JP5689718B2 - 空気ばね用下面板又は上面板の製造方法 - Google Patents

空気ばね用下面板又は上面板の製造方法 Download PDF

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本発明は、主としてボルスタレス台車が採用されている鉄道車両の緩衝装置として設置使用される車両用空気ばねに使用される下面板の製造方法に関するものである。
鉄道車両の緩衝装置として設置使用される空気ばねは、一般的には上面板、下面板及び内径部が開口した略ドーナツ状の可とう性部材(ダイヤフラムとも称される)並びに下面板の下部に連接された積層ゴム支持体を備え、上面板、下面板及び可とう性部材にて上下方向並びに水平方向に変形可能な空気室が形成されており、該空気室に圧縮空気を供給して使用される。圧縮空気は一般的に積層ゴム支持体を円筒状に形成して内筒を空気通路とし、該内筒を通じて空気室に供給可能に構成されている。このような空気ばねは、ボルスタレス台車と車体の間に、積層ゴム支持体下部をボルスタレス台車上部に装着するようにして介装される。積層ゴム支持体の内筒部を通じてコンプレッサーより可とう性部材の内径側開口部を通じて加圧空気が供給され、可とう性部材が所定形状に膨張し、主として可とう性部材の変形によって台車の上下方向・水平方向の振動の車体への伝達が緩衝される。また該空気室の空気圧を車両進行方向左右において変更・調整することによって車体の傾斜調整を行ってカーブ走行時の速度を大きく低下させることなく走行することをも可能とする。
かかる空気ばねにおいては、車両走行時の蛇行や旋回に伴い、その主要部である可とう性部材に大きな水平変位が発生し、かかる水平変位によって、前記可とう性部材の外周面のゴム層とこれを保持する上面板と下面板のゴム部との接触面で摺動が発生し、摩耗が発生する。可とう性部材のゴム層部分が摩耗すると大きな内圧のために早期に破損するという問題があり、かかる破損防止のために可とう性部材の摩耗防止技術が提案されている(特許文献1〜3など)。
特許文献1、2記載の発明は、いずれも上面板と可とう性部材の間に摩擦係数の小さな樹脂シートや繊維材料を配設することにより、可とう性部材のゴムの摩耗を防止する発明である。また特許文献3記載の発明は、摺動による摩耗を防止するとともに低温環境における弾力性の低下防止並びにオゾン劣化防止のために、可とう性部材を構成する原料ゴムとしてエチレンプロピレンゴム(EPDM)を使用し、これにポリ四フッ化エチレンを配合したことを特徴とする発明である。
しかし、特許文献1,2記載の発明は上面板と可とう性部材の間の摩耗は防止できるが、下面板との摺動による可とう性部材の摩耗は防止できない。特に可とう性部材と接する下面板のゴム座は曲率半径が小さく、表面積が小さいために可とう性部材の接触時の圧力が大きく、強い摩擦力が発生するため、上面板との摺動による以上に摩耗を受けやすい。また特許文献3記載の発明によれば、可とう性部材の摩擦係数は低下するものの、EPDMはゴムの強度がそれほど高くない上にポリ四フッ化エチレンを含有する結果さらに強度が低下し、ゴム座部との接触により摩耗が発生するために空気ばねとしての耐久性には、なお改善の余地を有するものである。
特許文献4は潤滑性のケーブルリールに関する発明であって、接着剤にポリ四フッ化エチレン微粉末を混合し、加硫成形後のゴム部材の表面に塗布、硬化させる発明が開示されている。しかし、特許文献4記載の発明では、可とう性のある接着剤は使用されているものの空気ばねの部材に使用されるゴムの歪に追随できるものではなく、ゴムへの接着力も十分ではなく、さらに接着剤を使用しているために接着剤で形成された皮膜の耐久性を高めようとするとポリ四フッ化エチレンの添加量が制限され、摩擦抵抗の低減効果は十分ではない。
特許文献5にはワイパーブレード用のゴムの潤滑層を形成する塗料が開示されており、ポリ四フッ化エチレン、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂及び水溶性樹脂からなる組成物が開示されている。しかし、ワイパーブレードと空気ばねでは要求される耐荷重性と耐摩耗性では大きな差があり、水を含有する塗料と加硫ゴムとの結合が弱く、耐久性が十分ではない。
下面板のゴム座部や上面板の上面ゴム部を製造した後にこれらを構成する加硫ゴムの表面に市販のポリ四フッ化エチレン含有塗料やグラファイト含有塗料を塗布して潤滑層を形成する方法も可能であるが、市販の潤滑塗料は必ずしも空気ばねのゴム座部や上面ゴム部を構成するゴムとの接着に優れたものではなく、大きな面圧の負荷のもとに繰り返し摺動を受ける空気ばね用としては耐久性が十分ではない。また塗料の密着性向上のためにバフがけ等の加硫後のゴムの表面の処理を行う必要があって、工数がかかるという問題がある。
特開2001−89549号公報 特開2003−40967号公報 特開2007−308656号公報 特開平10−154563号公報 特開2009−46659号公報
本発明は,上記の公知技術の問題点に鑑みて,ゴム座部との摺動による可とう性部材の摩耗をさらに改善し、耐久性に優れた空気ばねに使用する下面板又は上面板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、車両用空気ばねにおいて、内径部が開口した略ドーナツ状の可とう性部材の下面部を支持する下面板又は可とう性部材の上面部に接する上面板の製造方法であって、
前記下面板は下面の環状支持体と前記環状支持体に接着形成されたゴム座部とからなり、
前記上面板は上面の環状支持体と前記環状支持体に接着形成された上面ゴム部とからなり、
前記ゴム座部又は前記上面ゴム部はポリ四フッ化エチレンを含有しない非潤滑ゴム層と前記非潤滑ゴム層の表面に形成されたポリ四フッ化エチレンを含有する潤滑ゴム層とからなり、
(1)前記非潤滑ゴム層を形成する非潤滑ゴム原料組成物を前記環状支持体に配設する工程、
(2)前記環状支持体を加熱して環状支持体と接する前記非潤滑ゴム原料組成物を少なくとも部分的に加硫する部分加硫工程、
(3)少なくとも前記非潤滑ゴム原料組成物の表面に液状の潤滑ゴム原料組成物を塗布し乾燥する塗布工程、及び
(4)金型内で加熱加硫してポリ四フッ化エチレン粉末を含有する液状ゴム組成物にて形成される潤滑ゴム層を有するゴム座部又は上面ゴム部を形成する加硫成形工程
を有することを特徴とする。
上記構成の製造方法により得られた下面板ないし上面板を使用することにより、ゴム座部並びに上面ゴム部との摺動による可とう性部材の摩耗による寿命低下が改善され、耐久性に優れた空気ばねを構成することができる。またポリ四フッ化エチレンを含有しないために可とう性部材自体の強度、寿命も改善される。さらにゴム部を加硫成形後に塗装する場合と比較して、バフがけ等の処理が不要であるし、液状にて塗布された潤滑性の未加硫ゴム組成物は加硫工程において非潤滑性ゴム組成物と架橋により化学結合される結果、潤滑ゴム層と非潤滑ゴム層間が強く接着される。
本発明の下面板のゴム座部並びに上面板の上面ゴム部の非潤滑ゴム層を構成するゴムは、可とう性部材を構成するゴムのように耐候性、特にオゾンによるクラック発生の問題がないために、EPDMやポリクロロプレンのような耐候性に優れるが強度が十分でないゴムを使用する必要はない。かかるゴム材料としては、天然ゴム単独使用、スチレンブタジエンゴム単独使用、天然ゴムとスチレンブタジエンゴムの併用、天然ゴムとブタジエンゴムの併用、スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムの併用又は天然ゴムとスチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムの併用から選択することが、ゴム座部や上面ゴム部の耐久性の観点より好ましい。
本発明の下面板のゴム座部並びに上面板の上面ゴム部の潤滑ゴム層を構成し、ポリ四フッ化エチレンを含有させる原料ゴムも上記非潤滑ゴム層構成ゴムと同様に、天然ゴム単独使用、スチレンブタジエンゴム単独使用、天然ゴムとスチレンブタジエンゴムの併用、天然ゴムとブタジエンゴムの併用、スチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムの併用又は天然ゴムとスチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムの併用から選択することが、ゴム座部や上部ゴム部の潤滑ゴムの耐摩耗性が優れていることから、好ましい。非潤滑ゴム層と潤滑ゴム層とは共通する原料ゴムを成分として含有していることが好ましく、該原料ゴムは全原料ゴムの50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。
天然ゴムとスチレンブタジエンゴムの併用、天然ゴムとブタジエンゴムの併用又は天然ゴムとスチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムの併用である場合、スチレンブタジエンゴムないしブタジエンゴムの配合比は原料ゴム100重量部中10重量部以上であることが好ましい。天然ゴムとブタジエンゴムの併用、又はスチレンブタジエンゴムとブタジエンゴムの併用の場合、ブタジエンゴムの比率は原料ゴム100重量部中10〜50重量部であることが好ましく、10〜30重量部であることがより好ましい。
潤滑ゴム層を構成する上記のゴムは耐摩耗性に優れたものであり、ポリ四フッ化エチレンを添加することにより、可とう性部材との摩擦を低下させて可とう性部材のゴムの摩耗を低下させる一方で、ゴム座部並びに上面ゴム部の摩耗も抑制することができる。また潤滑ゴム層構成ゴムと非潤滑性ゴム層構成ゴムを類似した組成とすることができるために、潤滑ゴム層と非潤滑性ゴム層との層間接着が強固に設定でき、空気ばねの耐久性向上に寄与する。
ゴム座部ないし上面ゴム部の潤滑ゴム層を構成するゴムに配合添加するポリ四フッ化エチレンの量は、原料ゴム100重量部に対して3〜30重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。
ポリ四フッ化エチレンの配合量が多すぎるとゴムの強度が低下して逆にゴム座部及び上面ゴム部の摩耗が大きくなる場合がある。ポリ四フッ化エチレンの配合量が少なすぎると摩擦係数が十分に低下せず、可とう性部材の摩耗が大きくなる。
潤滑ゴム層並びに非潤滑ゴム層を構成するゴムには、上記以外に公知の添加剤を配合することができる。具体的には補強性充填剤としてカーボンブラック、シリカなどが例示され、加工助剤として酸化亜鉛、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス等が例示され、プロセスオイルなどの可塑剤、老化防止剤、タルクや硫酸カルシウムなどの無機充填剤、加硫剤、加硫促進剤などが例示される。ゴム座部を構成する加硫ゴムは硬度(デュロメーター A硬度)が45〜60であることが好ましく、上面ゴム部を構成する加硫ゴムは硬度(デュロメーター A硬度)が65〜75であることが好ましい。
ポリ四フッ化エチレンは微粉末として添加する。液状ゴム組成物が有機溶剤を使用した溶液である場合にはポリ四フッ化エチレン微粉末は単独で添加してもよく、他の成分と混合して添加してもよい。予め潤滑ゴムの未加硫ゴム組成物を作成した後に溶解する場合には、ポリ四フッ化エチレンは低分子量ポリエチレンとともに配合することが好ましい。かかる構成によればポリ四フッ化エチレンのゴム組成物中への分散性が向上しゴムの強度の向上等の好ましい結果が得られる。使用する低分子量ポリエチレンは融点が100℃以上140℃以下であることが好ましい。ポリ四フッ化エチレンと低分子量ポリエチレンを予め混合して原料ゴム組成物の製造に供することが好ましく、予め混合する場合、ポリ四フッ化エチレンは全量中10重量%以上、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。
液状ゴム組成物は有機溶剤の溶液又は水分散液として使用する。溶液や水分散液はそれぞれの成分の溶液ないし水分散液を所定の比率で混合してもよく、溶液の場合には通常の未加硫ゴム組成物の場合と同様に一旦混合装置により混合してゴム組成物を製造し、その後所定の濃度になるように溶解してもよい。液状の潤滑ゴム原料組成物は有機溶剤の溶液であることがより好ましく、かかる構成とすることによって非潤滑ゴム層との接着がより優れ、従って耐久性に優れた潤滑ゴム層を形成することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は空気ばねを例示した縦断側面図であり、本発明は少なくともゴム座部、好ましくはゴム座部と上面ゴム部の表面に潤滑ゴム層を形成する製造方法に特徴を有するものであるが、得られた上面板、下面板を使用した空気ばねの構成は従来の空気ばねと同じである。空気ばね10は上面板16、可とう性部材18及び下面板20からなり、大きな変位を吸収する大変形吸収部と該大変形吸収部を支持するとともに可とう性部材の内部に圧縮空気を供給する空気通路を有する円筒状の積層ゴム支持体24から構成されている。積層ゴム支持体24は環状円板26とゴム層28が複数接着積層されたものであり、振動の緩衝作用を有する。積層ゴム支持体24の下部には円筒部を通じて空気室に圧縮空気を送る接続ノズル29が設けられている。
可とう性部材18は内径部が開口した略ドーナツ状(断面略C字状)であり、タイヤに類似した形状、構造を有するものであって開口部の端部は上面側、下面側それぞれ外面側に凸状の上面ビード部19a、下面ビード部19bが形成され、該上下のビード部19a、19bにはタイヤと同様にビードワイヤ(図示せず)が内径周方向に配設されている。可とう性部材18は補強材としてテキスタルコードが埋設された加硫ゴム膜にて形成され、補強材はタイヤと同様にバイアス状に配設され、補強材の端部はビードワイヤに巻き付けられた構造になっている。ビードワイヤを含むビード部19a、19bはそれぞれセルフシール方式もしくは締結方式により上面板16とストッパー受台11及び下面板20とストッパー30に固定されている。上面板16は上面環状支持体12と該上面環状支持体12の少なくとも可とう性部材18との接触側に接着形成された上面ゴム部14を備えている。また下面板20は下面環状支持体35と該環状支持体の少なくとも可とう性部材との接触側に接着形成されたゴム座部を備えている。
上面板16の外周側は下方、すなわち可とう性部材の側に傾斜する傾斜面が形成されている。また可とう性部材18は上下のビード部19a、19bの中心面より下方、すなわち下面板20側に偏心するように構成されている。かかる構成によって可とう性部材が水平方向(前後左右方向)に変形する外力を受けた場合において、傾斜面がストッパーとして作用し、変形に対抗する反力が形成される。上面板16を構成する上面環状支持体12は平坦であって上面ゴム部だけを傾斜面を形成するように構成してもよく、別途ストッパーを設ける場合には上面板16が平坦であってもよい。
図2には本発明の下面板20のゴム座部34部分を拡大して例示した。下面板20は本発明の製造方法により製造した実施形態であり、環状支持部材35と該環状支持部材35の可とう性部材18との接触側である上面から外側端部下面に及んでゴム座部が形成されており、該ゴム座部34は非潤滑ゴム層33とその外面、すなわち可とう性部材18と接触する面に皮膜状に形成された潤滑ゴム層31とからなる。環状支持体35の内径に近い部分では、可とう性部材との接触はあるが、摺動は小さい。従って潤滑ゴム層31は部分的に、すなわち少なくとも可とう性部材との摺動が強く発生する部分を含むように形成されていることが好ましい。
皮膜状に形成する潤滑ゴム層31の厚さは0.05mm以上であることが好ましく、液状の原料ゴム組成物の塗布・乾燥の繰り返し回数により調整することができる。厚くてもよいが、液状の潤滑性ゴム原料組成物の塗布回数が多くなり、乾燥時間も長く必要となる。潤滑ゴム層31の厚さは0.5mm以下であることが好ましい。皮膜状の潤滑ゴム層の厚さが薄すぎる場合にはポリ四フッ化エチレンを含んだ層が摩耗消滅する場合があり、その場合には摺動による可とう性部材の摩耗が発生する場合が生じる。塗装により形成された潤滑ゴム層は厚さが均一に形成できる結果、ばらつきによる薄い皮膜発生を防止でき、かかる特徴も空気ばねの耐久性向上に寄与する。
液状の、好ましくは溶液状の潤滑ゴム原料組成物の塗布方法は特に限定されず、刷毛塗り法、スプレー塗装法などが使用可能である。潤滑ゴム原料組成物は鋼鉄製の環状支持部材の露出面まで塗装してもよく、かかる構成によれば鋼鉄製の環状支持部材の防錆効果も得られ、空気ばねの耐久性がより向上する。
図3は図1に例示の空気ばねの上面板16を拡大した断面図である。上面板16は下面板と同様に上面環状支持部材12と該上面環状支持部材12に上面ゴム部16が接着形成されており、上面ゴム部16は非潤滑ゴム層14とその可とう性部材18と接触する表面側に形成された潤滑ゴム層15とから構成されている。外周部はストッパー部として形成されている。
図4は本発明の上面板ないし下面板を使用した空気ばねの別の実施形態を示した部分縦断側面図であり、図5は下面板のゴム座部を拡大して構造を示した図である。この実施形態の空気ばね40においては、上面板を構成する上面環状支持体42の構造が中央部の環状体を一体化した構造に構成されている。また下面板48の断面がS字状に形成されると共に幅が図1の例より狭く形成されており、補強のために鋼製リング57が下面環状支持体35に接して配設されている。図5では下面板48のゴム座部54の下面環状支持体55側が非潤滑ゴム層53に形成され、非潤滑ゴム層53の表面側に潤滑ゴム層51が形成されている。
潤滑ゴム層は下面板のゴム座部ないし下面板と上面板の上面ゴム部の双方に設けることが好ましく、ゴム座部のみに設けた場合、上面板と可とう性部材の間に特許文献1に記載のような低摩擦係数の摺動シートを配設してもよい。
図6は本発明の図1、2に示した下面板の製造に好適な金型の構造を例示した断面図である。図6(a)の金型60は上型62と下型64とから構成され、下面板を構成する下面環状支持体35は下型64に、ゴム座部34の潤滑ゴム層31は上型62に接するように構成されている。上型62の潤滑ゴム層31の形成面近傍には管路66が形成されており、温調熱媒ないし冷却熱媒が通過可能に構成されている。部分加硫工程においては、下型64は加熱するが、管路66に温調熱媒ないし冷却熱媒を通過させて潤滑ゴム層31形成前の非潤滑ゴム層形成用の未加硫ゴム組成物の加硫が進行しないように冷却ないし温度調整をして環状支持体35に接着する未加硫ゴム組成物33の環状支持体35との接着部近傍を加熱し、加硫させる。かかる操作によって環状支持体と非潤滑ゴム部の間の接着剤が反応して接着が行われ、液状ゴム組成物を非潤滑ゴム層形成用のゴム組成物表面に塗布する際に溶剤が接着剤層に浸透して接着不良が発生するという問題を防止できる。
図6(b)は図6(a)の金型60において、上型をプレス熱板側部62と成形面部63を非熱伝導性材料で形成した例である。非熱伝導性材料は大きな断熱性を有する必要はなく、環状支持部材に接する非潤滑性ゴム形成用組成物が薄い層で加硫される時間、潤滑ゴム層形成用のゴム組成物の少なくとも表面が加硫しない程度の断熱性を備えていればよい。かかる非熱伝導性材料としては、アルミナなどのセラミック、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂などの樹脂が例示される。成形面部63を非熱伝導性材料で形成する場合には、上型62を2種準備し、第1の上型は成形面を非熱伝導性材料で形成し、部分加硫工程において使用し、第2の上型は下型と同じ材料で形成して加熱し、加硫工程において使用するように構成することが好ましい。
部分加硫は潤滑ゴム層31を塗布する非潤滑ゴム層形成用の未加硫ゴム組成物の表面が未加硫であればよい。従って部分加硫工程における潤滑ゴム層形成面の温度は100℃以下であり、80℃以下であることが好ましい。上面板も図5に例示した金型と同様な金型を使用して製造することができる。
下面板を構成する下面環状支持体並びに上面板を構成する上面環状支持体は高剛性材料にて形成される。かかる高剛性材料としては鋼板、ステンレス板、繊維補強樹脂などが使用可能であるが、鋼板を使用することが強度、コストの観点より好ましい。上下の環状支持体と加硫ゴムの接着方法は特に限定されるものではないが、通常支持体上に接着剤と塗布した後に未加硫ゴムを配設し、その後金型内で加圧加硫して加硫ゴム部を形成すると同時に接着する加硫接着が行われる。
潤滑ゴム層を有する上面板、下面板の製造方法を説明する。非潤滑ゴム層を構成する非潤滑ゴム原料組成物を周知の方法によって調製する。すなわち非潤滑ゴム原料組成物を構成する原料の内、加硫剤と加硫促進剤を除いた成分を一般的にはバンバリーミキサーを使用して混練してマスターバッチとし、該マスターバッチを冷却した後にマスターバッチと加硫剤と加硫促進剤とをニーダーや混練ロールを使用して混練し、加熱により加硫する反応硬化性の原料組成物とする。反応硬化性の原料ゴム組成物は押出機などを利用して成形に適した形状に成形し、上面板、下面板の製造に使用する。具体的には、押出機を使用して連続平坦シート状に成形し、適宜の長さに裁断し、これを必要に応じて重ねて環状支持体に積層して例えば図2の断面形状に近い状態に形成した後に環状支持体の所定位置に積層する。細いリボン状の原料ゴム組成物を押し出しつつ重ねて所定形状に形成するストリップビルド工法を使用することも可能である。
加硫接着を行うには、上面板を構成する環状支持部材並びに下面板を構成する環状支持部材には、ゴム部形成部位に必要に応じて加硫接着剤を塗布する。鋼板やステンレスなどの金属材料の場合には予めショットブラストを行い、その後加硫接着剤を塗布する。
非潤滑ゴム層を形成する非潤滑ゴム組成物を環状支持部材上に形成した後に、環状支持部材を加熱し、環状支持部材に接する非潤滑ゴム層形成ゴム組成物を少なくとも部分的に加硫する(部分加硫工程)。かかる構成によって、非潤滑ゴム組成物と環状支持部材の間で圧着と加硫接着剤の架橋硬化が進行し、潤滑ゴム層を形成する液状の潤滑ゴム原料組成物を塗布した際に、溶液が環状支持部材と非潤滑原料ゴム組成物の間に浸透して接着剤を溶解することに起因する接着不良を防止することができる。
上記の部分加硫は環状支持部材を金型内に収容して加圧しつつ行ってもよく、金型に収容せずに例えば高周波誘導加熱により金属性の環状支持部材を加熱してもよい。金型内に収容して加圧しつつ行う方が、非潤滑ゴム組成物と環状支持部材の間の圧着が十分に行われ、かつ塗布表面が平滑化されるので好ましい。
部分加硫工程後に環状支持部材上に形成した未加硫の非潤滑ゴム層表面に潤滑ゴム層を形成するポリ四フッ化エチレン含有液状ゴム組成物を塗布し、乾燥する(塗布工程)。乾燥後に未加硫の潤滑ゴム層を形成した環状支持部材を金型内で全体を加熱加硫し(加硫工程)、上面板ないし下面板を得る。
〔潤滑ゴム層用液状ゴム組成物の調製〕
(実施例1)
天然ゴム80重量部とブタジエンゴム20重量部、アロマ系プロセスオイル15重量部、T−NSカーボンブラック30重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸1重量部、パラフィンワックス1重量部、酸化防止剤2重量部、ポリ四フッ化エチレンと低分子量ポリエチレンとの混合物(ポリ四フッ化エチレン含有率40重量%)20重量部をバンバリーミキサーにて混練物の温度が120℃となるように混練してマスターバッチとし、得られたマスターバッチを室温に冷却した後にニーダーを使用してマスターバッチ全量に対して硫黄3重量部とスルフェンアミド系加硫促進剤0.8重量部を添加・混練し、潤滑ゴム原料組成物とした。
上記の潤滑ゴム原料組成物3kgをトルエン12kgに溶解して液状の潤滑ゴム原料組成物とした。溶解は容器内で潤滑ゴム原料組成物とトルエンとを24時間プロペラ撹拌することにより行った。溶液の濃度は25重量%であった。
(実施例2〜4)
原料ゴムとして天然ゴム80重量部とスチレンブタジエンゴム20重量部に代えて以下のものを使用した以外は実施例1と同じ条件で潤滑ゴム原料組成物溶液を調整した。
実施例2:スチレンブタジエンゴム100重量部
実施例3:天然ゴム80重量部とスチレンブタジエンゴム20重量部
実施例4:天然ゴム100重量部
(非潤滑ゴム原料組成物の調製)
天然ゴム100重量部、アロマ系プロセスオイル15重量部、FEFカーボンブラック30重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸1重量部、パラフィンワックス1重量部、老化防止剤2重量部をバンバリーミキサーにて混練してマスターバッチとし、得られたマスターバッチを室温に冷却した後にニーダーを使用してマスターバッチ全量に対して硫黄3重量部とスルフェンアミド系加硫促進剤0.8重量部を添加・混練し、非潤滑ゴム原料組成物とした。
(可とう性部材)
可とう性部材は周知の方法により製造した。すなわちナイロンコードをトッピング処理し、カレンダーロールを使用してゴム原料組成物をトッピングしてトッピングコードとし、これをカッターによりコードが所定の角度を形成するように裁断して成形に使用した。成形においてはトッピングコードを必要に応じて積層し、端部にビードを配設した後にトッピングコードをビードを包むように折り返し、表層と内層にゴム部材を貼り付けて未加硫成形体とし、これを金型内で加圧成型した。可とう性部材の原料ゴム組成物の配合は以下のとおりである。
ポリクロロプレンゴム 70重量部
天然ゴム 30重量部
FEFカーボンブラック 30重量部
アロマ系プロセスオイル 10重量部
酸化亜鉛 5重量部
ステアリン酸 1重量部
パラフィンワックス 2重量部
脂肪酸エステル(エクストンK-1) 3重量部
硫黄 2重量部
チアゾール系加硫促進剤 1重量部
チウラム系加硫促進剤 0.5重量部
(ゴム座部成形用ゴム材料、上面ゴム部成形用ゴム材料の調製)
ゴム座部並びに上面ゴム部成形用の材料は上記の未加硫ゴム組成物(非潤滑ゴム組成物)をロールにてシート化し、それぞれのシートを積層して成形に供した。
(下面板の製造)
図1,2に示した断面形状を有し、下面板を構成する鉄製の下面環状支持部材の両面をショットブラスト処理した後に市販の加硫接着剤を塗布した。加硫接着剤を塗布した下面環状支持部材に非潤滑ゴム原料組成物の成形物を圧着した。この非潤滑ゴム原料組成物の成形物を圧着した下面環状支持部材を図6(b)に示したように金型内に収容し、上型62の表面を80℃以下に保持しつつ、下型は150℃に加熱して10分圧縮して環状支持部材を加熱し、環状支持部材と接する非潤滑ゴム原料組成物を加熱して少なくとも表面を未加硫の状態で部分的に加硫した。
非潤滑ゴム原料組成物の表面に実施例1〜4で製造した潤滑性ゴムの原料ゴム組成物溶液を塗布して厚さ0.1mmの潤滑ゴム層を形成し、24時間室温で乾燥した(塗布工程)。その後上型62を所定の加硫用の金属製金型とし、150℃にて全体を加熱加圧して未加硫ゴム組成物を加硫するとともにゴム座部を所定形状に成形して下面板を製造した。
(上面板の製造)
下面板の製造と同様な方法で図3に示したように表面に厚さ約0.1mmの潤滑層が形成された上面ゴム部を有する上面板を作製した。
実施例の潤滑ゴム原料組成物について、厚さ2mmのシート状の加硫ゴムを作成した。
(比較例)
潤滑ゴム層を形成することなく下面板を作製し、比較例とした。
(評価)
(1)空気ばねの耐久試験
空気ばねを実使用と同じ状態にセットし、温度25℃にて内圧500kPaをかけて、上下の振動を100万回と水平方向の振動を20万回繰り返し加えた後にゴム座部表面と上面ゴム部表面の摩耗を評価した。評価結果は(表1)に示した。振動は上下方向に振幅±30mm、振動数1.0Hz、左右方向に振幅±、振動数0.5Hzにて行った。評価は上面板のストッパー部についても行った。
(2)テーバー摩耗
ゴム/ゴム摩耗試験を行った。ゴム座部の場合と同様にして非潤滑性ゴムにて摩耗輪の大部分を作製し、表面の摩耗面に厚さ0.1mmの潤滑性ゴム層を形成して加硫し、摩耗輪とした。可とう性部材のシートを円盤状に裁断してテーバー摩耗試験機の回転板にセットし、摩耗輪を2個作成してテーバー摩耗試験機の左右の摩耗輪取付アームにセットする。摩耗試験はJIS K 6264に従って荷重500gにて2000回摩耗後の摩耗輪のゴムとシート状ゴムの摩耗量(×10−3cc)を測定し、結果を(表2)に示した。
(3)指触評価
テーバー摩耗試験後の摩耗輪構成ゴムの表面を指触により粘着の程度を評価した。粘着の程度は指触により簡単に評価できる性能である。結果は表3に示した。
Figure 0005689718
Figure 0005689718
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上面板の上面ゴム部並びに下面板のゴム座部として実施例1にて製造した潤滑ゴム層を有する上面板と下面板を使用して空気ばねを製造し、評価を行った結果を表1に示した。またテーバー摩耗評価結果を表2に示した。本発明の製造方法による上面板と下面板を使用した空気ばねは、ゴム座部、上面ゴム部及び可とう性部材のいずれについても摩耗が改善されており、結果として耐久性がすぐれたものであることが分かる。また表2に示したテーバー摩耗の評価結果も本発明の潤滑ゴムを使用した場合には、ゴム座部、可とう性部材の双方のゴムの摩耗が低減しており、耐久試験結果を裏付けるものである。
実施例1〜4の潤滑ゴムについては、指触評価を行った結果が表2に示されている。いずれもポリ四フッ化エチレンを含有しない比較例のゴムと比較して潤滑性が優れていることが分かる。従って実施例2,3,4の潤滑ゴムを使用した場合も、実施例1の潤滑ゴムを使用した場合と同様に空気ばねの耐久性に優れたものとなることが推認される。
本発明の下面板を使用した空気ばねを例示する縦断側面図 下面板の構造の好適な実施形態を示す部分断面図 上面板の構造の好適な実施形態を示す部分断面図 下面板の構造の好適な別の実施形態を示す部分断面図 下面板のゴム座部を拡大して例示する部分断面図 下面板の成形に好適な金型構造を例示する部分断面図
10 空気ばね
16 下面板
18 可とう性部材
31 潤滑ゴム層
35 下面環状支持部材

Claims (3)

  1. 車両用空気ばねにおいて、内径部が開口した略ドーナツ状の可とう性部材の下面部を支持する下面板又は可とう性部材の上面部に接する上面板の製造方法であって、
    前記下面板は下面の環状支持体と前記環状支持体に接着形成されたゴム座部とからなり、前記上面板は上面の環状支持体と前記環状支持体に接着形成された上面ゴム部とからなり、
    前記ゴム座部又は前記上面ゴム部はポリ四フッ化エチレンを含有しない非潤滑ゴム層と前記非潤滑ゴム層の表面に形成されたポリ四フッ化エチレンを含有する潤滑ゴム層とからなり、
    (1)前記非潤滑ゴム層を形成する非潤滑ゴム原料組成物を前記環状支持体に配設する工程、
    (2)前記環状支持体を加熱して環状支持体と接する前記非潤滑ゴム原料組成物を少なくとも部分的に加硫する部分加硫工程、
    (3)少なくとも前記非潤滑ゴム原料組成物の表面に液状の潤滑ゴム原料組成物を塗布し乾燥する塗布工程、及び
    (4)金型内で加熱加硫して潤滑ゴム原料組成物にて形成される潤滑ゴム層を有するゴム座部又は上面ゴム部を形成する加硫成形工程
    有し、前記部分加硫工程は、潤滑ゴム原料組成物層に接する金型に非熱伝導性材料を配設する空気ばね用下面板又は上面板の製造方法。
  2. 前記潤滑ゴム層を構成する原料ゴムは天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴムとスチレンブタジエンゴム及び/又はブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムのいずれかである請求項1に記載の空気ばね用下面板又は上面板の製造方法。
  3. 車両用空気ばねにおいて、内径部が開口した略ドーナツ状の可とう性部材の下面部を支持する下面板又は可とう性部材の上面部に接する上面板の製造方法であって、
    前記下面板は下面の環状支持体と前記環状支持体に接着形成されたゴム座部とからなり、前記上面板は上面の環状支持体と前記環状支持体に接着形成された上面ゴム部とからなり、
    前記ゴム座部又は前記上面ゴム部はポリ四フッ化エチレンを含有しない非潤滑ゴム層と前記非潤滑ゴム層の表面に形成されたポリ四フッ化エチレンを含有する潤滑ゴム層とからなり、
    (1)前記非潤滑ゴム層を形成する非潤滑ゴム原料組成物を前記環状支持体に配設する工程、
    (2)前記環状支持体を加熱して環状支持体と接する前記非潤滑ゴム原料組成物を少なくとも部分的に加硫する部分加硫工程、
    (3)少なくとも前記非潤滑ゴム原料組成物の表面に液状の潤滑ゴム原料組成物を塗布し乾燥する塗布工程、及び
    (4)金型内で加熱加硫して潤滑ゴム原料組成物にて形成される潤滑ゴム層を有するゴム座部又は上面ゴム部を形成する加硫成形工程
    を有し、前記部分加硫工程は、前記液状潤滑ゴム原料組成物層に接する金型を冷却又は温度調節する空気ばね用下面板又は上面板の製造方法。
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