図1は、貼り合わせ装置100の全体構造を模式的に示す平面図である。貼り合わせ装置100は、共通の筐体101の内部に形成された常温部102および高温部202を含む。
常温部102は、筐体101の外部に面して、複数の基板カセット111、112、113と、制御盤120とを有する。制御盤120は、貼り合わせ装置100全体の動作を制御する制御部を含む。また、制御盤120は、貼り合わせ装置100の電源投入、各種設定等をする場合にユーザが外部から操作する操作部を有する。更に、制御盤120は、配備された他の機器と接続する接続部を含む場合もある。
基板カセット111、112、113は、貼り合わせ装置100において接合される基板180、あるいは、貼り合わせ装置100において接合された基板180を収容する。また、基板カセット111、112、113は、筐体101に対して脱着自在に装着される。これにより、複数の基板180を一括して貼り合わせ装置100に装填できる。また、貼り合わせ装置100において接合された基板180を一括して回収できる。
常温部102は、筐体101の内側にそれぞれ配された、プリアライナ130、接合部140、基板ホルダラック150および基板取り外し部160と、一対のロボットアーム171、172とを備える。筐体101の内部は、貼り合わせ装置100が設置された環境の室温と略同じ温度が維持されるように温度管理される。これにより、接合部140の精度が安定するので、位置決めを精密にできる。
プリアライナ130は、高精度であるが故に狭い接合部140の調整範囲に基板180の位置が収まるように、個々の基板180の位置を仮合わせする。これにより、接合部140における位置決めを確実にすることができる。
基板ホルダラック150は、複数の基板ホルダ190を収容して待機させる。基板ホルダ190による基板180の保持は、例えば静電吸着による。
接合部140は、固定ステージ141、移動ステージ142および干渉計144を含む。また、接合部140を包囲して断熱壁145およびシャッタ146が設けられる。断熱壁145およびシャッタ146に包囲された空間は空調機等に連通して温度管理され、接合部140における位置合わせ精度を維持する。接合部140の詳細な構造と動作については、他の図を参照して後述する。
接合部140において、移動ステージ142は、基板180または基板180を保持した基板ホルダ190を搬送する。これに対して、固定ステージ141は固定された状態で、基板ホルダ190および基板180を保持する。
基板取り外し部160は、後述する加圧部240から搬出された基板ホルダ190から、当該基板ホルダ190に挟まれて接合された基板180を取り出す。基板ホルダ190から取り出された基板180は、ロボットアーム172、171および移動ステージ142により基板カセット111、112、113のうちのひとつに戻されて収容される。また、基板180を取り出された基板ホルダ190は、基板ホルダラック150に戻されて待機する。
なお、貼り合わせ装置100に装填される基板180は、単体のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラス基板等の他、それらに素子、回路、端子等が形成されたものでもよい。また、装填された基板180が、既に複数のウエハを積層して形成された積層基板である場合もある。
一対のロボットアーム171、172のうち、基板カセット111、112、113に近い側に配置されたロボットアーム171は、基板カセット111、112、113、プリアライナ130および接合部140の間で基板180を搬送する。また、ロボットアーム171は、接合する基板180の一方を裏返す機能も有する。これにより、基板180において回路、素子、端子等が形成された面を対向させて接合することができる。
一方、基板カセット111、112、113から遠い側に配置されたロボットアーム172は、接合部140、基板ホルダラック150、基板取り外し部160、基板ホルダラック150およびエアロック220の間で基板180および基板ホルダ190を搬送する。また、ロボットアーム172は、基板ホルダラック150に対する基板ホルダ190の搬入および搬出も担う。
高温部202は、断熱壁210、エアロック220、ロボットアーム230および複数の加圧部240を有する。断熱壁210は、高温部202を包囲して、高温部202の高い内部温度を維持すると共に、高温部202の外部への熱輻射を遮断する。これにより、高温部202の熱が常温部102に及ぼす影響を抑制できる。
ロボットアーム230は、加圧部240のいずれかとエアロック220との間で基板180および基板ホルダ190を搬送する。エアロック220は、常温部102側と高温部202側とに、交互に開閉するシャッタ222、224を有する。
基板180および基板ホルダ190が常温部102から高温部202に搬入される場合、まず、常温部102側のシャッタ222が開かれ、ロボットアーム172が基板180および基板ホルダ190をエアロック220に搬入する。次に、常温部102側のシャッタ222が閉じられ、高温部202側のシャッタ224が開かれる。
続いて、ロボットアーム230が、エアロック220から基板180および基板ホルダ190を搬出して、加圧部240のいずれかに装入する。加圧部240は、基板ホルダ190に挟まれた状態で加圧部240に搬入された基板180を熱間で加圧する。これにより基板180は恒久的に接合される。
高温部202から常温部102に基板180および基板ホルダ190を搬出する場合は、上記の一連の動作を逆順で実行する。これらの一連の動作により、高温部202の内部雰囲気を常温部102側に漏らすことなく、基板180および基板ホルダ190を高温部202に搬入または搬出できる。
このように、貼り合わせ装置100内の多くの領域において、基板ホルダ190は、基板180を保持した状態でロボットアーム172、230および移動ステージ142に搬送される。基板180を保持した基板ホルダ190が搬送される場合、ロボットアーム172、230は、真空吸着、静電吸着等により基板ホルダ190を吸着して保持する。また、基板ホルダ190は、静電吸着により基板180を吸着して保持する。
これにより、搬送中の基板ホルダ190から基板180が脱落することはない。しかしながら、外部から慮外の衝撃が伝わった場合等に、基板180が脱落し、あるいは、基板ホルダ190の上で基板180の位置がずれることは皆無ではない。
以上のような構造を有する貼り合わせ装置100において、当初、基板180の各々は基板カセット111、112、113のいずれかに個別に収容されている。また、基板ホルダ190も、基板ホルダラック150に個別に収容されている。
貼り合わせ装置100が稼動を開始すると、ロボットアーム171により基板180が一枚ずつプリアライナ130に搬入され、プリアラインされる。一方、ロボットアーム172は、一枚の基板ホルダ190を移動ステージ142に搭載して、ロボットアーム171の近傍まで搬送させる。ロボットアーム171は、この基板ホルダ190に、プリアラインされた基板180を搭載して保持させる。
基板180を保持した基板ホルダ190が1枚目である場合は、移動ステージ142が再びロボットアーム172の側に移動して、ロボットアーム172が裏返した基板ホルダ190が固定ステージ141に装着される。一方、基板ホルダ190が2枚目である場合は、干渉計144により位置を監視しつつ、移動ステージ142を精密に移動させて、基板ホルダ190を介して固定ステージ141に保持された基板180に対して位置合わせして接合する。
接合された基板180を挟んだ基板ホルダ190は、ロボットアーム172によりエアロック220に搬送される。エアロック220に搬送された基板180および基板ホルダ190は加圧部240に装入される。
加圧部240において加熱および加圧されることにより、基板180は互いに接合されて一体になる。その後、基板180および基板ホルダ190は、高温部202から搬出されて、基板取り外し部160において基板180および基板ホルダ190は分離される。このような使用方法に鑑みて、基板ホルダ190は、貼り合わせ装置100においては2枚1組で使用される。
貼り合わされた基板180は、基板カセット111、112、113のいずれかに搬送して収容される。この場合、移動ステージ142は、ロボットアーム172からロボットアーム171への搬送にも携わる。また、基板ホルダ190は、ロボットアーム172により基板ホルダラック150に戻される。
図2は、接合部140単独の構造を模式的に示す断面図である。接合部140は、枠体310の内側に配された固定ステージ141、移動ステージ142および昇降部360を備える。
枠体310は、互いに平行で水平な天板312および底板316と、天板312および底板316を結合する複数の支柱314とを備える。天板312、支柱314および底板316は、それぞれ高剛性な材料により形成され、内部機構の動作に係る反力が作用した場合も変形を生じない。なお、貼り合わせ装置100に組み込まれた場合は、支柱314相互の間は断熱壁145により封止される。
固定ステージ141は、天板312の下面に固定され、基板ホルダ192に保持された基板182を下面に保持する。基板182は、静電吸着により、基板ホルダ192の下面に保持されて、後述するアラインメントの対象の一方となる。
移動ステージ142は、底板316の上に載置され、底板に対して固定されたガイドレール352に案内されつつX方向に移動するXステージ354と、Xステージ354の上でY方向に移動するYステージ356とを有する。これにより、移動ステージ142に搭載された部材を、XY平面上の任意の方向に移動できる。
昇降部360は、移動ステージ142上に搭載され、シリンダ362およびピストン364を有する。ピストン364は、外部からの指示に応じて、シリンダ362内をZ方向に昇降する。
ピストン364の上面には、基板ホルダ194が保持される。更に、基板ホルダ194上に基板184が保持される。基板184は、後述するアラインメントの対象の一方となる。
なお、基板182、184の各々は、その表面(図上では下面)に、アラインメントの基準となるアラインメントマークMを有する。ただし、アラインメントマークMは、そのために設けられた図形等であるとは限らず、基板182、184に形成された配線、バンプ、スクライブライン等でもあり得る。
接合部140は、更に、一対の顕微鏡342、344と、反射鏡372とを有する。一方の顕微鏡342は、天板312の下面に、固定ステージ141に対して所定の間隔をおいて固定される。
他方の顕微鏡344および反射鏡372は、移動ステージ142に、昇降部360と共に搭載される。これにより顕微鏡344および反射鏡372は、昇降部360と共に、XY平面上を移動する。移動ステージ142が静止状態にある場合、顕微鏡344および反射鏡372と昇降部360とは既知の間隔を有する。また、昇降部360の中心と顕微鏡344との間隔は、固定ステージ141の中心と顕微鏡342との間隔に一致する。
接合部140が図示の状態にある場合に、顕微鏡342、344を用いて、対向する基板184、182のアラインメントマークMを観察できる。従って、例えば、顕微鏡342により得られた映像から、基板184の正確な位置を知ることができる。また、顕微鏡344により得られた映像から、基板182の正確な位置を知ることができる。
反射鏡372は、干渉計等の計測装置を用いて移動ステージ142の移動量を測定する場合に用いられる。なお、図1では、紙面に直角に配された反射鏡372が示されるが、Y方向の移動を検出する他の反射鏡372も装備される。
図3は、接合部140の動作を示す図である。同図に示すように、移動ステージ142がX方向に移動される。ここで、移動ステージ142の移動量を、昇降部360の中心と顕微鏡344の中心との間隔と同じにすることにより、基板184は基板182の直下に搬送される。このとき、基板182、184のアラインメントマークMは、ひとつの鉛直線上に位置する。
なお、接合部140は、貼り合わせ装置100に限らず、他の用途にも使用し得る。また、接合部140において、接合した基板180を加圧および加熱することにより、加圧部240を省略した貼り合わせ装置100を形成することもできる。
図4は、基板ホルダ194を上方から見下ろした様子を示す斜視図である。基板ホルダ194の上面には、基板184が保持されている。また、図5は、同じ基板ホルダ194を下方から見上げた様子を示す斜視図である。
基板ホルダ194は、ホルダ本体910、吸着子920および電圧印加端子930を有して、全体としては基板184よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。ホルダ本体910は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形される。吸着子920は、磁性体材料により形成され、基板184を保持する表面において、保持した基板184よりも外側に複数配される。電圧印加端子930は、基板184を保持する面の裏面に埋設される。
ホルダ本体910は、その表面において基板184を保持する領域が高い平坦性を有して、保持する基板184に接する。また、ホルダ本体910は、保持した基板184を吸着する領域の外側に、ホルダ本体910を表裏に貫通して形成された、それぞれ複数の位置決め穴912および観察穴914を有する。更に、ホルダ本体910は、保持した基板184を吸着する領域の内側に、ホルダ本体910を表裏に貫通して形成された、複数の作業穴916および検知穴918を有する。
位置決め穴912は、ロボットアーム171、172、230等に設けられた脱落防止ピンに嵌合して、基板ホルダ194の位置決めに与する。観察穴914は、基板180を保持する側の端面にフィディシャルマーク915を有する。観察穴914を通じてフィディシャルマーク915を観察することにより、後述するように基板ホルダ192、194に挟まれた場合に見えなくなる基板180の位置を推定できる。
作業穴916は、基板ホルダ194から基板184を取り外す場合に、ホルダ本体910の下面からプッシュピン等を挿通させる。検知穴918は、ホルダ本体910において基板184を吸着する領域のうち、当該基板184の縁部近傍に各々が一端を開口する。これら作業穴916および検知穴918は、基板ホルダ194を介して加圧することにより接合される基板184に影響が及ばないように、基板184に素子が形成されない外縁部領域に対応した位置に形成されることが好ましい。検知穴918の使用方法については、他の図を参照して後述する。
なお、検知穴918は、基板ホルダ190が基板180を保持しない期間に用いるホルダ本体910の穴と兼用してもよい。例えば、検知穴918を作業穴916と兼用した場合は、検知穴918にプッシュピンが挿通される。
吸着子920は、基板184を保持する平面と略同じ平面内に上面が位置するように、ホルダ本体910に形成された陥没領域に配される。電圧印加端子930は、基板184を保持する表面に対して裏面において、ホルダ本体910に埋め込まれる。電圧印加端子930を介して電圧を印加することにより、基板ホルダ194と基板184との間に電位差を生じさせて、基板184を基板ホルダ194に吸着する。
図6は、他の構造を有する基板ホルダ192を上方から見下ろした様子を示す斜視図である。また、図7は、同じ基板ホルダ192を下方から見上げた様子を示す斜視図である。この基板ホルダ192は、基板182をその下面に保持する。
基板ホルダ192は、ホルダ本体910、電圧印加端子930および永久磁石940を有して、全体としては基板182よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。ホルダ本体910は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形される。永久磁石940は、基板182を保持する表面において、保持した基板182よりも外側に複数配される。電圧印加端子930は、基板182を保持する面の裏面に埋設される。
ホルダ本体910は、その表面において基板182を保持する領域が高い平坦性を有して、保持する基板182に対して吸着する。また、ホルダ本体910は、保持した基板182を吸着する領域の外側に、ホルダ本体910を表裏に貫通して形成された、それぞれ複数の位置決め穴912、観察穴914および検知穴918をそれぞれ有する。更に、ホルダ本体910は、保持した基板182を吸着する領域の内側に、ホルダ本体910を表裏に貫通して形成された、複数の作業穴916を有する。
位置決め穴912は、接合部140に設けられた位置決めピンに嵌合して、基板ホルダ192の位置決めに与する。観察穴914は、基板180を保持する側の端面にフィディシャルマーク915を有する。観察穴914を通じてフィディシャルマーク915を観察することにより、後述するように基板ホルダ192、194に挟まれた場合に見えなくなる基板180の位置を推定できる。
作業穴916は、基板ホルダ192から基板182を取り外す場合に、基板ホルダ190の裏面からプッシュピン等を挿通させる。検知穴918は、ホルダ本体910において基板182を吸着する領域のうち、当該基板182の縁部近傍に各々が一端を開口する。これにより、基板ホルダ194を介して加圧することにより接合される基板184に、作業穴916および検知穴918の影響が及ぶことが防止される。検知穴918の使用方法については、他の図を参照して後述する。
永久磁石940は、保持された基板182の表面と共通の平面内に下面が位置するように、ホルダ本体910の周縁部に配される。電圧印加端子930は、基板182を保持する下面と反対の裏面において、ホルダ本体910に埋め込まれる。電圧印加端子930を介して電圧を印加することにより、基板ホルダ192と基板182との間に電位差を生じさせて、基板182を基板ホルダ194に吸着する。
図8は、上記のような2種類の基板ホルダ192、194を組み合わせて使用する場合の態様について説明する断面図である。図1に示した貼り合わせ装置100では、接合部140において、それぞれが基板182、184を保持した基板ホルダ192、194を位置合わせして当接させ、加圧部240において基板182、184を接着させる。このため、接合部140から加圧部240に搬送される間は、接着されていない基板182、184の相対位置を維持することが求められる。このような要求に対して、基板ホルダ192、194は、基板ホルダ194の吸着子920を基板ホルダ192の永久磁石940に吸着させることにより、基板182、184の相対位置を自律的に保持できる。
図9は、貼り合わせ装置100において用いられたロボットアーム172、230の先端部を拡大して示す斜視図である。なお、これらのロボットアーム172、230は、基板ホルダ192、194を搬送する場合があるという点で、ロボットアーム171とは仕様が異なる。
即ち、ロボットアーム171は、単独の基板182、184または貼り合わされた基板182、184を搬送する。これに対して、ロボットアーム172、230は、基板182、184を保持した基板ホルダ192、194を搬送する。基板ホルダ192、194の質量は、基板182、184よりも大きいので、ロボットアーム172、230は、大きな負荷に耐え得る構造を有する。
ロボットアーム172、230は、搭載部410、落下防止カバー420、アクチュエータ430およびブラケット440を有する。ブラケット440は、搭載部410、落下防止カバー420およびアクチュエータ430をロボットアーム本体に結合する。搭載部410およびアクチュエータ430は、ブラケット440から直接に支持され、落下防止カバー420は、アクチュエータ430から支持されると共に駆動される。
搭載部410には、二股になった先端の各上面と二股部分の付け根との3ヶ所に、パッキング412、472、吸引穴414および検知穴延長部474が配される。また、搭載部410の付け根部分のパッキング412の側部には、一対の接続端子450が配される。更に、搭載部410の上面には、4本の脱落防止ピン460が配される。
搭載部410は、パッキング412、472、吸引穴414および検知穴延長部474を備える。搭載部410と、搭載部410の上方で進退する落下防止カバー420と、落下防止カバー420を駆動するアクチュエータ430とを有する。また、これら搭載部410、落下防止カバー420およびアクチュエータ430をロボットアーム本体に装着するブラケット440も有する。
パッキング412、472は弾性を有する材料により環状に形成され、搭載部410の上面に吸着領域を形成する。搭載部410に基板ホルダ192、194が搭載された場合に、パッキング412、472はホルダ本体910の下面に気密に吸着する。また、吸引穴414はパッキング412に包囲された領域の内側に、検知穴延長部474はパッキング472に包囲された領域の内側に、それぞれ個別に配置される。
脱落防止ピン460は、基板ホルダ192の外形に対応して配置される。これにより、搭載部410に基板ホルダ192を搭載したとき、基板ホルダ192の縁部が脱落防止ピン460に当接する。これにより、搭載部410からの基板ホルダ192の脱落が防止される。基板ホルダ192が搭載部410に搭載された状態では、検知穴延長部474は検知穴918に連通する。これにより、パッキング472が、搭載部410および基板ホルダ192の間を気密に封止するので、検知穴延長部474を介して検知穴918の内部を排気できる。
また、搭載部410に基板ホルダ192を搭載することにより、接続端子450は、基板ホルダ192の電圧印加端子919に当接する。これにより、搭載部410に保持された基板ホルダ192による基板184の静電吸着を開始または解除させることができる。
落下防止カバー420は、アクチュエータ430により駆動され、ブラケット440に退避した図示の位置と、搭載部410の上方に前進した位置との間を進退する。また、搭載部410の上方に前進した場合、搭載部410の上面と落下防止カバー420の下面との間には、基板ホルダ192および基板182を合わせた厚さよりも大きな間隙がある。このような構造により、搭載部410に基板ホルダ192が支持されている場合に、基板ホルダ192の上方に位置して、吸着が解除された基板ホルダ192が搭載部410から落下することを防止できる。
図10は、検知穴918を利用した検知装置500の構造を模式的に示す図である。ここでは、基板ホルダ190がロボットアーム172に搭載されている状態において、基板180が基板ホルダ190に保持されているか否かを検知する検知装置500について説明する。なお、他の図と共通の構成要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
検知装置500は、圧力センサ510および判断部520を含む。圧力センサ510は、搭載部410に装着され、検知穴延長部474の内部圧力の変化を検出する。判断部520は、圧力センサ510の検出した圧力の変化に基づいて、基板180が基板ホルダ190に保持されているか否かを判断する。
即ち、基板180を保持した基板ホルダ190は、搭載部410に搭載される。搭載部410の吸引穴414は、制御バルブ560を介して減圧源540に連通する。また、搭載部410の検知穴延長部474は、制御バルブ550を介して減圧源540に連通する。
制御部530が制御バルブ550、560を開放させた場合、吸引穴414および検知穴延長部474の内部はそれぞれ減圧され、吸引穴414は、基板ホルダ190を搭載部410に吸着する。また、検知穴延長部474は、基板ホルダ190の検知穴918の内部を排気する。
ここで、基板180が基板ホルダ190に保持されている場合、検知穴918は基板180に封止されるので、その内部圧力は低下する。しかしながら、基板180が保持されていない場合は検知穴918の上端が開放され、減圧源540が排気しているにもかかわらず、検知穴延長部474の内部圧力は低下しない。これにより、圧力センサ510が高い圧力を検出するので、判断部520は、基板180が基板ホルダ190に保持されていないと判断する。
なお、ロボットアーム172に搭載された基板ホルダ190について、検知装置500の構造を説明したが、例えば、接合部140の固定ステージ141または移動ステージ142等のステージ装置に基板ホルダ190を搭載する場合おいても、検知装置500を形成することができる。即ち、固定ステージ141または移動ステージ142において基板ホルダ190を吸着する面に開口した吸引穴を設けることにより、検知穴918を用いた基板180の検知を同様に実施できる。
図11は、検知装置500により基板180を検知する他の態様を説明する図である。同図は、基板180が基板ホルダ190に保持された状態を、上方から見下ろした様子と、複数の検知穴918を含む断面とにより併せて示している。
複数の検知穴918は、基板ホルダ190の表面において、保持した基板180の縁部に沿って開口する。従って、基板180が基板ホルダ190の中央に保持されている場合は、全ての検知穴918が基板180により封止される。
図12は、図11に対照して、基板180が偏って保持された状態を示す。検知穴918は基板180の縁部近傍に配置されているので、基板180が偏って基板ホルダ190に保持された場合、いずれかの検知穴918が封止されなくなる。これにより、検知装置500は、単なる基板180の有無にとどまらず、基板180が偏って保持されていることを検知できる。
この場合、複数の検知穴918の各々について封止されているか否かを検知することにより、基板180が、基板ホルダ190の表面でどちら側に偏っているかも検知することができる。例えば接合部140においては、基板180の偏りが位置合わせ動作に影響するので、基板180の有無に限らず、偏りを検知することも有効になる。
図13は、検知装置500を用いた貼り合わせ装置100の制御手順を示す流れ図である。図示のように、基板ホルダ190が基板180を保持しているべき期間に、判断部520は、基板180により封止されていない検知穴918があるか否かを判断する(ステップS101)。
全ての検知穴918が基板180により封止されている場合(ステップS101:NO)は、検知穴918の監視を継続する。一方、封止されていない検知穴918がある場合(ステップS101:YES)は、封止されている検知穴918があるか否かを監視する(ステップS102)。
封止されている検知穴918がひとつもない場合(ステップS102:NO)、判断部520は、基板ホルダ190から基板180が脱落していると判断して、制御盤120に通知して貼り合わせ装置100の動作を停止させる(ステップS104)。これにより、落下した基板180により貼り合わせ装置100に生じる障害を未然に防止できる。
一方、封止された検知穴918がある場合(ステップS102:YES)は、基板ホルダ190、192の上で基板180がずれていると判断して、制御盤120に通知する。これにより、制御盤120は、その基板ホルダ190を、接合部140、加圧部240等とは異なる他の領域に搬送する(ステップS103)。これにより、例えば、基板180を基板ホルダ190に搭載しなおすことにより、積層型半導体装置の歩留りを向上させることができる。
ところで、例えば極端紫外線露光装置等のように、基板180および基板ホルダ190を真空環境で取り扱う場合がある。このような場合は、検知穴918の内部を減圧しても、検知穴918内部から外部へ気体が流れ出て減圧しても、検知穴918が封止されているか否かを検知することができない。
図14は、真空環境に対応した検知装置500の形態を模式的に示す図である。基板ホルダ190は、真空容器570の内部において基板180を保持する。真空容器570は、排気口580から排気されて、内部を減圧環境としている。このため、搭載部410は、減圧により吸着することができないので、静電吸着により基板ホルダ190を保持する。従って、搭載部410に吸引穴414は設けられていない。
しかしながら、搭載部410は、圧力源542に連通する検知穴延長部474を有する。基板ホルダ190が搭載部410に搭載されている場合、パッキング412により、検知穴918は検知穴延長部474に気密に連通する。従って、基板ホルダ190が基板180を保持して、検知穴918が基板180により封止されている場合、検知穴918の内部は、圧力源542の圧力に応じて加圧される。
一方、基板ホルダ190が基板180を保持していない場合は、全ての検知穴918が開放され、検知穴918内部の圧力が低下する。また、基板ホルダ190が基板180を偏った状態で保持している場合には、いずれかの検知穴918が開放される。従って、圧力センサ510により検知穴延長部474の内部の圧力を監視することにより、判断部520は、基板ホルダ190が基板180を保持していないこと、あるいは、基板ホルダ190が基板180を偏って保持していることを判断できる。
即ち、検知穴延長部474の内部圧力が圧力源542の圧力に近い場合は、基板ホルダ190が基板180を保持している。また、検知穴延長部474の内部圧力が低くなった場合は、基板ホルダ190は基板180を保持していないと判断できる。
なお、検知穴918の内部に供給された気体は、基板ホルダ190に保持された基板180に接触するので、気体としては、基板180に対して化学的に安定な不活性ガスを選択することが好ましい。また、検知穴918の内部圧力が基板180を押す力が、基板ホルダ190が基板180を引きつける力を上回らない限りは、減圧環境下ではない場合でも同様の構造で基板180の有無を検知することができる。また、その場合は、基板180の雰囲気、例えば大気により検知穴918の内部を加圧してもよい。
図15は、真空環境に対応した検知装置500の他の形態を模式的に示す図である。なお、図14と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。また、以下に説明する部分を除くと、他の要素および作用は図14に示した形態と共通になる。
この検知装置500は、検知穴延長部474に設けられた圧力センサ510に換えて、排気口580に設けられた質量分析計512を備える。質量分析計512は、磁場中における荷電粒子の運動が質量および電荷と関連することを利用して、排気口580を流れる気体の組成を高感度に検出する。一方、検知装置500においては、He圧力源544を備え、検知穴延長部474を介して検知穴918にHeガスを供給することにより検知穴918の内部を加圧する。
基板ホルダ190が基板180を保持していない場合は、全ての検知穴918が開放され、真空容器570の内部にHeガスが流出する。また、基板ホルダ190が基板180を偏った状態で保持している場合には、いずれかの検知穴918が開放され、Heガスが真空容器570の内部に流出する。
真空容器570の内部は常に排気されているので、内部に流出したHeガスは、やがて排気口580に到達し、質量分析計512に検出される。これにより、判断部520は、基板ホルダ190が基板180を保持していないこと、または、基板180が偏って基板ホルダ190に保持されていることが判断できる。
なお、Heガスは、質量分析以外の方法で検出してもよい。また、検知穴918に供給するガスがHeに限られるわけでもない。即ち、基板180に対して化学的な影響を及ぼすことがなく、排気口580において検出できる組成を有する気体であれば、任意のものを選択できる。
図16は、真空環境に対応した検知装置500のまた他の形態を模式的に示す図である。なお、図15と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。また、以下に説明する部分を除くと、他の要素および作用は図15に示した形態と共通になる。
この検知装置500は、基板ホルダ190の複数の検知穴918に対して、それぞれ個別に設けられたHe圧力源544、N2圧力源546を備える。これにより、基板ホルダ190が基板180を偏った状態で保持している場合に、開放された検知穴918に応じて、組成が異なる気体が真空容器570の内部に流出する。流出したガスの組成は、質量分析計512により検出されるので、判断部520は、基板ホルダ190上で基板180がどちらに偏っているかを判断できる。
いずれのガスも検出されない場合、基板ホルダ190が、基板180を中央に保持していることが判る。また、基板ホルダ190が基板180を保持していない場合は、すべてのガスが検出される。
なお、上記の例では、検知穴918のそれぞれに組成の異なるガスを供給することにより、基板180により封止されていない穴を識別する例を示した。しかしながら、検知装置500の形態がこれに限定されるわけではなく、例えば、同じ組成のガスを検知穴918のそれぞれに供給する期間を時間的にずらすことにより、ガスの流出が生じている検知穴918を区別させることもできる。
即ち、いずれかの検知穴918から流出したガスが、真空容器570の内部から掃気される時間を間にあけて、検知穴918にひとつずつガスを供給することにより、質量分析計512によりガスが検知されたタイミングに基づいて、ガスが流出している検知穴918を特定することができる。これにより、判断部520は、基板ホルダ190上で、基板180がいずれの方向にずれているかを判断することができる。
図17は、更に他の形態に係る検知装置500の構造を模式的に示す図である。この検知装置500は、図10に示した検知装置500に対照して描かれており、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。また、以下に説明する部分を除くと、図10に示した実施形態と同じ構造を有する。
この検知装置500は、搭載部410の検知穴延長部474の内部に形成された光センサ590を有する点に固有の構造がある。光センサ590は、光源592、ハーフミラー594および受光素子596を含む。
基板ホルダ190が基板180を保持して、検知穴918が基板180により封止されている場合、光源592から出射されたプローブ光は、ハーフミラー594を透過した後、検知穴918の内部を経由して基板180の下面に照射される。Siウエハ等の基板180は可視帯域の反射率が高いので、照射された光の多くが反射され、ハーフミラー594に再入射する。再入射したプローブ光の一部は、ハーフミラー594に反射されて受光素子596に入射する。これにより、判断部520は、検知穴918が基板180により封止され、基板180が基板ホルダ190に保持されていると判断する。
一方、基板ホルダ190が基板180を保持していない場合は、光源592から出射されたプローブ光は、検知穴918から基板ホルダ190の外部に放射され、受光素子596への入射光は無い。従って、判断部520は、その検知穴918が基板180により封止されていないと判断する。なお、この検知装置500は、真空環境においても同様に動作する。
以上説明したように、基板ホルダ190に検知穴を設けることにより、当該基板ホルダ190が基板180を保持しているか否かを、容易に監視することができる。従って、基板ホルダ190が、偶発的に基板180を保持しなくなることを、継続的に監視することが可能になる。これにより、接合装置あるいは貼り合わせ装置100等の動作を安定させ、積層型半導体装置の生産性を向上させることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。また、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。更に、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。