JP5573515B2 - 圧力増幅装置 - Google Patents

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Description

本発明は、供給流体と入力流体とを受け、この入力流体の圧力の変化に応じて出力流体の圧力を変化させる圧力増幅装置に関し、特に、入力圧/出力圧特性に生じる不感帯を改善する圧力増幅装置に関する。
一般に、図4に示すような圧力増幅装置10が知られている。図4は、圧力増幅装置10の縦断面図であり、これを用いて圧力増幅装置10の構成および動作について説明する。
圧力増幅装置10は、本体11、フィードバック室20、第3ダイアフラム21、バイアス室30、第4ダイアフラム31、入力圧室40、第1ダイアフラム41、排気圧室50、出力圧室60、第2ダイアフラム61、隔壁62、供給圧室70、ブリード孔72、供給口73、移動体80、弁プラグ90、ばね92、第1流路R1、第2流路R2、第3流路R3および第4流路R4を備えている。
本体11は、圧力増幅装置10の外郭を形成するベース(筐体)であり、この内部にフィードバック室20、バイアス室30、入力圧室40、排気圧室50、出力圧室60および供給圧室70の6つの室が、この順番で上方から下方(A方向)へ形成されている。
フィードバック室20は、本体11、第3ダイアフラム21および移動体80によって仕切られ、第3流路R3を介して出力圧室60と連通している。
バイアス室30は、第3ダイアフラム21を介してフィードバック室20に隣接し、本体11、第3ダイアフラム21、第4ダイアフラム31および移動体80によって仕切られ、第4流路R4を介して供給圧室70と連通している。
入力圧室40は、第4ダイアフラム31を介してバイアス室30に隣接し、本体11、第4ダイアフラム31、第1ダイアフラム41および移動体80によって仕切られ、入力口から入力流体FIが入力される。
排気圧室50は、第1ダイアフラム41を介して入力圧室40に隣接し、本体11、第1ダイアフラム41、第2ダイアフラム61および移動体80によって仕切られ、排気口から出力流体が排気流体FXとして外部に排気される。
出力圧室60は、第2ダイアフラム61を介して排気圧室50に隣接し、本体11、第2ダイアフラム61、隔壁62および移動体80によって仕切られ、出力口から出力流体FOが外部に出力される。
供給圧室70は、隔壁62を介して出力圧室60に隣接し、本体11および隔壁62によって仕切られ、供給口73から供給流体FSが供給される。隔壁62には、供給圧室70と出力圧室60とを連通するブリード孔72が設けられている。
移動体80は、第1ダイアフラム41、第2ダイアフラム61、第3ダイアフラム21および第4ダイアフラム31によって支持され、例えば、第1ダイアフラム41が受ける入力流体FIの増加または減少によって、A方向またはB方向に移動する。
弁プラグ90は、略半球状の頭部、円柱状の中間部、中間部から円錐状に広がった脚部の各部から構成される。
弁プラグ90は、出力圧室60および供給圧室70に亘って位置する。頭部および中間部は出力圧室60内に位置し、頭部が移動体80に接触する。また、脚部は供給圧室70内に位置し、円錐状の部分が隔壁62に接触する。
ばね92は、供給圧室70内に位置し、一端が供給圧室70の底面に、他端が弁プラグ90の底面に接続される。これによって、弁プラグ90は、ばね92によって支持される。
つぎに、圧力増幅装置10の動作について説明する。動作説明は、入出力圧が平衡している状態、入出力圧が増加している状態、入出力圧が減少している状態の3つの状態について説明する。
なお、以下で記載されるA方向とは、紙面の上から下へ向かう方向、すなわち、移動体80から弁プラグ90へ向かう方向をいう。また、B方向とは、紙面の下から上へ向かう方向、すなわち、弁プラグ90から移動体80へ向かう方向をいう。
(平衡状態)
平衡状態では、移動体80および弁プラグ90が以下のように平衡して、入力圧PNおよび出力圧POがいずれも一定となる平衡状態を保つ。
移動体80は、支持されている第1乃至第4ダイアフラム41、61、21、31から受ける力によって平衡する。第1乃至第4ダイアフラム41、61、21、31は、入力圧PN、出力圧POおよび供給圧PSから以下の力を受ける。
第1ダイアフラム41は、入力圧室40内の入力圧PNを受けることによってA方向の力を生じる。一方、第4ダイアフラム31は、入力圧PNを受けることによってB方向の力を生じる。
第2ダイアフラム61は、出力圧室60内の出力圧POを受けることによってB方向の力を生じる。一方、第3ダイアフラム21は、第3流路R3によって導かれた出力圧POを受けることによってA方向の力を生じる。
第3ダイアフラム21は、第4流路R4によって導かれた供給圧室70内の供給圧PSを受けることによってB方向の力を生じる。一方、第4ダイアフラム31は、同様の供給圧PSを受けることによってA方向の力を生じる。
そして、移動体80は、第1乃至第4ダイアフラム41、61、21、31から上記の力を受けて力学的に平衡する。
また、弁プラグ90は、脚部の円錐状の部分と隔壁62とが接触している。一方、弁プラグ90の頭部と移動体80の一端との間に間隙が生じる。
この間隙はつぎの理由により生じる。隔壁62に設けられたブリード孔72を通って、供給圧室70から出力圧室60へ僅かな供給流体FSが流れる。出力圧POを一定にするために、この流れ込んだ供給流体FSを排気する必要がある。
流れ込んだ供給流体FSに押された移動体80が僅かにB方向に移動することで、弁プラグ90の頭部と移動体80の一端との間に間隙が生じ、この間隙によって第2流路R2が形成される。そして、ブリード孔72から流入した供給流体FSは、第2流路R2を通って出力圧室60から排気圧室50へ流れ(排気)、入力圧PNおよび出力圧POがいずれも一定となる平衡状態を保つ。
(圧力増加状態)
圧力増加状態では、入力圧PNが増加し、移動体80および弁プラグ90が以下のように動くことによって、出力圧POが増加する。
第1ダイアフラム41および第4ダイアフラム31は入力圧PNを受ける。ここで、第1ダイアフラム41の受圧面積SF1は、第4ダイアフラム31の受圧面積SF4より大きいため、入力圧PNの増加圧力に受圧面積SF1と受圧面積SF4との差を乗算した力がA方向に生じる。
この力によって移動体80はA方向に移動し、弁プラグ90の頭部と移動体80の一端とが接触し、第2流路R2は閉じられ、移動体80が弁プラグ90をA方向に押す。
この弁プラグ90をA方向に押す力が、弁プラグ90の底面をB方向に押すばね92のばね力(付勢力)より大きい場合、弁プラグ90は移動体80とともにA方向へ移動する。
このとき、弁プラグ90の脚部の円錐状の部分と隔壁62との間に間隙が生じ、この間隙によって第1流路R1が形成される。これによって、供給圧室70内の供給流体FSが、第1流路R1を通り供給圧室70から出力圧室60へ流れて、出力圧POが増加する。なお、第2流路R2は閉じられているので、出力圧室60から排気は行われない。
出力圧POの増加に伴い、第2ダイアフラム61および第3ダイアフラム21で受ける圧力は増加する。ここで、第2ダイアフラム61の受圧面積SF2は、第3ダイアフラム21の受圧面積SF3より大きいため、出力圧POの増加圧力に受圧面積SF2と受圧面積SF3との差を乗算した力がB方向に生じる。
この力によって、移動体80および弁プラグ90はB方向に移動し、第1流路R1が閉じられることによって、出力圧POの増加は止まり一定の圧力になって平衡状態に落ち着く。
上述したフィードバック室20および第3ダイアフラム21が存在せず、第2ダイアフラム61のみでも、移動体80および弁プラグ90をB方向に移動させることができる。なお、第3ダイアフラム21が存在しない場合と比べて、存在する場合の方が、圧力ゲイン(出力圧POと入力圧PNとの比)を高くすることができる。
(圧力減少状態)
圧力減少状態では、入力圧PNが減少し、移動体80および弁プラグ90が以下のように動くことによって、出力圧POが減少する。
入力圧PNを受ける第1ダイアフラム41および第4ダイアフラム31によって、入力圧PNの減少圧力に受圧面積SF1と受圧面積SF4との差を乗算した力がB方向に生じる。
この力によって移動体80はB方向に移動し、弁プラグ90の頭部と移動体80の一端とが離れ、第2流路R2が形成される。これによって、出力圧室60内の出力流体FOが、第2流路R2を通り出力圧室60から排気圧室50へ流れて(排気)、出力圧POが減少する。なお、第1流路R1は閉じられているので、供給圧室70からの供給は行われない。
出力圧POの減少に伴い、第2ダイアフラム61および第3ダイアフラム21で受ける圧力は減少するので、出力圧POの減少圧力に受圧面積SF2と受圧面積SF3との差を乗算した力がA方向に生じる。
この力によって、移動体80はA方向に移動し、第2流路R2が閉じられることによって、出力圧POの減少は止まり一定の圧力になって平衡状態に落ち着く。
ここで、圧力増加状態と同様に、フィードバック室20および第3ダイアフラム21が存在せず、第2ダイアフラム61のみでも、移動体80をA方向に移動させることができる。
なお、バイアス室30は、平衡状態において、供給圧PSの変動に対する出力圧POの変動を補償するための動作を行う。
すなわち、供給圧PSが増加した場合、入力圧PNも増加する。そして、第3ダイアフラム21および第4ダイアフラム31は、第4流路R4を介して供給圧PSを受ける。ここで、第3ダイアフラム21の受圧面積SF3は、第4ダイアフラム31の受圧面積SF4より大きいため、供給圧PSの増加圧力に受圧面積SF3と受圧面積SF4との差を乗算した力がB方向に生じる。この力によって供給圧変動補償を行うことができる。
なお、特許文献1には、図4で示した構造の圧力増幅器が記載されている。
特開2003−206901号公報
通常、入力圧PNが増加すると、これに伴いすぐに出力圧POが増加するのが好ましい。しかし、平衡状態において、弁プラグ90が隔壁62に押し付けられているため、入力圧PNが一定値まで増加しないと出力圧POは変化せず、一定値以上増加して始めて出力圧POが増加するという問題がある。この出力圧POが変化しない一定値のことを不感帯という。以下に、不感帯が生じる動作について図5を用いて説明する。
図5は、図4と同じ縦断面であるが、平衡状態における弁プラグ90に印加される力を追加した図である。なお、以下で説明する力の方向は、B方向を正、A方向を負とする。
出力圧室60内において、弁プラグ90の頭部がB方向(排気圧室50方向)へ出力圧PO(kPa)を受ける(矢印C1参照)。この出力圧POを受ける弁プラグ90の面積(以下、「排気弁面積」という)をAe(m)とし、弁プラグ90の円柱状の中間部の断面積をAv(m)とすると、弁プラグ90はB方向へ、(Ae−Av)×Poの力を受ける。
また、弁プラグ90の脚部の円錐状の部分がA方向(供給圧室70方向)へ出力圧PO(kPa)を受ける(矢印C2参照)。この出力圧POを受ける弁プラグ90の面積(以下、「給気弁面積」という)をAd(m)とすると、弁プラグ90はA方向へ、(Ad−Av)×Poの力を受ける。
供給圧室70内において、弁プラグ90の底面がB方向へ供給圧PS(kPa)を受ける(矢印C3参照)。この供給圧PSを受ける弁プラグ90の面積をAd(m)と同じとすると、弁プラグ90はB方向へ、Ad×PSの力を受ける。
また、弁プラグ90の底面は、支持されたばね92よりB方向へばね力FBを受ける。ばね92が弁プラグ90によって圧縮された変位量をD(m)、ばね定数をk(N/m)とすると、ばね力FBはk×Dとなる。このように、弁プラグ90には上記4つの力が印加されている。
平衡状態において、上述したように、弁プラグ90の頭部と移動体80の一端との間に間隙が生じている。
一方、弁プラグ90の脚部の円錐状の部分は、上記4つの力の合成力である下記式(3)の力Fdによって、隔壁62に押し付けられている(B方向への押し付け)。
Fd(N)=Ad×PS−(Ad−Ae)×PO+k×D 式(3)
このFdが不感帯を生じさせる力である。すなわち、入力圧PNが増加した場合、移動体80が弁プラグ90をA方向へ押すが、この押す力がFdに達するまで、弁プラグ90は隔壁62に押し付けられたままで、第1流路R1は形成されず供給流体FSが流入しない。このため、出力圧POは変化せず不感帯を生じる。
本発明は、この不感帯を小さくする圧力増幅装置の提供を目的とするものである。
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、
供給流体と入力流体とを受け、この入力流体の圧力の変化に応じて出力流体の圧力を変化させる圧力増幅装置において、
前記入力流体を受ける第1ダイアフラムで仕切られる入力圧室と、
前記出力流体を受ける第2ダイアフラムで仕切られ、この出力流体を出力する出力圧室と、
前記供給流体を受け、前記出力圧室へ前記供給流体を供給する供給圧室と、
前記出力圧室から前記出力流体を排気する排気圧室と、
前記第1および第2ダイアフラムによって支持される移動体と、
前記出力圧室および前記供給圧室に亘って位置し、前記移動体によって押される場合、前記供給圧室から前記出力圧室への第1流路を形成し、前記移動体と接触しない場合、前記出力圧室から前記排気圧室への第2流路を形成する弁プラグと、
前記供給圧室を仕切り、前記出力圧室と反対方向に前記供給流体を受け、前記弁プラグの側面、底面または前記側面と前記底面との角に接続された不感帯補償ダイアフラムと、
前記不感帯補償ダイアフラムを介して前記供給圧室に隣接し、前記供給流体の圧力より低い圧力を保持する低圧力室と、
この低圧力室の内部に前記弁プラグの底面を支持する弾性体と、
を備え、
前記弁プラグの底面に穴を形成し、
前記弾性体の中空部を通って前記穴に挿入される軸部材を備えたことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項に記載の発明において、
前記弾性体の弾性特性は、前記不感帯補償ダイアフラムの受圧面積、前記供給流体の圧力、前記供給圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積、前記排気圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積、前記弾性体の変位量、および前記圧力増幅装置によって開閉されるバルブのスプリングレンジの上限値の少なくともいずれかによって定まる、ことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項に記載の発明において、
前記弾性体の弾性特性は、下記式(1)によって示される値以上であることを特徴とする。
(Ac×PS+(Ad−Ae)×POUP)÷D 式(1)
但し、Acは前記不感帯補償ダイアフラムの受圧面積、PSは前記供給流体の圧力、Adは前記供給圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積、Aeは前記排気圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積、Dは前記弾性体の変位量、POUPは前記スプリングレンジの上限値である。
請求項の発明は、請求項に記載の発明において、
前記弾性体の弾性特性は、前記供給圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積と前記排気圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積とが等しい場合、下記式(2)によって示される値以上であることを特徴とする。
(Ac×PS)÷D 式(2)
但し、Acは前記不感帯補償ダイアフラムの受圧面積、PSは前記供給流体の圧力、Dは前記弾性体の変位量である。

本発明によれば、供給圧室を仕切り、出力圧室と反対方向に供給流体を受ける不感帯補償ダイアフラムによって、圧力増幅装置の不感帯を小さくできる。
本発明を適用した圧力増幅装置の縦断面図の例である。 図1の圧力増幅装置の不感帯を説明するための縦断面図の例である。 本発明を適用した圧力増幅装置の縦断面図の他の例である。 背景技術で示した圧力増幅装置の縦断面図の例である。 図4の圧力増幅装置の不感帯を説明するための縦断面図の例である。
本実施例を適用した圧力増幅装置について、図1を用いて説明する。図1は圧力増幅装置100の縦断面図である。
図1において、図4と同一のものは同一符号を付し説明を省略し、本実施例の特徴である不感帯補償ダイアフラム110を中心に説明する。
圧力増幅装置100は、図4に示した各部の他に、不感帯補償ダイアフラム110、大気圧室120、および図4のばね92の代わりにばね130を備える。
不感帯補償ダイアフラム110は、弁プラグ90の脚部の側面と本体11とに接続される。これによって、供給圧室70は、不感帯補償ダイアフラム110、隔壁62および本体11によって仕切られる。
なお、不感帯補償ダイアフラム110は、弁プラグ90の側面の代わりに、弁プラグ90の底面、または側面と底面との角に接続されてもよい。
大気圧室(低圧力室)120は、不感帯補償ダイアフラム110を介して供給圧室70に隣接し、不感帯補償ダイアフラム110、本体11および弁プラグ90によって仕切られ、大気口から大気FAが流入し、大気圧を保持している。
なお、大気圧室120は、供給圧PSより低い圧力を保持する室(低圧力室)であってもよい。
ばね(弾性体)130は、大気圧室120内に位置し、一端が大気圧室120の底面に、他端が弁プラグ90の底面に接続される。これによって、弁プラグ90は、ばね130によって支持される。
圧力増幅装置100の動作は、基本的に図4において説明した圧力増幅装置10と同様であるが、不感帯補償ダイアフラム110を備えたことによって、不感帯を小さくすることができるので、図2を用いて圧力増幅装置100の不感帯について説明する。
図2は、図1と同じ縦断面であるが、平衡状態における弁プラグ90に印加される力を追加した図である。なお、以下で説明する力の方向は、B方向を正、A方向を負とする。
図2において、矢印C1、C2で示した出力圧POから受ける力は、図5で説明した力と同じである。
供給圧室70内において、不感帯補償ダイアフラム110が受ける力は、以下のようになる。
供給流体FSが供給される供給口73の位置は、不感帯補償ダイアフラム110の位置に対して出力圧室60の方向にある。このため、不感帯補償ダイアフラム110は、供給口73からの供給流体FSをA方向(供給口73の位置に対して出力圧室60と反対の方向)に受ける(矢印C10参照)。この不感帯補償ダイアフラム110の受圧面積をAc(m)とすると、不感帯補償ダイアフラム110はA方向へAc×PSの力を受ける。
また、弁プラグ90の底面は、支持されたばね130からB方向へばね力FBを受ける。ばね130が弁プラグ90によって圧縮された変位量をD(m)、ばね定数をk(N/m)とすると、ばね力FBはk×Dとなる。このように、弁プラグ90には上記4つの力が印加されている。
従って、図5での説明と同様に、不感帯の発生原因となる弁プラグ90の脚部の円錐状の部分が受ける力Fdkは、上記4つの力の合成力である下記式(4)の力となり、この力によって、隔壁62に押し付けられている(B方向への押し付け)。
Fdk(N)=−Ac×PS−(Ad−Ae)×PO+k×D 式(4)
上記式(3)と式(4)とを比較すると、供給圧PSから受ける力が異なる。式(3)はAd×PS(B方向)、式(4)は−Ac×PS(A方向)であり、力の方向が異なる。
すなわち、式(3)では、弁プラグ90の隔壁62への押し付けを増大させるように働き、式(4)では、弁プラグ90の隔壁62への押し付けを抑えるように働く。このため、本実施例(図2)において、弁プラグ90を隔壁62へ押し付ける力は、図5の場合より、(Ad×PS+Ac×PS)の分だけ小さくなる。
従って、この小さくなった力に相当する入力圧PN分だけ不感帯を小さくすることができる。このように、本実施例によれば、不感帯補償ダイアフラム110の上記の動作によって、不感帯を小さくすることができる。
つぎに、ばね130のばね定数(弾性特性)kは、上記式(4)から定めることができる。しかし、式(4)は、変化する出力圧PO(変量)を含んでいるため、これを固定値に置き換えてばね定数kを求めなければらない。
出力圧POが変化して平衡状態に達した場合、弁プラグ90の脚部の円錐状の部分と隔壁62とが接触して、出力圧室60への供給流体FSの流入を止めなければならない。接触するためには、上記式(4)のFdkはゼロ以上でなければならず、これによって、弁プラグ90にB方向の力が働き、隔壁62に接触する。
ここで、出力圧POが最大の場合、式(4)のFdkは最小になる。従って、出力圧POが最大の場合に、Fdkがゼロ以上となるようにばね定数kを定めれば、出力圧POが変化しても弁プラグ90は隔壁62に接触する。
出力圧POの最大値は、圧力増幅装置100の出力流体FOが印加されて開閉するバルブ(図示しない)のスプリングレンジの上限値POUP(kPa)である。バルブ内にはばね(図示しない)があり、出力圧POはこのばね力に抗してバルブを開閉する。このばね力の範囲はバルブの仕様で定められており、この上限値がスプリングレンジの上限値POUPに相当する。例えば、標準圧において、供給圧PSが140kPaのときPOUPは100kPa、倍圧において、供給圧PSが240kPaのときPOUPは200kPaと定められている。
従って、上記式(4)のPOをPOUPに置き換え、Fdkをゼロ以上とすると、ばね定数kは下記式(5)になる。
k>=(Ac×PS+(Ad−Ae)×POUP)÷D 式(5)
なお、>=は「左辺の値は右辺の値以上」を表し、÷は除算を表す。
また、給気弁面積Adと排気弁面積Aeとが等しければ、ばね定数kは下記式(6)になる。
k>=(Ac×PS)÷D 式(6)
なお、不感帯を小さくするには、ばね130の自由長(伸縮していない場合のばねの長さ)を長くして、ばね定数kをなるべく小さくすることが好ましい。
これによって、ばね力FB(=k×D)は小さくなり、第1流路R1を形成するための力も小さくなって、不感帯を小さくすることができる。
つぎに、弁プラグが動く場合、その動作を安定させるために、弁プラグの横方向への動きを小さくする実施例について、図3を用いて説明する。図3は、図1に対し、軸230を追加し、弁プラグ210に穴220を設けた圧力増幅器200の縦断面図であり、図1と同一のものは同一符号を付し説明を省略する。
図3において、弁プラグ210が図1の弁プラグ90と異なる点は、弁プラグ210の底面に、後述する軸230を挿入する穴220を設けた点である。
軸(軸部材)230は、一端を大気圧室120の底面に対して略垂直に固定し、ばね130の中空部を通って、穴220に挿入される。なお、図1と同様に、ばね130は、弁プラグ210の底面に接続され、弁プラグ210を支持する。
図1、図2において説明したように、弁プラグが縦方向(AまたはB方向)に動作することによって、圧力増幅器を安定に動作させることができるので、弁プラグの横方向への動きをなるべく抑える必要がある。
このため、縦方向に立てた軸230を弁プラグ210の穴220に挿入することによって、弁プラグ210の横方向への動きを抑え、圧力増幅器200の動作をより安定にすることができる。
なお、上述した圧力増幅器は、出力が1つの単動型の圧力増幅器について説明したが、出力が2つ以上の複動型の圧力増幅器にも適用することができる。例えば、図1のフィードバック室20の上方(B方向)に、もう1つの弁プラグ、不感帯補償ダイアフラム、大気圧室およびばねを設けることによって、2つの出力を有する複動型の圧力増幅器を実現することができる。
なお、本発明は、前述の実施例に限定されることなく、その本質を逸脱しない範囲で、さらに多くの変更および変形を含む。
10、100、200 圧力増幅装置
11 本体
20 フィードバック室
21 第3ダイアフラム
30 バイアス室
31 第4ダイアフラム
40 入力圧室
41 第1ダイアフラム
50 排気圧室
60 出力圧室
61 第2ダイアフラム
62 隔壁
70 供給圧室
72 ブリード孔
73 供給口
80 移動体
90、210 弁プラグ
92、130 ばね(弾性体)
110 不感帯補償ダイアフラム
120 大気圧室(低圧力室)
220 穴
230 軸(軸部材)
R1 第1流路
R2 第2流路
R3 第3流路
R4 第4流路

Claims (4)

  1. 供給流体と入力流体とを受け、この入力流体の圧力の変化に応じて出力流体の圧力を変化させる圧力増幅装置において、
    前記入力流体を受ける第1ダイアフラムで仕切られる入力圧室と、
    前記出力流体を受ける第2ダイアフラムで仕切られ、この出力流体を出力する出力圧室と、
    前記供給流体を受け、前記出力圧室へ前記供給流体を供給する供給圧室と、
    前記出力圧室から前記出力流体を排気する排気圧室と、
    前記第1および第2ダイアフラムによって支持される移動体と、
    前記出力圧室および前記供給圧室に亘って位置し、前記移動体によって押される場合、前記供給圧室から前記出力圧室への第1流路を形成し、前記移動体と接触しない場合、前記出力圧室から前記排気圧室への第2流路を形成する弁プラグと、
    前記供給圧室を仕切り、前記出力圧室と反対方向に前記供給流体を受け、前記弁プラグの側面、底面または前記側面と前記底面との角に接続された不感帯補償ダイアフラムと、
    前記不感帯補償ダイアフラムを介して前記供給圧室に隣接し、前記供給流体の圧力より低い圧力を保持する低圧力室と、
    この低圧力室の内部に前記弁プラグの底面を支持する弾性体と、
    を備え、
    前記弁プラグの底面に穴を形成し、
    前記弾性体の中空部を通って前記穴に挿入される軸部材を備えたことを特徴とする圧力増幅装置。
  2. 前記弾性体の弾性特性は、前記不感帯補償ダイアフラムの受圧面積、前記供給流体の圧力、前記供給圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積、前記排気圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積、前記弾性体の変位量、および前記圧力増幅装置によって開閉されるバルブのスプリングレンジの上限値の少なくともいずれかによって定まる、ことを特徴とする請求項に記載の圧力増幅装置。
  3. 前記弾性体の弾性特性は、下記式(1)によって示される値以上であることを特徴とする請求項に記載の圧力増幅装置。
    (Ac×PS+(Ad−Ae)×POUP)÷D 式(1)
    但し、Acは前記不感帯補償ダイアフラムの受圧面積、PSは前記供給流体の圧力、Adは前記供給圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積、Aeは前記排気圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積、Dは前記弾性体の変位量、POUPは前記スプリングレンジの上限値である。
  4. 前記弾性体の弾性特性は、前記供給圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積と前記排気圧室方向に前記出力流体を受ける前記弁プラグの面積とが等しい場合、下記式(2)によって示される値以上であることを特徴とする請求項に記載の圧力増幅装置。
    (Ac×PS)÷D 式(2)
    但し、Acは前記不感帯補償ダイアフラムの受圧面積、PSは前記供給流体の圧力、Dは前記弾性体の変位量である。
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