受像シートの離型性の向上、及びにじみの抑制の観点から、水性分散液中に含まれる樹脂成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上16質量部以下、より好ましくは2.5質量部以上14質量部以下、更に好ましくは5質量部以上12質量部以下である。
本発明の染料受容層形成用水性分散液は、水性分散液を用いて形成する染料受容層の強度を向上させる観点から、さらに造膜剤を含有してもよい。
造膜剤としては、例えば、ブチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、ゼラチン等が挙げられ、染料受容層の強度の向上、及び得られる熱転写受像シートの離型性の向上の観点から、ゼラチンが好ましい。
また、本発明の染料受容層形成用水性分散液は、染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン等の顔料や充填剤を含有することができ、更に必要に応じて、例えば、触媒、硬化剤等の他の添加剤を含有することもできる。
上記のその他の成分を含有する場合、染料受容層形成用水性分散液中におけるその他の含有量は、染料受容層形成用水性分散液中に含まれる樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
本発明の染料受容層形成用水性分散液において、前記樹脂粒子を分散させる水性媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水の含有量が50質量%以上の媒体である。環境安全性の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の、水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
本発明の染料受容層形成用水性分散液の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有する。
工程(1):非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する非晶質ポリエステル(a1)と前記結晶性ポリエステル(B)を混合し、更に水性媒体と混合して、樹脂混合物の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた樹脂混合物の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合して、前記グラフトポリマー(A)と前記結晶性ポリエステル(B)を含む前記樹脂粒子を含有する水性分散液を得る工程
次に、各工程について説明する。
工程(1)は、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する非晶質ポリエステル(a1)と前記結晶性ポリエステル(B)を混合し、更に水性媒体と混合して、樹脂混合物の水性分散液を得る工程である。
このように、予め非晶質ポリエステル(a1)と結晶性ポリエステル(B)を混合し、次いで水性媒体を混合することにより、グラフトポリマー(A)中に結晶性ポリエステル(B)由来の結晶が微細に分散した構造となるため、高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートを得ることができるものと考えられる。
次に、非晶質ポリエステル(a1)と結晶性ポリエステル(B)を混合して樹脂混合物を得る工程(樹脂混合工程)と、この樹脂混合物に水性媒体を混合して樹脂混合物の水性分散液(水性分散液の製造工程)を得る工程について、この順に説明する。
非晶質ポリエステル(a1)及び結晶性ポリエステル(B)の混合は、これら非晶質ポリエステル(a1)及び結晶性ポリエステル(B)を、必要に応じて界面活性剤と共にケトン系溶媒に混合し、溶解させて混合樹脂溶液とすることにより行うのが好ましい。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。非晶質ポリエステル(a1)及び結晶性ポリエステル(B)の溶解性及び溶媒の留去容易性の観点から、好ましくはメチルエチルケトンである。
なお、この混合樹脂溶液中には、連続相が水性媒体とならない程度に水性媒体が含まれていてもよい。この水性媒体としては、後述する水性分散液の製造工程で用いられる水性媒体が挙げられる。
樹脂混合物のケトン系溶媒への溶解操作は、通常、ケトン系溶媒の沸点以下の温度で行う。溶解操作時の温度は、非晶質ポリエステル(a1)及び結晶性ポリエステル(B)を有機媒体に十分に溶解させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
上記のようにして得られた樹脂混合物に水性媒体を混合することにより、樹脂混合物の水性分散液を好適に得ることができる。
ここで、樹脂混合物の水性分散液とは、連続相が水性媒体である分散液のことをいう。
前記水性媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水の含有量が50質量%以上の媒体である。環境安全性の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の、水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
中和剤の添加は、通常、ケトン系溶媒の沸点以下の温度で行う。中和剤の添加時の温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上であり、また、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
中和後における樹脂混合物の水性分散液の25℃におけるpHは、水性分散液の保存安定性の観点から、好ましくは6以上8以下、より好ましくは6.5以上7.5以下、更に好ましくは6.7以上7.3以下である。
工程(1)で得られた水性分散液の固形分濃度は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
工程(2)は、工程(1)で得られた樹脂混合物の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合して、前記グラフトポリマー(A)と前記結晶性ポリエステル(B)を含む前記樹脂粒子を含有する水性分散液を得る工程である。
まず、付加重合性モノマー(a2)を樹脂混合物の水性分散液に添加する。添加量は、高画質で印画物の保存性にも優れる熱転写受像シートを得る観点から、非晶質ポリエステル(a1)と付加重合性モノマー(a2)との質量比[非晶質ポリエステル(a1)/付加重合性モノマー(a2)]で、好ましくは60/40〜100/0であり、より好ましくは65/35〜95/5であり、更に好ましくは70/30〜90/10であり、更に好ましくは75/25〜90/10である。
また、撹拌効率の観点から、更に水等を加えてもよい。
この重合の際、付加重合性モノマー(a2)は、樹脂混合物中の非晶質ポリエステル(a1)及び結晶性ポリエステル(B)のうち、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する非晶質ポリエステル(a1)に選択的に結合する。
前記の樹脂混合物と付加重合性モノマー(a2)とを含有する混合液を加熱することで重合反応を進行させる。重合温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、過硫酸ナトリウムを用いる場合には、重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。同様の観点から、反応時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、また、好ましくは10時間以下、より好ましくは8時間以下である。
また、前記ポリエステル系樹脂粒子の水性分散液の25℃におけるpHは、ポリエステル系樹脂粒子の水性分散液の保存安定性の観点から、好ましくは5以上10以下、より好ましくは6以上9以下、更に好ましくは7以上9以下である。
本発明の熱転写受像シートは、基材と染料受容層とを有する熱転写受像シートであって、染料受容層が、非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマー(A)と、数平均分子量が6000以上100000以下である結晶性ポリエステル(B)とを含有し、前記染料受容層中における樹脂成分のガラス転移温度が60℃以上であるものである。
本発明の熱転写シートは、染着性の向上の観点から、上記基材と上記染料受容層との間に断熱層を有することが好ましい。
染料受容層の厚さは、特に制限はないが、画質及び生産性向上の観点から、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは3μm以上15μm以下である。
また、乾燥後の染料受容層1m2当たりの固形分量としては、上記と同様の観点から、好ましくは1g/m2以上10g/m2以下、より好ましくは2g/m2以上5g/m2以下である。
基材としては、例えば、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフィルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。
なお、これらの基材は、単独で又は上述の基材を組み合わせた積層体としても使用できる。
また、これらの基材の表面には、染料受容層や断熱層との密着力を向上させる観点から、プライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
本発明の熱転写シートは、クッション性及び断熱性を向上させて、染着性を向上させる観点から、上記基材と上記染料受容層との間に断熱層を有することが好ましい。
断熱層の厚みは、クッション性、断熱性の観点から、好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは20μm以上50μm以下である。
また、乾燥後の断熱層1m2当たりの固形分量としては、上記と同様の観点から、好ましくは7g/m2以上70g/m2以下、より好ましくは10g/m2以上50g/m2以下ある。
断熱層には、水溶性高分子及び中空粒子を含有することが好ましい。
水溶性高分子は、中空粒子を固定するバインダーとして用いられるものであり、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、10℃以上40℃以下の室温付近に水溶液のゲル化温度を有するという熱特性の観点から、ゼラチンが好ましい。
水溶性高分子の粘度としては、受像シートの離型性及び造膜性の観点から、JIS K6503−2001で測定した粘度(60℃)が、好ましくは2.5mPa・s以上、より好ましくは3.0mPa・s以上であり、また、好ましくは6.0mPa・s以下、より好ましくは5.5mPa・s以下である。
断熱層における水溶性高分子の含有量は、当該断熱層全体の質量に対して、好ましくは1質量%以上75質量%以下、より好ましくは1質量%以上50質量%以下である。
断熱層に含有される中空粒子としては、少なくとも一部に空孔を有するポリマー粒子であれば、特に制限はない。
中空粒子を構成する材料としては、特に制限はないが、熱転写受像シートの染着性、及び熱転写受像シートにおける断熱層と染料受容層との密着性の観点から、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体が好ましく、スチレン−アクリル共重合体がより好ましい。
なお、本発明において「球状」とは、粒子投影像における粒子の長径と短径の比〔長径/短径〕が1.0以上1.5以下のものを意味し、1.0以上1.2以下であるものが好ましい。
なお、本発明において、中空粒子の体積中位粒径(D50)の値は、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、商品名:S−4800型)により測定した値である。
また、中空粒子の中空率は、好ましくは40%以上60%以下、より好ましくは45%以上55%以下である。
本発明において、「中空粒子のメチルエチルケトン不溶分」とは、25℃のメチルエチルケトン95質量部に対して、中空粒子2.0質量部を溶解させた場合の中空粒子が有する不溶な中空粒子成分の質量割合で定義されるものである。
これらの顔料や充填剤を含有する場合の含有量は、熱転写受像シートの白色度を向上させる観点から、断熱層中の水溶性高分子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
また、断熱層には、更に必要に応じて、グリコールエーテル類等の造膜助剤、離型剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
本発明の熱転写受像シートは、下記工程(3)及び(4)を有する。
工程(3):前述の染料受容層形成用水性分散液を用いて基材上に塗布膜を形成する工程
工程(4):工程(3)で形成した塗布膜を40℃以上110℃以下で1分以上10分以下の間乾燥し、染料受容層を形成する工程
工程(3)は、前述の染料受容層形成用水性分散液を用いて基材上に塗布膜を形成する工程である。
本工程において、染料受容層形成用水性分散液を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により基材上に塗布することで塗布膜を形成することができる。
そして、調製した上記断熱層用塗工液を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により、基材上に塗布し乾燥して断熱層を形成することができる。この際の乾燥条件としては、20℃以上50℃以下で、1分間以上10分間以下で乾燥させることが好ましい。
工程(4)は、工程(3)で形成した塗布膜を40℃以上110℃以下で1分以上10分以下の間乾燥し、染料受容層を形成する工程である。
塗布膜を乾燥する温度は、造膜性を向上させ、ひび割れのない表面を有する染料受容層を形成する観点から、40℃以上、好ましくは42℃以上、より好ましくは45℃以上であり、また、同様の観点から、110℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。
また、塗布膜を上記温度で乾燥する時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは1.5分間以上、更に好ましくは1.8分間以上であり、また、好ましくは10分間以下、より好ましくは7.5分間以下、更に好ましくは5分間以下である。
本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シート(インクリボン)は、通常、紙やポリエステルフイルム上に昇華性染料を含む染料層、及び染料を受像して得られた画像上に転写される保護層等からなるラミネート層を設けたものであり、任意の転写シートをいずれも使用することができる。
本発明の熱転写受像シートに好適な昇華性染料としては、例えば、イエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系染料等;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系染料等;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系染料等が挙げられる。
[樹脂の軟化点]
株式会社島津製作所製のフローテスター「CFT−500D」を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
JIS K0070の測定溶媒を、エタノールとエーテルとの混合溶媒から、非晶質ポリエステル及びグラフトポリマーを測定する場合は、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更、結晶性ポリエステルを測定する場合は、クロロホルムに変更したこと以外は、JIS K0070に従って測定した。
Parkin Elmer社製の示差走査熱量計「Pyris 6 DSC」を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/分で昇温し、昇温過程で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度(吸熱の最大ピーク温度)以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
なお、水性分散液中の樹脂粒子のガラス転移温度は、調製した水性分散液を凍結乾燥によって溶媒を除去した後に、上記方法に基づき測定した。
Parkin Elmer社製の示差走査熱量計「Pyris 6 DSC」を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料を速度10℃/分で昇温し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計「Q−100」を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、測定用サンプルを調製した。その後、昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度を融点とし、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。また、軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(℃))により、結晶性指数を求め、結晶性指数が0.6〜1.4のものを結晶性、それ以外を非晶質とした。
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmの住友電気工業株式会社製のフッ素樹脂フィルター「FP−200」を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
溶解液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の数平均分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。検量線は、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン;2.63×103、2.06×104、1.02×105(重量平均分子量)、ジーエルサイエンス株式会社製の単分散ポリスチレン;2.10×103、7.00×103、5.04×104(重量平均分子量))を標準試料として用いて作成した。
測定装置:東ソー株式会社製「CO−8010」
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(いずれも東ソー株式会社製)
株式会社堀場製作所製のレーザー回折型粒径測定機「LA−920」を用いて、測定用セルに各樹脂の水性分散液及び蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定した。
赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製、商品名:FD−230)を用いて、水性分散液5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、水性分散液の水分(質量%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−M
M:水性分散液の水分(質量%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定(乾燥)前の試料質量(初期試料質量)
W0:測定(乾燥)後の試料質量(絶対乾燥質量)
(非晶質ポリエステルa11〜a13の製造)
表1に示すフマル酸を除く非晶質ポリエステルの原料モノマー及び触媒を、温度計、撹拌装置、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、230℃まで5時間かけて昇温を行った。その後、230℃で5時間反応を行った後、180℃まで降温し、フマル酸を加えた。200℃まで3時間かけて昇温を行った後、200℃、8kPaにて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで反応させて、非晶質ポリエステルa11〜a13を得た。
得られた非晶質ポリエステルa11〜a13の物性等を表1に示す。
(複合樹脂4の製造)
表1に示すフマル酸を除く非晶質ポリエステルの原料モノマー及び触媒を、温度計、撹拌装置、窒素導入管、脱水管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、230℃にて6時間反応させ、8.3kPaにて1時間反応させた。その後、160℃に降温し、表1に示す付加重合性モノマー及び両反応性モノマーを滴下ロートにより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間保持した後、8.3kPaにて1時間保持した。さらに、フマル酸を添加し、200℃まで6時間かけて昇温、8.3kPaにて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで反応させて、複合樹脂4を得た。
得られた複合樹脂4の物性等を表1に示す。
(結晶性ポリエステルB1〜B4の製造)
表2に示す結晶性ポリエステル(B)の原料モノマーを、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃まで昇温し、4時間反応させた。その後200℃で10時間反応させ、8.3kPaにて30分反応させた。常圧に戻した後、触媒(ジオクチル酸スズ(II)塩及び没食子酸1水和物)を加え常圧で30分反応させた後、200℃、8.3kPaにて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表2に示す温度に達するまで反応させて、結晶性ポリエステルB1〜B4を得た。
得られた結晶性ポリエステルB1〜B4の物性等を表2に示す。
(樹脂混合物の水性分散液(i)〜(xi)の製造:工程(1))
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、表3に示す種類及び配合で非晶質ポリエステル又は複合樹脂、及び結晶性ポリエステル(B)を入れ、70℃でメチルエチルケトンに溶解させた。溶解が確認できた後、50℃まで冷却し、次いで、48%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、撹拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下60℃でメチルエチルケトンを留去した。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、樹脂混合物の水性分散液(i)〜(xi)を得た。
得られた水性分散液(i)〜(xi)の物性を表3に示す。
(樹脂粒子を含有する水性分散液(I)〜(X)の製造:工程(2))
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、撹拌器及び熱電対を装備した内容積2リットルの四つ口フラスコに、表4に示す種類及び配合で樹脂混合物の水性分散液、脱イオン水、付加重合性モノマー(a2)であるスチレン、及び付加重合性モノマー(a2)であるフェノキシエチルメタクリレートを仕込み、30分間撹拌を行った。窒素気流下、過硫酸ナトリウムを加え、80℃で5時間反応させた。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、樹脂粒子を含有する水性分散液(I)〜(X)を得た。なお、各材料の配合量は、得られる樹脂粒子中のグラフトポリマー(A)を構成するポリエステル樹脂セグメント(A1)と付加重合系樹脂セグメント(A2)との質量比が表4に示すようになるように決定された。
得られた樹脂粒子を含有する水性分散液(I)〜(X)の物性を表4−1に示す。
(樹脂粒子を含有する水性分散液(XI)の製造)
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、撹拌器及び熱電対を装備した内容積2リットルの四つ口フラスコに、表4に示す配合量で、複合樹脂の水性分散液、脱イオン水、オキサゾリン化合物(株式会社日本触媒製、「エポクロス(登録商標)WS−700」、水溶性のオキサゾリン含有重合体、オキサゾリン基含有重合体中のオキサゾリン基含有量:4.55mmol/g、数平均分子量:20,000、25%水溶液)を入れ、撹拌下95℃で4時間反応させ、室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、樹脂粒子を含有する水性分散液(XI)を得た。
実施例1〜6及び比較例1〜6
(断熱層塗工シートの製造)
まず、水溶性高分子としてのゼラチン5.3gと脱イオン水47.5gとを25℃で30分間撹拌した後、50℃で加熱混合し均一に溶解させ、さらに、中空粒子として、スチレンアクリル共重合体47gを加えて、50℃で混合し、断熱層用塗工液を作製した。
この塗工液をスイーコ・インタナショナル社製のレジンコート紙(RC原紙坪量:226g/m2、RC原紙厚み:218μm、表ポリエチレン層:16g/m2、裏ポリエチレン層:26g/m2、表面下引き層:ゼラチン)にワイヤーバーにより乾燥後に20.0g/m2になるように塗布し、25℃で5分間、風乾させて、断熱層を形成した断熱層塗工シートを得た。
なお、断熱層用塗工液の調製に用いたスチレンアクリル共重合体及びゼラチンは、以下のとおりである。
・スチレンアクリル共重合体:
日本ゼオン株式会社製「Nipol MH8101」、体積中位粒径(D50)420nm、メチルエチルケトン不溶分50質量%、中空率50%、固形分濃度26.5質量%
・ゼラチン:
新田ゼラチン株式会社製「G0886K」、粘度4.4mPa・s
(JIS K6503−2001で測定した粘度(60℃))
表5に示す種類の樹脂粒子を含有する水性分散液50g、イオン交換水9.2g、及び離型剤として、ポリエーテル変性シリコーン1.25gを加え、25℃にて混合し染料受容層形成用水性分散液を作製した。
・ポリエーテル変性シリコーン:東レダウコーニング株式会社製「SF8410」
前記染料受容層形成用水性分散液の各々を上述の断熱層塗工シートの断熱層上にワイヤーバーにより乾燥後に3.5g/m2になるように塗布し、50℃で2分間乾燥させて、染料受容層を形成した熱転写受像シートを得た。
得られた熱転写受像シートについて、以下の方法により評価を行った。結果を表5に示す。
作製した熱転写受像シートに、前記昇華型プリンタを用いて、幅1mm、長さ5cmの細線を印画し、40℃、90%RH(相対湿度)に設定したエスペック株式会社製の恒温恒湿器「PR−1KT」内で168時間放置した後、顕微鏡を用いて目視にて、にじみの有無、及び細線の幅(太さ)を10ヶ所測定し、下記基準にて、印画物の保存性を評価した。
A:にじみがない。
B:にじみがわずかにあり、幅1mmの細線の太さが1.0倍を超えて1.1倍未満である。
C:にじみがわずかにあり、幅1mmの細線の太さが1.1倍以上1.2倍未満である。
D:にじみがあり、幅1mmの細線が1.2倍以上である。
作製した熱転写受像シートに5×5cmのグレーベタ(5階調目)を印画し、下記基準で画質を評価した。結果を表5に示す。
A:カスレが見られない。
B:カスレが印画面積の1/10未満
C:カスレが印画面積の1/10以上
作製した熱転写受像シートに、アルテック株式会社製の昇華型プリンタ「MEGAPIXEL III」を用いて黒(K)の階調パターンを印画し、高画像濃度印画(18階調目(L=0:最高濃度))での転写色濃度を、GRETAG−MACBETH社製のグレタグ濃度計で測定し、染着性を評価した。値が大きいほど、画像濃度が高く、優れる。
Claims (12)
- 非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマー(A)と、数平均分子量が6000以上100000以下である結晶性ポリエステル(B)を含む、ガラス転移温度が60℃以上の樹脂粒子を含有する、染料受容層形成用水性分散液。
- グラフトポリマー(A)と結晶性ポリエステル(B)との質量比[グラフトポリマー(A)/結晶性ポリエステル(B)]が、55/45〜95/5である、請求項1に記載の染料受容層形成用水性分散液。
- 結晶性ポリエステル(B)の融点が60℃以上90℃以下である、請求項1又は2に記載の染料受容層形成用水性分散液。
- 結晶性ポリエステル(B)の酸価が1mgKOH/g以上35mgKOH/g以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
- グラフトポリマー(A)を構成するセグメント(A1)とセグメント(A2)との質量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]が、55/45〜95/5である、請求項1〜4のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
- 前記セグメント(A2)が、スチレン由来の構成単位を40質量%以上100質量%以下含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
- 結晶性ポリエステル(B)が、炭素数8以上16以下のα,ω−アルカンジオールを70モル%以上含有するアルコール成分と炭素数8以上16以下の脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
- セグメント(A1)が、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルからなる、請求項1〜7のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液。
- 基材と染料受容層とを有する熱転写受像シートであって、染料受容層が、非晶質ポリエステルからなるセグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなるセグメント(A2)から構成されるグラフトポリマー(A)と、数平均分子量が6000以上100000以下である結晶性ポリエステル(B)とを含有し、前記染料受容層中における樹脂成分のガラス転移温度が60℃以上である、熱転写受像シート。
- 前記基材と前記染料受容層との間に断熱層を有する、請求項9に記載の熱転写受像シート。
- 下記工程(1)及び(2)を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液の製造方法。
工程(1):非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する非晶質ポリエステル(a1)と結晶性ポリエステル(B)を混合し、更に水性媒体と混合して、樹脂混合物の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた樹脂混合物の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合して、グラフトポリマー(A)と前記結晶性ポリエステル(B)を含む前記樹脂粒子を含有する水性分散液を得る工程 - 下記工程(3)及び(4)を有する、熱転写受像シートの製造方法。
工程(3):請求項1〜8のいずれかに記載の染料受容層形成用水性分散液を用いて基材上に塗布膜を形成する工程
工程(4):工程(3)で形成した塗布膜を40℃以上110℃以下で1分以上10分以下の間乾燥し、染料受容層を形成する工程
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