〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について、図1〜図4、および図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。
(波長変換部材1)
図1は、波長変換部材1の概略的な構造を示す図である。波長変換部材1は、ガラス10および蛍光体粒子11を含んでいる。なお、後述するように、波長変換部材1は、ガラス10に蛍光体粒子11を分散させることによって製作される。
波長変換部材1において、ガラス10の軟化点は、700℃以上である。また、蛍光体粒子11は、1種類または2種類以上の蛍光体粒子から成る。また、後述するように、少なくとも1種類の蛍光体粒子11は、αSiAlONを含む被覆層によって被覆(コーティング)されている。
(ガラス10)
ガラス10は、700℃以上の軟化点を有する化学的に安定なガラスである。ガラスに関しては、転移点、軟化点、および融点という各種の温度が定義されているが、本実施形態では、ガラスの軟化点に主に着目する。
ガラスの軟化点は、ガラス10に蛍光体粒子11を分散させるプロセスにおける、温度の下限値に相当する。なお、ガラスの軟化点は、ガラスの粘度がlE+7.6dPa・sとなる時のガラスの温度として定義される。
ガラス10としては、シリカガラス等の酸化物系のガラス、またはオキシナイトライドガラス等が好適に用いられる。なお、オキシナイトライドガラスの軟化点は、組成にもよるが、一般的に850〜1000℃程度である。また、シリカガラスの軟化点は、約1700℃である。
オキシナイトライドガラスは、屈折率が高いため、ガラス10として特に好適である。例えば、ガラス10としては、Ca−Si−Al−O−Nの組成から成るオキシナイトライドガラスを適用することができる。
また、ガラス10として、Ca−Mg−Si−Al−O−N、La−Si−O−N、Mg−Si−O−N、Y−Al−Si−O−N、Mg−Si−Al−O−N、Na−Si−O−N、Na−Ca−Si−O−N、Li−K−Al−Si−O−N、Na−B−Si−O−N、Ba−Al−Si−O−N、Na−B―O−N、Li−P−O−N、およびNa−P−O−N等の組成から成るオキシナイトライドガラスを適用してもよい。
一般的に、オキシナイトライドガラスの原料としては、SiO2等の金属酸化物、および、窒素供給源としての金属窒化物または金属酸窒化物が使用される。なお、SiO2以外の金属酸化物としては、Al2O3、BaO、Sb2O3、SrO、Na2O、Na2O3、CaO、MgO、K2O、La2O3、CeO2、Y2O3、ZrO2、ZnO2、As2O3、TiO2、B2O3、Cr2O3、PbO、V2O5、およびSnO2等が挙げられる。
また、熱分解によってこれらの金属酸化物となる、炭酸塩、水酸化物、およびシュウ酸塩等を原料として配合してもよい。金属窒化物としては、Si3N4、AlN、Al2N2、Mg2N2、およびLi3N等が挙げられる。また、金属酸窒化物としては、Si2N2O、およびSi5N6O等が挙げられる。
波長変換部材1を製作(形成)する時の温度は、700℃以上であればよい。しかしながら、波長変換部材1の製作においては、蛍光体粒子11(例えば、酸窒化物蛍光体粒子または窒化物蛍光体粒子)の反応を抑制し、かつ、溶融を防止する必要がある。
このことを考慮すると、波長変換部材1を製作する時の温度は、蛍光体の焼成温度に比べて50℃以上低い温度であることが好ましい。また、波長変換部材1を製作する時の温度は、蛍光体の焼成温度に比べて200℃以上低い温度であることがさらに好ましい。
上述したように、オキシナイトライドガラスは、850〜1000℃程度の軟化点を有する。従って、ガラス10としてオキシナイトライドガラスを用いた場合には、オキシナイトライドガラスを粉砕したガラス微粉末と蛍光体粉末との混合物を、オキシナイトライドガラスの軟化点以上の温度によって加熱することにより、蛍光体粒子11がガラス10内にほぼ均一に分散された波長変換部材1を製作することができる。
波長変換部材1の製作において、作業効率を向上させるためには、加熱温度は高い方が好ましいと言える。しかしながら、蛍光体粒子11の分解を防ぐという観点からは、当該加熱温度は、1600℃以下であることが好ましい。
ところで、上述したように、シリカガラスは、オキシナイトライドガラスに比べて、比較的高い軟化点を有している。このため、ガラス10としてシリカガラスを用いた場合には、シリカガラスを粉砕したガラス微粉末と蛍光体粉末との混合物を、ガラス10の軟化点以上の温度によって加熱すると、蛍光体粒子11が分解する可能性がある。
そこで、ガラス10としてシリカガラスを用いる場合は、金属アルコキシドを原料として用いるゾルゲル法を用いることによって、ガラス10を製作することが好ましい。ゾルゲル法を用いてガラス10を製作することにより、1200℃以下の比較的低い温度によって、蛍光体粒子11がガラス10にほぼ均一に分散された波長変換部材1を製作することができる。
(蛍光体粒子11)
上述したように、蛍光体粒子11は1種類または2種類以上の蛍光体から成る。そして、少なくとも1種類の蛍光体粒子11は、αSiAlONを含む被覆層によって被覆されている。
蛍光体粒子11をガラス10に分散させるプロセスにおいて、蛍光体粒子11が熱的および化学的に安定なαSiAlONを含む被覆層によって被覆されることにより、蛍光体粒子11が受けるダメージが低減される。
このように製作された波長変換部材1は、従来の波長変換部材に比べて、より高い蛍光体粒子の波長変換効率を有する。従って、波長変換部材1によれば、従来の波長変換部材に比べて、より高効率の蛍光を得ることができる。
ここで、上述の被覆層の安定性を向上させるために、被覆層の厚さは、10nm以上とすることが好ましい。なお、被覆層の安定性をさらに向上させるために、被覆層の厚さは、100nm以上とすることがより好ましい。また、被覆層によって被覆された蛍光体粒子11の粗大化を抑制するために、被覆層の厚さは、100μm以下とすることが好ましい。
従って、被覆層の厚さは、10nm以上かつ100μm以下の範囲内の適当な数値として決定されればよい。また、上述のように、被覆層の厚さは、100nm以上かつ100μm以下の範囲内の適当な数値とすることがより好ましい。
蛍光体粒子11の材料としては、公知の蛍光体材料が好適に用いられる。蛍光体材料の具体例としては、Ce賦活Y3(Al,Ga)5O12等のアルミネート系蛍光体、Eu賦活(Ba、Sr)2SiO4等のシリケート系蛍光体等、Eu賦活αSiAlON蛍光体、Eu賦活βSiAlON蛍光体、Ce賦活αSiAlON蛍光体、Ce賦活βSiAlON蛍光体、Ce賦活JEM蛍光体、Ce賦活CALSON蛍光体等の酸窒化物蛍光体、Eu賦活CaAlSiN3蛍光体、Eu賦活M2Si5N8蛍光体(M=Ca,Ba,Sr)、およびCe賦活La3Si6N11蛍光体等の窒化物蛍光体等の蛍光体材料を挙げることができる。
本実施形態の波長変換部材1においては、700℃以上の比較的高温の軟化点を有するガラス10に蛍光体粒子11を分散させるため、シリコーン等の樹脂に蛍光体粒子を分散させる従来の波長変換部材の場合と比べて、より化学的に安定な蛍光体材料を用いることが好ましい。
従って、上述した蛍光体材料の中でも、耐熱性に優れた酸窒化物蛍光体または窒化物蛍光体を用いることが特に好ましい。
(発光装置100)
図2は、波長変換部材1を備えた発光装置100の構成を示す断面図である。発光装置100は、波長変換部材1、基板22、および窒化物レーザ23(励起光源)を備えている。
窒化物レーザ23は、n型電極23Aおよびp型電極23Bを備えている。また、基板22は、電極24A、電極24B、および支持部25を備えている。発光装置100において、波長変換部材1は、基板22に設けられた支持部25の上に接着されている。
窒化物レーザ23は、InGaAlN系結晶から成る半導体レーザ素子である。窒化物レーザ23は、基板22の上に配置されている。窒化物レーザ23のn型電極23Aは、基板22上の電極24Aと電気的に接続されている。また、窒化物レーザ23のp型電極23Bは、基板22上の電極24Bと電気的に接続されている。
窒化物レーザ23は、波長変換部材1に向けて励起光26を発する。励起光26は、波長変換部材1の内部に分散された蛍光体粒子11を励起する。その結果、蛍光体粒子11からは、励起光26よりも長い波長を有する蛍光27が発せられる。このように、波長変換部材1は、励起光26を蛍光27に変換する(すなわち、光の波長を変換する)機能を有する。
本実施形態の以降の説明では、励起光26の発光ピーク波長が405nmまたは450nmである場合について例示する。但し、窒化物レーザ23の発光層等の構成材料の組成を適宜調整することによって、励起光26の発光ピーク波長は、300nm以上かつ500nm以下の範囲において変更されてよい。
また、波長変換部材1における蛍光体粒子11の混合比を適宜調整することによって、発光装置100から発せられる光(照明光)の色度を変更することができる。例えば、各蛍光体から発せられる蛍光の発光色を合成することによって、照明光として白色光を発する発光装置100を製作することができる。照明光として白色光を発する発光装置100は、照明用発光装置としての利用に特に好適である。
さらに、各蛍光体の分散組成を調整することによって、(i)蛍光灯の発光色に近い寒色系の照明用発光装置、または、(ii)電球の発光色に近い暖色系の照明用発光装置として、白色光を発する発光装置100を製作することもできる。
なお、各蛍光体の発光効率が製造ロット等によって変化する可能性があるため、蛍光体粒子11の混合比を、発光装置100の仕様に応じて適宜調整する必要がある。
上述のように、窒化物レーザ23の発光ピーク波長は、300nm以上かつ500nm以下であればよい。しかしながら、窒化物レーザ23の発光ピーク波長は、350nm以上かつ420nm以下であることがより好ましい。
この理由は、350nm以上かつ420nm以下という波長領域は、酸窒化物蛍光体または窒化物蛍光体の励起スペクトル(波長変換効率の励起波長依存性)のピークが得られる波長領域にほぼ対応するためである。このため、当該波長領域では、高い波長変換効率が得られる。
さらに、もう1つの理由は、当該波長領域の光は視感度が低いためである。このため、発光装置100において、窒化物レーザ23の発光ピーク波長のばらつきに起因する照明光の色の変動が殆ど生じないという利点が得られる。
従来、350nm以上かつ420nm以下という短波長の励起光を用いた場合には、蛍光体自体、または、当該蛍光体が分散された樹脂等に紫外線劣化が生じるという問題があった。
しかしながら、本実施形態の波長変換部材1に含まれるガラス10は、700℃以上の軟化点を有する化学的に安定なガラスであり、紫色光から紫外光までの波長領域の光を吸収しないという性質(透光性)を有している。このため、ガラス10の紫外線劣化を抑制することができる。
なお、「ガラス10が透光性を有している」とは、「350nm以上かつ800nm以下の波長領域において、厚さ1mm以上のガラス10のサンプルにおける表面反射損失を含む光透過率が90%以上である」ことを意味するものと理解されてよい。
さらに、波長変換部材1に含まれる蛍光体粒子11の材料として、化学的な安定性に特に優れた酸窒化物蛍光体または窒化物蛍光体を用いることにより、蛍光体粒子11の紫外線劣化を好適に抑制することができる。
このように、波長変換部材1の紫外線劣化を抑制することができるため、従来では実現され得なかった長寿命の発光装置100を実現することができる。具体的には、発光装置100を、3000時間に亘る動作時間の後においても、光度の変動が3%以内となる発光装置として実現することができる。
(蛍光体粒子11の製造例)
以下、蛍光体粒子11の各製造例としての製造例1〜4について説明する。また、製造例1〜4の比較例としての比較製造例1および2についても説明する。
(製造例1:Eu賦活αSiAlON蛍光体の製造)
製造例1は、組成式(Cax、Euy)(Si12−(m+n)Alm+n)(OnN16−n)において、x=1.8、y=0.075、m=3.75、n=0.05の蛍光体を得ることを目的とした製造工程である。
はじめに、α型窒化ケイ素粉末59.8質量%、窒化アルミニウム粉末24.3質量%、窒化カルシウム粉末13.9質量%、酸化ユーロピウム粉末0.9質量%、窒化ユーロピウム粉末1.1質量%の組成となるように、原料粉末を秤量した。なお、窒化ユーロピウム粉末としては、金属ユーロピウムをアンモニア中において窒化させることによって合成したものを用いた。
次に、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢と乳棒とを用いて、当該原料粉末を10分以上混合し、粉体凝集体を得た。次に、得られた粉体凝集体を、目開き250μmの篩を通過させ、直径20mm、高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製のるつぼに充填した。なお、粉体の秤量、混合、および成形の各工程については、水分1ppm以下、酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス内において全て行った。
次に、当該るつぼを、黒鉛抵抗加熱方式の加圧電気炉にセットした、そして、当該加圧電気炉に純度99.999堆積%の窒素を導入し、圧力を1MPaとし、毎時500℃の温度上昇率によって、当該加圧電気炉を1800℃まで昇温した。
続いて、当該加圧電気炉において、1800℃の温度を2時間に亘って保持し、粉体凝集体に対する加熱処理を行った。加熱処理によって得られた生成物をメノウ乳鉢によって粉砕し、50%フッ化水素酸と70%硝酸との1:1混酸中において、60℃の温度において処理することによって、蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体粉末に対して、CuのKα線を用いた粉体X線回折測定(XRD,X-Ray Diffraction)を行った結果、当該蛍光体粉末はαSiAlON結晶の構造を有することを確認することができた。また、当該蛍光体粉末に、波長365nmの光を発するランプからの光を励起光として照射した結果、当該蛍光体粉末から橙色の蛍光が発せられることを確認することができた。
(比較製造例1:Eu賦活βSiAlON蛍光体の製造)
比較製造例1は、組成式Si6−z’Alz’Oz’N8−z’において、z’=0.06の材料に、Euが0.10at.%賦活されたEu賦活βSiAlON蛍光体を得ることを目的とした製造工程である。
はじめに、45μmの篩を通した金属Si粉末が93.59重量%、窒化アルミニウム粉末が5.02重量%、および酸化ユーロピウム粉末が1.39重量%の組成となるように、原料粉末を秤量した。
次に、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢と乳棒とを用い、10分以上混合し粉体凝集体を得た。そして、当該粉体凝集体を、直径20mm、高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製のるつぼに自然落下させて入れた。
次に、当該るつぼを、黒鉛抵抗加熱方式の加圧電気炉にセットした。そして、当該加圧電気炉において、拡散ポンプによって焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の温度上昇率によって昇温した。そして、800℃において純度99.999体積%の窒素を導入することによって圧力を0.5MPaとした。そして、毎時500℃の温度上昇率によって1300℃まで昇温した。その後、毎分1℃の温度上昇率によって1600℃まで昇温し、1600℃の温度を8時間に亘って保持した。合成した試料をメノウ製乳鉢によって粉末に粉砕し、粉末試料を得た。
次に、これらの粉末に再度の加熱処理を施した。はじめに、1600℃において焼成した粉末を、窒化ケイ素製の乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。そして、当該粉末を、直径20mm、高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製のるつぼに自然落下させて入れた。
次に、当該るつぼを、黒鉛抵抗加熱方式の加圧電気炉にセットした。そして、当該加圧電気炉において、拡散ポンプによって焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時500℃の温度上昇率によって加熱した。そして、800℃において純度99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとした。そして、毎時500℃の温度上昇率によって1900℃まで昇温し、1900℃の温度を8時間に亘って保持した。その結果として蛍光体試料を得た。
そして、得られた蛍光体試料をメノウ製乳鉢によって粉砕し、さらに50%フッ化水素酸と70%硝酸との1:1混酸中において、60℃の温度において処理することによって、蛍光体粉末を得た。
当該蛍光体粉末について粉末X線回折測定を行った結果、当該蛍光体粉末はβ型SiAlON構造を有することを確認することができた。また、当該蛍光体粉末に、波長365nmの光を発するランプからの光を励起光として照射した結果、当該蛍光体粉末から緑色の蛍光が発せられることを確認することができた。
(製造例2:αSiAlONによって被覆されたEu賦活βSiAlON蛍光体の製造)
製造例2は、m=1.6、n=0.8として表されるCa添加αSiAlON(組成式Ca0.8Si9.6Al2.4O0.8N15.2)によって被覆された、Eu賦活βSiAlON蛍光体を得ることを目的とした製造工程である。
はじめに、エタノール中においてアンモニアを触媒として用いることによって、高純度アルコキシシランをゾルゲル法によって合成し、平均粒径0.1μmの球状の非晶質二酸化ケイ素粉末を得た。そして、当該粉末をCaとAlとを含む水溶液中に添加し、攪拌混合しながらクエン酸を添加した。
この操作により、二酸化ケイ素表面にCaとAlとのクエン酸塩を吸着させた後に、攪拌しながら加熱して水分を除去して乾燥させた。その後、空気中において700℃に加熱することによって、クエン酸塩を酸化物に変換した。得られた仮焼物をメノウ乳鉢によってほぐし、粉末状のαSiAlON前駆体化合物粒子を得た。
次に、当該前駆体化合物粒子と、上述の比較製造例1において得られたEu賦活βSiAlON蛍光体粒子と、溶媒としてのエタノールとを準備した。そして、当該前駆体化合物粒子7.7gとエタノール87.5mlとをビーカーに入れ、超音波を印加することによって当該前駆体化合物粒子をエタノール中に分散させた。そして、Eu賦活βSiAlON蛍光体粒子25gをエタノール中に加えた後に、さらに超音波を印加することによって当該前駆体化合物粒子を分散させ、スラリーを得た。
得られたスラリーをスターラーによって攪拌させながら、スプレードライ方式により、噴霧温度100℃〜200℃において、350L/時間の窒素流量によって、噴霧乾燥を行った(蛍光体粒子被覆工程)。なお、噴霧乾燥器としては、スプレードライヤーB−290(日本ビュッヒ株式会社製)を用いた。
このようにして、Eu賦活βSiAlON蛍光体粒子をαSiAlON前駆体化合物粒子によって被覆した粉体混合物を製作した。さらに、当該体混合物約2gを、直径20mm、高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製のるつぼに充填した。
そして、当該るつぼを黒鉛抵抗加熱方式の加圧電気炉にセットした。そして、当該加圧電気炉に純度99.999堆積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃の温度上昇率によって1800℃まで昇温した。そして、2000℃の温度を2時間に亘って保持し、加熱処理を行った。加熱処理によって得られた生成物をメノウ乳鉢によって粉砕し、50%フッ化水素酸と70%硝酸との1:1混酸中において、60℃の温度において処理することによって、αSiAlONによって被覆されたEu賦活βSiAlON蛍光体(以下、αSiAlON被覆Eu賦活βSiAlON蛍光体と称する)粒子を得た。
得られたαSiAlON被覆Eu賦活βSiAlON蛍光体粒子の断面に対して、SEM(Scanning Electron Microscope)/EDX(Energy Dispersive X-ray spectrometry)による観察を行った結果、Eu賦活βSiAlON蛍光体の表面が、αSiAlONを含む厚さ約1μmの被覆層によって被覆されていることを確認することができた。
(製造例3:Ce賦活αSiAlON蛍光体の製造)
製造例3は、組成式(Cax、Cey)(Si12−(m+n)Alm+n)(OnN16−n)において、x=0.5、y=0.1、m=1.6、n=0.8の蛍光体を得ることを目的とした製造工程である。
はじめに、α型窒化ケイ素粉末71.06質量%、窒化アルミニウム粉末15.17質量%、炭酸カルシウム粉末7.92質量%、酸化セリウム粉末5.45質量%の組成となるように、原料粉末を秤量した。そして、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢と乳棒とを用いて、原料粉末を10分以上混合することによって、粉体凝集体を得た。
次に、得られた粉体凝集体を、目開き250μmの篩を通過させ、直径20mm、高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製のるつぼに充填した。なお、粉体の秤量、混合、および成形の各工程については、水分1ppm以下、酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス内において全て行った。
次に、当該るつぼを、黒鉛抵抗加熱方式の加圧電気炉にセットした。そして、当該加圧電気炉に純度99.999堆積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃の温度上昇率によって1800℃まで昇温した。そして、1800℃の温度を2時間に亘って保持し、加熱処理を行った。そして、加熱処理によって得られた生成物をメノウ乳鉢によって粉砕し、さらに50%フッ化水素酸と70%硝酸との1:1混酸中において、60℃の温度において処理することによって、蛍光体粉末を得た。
得られた蛍光体粉末について、CuのKα線を用いた粉体X線回折測定を行った結果、当該蛍光体粉末はαSiAlON結晶の構造を有することを確認することができた。また、当該蛍光体粉末に、波長365nmの光を発するランプからの光を励起光として照射した結果、当該蛍光体粉末から青緑色の蛍光が発せられることを確認することができた。
(比較製造例2:Eu賦活CaAlSiN3蛍光体の製造)
比較製造例2は、組成式Ca0.992Eu0.008SiAlN3の蛍光体を得ることを目的とした製造工程である。
はじめに、窒化アルミニウム粉末29.7質量%、α型窒化ケイ素粉末33.9質量%、窒化カルシウム粉末35.6質量%、および窒化ユーロピウム粉末0.8質量%を秤量した。そして、窒化ケイ素焼結体製の乳鉢と乳棒とを用いて、これらの粉末を10分以上混合することによって、粉体凝集体を得た。なお、窒化ユーロピウムは、金属ユーロピウムをアンモニア中において窒化させることによって合成したものを用いた。
次に、当該粉体凝集体を、直径20mm、高さ20mmの大きさの窒化ホウ素製のるつぼに自然落下させて入れた。なお、粉末の秤量、混合、および成形の各工程については、水分1ppm以下、酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中において全て行った。
次に、当該るつぼを、黒鉛抵抗加熱方式の加圧電気炉にセットした。そして、当該加圧電気炉に純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を1MPaとし、毎時500℃の温度上昇率によって1800℃まで昇温した。そして、1800℃の温度を2時間に亘って保持することによって、蛍光体試料を得た。そして、得られた蛍光体試料をメノウ乳鉢により粉砕することによって、蛍光体粉末を得た。
当該蛍光体粉末について、CuのKα線を用いた粉末X線回折測定を行った結果、当該蛍光体粉末は、CaAlSiN3結晶の構造を有することを確認することができた。また、当該蛍光体粉末に、波長365nmの光を発するランプからの光を励起光として照射した結果、当該蛍光体粉末から赤色の蛍光が発せられることを確認することができた。
(製造例4:αSiAlONによって被覆されたEu賦活CaAlSiN3蛍光体の製造)
製造例4は、αSiAlONによって被覆されたEu賦活CaAlSiN3を製作することを目的とした製造工程である。製造例4は、上述の製造例2とほぼ同様の製造例である。
具体的には、製造例4は、蛍光体を上述の比較製造例2において製造されたEu賦活CaAlSiN3とした以外は、製造例2と同様である。これにより、製造例4では、αSiAlONによって被覆されたEu賦活CaAlSiN3蛍光体(以下、αSiAlON被覆Eu賦活CaAlSiN3蛍光体と称する)粒子を製作した。
得られたαSiAlON被覆Eu賦活CaAlSiN3蛍光体粒子の断面SEM/EDX観察を行った結果、Eu賦活CaAlSiN3蛍光体の表面が、αSiAlONを含む厚さ約1μmの被覆層によって被覆されていることを確認することができた。
(波長変換部材1の製造)
以下、波長変換部材1の各製造例としての実施例G1〜G3について説明する。また、実施例G1〜G3の比較例としての比較例G1〜G3についても説明する。
(実施例G1)
実施例G1における波長変換部材の製造には、(i)蛍光体粒子11としてEu賦活αSiAlON蛍光体およびαSiAlON被覆Eu賦活βSiAlON蛍光体を、(ii)ガラス10としてオキシナイトナイトライドガラスをそれぞれ適用した。
具体的には、オキシナイトライドガラスを作製した後に、当該オキシナイトライドガラスの微粉末と蛍光体粒子とを混合して溶融することによって、ガラス10に蛍光体粒子11が分散された波長変換部材を製作した。
はじめに、オキシナイトライドガラスの原料であるSiO2(30.4重量%)、Al2O3(3.0重量%)、AlN(2.4重量%)、Si3N4(26.4重量%)、CaO(34.9重量%)、およびMgO(2.9重量%)の粉末を混合し、混合粉末を調製した。
そして、当該混合粉末をるつぼに充填した後に、当該るつぼを電気炉に入れた。次に、真空ポンプを用いて排気口からの排気を行うことによって電気炉内を真空とする。そして、排気口を閉じた後に、ガス導入口から純度99.9体積%の窒素を導入し、常圧となった時点で排気口を開放する。
上述の手順によって、電気炉を乾燥窒素中において常圧とし、1600℃に昇温した。そして、1600℃の温度を2時間に亘って保持した後に、急冷することによって、オキシナイトライドガラスを得た。
なお、オキシナイトライドガラス原料の溶融は、例えば1400℃〜1900℃の温度において、3時間〜100時間の時間に亘って、窒素またはアルゴン等の酸素を含まない不活性ガス雰囲気下において行うことが好ましい。
次に、得られたオキシナイトライドガラスを粉砕してガラス微粉末にした。そして、ガラス微粉末と蛍光体粉末とを混合した。具体的には、ガラス微粉末に対して、蛍光体粉末を6.3重量%の重量比率によって混合した。そして、混合物をホットプレス法により成形し、成形体を得た。
ここで、実施例G1の蛍光体粉末は、(i)上述の製造例1において製造されたEu賦活αSiAlON蛍光体と、(ii)製造例2において製造されたαSiAlON被覆Eu賦活βSiAlON蛍光体とを、11:12の重量比率によって混合したものである。
次に、電気炉を乾燥大気中・常圧において1200℃に昇温させることによって、得られた成形体を加熱する。そして、1200℃の温度を2時間に亘って保持した後に、急冷することにより、オキシナイトライドガラスの中に蛍光体粉末がほぼ均一に分散された波長変換部を製作した(蛍光体粒子分散工程)。
(比較例G1)
比較例G1における波長変換部材の製造には、(i)蛍光体粒子11としてEu賦活αSiAlON蛍光体およびEu賦活βSiAlON蛍光体を、(ii)ガラス10としてオキシナイトライドガラスをそれぞれ適用した。
比較例G1では、オキシナイトライドガラスのガラス微粉末を、上述の実施例G1と同様の方法によって作製した後に、当該ガラス微粉末に対して、蛍光体粉末を5.3重量%の重量比率によって混合した。
ここで、比較例G1の蛍光体粉末は、(i)上述の製造例1において製造されたEu賦活αSiAlON蛍光体と、(ii)比較製造例1において製造されたEu賦活βSiAlON蛍光体とを、24:29の重量比率によって混合したものである。
なお、比較例G1での各蛍光体の混合比率は、ガラスに対する各蛍光体(被覆層を除いた部分)の体積比率が、実施例G1と同一となるように調整されている。
そして、混合物をホットプレス法により成形し、実施例G1と同様の工程によって、オキシナイトライドガラスの中に蛍光体粒子がほぼ均一に分散された波長変換部材を製作した。
(実施例G2)
実施例G2における波長変換部材の製造には、(i)蛍光体粒子11としてCe賦活αSiAlO蛍光体およびαSiAlON被覆Eu賦活CaAlSiN3蛍光体を、(ii)ガラス10としてオキシナイトライドガラスをそれぞれ適用した。
実施例G2では、オキシナイトライドガラスのガラス微粉末を、上述の実施例G1と同様の方法によって作製した後に、当該ガラス微粉末に対して、蛍光体粉末を5.5%の重量比率によって混合した。
ここで、実施例G2の蛍光体粉末は、(i)上述の製造例3において製造されたCe賦活αSiAlON蛍光体と、(ii)製造例4において製造されたαSiAlON被覆Eu賦活CaAlSiN3蛍光体とを、47:8の重量比率によって混合したものである。
そして、混合物をホットプレス法により成形し、実施例G1と同様の工程によって、オキシナイトライドガラスの中に蛍光体粒子がほぼ均一に分散された波長変換部材を製作した。
(比較例G2)
比較例G2における波長変換部材の製造には、(i)蛍光体粒子11としてCe賦活αSiAlO蛍光体およびEu賦活CaAlSiN3蛍光体を、(ii)ガラス10としてオキシナイトライドガラスをそれぞれ適用した。
比較例G2では、オキシナイトライドガラスのガラス微粉末を、上述の実施例G1と同様の方法によって作製した後に、当該ガラス微粉末に対して、蛍光体粉末を5.3重量%の重量比率によって混合した。
ここで、比較例G2の蛍光体粉末は、(i)上述の製造例1において製造されたEu賦活αSiAlON蛍光体と、(ii)比較製造例2において製造されたEu賦活CaAlSiN3蛍光体とを、47:6の重量比率によって混合したものである。
なお、比較例G2での各蛍光体の混合比率は、ガラスに対する各蛍光体(被覆層を除いた部分)の体積比率が、実施例G2と同一となるように調整されている。
そして、混合物をホットプレス法により成形し、実施例G1と同様の工程によって、オキシナイトライドガラスの中に蛍光体粒子がほぼ均一に分散された波長変換部材を製した。
(実施例G3)
実施例G3における波長変換部材の製造には、(i)蛍光体粒子11としてEu賦活αSiAlON蛍光体およびαSiAlON被覆Eu賦活βSiAlON蛍光体を、(ii)ガラス10としてシリカガラスをそれぞれ適用した。
実施例G3では、金属アルコキシドを原料として用いたゾルゲル法によって、シリカガラスに蛍光体粉末が分散した材料を作製する。
はじめに、テトラメトキシシラン(TMOS)、ジメチルホルミアミド(DMF)、メタノール、純水、および水酸化アンモニウムを、TMOS:DMF:メタノール:純水:水酸化アンモニウム=1:1:2:12:0.0005のモル比となるように混合することによって混合溶液を調製する。
そして、当該混合溶液20g中に蛍光体粉末0.19gを混合した後に、室温において1時間撹拌することによって、蛍光体分散湿潤ゲルを得た。そして、得られた蛍光体分散湿潤ゲルを、所望の形状の容器に移し替えた状態で、乾燥機に投入する。
次に、乾燥機において、35℃の温度を8時間に亘って保持した後に、24時間を費やして80℃まで昇温する。そして、80℃の温度を120時間に亘って保持した後に、150℃まで再度昇温する。そして、150℃の温度を96時間に亘って保持することによって、上述の蛍光体分散湿潤ゲルを乾燥させた。その結果、所望の形状の蛍光体分散乾燥ゲルが得られた。
次に、当該蛍光体分散乾燥ゲルを焼成炉に投入し、52時間を費やして、室温から1050℃まで昇温した。そして、1050℃の温度を2時間に亘って保持することにより、当該蛍光体分散乾燥ゲルをガラス化させた。その結果、シリカガラスの中に蛍光体粉末がほぼ均一に分散された波長変換部材が形成された。
ここで、実施例G3の蛍光体粉末は、(i)上述の製造例1において製造されたEu賦活αSiAlON蛍光体と、(ii)製造例2において製造されたαSiAlON被覆Eu賦活βSiAlON蛍光体とを、13:21の重量比率によって混合したものである。
(比較例G3)
比較例G3における波長変換部材の製造には、(i)蛍光体粒子11としてEu賦活αSiAlON蛍光体およびEu賦活βSiAlON蛍光体を、(ii)ガラス10としてシリカガラスをそれぞれ適用した。
比較例G3では、テトラメトキシシラン(TMOS)、ジメチルホルミアミド(DMF)、メタノール、純水、および水酸化アンモニウムを、上述の実施例G3と同様の混合比率によって混合し、混合溶液を調製した。
そして、当該混合溶液20g中に蛍光体粉末0.16gを混合して、上述の実施例G3と同様にゾルゲル法を用いて、シリカガラス中に蛍光体粉末がほぼ均一に分散された波長変換部材を製作した。
ここで、比較例G3の蛍光体粉末は、(i)上述の製造例1において製造されたEu賦活αSiAlON蛍光体と、(ii)比較製造例1において製造されたEu賦活βSiAlON蛍光体とを、13:16の重量比率によって混合したものである。
なお、比較例G3での各蛍光体の混合比率は、ガラスに対する各蛍光体(被覆層を除いた部分)の体積比率が、実施例G3と同一となるように調整されている。
(本実施形態の波長変換部材の性能評価)
次に、上述の図2に示された発光装置100を用いて、波長変換部材1の性能について評価を行った。以下、本実施形態の波長変換部材の評価結果を示す実施例D1について説明する。また、実施例D1の比較例としての比較例D1についても説明する。
(実施例D1)
実施例D1では、発光装置100に含まれる波長変換部材として、上述の実施例G1において得られた波長変換部材を採用した。
具体的には、ダイヤモンドカッターおよび紙やすり等を用いて、実施例G1において得られた波長変換部材を、直径5mm、厚さ1mmのディスク状に加工した。そして、当該波長変換部材を発光装置100の支持部25に張り付けることによって、発光装置100を製作した。なお、窒化物レーザ23の発光ピーク波長は、450nmとして設定した。
図3は、実施例D1における発光装置100から発せられる照明光の発光スペクトルを、分光放射輝度計MCPD−7000(大塚電子株式会社製)を用いて測定した結果を示すグラフである。
図3において、グラフの横軸は、照明光の波長(nm)を表す。また、グラフの縦軸は、照明光の発光強度(任意単位)を表す。なお、グラフの横軸および縦軸については、後述の図4〜図8においても同様である。
図3に示された照明光の発光スペクトルを解析した結果、照明光の色温度は、5087Kであった。また、照明光の色度点は、(CIEx,CIEy)=(0.343,0.351)であった。
また、窒化物レーザ23から発せられる励起光のエネルギーを200mWとする駆動条件において、当該発光装置100を駆動し、照明光の全光束をMCPD−7000と積分球とを用いた測定系によって測定した。その結果、照明光の全光束は、30.9lmであることが確認された。
(比較例D1)
比較例D1では、発光装置100に含まれる波長変換部材として、上述の比較例G1において得られた波長変換部材を採用した。
具体的には、上述の実施例D1と同様にして、比較例G1において得られた波長変換部材を直径5mm、厚さ1mmのディスク状に加工し、発光装置100を製作した。また、窒化物レーザ23の発光ピーク波長についても、上述の実施例D1と同様に、450nmとして設定した。
図4は、比較例D1における発光装置100から発せられる照明光の発光スペクトルを、分光放射輝度計MCPD−7000を用いて測定した結果を示すグラフである。
図4に示された照明光の発光スペクトルを解析した結果、照明光の色温度は、2880Kであった。また、照明光の色度点は、(CIEx,CIEy)=(0.418,0.352)であった。
また、図3と図4とを比較すると、比較例D1の発光ピーク波長における発光強度は、実施例D1の発光ピーク波長における発光強度に比べて有意に小さいことが理解される。
また、窒化物レーザ23から発せられる励起光のエネルギーを200mWとする駆動条件において、当該発光装置100を駆動し、照明光の全光束をMCPD−7000と積分球とを用いた測定系によって測定した。その結果、照明光の全光束は、17.6lmであることが確認された。
また、上述の実施例D1の発光装置における励起光変換効率を100%とした場合、比較例D1の発光装置における励起光変換効率は、58%であることが確認された。
(本実施形態の波長変換部材の効果)
図9は、上述の実施例D1、比較例D1、および後述する実施例D2〜D3、比較例D2〜D3のそれぞれにおける、照明光の色温度、色度点、および光束の値を示す表である。
図9に示されているように、実施例D1では、照明光の色温度が5000K付近の昼白色として得られている。他方、比較例D1では、波長変換部材の分散剤であるガラス(オキシナイトライドガラス)に対する蛍光体粒子の体積比率は、実施例D1の波長変換部材と同じであるにもかかわらず、照明光の色温度は3000K付近であった。
すなわち、比較例D1では、昼白色から大きく外れた色温度が得られた。また、上述のように、比較例D1における励起光変換効率は、実施例D1における励起光変換効率はよりも有意に低いことが確認された。
このような実施例D1と比較例D1との差異(実施例G1と比較例G1との差異と理解してもよい)は、波長変換部材に含まれる蛍光体粒子が、熱的および化学的に安定なαSiAlONを含む被覆層によって被覆されているか否かの違いによって生じる。
具体的には、比較例D1では、Eu賦活βSiAlON蛍光体がαSiAlONを含む被覆層によって被覆されていない。このため、比較例G1では、波長変換部材を製作するプロセスにおいて、Eu賦活βSiAlON蛍光体粒子が劣化する。
他方、実施例D1では、Eu賦活βSiAlON蛍光体がαSiAlONを含む被覆層によって被覆されている。このため、実施例G1では、波長変換部材を製作するプロセスにおいて、Eu賦活βSiAlON蛍光体粒子の劣化が抑制されている。
これにより、実施例D1の波長変換部材によれば、比較例D1の波長変換部材に比べて、高い波長変換効率を実現することができる。従って、実施例D1の波長変換部材を用いることにより、従来よりも高い発光効率を有する発光装置を実現することができる。
なお、βSiAlONは人の視感度が高い緑色の蛍光を発する。このため、βSiAlONの劣化により発光装置の光束は大きく低下する。従って、実施例D1の発光装置では、Eu賦活βSiAlON蛍光体がαSiAlONを含む被覆層によって被覆されていることにより、比較例D1の発光装置よりも有意に大きい値の光束が得られている。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図5〜図6、および図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
(本実施形態の波長変換部材の性能評価)
実施形態2においても、実施形態1と同様にして、波長変換部材1の性能について評価を行った。ここでは、本実施形態の波長変換部材の評価結果を示す実施例D2について説明する。また、実施例D2の比較例としての比較例D2についても説明する。
(実施例D2)
実施例D2では、発光装置100に含まれる波長変換部材として、上述の実施例G2において得られた波長変換部材を採用した。
具体的には、上述の実施例D1と同様にして、実施例G2において得られた波長変換部材を直径5mm、厚さ1mmのディスク状に加工し、発光装置100を製作した。なお、窒化物レーザ23の発光ピーク波長は、410nmとして設定した。
図5は、実施例D2における発光装置100から発せられる照明光の発光スペクトルを、分光放射輝度計MCPD−7000を用いて測定した結果を示すグラフである。
図5に示された照明光の発光スペクトルを解析した結果、照明光の色温度は、2830Kであった。また、照明光の色度点は、(CIEx,CIEy)=(0.451,0.411)であった。
また、窒化物レーザ23から発せられる励起光のエネルギーを200mWとする駆動条件において、当該発光装置100を駆動し、照明光の全光束をMCPD−7000と積分球とを用いた測定系によって測定した。その結果、照明光の全光束は、20.5lmであることが確認された。
(比較例D2)
比較例D2では、発光装置100に含まれる波長変換部材として、上述の比較例G2において得られた波長変換部材を採用した。
具体的には、上述の実施例D1と同様にして、比較例G2において得られた波長変換部材を直径5mm、厚さ1mmのディスク状に加工し、発光装置100を製作した。なお、窒化物レーザ23の発光ピーク波長は、405nmとして設定した。
図6は、比較例D2における発光装置100から発せられる照明光の発光スペクトルを、分光放射輝度計MCPD−7000を用いて測定した結果を示すグラフである。
図6に示された照明光の発光スペクトルを解析した結果、照明光の色温度は、7691Kであった。また、照明光の色度点は、(CIEx,CIEy)=(0.267,0.416)であった。
また、図5と図6とを比較すると、比較例D2の発光ピーク波長における発光強度は、実施例D2の発光ピーク波長における発光強度に比べて有意に小さいことが理解される。
また、窒化物レーザ23から発せられる励起光のエネルギーを200mWとする駆動条件において、当該発光装置100を駆動し、照明光の全光束をMCPD−7000と積分球とを用いた測定系によって測定した。その結果、照明光の全光束は、9.5lmであることが確認された。
また、上述の実施例D2の発光装置における励起光変換効率を100%とした場合、比較例D2の発光装置における励起光変換効率は、62%であることが確認された。
(本実施形態の波長変換部材の効果)
図9に示されているように、実施例D2では、照明光の色温度が2800K付近の電球色として得られている。他方、比較例D2では、波長変換部材の分散剤であるガラス(オキシナイトライドガラス)に対する蛍光体粒子の体積比率は、実施例D2の波長変換部材と同じであるにもかかわらず、照明光の色温度は7600K付近であった。
すなわち、比較例D2では、電球色から大きく外れた色温度が得られた。また、上述のように、比較例D2における励起光変換効率は、実施例D2における励起光変換効率はよりも有意に低いことが確認された。
比較例D2では、Eu賦活CaAlSIN3蛍光体がαSiAlONを含む被覆層によって被覆されていない。このため、比較例D2では、波長変換部材を製作するプロセスにおいて、Eu賦活CaAlSIN3蛍光体粒子が劣化する。
他方、実施例D2では、Eu賦活CaAlSIN3蛍光体がαSiAlONを含む被覆層によって被覆されている。このため、実施例D2では、波長変換部材を製作するプロセスにおいて、Eu賦活CaAlSIN3蛍光体粒子の劣化が抑制されている。
これにより、実施例D2の波長変換部材によっても、実施例D1の波長変換部材と同様に、高い波長変換効率を実現することができる。従って、実施例D2の波長変換部材を用いることにより、従来よりも高い発光効率を有する発光装置を実現することができる。また、実施例D2の発光装置によれば、従来よりも大きい値の光束を得ることができる。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図7〜図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
(本実施形態の波長変換部材の性能評価)
実施形態3においても、実施形態1および2と同様にして、波長変換部材1の性能について評価を行った。ここでは、本実施形態の波長変換部材の評価結果を示す実施例D3について説明する。また、実施例D3の比較例としての比較例D3についても説明する。
(実施例D3)
実施例D3では、発光装置100に含まれる波長変換部材として、上述の実施例G3において得られた波長変換部材を採用した。
具体的には、上述の実施例D1と同様にして、実施例G3において得られた波長変換部材を直径5mm、厚さ1mmのディスク状に加工し、発光装置100を製作した。なお、窒化物レーザ23の発光ピーク波長は、405nmとして設定した。
図7は、実施例D3における発光装置100から発せられる照明光の発光スペクトルを、分光放射輝度計MCPD−7000を用いて測定した結果を示すグラフである。
図7に示された照明光の発光スペクトルを解析した結果、照明光の色温度は、4892Kであった。また、照明光の色度点は、(CIEx,CIEy)=(0.348,0.353)であった。
また、窒化物レーザ23から発せられる励起光のエネルギーを200mWとする駆動条件において、当該発光装置100を駆動し、照明光の全光束をMCPD−7000と積分球とを用いた測定系によって測定した。その結果、照明光の全光束は、30.9lmであることが確認された。
(比較例D3)
比較例D3では、発光装置100に含まれる波長変換部材として、上述の比較例G3において得られた波長変換部材を採用した。
具体的には、上述の実施例D1と同様にして、比較例G3において得られた波長変換部材を直径5mm、厚さ1mmのディスク状に加工し、発光装置100を製作した。また、窒化物レーザ23の発光ピーク波長についても、上述の実施例D1と同様に、405nmとして設定した。
図8は、比較例D3における発光装置100から発せられる照明光の発光スペクトルを、分光放射輝度計MCPD−7000を用いて測定した結果を示すグラフである。
図8に示された照明光の発光スペクトルを解析した結果、照明光の色温度は、2862Kであった。また、照明光の色度点は、(CIEx,CIEy)=(0.422,0.359)であった。
また、図7と図8とを比較すると、比較例D3の発光ピーク波長における発光強度は、実施例D3の発光ピーク波長における発光強度に比べて有意に小さいことが理解される。
また、窒化物レーザ23から発せられる励起光のエネルギーを200mWとする駆動条件において、当該発光装置100を駆動し、照明光の全光束をMCPD−7000と積分球とを用いた測定系によって測定した。その結果、照明光の全光束は、18.5lmであることが確認された。
また、上述の実施例D3の発光装置における励起光変換効率を100%とした場合、比較例D3の発光装置における励起光変換効率は、61%であることが確認された。
(本実施形態の波長変換部材の効果)
図9に示されているように、実施例D3では、照明光の色温度が5000K付近の昼白色として得られている。他方、比較例D3では、波長変換部材の分散剤であるガラス(シリカガラス)に対する蛍光体粒子の体積比率は、実施例D3の波長変換部材と同じであるにもかかわらず、照明光の色温度は2800K付近であった。
すなわち、比較例D3では、昼白色から大きく外れた色温度が得られた。また、上述のように、比較例D3における励起光変換効率は、実施例D3における励起光変換効率はよりも有意に低いことが確認された。
比較例D3では、Eu賦活βSiAlON蛍光体がαSiAlONを含む被覆層によって被覆されていない。このため、比較例D3では、波長変換部材を製作するプロセスにおいて、Eu賦活βSiAlON蛍光体粒子が劣化する。
他方、実施例D3では、Eu賦活βSiAlON蛍光体がαSiAlONを含む被覆層によって被覆されている。このため、実施例D3では、波長変換部材を製作するプロセスにおいて、Eu賦活βSiAlON蛍光体粒子の劣化が抑制されている。
これにより、実施例D3の波長変換部材によっても、実施例D1およびD2の波長変換部材と同様に、高い波長変換効率を実現することができる。従って、実施例D3の波長変換部材を用いることにより、従来よりも高い発光効率を有する発光装置を実現することができる。また、実施例D3の発光装置によれば、従来よりも大きい値の光束を得ることができる。
〔実施形態4〕
上述の各実施形態では、Eu賦活βSiAlON蛍光体またはEu賦活CaAlSIN3蛍光体のみが、αSiAlONを含む被覆層によって被覆されていない。従って、上述の各実施形態では、Eu賦活αSiAlON蛍光体は、αSiAlONを含む被覆層によって被覆されていない。
しかしながら、Eu賦活αSiAlON蛍光体もまた、αSiAlONを含む被覆層によって被覆されてもよい。これにより、Eu賦活αSiAlON蛍光体の安定性を向上させることができる。
但し、Eu賦活αSiAlON蛍光体を、αSiAlONを含む被覆層によって被覆した場合の安定性の向上の程度は、Eu賦活βSiAlON蛍光体またはEu賦活CaAlSIN3蛍光体をαSiAlONを含む被覆層によって被覆した場合に対して、比較的小さいことを、本願の発明者らは見出した。
このため、上述の各実施形態では、Eu賦活αSiAlON蛍光体を、αSiAlONを含む被覆層によって被覆する構成については例示していない。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る波長変換部材(1)は、700℃以上の軟化点を有するガラス(10)と、上記ガラスの内部に分散された、励起光(26)を受けて蛍光(27)を発する1種類または複数種類の蛍光体粒子(11)と、を備えており、上記蛍光体粒子のうちの少なくとも1種類の蛍光体粒子は、αSiAlONを含む被覆層によって被覆されている。
上記の構成によれば、少なくとも1種類の蛍光体粒子が、熱的および化学的に安定なαSiAlONを含む被覆層によって被覆されていることにより、700℃以上という比較的高温の軟化点を有するガラスに蛍光体粒子を分散させるプロセス(波長変換部材を製造するプロセス)において、蛍光体粒子の劣化を抑制することができる。
それゆえ、波長変換部材の波長変換効率を、従来よりも向上させることができるという効果を奏する。
また、本発明の態様2に係る波長変換部材は、上記態様1において、上記少なくとも1種類の蛍光体粒子は、酸窒化物蛍光体または窒化物蛍光体であることが好ましい。
上記の構成によれば、耐熱性に優れた蛍光体材料である酸窒化物蛍光体または窒化物蛍光体を用いることによって、波長変換部材を製造するプロセスにおいて、蛍光体粒子の劣化を好適に抑制することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様3に係る波長変換部材は、上記態様2において、上記少なくとも1種類の蛍光体粒子は、βSiAlON蛍光体またはCaAlSiN3蛍光体であることが好ましい。
上記の構成によれば、蛍光体粒子として、(i)酸窒化物蛍光体であるβSiAlON蛍光体、または、(ii)窒化物蛍光体であるCaAlSiN3蛍光体を用いることにより、蛍光体粒子の劣化を好適に抑制することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様4に係る波長変換部材は、上記態様1から3のいずれか1つにおいて、上記被覆層の厚さは、10nm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、被覆層の安定性を確保するとともに、被覆層によって被覆された蛍光体粒子の粗大化を抑制することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様5に係る波長変換部材は、上記態様4において、上記被覆層の厚さは、100nm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、被覆層の安定性をより向上させるとともに、被覆層によって被覆された蛍光体粒子の粗大化を抑制することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様6に係る波長変換部材は、上記態様1から5のいずれか1つにおいて、上記励起光のピーク波長は、300nm以上かつ500nm以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、蛍光体粒子を好適に励起することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様7に係る波長変換部材は、上記態様6において、上記励起光のピーク波長は、350nm以上かつ420nm以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、酸窒化物蛍光体または窒化物蛍光体を蛍光体粒子として適用した場合、当該蛍光体粒子を好適に励起することができるという効果を奏する。
さらに、700℃以上の軟化点を有するガラスは、化学的に安定であり、紫色光から紫外光までの波長領域の光を吸収しないという性質(透光性)を有している。このため、本発明の一態様に係る波長変換部材によれば、励起光によってガラスの紫外線劣化が生じることが抑制されるという利点も得られる。
また、本発明の態様8に係る波長変換部材は、上記態様1から7のいずれか1つにおいて、上記ガラスは、オキシナイトライドガラスであることが好ましい。
上記の構成によれば、シリカガラスに比べて低い軟化点を有するオキシナイトライドガラスを適用することにより、波長変換部材を製造するプロセスを、比較的低い温度によって行うことができる。このため、蛍光体粒子の劣化を好適に抑制することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様9に係る波長変換部材は、上記態様1から7のいずれか1つにおいて、上記ガラスは、シリカガラスであってもよい。
上記の構成によれば、化学的に安定なガラスの1つであるシリカガラスを用いて、波長変換部材を製作できるという効果を奏する。
また、本発明の態様10に係る発光装置は、上記態様1から9のいずれか1つに係る波長変換部材と、上記励起光を上記波長変換部材に照射する励起光源(窒化物レーザ23)と、を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、波長変換効率を有する波長変換部材を用いることにより、従来よりも発光効率に優れた発光装置を実現することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様11に係る波長変換部材の製造方法は、700℃以上の軟化点を有するガラスと、励起光を受けて蛍光を発する1種類または複数種類の蛍光体粒子と、を備えた波長変換部材の製造方法であって、上記蛍光体粒子のうちの少なくとも1種類の蛍光体粒子を、αSiAlONを含む被覆層によって被覆する工程と、上記蛍光体粒子を、上記ガラスの内部に分散させる工程と、を含んでいる。
上記の構成によれば、従来の波長変換部材に比べて、より高い波長変換効率を有する波長変換部材を製造することができるという効果を奏する。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
すなわち、本発明の一態様に係る波長変換部材は、軟化点が700℃以上のガラス中に、蛍光体の粒子が分散されている波長変換部材であって、上記蛍光体の粒子のいずれかはαSiAlONで被覆されている。
また、本発明の一態様に係る波長変換部材において、上記蛍光体は、酸窒化物蛍光体または窒化物蛍光体である。
また、本発明の一態様に係る波長変換部材において、上記αSiAlONで被覆された蛍光体は、βSiAlONまたはCaAlSiN3から選ばれる少なくとも1種である。
また、本発明の一態様に係る波長変換部材において、上記αSiAlONからなる被覆層の厚さは、10nm〜10μmの範囲内である。
また、本発明の一態様に係る波長変換部材において、上記半導体発光素子の発光のピーク波長は、300〜500nmである。
また、本発明の一態様に係る波長変換部材において、上記半導体発光素子の発光のピーク波長は、350〜420nmである。
また、本発明の一態様に係る波長変換部材において、上記軟化点が700℃以上のガラスは、シリカガラスである。
また、本発明の一態様に係る波長変換部材において、上記軟化点が700℃以上のガラスは、オキシナイトライドガラスである。