JP5531270B2 - ワイパー - Google Patents

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Description

本発明は、対象物の被清掃面に対して摺動することにより、被清掃面に付着した異物を除去するワイパーに関する。
従来から、工作機械の摺動部材間における、金属屑やゴミ等の異物の噛み込みを防止するために、摺動部材表面(被清掃面)に付着した異物を拭き取るワイパーが知られている。このようなワイパーは、全体が屈曲しつつ先端部が被清掃面に沿って摺動することができるように、ゴムや合成樹脂等の弾性体で形成されているのが一般的である。
また、このようなワイパーとして、切削油等が存在するウェット状態で被清掃面を拭き取るものと、切削油等が存在しないドライ状態で被清掃面を拭き取るものがそれぞれ知られている。これらのワイパーのうち、特に、ドライ状態で用いられる後者のワイパーにおいては、被清掃面に対してスムーズに摺動して、被清掃面に付着した異物を確実に除去することができるように、被清掃面と接触する摺動部の摩擦係数が低くなっていることが好ましい。
そこで、従来から、摺動部の摩擦係数が小さくなるように構成されたワイパーが提案されている。例えば、特許文献1のワイパーにおいては、被清掃面に対して摺動する摺動部(リップ部)が繊維材料で被覆されている。また、特許文献2のワイパーは、全体が短繊維が配合されたゴムで形成されており、さらに、摺動部の表面においては配合された短繊維が露出している。このように、摺動部の表面に繊維材料が存在することによって、摺動部表面の摩擦係数が小さくなり、被清掃面と摺動部の間に生じる摩擦抵抗が低下する。
特開2000−354934号公報 特許第2947376号公報
しかし、特許文献1のワイパーにおいては、摺動部表面を覆う繊維材料が摩耗してゴム等の弾性材料が一旦露出してしまうと、繊維材料による摩擦抵抗低減効果が消滅し、摺動部表面の摩擦係数が増加する。この状態では、ひっかかりが生じるなど、摺動部が被清掃面に対してスムーズに摺動することができなくなり、被清掃面に付着した異物を拭き取ることが困難となる。
一方、特許文献2のワイパーにおいては、ゴム内部に短繊維が分散していることから、摺動部表面の摩耗が進んでも摺動部の摩擦係数が上昇してしまうということはない。しかし、ワイパー全体に短繊維が配合されているために、ワイパー全体で硬度が一定となり、被清掃面に沿って摺動させるのに必要な、剛性と屈曲性の最適なバランスを取ることが困難となる。従って、摺動部を被清掃面に沿って摺動させることが難しくなる。
本発明の目的は、摺動部を被清掃面に沿って摺動させるのに必要な適度の屈曲性を備えるとともに、摺動部表面の摩耗が進行しても摩擦係数が低下した状態が維持される、ワイパーを提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
第1の発明のワイパーは、対象物の被清掃面に対して摺動することにより、前記被清掃面を拭き取るワイパーであって、本体部と、前記本体部と一体化されるとともに前記被清掃面に接触可能な摺動部とを備え、前記摺動部には前記被清掃面との間の摩擦抵抗を低減するための摩擦低減材が前記摺動部全体に分散されて配合される一方で、前記被清掃面に接触しない前記本体部には前記摩擦低減材が配合されておらず、前記摩擦低減材が繊維材料を含み、前記繊維材料は、前記摺動部内において前記被清掃面と交差する方向であって、ワイパーの幅方向と直交する方向に配向していることを特徴とするものである。
本発明によれば、被清掃面に接触する摺動部に摩擦低減材が配合されることにより、摺動部表面の摩擦係数が小さくなり、被清掃面と摺動部との間の摩擦抵抗が低減される。また、摺動部の内部には摩擦低減材が分散して存在するため、ワイパーの使用につれて摺動部表面の摩耗が進行しても摩擦係数が増加することはなく、長期間にわたって摩擦低減効果が維持される。その一方で、被清掃面とは接触しない本体部には摩擦低減材が配合されていないことから、摺動部の摺動時に本体部が適度に屈曲して、摺動部が被清掃面に沿って移動するとともに、被清掃面に対して適度な面圧をもって接触するので、被清掃面に付着した異物を確実に拭き取ることができるようになる。
また、摩擦低減材となる繊維材料が、被清掃面と交差する方向に配向されていると、配向性が無い場合、あるいは、被清掃面と平行に配向されている場合に比べて、摺動部の形状が波打ち状になりにくく、外観形状の悪化といった問題が生じにくい。また、摺動部の被清掃面への密着性が高くなり、拭き取り性能が向上する。
また、ワイパーが、金属板等からなるフレームに接着される場合に、その接着部分に摩擦低減材が配合されていると、ワイパーとフレームとの接着力が低下する。しかし、本発明のように、本体部に摩擦低減材が配合されていないと、この本体部をフレームへ接着したときに、接着力低下という問題は生じない。
このように、異なる機能が要求される本体部と摺動部の材質(摩擦低減材の配合/非配合)を分けることにより、本体部と摺動部の各々に対して、必要とされる機能を満足させるのに最適な材質を決定することができるようになる。つまり、本体部の材質決定に、摺動部に要求される摩擦係数の低下という点を考慮する必要はなく、また、摺動部の材質決定に、本体部に要求される適度な屈曲性の確保という点を考慮する必要もない。
第2の発明のワイパーは、前記第1の発明において、前記本体部の硬度が、JIS−A硬度で70°〜85°であることを特徴とするものである。この構成によれば、摺動部の摺動時に本体部が適度に屈曲して、摺動部が被清掃面に沿って移動するとともに、被清掃面に対して適度な面圧をもって接触するので、被清掃面に付着した異物を確実に拭き取ることができるようになる。
第3の発明のワイパーは、前記第1又は第2の発明において、前記摺動部の前記被清掃面との接触部が研磨されていることを特徴とするものである。このように、摺動部の被清掃面との接触部が研磨されることによって、接触部の摩擦係数が小さくなり、被清掃面と摺動部との間の摩擦抵抗が低減される。
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、工作機械における機械加工時に生じる金属屑等の異物を除去する、工作機械用ワイパーに本発明を適用した一例である。
図1は、本実施形態に係るワイパー1の正面図である。このワイパー1は、工作機械(図示省略)を構成する金属部品の表面(被清掃面10)に対してその先端部の摺動部3が摺動することにより、被清掃面10に付着した異物を拭き取るものである。
図1に示すように、ワイパー1は、基端側の本体部2と、この本体部2と一体化されるとともに被清掃面10に接触可能な、先端側の摺動部3とを有する。そして、このワイパー1は、摺動部3が被清掃面10に押し付けられて、その被清掃面10側に位置する接触部9が被清掃面10に接触した状態で、被清掃面10に沿って移動することにより、被清掃面10に付着した異物を拭き取るように構成されている。
本体部2は、取付部4と、この取付部4から、被清掃面10の直交方向に対して所定角度傾斜した方向に延びる屈曲部5とを有し、これら取付部4と屈曲部5は一体形成されている。また、この本体部2は、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレンジエンモノマー(EPDM)等のゴム材料や、ポリウレタン等の合成樹脂材料といった弾性材料からなる。
また、本体部2がゴム材料からなる場合、通常、補強のためのカーボンブラック、老化防止剤、可塑剤、加硫剤といった配合剤が配合される。但し、この本体部2の硬度(JIS−A硬度)は、後で詳述するが70°〜85°であることが好ましい。そこで、本体部2の硬度を前記硬度範囲内の値にするためには、ゴム100質量部に対してカーボンブラックを40〜75質量部、老化防止剤を1.5〜3.5質量部、酸化亜鉛を1〜10質量部、可塑剤を5〜20質量部、加硫剤を1〜3.5質量部といった程度の割合で配合する。
取付部4には、金属板からなるフレーム6が接着剤7より接合されており、このフレーム6を介して、取付部4は図示しない工作機械に取り付けられている。尚、ワイパー1に金属製のフレーム6が接合される必要は必ずしもなく、ワイパー1の取付部4が、工作機械を構成する金属部品に直接取り付けられる構成も可能である。また、取付部4と屈曲部5の境界部の、屈曲部傾斜方向側(図1の左方)の側部には、ワイパー1が被清掃面10に押し付けられたときに、摺動部3の接触部9が被清掃面10に密着するように本体部2を変形させるための、切欠部8が形成されている。
摺動部3は、屈曲部5の先端からさらにその延在方向に沿って延びている。この摺動部3は、本体部2と溶着や一体プレス加硫等により一体化されている。また、摺動部3は、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレンジエンモノマー(EPDM)等のゴム材料や、ポリウレタン等の合成樹脂材料といった弾性材料からなる。さらに、この摺動部3を形成する弾性材料には、接触部9が被清掃面10に対して摺動する際に生じる、被清掃面10との間の摩擦抵抗を低減させるための摩擦低減材が配合されている。この摩擦低減材としては、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、綿繊維等の繊維材料のみ、または、これらの繊維材料と、グラファイト、フッ素樹脂、超高分子量ポリエチレン等を組み合わせたものを使用できる。
さらに、摺動部3がゴム材料からなる場合、通常、補強のためのカーボンブラック、老化防止剤、可塑剤、加硫剤といった配合剤が配合される。尚、摺動部3に求められる低い摺動抵抗を実現するためには、ゴム100質量部に対してカーボンブラックを20〜55質量部、短繊維やグラファイト、超高分子量ポリエチレン等の摩擦低減材を10〜40質量部、老化防止剤を1.5〜3.5質量部、酸化亜鉛を1〜10質量部、可塑剤を5〜20質量部、加硫剤を1〜3.5質量部といった程度の割合で配合する。
このように、摺動部3を形成する弾性材料に摩擦低減材が配合されることで、接触部9の表面摩擦係数が低下し、摺動時における被清掃面10との間の摩擦抵抗が低減される。また、摺動部3全体に摩擦低減材が分散されることで、ワイパー1の使用につれて接触部9の摩耗が進行してもその摩擦係数が増加することはなく、長期間にわたって摩擦低減効果が維持される。尚、摺動部3の接触部9の表面は、摩擦係数をさらに低下させて摩擦抵抗が一層小さくなるように、研磨により、成形時に形成されたゴムの表層を取り除き、摩擦低減材の露出面積を増大させることが好ましい。この摺動部3の研磨は、例えば、円筒研磨装置を用いて行うことができる。即ち、研磨装置の円筒状の砥石に摺動部3を軽く接触させた状態で、所定の周速(例えば、10〜30m/sec程度)で砥石を回転させることにより、摺動部3の表面を研磨して摩擦低減材を露出させる。
さらに、摺動部3が被清掃面10に付着した異物を確実に掻き取るためには、摺動部3はある程度の硬度(例えば、JIS−A硬度で70°〜85°程度)を有する必要がある。ここで、前述したように、摺動部3を形成する弾性材料に繊維材料やグラファイト等の摩擦低減材が配合されると、摺動部3中に含まれる弾性材料の割合が相対的に低下し、その結果、摺動部3の硬度が高くなる。従って、摺動部3に摩擦低減材を配合することは、拭き取り性能向上の点からも有益である。
また、摩擦低減材として繊維材料を用いる場合に、この繊維材料11は、ゴム等からなる摺動部3内に配合されることになるが、繊維材料11は、摺動部3内において、被清掃面10と交差する方向(例えば、図2のように、ワイパー1の幅方向(左右方向)と直交する縦方向)に配向されていることが好ましい。摩擦低減材となる繊維材料11が、配向性が無い場合、あるいは、被清掃面10と平行に配向されている場合(例えば、図3のように、幅方向に配向されている場合)には、成形後の摺動部3が波打ち形状になりやすく、外観形状が悪化する。さらに、接触部9と被清掃面10との間に隙間が生じて密着性が悪くなる。これに比べて、繊維材料11が縦方向に配向されている場合には、成形後に摺動部3が波打ち状になりにくく、外観形状の悪化といった問題が生じにくい。さらに、摺動部3の被清掃面10への密着性が高くなり、拭き取り性能が向上する。
ところで、前述した本体部2は、被清掃面10に接触する部分ではないことから、摺動部3とは違って、摩擦係数を下げるために摩擦低減材が配合される必要はそもそもない。逆に、本体部2にも摩擦低減材が配合されることによってその硬度が高くなりすぎると、本体部2(特に、フレーム6に接合される取付部4と摺動部3とを連結する屈曲部5)の屈曲性が失われる。そのため、摺動部3が被清掃面10に沿って摺動しにくくなり、被清掃面10の異物を確実に拭き取ることができなくなる。
そこで、本実施形態においては、本体部2には、繊維材料やグラファイト等の摩擦低減材が配合されていない。これにより、屈曲部5に適度な剛性と屈曲性を備えさせることが可能になり、被清掃面10に付着した異物を確実に拭き取ることができるようになる。尚、屈曲部5に剛性と屈曲性とをバランスよく備えさせて、摺動部3の掻き取り性能を向上させるには、本体部2の硬度はJIS−A硬度で70°〜85°であることが好ましい。その理由については後ほど説明する。
また、従来から知られている、ワイパーの全体に摩擦低減材が配合された構成(例えば、前述した特許文献2参照)では、金属製のフレームとの接着部分にも摩擦低減材が存在することから、この接着部分におけるゴム等の弾性部材の配合量が低下することに起因して、ワイパーとフレームとの接着力が低下する。さらに、工作機械の機械加工時に使用される切削油等の油成分が弾性部材に浸透すると、ワイパーとフレームの接着力は一層低下する。しかし、本実施形態では、金属製のフレーム6と接着される本体部2(取付部4)に摩擦低減材が配合されていないことから、前述したような接着力低下という問題は生じない。
このように、本来、異なる機能が要求される本体部2と摺動部3の材質(摩擦低減材の配合/非配合)を分けることにより、本体部2と摺動部3の各々に対して、必要とされる機能を満足させるのに最適な材質を決定することができるようになる。つまり、本体部2の材質決定において、摺動部3のみに要求される表面摩擦係数の低下という点を考慮する必要はなく、また、摺動部3の材質決定において、本体部2のみに要求される適度な硬度範囲や金属フレーム等との接着性の確保という点を考慮する必要もない。
尚、先にも説明したように、被清掃面10の清掃時には、ワイパー1の摺動部3が被清掃面10に所定量押し付けられる(例えば、0.5〜3.0mm程度)。このように、摺動部3が被清掃面10に押し付けられた後の状態においても、被清掃面10には、摩擦低減材が配合された摺動部3のみが接触し、摩擦低減材が配合されていない本体部2は接触しないようにする必要があり、摺動部3(接触部9)が、ある程度の長さを有することが必要である。その一方で、摩擦低減材が配合された摺動部3の長さが長すぎると、ワイパー1全体の屈曲性が小さくなってしまう。そこで、図1に示すように、取付部4から傾斜して延びる部分の全長L0(摺動部3と屈曲部5の長さの和)に対して、摺動部3の長さL1が、L/3〜L/2の範囲にあることが好ましい。
さらに、本発明の効果について、より詳細に検証した結果について説明する。
(1)本体部硬度が、摺動部の摩擦抵抗に及ぼす影響について
まず、本体部の硬度が、摺動部の摩擦抵抗(摺動抵抗)に及ぼす影響について検証した。本体部に硬度の異なる3種類のゴム配合をそれぞれ使用して、3種類のワイパーを作製した。一方、摺動部は、3種類のワイパーで共通のゴム配合とした。3種類のワイパーの本体部ゴム配合((1)〜(3))と共通の摺動部ゴム配合(単位:質量部)、及び、3種類のワイパーの本体部ゴム硬度(単位:°)を表1に示す。
Figure 0005531270
そして、本体部(屈曲部)のゴム硬度の異なる、3種類のワイパーのそれぞれについて、摺動部を被清掃面に対して摺動させたときの、摺動抵抗(摩擦抵抗)を測定した。具体的には、図4に示すように、ガイド31により鉛直方向に案内されたワイパー1を、ステンレス板30に3mm押さえつけて、先端の摺動部3をステンレス板30に接触させた状態で、ステンレス板30を水平方向に移動させた。このときの、ワイパー1に作用する水平方向の力をロードセル32で測定し、これを摺動抵抗とした。図5に、3種類のワイパーの本体部ゴム硬度と、上述の方法によって測定された摺動抵抗(摩擦抵抗)の関係を示す。
図5に示すように、本体部の硬度(JIS−A硬度)が70°未満になると摺動抵抗が20g/cmを下回ることになるので、摺動部が被清掃面を押さえつける面圧が小さくなり、ワイパーの掻き取り性能の低下につながる。一方、本体部の硬度が85°を超えると、摺動抵抗がかなり大きくなって摺動部がスムーズに摺動することができなくなる。以上より、ワイパーの掻き取り性能を向上させるためには、本体部の硬度は70°〜85°の範囲で設定されることが好ましい。
(2)摩擦低減材と金属板に対する接着力の関係について
次に、ワイパーの、金属板との接着部分に摩擦低減材としての繊維材料が配合されている場合と、繊維材料が配合されていない場合とで、金属板に対する接着力がどのように変わるかについて、以下のように検証した。
図6(a),(b)は、この検証実験において使用された、金属板20とこの金属板20に接着されたゴム部材21とからなる試料を示している。図6(a)に示すように、金属板20は、長さ125mm、幅25mmの長尺な板である。この金属板20の下端から60mmの部分の表面にブラスト処理を施した後に、接着剤22(東洋化学研究所製、商品名:メタロック、型式:N−15D)を塗布した。
また、ゴム部材21としては、主成分のゴムに、繊維材料が配合されたものと、配合されていないものを使用した。このゴム部材のゴム配合(単位:質量部)を表2に示す。
Figure 0005531270
図6に示すように、ゴム部材21は、2つの部分(接合部21aと非接合部21b)が連結された構造を有する。そして、このゴム部材21の一方の部分(接合部21a)を接着剤22によって金属板20に接合した。
そして、繊維材料が配合された試料と、繊維材料が配合されていない試料のそれぞれについて、図6(b)に示すように、金属板20の上端と、ゴム部材21の非接合部21bの下端をそれぞれ引っ張り、ゴム部材21の接合部21aが金属板20から剥がれるときの引張力を接着力として測定した。さらに、試料を70℃の切削油に28日間浸漬させた後の状態において、同様にして接着力を測定した。その結果を図7に示す。
図7に示すように、ゴム部材21に繊維材料が配合されていない場合には、ゴム部材21に繊維材料が配合されていると比べて、初期接着力(切削油に浸漬される前の接着力)が高い。さらに、繊維材料が配合されていない場合には、切削油に浸漬されたときの、初期接着力に対する接着力の低下も少ない。これらの結果により、ワイパーとフレームとの接着力を高くするためには、フレームに接着される本体部には繊維材料等の摩擦低減材が配合されていないことが好ましいことがわかる。
(3)摺動部の研磨効果について
次に、摺動部(特に、被清掃面と接触する接触部)の表面を研磨しない場合と、研磨した場合のそれぞれについて、摺動抵抗(摩擦抵抗)を測定して検証した。ここで、摺動部の研磨は、エンドレス形状のヤスリに摺動部を押し当てて軽く接触させた状態で、ヤスリを4.5m/secの周速で走行させることによって行った。また、摺動抵抗は、前述した図4の方法により測定した。その測定結果を図8に示す。
図8に示すように、摺動部の表面を研磨した場合には、研磨しない場合に比べて、摺動抵抗(摩擦抵抗)が約1/4まで低減している。これは、摺動部の研磨によって、摺動部のゴムの表層が取り除かれて、摩擦低減材の露出面積が増大するために、被清掃面と摺動部との間の摩擦抵抗が低減されると考えられる。
(4)摩擦低減材としての繊維材料の配向方向について
最後に、摩擦低減材として繊維材料を使用したときの、その配向方向による摺動部形状の違いについて調べた。表3に、ワイパーの本体部を構成するゴム組成物のゴム配合と、摺動部を構成するゴム組成物のゴム配合を、それぞれ示す(単位:質量部)。
Figure 0005531270
また、摺動部には、摩擦低減材としてナイロン短繊維を配合した。ここで、ナイロン短繊維を図2のようにワイパーの幅方向と直交する縦方向(被清掃面と交差する方向)に配向したものと、図3のようにワイパーの幅方向(被清掃面と平行な方向)に配向したものを、それぞれ作製した。
その結果、ナイロン短繊維をワイパーの縦方向に配向したワイパー(図2のワイパー)では、摺動部の被清掃面との接触部は平坦に成形された。しかし、ナイロン短繊維をワイパーの幅方向に配向したワイパー(図3のワイパー)では、摺動部において3mm程度の振れ幅の波打ち形状が発現し、接触部が被清掃面に隙間なく密着することが困難なワイパーとなった。この結果から、摺動部に配合する繊維材料は、ワイパーの被清掃面に交差する方向に配向されていることが好ましい。
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明を適用可能な形態はこれに限られるものではない。
前述した実施形態のワイパーは、硬度の異なる2つの部分(本体部2と摺動部3)が一体化された構造を有するが、硬度が互いに異なる3以上の部分が一体化されたものであってもよい。
また、前述した実施形態のワイパーは自らが被清掃面に対して移動するように構成されているが、ワイパー自身は移動不能に固定されており、被清掃面を有する金属部品がワイパーに対して移動するように構成されていてもよい。
さらに、本発明の適用対象は、工作機械用の金属屑等を除去するためのワイパーに限られるものではなく、ゴミ等の異物が付着した被清掃面に対して摺動して異物を除去するものであれば、それ以外の分野で用いられるワイパーに本発明を適用することも可能である。
本発明の実施形態に係るワイパーの正面図である。 摩擦低減材としての繊維材料が縦方向に配向されたワイパーの側面図である。 摩擦低減材としての繊維材料が幅方向に配向されたワイパーの側面図である。 摺動抵抗の測定方法を説明する説明図である。 本体部の硬度と摺動部の摺動抵抗との関係を示すグラフである。 接着力測定に使用した試料を示す図であり、(a)は接着剤が塗布された状態の金属板の平面図、(b)は金属板にゴム部材が接着された状態の試料の側面図、をそれぞれ示す。 摩擦低減材である繊維材料の配合が配合された試料と配合されていない試料のそれぞれについて、切削油の浸漬前後で接着力を測定したときの測定結果を示すグラフである。 摺動部の表面を研磨しなかった場合と研磨した場合のそれぞれについて、摺動部の摺動抵抗を示すグラフである。
符号の説明
1 ワイパー
2 本体部
3 摺動部
4 取付部
5 屈曲部
6 フレーム
7 接着剤
8 切欠部
9 接触部
10 被清掃面
11 繊維材料

Claims (3)

  1. 対象物の被清掃面に対して摺動することにより、前記被清掃面を拭き取るワイパーであって、
    本体部と、
    前記本体部と一体化されるとともに前記被清掃面に接触可能な摺動部とを備え、
    前記摺動部には前記被清掃面との間の摩擦抵抗を低減するための摩擦低減材が前記摺動部全体に分散されて配合される一方で、前記被清掃面に接触しない前記本体部には前記摩擦低減材が配合されておらず、
    前記摩擦低減材が繊維材料を含み、
    前記繊維材料は、前記摺動部内において前記被清掃面と交差する方向であって、ワイパーの幅方向と直交する方向に配向していることを特徴とするワイパー。
  2. 前記本体部の硬度が、JIS−A硬度で70°〜85°であることを特徴とする請求項1に記載のワイパー。
  3. 前記摺動部の前記被清掃面との接触部が研磨されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイパー。
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