JP2014008575A - ワイパーとその製造方法 - Google Patents

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勉 入江
Kazumasa Harada
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Abstract

【課題】本体部の幅と略等しい短いリップ部を備えるワイパーにおいて、被清掃面と接触するリップ部の摩擦係数を低くして摺動抵抗を小さくすると共に、リップ部と本体部の間のコーナー部への応力集中を防止して寿命を長くする。
【解決手段】ワイパー1は、被清掃面の直交方向に延在する本体部20と、被清掃面に接触可能であり本体部20の幅と略等しい幅の短いリップ部10とを備える。リップ部10は、被清掃面の直交方向に対して所定角度αで傾斜する方向に延在する傾斜面11と、傾斜面11の先端部15を形成する第1面12と、傾斜面11のコーナー部14を形成する第2面13と、第1面側から第2面側へと先細り状に切り込まれる切欠部16とで囲われて、短繊維を分散したゴム層からなり先端部を含む先端領域17と、コーナー部14を含み本体部20と一体化される屈曲領域18とが配置されて屈曲可能に構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、対象物の被清掃面に対して摺動することにより、被清掃面に付着した異物を除去するワイパーとその製造方法であって、特に、本体部の幅と略等しい短いリップ部を備えるワイパーとその製造方法に関する。
従来から、工作機械には、摺動部材間における金属屑やゴミ等の異物の噛み込みを防止するために、摺動部材表面(被清掃面)に付着した異物を拭き取るワイパーが取り付けられている。このようなワイパーは、全体が屈曲しつつ先端部が被清掃面に沿って摺動することができるように、ゴムや合成樹脂等の弾性体で形成されている。そして、ドライ状態で用いられる場合、ワイパーが被清掃面に対してスムーズに摺動して、被清掃面に付着した異物を確実に除去することができるように、被清掃面と接触するリップ部の摩擦係数が低くなっていることが好ましい。
そこで、摺動部の摩擦係数が小さくなるように構成されたワイパーが開発されている。例えば、特許文献1の短いリップ部を備えるワイパーにおいては、剛性板で補強される基板部と、スクレーパ部(短いリップ部)とが、短繊維補強ゴムで一体成形されていること、短繊維補強ゴム内に添加された短繊維はスクレーパ部の摺動面に直角となるように配向され、また摺動面に短繊維の一部がバフ加工により露出されている。このように、被清掃面に対して摺動する短いリップ部が繊維材料で被覆されていることにより、被清掃面と接触する摺動部の摩擦係数が低下する。
また、特許文献2のワイパーは、取付部に一体的に形成された弾性材料からなるワイパー本体のリップ部が摺動面に摺動し得る工作機械用ワイパーであり、このリップ部が短い場合及びこのリップ部が長い場合の両方について、ワイパー本体のリップ部が繊維材料(織物、編布等)で被覆され、ワイパー本体の少なくともリップ部の摺動面側に繊維材料が設けられている。このように、リップ部の摺動面の表面に繊維材料が存在することによって、摺動部表面の摩擦係数が小さくなり、被清掃面と摺動部の間に生じる摩擦抵抗が低下する。
また、特許文献3の長いリップ部を備えるワイパーは、屈曲部の先端からさらにその延在方向に沿って延びた摺動部(リップ部の先端側)には被清掃面との間の摩擦抵抗を低減するための摩擦低減材が配合される一方で、被清掃面に接触しない屈曲部(リップ部の基端側)には摩擦低減材が配合されていない。このように、摩擦低減材の配合する部分を分けることにより、摺動部を被清掃面に沿って摺動させるのに必要な屈曲性を備えるとともに、摺動部表面の摩耗が進行しても摩擦係数が低下した状態が維持される。
特許文献2のように、長いリップ部を備えるワイパーは、長いリップ部自体が屈曲することにより、屈曲性に優れ、推奨押付け量も3mm前後と大きい。それでも、摺動面側の全体に繊維材料を設けると、長いリップ部の全体の剛性が上がる傾向になる。そのため、特許文献3のように、リップの先端に摩擦低減材を含ませ、長いリップ部全体の剛性の上昇を抑えることが提案されている。
ところが、短いリップ部を備えるワイパーにあっては、短いリップ部そのものが屈曲しにくく、長いリップ部を備えるワイパーとは異なる剛性の上昇カーブを示すことが判った。すなわち、本体部の幅と略等しい短いリップ部を備える特許文献1や特許文献2に示すような従来のワイパーにおいて、ワイパーを被清掃面に押し付ける際の押付け量である押量(mm)と先端(リップ部)剛性(N/cm)との関係では、押量が増すにつれて先端剛性は大きくなり、ある押量(A)から急激に大きくなるという特異な傾向を示すことが判った。
ここで、具体的な比較例を用いて、実際の測定結果を説明する。比較例1として用いる従来のワイパー101は、図9に示すように、短繊維を分散させたゴム層117を短いリップ部110と本体部120の表面に位置するように構成される。また、比較例2として用いる従来のワイパー201は、図10に示すように、短繊維を分散させたゴム層が短いリップ部110と本体部120とに存在せず構成される。
そして、図4に示すように、オートグラフ40にワイパー(図ではワイパー1)を取り付け、テーブル状に短いリップ部を押し付けて、押量と先端剛性の関係を求める。このときの条件は、圧縮速度が10mm/min、測定変位量が2.0mm、室温で測定した。測定結果は、図11の通りである。図11は、従来のワイパーについて測定した押量と先端剛性と関係を示すグラフである。図11に示すように、短繊維を分散させたゴム層117が存在するワイパー101は、押量A=1.0mm付近から先端剛性が急激に大きくなるのに対し、短繊維を分散させたゴム層が存在しない比較例2は、押量A=1.75mm近傍まで急激な上昇はなく、安定していることがわかる。しかしながら、短繊維を分散させたゴム層が存在しない比較例2のワイパー201は、短繊維を分散させたゴム層が存在する比較例1のワイパー101よりも摺動抵抗が高くなってしまう。
この比較例1,2のタイプの推奨押付け量は、0.5mm前後である。この推奨押付け量の前後であれば、比較例1,2のいずれも問題が生じない。しかし、この推奨押付け量を超えて大きく押し付ける場合、すなわち、ある押量(A)を越えて摺動させる場合には、先端剛性が大きくなるため、強い力で押す必要がある。ところが、ワイパーのリップ部は、被清掃面に沿って摺動させるのに必要な屈曲性を備えるように形成されるため、本来変形しやすい部分である。そのため、変形しやすいリップ部が本体部と略等しい程度の短いリップ部の場合には、リップ部と本体部との間のコーナー部は応力集中を受けて変形し、疲労破壊する恐れがある。
尚、上述したように、特許文献3に示すような本体部の幅よりも長いリップ部を備えるワイパーにおいて、ワイパーを被清掃面に押し付ける際の押付け量である押量(mm)と、先端剛性(N/cm)との関係では、先端剛性は押量が増すにつれ大きくなるが、ある押量(A)から急激に大きくなるということは生じにくい。これは、リップ部が長いことからリップ部全体が変形してたわみ応力が分散されることにより、リップ部と本体部の間のコーナー部に応力が集中しないからであると考えられる。
特許第2947376号公報 特許第3193361号公報 特開2008−264776号公報
そこで、本体部の幅と略等しい短いリップ部を備えるワイパーにおいて、押付け量を大きくして使用された場合でも、被清掃面と接触するリップ部の摩擦係数を低くすると共に、リップ部と本体部の間のコーナー部への応力集中を防止して寿命を長くするワイパーとその製造方法を提供するものである。
本発明に係るワイパーは、対象物の被清掃面に対して摺動することにより、前記被清掃面を拭き取るワイパーであって、前記被清掃面の直交方向に延在する本体部と、前記被清掃面の直交方向に対して所定角度で傾斜する方向に延在する傾斜面を有し、前記本体部と一体化されるとともに前記被清掃面に接触可能であり、前記本体部の幅と略等しい幅の短いリップ部とを備え、前記短いリップ部は、前記傾斜面と、前記傾斜面の先端部を形成する第1面と、前記傾斜面のコーナー部を形成する第2面と、前記第1面側から前記第2面側へと先細り状に切り込まれる切欠部とで囲われて、短繊維を分散したゴム層からなり前記先端部を含む先端領域と、前記コーナー部を含み前記本体部と一体化され前記短繊維を含まない屈曲領域とが配置されて屈曲可能に構成されることを特徴とする。
これによると、短繊維を分散したゴム層が先端領域にだけ設けられていることから、リップ部の屈曲自由度が確保され、ワイパーの押量に対してリップ部の先端剛性が急激に大きくなることが生じにくくなる。従って、先端剛性が急激に大きくなることによる、リップ部と本体部の間のコーナー部の応力集中が防止される。そして、コーナー部を含む屈曲領域の疲労破壊が防止されて、寿命を長くすることができる。また、被清掃面に接触するリップ部の先端領域には短繊維が分散されたゴム層で形成されていることから、摩擦係数が低減され、耐摩耗性を維持しつつ、摺動抵抗を小さくすることができる。
ここで、リップ部の「本体部の幅と略等しい幅」とは、本体部の幅と同じ幅で製造されるものの、研削代や製造誤差(本体部の幅の約1.1倍程度の誤差)が含むという意味である。また、所定角度αとは、約65度であり、60〜70度の範囲である。
また、本発明に係るワイパーは、前記短繊維を分散したゴム層の長さMが、前記先端部と前記コーナー部との間の長さLの10〜70%の範囲にあることが好ましい。更に、本発明に係るワイパーは、前記短繊維を分散したゴム層の長さMが、前記先端部と前記コーナー部との間の長さLの10〜40%の範囲にあることが好ましい。
これによると、短繊維を分散したゴム層の長さMが先端部とコーナー部との間の長さLの10〜70%の範囲にあると、ある押量までリップ部の先端剛性を小さく維持することができる。より好ましくは、当該範囲が、10〜40%であると、リップ部の先端剛性をある押量までより小さく維持することができる。
また、本発明に係るワイパーは、前記先端領域の短繊維を分散したゴム層は、その表面が研磨されて表面に短繊維が露出していることが好ましい。
これによると、摩擦抵抗をより確実に低減することができる。
また、本発明に係るワイパーの製造方法は、請求項1乃至4の何れかに記載のワイパーの製造方法であって、前記切欠部を形成する突起部と、前記突起部から一方の側に設けられ前記本体部を形成する本体部キャビティと、前記突起部から他方の側に設けられ前記短いリップ部を形成するリップ部キャビティとそれに連通するように設けられたゴム溜め部とを備える一方の型と、前記コーナー部を形成するコーナー部キャビティを備える他方の型と、を用意し、前記一方の型における前記本体部キャビティ内に、フレームと短繊維を含まない未加硫シートとを順次積層し、前記一方の型における前記ゴム溜め部に、前記短いリップ部の前記先端領域の容量に応じた長さの短繊維を分散した未加硫シートを位置設定して載置し、前記一方の型に前記他方の型を組み合わせた後、加熱加圧して未加硫シートを加硫し、成形体を脱型することを特徴とする。
これにより、短繊維を分散したゴム層が先端領域にだけ設けられ、リップ部の屈曲自由度が確保され、ワイパーの押量に対してリップ部の先端剛性が急激に大きくなることが生じにくくなるワイパーを製造することができる。従って、先端剛性が急激に大きくなることによる、リップ部と本体部の間のコーナー部の応力集中が防止される。そして、コーナー部を含む屈曲領域の疲労破壊が防止されて、寿命を長くすることができる。また、被清掃面に接触するリップ部の先端領域には短繊維が分散されたゴム層で形成されていることから、摩擦係数が低減され、耐摩耗性を維持しつつ、摺動抵抗を小さくすることができる。
本発明のワイパーとその製造方法は、本体部の幅と略等しい短いリップ部を備えるワイパーにおいて、押付け量を大きくして使用された場合でも、被清掃面と接触するリップ部の摩擦係数を低くして摺動抵抗を小さくすると共に、リップ部と本体部の間のコーナー部への応力集中を防止して寿命を長くすることができる。
本実施形態に係るワイパーの正面図である。 本実施形態に係るワイパーの製造方法を説明する図である。 本実施形態に係るワイパーの製造方法を説明する図である。 本実施形態に係るワイパーの先端剛性の測定方法を説明する図である。 本実施形態に係るワイパーの摺動抵抗の測定方法を説明する図である。 本実施形態に係るワイパーと比較例についての摺動抵抗の測定結果を示す図である。 本実施形態に係るワイパーと比較例について測定した押量と先端剛性との関係を示すグラフである。 本実施形態の変形例に係るワイパーの正面図である。 従来のワイパー(比較例1)の正面図である。 従来のワイパー(比較例2)の正面図である。 従来のワイパーについて測定した押量と先端剛性との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るワイパーとその製造方法を実施するための形態について、具体的な一例に即して説明する。尚、以下に説明するものは、例示したものにすぎず、本発明に係るワイパーとその製造方法の適用限界を示すものではない。すなわち、本発明に係るワイパーとその製造方法は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな変更が可能なものである。
まず、本実施形態に係るワイパーについて、図1に基づいて説明する。図1は、本実施形態にワイパーの正面図である。ワイパー1は、工作機械(図示省略)を構成する金属部品の表面(被清掃面)に対して後述する短いリップ部10が摺動することにより、リップ部10の先端部が被清掃面に付着した異物を拭き取るものである。
図1に示すように、ワイパー1は、被清掃面に接触可能な先端側の短いリップ部10と基端側の本体部20とを備えており、リップ部10と本体部20とは一体形成されている。このワイパー1は、リップ部10が被清掃面に押し付けられて、その被清掃面側に位置する先端部15が被清掃面に接触した状態で、被清掃面に沿って移動することにより、被清掃面に付着した異物を拭き取るように構成されている。
本体部20は、被清掃面の直交方向に延在し、取付部21を有している。取付部21は、金属板からなるフレームが接着剤より接合されており、このフレームを介して、取付部21は図示しない工作機械に取り付けられている。尚、ワイパー1に金属製のフレームが接合される必要は必ずしもなく、ワイパー1の取付部21が、工作機械を構成する金属部品に直接取り付けられる構成も可能である。
ここで、本体部20は、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレンジエンモノマー(EPDM)等のゴム材料や、ポリウレタン等の弾性材料からなり、短繊維の補強部材は含まれない。
また、本体部20がゴム材料からなる場合、通常、補強のためのカーボンブラック、老化防止剤、可塑剤、加硫促進剤、加硫剤等の配合剤が配合されることが好ましい。更に、本体部20は、被清掃面に接触する部分ではないことから、リップ部10とは違って、摩擦係数を下げるために摩擦低減材が配合される必要はそもそもない。逆に、本体部20にも摩擦低減材が配合されることによってその硬度が高くなりすぎると、本体部20(特に、フレームに接合される取付部21とリップ部10の屈曲領域18とを連結する領域)の屈曲性が失われる。そのため、リップ部10が被清掃面に沿って摺動しにくくなり、被清掃面の異物を確実に拭き取ることができなくなる。そこで、本実施形態においては、本体部20には、繊維材料やグラファイト等の摩擦低減材が配合されていない。これにより、本体部20に適度な剛性と屈曲性を備えさせることが可能になり、被清掃面に付着した異物を確実に拭き取ることができるようになる。
リップ部10は、被清掃面の直交方向に対して所定角度αで傾斜する方向に延在する傾斜面11と、傾斜面11の先端部15を形成し、本体部20の一側面と平行に延在する第1面12と、傾斜面11のコーナー部14を形成し、本体部20の他側面から延長する第2面13と、第1面12の基端側から第2面13側へと先細り状に切り込まれる切欠部16で囲われて構成される。ここで、切欠部16は、ワイパー1が被清掃面に押し付けられたときに、リップ部10の先端部15が被清掃面に密着するように変形しやすくするために設けられる。また、所定角度αとは、約65度であり、60〜70度の範囲である。
ここで、リップ部10は、本体部20の幅と略等しい幅で形成される。ここで、略等しい幅とは、リップ部10と本体部20とは、等しい幅となるように製造されるものの、研削代や製造誤差が生じるため、本体部の幅の約1.1倍程度の誤差を含む意味である。ここで、本体部20の幅と略等しい幅で形成されるリップ部10と、前記所定角度αとによって、比較的小スペースの短いリップ部10が形成される。
また、リップ部10は、短繊維を分散したゴム層からなり先端部15を含む先端領域17と、先端領域17以外のコーナー部14を含み本体部20と一体化される屈曲領域18とが配置されて屈曲可能に構成される。ここで、短繊維を分散したゴム層からなる先端領域17は、傾斜面11から切欠き部16に亘って、リップ部10のコーナー部14に存在しないように構成される。
図1に示す本実施形態に係るワイパー1の場合、屈曲領域18及び本体部20が短繊維を含まないゴム層からなり、この先端領域17は、先端領域17を形成する短繊維を分散した一層のゴム層と、屈曲領域18を形成する短繊維を含まないゴム層とを突き合わせ、傾斜面11から切欠き部16に至る境界面となるように、構成されている。尚、本体部20と一体化される屈曲領域18は、後述するように、短繊維を含まないゴム層に限らず、短繊維を含まない弾性材料で形成されていても良い。
そして、リップ部10の先端部15とコーナー部14間(傾斜面11)の長さをLとし、リップ部10の先端部15とコーナー部14間(傾斜面11)の内の先端領域17の長さをMとすると、先端領域17の長さMが、傾斜面11の長さLの10〜70%、好ましくは10〜40%である範囲になるように形成される。これにより、ある押量まで、リップ部10の先端剛性を小さく維持することができる。尚、この先端領域17は、屈曲領域18と溶着や一体プレス加硫等により一体化されている。
先端領域17は、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレンジエンモノマー(EPDM)等のゴム材料からなる。さらに、先端領域17には、通常、補強のためのカーボンブラック、老化防止剤、可塑剤、加硫剤といった配合剤が配合される。尚、先端領域17に求められる低い摺動抵抗を実現するためには、ゴムに対してカーボンブラック、短繊維やグラファイト、超高分子量ポリエチレン等の摩擦低減材、老化防止剤、酸化亜鉛、可塑剤、加硫剤を配合する。
先端領域17には、6ナイロン、66ナイロン、610ナイロン等の脂肪族ポリアミド短繊維、メタ系アラミド、パラ系アラミド、ポリエステル繊維、綿繊維、レーヨン等の短繊維を用いる。また、短繊維の長さは1〜8mm程度の範囲であり、短繊維の太さは5〜10デニールのものが好ましい。そして、ゴム材料に対する短繊維の配合量は、ゴム100質量部に対して10〜50質量部に設定されることが好ましい。短繊維の配合量を10質量部以上に設定することによって摩擦係数を小さくすることでき、一方50質量部を超えると、ゴム材料中での短繊維の分散が悪くなってゴム物性が低下するためである。
先端領域17は、短繊維をゴム材料内に分散して配合することにより、短繊維を分散したゴム層が形成される。ここで、先端領域17において、短繊維はゴム層内で被清掃面と交差する方向(例えば、図1において、ワイパー1の幅方向(左右方向)と直交する縦方向)に配向されていることが好ましいが、実際にはやや傾斜している。摩擦低減材となる短繊維が、配向性が無い場合、あるいは、被清掃面と平行に配向されている場合(例えば、図1において、ワイパー1の幅方向に配向されている場合)には、成形後のリップ部10が波打ち形状になりやすく、外観形状が悪化する。さらに、先端部15と被清掃面との間に隙間が生じて密着性が悪くなる。これに比べて、短繊維が縦方向に配向されている場合には、成形後にリップ部10が波打ち状になりにくく、外観形状の悪化といった問題が生じにくい。さらに、先端部15の被清掃面への密着性が高くなり、拭き取り性能が向上する。即ち、先端領域17中での短繊維の配向方向は、リップ部10の幅方向(左右方向)と直交する縦方向であることが、リップ部10の外観や寸法安定性において好ましい。
更に、先端領域17の先端部15付近は、その表面が研磨され、表面に短繊維が露出していることが好ましい。これにより、摩擦係数を低下することができる。
一方、屈曲領域18は、本体部20と同じ材料からなり、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレンジエンモノマー(EPDM)等のゴム材料や、ポリウレタン等の弾性材料からなり、短繊維の補強部材は含まれない。
また、屈曲領域18も本体部20と同様に、ゴム材料からなる場合、通常、補強のためのカーボンブラック、老化防止剤、可塑剤、加硫促進剤、加硫剤等の配合剤が配合されることが好ましい。更に、屈曲領域18も本体部20と同様に、被清掃面に接触する部分ではないことから、先端領域17とは違って、摩擦係数を下げるために摩擦低減材が配合される必要はそもそもない。逆に、屈曲領域18も本体部20と同様に、摩擦低減材が配合されることによってその硬度が高くなりすぎると、屈曲領域18の屈曲性が失われる。そのため、リップ部10が被清掃面に沿って摺動しにくくなり、被清掃面の異物を確実に拭き取ることができなくなる。そこで、本実施形態においては、屈曲領域18においても本体部20と同様に、繊維材料やグラファイト等の摩擦低減材が配合されていない。これにより、屈曲領域18に適度な剛性と屈曲性を備えさせることが可能になり、被清掃面に付着した異物を確実に拭き取ることができるようになる。
ここで、本実施形態に係るワイパーの製造方法について、図2及び図3に基づいて説明する。図2及び図3は、本実施形態に係るワイパーの製造方法を説明する図である。尚、図2及び図3では、図1に示す本実施形態に係るワイパー1であって、屈曲領域18及び本体部20が短繊維を含まないゴム層からなる場合のワイパー1の製造方法について、説明する。
図2に示すように、まず、ワイパー1の切欠部16を成形する突起部33と、突起部33から一方の側(図2の右側)に設けられ本体部20を形成する本体部キャビティ34と、突起部33から他方の側(図2の左側)に設けられリップ部10を形成するリップ部キャビティ35とそれに連通するように設けられたゴム溜め部35a、35bとを備える下型(一方の型)32を用意する。また、図3に示すコーナー部14を形成するコーナー部キャビティ36を備える上型(他方の型)31を用意する。次に、図2に示すように、本体部キャビティ34内に、フレーム21と本体部20及びリップ部10の屈曲領域18を形成するためのゴム層からなる短繊維を含まない未加硫シート20aとを順次積層する。そして、ゴム溜め部35aに、リップ部10の先端領域17を形成するための短繊維分散ゴム層の未加硫シート17aを未加硫シート20aから所定長さだけ離して設置する。
次に、図3に示すように、上型31を下型32に組み合わせて、所定時間、加熱加圧して、未加硫シート20a及び未加硫シート17aを加硫する。加硫条件は通常のゴムの加硫条件であり、特に限定されるものではない。このとき、短繊維分散ゴム層の未加硫シート17aが先端領域を区画すると同時に、未加硫シート20aから流れ込んで、突き合わせ状の境界が形成される。同時に、余剰の未加硫シート17aが下型32に設けられたゴム溜め部35a、35bに流れ込む。特に、大きいゴム溜め部35aには未加硫シート17aが部分的あるいは完全に充満し、これにより先端領域17の容量が調整される。そして、成形体を上型31及び下型32から脱型してワイパー1を成形する。その後、リップ部10の短繊維分散ゴム層からなる先端領域17を研磨して、短繊維を露出させる。このように製造することにより、図1に示すように、ワイパー1のリップ部10には、短繊維分散ゴム層からなる先端領域17が充填される。また、未加硫シート17aの長さを変えることにより、先端領域の長さMを変更することができる。即ち、先端領域17の長さMに基づいて求まる先端領域17の容量に応じて、未加硫シート17aの長さを変えることにより、先端領域17の長さMを変更することができる。この場合、未加硫シート17aは、その左端部を大きいゴム溜め部35aの壁面に当てることで、位置設定される。
このように、本実施形態のワイパー1とその製造方法は、短繊維を分散したゴム層が先端領域17にだけ設けられていることから、リップ部10の屈曲自由度が確保され、ワイパー1の押量に対してリップ部10の先端剛性が急激に大きくなることが生じにくくなる。従って、先端剛性が急激に大きくなることによる、リップ部10と本体部20の間のコーナー部14の応力集中が防止される。そして、コーナー部14を含む屈曲領域18の疲労破壊が防止されて、寿命を長くすることができる。また、被清掃面に接触するリップ部10の先端領域17には短繊維が分散されているゴム層で形成されることから、摩擦係数が低減され、耐摩耗性を維持しつつ、摺動抵抗を小さくすることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな変更が可能なものである。
上記実施形態に係るワイパー1では、リップ部10において、短繊維を分散したゴム層からなる先端領域17は、傾斜面11から切欠き部16に亘って構成されているが、それに限らない。即ち、リップ部10において、短繊維を分散したゴム層からなる先端領域17は、その長さMが、傾斜面11の長さLの10〜70%(好ましくは10〜40%)である範囲になり、且つ、コーナー部14に存在しないように構成されていればよく、例えば、図8に示すように、傾斜面11から第1面12に亘って構成されるものであっても良い。
図8に示す本実施形態の変形例に係るワイパー1の製造方法は、図2において、下型32に設けたワイパー1の切欠き部16を成形する突起部33の一方の側(図2の右側)のキャビティ34内に、フレーム21と本体部20及びリップ部10の屈曲領域18を形成するためのゴム層からなる未加硫シート20aとを順次積層する。そして、突起部33の他方の側(図2の左側)に、リップ部10の先端領域17を形成するための短繊維分散ゴム層の未加硫シートと短繊維を含まない未加硫シートとの二層シートを所定長さだけ離して設置する。これにより、傾斜面11から切欠き部16に亘って断面L字状の境界面を形成することができる。
次に、上述した本実施形態に係るワイパーとその製造方法を適用した具体的な実施例について、以下に説明する。
本実施例に係るワイパー1では、本体部20及びリップ部10の屈曲部18のゴム配合は、NBR100質量部、FEFカーボンブラック50質量部、プロセスオイル10質量部、硫黄2.5質量部、加硫促進剤1.5質量部である。そして、これらをバンバリーミキサーで均一に混合した後、カレンダーロールによって6mm厚さのゴムシートを作製し、本体部20及びリップ部10の屈曲部18の未加硫シート20aを作製した。
また、リップ部10の先端領域17の短繊維分散ゴム層のゴム配合は、上記配合に66ナイロン短繊維(繊維長3mm、繊維径6dtex)20質量部を添加したものである。NBRに短繊維、FEFカーボンブラック、可塑剤、硫黄、加硫促進剤等を配合してバンバリーミキサーで均一に混合した後、カレンダーロールによって短繊維を配向させて2mm厚さのゴムシートを作製し、短繊維分散ゴム層の未加硫シート17aを作製した。
また、フレーム21は、1.6mm厚みのL字状の鉄板である。
そして、短繊維分散ゴム層の未加硫シートの長さを変えることにより、短繊維を分散したゴム層からなるリップ部10の先端領域17の長さMを変化させ、実施例A〜Eのワイパー1を製造した。ここで、実施例AはM/L=13%、実施例BはM/L=26%、実施例CはM/L=39%、実施例DはM/L=53%、実施例EはM/L=66%とした。尚、実施例A〜Eについては、先端領域17の長さMが、傾斜面11の長さLの10〜70%の範囲である。
一方、比較する評価サンプルとして、上述した比較例1及び比較例2を用いる。比較例1は、図9に示す短繊維を分散させたゴム層117をリップ部110と本体部120の表面に位置するように構成されるワイパー101である。また、比較例2は、図10に示す短繊維を分散させたゴム層がリップ部110と本体部120とに存在せず構成されるワイパー201である。図9に示すワイパー101は、下型のキャビティにフレームとその上に本体部の未加硫シートを積層し、そして短繊維分散ゴム層の未加硫シートを本体部の未加硫シートの上に積層するとともに、突出させて設置した後、上型を組み合わせて、所定時間、加熱加圧して未加硫シートを加硫し、成形体を脱型してワイパーを成形して製造する(図2及び図3で示した本実施形態のワイパー1の製造方法を参照)。
そして、実施例A〜E及び比較例1,2のそれぞれについて、先端剛性と摺動抵抗とを測定し、比較評価した。
先端剛性は、図4に示すように、オートグラフ40にワイパー1を取付け、テーブル41上にリップ部10を押付けて、押し付け量(mm)と先端剛性(N/cm)の関係を求める。測定するときの条件は、圧縮速度が10mm/min、測定変位量が2.0mm、温度が室温である。
摺動抵抗は、図5に示すように、室温下でガイド51により鉛直方向に案内されたワイパー1を、ステンレス板50に0.5mm押さえつけて、リップ部10の先端部15をステンレス板50に接触させた状態で、ステンレス板50を水平方向に速度50mm/秒で移動させた。このときの、ワイパー1に作用する水平方向の力をロードセル52で測定し、これを摺動抵抗(N/cm)とした。尚、図5では、本実施例に係るワイパーについて適用した図である。
実施例1(実施例C)及び比較例1,2のそれぞれについての摺動抵抗(押付け量0.5mm)の測定値は、図6に示すとおりである。図6に示すように、ステンレス板50に接触させたリップ部の先端部が短繊維を分散させたゴム層からなる実施例1と比較例1は、摺動抵抗値が低く、ステンレス板50に接触させたリップ部の先端部が短繊維を含まないゴム層からなる比較例2は、摺動抵抗値が高いことが判る。
そして、実施例A〜E及び比較例1,2のそれぞれについての先端剛性の測定値は、図7に示すとおりである。比較例1は、押付量1.0mm付近から摺動抵抗は増加する恐れがある。また、比較例2は、1.75mm近傍まで急激な上昇はなく安定している。そして、実施例A〜Cは、比較例2とほぼ同様で、1.75mm近傍まで急激な上昇はなく安定している。実施例Dは、1.5mm近傍まで急激な上昇はなく、実施例Eは、1.3mm近傍まで急激な上昇はなく、安定している。
以上の比較結果により、本実施例A〜Eのワイパー1は、短繊維を分散したゴム層が先端領域17にだけ設けられていることから、リップ部10の屈曲自由度が確保され、ワイパー1の押量に対してリップ部10の先端剛性が急激に大きくなることが生じにくくなっていることが判る。実施例A〜Cは、特に、ワイパー1の押量に対してリップ部10の先端剛性が急激に大きくなることが生じにくくなっており、先端領域17の長さMが傾斜面11の長さLの10〜40%の範囲であることが好ましいことが判る。
従って、本実施例A〜Eのワイパーは、先端剛性が急激に大きくなることによる、リップ部10と本体部20の間のコーナー部14の応力集中が防止される。そして、コーナー部14を含む屈曲領域18の疲労破壊が防止されて、寿命を長くすることができる。また、被清掃面に接触するリップ部10の先端領域17には短繊維が分散されているゴム層で形成されることから、摩擦係数が低減され、耐摩耗性を維持しつつ、摺動抵抗を小さくすることができる。
すなわち、押量が1mmを超える等のように押し付け量を大きくして使用される場合でも、被清掃面と接触するリップ部の摩擦係数を低くすると共に、リップ部と本体部の間のコーナー部への応力集中を防止して寿命を長くすることができる。
1 ワイパー
10 短いリップ部
11 傾斜面
12 第1面
13 第2面
14 コーナー部
15 先端部
16 切欠部
17 先端領域
18 屈曲領域
20 本体部
31 上型(他方の型)
32 下型(一方の型)
33 突起部
34 本体部キャビティ
35 リップ部キャビティ
35a ゴム溜め部
35b ゴム溜め部
36 コーナー部キャビティ

Claims (5)

  1. 対象物の被清掃面に対して摺動することにより、前記被清掃面を拭き取るワイパーであって、
    前記被清掃面の直交方向に延在する本体部と、
    前記被清掃面の直交方向に対して所定角度で傾斜する方向に延在する傾斜面を有し、前記本体部と一体化されるとともに前記被清掃面に接触可能であり、前記本体部の幅と略等しい幅の短いリップ部とを備え、
    前記短いリップ部は、前記傾斜面と、前記傾斜面の先端部を形成する第1面と、前記傾斜面のコーナー部を形成する第2面と、前記第1面側から前記第2面側へと先細り状に切り込まれる切欠部とで囲われて、短繊維を分散したゴム層からなり前記先端部を含む先端領域と、前記コーナー部を含み前記本体部と一体化され前記短繊維を含まない屈曲領域とが配置されて屈曲可能に構成されることを特徴とするワイパー。
  2. 前記先端部と前記コーナー部との間の長さLの内、前記先端領域の長さMが、10〜70%の範囲にある請求項1記載のワイパー。
  3. 前記先端部と前記コーナー部との間の長さLの内、前記先端領域の長さMが、10〜40%の範囲にある請求項1記載のワイパー。
  4. 前記先端領域の短繊維を分散したゴム層は、その表面が研磨されて表面に短繊維が露出している請求項1乃至3の何れかに記載のワイパー。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載のワイパーの製造方法であって、
    前記切欠部を形成する突起部と、前記突起部から一方の側に設けられ前記本体部を形成する本体部キャビティと、前記突起部から他方の側に設けられ前記短いリップ部を形成するリップ部キャビティとそれに連通するように設けられたゴム溜め部とを備える一方の型と、前記コーナー部を形成するコーナー部キャビティを備える他方の型と、を用意し、
    前記一方の型における前記本体部キャビティ内に、フレームと短繊維を含まない未加硫シートとを順次積層し、
    前記一方の型における前記ゴム溜め部に、前記短いリップ部の前記先端領域の容量に応じた長さの短繊維を分散した未加硫シートを位置設定して載置し、
    前記一方の型に前記他方の型を組み合わせた後、加熱加圧して未加硫シートを加硫し、成形体を脱型することを特徴とするワイパーの製造方法。
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