JP5582005B2 - 車両の骨格構造、骨格補強構造及びピラー構造 - Google Patents

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本発明は、メンバの長手方向で剛性が変更させられている車両の骨格構造、骨格補強構造及びピラー構造に関するものである。
従来、このような分野の技術として、特開2009−1121号公報がある。この公報に記載されたセンターピラーの補強部材(リーンフォースメント)は、上部部材と中央部材と下部部材との端面突き合わせ接合により構成され、引張り強度が異なる3種類の鋼板を溶接した後、プレス加工によって成形されている。そして、成形性を良好にするために、上部部材の鋼板の引張強度は、中央部材の鋼板よりも低くなっている。また、下部部材にあっては、上部部材よりも引張強度が小さな鋼板が利用されている。このように、補強部材を3分割することで、超高張力鋼板の利用を可能にし、補強部材の剛性を長手方向において容易に変更することができる。
特開2009−1121号公報
しかしながら、前述した従来のセンターピラー用補強部材にあっては、ピラーの強度を3段階に設定するために利用される超高張力鋼板は、加工が難く、超高張力鋼板を利用しない場合には、部位毎に更なる補強を必要とし、このことが重量の増大を引き起こすといった問題点があった。
本発明は、軽量化を可能にした車両の骨格構造、骨格補強構造及びピラー構造を提供することを目的とする。
本発明に係る車両のピラー構造は、車両のピラーのリーンフォースメントに凹状又は凸状のビード部が形成され、ビード部の単位面積当たりにおける個数密度又はビード部の外形又はビード部の深さ又は高さに基づく加工硬化量を、リーンフォースメントの長手方向で変えて、リーンフォースメントの剛性が長手方向で変えられており、リーンフォースメントのベルトライン部より上側の衝突非変形領域におけるビード部の密度又はビード部の外形又はビード部の深さ又は高さに基づく加工硬化量は、リーンフォースメントのベルトライン部より高められており、アッパーヒンジ座部を挟んで且つベルトライン部にまで達する領域Bにおける該加工硬化量と、ロアヒンジ座部の上部から離間して且つ領域Bまで達する領域Aにおける該加工硬化量と、衝突非変形領域Cにおける該加工硬化量と、の関係は、C>A>Bを満足していることを特徴とする。
このピラー構造においては、単一の板材のプレス加工によって、ビード部を成形し、このビード部では板材の加工が大きくなればなる程、板材の加工硬化を高めることができる。このようにビード部による加工硬化を利用し、車両のピラーの補強に利用されているリーンフォースメントの剛性分布を長手方向で容易に変えることができる。本発明のように、ビード部の密度又はビード部の外形又はビード部の深さ又は高さに基づく加工硬化量を長手方向で変えることは、プレス成形の金型によって容易に行うことができるので、成形性が良好になるといった効果を奏する。しかも、均一な肉厚をもった板材を利用することができるので、コスト低減を可能にし、薄い板材であっても、容易に剛性をもたせることができ、車両のピラー構造の軽量化が可能になる。また、従来にあっては、ピラーのリーンフォースメントの剛性を局所的に高めるためには、リーンフォースメントの裏面に別の補強部材を溶接やボルト止め等によって固定させる必要があり、このことは、コスト、作業性、重量などの増加を引き起こしていたが、本発明にあっては、ピラーのリーンフォースメントの剛性を補助するための部品を省略することができ、コスト、作業性、重量などの低減が図られている。
また、リーンフォースメントのベルトライン部から下側の衝突変形予定領域で、側突時に確実に変形させて、ベルトライン部より上側の衝突非変形領域での変形を適切に抑制することができる。
また、衝突変形予定領域において、アッパーヒンジ座部とロアヒンジ座部との間の2箇所に座屈予定部を作り出し、側突時に座屈予定部を座屈させてリーンフォースメントに生じる曲げモーメントを抑制することができ、これによって、衝突非変形領域の部位の変形を低減させることができる。しかも、座屈予定部を時間差をもって下から折るようにしているので、リーンフォースメントにおける衝突非変形領域の部位を立たせるように制御することができ、側突時の居住空間の確保を確実ならしめている。
また、ビード部は、千鳥状に配列されていると好適である。
ビード部を千鳥状に配列すると、均一な強度分布にすることができる。
また、ビード部は、正面視で長手方向に長い楕円形状になっていると好適である。
正面視で楕円形状になっているビード部は、楕円の長軸を長手方向に沿わせる場合と、楕円の短軸を長手方向に沿わせる場合とがあるが、楕円の長軸を長手方向に沿わせるように配列させる場合には、長手方向における曲げ強度を向上させることができる。
本発明によれば、軽量化が可能になる。
本発明に係るピラー構造に適用されるリーンフォースメントの一実施形態を示す斜視図である。 ビード部の配列を示す斜視図である。 (A)は、ビード部の拡大斜視図であり、(B)は、図3(A)のB−B線に沿う断面図である。 リーンフォースメントの側突時の変形状態を示す側面図である。 本発明に係る車両の骨格構造に適用されるメンバの一実施形態を示す斜視図である。 本発明に係るピラー構造に適用されるリーンフォースメントの他の実施形態を示す斜視図である。 図6のVII−VII線に沿う断面図である。 本発明に係る車両の骨格構造に適用されるメンバの他の実施形態を示す斜視図である。 図8のIX−IX線に沿う断面図である。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両の骨格構造、骨格補強構造及びピラー構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1に示されるように、ルーフサイドレール2とロッカ3との間で渡されるセンターピラーのリーンフォースメント1の上部には、ルーフサイドレール2に溶接させるための上部取付部1bが設けられ、リーンフォースメント1の下部には、ロッカ3に溶接させるための下部取付部1cが設けられている。
更に、リーンフォースメント1には、ドアのヒンジが固定されるアッパーヒンジ座部8とロアヒンジ座部9とが形成されている。そして、センターピラーにあっては、このような構成のリーンフォースメント1の外側は、図示されないサイドアウタパネルで覆われている。
ピラーにおいて、フロントピラーは、正面衝突やオフセット衝突時に居住空間を確保する役目をもち、これに対して、センターピラーは、側突時に居住空間を確保するのに大きく係わっている。側突時にあっては、乗員の頭部を保護するために、センターピラーの上側半分すなわちベルトライン部Lより上側が内側に倒れ込むことがないようにして、ルーフの潰れを防止する必要がある。
そこで、リーンフォースメント1には、小さく(例えば米粒位)且つ同一形状のビード部6が多数成形されている(図2参照)。ビード部6は、正面視で楕円形を有し、断面にあっては、台形状に形成されている(図3参照)。なお、断面が円弧状であってもよく、この場合のビード部6は、外形や深さは全て同じである。リーンフォースメント1のビード部6は、金型によるプレス成形時に作られ、このとき、ビード部6は、板材が塑性変形させられることで加工硬化を伴う。このようなビード部6が密で均等に配列された領域にあっては、剛性が高められることになる。
ビード部6の幅は強化したい面の幅の10%以下、好ましくは5%以下に設定すると好ましい。ビード部6の幅が大きいとビード部6が形成された部位のみが強化されるが、面全体としての強度が上がらない。しかしながら、本発明のように米粒大のビード部を密集配置させることにより、面全体に一様に加工が施されるため座屈強度を高めることができる。また、ビード部6の深さを変えることにより、加工硬化量の分布を調整することができる。例えば、図1において、領域Cのビード部6を深く、領域A、領域Bの順にビード部6を浅くすることにより、加工硬化量を調整し、面剛性の分布を調整することができる。
センターピラーにあっては、側突時、図4の二点鎖線に示すように、センターピラーの下側を適切に変形させて、センターピラーの上側すなわちベルトライン部Lより上側の衝突非変形領域Cが内側に倒れ込むことがないようにする必要がある。
そこで、図1に示すように、リーンフォースメント1の正面部1aにおいて、衝突非変形領域Cは、ビード部6が密で均等に配列され、ベルトライン部Lから下側の衝突変形予定領域Sでは、ベルトライン部Lより上側の衝突非変形領域Cにおけるビード部6の密度より小さくなっている。このような構成を採用すると、リーンフォースメント1のベルトライン部Lから下側の衝突変形予定領域Sで、側突時に確実に変形させて、ベルトライン部Lより上側の衝突非変形領域Cでの変形を適切に抑制することができる。なお、リーンフォースメント1の側面部1dにビード部6を形成してもよい。
このピラー構造においては、単一の板材のプレス加工によって、ビード部6を成形し、このビード部6では板材の加工が大きくなればなる程、板材の加工硬化を高めることができる。このようにビード部6による加工硬化を利用し、車両のピラーの補強に利用されているリーンフォースメント1の剛性分布を長手方向で容易に変えることができる。同一形状のビード部6の単位面積当たりにおける個数密度に基づく加工硬化量を、長手方向で変えることは、プレス成形の金型によって容易に行うことができるので、成形性が良好になるといった効果を奏する。しかも、均一な肉厚をもった板材を利用することができるので、コスト低減を可能にし、薄い板材であっても、容易に剛性をもたせることができ、車両のピラー構造の軽量化が可能になる。また、従来にあっては、ピラーのリーンフォースメントの剛性を局所的に高めるためには、リーンフォースメントの裏面に別の補強部材を溶接やボルト止め等によって固定させる必要があり、このことは、コスト、作業性、重量などの増加を引き起こしていたが、本発明にあっては、ピラーのリーンフォースメント1の剛性を補助するための部品を省略することができ、コスト、作業性、重量などの低減が図られている。
この衝突変形予定領域Sは、アッパーヒンジ座部8とロアヒンジ座部9とを含み、衝突変形予定領域S内でアッパーヒンジ座部8とロアヒンジ座部9との間で2箇所の座屈予定部R1,R2を確保するために、アッパーヒンジ座部8を挟んで且つベルトライン部Lにまで達する領域Bのビード部6の密度と、ロアヒンジ座部9の上部から離間して且つ領域Bまで達する領域Aのビード部6の密度と、衝突非変形領域Cのビード部6の密度と、の関係は、C>A>Bを満足している。
そして、リーンフォースメント1の正面部1aにおいて、領域A,B,C以外は、ビード部6が形成されていない一般部Dをなし、リーンフォースメント1におけるビード部6は全て同一形状を有している。
すなわち、ビード部6は、衝突非変形領域Cで密に配列され、領域Aでやや密に配列され、領域Bで粗に配列される。このようにすると、リーンフォースメント1において、アッパーヒンジ座部8とロアヒンジ座部9との間で、領域Aと一般部Dとの間が最も密度差が大きく、次に、領域Aと領域Bとの間で密度差が大きくなっている。従って、アッパーヒンジ座部8とロアヒンジ座部9との間で密度差が存在する下側には一次座屈予定部R1が作り出され、上側には二次座屈予定部R2が作り出されている。
よって、図4に示すように、側突時に座屈予定部R1,R2を長手方向に対して直交する方向で座屈させてリーンフォースメント1に生じる曲げモーメントを抑制することができ、これによって、衝突非変形領域Cの部位の変形を低減させることができる。しかも、リーンフォースメント1にあっては、側突時に一次座屈予定部R1を最初に座屈させ、次に二次座屈予定部R2を座屈させるようにしているので、リーンフォースメント1における衝突非変形領域Cの部位を立たせるように制御することができ、側突時の居住空間の確保を確実ならしめている。
なお、領域A,B,Cにおけるビード部6の密度や座屈予定部R1,R2における密度差は、リーンフォースメント1の材質などの諸条件により、適宜決定される。
また、ビード部6は、千鳥状に配列され、このようにすることで、正面部1aで均一な強度分布にすることができる。
また、ビード部6は、正面視で長手方向に長い楕円形状になっている。正面視で楕円形状になっているビード部6は、楕円の長軸を長手方向に沿わせる場合と、楕円の短軸を長手方向に沿わせる場合とがあるが、楕円の長軸を長手方向に沿わせるように配列させる場合には、リーンフォースメント1の長手方向における曲げ強度を向上させることができる。
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
図6及び図7に示すように、他のセンターピラーにあっては、リーンフォースメント20の正面部20aにおいて、衝突非変形領域Cには、外形の大きな深いビード部21により最も大きな加工硬化量が作り出され、領域Aには、中程度の大きさの外形で次に深いビード部22により次に大きな加工硬化量が作り出され、領域Bには、一番小さくて浅いビード部23により一番小さな加工硬化量が作り出され、加工硬化量は、C>A>Bの順になっている。但し、小さなビード部であっても密集させると加工硬化量が増えるので、領域A、領域Bのビード,部22,23は密度を小さくして、ピラー20の幅方向の加工量がC>A>Bとなるようにビード部の密度は調整される。
ビード部は、凹状に限らず、凸状であっても目的を達成することができる。凸状のビード部は、高さの変更により加工硬化量が変えられる。
ビード部は、正面視で楕円形に限らず、円形であっても、矩形であっても、多角形であってもよく、リーンフォースメント1におけるビード部6の形状を各部位毎に変えてもよい。
本発明は、センターピラーに限らず、フロントピラーやリアピラーにも適用可能である。
また、図5に示すように、ビード部は、ルーフサイドレールやロッカなどに利用される車両の骨格のメンバ10の全てに適用可能であり、屈曲予定部Rの採用によって、骨格のメンバ10の長手方向に剛性の強弱を容易につけることができ、衝突時のエネルギー吸収を確実に行わせるような設計を容易に行うことが可能となる。この作用効果については、リーンフォースメント1と同様である。
図8及び図9に示すように、メンバ30にあっては、同じ外形で深さの異なるビード31a,31bが等間隔すなわち均一な密度で配置されている。深いビード部31aは、高い加工硬化量を呈し、浅いビード部31bは、低い加工硬化量を呈する。よって、F−F線を境にして加工硬化量を変化させ、剛性を変えている。
また、リーンフォースメント1は、ピラーの補強部材であるが、骨格の他の補強部材にも、ビード部6は適用可能である。
面剛性の調整に利用される加工硬化量の調整は、ビード部の密度と外形と深さと高さの何れかの要素を組み合わせることにより行われる。
なお、外形とは、ビード部を正面視した場合の輪郭を言う。
1,20…リーンフォースメント、6,21,22,23,31a,31b…ビード部、8…アッパーヒンジ座部、9…ロアヒンジ座部、A,B…領域、C…衝突非変形領域、D…一般部、L…ベルトライン部、R,R1,R2…座屈予定部、S…衝突変形予定領域。

Claims (3)

  1. 車両のピラーのリーンフォースメントに凹状又は凸状のビード部が形成され、
    前記ビード部の単位面積当たりにおける個数密度又は前記ビード部の外形又は前記ビード部の深さ又は高さに基づく加工硬化量を、前記リーンフォースメントの長手方向で変えて、前記リーンフォースメントの剛性が長手方向で変えられている車両のピラー構造であって、
    前記リーンフォースメントのベルトライン部より上側の衝突非変形領域における前記ビード部の前記加工硬化量は、前記リーンフォースメントの前記ベルトライン部から下側の衝突変形予定領域より高められており、
    前記衝突変形予定領域は、アッパーヒンジ座部とロアヒンジ座部とを含み、
    前記アッパーヒンジ座部を挟んで且つ前記ベルトライン部にまで達する領域Bにおける前記加工硬化量と、前記ロアヒンジ座部の上部から離間して且つ前記領域Bまで達する領域Aにおける前記加工硬化量と、前記衝突非変形領域Cにおける前記加工硬化量と、の関係は、C>A>Bを満足することを特徴とする記載のピラー構造。
  2. 前記ビード部は、千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項に記載のピラー構造。
  3. 前記ビード部は、正面視で長手方向に長い楕円形状になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のピラー構造。
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