以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、同様の構成要素には同様の参照番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明による波長変換部材の構成を説明する。
図1は、本発明による波長変換部材の模式図である。
本発明による波長変換部材100は、蛍光体粒子110と、透光性物質120とを含む。図1では、蛍光体粒子110として1種の蛍光体を示す。本発明によれば、蛍光体粒子110間の空隙を透光性物質120が充填しており、波長変換部材100における光の拡散反射が抑制されるので、蛍光体粒子110の発光特性が光の拡散反射により損なわれることはない。その結果、波長変換部材100は、優れた発光特性を示す。
波長変換部材100は、蛍光体粒子110を30体積%以上70体積%以下含有する。波長変換部材100における蛍光体粒子110の含有量(密度)は、既存のそれに比べて高いので、波長変換部材100を小型化しても十分な発光強度が得られる。そのため、本発明の波長変換部材100を上述の用途(例えばLED等)に採用すれば、用途全体の小型化が可能となる。蛍光体粒子110の含有量の上限を70体積%としたのは、蛍光体粒子110の理論充填率が約70体積%であるためであり、これを超えて含有させることはできない。また、蛍光体粒子110の含有量が30体積%未満であれば、十分な発光強度が得られず、小型化に不向きである。上述の含有量は、アルキメデス法により測定できる。
また、本発明による波長変換部材100は、気孔を含有してもよいが、その気孔率は3%以下が好ましい。気孔率が3%を超えると、散乱防止の効果がなくなるとともに、透過率が低減する場合がある。気孔率は、簡易的に、波長変換部材100の表面または断面の画像から、面積比として見積もることができる。
蛍光体粒子110は、一次粒子の凝集体である二次粒子の形態を有する。このような二次粒子の平均粒径は、1μm以上20μm以下の範囲である。このような二次粒子の形態を有する蛍光体粒子110を採用することにより、上述の蛍光体粒子110の含有量を容易に達成し得る。
なお、本明細書における平均粒径は、レーザ散乱法において散乱特性が等価な球の直径として定義される。粒径分布において、ある粒径より大きな質量の総和が、全粉体のそれの50%を占める場合の粒径を平均粒径とする。具体的には、本発明においては、分散剤としてリン酸エステルを、溶媒としてエタノールを用い、これらに蛍光体粒子を分散させ、レーザ散乱法の測定装置(LASER PARICLE ANALYZER PAR−III、大塚電子株式会社)を使用して、粒径に対する体積換算に基づく粒径分布を測定した。体積換算に基づく粒径分布と重量換算に基づく粒径分布とは等しいので、体積換算に基づく粒径分布における50%に相当する粒径を平均粒径としている。平均粒径を求める手段については、上述以外にも多様な手段が開発されているが、測定値に若干の違いが生じることもあり得るが、平均粒径それ自体の意味および意義は明確であり、必ずしも上記手段に限定されないことを理解されたい。
本発明による波長変換部材100は、蛍光体粒子110が互いに接触した連結構造130を有する。透光性物質120は、連結構造130以外の空間を充填している。このような構造により、上述の高い蛍光体粒子110の含有量を達成するとともに、光の拡散反射を抑制できる。
蛍光体粒子110は、特に限定されないが、例えば、Si、Al、OおよびNの元素を含む無機化合物である。これらの元素を含む無機化合物は、発光特性に優れた蛍光体となることが知られている。
蛍光体粒子110は、より好ましくは、Euを付活したα−サイアロン、Ceを付活したα−サイアロン、Euを付活したβ−サイアロン、Ceを付活したβ−サイアロン、Euを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Ceを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)2Si5N8、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)Si2O2N2およびCeを付活したJEM相からなる群から少なくとも1つ選択される。
これらの蛍光体粒子110は、製造方法が確立されており、入手が容易であるとともに、発光特性、とりわけ、高エネルギーの励起源による照射時における発光特性にも優れる。例えば、Euを付活したα−サイアロンおよびCeを付活した(Ca、Sr)AlSiN3は、黄色発光する蛍光体として、Ceを付活したα−サイアロン、Ceを付活したβ−サイアロンおよびCeを付活したJEM相は、青色発光する蛍光体として、Euを付活した(Ca、Sr)AlSiN3およびEuを付活した(Ca、Sr、Ba)2Si5N8は、赤色発光する蛍光体として、Euを付活したβ−サイアロンは緑色発光する蛍光体として、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)Si2O2N2は、青緑色から黄色発光する蛍光体として知られている。
また、これらの蛍光体は、100nm以上500nm以下の波長を有する光(真空紫外線、紫外線または可視光)、電子線、X線、中性子線、あるいは、電場を励起源として、上記の各色の発光をすることが分かっている。
また、本発明による波長変換部材100の蛍光体粒子110として、上述の蛍光体を採用すれば、波長変換部材100に高エネルギーの励起光を照射し、波長変換部材100が高温になっても、発光強度が低下することはない。具体的には、波長変換部材100に紫外線または青色光の励起光を250℃で照射した際の発光強度は、室温におけるそれの70%以上を維持し得る。すなわち、本発明による波長変換部材100の温度が、励起光の照射によって250℃程度まで上昇したとしても、その発光特性には実質的に影響はない。したがって、本発明による波長変換部材100は、高温化により発光特性の低下が危惧される小型化にとりわけ有利である。
透光性物質120は、好ましくは、ガラスである。本明細書において、ガラスとは、ケイ酸塩を主成分とする透光性のあるガラスに限らず、ガラス状態となり、かつ、透光性のある物質を意図している。例えば、ケイ酸ガラス以外のガラスとして、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、透光性セラミックス等がある。ガラスは、熱安定性に優れるともに、極めて高い透光性を有するため好ましい。
また、透光性物質120は、好ましくは、SiO2である。SiO2は、上述のケイ酸塩を主成分とする石英ガラスであってもよいし、SiO2の結晶構造を有する水晶であってもよい。SiO2は、高い透光性ならびにゾルゲル法による容易な作製プロセスによりガラス化可能なため好ましい。
また、透光性物質120は、正ケイ酸四メチル(テトラメトキシシラン)および/または正ケイ酸四エチル(テトラエトキシシラン)を含む有機物を熱処理することによって得られる無機物質であってもよい。このような無機物質は、例えば、石英ガラス、水晶、ケイ酸塩を主成分とするガラスおよびその複合体である。これらは、作製プロセスが容易なため好ましい。
あるいは、透光性物質120は、耐熱性樹脂であってもよい。例示的には、耐熱性樹脂は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリカーボネート、SAN(スチレン系樹脂)、フッ素樹脂およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる群から選択される。これらの耐熱性樹脂は、高温(例えば、ポリイミドは250〜300℃)で安定であり、透光性に優れるため好ましい。
本発明による波長変換部材100における蛍光体粒子110と透光性物質120とは、上述の材料から適宜選択され得るが、波長変換部材100のより効果的な発光特性を実現するためには、蛍光体粒子110および透光性物質120の材料は、それらの屈折率差が0.6以下となるように選択され得る。屈折率差が0.6以下であれば、励起源(図示せず)および/または蛍光体粒子110からの光の波長変換部材100における散乱は、実装時の性能にはほとんど影響しないものとみなせる。このような蛍光体粒子110と透光性物質120との組み合わせは、例えば、Ca−α−サイアロン:Eu(屈折率:1.9)とシリカ(屈折率:1.45)、YAG(屈折率:1.8)とZnO(屈折率:1.95)、BaTiO3:Eu(屈折率:2.4)とZrO2(屈折率:2.4)等であるが、これらに限定されない。
波長変換部材100が波長変換する動作を説明する。
励起源(図示せず)が発する励起光のピーク波長が410nm以上470nm以下である場合、蛍光体粒子110として上記励起光によって550nm以上600nm未満のピーク波長を有する黄緑から橙赤色の光を発する蛍光体材料を選択できる。
励起源(図示せず)からの励起光(ここでは青色の光)が波長変換部材100に入射されると、蛍光体粒子110が励起光を黄緑から橙赤色の光に変換する。ついで、波長変換部材100は、励起源からの青色の光と、変換された黄緑から橙赤色の光とを出射する。この結果、波長変換部材100は、励起源からの励起光を、励起源からの青色の光と、変換された黄緑から橙赤色の光とを組み合わせて白色に変換する。
図2は、本発明による別の波長変換部材の模式図である。
図2には別の波長変換部材200および210を示す。図2(A)の別の波長変換部材200は、第1の蛍光体粒子220と第2の蛍光体粒子230との2種類の蛍光体を含む。第1の蛍光体粒子220と第2の蛍光体粒子230とは、上述の蛍光体粒子110と同様であるが、その組み合わせは、励起源の種類、波長、変換後の色等に応じて適宜選択できる。
例えば、励起源(図示せず)が発する励起光のピーク波長が410nm以上470nm以下である場合、第1の蛍光体粒子220として上記励起光によって550nm以上600nm未満のピーク波長を有する黄緑から橙赤色の光を発する蛍光体材料を、第2の蛍光体粒子230として上記励起光によって600nm以上680nm以下のピーク波長を有する赤色の光を発する蛍光体材料を選択できる。
このような組み合わせの波長変換部材200の波長変換する動作を説明する。励起源(図示せず)からの励起光(ここでは青色の光)が波長変換部材200に入射されると、第1の蛍光体粒子220が励起光を黄緑から橙赤色の光に変換し、第2の蛍光体粒子230が励起光を赤色の光に変換する。ついで、波長変換部材200は、励起源からの青色の光と、変換された赤色の光と、変換された黄緑から橙赤色の光とを出射する。この結果、波長変換部材200は、励起源からの励起光を、励起源からの青色の光と、変換された赤色の光と、変換された黄緑から橙赤色の光とを組み合わせて白色に変換する。当然のことながら、組み合わせは任意であり、これは一例に過ぎない。
なお、図2(A)では、2種類の蛍光体の組み合わせを示したが、蛍光体の組み合わせの種類は2種に限定されない。必要に応じて、3種以上を適宜組み合わせてもよい。
例えば、励起源(図示せず)が発する励起光のピーク波長が、300nm以上420nm以下である場合、第1の蛍光体粒子(図示せず)として上記励起光により420nmより長く500nm未満のピーク波長を有する青色の光を発する蛍光体材料を、第2の蛍光体粒子(図示せず)として上記励起光により500nm以上600nm未満のピーク波長を有する緑から黄緑色の光を発する蛍光体材料を、第3の蛍光体粒子(図示せず)として上記励起光により600nm以上680nm以下のピーク波長を有する赤色の光を発する蛍光体材料を選択できる。
このような組み合わせの波長変換部材(図示せず)の波長変換する動作を説明する。励起源からの励起光(ここでは紫外光)が波長変換部材に入射されると、第1の蛍光体粒子が励起光を青色の光に変換し、第2の蛍光体粒子が励起光を緑から黄緑色の光に変換し、第3の蛍光体粒子が励起光を赤色の光に変換する。ついで、波長変換部材は、変換された青色の光と、変換された緑から黄緑色の光と、変換された赤色の光とを出射する。この結果、波長変換部材は、励起源からの励起光を、変換された青色の光と、変換された緑から黄緑色の光と、変換された赤色の光とを組み合わせて白色に変換できる。
図2(B)の別の波長変換部材210は、第1の蛍光体粒子220と透光性物質120とを含む第1の波長変換部材240と、第2の蛍光体粒子230と透光性物質120とを含む第2の波長変換部材250とを含む。
第1の波長変換部材240および第2の波長変換部材250における、第1の蛍光体粒子220および第2の蛍光体粒子230は、図1を参照して蛍光体粒子110と同様であり、第1の波長変換部材240および第2の波長変換部材250は、それぞれ、図1を参照して説明した波長変換部材100と同様の特性を有する。すなわち、別の波長変換部材210に示すように、本発明による波長変換部材は、第1の波長変換部材240および第2の波長変換部材250の2層構造になっていてもよい。
第1の波長変換部材240および第2の波長変換部材250における第1の蛍光体粒子220および第2の蛍光体粒子230は、例えば、波長変換部材210において、第2の波長変換部材250側から励起光が入射され、第1の波長変換部材240が第2の波長変換部材250で変換された光を透過する場合、第1の波長変換部材240が発する光の波長が、第2の波長変換部材250が発する光の波長よりも短くなるように選択される。これは、第1の波長変換部材240が、第2の波長変換部材250が発する光を吸収することを避けるためである。
例えば、励起源(図示せず)が発する励起光のピーク波長が410nm以上470nm以下である場合、第1の蛍光体粒子220として上記励起光によって550nm以上600nm未満のピーク波長を有する黄緑から橙赤色の光を発する蛍光体材料を、第2の蛍光体粒子230として上記励起光によって600nm以上680nm以下のピーク波長を有する赤色の光を発する蛍光体材料を選択できる。
このような組み合わせの波長変換部材210において、第2の波長変換部材250側から励起光が入射される場合の波長変換部材210の波長変換する動作を説明する。励起源からの励起光(ここでは青色の光)が第2の波長変換部材250に入射されると、第2の蛍光体粒子230が励起光を赤色の光に変換するとともに、励起光の一部を透過させ、赤色の光と励起光とが第1の波長変換部材240に入射される。ついで、第1の蛍光体粒子220が励起光を黄緑から橙赤色の光に変換し、励起光の一部と、赤色の光と、黄緑から橙赤色の光とを出射する。この結果、波長変換部材210は、全体として、励起源からの青色の光と、変換された赤色の光と、変換された黄緑から橙赤色の光とを組み合わせて白色に変換する。
当然ながら、別の波長変換部材210は、2層構造に限定されず、3層以上の層構造を有していてもよい。この場合も、各層の波長変換部材が、互いが変換した光を吸収しないように層構造が形成され、このような層構造は当業者であれば容易に類推する。
図3は、本発明によるさらに別の波長変換部材の模式図である。
さらに別の波長変換部材300は、蛍光体粒子110と透光性物質120とを含む波長変換部材100に加えて、基板310をさらに含んでもよい。波長変換部材100、蛍光体粒子110および透光性物質120は、図1を参照して説明したとおりである。
基板310は、ガラス、シリカガラス、ITO等の透明基板またはミラー等の反射板である。本発明によるさらに別の波長変換部材300は、使用する材料を適宜選択することにより、透光性物質120と基板310との密着性および熱的安定性を向上させることができるため、波長変換部材100が基板310から剥離し、脱落することはない。また、本発明によるさらに別の波長変換部材300のように基板310を有することにより、搬送時の取り扱いが簡便になり、上述の用途への実装が容易となる。
なお、本発明による波長変換部材は、図2および図3の構成を適宜組み合わせてもよい。
上述してきたように、本発明による波長変換部材は、蛍光体粒子と透光性物質とを含み、蛍光体粒子の含有量は30体積%以上70体積%以下である。透光性物質により波長変換部材における光の拡散反射が抑制されるので、本発明による波長変換部材は、蛍光体粒子の優れた発光特性を発揮できる。また、上述の蛍光体粒子の含有量は、既存のそれに比べて十分高く、波長変換部材の小型化に極めて有利である。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明による波長変換部材を製造する方法を説明する。
図4は、本発明による波長変換部材を製造する工程を示すフローチャートである。
工程ごとに詳述する。
ステップS410:蛍光体粒子の集合体の空隙に液状物質を充填する。
蛍光体粒子は、実施の形態1で説明した蛍光体粒子110と同様であるため、説明を省略する。蛍光体粒子の集合体の形状は特に問わないが、蛍光体粒子の集合体における蛍光体粒子の含有量は、好ましくは、30体積%以上70体積%以下である。これにより、得られる波長変換部材の発光特性を向上させるとともに、小型化を有利にする。
液状物質は、少なくとも熱処理または脱水・環化処理により透光性を有する固体化合物になる任意の材料を含む。このような液状物質は、加熱等の熱処理により透光性を有するガラスまたはSiO2になる任意の材料である。好ましくは、液状物質は、少なくともケイ素を含有する材料である。これにより、液状物質は、ケイ酸塩を主成分とするガラス、あるいは、SiO2の固体化合物に変換され得る。このような少なくともケイ素を含有する液状物質は、より好ましくは、正ケイ酸四メチル(テトラメトキシシラン)および/または正ケイ酸四エチル(テトラエトキシシラン)を含む有機物であり、これらは、入手および取り扱いが容易であるとともに、ケイ酸塩を主成分とするガラス、あるいは、SiO2となることが知られている。
あるいは、液状物質は、熱処理または脱水・環化により透光性を有する耐熱性樹脂の前駆体を含んでもよい。耐熱性樹脂の前駆体は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリカーボネート、SAN(スチレン系樹脂)、フッ素樹脂およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなる群から選択される耐熱性樹脂になる任意の物質である。
なお、液状物質に、適宜、蒸留水、塩酸等の酸、アルコールを加えてもよい。例えば、液状物質が正ケイ酸四メチル(テトラメトキシシラン)および/または正ケイ酸四エチル(テトラエトキシシラン)を含む有機物である場合、液状物質に蒸留水および塩酸等の酸を加え、加水分解を促進させることができる。また、液状物質に低級アルコールなどの疎水性および親水性の両方を有するアルコールを加えることにより、疎水性を有する液状物質と蒸留水との混和を容易にさせることができる。
蛍光体粒子の集合体の空隙への液状物質の充填は、例えば、液状物質に蛍光体粒子の集合体を浸漬することによって、あるいは、液状物質を蛍光体粒子の集合体に塗布することによって、容易に達成される。
ステップS420:液状物質で充填された蛍光体粒子の集合体を処理し、液状物質を透光性物質である固体化合物に変換する。
蛍光体粒子の集合体の処理の1つは、熱処理である。熱処理には、電気加熱炉、ガス加熱炉、光加熱炉等の任意の加熱装置を用いることができる。熱処理条件は、液状物質によって異なるが、例えば、液状物質としてテトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランを含む有機物を用いた場合、熱処理条件は、大気中、700℃〜900℃の温度範囲で、2時間〜24時間である。この温度範囲および加熱時間の熱処理によって、ケイ酸塩を主成分とするガラス、あるいは、SiO2となる。
あるいは、蛍光体粒子の集合体の処理の1つは、熱処理または脱水・環化処理である。例えば、液状物質として耐熱性樹脂の前駆体を含む材料を用いた場合、熱処理または脱水・環化処理によって耐熱性樹脂の前駆体を耐熱性樹脂に変換できる。具体的には、耐熱性樹脂の前駆体の中でもポリイミドの前駆体、ポリアミド酸、の場合、例えば、少なくとも200℃の温度で2時間熱処理するか、または、アミン系化合物等の触媒を用いて、イミド化(環化)とともに、発生した水をカルボン酸無水物等の脱水剤により除去してもよい。
本発明の波長変換部材を製造する方法によれば、ステップS410により、蛍光体粒子の集合体の空隙に液状物質が充填されるので、最終的に得られる波長変換部材における気孔率が低下する。ステップS420により、液状物質は透光性物質である固体化合物に変換されるので、光の拡散反射が抑制される。この結果、発光特性に優れた波長変換部材が提供され得る。
本発明の波長変換部材を製造する方法は、図4のステップS410に先立って、蛍光体粒子の集合体を調製する工程を行ってもよい。これにより、蛍光体粒子の集合体の蛍光体粒子の高い含有量(45体積%以上70体積%以下)を確実にすることができる。
図5は、蛍光体粒子の集合体を調製する工程を示すフローチャートである。
ステップS510:蛍光体粒子を分散媒に分散させる。
蛍光体粒子は、図1を参照して説明した蛍光体粒子110と同様である。ここで、蛍光体粒子が有機結合剤で被覆されている場合、分散媒として非水溶媒に分散させることが望ましい。また、蛍光体粒子が有機結合剤で被覆されていない場合、分散媒として有機結合剤が含有された非水溶媒に分散させることが望ましい。分散媒は、水等の水溶媒であってもよいが、蛍光体粒子の分散性の観点から、非水溶媒が好ましい。
非水溶媒の中でも水酸基を有する有機溶媒であるアルコール類がより好ましい。これは、アルコール類は、蛍光体粒子の分散性を確実にすることができるためである。なお、汎用性、製造容易性の観点から、アルコール類は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチルセルソルブおよびエトキシエタノールからなる群から選択される。
また、分散媒として、有機結合剤が含有された/含有されていない非水溶媒とともに、ポリエチレン(PE)および/またはポリエチレンイミン(PEI)を含有させてもよい。これにより、溶液中での蛍光体粒子の分散性が向上する。超音波均一化装置を用いて、蛍光体粒子の分散性をさらに向上させてもよい。
有機結合剤は、蛍光体粒子同士を接着する、および/または、蛍光体粒子と基板とを接着するよう機能する任意の有機結合剤が採用されるが、汎用性、接着性能の観点から、ポリビニルブチラール(PVB)、澱粉、可溶性澱粉、α化澱粉、デキストリン、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、アラビアゴム、トラガカントゴム、ガッチゴム、カゼイン、カゼインソーダ、ブドウ糖、ゼラチン、小麦粉、大豆蛋白、ペプトン、精蜜、Na−カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、酢酸セルロース、リグニンスルホン酸ソーダ、リグニンスルホン酸カルシウム、Na−カルボキシルメチル澱粉、ヒドロキシルエチル澱粉、澱粉燐酸エステルソーダ、グリセリン、パルプ廃液、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ソーダ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレン酸化物、ポリビニルピロリドン、ビニールピロリドン−酢ビ共重合体、タンニン酸、尿素、シェラック、ロジン乳濁液、動植物油(大豆油、魚油、牛脂など)、流動パラフィン、ワックスエマルジョン(カルナウバろう、カルボろう、地ろうなど)、セレシン、重油、機械油、スピンドル油、エチルセルロース、アセチルセルロース、エステルガム、ポリビニルアセテート、クロマン樹脂、石油樹脂、フェノール樹脂、エチレンシリケート等が挙げられる。
蛍光体粒子を上述の分散媒に分散させると、有機結合剤で被覆されていない蛍光体粒子のそれぞれは有機結合剤で被覆された後、それら蛍光体粒子は、帯電し、溶液中で分散する。
ステップS520:電気泳動堆積法により蛍光体粒子を集合させ、蛍光体粒子の集合体を形成する。
上述の帯電し、被覆された蛍光体粒子が分散媒に分散した溶液に、カソード電極と、アノードカウンタ電極とを設け、電圧を印加する。ここで、カソード電極として、図3を参照して説明した、基板310が採用され得る。これにより、図3の基板310と一体型の波長変換部材300を得ることができる。なお、帯電した蛍光体粒子と基板との密着性を高めるため、基板310が導電性を有しない場合、基板310の表面に導電性ポリマーを付与することが望ましい。
このような導電性ポリマーは、ポリピロール、人工黒鉛、天然黒鉛、グラッシーカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ等のカーボン類、ポリアニリンクロロアニルをドープしたポリジメチルアミノスチレン、テトラシアノエチレンをドープしたポリビニルメシチレン、テトラシアノエチレンをドープしたポリビニルナフタレン、ハロゲンをドープした、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリビニルカルバゾール、テトラシアノエチレン、ポリビニルピジリン、テトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンをドープしたポリビニルイミダゾール、ハロゲンをドープしたポリアセチレン、HCl04をドープしたポリチオフェン等の電子導電性高分子類等が挙げられる。中でもポリピロールは、汎用性に優れている。基板310としてITO等の導電性基板を用いた場合には、上述の導電性ポリマーは不要である。なお、基板310の形状は、平板に限定されない。基板310は、曲率を有する面を有していてもよいし、コの字型のような形状であってもよい。
また、基板310の選択は重要である。例えば、最終的に得られる波長変換部材として、図1または図2に示されるような波長変換部材100、200、210を目的とする場合、上述のステップS420(図4)に続いて、基板310から波長変換部材100、200、210を剥離させる必要がある。このため、基板310は、波長変換部材100、200、210との密着性が低い方が好ましい。このような基板310は、基板310と上述の液状物質との濡れ性の程度によって選択される。液状物質に対して濡れ性が低い基板310を選択すれば、波長変換部材と基板310との密着性が低下するので、波長変換部材100、200、210のような自立膜状の波長変換部材を得ることができる。なお、濡れ性の程度は、簡易的には基板310上の液状物質の様子から判断してもよいし、接触角(例えば、角度70°以上で濡れ性が低い)から判断してもよい。波長変換部材100、200、210のような自立膜状の波長変換部材を得るに好ましい基板310は、例えば、ITOである。特に、ITOは、テトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランを含む有機物に対して濡れ性が低いことが分かっており、良好な自立膜状の波長変換部材を得ることができる。
一方、最終的に得られる波長変換部材として、図3に示されるような基板310と一体型の波長変換部材300を目的とする場合、上述のステップS420(図4)後にも、基板310と波長変換部材100との密着性が高くある必要がある。このような基板310もまた、基板310と上述の液状物質との濡れ性の程度によって選択される。液状物質に対して濡れ性が高い基板310を選択すれば、波長変換部材と基板310との密着性が向上するので、波長変換部材100と基板310とが強固に密着した波長変換部材300を得ることができる。ここでもやはり、濡れ性の程度は、簡易的には基板310上の液状物質の様子から判断してもよいし、接触角(例えば、角度70°未満で濡れ性が高い)から判断してもよい。波長変換部材300を得るに好ましい基板310は、例えば、シリカガラス、ステンレスである。特に、シリカガラスは、テトラメトキシシランおよび/またはテトラエトキシシランを含む有機物に対して濡れ性が高いことが分かっており、基板310に良好に密着した波長変換部材300を得ることができる。
電気泳動堆積法で採用される電圧印加条件は、用いる蛍光体粒子によって異なるが、例えば、蛍光体粒子がEuを付活したCa−α−サイアロンである場合、5V〜100Vの電圧が印加される。溶液に上述の電圧が印加されると、カソード電極側(ここでは導電性ポリマーが付与された基板または導電性基板)に帯電し、被覆された蛍光体粒子が集合し、蛍光体粒子の集合体が形成される。
電圧印加条件を変化することによって、形成される蛍光体粒子の集合体の厚さおよび密度を制御できる。例えば、印加電圧が高いほど、得られる蛍光体粒子の集合体の密度は高くなり、電圧印加時間が長いほど、得られる蛍光体粒子の厚さは厚くなる。このような調整は、最終的に得られる波長変換部材の色味の制御に寄与する。
例えば、Euを付活したCa−α−サイアロンである蛍光体粒子110からなる波長変換部材に青色の光を照射し、Euを付活したCa−α−サイアロンによって変換された黄色の光と、波長変換部材を透過した青色の光との混合により白色を発する場合を例示する。ここで、波長変換部材の密度が低いまたは厚さが薄い場合、白色は、黄色の光の強度が青色の光の強度より低いため、青味がかった白色(昼光色)となる。一方、波長変換部材の密度が高いまたは厚さが厚い場合、白色は、黄色の光の強度が青色の光の強度より高いため、黄味がかった白色(昼白色)となる。電圧印加条件を変化することにより、蛍光体粒子の集合体の厚さおよび密度、すなわち、最終的な波長変換部材の厚さおよび含有される蛍光体粒子の含有量の制御が容易に達成されるので、上述の微妙な色味の調整が可能である。
本発明によれば、蛍光体粒子の集合体を得るために、電気泳動堆積法を採用するので、蛍光体粒子を均一かつ高密度に集合させることができる。また、蛍光体粒子は有機結合剤により被覆されているので、集合した蛍光体粒子の密着性は高い。このようにして得られた蛍光体粒子の集合体の蛍光体粒子の含有量は、45体積%以上70体積%以下である。
S530:蛍光体粒子の集合体を乾燥させる。
ステップS520により、導電性ポリマーが付与された基板または導電性基板上に、有機結合剤で被覆された蛍光体粒子の集合体が得られる。この蛍光体粒子の集合体は、溶液中で形成されているので、空隙に上述の溶液を含有し得る。乾燥により、この溶液を除去してもよい。この場合の乾燥は、ヒータ、熱処理炉等の任意の加熱装置を用いてもよいし、自然乾燥でもよい。
より好ましくは、蛍光体粒子の集合体を熱処理し、これにより有機結合剤(および導電性ポリマー)を除去する。この場合の熱処理条件は、用いた有機結合剤(および導電性ポリマー)により異なるが、例えば、有機結合剤としてPVBを、導電性ポリマーとしてポリピロールを用いた場合、熱処理条件は、大気中、少なくとも400℃の温度で、少なくとも2時間である。これによりPVBおよびポリピロールが確実に除去される。
このようにして、蛍光体粒子および/または透光性物質の屈折率および/または透過率と異なる屈折率および/または透過率を有する有機結合剤(および導電性ポリマー)が除去されるので、有機結合剤(および導電性ポリマー)における光の拡散反射を抑制できる。その結果、最終的に得られる波長変換部材の発光特性は向上し得る。
以上、ステップS510〜S530により、蛍光体粒子の集合体が得られる。このようにして得られた蛍光体粒子の集合体の蛍光体粒子の含有量は、電気泳動堆積法により、高密度、45体積%以上70体積%以下である。このような蛍光体粒子の集合体を用いれば、小型化に好適な波長変換部材の製造に有利である。また、ステップS520において、液体媒質に対して濡れ性の高い透明基板または反射板を用いれば、基板上に強固に密着した蛍光体粒子の集合体を形成することができるので、密着性に優れた図3の波長変換部材300を容易に製造できる。
なお、本発明の波長変換部材の製造で用いる蛍光体粒子は、市販の蛍光体粒子を採用できるが、既存のガス圧焼結法により製造してもよい。
また、図2(A)の波長変換部材200を製造する場合、ステップS510において、第1の蛍光体粒子220と第2の蛍光体粒子230とを分散媒に分散させ、ついでS520、S530、S410およびS420を行えばよい。
また、図2(B)の波長変換部材210を製造する場合、ステップS510において、第2の蛍光体粒子230を分散媒に分散させ、ステップS520により第2の蛍光体粒子230の集合体を形成する。ついで、再度、ステップS510に戻って、第1の蛍光体粒子220を分散媒に分散させ、ステップS520により、第2の蛍光体粒子230の集合体上に、第1の蛍光体粒子220の集合体を形成する。ついで、ステップS530において、これら第2の蛍光体粒子230の集合体および第1の蛍光体粒子220の集合体の多層構造の集合体を乾燥させ、ステップS410およびS420を行えばよい。
または、図2(B)の波長変換部材210を製造する場合、ステップS510において、第2の蛍光体粒子230を分散媒に分散させ、ステップS520により第2の蛍光体粒子230の集合体を形成する。ついで、ステップS530、S410およびS420を行う。これにより波長変換部材210の第2の波長変換部材250が基板上に製造される。続いて、ステップS510に戻って、第1の蛍光体粒子220を分散媒に分散させ、ステップS520により、第2の波長変換部材250上に、第1の蛍光体粒子220の集合体を形成する。ついで、ステップS530において、第2の波長変換部材250上の第1の蛍光体粒子220の集合体を乾燥させ、ステップS410およびS420を行ってもよい。
本発明の波長変換部材の製造には、図4のステップS410およびS420を必須の工程とするが、好ましくは、図5のステップS510〜S530と、図4のステップS410およびS420との組み合わせによって、上述の高い蛍光体粒子の含有量を有する波長変換部材が提供される。
(実施の形態3)
実施の形態3では、本発明による、実施の形態1で説明した波長変換部材を用いた用途(発光器具)の構成を説明する。
図6は、本発明による波長変換部材を用いた発光器具の模式図である。
発光器具600は、波長変換部材100と、励起光源610とを含む。ここでは、波長変換部材100と励起光源610とを光ファイバ620で結合しているが、必ずしも光ファイバ620は必須ではない。
波長変換部材100は、実施の形態1で図1を参照して説明した波長変換部材と同様であるため、説明を省略する。
励起光源610は、波長変換部材100の蛍光体粒子110を励起し、発光させる任意の励起光源を採用できるが、蛍光体粒子110が、例えば、Euを付活したα−サイアロン、Ceを付活したα−サイアロン、Euを付活したβ−サイアロン、Ceを付活したβ−サイアロン、Euを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Ceを付活した(Ca、Sr)AlSiN3、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)2Si5N8、Euを付活した(Ca、Sr、Ba)Si2O2N2およびCeを付活したJEM相等である場合、100nm以上500nm以下の波長を有する光(真空紫外線、紫外線または可視光)を発する任意の励起光源を採用できる。
励起光源610は、発光ダイオード、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、固体レーザ、ガスレーザ、液体レーザ、半導体レーザ(またはレーザダイオード(LD))および半導体発光素子からなる群から選ばれる。中でも、300〜500nmのピーク波長を有する光を発するものが望ましく、とりわけ、300〜420nmのピーク波長を有する紫外(または紫)LED発光素子または440〜470nmのピーク波長を有する青色LED発光素子が好ましい。これらのLED発光素子は、例えば、GaN、InGaN等の窒化物半導体から構成されており、これらの組成を調整することにより、所定の波長の光を発する励起光源610となり得る。
発光器具600の動作を説明する。
ここでは、発光器具600において、励起光源610が、440nm以上470nm以下のピーク波長を有する青色LED発光素子であり、波長変換部材100は、ピーク波長が550nm以上600nm未満である蛍光を発する蛍光体粒子110(以降では第一の蛍光体粒子と呼ぶ)を含む。
励起光源610は、440nm以上470nm以下のピーク波長を有する励起光630を発する。励起光630は、光ファイバ620を介して、波長変換部材100に入射する。
波長変換部材100に入射した励起光630は、第一の蛍光体粒子を励起させ、第一の蛍光体粒子は、ピーク波長550nm以上600nm未満である蛍光640を発する。蛍光640は、黄緑から橙赤色の光である。
蛍光640と、波長変換部材100を透過した励起光630とが、波長変換部材100を出射する。この結果、発光器具600は、励起光源610の励起光から、蛍光640(黄緑から橙赤色の光)と励起光630(青色の光)とを組み合わせた白色光を発することができる。
別の発光器具600の動作を説明する。
ここでは、発光器具600において、励起光源610が、440nm以上470nm以下のピーク波長を有する青色LED発光素子であり、波長変換部材100は、上記第一の蛍光体粒子に加えて、ピーク波長が600nm以上680nm以下である蛍光を発する第二の蛍光体粒子(図示せず)をさらに含む。
励起光源610は、440nm以上470nm以下のピーク波長を有する励起光630を発する。励起光630は、光ファイバ620を介して、波長変換部材100に入射する。
波長変換部材100に入射した励起光630は、第一の蛍光体粒子および第二の蛍光体粒子を励起させる。第一の蛍光体粒子は、ピーク波長550nm以上600nm未満である蛍光を発する。この蛍光は、黄緑から橙赤色の光である。第二の蛍光体粒子は、ピーク波長600nm以上680nm以下である蛍光(図示せず)を発する。この蛍光は、赤色の光である。
波長変換部材100で変換された黄緑から橙赤色の光および赤色の光と、波長変換部材100を透過した励起光630とが、波長変換部材100を出射する。この結果、発光器具600は、励起光源610の励起光から、黄緑色から橙赤色の光と、赤色の光と、励起光620(青色の光)とを組み合わせた白色光を発することができる。
なお、波長変換部材100が第一の蛍光体粒子および第二の蛍光体粒子を含む場合、実施の形態1で説明した図2(A)のように第一の蛍光体粒子および第二の蛍光体粒子が混合していてもよいし、図2(B)のように第一の蛍光体粒子と第二の蛍光体粒子とが層状であってもよい。
さらに別の発光器具600の動作を説明する。
ここでは、発光器具600において、励起光源610が、300nm以上420nm以下のピーク波長を有する紫外(紫)LED発光素子であり、波長変換部材100は、ピーク波長が420nm以上500nm未満である蛍光を発する第一の蛍光体粒子(図示せず)、ピーク波長が500nm以上600nm未満である蛍光を発する第二の蛍光体粒子(図示せず)、および、ピーク波長600nm以上680nm以下である蛍光を発する第三の蛍光体粒子(図示せず)を含む。
励起光源610は、300nm以上420nm以下のピーク波長を有する励起光630を発する。励起光630は、光ファイバ620を介して、波長変換部材100に入射する。
波長変換部材100に入射した励起光630は、第一の蛍光体粒子、第二の蛍光体粒子および第三の蛍光体粒子を励起させる。第一の蛍光体粒子は、ピーク波長420nm以上500nm未満である蛍光(図示せず)を発する。この蛍光は、青色の光である。第二の蛍光体粒子は、ピーク波長500nm以上600nm未満である蛍光(図示せず)を発する。この蛍光は、緑から黄緑色の光である。第三の蛍光体粒子は、ピーク波長600nm以上680nm以下である蛍光を発する。この蛍光は、赤色の光である。
波長変換部材100で変換された青色の光、緑から黄緑色の光および赤色の光が、波長変換部材100を出射する。この結果、発光器具600は、励起光源610の励起光から、青色の光と、緑から黄緑色の光と、赤色の光とを組み合わせた白色光を発することができる。
なお、波長変換部材100が第一の蛍光体粒子、第二の蛍光体粒子および第三の蛍光体粒子を含む場合も、第一の蛍光体粒子、第二の蛍光体粒子および第三の蛍光体粒子が混合していてもよいし、第一の蛍光体粒子と第二の蛍光体粒子と第三の蛍光体粒子とが層状であってもよい。
本発明によれば、波長変換部材100は、蛍光体粒子100の高い含有率ならびに透光性物質120による拡散反射の抑制により、小型化しても高い輝度を達成できるので、このような発光器具600の小型化が可能である。
図7は、本発明による波長変換部材を用いた別の発光器具の模式図である。
発光器具700は、波長変換部材300と、励起光源710とを含む。
波長変換部材300は、実施の形態1で図3を参照して説明した、基板310と一体型の波長変換部材と同様である。図7では、基板310は、透明基板である。その他の要素は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。また、励起光源710は、図6を参照して説明した励起光源610と同様であるため説明を省略する。
発光器具700の動作を説明する。
ここでは、発光器具700において、励起光源710が、440nm以上470nm以下のピーク波長を有する青色LED発光素子であり、波長変換部材300は、ピーク波長が550nm以上600nm未満である蛍光を発する蛍光体粒子110(以降では第一の蛍光体粒子と呼ぶ)を含み、基板310がガラスであるとする。
励起光源710は、440nm以上470nm以下のピーク波長を有する励起光720を発する。励起光720は、基板310を透過し、波長変換部材100に入射する。
波長変換部材100に入射した励起光720は、第一の蛍光体粒子を励起させ、第一の蛍光体粒子は、ピーク波長550nm以上600nm未満である蛍光730を発する。蛍光730は、黄緑から橙赤色の光である。
蛍光730と、波長変換部材100を透過した励起光720とが、波長変換部材100を出射する。この結果、発光器具700は、励起光源710の励起光から、蛍光730(黄緑から橙赤色の光)と励起光720(青色の光)とを組み合わせた白色光を発することができる。
当然ながら、波長変換部材100の蛍光体粒子110の種類が複数であってもよいし、波長変換部材100が多層構造であってもよい。
また、発光器具の構成は、発光器具600および700の構成に限るものではなく、励起光源610および710と、波長変換部材とを組み合わせる任意の構成が採用される。
蛍光体粒子の選択によっては、本発明による波長変換部材は、100〜190nmの真空紫外線、190〜380nmの紫外線、電子線などの励起で発光する。したがって、本発明の波長変換部材と、これらを励起源とした画像表示装置を構成してもよい。画像表示装置には、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、陰極線管(CRT)などがある。
本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1では、ITO付ガラス(以降では単にITOガラスと呼ぶ)上にEuを付活したCa−α−サイアロン(以降では単にCa−α−サイアロン:Euと呼ぶ)である蛍光体粒子からなる波長変換部材300(図3)を、図8のプロシージャにしたがって製造した。
ガス圧焼結法(例えば、K.Uhedaら,J.Lumin.,87−89,967(2000)参照)によりCa−α−サイアロン:Euを合成した。得られたCa−α−サイアロン:Eu粉末を走査型電子線顕微鏡FE−SEM(S−4100,Hitachi)により観察した。観察結果を図10に示し、後述する。
次に、電気泳動堆積法を用いて、ITOガラス上にCa−α−サイアロン:Euである蛍光体粒子の集合体を作製し、その後、波長変換部材を製造した。
図8は、実施例1による波長変換部材を製造するプロシージャを示す図である。
ステップ(A):蛍光体粒子110として合成したCa−α−サイアロン:Eu(2g)を、超音波ホモジナイザを用いて分散媒810に分散させた(図5のステップS510)。分散媒810は、分散剤としてリン酸エステル(PE)(0.001g)およびポリエチレンイミン(PEI)(0.001g)と、有機結合剤としてポリビニルブチラール(PVB)(0.25g)とを含有させたエタノール(100ml)であった。このようにして得られたスラリー中の蛍光体粒子110の分散性を、動的光散乱法(LASER PARTICLE ANALYZER PAR−III, Otsuka Electronics)により調べた。結果を図11に示し、後述する。
ステップ(B):ステップ(A)で得られたスラリーを用いて電気泳動堆積法により蛍光体粒子の集合体840を形成した(図5のステップS520)。詳細には、基板310(ここではカソード電極として機能する)としてITOガラスを、アノードカウンタ電極820としてステンレス基板を用い、電圧制御装置830による電圧制御を行い、ITOガラス上にCa−α−サイアロン:Euを堆積させた。印加電圧は、30V、50Vおよび100Vであり、各定電圧値における堆積時間(電圧印加時間)は、30s、60s、120sであった。また、ITOガラス上の堆積面積は、20×20mm2であった。
このようにして、ITOガラス上に有機結合剤850であるPVBで被覆されたCa−α−サイアロン:Eu110が堆積した蛍光体粒子の集合体840(以降では単にPVB集合体840と呼ぶ)を得た。PVB集合体840をSEMにより観察した。観察結果を図12に示し、後述する。また、アルキメデス法によりPVB集合体840の密度を測定した。測定結果を表1に示し、後述する。なお、得られたPVB集合体840のうち特定の試料をさす場合には、PVB集合体(V,T)/ITOと示す。ここで、添え字のVおよびTは、それぞれ、堆積条件の印加電圧および堆積時間である。
次いで、ITOガラスとPVB集合体840との密着性を、テープ(幅18mm、接着力9.7N/25mm)を用いたJIS H8504試験によって調べた。結果を図13に示し、後述する。
さらに、PVB集合体840について発光特性を調べた。PVB集合体840のITOガラス側から青色LEDが発する波長450nmを有する光(励起光)を照射し、PVB集合体840における発光色を観察した。また、投光波長を450nmとするフォトルミネッセンス測定(MCPD−3700, Otsuka Electronics)を行い、透過光および励起光を測定するとともに、色度座標を算出した。これらの結果を図14、図22および表2に示し、後述する。
ステップ(C):ステップ(B)で得られたPVB集合体840を乾燥させた(図5のステップS530)。具体的には、電気加熱炉を用いて、500℃で2時間熱処理した。これにより、Ca−α−サイアロン:Euを覆っていた有機結合剤850(ここではPVB)を消失させ、蛍光体粒子の集合体860(以降では単に集合体860と呼ぶ)を得た。集合体860についてフォトルミネッセンス測定を行うとともに、外部量子効率および色度座標を算出した。結果を図22および表3〜表5に示し、後述する。なお、得られた集合体860のうち特定の試料をさす場合には、集合体(V,T)/ITOと示す。ここで、添え字のVおよびTは、それぞれ、堆積条件の印加電圧および堆積時間である。
ステップ(D):集合体860の空隙に、エタノール(4ml)とテトラエトキシシラン(TEOS)(6ml)と、蒸留水(3ml)と、濃塩酸(1ml)とを混合した液状物質870を充填させた(図4のステップS410)。具体的には、液状物質870を集合体860に滴下し、ロータリーポンプで真空引きし、充填させた。液状物質870と基板310(ここではITOガラス)との濡れ性を調べた。結果を図15に示し、後述する。
ステップ(E):液状物質870が充填された集合体860を処理し、液状物質870を固体化合物に変換した(図4のステップS420)。詳細には、液状物質870が充填された集合体860を乾燥させた後、電気加熱炉を用いて、500℃で2時間熱処理した。これにより、TEOSを含有する液状物質870を、透光性物質120であるSiO2に変換させた。このようにして、ITOガラス上にCa−α−サイアロン:Euである蛍光体粒子110とSiO2である透光性物質120とを含む波長変換部材300を製造した。このようにして得られた波長変換部材300の様子を図17に示す。なお、得られた波長変換部材300のうち特定の試料をさす場合には、波長変換部材(V,T,TEOS)/ITOと示す。ここで、添え字のVおよびTは、それぞれ、堆積条件の印加電圧および堆積時間である。
また、波長変換部材300についてフォトルミネッセンス測定を行うとともに、外部量子効率および色度座標を算出した。結果を図22および表3〜表5に示し、後述する。
実施例2では、シリカガラス上にCa−α−サイアロン:Euである蛍光体粒子からなる波長変換部材300(図3)を、図9のプロシージャにしたがって製造した。Ca−α−サイアロン:Euは、実施例1と同様である。
図9は、実施例2による波長変換部材を製造するプロシージャを示す図である。
実施例2は、基板310にシリカガラスを用い、堆積条件を印加電圧100V、堆積時間を60sおよび120sとした以外、実施例1と同様の手順のため、説明を省略する。
シリカガラスは、ITOガラスと異なり導電性を有さないため、シリカガラスの表面に導電性ポリマー900としてポリピロールを付与した。具体的なポリピロールの付与の手順は以下のとおりである。ペルオキソ二硫酸アンモニウムおよび2,6ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム塩を撹拌しながら蒸留水に添加・加熱後、冷却した。次いで、この溶液にシリカガラスを浸漬させ、ピロールを滴下し、24時間放置した。その後、シリカガラスを取り出し、蒸留水で洗浄した後、乾燥させた。このようにして、ポリピロールが付与されたシリカガラスが得られた。なお、ポリピロールは、濃黒色を有していた。
なお、導電性ポリマーであるポリピロールは、図9のステップ(C)において、実施例1と同様の条件で熱処理することにより、有機結合剤850であるPVBとともに、除去された。また、実施例1と同様に、液状物質870と基板310(ここではシリカガラス)との濡れ性を調べた。結果を図16に示し、後述する。
図9のプロシージャにしたがって得られた波長変換部材300について、シリカガラスと波長変換部材との密着性をJIS H8504試験によって調べた。結果を図18に示し、後述する。また、波長変換部材300の断面および表面をSEMにより観察した。観察結果を図20および図21に示し、後述する。波長変換部材300についてフォトルミネッセンス測定を行うとともに、外部量子効率を算出した。結果を図23、表6および表7に示し、後述する。波長変換部材300のうち特定の試料をさす場合には、波長変換部材(V,T,TEOS)/シリカと示す。ここで、添え字のVおよびTは、それぞれ、堆積条件の印加電圧および堆積時間である。
実施例3では、実施例2と同様に、シリカガラス上にCa−α−サイアロン:Euである蛍光体粒子からなる波長変換部材300(図3)を、図9のプロシージャにしたがって製造した。Ca−α−サイアロン:Euは、実施例1と同様である。
実施例3では、液状物質870としてTEOSに代えてテトラメトキシシラン(TEMOS)(6ml)を用い、堆積時間を60sおよび90sとした以外、実施例2と同様の手順のため、説明を省略する。
実施例2と同様に、図9のプロシージャにしたがって得られた波長変換部材300について、シリカガラスと波長変換部材との密着性をJIS H8504試験によって調べた。結果を図19に示し、後述する。波長変換部材300についてフォトルミネッセンス測定を行うとともに、外部量子効率を算出した。結果を図23、表6および表7に示し、後述する。波長変換部材300のうち特定の試料をさす場合には、波長変換部材(V,T,TEMOS)/シリカと示す。ここで、添え字のVおよびTは、それぞれ、堆積条件の印加電圧および堆積時間である。
次に、実施例1〜3の結果を詳述する。
最初に、実施例に用いた蛍光体粒子、ならびに、PVBで被覆された蛍光体粒子の集合体について評価した結果を示す。
図10は、実施例1〜3によるCa−α−サイアロン:EuのSEM像を示す図である。
図10によれば、蛍光体粒子の集合体の形成に用いたCa−α−サイアロン:Euである蛍光体粒子は、一次粒子が集合した形態、すなわち二次粒子であり、その二次粒子の粒径は、1μm以上20μm以下の範囲であった。
図11は、実施例1〜3によるスラリー中のCa−α−サイアロン:Euの粒径分布を示す図である。
図11より、スラリー中には、図10に示す合成されたCa−α−サイアロン:Euにおける二次粒子が解消され、主として一次粒子のCa−α−サイアロン:Euが存在し、分散性に優れていることを確認した。なお、この二次粒子が解消されたCa−α−サイアロン:Euそれぞれは、PVBによって被覆されている。
図12は、実施例1によるPVB集合体(100,60)/ITOのSEM像を示す図である。
図12によれば、Ca−α−サイアロン:Euが密集している様子が分かる。この様子は、Ca−α−サイアロン:Euが互いに接触した連結構造である。なお、他の堆積条件によって得られたPVB集合体840も同様であった。
表1には、PVB集合体(30,60)/ITO、PVB集合体(50,60)/ITOおよびPVB集合体(100,60)/ITOの密度(含有量)の結果を示す。表1より、印加電圧が30Vと比較的低い場合であっても、電気泳動堆積法を採用すれば、45体積%以上のPVB集合体840が得られることが分かった。また、印加電圧が高いほど、PVB集合体840の密度が高くなることが分かった。なお、密度の体積時間依存性はなかった。
ここで測定した密度は、PVB集合体840の密度である。しかしながら、PVBで被覆されていない蛍光体粒子の集合体の密度、さらには、最終的に得られる波長変換部材中の蛍光体粒子の密度は、このPVB集合体840のそれよりも高くなる。これは、上述の図8のステップ(C)(図5のステップS530)における乾燥により、PVB集合体840のPVBが除去され、PVB集合体840全体が収縮するためである。したがって、蛍光体粒子の集合体860の密度、ならびに、波長変換部材300中の蛍光体粒子の密度は、電気泳動堆積法において印加電圧30V以上を採用すれば、少なくとも45体積%以上になると理解できる。
図13は、実施例1によるPVB集合体(100,60)/ITOの密着性試験の前後の様子を示す図である。
図13(A)は密着性試験前の様子を示し、図13(B)は密着性試験後の様子を示す。図13によれば、PVB集合体(100,60)/ITOは、テープ試験により容易に剥がれることが分かった。このことから、ITOガラスは、例えば、基板との密着性が要求される図3の基板310と一体型の波長変換部材300には不向きであるが、基板から剥離して用いる図1の波長変換部材100の自立膜の製造には有効であることが示唆される。
図14は、実施例1によるPVB集合体(100,30)/ITOの発光特性を示す図である。
図14は、青色LED(波長450nm)の励起光を、ITOガラス側から照射し、PVB集合体840側から発光色の観察を行った結果を示す。図14の(A)〜(C)は、いずれも、同じ堆積条件下で別個に作製されたPVB集合体(100,30)/ITOの結果である。図14より、目視によりいずれも同様の発光色であることが分かった。
表2には、図14の(A)〜(C)のPVB集合体(100,30)/ITOの色度座標に加えて、PVB集合体(100,60)/ITOの色度座標を併せて示す。
表2によれば、図14(A)〜(C)は、堆積条件が同じであれば、実質的に同じ色度座標が得られ、本発明で用いる電気泳動堆積法が再現性に優れることを示す。また、PVB集合体(100,30)/ITOの色度座標と、PVB集合体(100,60)/ITOの色度座標とは異なり、PVB集合体(100,60)/ITOの発光色は、黄味がかった昼光色であった。このことは、電圧印加時間の違いにより、PVB集合体(100,60)/ITOの厚さが、PVB集合体(100,30)/ITOのそれよりも厚く、黄色の光の強度が増大しているためである。このことから、電圧印加条件を変化させることにより、蛍光体粒子の集合体の厚さ、すなわち、最終的な波長変換部材の厚さの制御が容易に達成されるので、微妙な色味の調整が可能であることが示唆される。なお、密度を制御することによっても同様の微妙な色味の調整が可能であることが容易に類推できる。
次に、PVBを除去した後の蛍光体粒子の集合体860について評価した結果を示す。
表3には、PVBを除去した後の集合体(100,60)/ITOおよび集合体(100,120)/ITOの外部量子効率を示す。外部量子効率は、フォトルミネッセンス測定により得られる、青色LED(波長450nm)をITOガラスに照射した際に透過した光の光子の数と、青色LEDを集合体(V,S)/ITOに照射した際に透過した光の光子の数とから求めた。
表3によれば、集合体(100,60)/ITOの外部量子効率は、いずれも130%前後であった。また、集合体(100,120)/ITOの外部量子効率は、いずれも165%前後であった。これらから、本発明で用いる電気泳動堆積法が再現性に優れることを示す。また、集合体(100,120)/ITOの外部量子効率は、集合体(100,60)/ITOのそれよりも大きかった。このことからも、堆積時間が長いほど、膜厚が厚くなることを示しており、膜厚を制御することにより微妙な色味の調整ができることを示す。
なお、集合体860は、PVBが除去されているため、PVB集合体850に比べて密着性が低く、蛍光体粒子が剥がれやすかった。
このようにして、電気泳動堆積法を採用すれば、本発明で用いる、PVBで被覆されていない蛍光体粒子の集合体を高密度(高含有量)で再現性よく得ることができることを確認した。
次に、最終的に得られた波長変換部材について評価した結果を示す。
図15は、実施例1によるITOガラスと液状物質との濡れ性を示す図である。
図16は、実施例2によるシリカガラスと液状物質との濡れ性を示す図である。
図15によれば、TEOSを含有する液状物質は、ITOガラスに対して濡れ性が低いことが分かった。一方、図16によれば、TEOSを含有する液状物質は、シリカガラスに対して濡れ性が高いことが分かった。なお、TEMOSを含有する液状物質もまた、ITOガラスに対して低い濡れ性を示し、シリカガラスに対して高い濡れ性を示すことを確認した。
図17は、実施例1による波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOの様子を示す図である。
図17によれば、ITOガラスから波長変換部材の一部が剥離していることが分かった。図15および図17によれば、ITOガラスと波長変換部材との密着性が低く、ITOガラスが、図3に示す基板310と一体型の波長変換部材300に利用する基板310として不向きであることが示唆される。すなわち、ITOガラスは、ITOガラスから剥離して、図1および図2に示す自立膜状の波長変換部材100、200、210を得るには好適である。
図18は、実施例2による波長変換部材(100,60,TEOS)/シリカの密着性試験の前後の様子を示す図である。
図19は、実施例3による波長変換部材(100,60,TEMOS)/シリカの密着性試験の前後の様子を示す図である。
図18および図19の密着性試験前の様子(A)によれば、いずれも、図17に示す波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOとは異なり、剥離することはなかった。
図18および図19の密着性試験後の様子(B)によれば、図18の波長変換部材(100,60,TEOS)/シリカにはわずかな剥離が生じたものの、剥離しにくいことが分かる。また、図19の波長変換部材(100,60,TEMOS)/シリカにはまったく剥離が生じることなく、高さ1mから落下させた際にもシリカガラスからの剥離および脱落は生じなかった。
波長変換部材(100,60,TEOS)/シリカと波長変換部材(100,60,TEMOS)/シリカとの間に密着性の差が生じたが、これは、液状物質中に含有されるTEOSおよびTEMOSの違いによる。TEOSの加水分解速度および縮重合速度は、TEMOSのそれよりも遅く、乾燥の速度が速いことが分かっている。したがって、図9のステップ(E)(すなわち、図4のステップS420)における液状物質を固体化合物に変換する際の乾燥条件を制御することによって、波長変換部材(100,60,TEOS)/シリカの密着性を向上させることができる。例えば、実施例2における図9のステップ(E)の乾燥条件のうち昇温速度を、実施例3のそれよりも遅くし、乾燥時にSiO2にクラックが生じるのを抑制すればよい。
図16、図18および図19から、シリカガラスは、図3に示す基板310と一体型の波長変換部材300に利用する基板310として好ましいことが示された。これは、透光性物質であるSiO2がCa−α−サイアロン:Eu間を充填したことにより、シリカガラスへの密着性およびCa−α−サイアロン:Eu間の接着が強固になったためである。
また、図15〜図19により、基板と液状物質との間の濡れ性から、最終的に得られる基板と波長変換部材との密着性の程度の判定ができることが示された。
図20は、実施例2による波長変換部材(100,60,TEOS)/シリカの断面のSEM像を示す図である。
図21は、実施例2による波長変換部材(100,60,TEOS)/シリカの表面のSEM像を示す図である。
図20および図21から、Ca−α−サイアロン:Euである蛍光体粒子は明瞭に確認されなかった。このことは、透光性物質であるSiO2が完全にCa−α−サイアロン:Euを被覆するとともに、気孔もSiO2が充填しているためである。すなわち、Ca−α−サイアロン:Euが構成する連結構造以外の空間をSiO2が充填していることを示す。図21の表面のSEM像からSiO2により充填されなかった気孔を面積比として算出したところ、約2%であり、実質的に気孔がないことが分かった。
図22は、実施例1によるPVB集合体(100,60)/ITO、集合体(100,60)/ITO、および、波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOのPLスペクトルを示す図である。
PVB集合体(100,60)/ITOのPLスペクトルを一点鎖線で、集合体(100,60)/ITOのPLスペクトルを実線で、波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOのPLスペクトルを点線で示す。
図22によれば、集合体(100,60)/ITOおよび波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOの発光強度は、PVB集合体(100,60)/ITOのそれに比べて、顕著に増大した。このことは、PVBが粒子表面を覆い粒界層として存在することが、拡散・反射を引き起こす原因の一つであることを示す。また、波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOの発光強度は、集合体(100,60)/ITOのそれよりもさらに増大した。このことは、蛍光体粒子であるCa−α−サイアロン:Eu間の空隙を透光性物質であるSiO2が充填することにより、光の拡散反射がさらに抑制され、発光特性が向上したことを示す。
表4には、集合体(100,60)/ITOおよび波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOの外部量子効率を示す。集合体(100,60)/ITOの外部量子効率は、表3のそれと同一である。ここでも、外部量子効率は、フォトルミネッセンス測定により得られる、青色LED(波長450nm)をITOガラスに照射した際に透過した光の光子の数と、青色LEDを波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOに照射した際に透過した光の光子の数とから求めた。表4によれば、波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOの外部量子効率は、集合体(100,60)/ITOのそれより大きく、147%まで増大した。このことからも、蛍光体粒子であるCa−α−サイアロン:Eu間の空隙を透光性物質であるSiO2が充填することにより、光の拡散反射が抑制され、発光特性が向上したことが示される。
表5には、PVB集合体(100,60)/ITO、集合体(100,60)/ITOおよび波長変換部材(100,60,TEOS)/ITOの色度座標を示す。いずれも、ほぼ同じ色味を示すことがわかった。このことから、蛍光体粒子であるCa−α−サイアロン:Eu間の空隙を透光性物質であるSiO2が充填することによって、色味に変化が生じないことが確認された。
図23は、励起光の基板依存性を示す図である。
図23には、青色LED(波長450nm)をフォトルミネッセンス測定時に投光した際の励起光のエネルギーの、波長変換部材を有さない基板依存性を示す。シリカガラスとITOガラスとを比較すると、ITOガラスの強度は、シリカガラスのそれよりもわずかに低い、すなわち、ITOガラスは、シリカガラスよりも励起光を吸収しやすいことが分かった。
表6は、図23の各励起光強度、および、青色LEDの励起光に対する強度比を算出した結果を示す。ITOガラスと、シリカガラスとの強度比の差は、約10%であることが分かった。図23および表6より、図3に示す基板310と一体型の波長変換部材300に用いる基板310として、基板での励起光の吸収が少なく、波長変換部材中の蛍光体粒子をより効率的に励起できるため、ITOガラスよりもシリカガラスがより好適であることが分かった。
表7は、波長変換部材(100,S,TEOS)/シリカおよび波長変換部材(100,S,TEMOS)/シリカの外部量子効率の堆積時間依存性を示す。なお、PVB集合体(100,S)/シリカは、シリカガラス上に導電性ポリマーであるポリピロールが付与されており、濃黒色であるポリピロールが励起光を吸収するため、フォトルミネッセンス測定ができない。したがって、表7の外部量子効率は、ITOガラスを用いて同様の堆積条件で堆積させたPVB集合体(100,S)/ITOの外部量子効率を100%として算出している。ここで、ITOガラスを用いたPVB集合体を基準とした理由は、図14および表2の(A)〜(C)の結果に示されるように、ITOガラス上において電気泳動堆積法による良好な色味の再現性が得られているためである。
表7の波長変換部材(100,S,TEOS)/シリカおよび波長変換部材(100,S,TEMOS)/シリカの外部量子効率は、PVB集合体(100,S)/ITOのそれよりも顕著に向上していることが分かる。このことからも、蛍光体粒子であるCa−α−サイアロン:Eu間の空隙を透光性物質であるSiO2が充填することにより、光の拡散反射が抑制され、発光特性が向上したことが示される。
また、いずれの波長変換部材も、堆積時間が長いほど、より高い外部量子効率を示した。このことは、堆積時間が長いほど、膜厚が厚くなることを示しており、膜厚を制御することにより微妙な色味の調整ができることを示す。
表7において、波長変換部材(100,S,TEOS)/シリカと波長変換部材(100,S,TEMOS)/シリカとを比較すると、波長変換部材(100,S,TEOS)/シリカの外部量子効率が、波長変換部材(100,S,TEMOS)/シリカのそれよりも大きかった。これは、図18および図19で詳述したように、波長変換部材(100,S,TEOS)/シリカ中のクラックが、波長変換部材(100,S,TEMOS)/シリカのそれよりも多いため、励起光が、蛍光体粒子に衝突することなくクラックを透過してしまうためである。これにより、波長変換部材(100,S,TEOS)/シリカの見かけ上の外部量子効率が増大したものと考えられ、実際には、波長変換部材(100,S,TEOS)/シリカの外部量子効率は、波長変換部材(100,S,TEMOS)/シリカのそれと同等とみなせる。
なお、図23および表6を参照して上述したように、ITOガラスとシリカガラスとの間の励起光の透過率の差(強度比)は、10%程度である。表7において、基板の透過率の違いを考慮しても、波長変換部材(100,S,TEOS)/シリカと波長変換部材(100,S,TEMOS)/シリカの外部量子効率は、PVB集合体(100,S)/ITOのそれよりも顕著に増大していることが分かる。以上より、蛍光体粒子であるCa−α−サイアロン:Eu間の空隙を透光性物質であるSiO2が充填することにより、光の拡散反射が抑制され、発光特性が向上したことが示された。
以上実施例1〜3により、電気泳動堆積法によって形成したCa−α−サイアロン:Euの集合体を用いて、この集合体の空隙にTEOSまたはTEMOSを含有する液状物質を充填した後、この集合体を処理し、TEOSまたはTEMOSをSiO2に変換することによって、Ca−α−サイアロン:Euの含有量が30体積%以上70体積%以下であり、Ca−α−サイアロン:EuとSiO2とを含む波長変換部材がITOガラスまたはシリカガラス上に得られた。このようにして得られた波長変換部材の発光特性は、SiO2により光の拡散反射が抑制され、顕著な向上を示した。
実施例1によれば、基板としてITOガラスを用いた場合、ITOガラスと波長変換部材との密着性が低いため、ITOガラスは、ITOガラスから剥離して自立膜状の波長変換部材を得るに好適であることが示された。一方、実施例2および3によれば、基板としてシリカガラスを用いた場合、シリカガラスと波長変換部材との密着性が高いため、シリカガラスは、基板と一体型の波長変換部材を得るに好適であることが示された。
また、実施例1〜3によれば、電気泳動堆積法における堆積条件を変化させることによって、得られる波長変換部材における微妙な色味の調整が可能であることを確認した。
実施例3で得られた波長変換部材(100,S,TEMOS)/シリカを用いて、発光器具を製造した。
図24は、本発明による発光器具(砲弾型白色発光ダイオードランプ)の模式図を示す。
発光器具として砲弾型白色発光ダイオードランプ2400を製造した。砲弾型白色発光ダイオードランプ2400は、青色発光ダイオード素子2410と、波長変換部材2420とを含む。
詳細には、青色発光ダイオード素子2410および波長変換部材2420は、リードワイヤ2430上に載置される。青色発光ダイオード素子2410の下部電極(図示せず)とリードワイヤ2430とは、導電性ペーストによって電気的に接続されている。また、青色発光ダイオード素子2410の上部電極(図示せず)とリードワイヤ2440とは、金細線2450によって電気的に接続されている。波長変換部材2420は、実施例3で製造したシリカガラスと一体型の波長変換部材である。青色発光ダイオード素子2410および波長変換部材2420全体は、透明物質2460で被覆されている。
砲弾型白色発光ダイオード2400の製造手順を説明する。まず、青色発光ダイオード素子2410の下部電極とリードワイヤ2430とを、導電性ペーストを用いてダイボンディングした。次いで、青色発光ダイオード素子2410の上部電極とリードワイヤ2440とを金細線2450を用いてワイヤボンディングした。青色発光ダイオード素子2400上に実施例3で製造した波長変換部材を載置した。最後にキャスティング法により青色発光ダイオード素子2410、波長変換部材2420全体を透明物質2460で封止した。透明物質には波長変換部材2420の透光性物質であるSiO2を採用した。なお、透明物質には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の透明樹脂、あるいは、ガラス等の透明材料が採用できるが、紫外線光による劣化の少ない材料が好ましい。
砲弾型白色発光ダイオード2400の動作を確認した。リードワイヤ2430および2440を介して、青色発光ダイオード素子2410から波長450nmの青色光を発生させた。青色光は波長変換部材2420に投光され、波長変換部材2420中のCa−α−サイアロン:Euである蛍光体粒子により黄色光に変換され、全体として白色に発光することを確認した。