以下、本発明のエアバッグの一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2において、1はエアバッグで、このエアバッグ1を備えたエアバッグ装置2は、車両としての自動車の車室4のルーフサイド部5に配置されている。そして、このエアバッグ1は、カーテンエアバッグ、側突用エアバッグ、サイドエアバッグ、インフレータブルカーテンタイプ、あるいは頭部保護用エアバッグなどとも呼ばれるもので、側面衝突などの衝撃を受けた際に、乗員の側方に面状に展開し、被保護物である乗員を保護するようになっている。
また、この自動車は、車室4内に乗員が着座可能な前席及び後席を備え、これら前席及び後席に対応して、それぞれ上部に開口可能な窓部(サイドウィンドウ)を備えたドアが設けられ、車室4の両側に所定面としての車体縦壁部10が構成されている。
また、車室4の両側には、前側から順に、フロントピラーとも呼ばれるAピラー、センターピラーとも呼ばれるBピラー、リアピラーなどとも呼ばれるCピラーなどのピラーが設けられ、これらピラーの上側に、ルーフサイドレールを介して天井パネルが支持されている。また、各ピラーは、乗員側すなわち車室4内側が樹脂製のピラーガーニッシュで覆われて、突出部としてのピラー部12が構成されている。なお、図1に示すピラー部12はBピラーである。また、各座席には、シートベルトが設けられ、Bピラーなどのピラー部12には、これらシートベルトを支持する支持部が設けられている。さらに、天井パネルは、軟質のヘッドライニングにより覆われている。
そして、エアバッグ装置2は、前後の座席の乗員を保護可能な、いわゆる前後席用エアバッグであり、ルーフサイドレールとヘッドライニングとなどに囲まれたルーフサイド部5に前後方向を長手方向として細長く折り畳んで収納されたエアバッグ1と、車体上方に収納されこのエアバッグ1にガスを供給するインフレータ14と、折り畳んだエアバッグ1を覆って形状を保持する図示しない筒状の被覆部材などとを備え、ブラケットを介してルーフサイドレールに取り付けられている。
そして、エアバッグ1は、単数あるいは複数の基布を組み合わせて扁平な袋状に形成されたエアバッグ本体21を備えている。このエアバッグ本体21は、前後方向を長手方向とし、図1(b)及び図2に示すように、車体縦壁部10側である車幅方向の外側に配置される外側基布部24と、車室4内側である車幅方向の内側に配置される内側基布部25とをメインパネルとして重ね、接合部である所定の縫製部26で縫い合わせ、図1(a)に示すように、ガスが流入して膨張展開する袋状の膨張部27と、エアバッグ本体21の中央上部に位置して膨張部27を外部に連通し、インフレータ14が接続されるガス導入口28と、ガスが流入せず膨張展開しないシート状の非膨張部29となどが設けられている。
そして、膨張部27は、中空部である気室であり、エアバッグ本体21の上部に位置するガス供給通路31と、エアバッグ本体21の下部に位置し、かつ、ガス供給通路31の下側に連通する保護膨張部32と、ガス供給通路31をガス導入口28に連通する導入口通路33とを備えている。そして、ガス供給通路31は、導入口通路33により上側部がガス導入口28に直接連通し、すなわち、導入口通路33によりインフレータ14に直接接続されてガスが直接供給される。さらに、ガス供給通路31は、後述する折畳形状との関係で、上側部が上側案内膨張部34、下側部が下側案内膨張部35となっている。ここでは、ガス供給通路31の上半分、すなわち上側約50%の高さの部分が上側案内膨張部34となり、ガス供給通路31の下半分、すなわち下側約50%の高さの部分が下側案内膨張部35となっている。また、保護膨張部32は、非膨張部29により前後に区画され、前席保護部である前側保護膨張部36と、後席保護部である後側保護膨張部37とが形成されている。
すなわち、この膨張部27は、基本的には、上側がガスが導入される上流側であり、下側が下流側であって、ガス導入口28すなわち導入口通路33から供給されるガスは、基本的には、ガス供給通路31の上側案内膨張部34、下側案内膨張部35、保護膨張部32の順に供給される。
また、非膨張部29は、外側基布部24及び内側基布部25のいずれか1枚の基布で構成され、エアバッグ本体21の長手方向の中央部に位置し、ピラー部12を覆う位置に配置されている。
さらに、非膨張部29の上側に位置するガス供給通路31には、一部にガスの流入が制限された制限部41が形成されているとともに、この制限部41に沿って連通部42が形成され、いわばガス供給通路31が狭く形成されている。ここでは、制限部41は、ピラー部12付近、すなわち、ピラー部12に対応する位置、すなわち、ピラー部12を覆うか、ピラー部12の上方に対向する位置にのみ配置され、かつ、後述するように折畳状態で保護折畳部52の車体縦壁部10側に位置する部分すなわち上側案内膨張部34のみに位置し、縫製部26により区画され、ガスが全く導入されない部分となっている。すなわち、上側案内膨張部34は制限部41により前後に区画され、ガス供給通路31は、制限部41の下側に位置する下側案内膨張部35に設けられた連通部42のみにより前後が連通するようになっている。また、制限部41の高さ方向の寸法は、上側案内膨張部34と同じく、ガス供給通路31の上半分すなわち上側約50%であり、連通部42の高さ方向の寸法は、下側案内膨張部35と同じく、ガス供給通路31の下半分すなわち下側約50%となっている。
また、縫製部26は、膨張部27の外周を縫製する外周連結部である外周縫製部44を備えるとともに、必要に応じて、膨張部27、特に保護膨張部32の展開時の幅寸法を規制する図示しない規制部が備えられている。この規制部は、例えば、前側保護膨張部36及び後側保護膨張部37にそれぞれ1カ所あるいは複数カ所に位置し、外周縫製部44と一体あるいは別体に形成され、あるいは、ガス供給通路31と保護膨張部32との境界部分に形成されている。また、上記の制限部41は、外周縫製部44を下方に屈曲して形成され、いわば、外周縫製部44でガス供給通路31の一部をえぐるようにして形成されている。
さらに、外殻を構成する外側基布部24と内側基布部25との間には、これら外側基布部24及び内側基布部25とは別体の基布により、ガスを案内し、あるいは、外側基布部24及び内側基布部25を保護し、あるいは展開時の膨張部27の幅寸法を規制する手段として、管状のインナパイプあるいはシート状の隔壁体を縫合などして取り付けることもできる。
また、エアバッグ本体21の上縁部には、図示しないが、導入口通路33を設けた部分を除き、ブラケットへ取り付けのための取付部である取付片が所定間隔で複数形成されている。各取付片は、ビスなどの取付手段によりブラケットへ取り付けられ、このブラケットが、車体のルーフサイド部に取り付けられるようになっている。
さらに、エアバッグ本体21の前端部、あるいは前端部と後端部とには、図示しない紐状の基布であるテンションストラップが取り付けられている。
ここで、以下、後述する折畳形状との関係で、図1に示すように、エアバッグ本体21の長手方向と平行なP1,P2,P3,P4,P5,P6の6本の互いに平行で順次上側から下側に離間して配置された仮想線を規定する。P1は、膨張部27の上端部すなわちガス供給通路31の上端部あるいはこれら上端部に近接して配置され、P6は、膨張部27の下端部すなわち保護膨張部32の下端部あるいはこれら下端部に近接して配置されている。そして、P5は、これらP1とP6との間に位置し、ガス供給通路31と保護膨張部32との境界の位置となる。また、P3は、P1とP5との間のちょうど中央に位置し、上側案内膨張部34と下側案内膨張部35との境界の位置となる。さらに、P2は、P1とP3との間のちょうど中央に位置し、後述する第1の折線の位置となる。また、P4は、P3とP5との間のちょうど中央に位置し、後述する第2の折線の位置となる。
すなわち、エアバッグ本体21は、P1とP3との間に、上側案内膨張部34と制限部41が位置し、P3とP5との間に、連通部42を含む下側案内膨張部35が位置し、P5とP6との間に、保護膨張部32の前側保護膨張部36及び後側保護膨張部37と非膨張部29が位置する。そして、以下、P1とP5との間を案内展開部46とし、P5とP6との間を保護展開部47として説明する。
次に、このエアバッグ1の折畳状態を説明する。
このエアバッグ1のエアバッグ本体21は、図1(b)及び図2に示すように、主として、案内展開部46を折り畳んだ案内折畳部51と、保護展開部47を折り畳んだ保護折畳部52とを有し、全体としては前後方向を長手方向とする円柱状の形状に折り畳まれる。
保護折畳部52は、集合部とも呼び得るもので、保護展開部47を何らかの形状で前後方向に細長く折り畳み集積したもので、本実施の形態では、下端部(P6)から所定の方向、ここでは外側にロール状に巻回するいわゆる外ロールの細長い円柱状に折り畳まれている。例えば、車室の右側に取り付けられたエアバッグ1は、図1(b)に示すように、後ろから見て、下端部から右巻きに巻回されている。そこで、エアバッグ1の展開時には、この保護折畳部52は巻き戻されるように展開し、車体縦壁部10側に沿って、さらには車体縦壁部10側に押しつけられるようにして、車体縦壁部10に摺接しながら展開するようになっている。
一方、案内展開部46は、導管部とも呼び得るもので、全体としては上下から平らに押しつぶすように板状に折り畳まれ、さらに保護折畳部52の上側から保護折畳部52の両側すなわち車室4内側と車体縦壁部10側とに沿うように、いわば保護折畳部52を上側から包囲するように配置され、案内折畳部51とされている。より詳細には、案内展開部46は、P1とP3との間の上側案内膨張部34と制限部41とを折り畳んだ第1の折畳部である上側案内折畳部55と、P3とP5との間の連通部42を含む下側案内膨張部35を折り畳んだ第2の折畳部である下側案内折畳部56とを備えている。そして、上側案内折畳部55は、P2の位置の第1の折線(第1折れ部)を車内4側かつ下側の端部として折り返され、上下から平らに押しつぶすように板状に折り畳まれ、保護折畳部52の車室4内側にいわば腕状に延設されて配置されている。また、下側案内折畳部56は、P4の位置の第2の折線(第2折れ部)を外側すなわち車体縦壁部10側かつ下側の端部として折り返され、上下から平らに押しつぶすように板状に折り畳まれ、保護折畳部52の車体縦壁部10側にいわば腕状に延設されて配置されている。このように、ガス供給通路31を含む案内展開部46は、上方の縁部から車幅方向内側に延びた部分が第1の折線(P2)で車幅方向外側に折り返され、続いて、第2の折線(P4)で再び車幅方向内側に折り返され、外ロールの保護折畳部52に連続している。なお、図1(b)及び図2においては、P2すなわち第1の折線の位置、及びP4すなわち第2の折線の位置は、保護折畳部52の高さ方向の中央に位置しているが、この構成に限られず、中央から上下に位置をずらすこともできる。
そして、所定の形状に折り畳まれたエアバッグ1のエアバッグ本体21は、テープあるいは筒状のカバー体などにより折畳形状が保持される。そして、このエアバッグ1は、車室4内に持ち込まれた状態で、取付片をブラケットを介して車体のルーフサイド部5すなわち車体縦壁部10の上縁部に取り付ける。この状態で、保護折畳部52に対し、車体縦壁部10側に下側案内折畳部56が位置し、車体縦壁部10側の反対側すなわち車室4内側に上側案内折畳部55が位置する。さらに、Bピラーのピラー部12の位置では、折り畳まれたエアバッグ1はピラーガーニッシュの上方に離間して位置するとともに、このピラー部12に対応する位置すなわちこのピラー部12のピラーガーニッシュの上方に対応する位置に、制限部41が位置するようになっている。
さらに、エアバッグ本体21の前側に接続されたテンションストラップの先端部をAピラーに接続し、エアバッグ本体21の後側に接続されたテンションストラップの先端部をCピラーに接続する。さらに、このエアバッグ1の車体への取付の前あるいは後に、エアバッグ1のガス導入口28にインフレータ14を接続するとともに、このインフレータ14を図示しない制御装置に接続する。そして、これらエアバッグ1及びインフレータ14をヘッドライニングあるいはカバーで覆い、エアバッグ装置2が車体に設置される。
そして、このエアバッグ装置2は、自動車の側面衝突などの際には、制御装置によりインフレータ14が作動し、このインフレータ14から噴射されるガスがガス導入口28からエアバッグ1に導入され、膨張部27を膨張させ、ヘッドライニングなどを変形させながらルーフサイド部5から下方に突出してエアバッグ1が膨張展開し、カーテン状に前後の窓部及びピラー部12などの車体縦壁部10を覆い、前席及び後席の各乗員の頭部、胸部などを保護するようになっている。
より詳細には、エアバッグ1は、基本的には、少なくとも一部において、ガス供給通路31の上側部である上側案内膨張部34、ガス供給通路31の下側部である下側案内膨張部35、保護膨張部32の順でガスが供給され、上側案内折畳部55、下側案内折畳部56、保護折畳部52の順で展開する。
すなわち、インフレータ14から供給されたガスがガス導入口28からエアバッグ1の膨張部27に導入されると、Bピラーのピラー部12を除く位置では、図2に示すように、このガスは、まず、上側案内膨張部34に直接に導入され、この上側案内膨張部34を折り畳んだ上側案内折畳部55を展開させる。この上側案内折畳部55は、P2の位置の第1の折線を開くように展開する。次いで、ガスは、上側案内膨張部34から下側案内膨張部35に供給され、この下側案内膨張部35を折り畳んだ下側案内折畳部56を展開させる。この下側案内折畳部56は、P4の位置の第2の折線を開くように展開する。なお、エアバッグ1の後側部の後側保護膨張部37の上方に位置する部分については、一旦下側案内膨張部35に位置する連通部42を通って、上側案内膨張部34と下側案内膨張部35とにガスが供給され、上側案内折畳部55と下側案内折畳部56とが同時に展開する。
そして、図2に網点に示す位置にガスが供給され、これら上側案内折畳部55と下側案内折畳部56とが順次展開する力が組み合わされて、ヘッドライニングなどを押動して変形させ、エアバッグ1の突出口を確保するとともに、保護折畳部52すなわち展開前の保護展開部47を所定の挙動で、ここでは矢印F1に示すように、内側下方すなわち車室4内側の下方に向かって位置を移動させ、かつ、展開の中心方向は外側下方すなわち車体縦壁部10側の下方に向かう方向となる。
次いで、下側案内膨張部35から保護折畳部52の膨張部27にガスが供給され、保護展開部47が展開する。この保護展開部47は、ロール状の保護折畳部52として折り畳まれ、単に押しつぶすように折り畳まれた案内展開部46よりもガスの流れの抵抗が大きいため、案内展開部46が展開した後に展開する。そして、保護展開部47は、外方に向くように案内されているとともに、外ロールで折り畳まれているため、展開の先端部分は常に外向きの力を発生させながら、車体縦壁部10の窓部のガラス面などに沿って、摺接などしながら、下方に展開し、保護折畳部52の前側保護膨張部36及び後側保護膨張部37が乗員の頭部などを保護する。
一方、Bピラーのピラー部12に対応する位置では、上側案内膨張部34には制限部41が形成されてガスが導入されないため膨張せず、上側案内折畳部55は自らは展開しない。そして、図1(b)に網点で示すように、Bピラーのピラー部12を除く位置で下側案内膨張部35にガスが供給されると、この下側案内膨張部35が連通部42の位置で膨張し、案内展開部46が展開する。このように、Bピラーのピラー部12に対応する位置では、保護折畳部52の車室4内側に位置する案内展開部46は膨張せず、車体縦壁部10側のみが膨張するため、保護折畳部52を車室4内側に押圧する力が大きく、矢印F2に示すように、保護折畳部52は、Bピラーのピラー部12を除く位置よりも上方に向かい、水平に近い方向に沿って車室4内側に移動する。そこで、保護折畳部52は、Bピラーのピラー部12のピラーガーニッシュをよけるように、Bピラーのピラー部12のピラーガーニッシュに干渉しない位置まで円滑迅速に横スライドするように車室4内側に移動する。そして、このBピラーのピラー部12に対応する位置では、保護折畳部52は非膨張部29で構成されているが、Bピラーのピラー部12を除く位置での保護膨張部32の膨張に伴い、前後から下方に引きずられるように展開し、Bピラーのピラー部12を覆う。
このようにして、エアバッグ1が車室4の両側の車体縦壁部10を覆い、車室4の乗員の頭部などを保護する。
このように、本実施の形態によれば、車室4の側面の車体縦壁部10の上縁のルーフサイド部5に沿って折り畳んで収納され、インフレータ14から供給されるガスにより車体縦壁部10に沿って上縁部から下方に膨張展開し、車体縦壁部10を覆うエアバッグ1を備えたエアバッグ装置2であって、折り畳まれたエアバッグ1にガスが導入されると、ガス供給通路31が膨張して案内展開部46を折り畳んだ案内折畳部51が迅速に展開し、次いで、このガス供給通路31を介してガスが供給されて保護膨張部32が膨張し、保護展開部47を折り畳んだ保護折畳部52が展開して、車体縦壁部10を覆う。そして、案内折畳部51は、保護折畳部52の車体縦壁部10側と車室4内側とに配置され、展開時に保護折畳部52を案内し、保護折畳部52を所望の位置から所望の方向に、すなわち保護展開部47を乗員の保護に適した所望の挙動で膨張展開させ、エアバッグ1を車体縦壁部10と車室4の乗員との間に容易に安定して円滑に展開させることができる。
さらに、Bピラーのピラー部12に対応する位置では、案内折畳部51は、車外側に配置される部位のみが展開するため、保護折畳部52をBピラーのピラー部12のピラーガーニッシュを避けるように車室4内側へ横スライドさせ、保護展開部47を円滑に所定位置に展開できる。すなわち、案内折畳部51は、保護折畳部52の車体縦壁部10側では下側案内膨張部35の連通部42にガスが供給されて膨張するとともに、車室4内側では制限部41が設けられ上側案内膨張部34にガスが供給されないため、制限部41を設けた上側案内折畳部55の展開は抑制されるとともに、連通部41の膨張に伴い下側案内折畳部56は第2の折線が開くように展開し、保護折畳部52を少なくとも他の部分より車体縦壁部10から離間する方向すなわち車室4内側に案内して移動させ、この保護折畳部52をピラー部12を避けた位置から展開させて、車体縦壁部10の他の部分より突出したピラー部12を覆って円滑に展開できる。すなわち、保護展開部47を、突出部を有する所定面に対して所望の挙動で円滑に膨張展開させることができる。
また、ピラー部12を避けてエアバッグ1を展開する構成は、基本的には乗員に対向しない案内展開部46にガスの導入を制限する制限部41を設け、車体縦壁部10側の折畳部分のみにガスを供給することにより実現するため、ガスを多く供給して大きく膨張する部分を設ける必要がないとともに、エアバッグ1を案内する別体の部材を備える必要がなく、例えばピラー部12の上部にいわゆるジャンプ台などのエアバッグ誘導手段を備える必要がなく、部品点数の低減が可能になり、エアバッグ装置2及びエアバッグ装置2が備えられる車両の製造コストの低減、小形化及び軽量化を容易にできる。
さらに、ピラー部12を避けて展開する構成は、ガスの導入を制限する制限部41をピラー部12に対応する位置のみに設けることにより実現され、ピラー部12を除く場所では車室4内側に位置する案内展開部46にもガスが導入されるため、エアバッグ1が展開時に車室4内側に過度に移動することを容易に抑制でき、乗員を安定して保護できる。
また、主として乗員に対向して展開する保護展開部47は、外ロールの保護折畳部52がほどける挙動などにより、車体縦壁部10側に向かう力が加わり、窓部などの車体縦壁部10に沿って展開し、さらに、乗員の頭部を押しのけるように展開する。そこで、例えば、自動車が傾き、あるいは横転事故などのいわゆるロールオーバー状態の際に、乗員の頭部が窓部など車体縦壁部10に近接している場合でも、外ロールの保護折畳部52の挙動により、乗員の頭部を車室4の内側に押し戻し、エアバッグ1は乗員と窓部など車体縦壁部10との間に進入するように好ましい特性で展開し、すなわち、エアバッグ1を乗員と窓部など車体縦壁部10との間に容易に安定的に展開でき、乗員を保護することができる。
また、エアバッグ1の折畳形状は単純で、エアバッグ1を折り畳みやすく、作業工程を容易にして製造コストを低減できる。
なお、上記の実施の形態では、上側案内膨張部34を折り畳んだ上側案内折畳部55を保護折畳部52の車室4内側に配置し、下側案内膨張部35を折り畳んだ下側案内折畳部56を保護折畳部52の車体縦壁部10側に配置するとともに、上側案内折畳部55に位置して制限部41を設け、下側案内折畳部56に位置して連通部42を設けたが、この構成に限られるものではない。
例えば、図3に示すように、上側案内膨張部34を折り畳んだ上側案内折畳部55を保護折畳部52の車体縦壁部10側に配置し、下側案内膨張部35を折り畳んだ下側案内折畳部56を保護折畳部52の車室4内側に配置することもできる。この構成では、ガス供給通路31を含む案内展開部46は、上方の縁部から車幅方向外側に延びた部分が第1の折線(P2)で車幅方向内側に折り返され、続いて、第2の折線(P4)で再び車幅方向外側に折り返され、下端の先端部から車室4内側に向いて巻回された内ロールの保護折畳部52に連続している。
そして、この図3に示す構成では、Bピラーのピラー部12に対応する位置について、上側案内折畳部55に位置してガスが流れる連通部42を設け、下側案内折畳部56に位置してガスが流れない制限部41を設けることにより、エアバッグ1について、車体縦壁部10の他の部分より突出したピラー部12を覆って円滑に展開できるとの図1に示す構成と同様の効果を奏することができる。
すなわち、この構成においては、エアバッグ1は、ガス供給通路31の上側部である上側案内膨張部34、ガス供給通路31の下側部である下側案内膨張部35、保護膨張部32の順でガスが供給され、上側案内折畳部55、下側案内折畳部56、保護折畳部52の順で展開する。より詳細には、インフレータ14から供給されたガスがガス導入口28からエアバッグ1の膨張部27に導入されると、Bピラーのピラー部12を除く位置では、このガスは、まず、上側案内膨張部34に直接に導入され、この上側案内膨張部34を車体縦壁部10側に折り畳んだ上側案内折畳部55を展開させる。この上側案内折畳部55は、P2の位置の第1の折線を開くように展開する。次いで、ガスは、上側案内膨張部34から下側案内膨張部35に供給され、下側案内膨張部35を車室4内側に折り畳んだ下側案内折畳部56を展開させる。この下側案内折畳部56は、P4の位置の第2の折線を開くように展開する。
そして、これら上側案内折畳部55と下側案内折畳部56とが展開する力が組み合わされて、ヘッドライニングなどを押動して変形させ、エアバッグ1の突出口を確保するとともに、保護折畳部52すなわち展開前の保護展開部47を所定の挙動で、図2に示す矢印F1と同様の方向に、内側下方すなわち車室4内側の下方に向かって位置を移動させる。
次いで、下側案内膨張部35から保護折畳部52の膨張部27にガスが供給され、保護展開部47が展開する。この保護展開部47は、ロール状の保護折畳部52として折り畳まれ、単に押しつぶすように折り畳まれた案内展開部46よりもガスの流れの抵抗が大きいため、案内展開部46が展開した後に展開する。そして、保護展開部47は、内ロールで折り畳まれているため、車体縦壁部10の窓部のガラス面などに沿って転がるように迅速に下方に展開し、保護折畳部52の前側保護膨張部36及び後側保護膨張部37が乗員の頭部などを保護する。
そして、Bピラーのピラー部12に対応する位置では、図3(b)に網点で示す位置にガスが供給され、上側案内折畳部55は連通部42の位置で膨張するが、下側案内膨張部35には制限部41が形成されてガスが導入されないため膨張せず、下側案内折畳部56は自らは展開しない。このように、Bピラーのピラー部12に対応する位置では、保護折畳部52の車室4内側に位置する案内展開部46は膨張せず、車体縦壁部10側のみが膨張するため、保護折畳部52を車室4内側に押圧する力が大きく、矢印F2に示すように、保護折畳部52はBピラーのピラー部12を除く位置よりも上方に向かい、水平に近い方向に沿って車室4内側に移動する。そこで、保護折畳部52は、Bピラーのピラー部12のピラーガーニッシュをよけるように、このピラーガーニッシュに干渉しない位置まで円滑迅速に移動する。そして、このピラー部12に対応する位置では、保護折畳部52は非膨張部29で構成されているが、ピラー部12を除く位置での保護膨張部32の膨張に伴い、前後から下方に引きずられるように展開し、Bピラーのピラー部12を覆う。
このようにして、エアバッグ1が車室4の両側の車体縦壁部10を円滑迅速に覆い、車室4の乗員の頭部などを保護できる。
また、上記の各実施の形態では、制限部41は、縫製部26の外周縫製部44と一体の縫い目により気密なセルとして形成され、ガスが流入しない構成としたが、この構成に限られず、別体の基布を用い、あるいは気密ではないセルパターンとして形成することができる。すなわち、制限部41は、連通部42に対してガスの供給が制限されるものであれば良く、連通部42に対してより大きい通気抵抗でガスの流入を許容し、あるいは時間差を持って流入可能とすることもできる。
例えば、図4に示すように、縫い目ではなく、エアバッグ1の外側基布部24と内側基布部25との間に基布を管状としたガス案内手段であるインナバッグ60を配置し、このインナバッグ60により、制限部41と連通部42とを形成することができる。
すなわち、このインナバッグ60は、インナパイプあるいはインナーチューブとも呼び得るもので、ガスを案内するとともに外側基布部24及び内側基布部25をガスの熱などから保護するものであり、例えば1枚の基布を折って形成され、外周縫製部44に一体的に縫製などしてメインパネルに取り付けられている。そして、このインナバッグ60は、導入口通路33に沿って配置される導入口部61と、この導入口部61から前方にガスを案内し前端が開口した筒状の前側案内部62と、導入口部61から後側にガスを案内し後端が開口した筒状の後側案内部63とを備えている。そして、前側案内部62は、ガス供給通路31すなわち案内展開部46とほぼ同じ高さ寸法を有している。一方、後側案内部63は、Bピラーのピラー部12に対応して位置し、かつ、図1(b)に示す折畳形状と同じく上側案内折畳部55を車室4内側とし、下側案内折畳部56を車体縦壁部10側とする折畳形状を前提とした場合、折畳時に車体縦壁部10側に位置する下側案内膨張部35の下側案内折畳部56に位置して連通部42を設けている。そして、この連通部42の上側の部分が、ガスが流れにくく、すなわちガスの導入が制限されるように形成された制限部41となる。
そこで、このエアバッグ1にガス導入口28からガスが導入されると、ガスはインナバッグ60に案内され、前後にすなわち前側保護膨張部36と後側保護膨張部37とに振り分けられる。ここで、後側案内部63は、下側案内膨張部35すなわち下側案内折畳部56に位置し、車体縦壁部10側に位置するため、展開初期には、Bピラーのピラー部12に対応する部分では、下側案内膨張部35のみが膨張し、すなわち、下側案内折畳部56のみが展開して、縫製による制限部41と同じ効果を奏する。なお、この構成では、エアバッグ1のガス供給通路31が十分に展開した後については、制限部41にもガスが流入して膨張する。
また、上記の各実施の形態では、連通部42の部分は膨張部27の他の部分よりも断面積が小さく、ガス供給通路31の通気抵抗が大きくなる傾向がある。そこで、制限部41を除く位置に、連通部42に沿って、ガスが流れる通路を形成することもできる。例えば、図5に示すように、連通部42を下側すなわち非膨張部27側に膨出させて、保護折畳部52の前側保護膨張部36と後側保護膨張部37とを連通するガス通路部65を形成し、ガス導入時のガス供給通路31の通気抵抗を適切に設定することができる。
また、上記の各実施の形態について、エアバッグ1の折畳形状は上記の構成に限られず、案内折畳部51と保護折畳部52とを備えるとともに、案内折畳部51を保護折畳部52の両側すなわち車体縦壁部10側と車室4内側とに配置する構成について適用できる。例えば、保護折畳部52は、ロール折りに限られず、蛇腹折りあるいはロール折りと蛇腹折りとを組み合わせた形状など適宜の形状とすることができる。
また、上記の各実施の形態について、エアバッグ1のエアバッグ本体21の形状あるいは膨張部27の形状について、種々の形状を採ることができる。例えば、インフレータ14は、Bピラーのピラー部12の上部あるいはその周辺に配置する構成に限られず、例えばCピラーの近傍に配置し、ガス導入口28をガス供給通路31の後端部に連通させることもできる。
また、本発明のエアバッグ1の制限部41は、Bピラーのピラー部12に限られず、4本以上のピラーを有する場合のCピラーなどの他のピラー部や、シートベルトの支持部、アシストグリップ、スポット照明など、突出部を有する所定面に沿ってエアバッグ1を面状に展開させる適宜のエアバッグ装置に適用することができる。