以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1の実施形態]
図1に示すように、第1の実施形態に係わる自動工具交換装置(ATC)対応のタレットパンチプレス1は、下部フレーム3の両側にコラム5,7を立設し、このコラム5,7の上端に一体的に設けた上部フレーム9を水平方向に懸架した門型フレームを備えている。
上部フレーム9の下面には、複数のパンチPを装着した上部タレット11を上部タレット回転軸13によって回転可能に支持してある。この上部タレット11に相対向して下部フレーム3の上面には、パンチPと対をなす複数のダイDを装着した下部タレット15を設けてある。下部タレット15の外径は、前記上部タレット11の外径より大径に形成してあり、下部タレット15を回転させる下部タレット回転軸17は、上部タレット回転軸13に対して偏心させている。
また、図1に示す如く、加工作業位置K1と自動金型(パンチ)交換作業位置K2及び自動金型(ダイ)交換作業位置K3とを設定している。
なお、パンチP及びダイDは、上部タレット11及び下部タレット15上の円形軌道上にそれぞれ配置してあり、また加工作業位置K1においてパンチPとダイDの中心が一致するように設けてある。
前記加工作業位置K1に位置決めしたパンチPを打撃するため、上部フレーム9内に、例えば、流体圧シリンダ19を設けてあり、この流体圧シリンダ19のピストンロッド21の先端(下端)には、支持板23を介してストライカ25を設けてある。
したがって、上部タレット11と下部タレット15を図示省略のサーボモータで回転駆動することにより、パンチPとダイDとで対をなす所望の金型セットをストライカ25の直下の加工作業位置K1に位置決めすることができる。そして、金型セットを選択した後に流体圧シリンダ19を作動させれば、パンチPとダイDとの間に後述の位置決め手段により位置決めされたワークWに、パンチング加工を行うことができる。
図2は、円盤形状を呈する下部タレット15の平面図であり、下部タレット15の外周側の上面に、円周方向に沿って複数のダイホルダ27を図示しないボルトによって着脱可能に取り付けている。この複数のダイホルダ27には、互いに異なる前記したダイDを着脱可能に装着してあり、該ダイホルダ27と下部タレット15とでベース部を構成している。
また、下部タレット15の上記したダイホルダ27の取付位置に対応する位置には、同心円状の3つのトラックT1,T2,T3を内周側から外周側に向けて順に設定してあり、この3つのトラックT1,T2,T3のいずれかに対応して各ダイホルダ27のダイDを配置している。例えば、ダイホルダ27Aは、内周側のトラックT1及び外周側のトラックT3に小径のダイD(D1,D2)をそれぞれ取り付けてあり、ダイホルダ27Bは、中央のトラックT2に大径のダイD(D3)を取り付けてある。
一方、上部タレット11についても、下部タレット15と同様に円盤形状を呈しており、上記した下部タレット15のダイホルダ27に対応するパンチホルダを円周方向に沿って複数備え、このパンチホルダに前記したパンチPを取り付けてある。
また、図3に示してある例えばダイホルダ27Aにて径方向に沿って配置した複数のダイD(D1,D2),に対応するパンチP(P1,P2)のうち、実際に打ち抜き加工に使用されるパンチPのみを打圧するために、図1に示すように、前記したストライカ25を図1中で左右方向に移動させるストライカシフトシリンダ31を設けている。このストライカシフトシリンダ31は、前記した支持板23の側部に設けてある取付ブラケット33の下部に取り付けてある。
前記下部フレーム3の上面には、図1では詳細に示していないが、下部タレット15を囲繞するワークテーブル35を設けてある。また、このワークテーブル35の上方には、Y軸駆動モータ37で回転駆動されるY軸送りねじ39を介してY軸方向(図1中で左右方向)へ移動位置決め自在のキャリッジベース41を設けてある。
上記キャリッジベース41には、図示省略のX軸駆動モータとX軸送りねじを介して前記Y軸に直交するX軸方向(図1中で紙面に直交する方向)へ移動位置決め自在のX軸キャリッジ43を設けてあり、このX軸キャリッジ43に板状のワークWの端部を把持する複数のワーククランプ45を装着してある。
したがって、上部タレット11と下部タレット15との間へのワークWの位置決めは、NC装置(図示省略)の制御によりX軸駆動モータとY軸駆動モータ37とを適宜に駆動することにより行うことができる。
図3は、下部タレット15の半径方向に沿って2つのダイD(D1,D2)を備えたダイホルダ27(図2のダイホルダ27Aに相当)に対応する位置の断面図であり、これら2つのダイD(D1,D2)は、中空部材で構成した円筒形状のリフタパイプ51,53の上端開口部にそれぞれ上方から挿入配置してある。
なお、以後の説明で、上記したリフタパイプ51,53や後述するリフタパイプ63なども含め、リフタパイプ全体を指す場合にはリフタパイプLPとし、該リフタパイプLPはダイ支持部材を構成する。
リフタパイプ51,53は、図4(a)に示すように、図4中で上下方向に対応する軸方向に貫通する貫通孔51a,53aをそれぞれ備え、この貫通孔51a,53aのダイD(D1,D2)よりも下方にはエジェクタパイプ55,57を挿入配置している。エジェクタパイプ55,57は、円筒部55a,57aの上部に大径部55b,57bを形成してあり、大径部55b,57bの外径はダイD(D1,D2)の外径とほぼ同等としてある。
なお、以後の説明では、上記したエジェクタパイプ55,57や後述するエジェクタパイプ65を含め、エジェクタパイプ全体を指す場合にはエジェクタパイプEPとし、該エジェクタパイプEPはダイ昇降手段に含まれるものであって挿入部材を構成している。
リフタパイプ51,53の貫通孔51a,53aは、上部に大径孔部51b,53bを形成してあり、大径孔部51b,53bの下部に、エジェクタパイプ55,57の大径部55b,57bを挿入配置するとともに、大径孔部51b,53bの上部にダイD(D1,D2)を挿入配置している。この状態で、ダイD(D1,D2)は、その上端がリフタパイプ51,53の上端とほぼ同一面か僅かに上方に突出している。
すなわち、大径孔部51b,53bの下端の段部51c,53cにエジェクタパイプ55,57の大径部55b,57bの下端が係止された状態となり、この状態で、ダイD1,D2が大径部55b,57b上に載置された状態となる。
なお、このときダイD(D1,D2)は大径孔部51b,53bに対して回転が規制されている。
この状態で、エジェクタパイプ55,57が、図4(a)の状態からリフタパイプ51,53に対して上方に移動することで、その大径部55b,57bがダイD1,D2を上方に向けて押し上げて、リフタパイプ51,53の上端から突出させることができる。そして、この突出状態のダイD1,D2を自動金型(ダイ)交換作業位置K3の後述する金型グリッパ159で把持して取り外すことが可能となる。
なお、図4(a)のリフタパイプ53は、ダホルダ27(27A)から上方に突出しているが、この突出状態はリフタパイプ53上のダイD2が加工に使用する状態であり、この状態でエジェクタパイプ57を上昇させてダイD2に対して交換作業を行うものではない。
また、エジェクタパイプ55,57の下端外周面とリフタパイプ51,53の下端内周面との間には環状の隙間58,60をそれぞれ形成してある。
上記エジェクタパイプ55を収容するリフタパイプ51は、下部タレット15に設けた取付孔15a及びダイホルダ27に設けた取付孔27aに対して上下動可能に収容し、エジェクタパイプ57を収容するリフタパイプ53は、下部タレット15に設けた取付孔15b及びダイホルダ27に設けた取付孔27bに対して上下可能に収容している。
この際、上記した各リフタパイプ51,53は、下部タレット15に対しスプリング59,61により下方に押し付けられ、外周側段部51d,53dによって下方への移動が規制されている。
なお、図4(a)中でリフタパイプ51は、スプリング59に押されて下方に移動してダイD1の上端がダイホルダ27の上端とほぼ同一面となっている。一方、図4(a)中でリフタパイプ53は、図3の加工位置に対応しており、後述するダイ支持部材昇降手段69によってスプリング61に抗して上方に押し上げられた状態となっている。図3の状態でダイD2の上部がワークテーブル35に形成してある開口部35aに入り込み、ダイD2の上端がワークWのパスラインPLとほぼ同一面となってワークWの加工が可能となる。
また、図4(b)に示すように、図2の例えばダイホルダ27Bに設けてある大径のダイD(D3)についても、上記した小径のダイD(D1,D2)と同様に、中空部材で構成した円筒形状のリフタパイプ63の上端開口部にそれぞれ上方から挿入配置してある。
リフタパイプ63は、図4(b)中で上下方向に対応する軸方向に貫通する貫通孔63aを備え、貫通孔63aのダイD(D3)よりも下方にはエジェクタパイプ65を挿入配置している。エジェクタパイプ65は、円筒部65aの上部に大径部65bを形成してあり、大径部65bの外径はダイD(D3)の外径とほぼ同等としてある。
リフタパイプ63の貫通孔63aは、上部に大径孔部63bを形成してあり、大径孔部63bの下部に、エジェクタパイプ65の大径部65bを挿入配置するとともに、大径孔部63bの上部にダイD(D3)を挿入配置している。この状態で、ダイD(D3)は、その上端がリフタパイプ63の上端とほぼ同一面か僅かに上方に突出している。
すなわち、大径孔部63bの下端の段部63cにエジェクタパイプ65の大径部65bの下端が係止された状態となり、この状態で、ダイD3が大径部65b上に載置された状態となる。
すなわち、エジェクタパイプ65が図4(b)の状態から上方に移動することで、その大径部65bがダイD3を上方に向けて押し上げて、リフタパイプ63の上端から突出させることができる。そして、この突出状態のダイD3を自動金型(ダイ)交換作業位置K3の後述する金型グリッパ159で把持して取り外すことが可能となる。
なお、図4(b)のリフタパイプ63は、前記した図4(a)のリフタパイプ53と同様に、ダイホルダ27(27B)から上方に突出しているが、この突出状態はリフタパイプ63上のダイD3が加工に使用する状態であり、この状態でエジェクタパイプ63を上昇させてダイD3に対して交換作業を行うものではない。
上記エジェクタパイプ65を収容するリフタパイプ63は、下部タレット15に設けた取付孔15c及びダイホルダ27に設けた取付孔27cに対して上下動可能に収容している。この際リフタパイプ63は、下部タレット15に対しスプリング67により下方に押し付けられている。
なお、図4(b)でのリフタパイプ63は、図4(a)のリフタパイプ53と同様にダイ支持部材昇降手段69によってスプリング67の弾性力に抗して上方に押し上げられた状態を示している。また、図4(b)においても、図4(a)のエジェクタパイプ55,57の下端外周面とリフタパイプ51,53の下端内周面との間に形成した隙間58,60と同様に、エジェクタパイプ65の下端外周面とリフタパイプ63の下端内周面との間に環状の隙間を形成してもよい。
次に、ダイDとともにリフタパイプLPを上昇させるダイ支持部材昇降手段69について説明する。ダイ支持部材昇降手段69には、図3示すように、台形ねじ式ダイ上下移動機構を採用している。すなわち、図3に示す下部フレーム3には、内周面に雌ねじ71aを備える大略円筒形状の雌ねじ部材71を固定してあり、この雌ねじ71aに螺合する雄ねじ73aを下端に備える円筒形状の昇降部材となる昇降ラム73を、雌ねじ部材71に対して回転可能に収容している。
図3では、昇降ラム73が最上端に位置している状態を示し、アタッチメント75を介してリフタパイプ53を上昇させ、このリフタパイプ53に対応するダイD2の上端が、ワークWの搬送経路となるパスラインPLとなるまで上昇させている。
前記した雌ねじ部材71の上端には、昇降ラム73と共に回転する回転駆動リング77を回転可能に配置している。回転駆動リング77は、昇降ラム73の雄ねじ73aより上部にてスプライン結合されており、これにより昇降ラム73は回転駆動リング77に対し、一体的に回転可能であると同時に相対的に昇降可能となっている。
回転駆動リング77の外周のギヤ部に歯付きベルト79を噛合させ、歯付きベルト79は、下部フレーム3に取り付けてある図示しない駆動モータに連動連結されている。したがって、この駆動モータの駆動により、歯付きベルト79を介して回転駆動リング77が回転し、これと共に回転する昇降ラム73が、その雄ねじ73aが螺合する雌ねじ部材
71の雌ねじ71aに対して回転することで、昇降することになる。
前記したアタッチメント75は、下部タレット15の円周方向の打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされたダイD2に対応するリフタパイプ53を保持する環状の凸部75aを備えるとともに、ダイD2に対して径方向内側に隣接して配置してあるダイD1に対応するリフタパイプ51を保持する凹部75bを備えている。
すなわち、上記した凸部75aは、上記円周方向の打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた加工に使用するダイD2を、ワークWのパスラインPLに押し上げた状態で保持する一方、凹部75bは、上記円周方向の打ち抜き加工位置に割り出し位置決めされた加工に使用しないダイD1を、パスラインPLより下方位置となるよう保持する。
このようなアタッチメント75の他に、他のダイホルダ27に設けてある、例えばダイD2やダイD1よりも大径のダイD3に対応する図示外のアタッチメントも存在する。これら複数のアタッチメントは、図3中で紙面に直交する方向にガイドレール81に沿って個別に移動可能であるとともに、上下方向にも、ガイド筒83に沿ってガイドロッド85が上下動することで個別に移動可能であり、昇降ラム73が最下端に位置する状態で、同様に最下端に位置する状態のアタッチメントが、図3中で紙面に直交する方向に移動することで、使用するアタッチメントが昇降ラム73上に移動して選択される。
次に、図1の自動金型(ダイ)交換作業位置K3にて、図4に示したリフタパイプLP(51,53及び63)内に上下方向に移動可能に収容したエジェクタパイプEP(55,57及び65)をダイDとともに上昇させる機構について説明する。なお、以下では、図6,図7に示すようにリフタパイプ53に装着してあるダイD2を交換する場合について説明する。
図5は、下部タレット15の自動金型(ダイ)交換作業位置K3側の半分を図示し、下部タレット15上のダイホルダ27については、交換作業を行うダイD周辺のみを図示している。
図5において、自動金型(ダイ)交換作業位置K3での下部タレット15の下方には、エジェクタパイプEPをダイDとともに上昇させる図8に示すプッシュブロック89を備えるとともに、プッシュブロック89を上下動させる駆動機構であるエアシリンダで構成したエジェクトシリンダ91を備えている。
プッシュブロック89は、ダイ昇降手段に含まれるものであって押圧部材を構成し、複数あるダイD及びリフタパイプLPの大きさ(外径)に対応して上下方向に多段に形成してある。すなわち、図7に示すように、エジェクタパイプ57をリフタパイプ53に対して上昇させるには、プッシュブロック89の最上端面でエジェクタパイプ57の下端面を上方に向けて押し付け、その際、押し付け作業を行うプッシュブロック89はリフタパイプ53内に入り込む必要がある。このため、プッシュブロック89は、リフタパイプ53の内径(実際には下端の内径)に対応した挿入円筒部89aを先端(上端)に備えている。
この際、挿入円筒部89aの外径は、エジェクタパイプ57の外径と同等か僅かに大きく形成してあり、したがって、プッシュブロック89の挿入円筒部89aがリフタパイプ53内の中空部に入り込むことで、エジェクタパイプ57を上昇させることができる。
図7は、図6の状態から、挿入円筒部89aがリフタパイプ53内の中空部内に入り込んだ状態を示しており、この際ダイD2もエジェクタパイプ57とともに上昇してダイホルダ27Aの上面から上方に突出している。
このように、プッシュブロック89の先端の挿入円筒部89aは、リフタパイプ53の下端の内径に対応した外径を有しており、図8に示すように、この挿入円筒部89aの下部に順次外径が大きくなるよう形成してある挿入円筒部89b,89c,89dも、ダイDの外径に対応する各リフタパイプLPの下端内径に対応して設けてある。
上記したプッシュブロック89の挿入円筒部89a,89b,89c,89dは押圧部を構成しており、これら挿入円筒部89a,89b,89c,89dは円形の台座89f上に形成されている。
つまり、1つのプッシュブロック89によって径の異なるダイDを、それに対応するエジェクタパイプEPを挿入円筒部89a,89b,89c,89dのいずれかによって上昇させることで、上昇させることができる。
図9は、プッシュブロック89が下部に位置する待機時を(a)で示しており、この待機時でのエジェクタパイプEP及びリフタパイプLPの下端位置をPとしている。このときプッシュブロック89の上端(挿入円筒部89aの上面89a1)は、位置Pよりも僅かに下方となっている。一方、この位置Pより上方の位置Qは、ダイDを交換可能となるようダイDとともに上昇した状態のエジェクタパイプEPの下端位置に相当する。
図9(b)では、プッシュブロック89の最上部の挿入円筒部89aがエジェクタパイプEPを上昇させる状態を示している。すなわち、挿入円筒部89aの上面89a1がエジェクタパイプEPの下端位置Qに対応している。同様にして、図9(c)では、プッシュブロック89の挿入円筒部89aより下部の挿入円筒部89bがエジェクタパイプEPを上昇させる状態を示している。すなわち、挿入円筒部89bの上面89b1がエジェクタパイプEPの下端位置Qに対応している。以下、同様にして図9(d),(e)では、それぞれ挿入円筒部89c,89dの各上面89c1,89d1がエジェクタパイプEPの下端位置Qに対応している。
また、図10に示すように、エジェクタパイプ57の上部の大径部57bには、図4では図示していないが、エジェクタパイプ57の上方への抜け止め機構として、抜け止めピン93を設けている。抜け止めピン93は、大径部57bの外周面から側方に突出しており、この突出部がリフタパイプ53の内面に形成した上下方向に延びるガイド溝53eに沿って移動可能である。一方、このガイド溝53eの上端開口は、リフタパイプ53の上端に取り付けてあるストッパブロック95によって閉塞してある。
したがって、図10(b)のように、エジェクタパイプ57の上昇に伴って抜け止めピン93が上昇してストッパブロック95に当接することで、エジェクタパイプ57の上昇が規制されて抜け止めがなされる。
このような抜け止め機構は、その他のダイDに対応するリフタパイプLP及びエジェクタパイプEPについても同様に設けてある。
また、エジェクタパイプEPをダイDとともに上昇させるときに、リフタパイプLPも一緒に上昇するのを抑えるために、図11〜図13に示すスライドストッパ97を設けている。
スライドストッパ97は、ダイホルダ27(27A)上のダイDの側縁にて下部タレット15の半径方向に移動可能であり、スライドストッパホルダ99によって上部が覆われて上下方向の移動が規制されている。すなわち、スライドストッパ97は、ダイホルダ27(27A)の上面とスライドストッパホルダ99との間に形成した隙間を、下部タレット15の半径方向に移動する。
このようなスライドストッパ97は、下部タレット15の半径方向に沿って長尺に形成してあり、ダイD側の側部に、ストッパ爪97a,97bを突出して設けている。すなわち、図11では、スライドストッパ97が、下部タレット15の半径方向外側に向けて前進移動することで、ストッパ爪97a,97bが各ダイD1,D2に対応するリフタパイプ51,53の周縁の一部に係止してロック状態となっている。
なお、図12及び図13では、ストッパ爪97a,97bによるロックを解除した状態を示している。
したがって、図11の状態では、前述したエジェクタパイプ55,57を上昇させて各ダイD1,D2を上昇させる際に、リフタパイプ51,53の上昇をストッパ爪97a,97bによって規制することができる。
一方、図12及び図13では、エアシリンダからなるスライドストッパ駆動シリンダ111の駆動により、スライドストッパ97が下部タレット15の半径方向内側に向けて図11の位置に対して移動しており、ストッパ爪97a,97bによるリフタパイプ51,53の上昇規制を解除したアンロック状態となっている。したがって、図12及び図13の状態では、ワークWに対して打ち抜き加工を行うべく、各ダイD1,D2を上昇させる際に、リフタパイプ51,53を上昇させることができる。
スライドストッパ97は、下部タレット15の半径方向内側に向けて突出する突出部97cを備え、この突出部97cの下面に可動片101をねじ103により固定している。可動片101は突出部97cから、下部タレット15の半径方向と直交する方向に突出しており、この突出した部分をガイドピン105に対して移動可能に連結している。
ガイドピン105は、下部タレット15の半径方向内側に対応するダイホルダ27Aの側面上部から、下部タレット15の半径方向内側に向けて延びており、その先端にばね受け部107を形成し、該ばね受け部107と可動片101との間にロックスプリング109を設けている。
すなわち、図11では、可動片101がロックスプリング109により押されてダイホルダ27Aに当接し、これとともにスライドストッパ97が同方向に移動して図11のロック状態となる。これに対して図12及び図13では、スライドストッパ駆動シリンダ111の駆動によって、スライドストッパ97をロックスプリング109に抗して引き寄せてアンロック状態としている。
なお、上記図11〜図13に示したスライドストッパ97や可動片101,ガイドピン105及びロックスプリング109などは、図2や図5では省略しているが、ダイホルダ27Aとは別の他のダイホルダ27のすべてに設けてある。
但し、図14に示すように、図2の中央トラックT2に位置する例えばダイホルダ27(27B)については、1個の大径のダイD(D3)を備えているので、図13に示した長尺のスライドストッパ97に代えて短尺のスライドストッパ97Aを用いている。短尺のスライドストッパ97Aは、下部タレット15の半径方向内側に突出している突出部97Acと反対の先端側にストッパ爪97Aaを備えている。
また、図11,図12の長尺のスライドストッパホルダ99に代えて短尺のスライドストッパホルダ99Aを用いており、このスライドストッパホルダ99Aから突出した部位のスライドストッパ97A先端のストッパ爪97Aaによって、リフタパイプ63の上面を係止している。
スライドストッパ97やスライドストッパ97Aを、図11や図14のロック状態から図12のアンロック状態となるよう駆動するスライドストッパ駆動シリンダ111は、加工作業位置K1に対応するワークテーブル35の下面に、図示しない取付ブラケットを介して取り付けてあり、下部タレット15に対しては離間した状態となっている。
すなわち、スライドストッパ駆動シリンダ111は、すべてのダイホルダ27に対して兼用する1個のみを加工作業位置K1に対応して設けてあるだけで、加工作業位置K1にて駆動することで、スライドストッパ97やスライドストッパ97Aをアンロック状態とする。
スライドストッパ駆動シリンダ111は、ピストンロッド113をダイホルダ27(27A)に向けて突出させるとともに、上面にスライドブラケット115を備えている。スライドブラケット115は、スライドストッパ駆動シリンダ111の上面に対しピストンロッド113の突出方向に沿ってスライド移動可能なスライド部115aと、スライド部115aの先端から下方に向けて直角に屈曲してピストンロッド113の先端が連結される連結部115bとを備えている。
スライド部115aの上面には、連結板117をねじ118により固定しており、連結板117の先端には凹部117aを形成している。凹部117aは、下部タレット15の半径方向両側に側壁117a1,117a2をそれぞれ備え、下部タレット15の半径方向と直交する円周方向両側は開放している。一方、スライドストッパ97の突出部97cは、スライドストッパ駆動シリンダ111側の端部下面に、凹部117aに入り込むローラ119を設けている。
すわなち、図11のロック状態から、スライドストッパ駆動シリンダ111を駆動してピストンロッド113を後退させると、凹部117aの側壁117a2がローラ119に引っ掛かってスライドストッパ97を後退移動させ図12のアンロック状態となる。このアンロック状態で、図12に示すように、加工に使用するダイD(D1)をそのリフタパイプ51とともに上昇させて加工に備える。
また、加工後、図12の状態からダイD(D1)をそのリフタパイプ51とともに下降させた後、図11のようにスライドストッパ駆動シリンダ111を駆動してピストンロッド113を前進させると、スライドストッパ97はストッパ爪97a,97bがダイD(D1,D2)に係止してロック状態となる。
このロック状態では、ロックスプリング109により可動片101がダイホルダ27(27A)に当接した図11の状態、つまりスライドストッパ97のロック状態が保持される。そして、このロック状態で、下部タレット15を回転させて、ダイホルダ27(27A)が加工作業位置K1から自動金型(ダイ)交換作業位置K3となるよう移動位置決めすることで、ダイD(D1,D2)の交換が可能となる。
下部タレット15が図11の状態から回転するときには、ローラ119は、凹部117aの開放する側から凹部117aの外部に移動する。逆に、ダイホルダ27(27A)が、スライドストッパ駆動シリンダ111を設けてある図11の加工作業位置K1に移動するときには、ローラ119は凹部117aの開放する側から凹部117a内に入り込む。
前記図8に示したプッシュブロック89は、図5〜図7に示すように、台板121上に固定してあり、台板121には、2本のガイドロッド123が下方に延び、この2本のガイドロッド123を、下部フレーム3側に設けてあるガイド筒125内に上下方向に移動可能に挿入している。
一方、プッシュブロック89近傍の下部フレーム3には、プッシュブロック89を下部タレット15の半径方向に移動可能に支持するガイド板127を設けている。ガイド板127には、上記した2本のガイド筒125及び2本のガイド筒125相互間に位置する前記したエジェクトシリンダ91が、プッシュブロック89とともに下部タレット15の半径方向に移動可能に挿入されるスリット127aを形成している。
ガイド板127の上記スリット127aの両側における裏面には、下部タレット15の半径方向に延びるガイドレール129を設けてある。一方、このガイドレール129に対し、プッシュブロック89側のエジェクトシリンダ91及びガイド筒125には、上記ガイドレール129にガイドされるガイドブロック131を設けてある。すなわち、プッシュブロック89は、ガイドブロック131がガイド板127側のガイドレール129にガイドされて移動することにより、下部タレット15の半径方向にエジェクトシリンダ91及びガイド筒125とともに一体となって移動することになる。
上記したプッシュブロック89を下部タレット15の半径方向に移動させるために、図15に示すように第1エアシリンダ133及び第2エアシリンダ135を設けている。
第1,第2エアシリンダ133,135は、図15(a)及び図16(a)の裏面図である図15(c)及び図16(c)に示すように、下部タレット15の半径方向に対して平行となるよう配置してある。
このうち第1エアシリンダ133は、プッシュブロック89を、図15に示す下部タレット15の下方から半径方向外側に外れた待機位置と、図16に示す下部タレット15の下方に位置するダイ交換位置との間を移動させる。すなわち、図15では、第1エアシリンダ133のピストンロッド137が前進移動して伸長した状態であり、図16では、ピストンロッド137が後退移動して収縮した状態である。
一方、第2エアシリンダ135は、第1エアシリンダ133によりダイ交換位置とした状態のプッシュブロック89を、前記図2に示した3つのトラックT1,T2,T3のいずれかの位置に移動位置決めするために作動する。なお、図16は、プッシュブロック89を中央トラックT2に移動位置決めした状態を示す。
すなわち、図16の状態から、図17に示すように、第2エアシリンダ135のピストンロッド139がそのシリンダ本体に対して相対的に前進移動して伸長することで、プッシュブロック89を、リフタパイプ51に対応する内側トラックT1に移動位置決めした状態となる。一方、図16の状態から、図18に示すように、第2エアシリンダ135のピストンロッド139がそのシリンダ本体に対して相対的に後退移動して収縮することで、プッシュブロック89を、リフタパイプ53に対応する外側トラックT3に移動位置決めした状態となる。
次に、第1,第2シリンダ133,135の取付構造について説明する。第1エアシリンダ133は、前記したガイド板127の下方に位置する取付ブラケット141を介して下部フレーム3に固定してあり、そのピストンロッド137の先端は、第2エアシリンダ135のピストンロッド139の先端とともに、ロッド連結部材143に連結している。
一方、第2エアシリンダ135は、前記したガイドレール129にガイドされるガイドブロック131の側部下面に、取付ブラケット145を介して取り付けてある。
したがって、第1エアシリンダ133の駆動により、プッシュブロック89は、作動をロックさせた状態の第2エアシリンダ135とともに、下部タレット15の半径方向に移動する。一方、第2エアシリンダ135の駆動により、そのシリンダ本体がピストンロッド139に対し(このとき第1エアシリンダ133は図16〜図18の状態で作動をロックさせている)、プッシュブロック89とともに、下部タレット15の半径方向に移動する。
次に、図1に示してある自動工具交換装置(ATC)について説明する。タレットパンチプレス1の図1中で右側に隣接した位置に、パンチプレスにおける自動工具交換装置である自動金型交換装置147を設けてある。この自動金型交換装置147は、ダイ交換手段としてのツールチェンジャ149と金型マガジン151とを備えている。
ツールチェンジャ149のパンチ交換アーム153は、前記上部タレット11の自動金型(パンチ)交換作業位置K2において、パンチPの装着または抜き取りを行い、ダイ交換アーム155は、下部タレット15の自動金型(ダイ)交換作業位置K3において、ダイDの装着または抜き取りを行うように設けてある。
なお、前記自動金型交換作業位置K2及びK3は、上下のタレット11,15を上面から見て、前記加工作業位置K1から時計方向に約225度回転した位置に設けてある。また、手動で金型交換をする場合には、前記自動金型交換作業位置K2及びK3の反対側である135度に位置する付近で実施するよう設定してある。
先端に公知の金型グリッパ157,159を備えた前記パンチ,ダイ交換アーム153,155は、駆動モータM1によりギヤをG1,G2介して回転可能に設けた支柱161に上下方向(Z軸方向)に移動位置決め可能に設けてある。また、前記金型マガジン151は、駆動モータM2によりギヤG3,G4を介して回転可能な支柱163に、パンチPを多数貯蔵可能なパンチ用金型タレット165と、ダイDを多数貯蔵可能なダイ用金型タレット167とを設けてある。
上記の自動金型交換装置147により、前記金型交換アーム153,155を自動金型交換作業位置K2,K3にそれぞれ位置決めし、該金型交換アーム153,155を下降させて、金型グリッパ157,159によりパンチP,ダイDをそれぞれ把持して上方に引き抜き、金型交換アーム153,155を回転させて、前記金型マガジン151にパンチP,ダイDをそれぞれ格納する。
また、金型マガジン151から必要なパンチP,ダイDを取り出して、上下タレット11,15の空いたダイホルダ27にそれぞれ装着することができる。
上述のダイ交換の際には、前述したように、自動金型(ダイ)交換作業位置K3におけるエジェクトシリンダ91を使用する。
次に、以上のように構成したタレットパンチプレスの動作について説明する。まず、図1に示す上部タレット11及び下部タレット15を適宜回転させることで、加工に必要なパンチP及びダイDを、ストライカ25に対応する位置に設定する。これとともに、キャリッジベース41をY軸方向に、X軸キャリッジ43をX軸方向にそれぞれ移動させることで、ワークWを下部タレット15上の加工位置に位置決めする。
なお、ここでは、図3に示すように、外側トラックT3におけるダイD2を使用して打ち抜き加工を行う場合について説明する。
上記下部タレット15を回転させる際には、図3に示す昇降ラム73を図3の状態から下降させてダイDをワークテーブル35より下方に位置させておく。そして、下部タレット15の回転により、ダイD2を設けてあるダイホルダ27Aが加工作業位置K1に達すると、図11に示すように、スライドストッパ97の突出部97cの下部に設けてあるローラ119が、ワークテーブル35に設けてあるスライドストッパ駆動シリンダ111側の連結板117の凹部117aに入り込む。
次に、この状態でスライドストッパ駆動シリンダ111を作動させ図12のようにピストンロッド113を後退させてスライドストッパ97を引き込み、ロック爪97a,97bによるリフタパイプ51,53に対する係止を解除してアンロック状態とする(図13参照)。
上記図13のアンロック状態で、図3に示すように、昇降ラム73を上昇させることで、アタッチメント75を介してリフタパイプ53を上昇させ、このリフタパイプ53に対応するダイD2の上端が、ワークWの搬送経路となるパスラインPLとなるまで上昇する。
一方、アタッチメント75の凹部75bは、ダイD2に対して同一のダイホルダ27Aに取り付けてある径方向内側のダイD1に対応するリフタパイプ51の下端に当接し、リフタパイプ51を図4のスプリング59に抗して上昇させる。しかし、その上昇分は、凸部75aの上面と凹部75bの上面との上下方向の段差分だけ少なく、ダイD1の上端はワークテーブル35の下面より僅かに下方となる。
この状態で、ストライカ25をダイD2に対応する位置とした状態で、ダイD2に対応するパンチPを打圧して打ち抜き加工を行う。
以上の動作は、外周側のトラックT3用のアタッチメント75を使用する例として示したが、内周側トラックT1用の他の図示しないアタッチメントを、図3中で紙面に直交する方向に移動させて、上記したアタッチメント75に代えて使用する。すなわち、このアタッチメントは、内周側トラックT1に対応する位置に凸部75aに対応する凸部を備えるとともに、外周側トラックT3に対応する位置に凹部75bに対応する凹部を備えていることになる。
ダイD2を使用して打ち抜き加工を行った後は、昇降ラム73を下降させることで、リフタパイプ51,53をダイD1,D2とともに下降させ、ダイD1,D2の上端がダイホルダ27Aの上端とほぼ同一面となるようにする。そして、この状態で、図11に示すように、スライドストッパ駆動シリンダ111を前進駆動することで、スライドストッパ97をダイホルダ27A側に移動させて、ロック爪97a,97bによりリフタパイプ51,53を係止してロック状態とする。
なお、上記したロック状態は、ロックスプリング109が可動片101を介してスライドストッパ97をダイホルダ27A側に押圧することで保持される。
上記スライドストッパ97のロック状態への移動は、例えばスライドストッパ駆動シリンダ111の作動位置により検知することができ、この作動位置を検知することで、ロック爪97a,97bがリフタパイプ51,53の上端に係止して該リフタパイプ51,53がダイホルダ27A内の正規の位置に入り込んだことを確認することができる。
次に、ダイDの交換作業について説明する。なお、ここでは、上記加工に使用したダイD2を交換する場合について説明する。
図11のスライドストッパ97によるロック状態で、下部タレット15を回転させて、ダイD2を備えるダイホルダ27Aが自動金型(ダイ)交換作業位置K3となるよう位置決めする。このとき、図15に示すように、第1エアシリンダ133は前進位置として、プッシュブロック89を、下部タレット15の半径方向外側の待機位置としておく。
次に、プッシュブロック89を上記した待機位置から図16に示すダイ交換位置となるよう第1エアシリンダ133を駆動する。すなわち、このとき第1エアシリンダ133は、図15に示すピストンロッド137の伸長状態から後退させて収縮させ、図16に示すように、プッシュブロック89を下部タレット15の下方に位置させる。
上記した図16は、プッシュブロック89が中央トラックT2に対応する位置となるような第2エアシリンダ135の作動状態であるため、プッシュブロック89が、今回取り外すダイダイD2が位置する外周側トラックT3に対応する位置となるように、第2エアシリンダ135を駆動する。
図18は、図16の状態から第2エアシリンダ135を、そのピストンロッド139を引き込む方向に駆動することで、プッシュブロック89を外側トラックT3に移動位置決めした状態であり、前記した図6に対応している。
この状態で、エジェクトシリンダ91を駆動することで、図7に示すように、プッシュブロック89の先端の挿入円筒部89aが、リフタパイプ53内に入り込みつつその内部に収容してあるエジェクタパイプ57の下端に当接してエジェクタパイプ57を上昇させる。エジェクタパイプ57の上昇に伴ってその上部に位置するダイD2も上方してダイホルダ27Aの上面から上方に突出することになる。
そして、この突出したダイD2を、図1に示してある自動金型交換装置147の金型グリッパ159により容易に把持して取り外すことが可能となる。その際、自動金型交換装置147は、金型交換アーム155を自動金型(ダイ)交換K3に位置決めし、該金型交換アーム155を下降させて、金型グリッパ159で上記図7に示すダイD2を把持して上方に引き抜く。引き抜いたダイD2は、金型交換アーム155を回転させて、金型マガジン151のダイ用金型タレット167に金型グリッパ159により格納する。
ダイD2を取り外した後のダイホルダ27Aには、必要に応じてダイ用金型タレット167に格納してある他のダイDを、図7のように上昇させた状態のエジェクタパイプ57の上端に載置する。
上記したダイD2を上昇させるべくエジェクタパイプ57を上昇させる際には、エジェクタパイプ57が挿入されているリフタパイプ53は、図11のようにスライドストッパ97のストッパ爪97bによりロックされて上方への移動が規制されているので、エジェクタパイプ57のみをダイD2とともに上昇させることができる。
また、上記したダイD2に対して下部タレット15の半径方向内側に位置する内側トラックT1に位置するダイD1を取り外す際には、図6,図18の状態から、第2エアシリンダ135を、そのピストンロッド139が伸長する方向に駆動して図17の状態とすることで、プッシュブロック89をダイD1(リフタパイプ51)に対応する位置とすればよい。
同様にして、中央トラックT3に位置するダイDを取り外す際には、第2エアシリンダ135の駆動位置が図16となるようにすればよい。
中央トラックT3にはダイD1やダイD2よりも大径のダイDが存在するが、その場合には、プッシュブロック89の挿入円筒部89aより下部に位置して挿入円筒部89よりも大径の挿入円筒部89b,89c,89dのいずれかが、ダイDに対応するリフタパイプLP内に入り込んで、内部のエジェクタパイプEPを、対応するダイDとともに上昇させることになる。
このように、本実施形態では、図3に示すように、ダイDをリフタパイプLPとともに上昇させて加工を行うように構成したパンチプレスにおいて、内部を中空円筒形状としたリフタパイプLP内にエジェクタパイプEPを配置して、このエジェクタパイプEPを下部に配置したプッシュブロック89によって上昇させて、その上端に設けたダイDをリフタパイプLPから突出させるようにした。これにより、ダイDを自動金型交換装置147の金型グリッパ159により容易に把持して取り外すことが可能となる。
その際、本実施形態では、プッシュブロック89が、ダイDに対応するリフタパイプLPの内径に対応して挿入方向前方側から後方側に沿って外径が順次大きくなる挿入円筒部89a,89b,89c,89dを設ける構成としている。これにより、1つのプッシュブロック89によって複数の径の異なるダイDの交換作業に対応することができる。
また、本実施形態では、プッシュブロック89は、下部タレット15における、ダイ支持部材昇降手段69を設置してある加工作業位置K1から離れた自動金型(ダイ)交換作業位置K3に設置され、この自動金型(ダイ)交換作業位置K3に、リフタパイプLPの上端よりも上方に突出した状態のダイDを保持して取り外すツールチェンジャ149を設けている。
このため、加工終了後に、下部タレット15を規定角度回転させて加工に使用したダイDを自動金型(ダイ)交換作業位置K3まで移動させれば、該ダイDを速やかに取り外すことができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、図19に示すように、前記図8に示したプッシュブロック89に代えてプッシュブロック89Aを使用している。このプッシュブロック89Aは、加工時に発生した抜きカスなど、下部タレット15から落下する異物が、前記図8の各挿入円筒部89a,89b,89c,89dの各上面89a1,89b1,89c1,89d1に載りにくくするとともに、載った場合の異物の清掃をしやすくするようにした例である。
プッシュブロック89Aは、プッシュブロック89の挿入円筒部89a,89b,89c,89dに対応する挿入円筒部89Aa,89Ab,89Ac,89Adを備えており、このうち挿入円筒部89Ab,89Ac,89Adに対応する位置の前記第1,第2エアシリンダ133,135による移動方向(下部タレット15の半径方向)両側に切欠部89Aeを形成している。
切欠部89Aeは、挿入円筒部89Abに対応する部位を挿入円筒部89Aaの外周面よりも中心側に位置する縦平面89Ae1とし、挿入円筒部89Acに対応する部位を縦平面89Ae1の下端から外側に拡がる傾斜面89Ae2とし、挿入円筒部89Adに対応する部位を傾斜面89Ae2の下端からさらに外側に拡がる傾斜面89Ae3とする。
また、各挿入円筒部89Aa,89Ab,89Ac,89Adの上記切欠部89Aeを形成した部位に対して円周方向に90度隔てた互いに対向する位置の側面には、切欠平面89Aa2,89Ab2,89Ac2,89Ad2を形成している。
そして、両切欠平面89Aa2相互間の挿入円筒部89Aaの幅寸法は、挿入円筒部89Abの縦平面89Ae1の幅寸法とほぼ同等であり、両切欠平面89Ab2相互間の挿入円筒部89Abの幅寸法は、挿入円筒部89Acの傾斜面89Ae2の幅寸法とほぼ同等であり、両切欠平面89Ac2相互間の挿入円筒部89Acの幅寸法は、挿入円筒部89Adの傾斜面89Ae3の幅寸法とほぼ同等である。
上記した切欠部89Ae及び切欠平面89Aa2,89Ab2,89Ac2,89Ad2を形成したプッシュブロック89Aは、挿入円筒部89Aaが、プッシュブロック89の挿入円筒部89aと同径の円形部分89Aa3を円周方向の互いに対向する位置に2箇所備え、挿入円筒部89Ab,89Ac,89Adは、プッシュブロック89の挿入円筒部89b,89c,89dの外径とそれぞれ同径の円形部分89Ab3,89Ac3,89Ad3を円周方向に沿ってそれぞれ4箇所備えることになる。
このように構成したプッシュブロック89Aは、前記第1の実施形態におけるプッシュブロック89と同様にしてリフタパイプLP内に下方から挿入してエジェクタパイプEPを上昇させ、その上端にあるダイDをリフタパイプLPから上方に突出させることができる。
したがって、上記プッシュブロック89Aを使用する第2の実施形態においても、ダイDを自動金型交換装置147の金型グリッパ159により容易に把持して取り外すことが可能となるなど、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
その際、プッシュブロック89Aに、切欠部89Ae及び切欠平面89Aa1,89Ab1,89Ac1,89Ad1を形成することによって、加工時に発生した抜きカスなどの異物が下部タレット15から落下してきても、挿入円筒部89Aa,89Ab,89Ac,89Adの各上面89Aa1,89Ab1,89Ac1,89Ad1の面積が小さいことから載りにくくなる。
特に、切欠部89Aeに傾斜面89Ae2及び傾斜面89Ae3を設けることで、落下してくる異物を斜面に沿って下方に容易に排出することができる。
また、挿入円筒部89Aa,89Ab,89Ac,89Adの各上面89Aa1,89Ab1,89Ac1,89Ad1を、下部タレット15の半径方向と直交する一方向両側にのみ設定してある。このため、下部タレット15の半径方向の一方側からのエアブローによって、該上面89Aa1,89Ab1,89Ac1,89Ad1に載った異物を効率よく除去することができる。
[第3の実施形態]
上記図19のプッシュブロック89Aを使用した図20,図21に示す第3の実施形態のタレットパンチプレスでは、挿入円筒部89Aa,89Ab,89Ac,89Adの各上面89Aa1,89Ab1,89Ac1,89Ad1に載った場合の異物を図22に示すスクレーパ169によって除去する機構を備えている。
スクレーパ169は、図20及び図21に示すように、下部タレット15の外周側近傍位置にて下部フレーム3側の取付ブラケット171に取り付けてあり、プッシュブロック89Aの第1,第2エアシリンダ133,135による下部タレット15の半径方向への移動によって通過する切欠通過部169aを形成している。
切欠通過部169aは、プッシュブロック89Aの上記移動方向から見た投影形状に対応した形状としてある。すなわち、下部が開放したほぼ正方形状の挿入円筒部89Aaに対応する切欠169a1と、切欠169a1の下部に連通する下部が開放した長方形状の挿入円筒部89Abに対応する切欠169a2と、切欠169a2の下部に連通する下部が開放した長方形状の挿入円筒部89Acに対応する切欠169a3と、切欠169a3の下部に連通する下部が開放した長方形状の挿入円筒部89Adに対応する切欠169a4と、を備えている。
そして、プッシュブロック89Aは、前記図15,図16に示した第1エアシリンダ133によって、下部タレット15の半径方向外側に外れた図15の待機位置と、下部タレット15の下方に位置する図16のダイ交換位置との間を移動するときに、スクレーパ169の切欠通過部169aを通過する。
その際、切欠169a1の上縁169a1uが、挿入円筒部89Aaの上面89Aa1にほぼ接触しながら移動して該上面89Aa1の異物を除去し、切欠169a2の上縁169a2uが、挿入円筒部89Abの上面89Ab1にほぼ接触ながら移動して該上面89Ab1の異物を除去する。同様にして、切欠169a3の上縁169a3uが、挿入円筒部89Acの上面89Ac1にほぼ接触ながら移動して該上面89Ac1の異物を除去し、さらに切欠169a4の上縁169a4uが、挿入円筒部89Adの上面89Ad1にほぼ接触ながら移動して該上面89Ad1の異物を除去する。さらに、スクレーパ169の下端縁169bが台座89Afの上面にほぼ接触ながら移動して該上面の異物を除去する。
このように、本実施形態では、エジェクタパイプEPを上昇させるときに該エジェクタパイプEPの下端に接触するプッシュブロック89Aの上面89Aa1,89Ab1,89Ac1,89Ad1の異物を、エアブローのような別途専用の駆動源を用いることなく、単にプッシュブロック89Aの待機位置とダイ交換位置との間の移動によって、効率よく除去することができる。
プッシュブロック89Aは、その上面89Aa1,89Ab1,89Ac1,89Ad1の異物が除去されることで、上昇させる際のエジェクタパイプEPとの間に異物が噛み込むことを抑制し、エジェクタパイプEPのリフタパイプLPに対する傾斜を抑制してスムーズに上昇させることができる。
また、本実施形態では、プッシュブロック89Aを支持している台板121に、第1異物保護カバー173を取り付けるとともに、プッシュブロック89Aを下部タレット15の半径方向に移動可能に支持するガイド板127に、第2異物保護カバー175を取り付けている。この第1,第2異物保護カバー173,175により、プッシュブロック89Aを移動させるための可動部などへの異物の落下を防ぎ、該可動部の動作不良を防ぐことができる。
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、図23に示すように、下部タレット15の下方位置にて下部タレット15に接近離反する方向に移動可能となるプレート取付部材177を下部フレーム3に取り付け、このプレート取付部材177の上記移動方向に沿って、複数のプッシュプレート179,181,183,185,187,189,191,193を配置している。プレート取付部材177は、プッシュプレート選択用シリンダ195により下部フレーム3に対して移動する。
上記した各プッシュプレート179,181,183,185,187,189,191,193は、前記第1及び第2の各実施形態で使用したプッシュブロック89及び89Aの各挿入円筒部89a,89b,89c,89d及び89Aa,89Ab,89Ac,89Adに代わるもので、リフタパイプLP内のエジェクタパイプEPを上昇させるものである。
したがって、これら円板状の各プッシュプレート179,181,183,185,187,189,191,193は、その直径が、挿入円筒部89a,89b,89c,89d及び89Aa,89Ab,89Ac,89Adの各直径とそれぞれ同等のものを含んでおり、ダイ昇降手段の押圧部材を構成している。
このうち3つのプッシュプレート181,183,185は、下部タレット15の半径方向に沿って配置してあり、2つのプッシュプレート187,189も、下部タレット15の半径方向に沿って配置してある。
そして、これら各プッシュプレート179,181,183,185,187,189,191,193は、プレート取付部材177の取付部位から下方に突出した被押圧部179a,181a,183a,185a,187a,189a,191a,193aをそれぞれ備え、これら被押圧部179a,181a,183a,185a,187a,189a,191a,193aを下方から上方に向けて押し上げる上昇シリンダ197をその下部に配置してある。
上昇シリンダ197は、図示しないピストンロッドが上方に向けて伸び、その先端に押圧プレート199を備えており、該押圧プレート199によって上記した被押圧部179a,181a,183a,185a,187a,189a,191a,193aのいずれかを上方に向けて押し上げる。
さらに、この上昇シリンダ197は、上記3つのプッシュプレート181,183,185の配列方向(2つのプッシュプレート187,189の配列方向と同じ)に沿って延びるガイドレール201にガイドされて移動可能である。この上昇シリンダ197の移動は、下部フレーム3に設置してあるトラック選択用シリンダ203によってなされる。
このような構成のタレットパンチプレスにおいて、ダイDをダイホルダ27から取り外す際には、プッシュプレート選択用シリンダ195を駆動することで、プッシュプレート179と、同181,183,185と、同187,189と、同191と、同193とのいずれか必要とするものが、取り外すダイDの下方位置、すなわち前記図1の自動金型(ダイ)交換作業位置K3となるよう選択する。
このうち3つのプッシュプレート181,183,185のいずれか、または2つのプッシュプレート187,189のいずれかを使用する場合には、さらにトラック選択用シリンダ203を駆動して、これらいずれかが自動金型(ダイ)交換作業位置K3となるよう選択する。
そして、これら選択したプッシュプレートのいずれかを、上昇シリンダ197の駆動により上昇させることで、該選択したプッシュプレートが対応するダイDを保持するリフタパイプLP内に入り込んでエジェクタパイプEPを上昇させる。エジェクタパイプEPの上昇によってその上端に載置されているダイDがリフタパイプLPから突出するので、この突出状態のダイDを、自動金型交換装置147の金型グリッパ159により把持して取り外すことができる。