JP6795466B2 - 伝動ベルト及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ベルト表面を被覆し、かつ耐摩耗性を要求される補強布を備えた伝動ベルト及びその製造方法に関する。
摩擦伝動ベルトや歯付ベルトなどの伝動ベルトは、動力伝達手段のひとつとして広く普及している。これら伝動ベルトの典型的な形態は、ゴムなどのエラストマーの一部を補強布で覆った構造を有しており、エラストマーの柔軟性により衝撃を吸収したり、騒音を抑制したりする一方で、金属などの硬材で構成されるプーリとの接触による摩耗を抑えるために、プーリとの接触面などに補強布を配置している。
例えば、ラップドVベルトは、ベルトの外周全体が補強布で覆われており、ローエッジVベルトはベルトの上面や下面が補強布で覆われていることが多く、歯付ベルトはプーリとかみ合う歯面や背面が補強布で覆われていることが多い。従来、Vリブドベルトの摩擦伝動面には短繊維を配することで補強や摩擦係数の低減を行ってきたが、近年になって、摩擦伝動面に補強布を配した製品も増加しつつある。また、高負荷伝動用ベルトとして知られている、多数の樹脂製ブロックを張力帯で結合した形状の樹脂ブロックベルトにおいても、樹脂ブロックと接触する張力帯の上下面に補強布が配置されている。
これら補強布に共通して要求される性能として、耐摩耗性の高さや摩擦係数を低い水準で安定させることが挙げられる。摩擦係数が高い場合、摩擦伝動ベルトにおいてはベルトがプーリから抜け難くなり、発熱や騒音の原因となる。また、歯付ベルトにおいてはプーリとのかみ合いがスムーズに行われなくなることで発熱、振動、騒音の原因となる。さらに、樹脂ブロックベルトにおいてはベルトがプーリに入る際とプーリから出る際に、ブロックが張力帯に嵌合している部分を支点として前後に回転するような動きが発生するため、ブロックと張力帯とが擦れ合い、発熱や摩耗の原因となる。
特開2001−336583号公報(特許文献1)には、張力帯の片面にパラ系アラミド繊維からなり、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス又はイソシアネートによる第1処理及びゴム糊による第2処理の少なくとも二段階の接着処理がされている補強布を配置した樹脂ブロックベルトが開示されている。
しかし、この樹脂ブロックベルトでは、補強布を耐摩耗性が高い材料で形成しているが、補強布の摩耗は低減される一方で、ブロックの摩耗は促進されてしまう。ブロックが摩耗すると、張力帯とブロックとの嵌合が緩んでがたつきが発生し、ブロックの破損、張力帯の切断といった故障が起きる。
一方で、摩擦係数を低減すると、発熱や騒音を抑制でき、耐摩耗性も向上できるため、従来から種々の提案が行われている。
特開平9−273603号公報(特許文献2)には、100重量部のポリマーに対して30〜70重量部の二硫化モリブデンが添加されたゴム糊中に補強布を浸漬し、固体潤滑剤としての二硫化モリブデンを含む歯布層を歯部表面に積層した歯付ベルトが開示されている。
しかし、二硫化モリブデンの摩擦係数低減効果はあまり大きくはなく、少量の添加では十分な効果が発揮されない一方で、多量に添加した場合には接着力が低下する。接着力の低下はベルトの耐久性を低下させることから、このベルトでは摩擦係数の低下とベルトの耐久性とを高いレベルで両立させることは困難である。
特開2003−156103号公報(特許文献3)には、100重量部のポリマーに対して10重量部の超高分子量ポリエチレンが添加されたゴム糊中に補強布を浸漬し、固体潤滑剤としての超高分子量ポリエチレンを含むコーティングゴム層で被覆された帆布層を張力帯のブロックとの接触面に形成した樹脂ブロックベルトが開示されている。この文献の実施例では、高速耐久走行試験条件においては600時間で不具合は発生しなかったと記載されている。
しかし、この樹脂ブロックベルトでも、耐久性が十分ではなく、従動プーリに負荷の掛かる実機では耐摩耗性は十分ではない。
特開2003−222197号公報(特許文献4)には、エラストマーの固形分100質量部中に50〜400質量部の割合で分散した摩擦係数低減剤を含むカバー帆布を張力帯の少なくとも片面に被覆した樹脂ブロックベルトが開示されている。この文献では、前記摩擦係数低減剤として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましいと記載されている。
しかし、PTFEを多量に配合すると、接着性や加工性が低下する上に、PTFEは、高価であるが、少量では効果が十分に発現しないため、経済性も低い。
特開2003−322216号公報(特許文献5)には、歯布をゴム成分100重量部に対して30〜200重量部のカーボンナノチューブを含む処理液で処理した歯付ベルトが開示されている。
しかし、カーボンナノチューブも多量に配合する必要がある上に、極めて高価であるため、経済性も低い。
特開2001−336583号公報(特許請求の範囲) 特開平9−273603号公報(特許請求の範囲) 特開2003−156103号公報(特許請求の範囲、実施例) 特開2003−222197号公報(特許請求の範囲、段落[0027][0030]) 特開2003−322216号公報(請求項1及び2)
本発明の目的は、表面に少量の摩擦係数低減剤を付着させるだけで、補強布の摩擦係数を下げ、耐摩耗性を向上できる伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、使用時の発熱及び騒音を低減でき、耐久性も向上できる伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、接着性や加工性に優れ、経済性も高い伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、伝動ベルトのベルト本体表面の少なくとも一部をグラフェン類、バインダー及び布帛を含む補強布で被覆することにより、補強布の摩擦係数を下げ、耐摩耗性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の伝動ベルトは、ベルト本体表面の少なくとも一部が、グラフェン類、バインダー及び布帛を含む補強布で被覆されている。前記グラフェン類は、布帛の表面及び/又は繊維間に、バインダーを介して固定されていてもよい。前記グラフェン類の少なくとも一部は布帛表面に露出し、かつ残部のグラフェン類は布帛内部の繊維間に均一に存在していてもよい。前記グラフェン類の平均粒子径は0.1〜3μm程度である。前記バインダーは加硫ゴムであってもよい。前記グラフェン類の割合は、バインダー100質量部に対して0.5〜10質量部程度である。前記グラフェン類の割合は、布帛100質量部に対して0.1〜5質量部程度である。前記補強布は、グラフェン類以外の摩擦係数低減剤をさらに含んでいてもよい。前記バインダーはベルト本体の加硫ゴムと同一の加硫ゴムであってもよい。本発明の伝動ベルトは、ベルト本体である張力帯と、この張力帯の長さ方向に略等間隔のピッチで配列され、かつ嵌合により前記張力帯と一体化した複数のブロックとを備えた伝動ベルトであって、前記張力帯の表面のうち、少なくとも前記ブロックの上側ビーム部及び下側ビーム部との接触部が補強布で被覆されていてもよい。
本発明には、バインダー前駆体を介してグラフェン類を布帛に固定して補強布前駆体を形成する補強布前駆体形成工程を含む前記伝動ベルトの製造方法も含まれる。前記補強布前駆体形成工程において、グラフェン類及びバインダー前駆体を含む液状組成物を布帛に含浸させた後、乾燥してもよい。本発明の製造方法は、バインダー前駆体が未加硫ゴムであり、未加硫ゴムを含むベルト本体前駆体表面の少なくとも一部を補強布前駆体で被覆して加硫する加硫工程をさらに含んでいてもよい。
本発明では、伝動ベルトのベルト本体表面の少なくとも一部がグラフェン類、バインダー及び布帛を含む補強布で被覆されているため、表面に少量の摩擦係数低減剤を付着させるだけで、補強布の摩擦係数を下げ、耐摩耗性を向上できる。特に、補強布の摩擦係数を下げることで、使用時の発熱及び騒音を低減でき、ベルトの耐久性を向上できる。さらに、摩擦係数低減剤を少量とすることで、接着性や加工性を損ねることなく、材料コストの上昇も抑制できる。
図1は、本発明の樹脂ブロックベルトの一例を示す概略斜視図である。 図2は、図1の樹脂ブロックベルトの幅方向の断面図である。 図3は、図1の樹脂ブロックベルトを構成するブロックの概略図である。 図4は、図1の樹脂ブロックベルトの一部省略した側面図である。
[伝動ベルトの構造]
以下に、必要により添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
本発明の伝動ベルトは、ベルト本体表面の少なくとも一部が、グラフェン類、バインダー及び布帛を含む補強布で被覆されていれば、特に限定されず、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト、樹脂ブロックベルトなどの摩擦伝動ベルト;歯付ベルトなどの噛み合い伝動ベルトなどであってもよい。これらの伝動ベルトのうち、樹脂ブロックベルト以外のベルトでは、少なくともプーリとの接触面を前記補強布で被覆するのが好ましく、樹脂ブロックベルトでは、張力帯の少なくともブロックとの接触面を前記補強布で被覆するのが好ましい。これらの伝動ベルトのうち、ラップドVベルト、樹脂ブロックベルト、歯付ベルトが好ましく、高負荷で使用される点から、樹脂ブロックベルトが特に好ましい。
樹脂ブロックベルトは、張力帯(センターベルト)と、この張力帯の長さ方向に略等間隔のピッチで配列され、かつ嵌合により前記張力帯と一体化した複数のブロックとを備えた構造を有していればよく、高排気量の自動車やスクーターなどの高負荷伝動用途で広く利用されている慣用の高負荷伝動用Vベルトと称される摩擦伝動ベルトと同一の構造を有している。
図1は、樹脂ブロックベルトの一例を示す概略斜視図であり、図2は、図1の樹脂ブロックベルトの幅方向の断面図である。図3は、図1の樹脂ブロックベルトを構成するブロックの概略図であり、詳しくは、各ブロックの平面図(a)、正面図(b)、底面図(c)及び側面図(d)である。図4は、図1の樹脂ブロックベルトの一部省略した側面図である。
図1及び2に示すように、樹脂ブロックベルト1は、平行な2本のエンドレスの張力帯2と、この張力帯2の長手方向(ベルトの長手方向)に対して板面が垂直な方向で略等間隔のピッチで配列し、かつ前記張力帯2と一体化した複数の板状ブロック10とで構成されている。図3に示すように、各ブロック10は、同一形状であり、上下方向に並ぶ2本の上側ビーム部11及び下側ビーム部12をベルト幅方向の中央部でセンターピラー部13によって連結した構造を有しており、板面の形状は略H状である。すなわち、ブロック10には、上下のビーム部11,12とセンターピラー部13とによって囲まれた一対の嵌合溝14が形成されている。各張力帯2は、各ブロック10の各嵌合溝14にベルト幅方向の両側から圧入嵌合され、各ブロック10が2本の張力帯2と一体化されている。
ブロック10の上側ビーム部11及び下側ビーム部12におけるベルト幅方向の長さは、上端部が最も長く下端部に向かうにつれて短くなっており、ベルト幅方向の形状が略逆台形状を形成している。樹脂ブロックベルト1が各プーリに巻き掛けられたときに、各ブロック10の上側ビーム部11は張力帯2よりもプーリ外径側に位置し、下側ビーム部12は張力帯2よりもプーリ内径側に位置する。すなわち、ベルト長手方向に延びる側面がプーリと接触し、ベルト側面で露出する張力帯と、この張力帯の露出部分の上下を挟む形態のブロックの側面部分とが摩擦伝動面を形成する。
図1及び4に示すように、各張力帯2の外周面と内周面には、それぞれベルト幅方向に延びる凹溝21a,21bがベルト長手方向に所定のピッチで形成されている。また、各ブロック10における嵌合溝14の上下方向の対向面には、それぞれベルト幅方向に延びる凸条15a,15bが形成されている。樹脂ブロックベルト1では、張力帯2の凹溝21a,21bに、ブロック10の各凸条15a,15bを係合させることにより、各ブロック10がベルト長手方向に沿って所定ピッチで固定される。張力帯2の内周面の凹溝21bは、断面が略四角形状である外周面の凹溝21aに比べて、断面が緩やかな凹湾曲面(半円状断面)で形成されている。そのため、凹溝21bと係合する嵌合溝14の凸条15bは、凹溝21aと係合する凸条15aと比べて、断面が緩やかな凸湾曲面で形成されている。
また、図3(d)に示すように、各ブロック10の厚み(ベルト長手方向に関する長さ)は、プーリ外径側に位置する上側ビーム部11においては、上下方向に一定の肉厚で形成されており、プーリ内径側に位置する下側ビーム部12においては、プーリ内径側となる下側に行くほど肉厚が漸減するように形成されている。
樹脂ブロックベルトは、図1〜4に示されるベルトに限定されず、ベルト長手方向にエンドレスに延びる張力帯が屈曲可能な状態で、複数のブロックが張力帯に固定された樹脂ブロックベルトであればよく(複数のブロックが張力帯に対してキャタピラ状に連結された樹脂ブロックベルトであればよく)、慣用の高負荷伝動用Vベルトを利用できる。
本発明では、このような樹脂ブロックベルトにおいて、張力帯の表面のうち、少なくともブロックの上側ビーム部及び下側ビーム部との接触面、すなわち張力帯の表面のうち、ブロックのセンターピラー部との接触面及びプーリとの接触面(樹脂ブロックベルトの左右側面)以外の面が補強布で被覆されているのが好ましく、ブロックのセンターピラー部との接触面及び/又はプーリとの接触面も補強布で被覆されていてもよい。
[補強布]
補強布は、グラフェン類、バインダー及び布帛を含み、ベルト本体表面の少なくとも一部を被覆することにより、表面に少量の摩擦係数低減剤を付着させるだけで、補強布の摩擦係数を下げることができるため、耐摩耗性も向上できる。
(グラフェン類)
グラフェン類は、摩擦係数低減剤(固体潤滑剤)として作用し、従来の固体潤滑剤に比べて少量で摩擦係数を低減できるため、従来の技術ではトレードオフの関係にあり、実現困難であった伝動ベルトの摺動性と耐久性とを両立できる。
グラフェン類には、通常「グラフェン」と称される単一のシートであるグラフェンシートと、このグラフェンシートの積層体であるグラフェン膜(多層グラフェン)とが含まれる。
グラフェンシートは、グラファイトを構成する材料であり、1原子の厚さのsp結合炭素原子のシート(単層のシート)である。その構造は、炭素原子とその結合から形成された蜂の巣のような六角形格子構造(ハニカム構造)を有している。
グラフェン膜は、グラファイトを剥離処理して得られ、グラファイトと比べて薄肉の積層体であり、結晶構造を有している。グラフェン膜におけるグラフェンシートの積層枚数は、例えば2〜20枚程度であり、好ましくは3〜10枚程度である。
グラフェン膜のアスペクト比(板面の平均径/平均厚み)は20以上であってもよく、例えば20〜100000、好ましくは50〜30000、さらに好ましくは100〜10000程度である。グラフェン膜の平均厚みは、例えば1〜10nm、好ましくは1.5〜5nm程度であってもよい。
グラフェン類は、酸化グラフェンを含んでいてもよく、酸化グラフェンのみで形成されていてもよい。
グラフェン類(二次凝集体)の形状は、特に限定されず、例えば、シート状、粒状(粉末状又は不定形状)、シート状と粒状とを組み合わせた形状などが挙げられる。これらの形状のうち、取り扱い性に優れ、バインダー及び布帛中に均一に分散し易い点から、粒状が好ましい。
グラフェン類が粒状である場合、グラフェン類の平均粒子径は50μm以下であってもよく、布帛中に均一に分散し易い点から、布帛を構成する繊維の繊維径よりも小さい平均粒子径を有するのが好ましく、例えば0.01〜50μm(例えば0.1〜30μm)、好ましくは0.03〜10μm、さらに好ましくは0.05〜5μm(特に0.1〜3μm)程度である。平均粒子径が大きすぎると、バインダー中で凝集塊が形成され易くなり、均一に分散させるのが困難となる虞がある。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、グラフェン類の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM−5900LV」)で5000倍に拡大して観察し、無作為に抽出した20個の粒子径を測定し、平均化する方法で求めることができる。
グラフェン類は、慣用の方法で製造でき、例えば、特許第5688669号公報、特許第5697067号公報、特表2015−501873号公報、WO2013/146213号パンフレットに記載の方法などにより製造してもよい。
グラフェン類の割合は、バインダー100質量部に対して0.1〜100質量部(特に0.5〜30質量部)程度の範囲から選択でき、例えば0.5〜10質量部、好ましくは1〜8質量部、さらに好ましくは3〜7質量部(特に4〜6質量部)程度であってもよい。本発明では、摩擦係数低減剤(第1の摩擦係数低減剤)として、グラフェン類を含んでいればよいが、グラフェン類以外の摩擦係数低減剤(第2の摩擦係数低減剤)を含んでいてもよく、高度な接着性や加工性が要求される場合やグラフェン類を第2の摩擦係数低減剤(固体潤滑剤)と組み合わせる場合は、グラフェン類の割合は、例えば0.3〜8質量部、好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.6〜3質量部(特に0.8〜2質量部)程度である。グラフェン類の割合は、布帛100質量部に対して、例えば0.01〜30質量部、好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.15〜4質量部(特に1〜3質量部)程度である。グラフェン類の割合が少なすぎると、摩擦係数を低減する効果が少なくなる虞があり、多すぎると、接着性や加工性が低下し、製品の外観も低下する虞がある上に、バインダーへの配合が困難になり、布帛に対する固着性も低下する虞がある。
グラフェン類は、補強布に含まれていればよいが、摩擦係数を低減できる点から、少なくとも布帛の外側表面(伝動面など)にグラフェン類が存在する(外側表面に露出する)のが好ましく、耐久性に優れる点から、布帛の表面及び内部(繊維間)に存在(特に、内部に均質に存在することにより表面においても均一に存在)するのが特に好ましい。
補強布表面において、グラフェン類はバインダーの薄膜で被覆されている場合が多く、補強布が伝動面(樹脂ブロックベルトの張力帯におけるブロックの上側ビーム部及び下側ビーム部との接触面や、他のベルトにおけるプーリとの接触面)を被覆する場合、グラフェン類は、ベルト走行直後にブロックやプーリとの接触により補強布表面に露出する。この場合、補強布の表面(ベルト本体と接しない外側の表面)全体に対して露出したグラフェン類が占める面積割合は、表面全体に対して0.1%以上であればよく、例えば0.1〜50%、好ましくは0.3〜20%、さらに好ましくは0.5〜10%程度である。グラフェン類の面積割合が小さすぎると、摩擦係数の低減効果(摺動性)が低下する虞がある。なお、本発明では、グラフェン類の面積割合は、走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づいて測定できる。
(バインダー)
前記グラフェン類は、バインダーを介して、布帛の表面及び/又は繊維間(内部)に固定されていてもよく、特に、摺動性に優れる点から、少なくとも外側表面(伝動面)に固定されているのが好ましく、耐久性に優れる点から、外側表面及び繊維間に固定されているのが特に好ましい。そのため、バインダーは、少なくとも布帛の表面に付着するのが好ましく、布帛の表面及び内部(繊維間)に付着(特に、内部に均質に付着することにより表面においても均一に付着)するのが特に好ましい。
バインダーは、接着性樹脂などのポリマー成分であってもよいが、ベルト本体(樹脂ブロックベルトの張力帯のゴム層や、Vリブドベルトの圧縮層や伸張層など)との密着性に優れる点から、加硫ゴムであるのが好ましく、ベルト本体を形成する加硫ゴムと同一又は同種(特に同一)の加硫ゴムが特に好ましい。例えば、加硫ゴムを伝動面(樹脂ブロックベルトの張力帯におけるブロックの上側ビーム部及び下側ビーム部との接触面や、他の伝動ベルトにおけるプーリとの接触面など)に用いると、グラフェン類が水に流されて伝動面から脱離したり、ブロックやプーリとの接触摩耗により走行初期で欠落したりして、早期に摩擦係数低減の効果が消失するのを抑制でき、樹脂ブロックベルトのブロックやプーリとの接触側表面層にグラフェン類を長期にわたって保持できる。
このような加硫ゴムを含む補強布は、グラフェン類が加硫ゴムと一体化した状態で固着されており、補強布で伝動面を形成した場合、ベルトの走行初期で伝動面のゴム薄膜が飛散されるとグラフェン類が露出する。その状態で連続して樹脂ブロックベルトのブロックやプーリに接触して走行を続けた場合、ベルトの加硫後に伝動面にグラフェン類を付着させた場合に比べ、グラフェン類が水に流されて伝動面から脱離したり、ブロックやプーリとの接触摩擦により走行初期で欠落して、グラフェン類の効果が消失するリスクは大きく低減される。そのため、伝動面と一体化した状態で固着されたグラフェン類は、走行経緯の中でも消失することなく保持されて、その摩擦係数を低減でき、しかも少量で摩擦係数を低減できるため、耐摩耗性や耐久性も向上できる。さらに、グラフェン類が長時間ベルト本体に保持されることにより効果の持続が可能になる。
加硫ゴムのゴム成分としては、ベルトの種類に応じて、耐摩耗性、耐熱性、耐発音性、伝達性能、接着力、粘着性、グラフェン類の分散性などを考慮し、公知のゴム成分及び/又はエラストマーから選択でき、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)など)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのゴム成分は、単独又は組み合わせて使用できる。これらのゴム成分のうち、ジエン系ゴム(天然ゴム、クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴムなど)、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDMなど)などのエチレン−α−オレフィン系ゴム)などが好ましく、樹脂ブロックベルトでは、水素化ニトリルゴムであってもよい。
水素化ニトリルゴムは、水素化ニトリルゴムと、水素化ニトリルゴム及び不飽和カルボン酸金属塩の混合ポリマーとの組み合わせであってもよく、両者の質量割合は、前者/後者=10/1〜1/10、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.5程度である。
(布帛)
布帛としては、例えば、織布、編布(緯編布、経編布)、不織布などの布材などが挙げられる。これらのうち、平織、綾織、朱子織などの形態で製織した織布、経糸と緯糸との交差角が90°を超え120°以下程度の広角度で製織した織布、編布などが好ましく、一般産業用や農業機械用の伝動ベルトのカバー布として汎用されている織布[経糸と緯糸との交差角が直角である平織布、経糸と緯糸との交差角が90°を超え120°以下程度の広角度である平織布(広角度帆布)]が特に好ましい。
布帛を構成する繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリアルキレンアリレート系繊維[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2−4アルキレンC6−14アリレート系繊維など]、ビニルアルコール系繊維(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体の繊維、ビニロン繊維など)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;セルロース系繊維、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維が汎用される。これらの繊維は、単独で使用した単独糸であってもよく、二種以上を組み合わせた混紡糸であってもよい。
これらの繊維のうち、耐摩耗性に優れる点からは、アラミド繊維が好ましく、伸縮性に優れ、樹脂ブロックベルトでは、ブロックの嵌合溝の形状に対する追従性に優れる点からは、脂肪族ポリアミド繊維などのポリアミド繊維が好ましい。アラミド繊維又はポリアミド繊維を含む場合、アラミド繊維又はポリアミド繊維の割合は、繊維全体に対して50質量%以上であってもよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
布帛を構成する繊維の平均繊維径は、例えば3〜150μm、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜80μm程度である。繊維径が小さすぎると、グラフェン類の保持力や均一な分散が困難となるとともに、ベルトの屈曲性も低下する虞があり、大きすぎると、補強布の機械的強度が低下する虞がある。
布帛(原料布帛)の目付は、例えば100〜500g/m、好ましくは150〜400g/m、さらに好ましくは200〜350g/m程度である。目付が大きすぎると、ベルトの屈曲性が低下する虞があり、小さすぎると、グラフェン類の担持量が低下し、補強布による補強効果も低下する虞がある。
布帛(原料布帛)が織布の場合、布帛の糸密度(経糸及び緯糸の密度)は、例えば80〜200本/50mm、好ましくは100〜180本/50mm、さらに好ましくは120〜160本/50mm程度である。密度が高すぎると、グラフェン類を含んだバインダーの付着量が少なくなり、グラフェン類の効果が減少する虞がある。また、密度が低すぎると、耐摩耗性が不足してベルトの走行寿命が低下したり、バインダーの付着量が相対的に多くなることでベルト走行時に粘着等の不具合を生じや易くなる。
布帛は、ゴム成分との接着性を向上させるため、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理液(RFL処理液)、イソシアネート化合物(ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)など)、エポキシ化合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂など)などによる種々の接着処理が施されていてもよい(これらの処理剤で繊維表面が被覆されていてもよい)。
(グラフェン類以外の摩擦係数低減剤)
補強布は、グラフェン類以外の摩擦係数低減剤(第2の摩擦係数低減剤)として、慣用の摩擦係数低減剤をさらに含んでいてもよい。第2の摩擦係数低減剤をグラフェン類と組み合わせることにより、グラフェン類が少量であっても、摩擦係数を低減でき、経済性を向上できる。
第2の摩擦係数低減剤としては、例えば、二硫化モリブデン、グラファイト、カーボンナノチューブなどの無機系摩擦係数低減剤;超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレンなど)、フェノール樹脂などの有機系摩擦係数低減剤などが挙げられる。これら第2の摩擦係数低減剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これら第2の摩擦係数低減剤のうち、超高分子量ポリエチレン、フッ素樹脂などの有機系摩擦係数低減剤が好ましい。
第2の摩擦係数低減剤の形状は、布帛中に均一に分散し易い点から、粒状(粉末状又は不定形状)が好ましい。第2の摩擦係数低減剤の平均粒子径は、グラフェン類と同様に、布帛中に均一に分散し易い点から、布帛を構成する繊維の繊維径よりも小さい平均粒子径を有するのが好ましく、例えば50μm以下であってもよく、前記グラフェン類の平均粒子径と同一の範囲から選択できる。
第2の摩擦係数低減剤の割合は、グラフェン類との総量がバインダー100質量部に対して100質量部以下であればよく、例えば1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部程度である。第2の摩擦係数低減剤の割合は、グラフェン類1質量部に対して1質量部以上であってもよく、例えば1〜100質量部、好ましくは3〜50質量部、さらに好ましくは5〜30質量部(特に10〜20質量部)程度である。第2の摩擦係数低減剤の割合が多すぎると、耐久性、接着性、加工性が低下する虞がある。そのため、高度な接着力が要求される用途では、第2の摩擦係数低減剤の割合は、少ない方が好ましく、グラフェン類1質量部に対して20質量部以下であってもよく、例えば15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下(特に1質量部以下)であってもよく、第2の摩擦係数低減剤を含まなくてもよい。
(他の添加剤)
補強布は、グラフェン類、バインダー及び布帛(必要に応じてさらに第2の摩擦係数低減剤)に加えて、例えば、バインダーがゴム成分である場合、ゴム成分の種類に応じて選択された加硫剤又は架橋剤[例えば、硫黄系加硫剤(硫黄、塩化硫黄など)、オキシム類(キノンジオキシムなど)、グアニジン類(ジフェニルグアニジンなど)、有機過酸化物(ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなど)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)など]、補強剤(カーボンブラック、含水シリカなどの酸化ケイ素など)、老化防止剤(芳香族アミン系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)などを含んでいてもよい。加硫剤又は架橋剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して1〜20質量部(特に2〜15質量部)程度である。補強剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して20〜100質量部(特に30〜80質量部)程度である。老化防止剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部(特に0.5〜5質量部)程度である。補強布は、後述するベルト本体の項で例示された添加剤をさらに含んでいてもよい。
(補強布の構造)
補強布は、布帛の表面及び/又は繊維間に、バインダーを介してグラフェン類が固定されていればよいが、耐久性の点から、前記グラフェン類及び前記バインダーは、布帛の表面に少なくとも一部が露出し、かつ残部は布帛内部の繊維間に均一に存在(布帛に含浸又は浸透)するのが好ましい。布帛内部の繊維間に前記グラフェン類及び前記バインダーを含む補強布は、摺動性を向上できる点から、さらに前記グラフェン類及び前記バインダーが含浸した布帛の表面(特に、伝動面となる外側表面)に、グラフェン類及びバインダーを含む表層(薄肉の摺動層)を有していてもよい。表層の平均厚みは500μm以上であってもよく、例えば100〜1500μm、好ましくは300〜1200μm、さらに好ましくは400〜1000μm(特に400〜800μm)程度である。
補強布の平均厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1mm、さらに好ましくは0.4〜0.5mm程度であってもよい。補強布の厚みが薄すぎると、摺動性が低下する虞があり、厚すぎると、ベルトの耐屈曲性が低下する虞がある。なお、本明細書及び特許請求の範囲では、補強布の平均厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)写真に基づいて測定でき、任意の5箇所以上の平均値として求める。
[ベルト本体]
ベルト本体(樹脂ブロックベルトの張力帯のゴム層や、VリブドベルトやローエッジVベルトなどにおける圧縮層及び伸張層)を形成する加硫ゴムとしては、前記補強布の項で例示されたゴム成分を例示できる。ベルト本体全体(又はゴム組成物全量)に対するゴム成分の割合は、例えば20質量%以上(例えば25〜80質量%)、好ましくは30質量%以上(例えば35〜75質量%)、さらに好ましくは40質量%以上(特に45〜70質量%)であってもよい。
ベルト本体(又はベルト本体を形成するゴム組成物)は、必要に応じて、前記補強布の項で例示された加硫剤又は架橋剤、補強剤、老化防止剤の他、各種添加剤や短繊維を含んでいてもよい。
添加剤(配合剤)としては、公知の添加剤、例えば、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、充填剤(クレー、パイロフィライト(ろう石クレー)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、アルミナ、鉄粉、マイカ、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)、セラミックス粒子、ガラス粒子など)、可塑剤、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィンなど)、接着性改善剤[レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのメラミン樹脂、これらの共縮合物(レゾルシン−メラミン−ホルムアルデヒド共縮合物など)など]、着色剤、粘着付与剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などが例示できる。これらの添加剤は単独で又は組み合わせて使用でき、これらの添加剤はゴムの種類や用途、性能などに応じて選択できる。
添加剤の割合は、ゴム成分の種類などに応じて適宜選択できる。例えば、補強剤、金属酸化物及び充填剤の合計割合は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上(例えば20〜150質量部)、好ましくは20質量部以上(例えば25〜120質量部)、さらに好ましくは30質量部以上(例えば35〜100質量部)であってもよい。
短繊維としては、例えば、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエステル系繊維(PET繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維など)などが挙げられる。短繊維は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
短繊維の平均繊維長は、例えば0.1〜30mm、好ましくは0.2〜20mm、さらに好ましくは0.3〜15mm(特に0.5〜5mm)程度であってもよい。
これらの短繊維は、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などで表面処理してもよい。
短繊維の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば0.5〜50質量部(例えば1〜40質量部)、好ましくは3〜30質量部(特に5〜25質量部)程度であってもよい。
[張力帯]
ベルト本体が樹脂ブロックベルトの張力帯である場合、張力帯2は、図1及び2に示されるように、芯体としてベルト幅方向に所定間隔で配列した心線4が埋設されたゴム層5と、ゴム層5の上下面を被覆する補強布6とで形成されている。さらに、図1〜2及び4に示されるように、張力帯2の上面(外周面)には、前記ブロック10の凸条15aと係合可能な凹溝21aがベルト(張力帯)幅方向に延びており、張力帯2の下面(内周面)には、前記ブロック10の凸条15bと係合可能な凹溝21bがベルト(張力帯)幅方向に延びている。
なお、張力帯としては、前記ブロックと嵌合により一体化できれば、図1〜2及び4に示される形状を有する張力帯に限定されず、ブロックの形状に応じて、慣用の張力帯(センターベルト)を利用できる。さらに、張力帯の本数も2本に限定されず、1本や3本以上であってもよいが、ベルトの耐久性や走行安定性などの点から、通常、2本である。
芯体としての心線4は、ベルトの長手方向に延びて配設され、通常、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に延びて配設されている。心線としては、例えば、ポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、ポリアミド繊維(アラミド繊維など)などの合成繊維;ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維等からなる撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)や、スチールワイヤ等が用いられる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば0.5〜3mm、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度であってもよい。樹脂ブロックベルトでは、心線の替わりに、前記心線の撚りコードを形成する繊維からなる織布や編布、又は金属薄板等を芯体として埋設してもよい。ゴム成分との接着性を改善するため、心線には、前記補強布の布帛と同様に、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理液(RFL処理液)、イソシアネート化合物、エポキシ化合物などによる種々の接着処理を施してもよい。
[ブロック]
樹脂ブロックベルトの場合、ブロックは、慣用のブロックを利用できる。ブロックは、張力帯(センターベルト)と嵌合して一体化できる形状であれば特に限定されないが、2本の張力帯を安定して固定できる点から、板面が略H状のブロックが好ましい。略H状のブロックにおいて、張力帯を収容して固定するための嵌合溝の形状としては、張力帯を嵌合により固定できれば特に限定されず、例えば、嵌合溝の上下方向の対向面でベルト幅方向に延びる凸条又は凹溝を有する形状などが挙げられるが、通常、凸条を有する形状である。また、凸条の形状も、張力帯と嵌合して一体化できればよく、特に限定されない。
ブロックのサイズは、種類やサイズに応じて適宜選択でき、特に限定されないが、ベルト厚み方向の長さが10〜17mm程度、ベルト幅方向の長さが20〜30mm程度、ベルト長手方向の幅は2〜5mm程度である。ベルト角度(側面の傾斜角度)は、例えば24〜30°程度である。張力帯と一体化した樹脂ブロックベルトにおけるブロックのピッチは、ベルトの種類やサイズに応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば1〜6mm、好ましくは2〜4mm程度である。隣接するブロック同士は、分離していればよく、隙間なく配列されていてもよいが、通常0.01〜0.1mm、好ましくは0.02〜0.08mm程度の間隔をおいて配列されている。
ブロックは、通常、樹脂成分及び炭素繊維を含む樹脂組成物で形成されており、ジュラルミン材などの硬質材料で形成されたインサート材を内部に含んでいてもよい。樹脂成分は、通常、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂である。
[伝動ベルトの製造方法]
本発明の伝動ベルトの製造方法は、補強布中でグラフェン類がバインダーで固定できればよく、特に限定されず、例えば、補強布を形成するための布帛とバインダーとの接着性を向上させるために、予め布帛を接着剤で処理するための処理液(RFL処理液など)中にグラフェン類を含有させた後、グラフェン類を含む布帛にバインダー(バインダー前駆体)を付与する方法などであってもよいが、バインダー中におけるグラフェン類の分散性を向上できる点から、バインダー前駆体を介してグラフェン類を布帛に固定して補強布前駆体を形成する補強布前駆体形成工程を経る方法が好ましい。
補強布前駆体形成工程は、グラフェン類及びバインダー前駆体を含む液状組成物(グラフェン類が分散している組成物)を布帛に含浸させた後、乾燥する方法(液状組成物を用いる方法)であってもよく、グラフェン類及びバインダー前駆体を含む固形状組成物(グラフェン類がバインダー中に混練りされて分散している組成物)を布帛と一体化する方法(固形状組成物を用いる方法)であってもよい。
液状組成物を布帛に含浸させる方法としては、例えば、液状組成物に布帛を浸漬させるソーキング方法、液状組成物を布帛に擦り込むスプレディング方法、液状ゴム組成物を布帛の表面に塗布する表面コーティング方法などが挙げられる。
ソーキング方法では、例えば、希薄な液状組成物(ゴム糊など)を入れた浸漬槽の中に布帛を通過させた後、2本のロール間に通過させることにより過剰な液状組成物を除去し、液状組成物を布帛内部に浸透させてもよい。含浸処理は、表面と裏面について各1回ずつ行ってもよい。ソーキング方法では、グラフェン類を含むバインダーが布帛内部(繊維間)に均質に存在する補強布前駆体及び補強布が得られる。
スプレディング方法では、ロールコーターなどのコーターを用いて、ソーキング方法で用いる液状組成物よりも濃度の高い液状組成物(ゴム糊)を布帛の表面から擦り込むことにより、液状組成物を布帛の内部にまで浸透させる。スプレディング方法では、グラフェン類を含むバインダーが布帛の表面近傍(繊維間)に均質に存在する補強布前駆体及び補強布が得られる。
表面コーティング方法では、例えば、液状組成物を布帛の片面に塗布した後、乾燥して溶媒を除去し、液状組成物の少なくとも一部を布帛の表面側領域に浸透させてもよい。表面コーティング方法では、圧着することなく、布帛の片面にグラフェン類を含むバインダーで形成された塗膜が形成され、塗膜の一部が布帛表面に含浸した補強布前駆体及び補強布が得られる。
含浸処理して得られた補強布前駆体の乾燥温度は、溶媒の種類に応じて選択でき、例えば60〜100℃(特に70〜90℃)程度である。
これらの方法は組み合わせてもよく、例えば、ソーキング方法で液状組成物を布帛に含浸させた後、さらにスプレディング方法で液状組成物を布帛に含浸させてもよい。この場合、ソーキング方法では、グラフェン類を含まない液状組成物を用い、スプレディング方法でグラフェン類を含む液状組成物を用いてもよい。
液状組成物を用いる方法において、液状組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、バインダーの種類に応じて、例えば、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロアルカン類)、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルカノール類)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、エステル類(例えば、酢酸エチルなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどの鎖状ケトン、シクロヘキサノンなどの環状ケトン)、セロソルブ類、カルビトール類などが例示できる。溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用してもよい。
溶媒の割合は、含浸の方法によって選択でき、ソーキング方法では、バインダー1質量部に対して、例えば0.5〜50質量部、好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部程度である。スプレディング方法及び表面コーティング方法では、溶媒の割合は、バインダー1質量部に対して、例えば0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、さらに好ましくは3〜8質量部程度である。
固形状組成物を用いる方法としては、例えば、固形状組成物を布帛に擦り込むフリクショニング方法(フリクション)や、シート状組成物と布帛とを積層して被着させる方法(シート状組成物の被着方法)などが挙げられる。
フリクショニング方法では、例えば、カレンダーロールを用いて回転速度の異なるロール間に固形状組成物(未加硫ゴム組成物など)と布帛とを同時に通過させて加圧(圧搾)することにより、布帛の繊維間にまで固形状組成物を擦り込んでもよい。固形状組成物の形状は、特に限定されないが、布帛に対して均質に刷り込める点から、シート状であってもよい。フリクションの処理回数は、表面と裏面について各1回ずつ行ってもよい。フリクショニング方法では、グラフェン類を含むバインダーが布帛内部(繊維間)に均質に存在する補強布前駆体及び補強布が得られる。
シート状組成物の被着方法では、例えば、シート状組成物(所定の厚みを有するシート状未加硫ゴム組成物など)と布帛とを積層した状態で同一の回転速度で回転するロール間に通して両者を界面で接着させることにより、シート状組成物を布帛に被着して一体化する。シート状組成物の被着方法では、布帛の片面にグラフェン類を含むバインダーで形成されたシート状組成物が被着した補強布前駆体及び補強布が得られる。前記シート状組成物の一部は布帛表面を含む領域に含浸していてもよいが、通常、布帛全体に均一に含浸していない。
これらの方法のうち、布帛内部の繊維間にグラフェン類を均一に分布(又は分散)できるソーキング方法、スプレディング方法、フリクショニング方法が好ましい。
なお、補強布前駆体形成工程に供される布帛に対しては、バインダー(特にゴム成分)との接着性を向上させるため、予めレゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理液(RFL処理液)に浸漬した後に加熱する処理及び/又はゴム糊に浸漬した後に乾燥させる処理を施してもよい。さらに、これらの処理の前に布帛に対して、エポキシ化合物やイソシアネート化合物を含む処理液に浸漬した後に乾燥させる処理を施してもよい。
バインダー前駆体が未加硫ゴムである場合、得られた補強布前駆体は、加硫工程に供される。加硫工程では、ベルト本体前駆体表面の少なくとも一部を前記補強布前駆体で被覆して加硫することにより、ベルト本体と補強布とを強固に一体化できればよく、公知又は慣用の方法で行うことができる。加硫温度は、ゴム成分の種類に応じて選択でき、例えば120〜200℃、好ましくは150〜180℃程度である。
[樹脂ブロックベルトの製造方法]
ベルト本体前駆体の製造方法は、ベルトの種類に応じて慣用の方法を利用でき、例えば、樹脂ブロックベルトの場合、以下の方法で製造してもよい。
(ブロックの製造工程)
ブロックは、慣用の方法で製造でき、例えば、樹脂組成物を調製した後、得られた樹脂組成物を成形することにより製造できる。
樹脂組成物の調製方法としては、例えば、二軸混練機などの樹脂混練機に樹脂成分、炭素繊維(並びに必要に応じて他の添加剤)を投入して混練し、回収した混練物を粉砕して粉状化乃至粒状化する方法などが挙げられる。
樹脂組成物の成形方法としては、例えば、ブロック成形機の金型のキャビティ内にインサート材(金属補強材)を配置して型締めした後、キャビティ内に樹脂被覆層を形成するための前記樹脂組成物を供給することによりブロックを成形する方法などが挙げられる。なお、ブロックにインサート材を使用しない場合は、金型のキャビティ内にインサート材を配置せずに、樹脂組成物を供給する方法などが挙げられる。
(張力帯の製造工程)
張力帯も、慣用の方法で製造でき、例えば、シート状未架橋ゴム組成物、心線前駆体、補強布前駆体をそれぞれ調製した後、これらの材料を用いて成形できる。
シート状未架橋ゴム組成物の調製方法としては、例えば、バンバリーミキサー等のゴム練り加工機に原料ゴムを素練りした後、素練りした原料ゴム配合剤を投入して混練りし、さらに練り上がった未架橋ゴム組成物をカレンダーロールによりシート状に加工する方法などが挙げられる。
心線前駆体の調製方法としては、例えば、撚り糸又は組紐に対して、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス処理液(RFL処理液)に浸漬した後に加熱する処理及び/又はゴム糊に浸漬した後に乾燥させる処理を施す方法などが挙げられる。さらに、これらの処理の前に撚り糸又は組紐に対して、エポキシ化合物やイソシアネート化合物を含む処理液に浸漬した後に乾燥させる処理を施してもよい。
これらの前駆体を用いた張力帯の成形方法としては、例えば、以下の方法であってもよい。すなわち、まず、張力帯の内周面の凹溝形状の金型軸方向に延びる凸条が周方向に等ピッチで設けられた円筒金型を筒状に形成した下側の補強布前駆体で被覆し、その上にシート状に加工した未架橋ゴム組成物を所定層設ける。
次いで、加熱加圧装置の中に円筒金型を入れ、未架橋ゴム組成物の架橋が半分程度進行するように、装置内を所定の温度及び圧力に設定して所定時間その状態を保持する。このとき、未架橋ゴム組成物の架橋が半分程度進行してゴム層の下側半分の形状が成形されると共に、未架橋ゴム組成物が流動して円筒金型に設けられた凸条が下側の補強布を押圧し、凹溝が形成される。
続いて、加熱加圧装置の中から円筒金型を取り出し、半架橋したゴム組成物の上から心線前駆体を等ピッチで螺旋状に巻き付け、その上に再びシート状に加工した未架橋ゴム組成物を所定層設け、その上から筒状に形成した上側の補強布前駆体を被せる。
次いで、張力帯の外周面の凹溝形状の金型軸方向に延びる凸条が周方向に等ピッチで設けられた外金型をセットする。
そして、加熱加圧装置の中に各前駆体をセットした円筒金型を入れ、装置内を所定の温度及び圧力に設定して所定時間その状態を保持する。このとき、半架橋及び未架橋ゴム組成物の架橋が進行してゴム層が構成される。また、心線表面の接着剤とゴム層とが相互拡散することにより、心線がゴム層に一体に接着すると共に、上側及び下側の補強布に付着した接着剤とゴム層とが相互拡散することにより、上側及び下側の補強布がゴム層に一体に接着する。以上のようにして、円筒金型表面に円筒状のスラブが成型される。
最後に、加熱加圧装置から円筒金型を取り出し、その周面上に形成された円筒状のスラブを脱型し、これを所定幅の帯状に輪切りし、面取り加工等を行うことにより張力帯を得る。
(伝動ベルトの製造工程)
ブロックの嵌合溝の凸条と張力帯の凹溝とを対応させて、得られたブロックの一方の嵌合溝に張力帯を挿入し、ブロックを張力帯に嵌合させる。この操作を張力帯の全周について行う。同様の方法で、ブロックの他方の嵌合溝に張力帯を挿入して伝動ベルトを得る。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜4及び比較例1〜3
[補強布の摩擦係数及び摩耗量の測定]
平置きした織布[経糸(旭化成(株)製66ナイロン)、緯糸(東レ(株)製66ナイロン(ウーリー加工))を2/2綾織した織布、繊維径25μm、経糸密度150本/50mm、緯糸密度125本/50mm]の両端に1mm厚のスペーサを置き、織布の上に、表1に示す配合A〜Fのスプレディング用ゴム糊を垂らし、丸棒を転がして均一に延ばし、常温である程度乾燥した後、90℃で6分乾燥することによりスプレディングした補強布前駆体(目付250g/m)を153℃で30分間プレス加硫して、シート状の試験片を作成した。下部ベース台に取り付けた試験片を、上部に取り付けた相手材(幅10mm、長さ20mm)に一定の面圧で押し付け、さらに上部に取り付けた相手材を一定の速度で往復運動させられる摺動式摩擦摩耗試験機((株)米倉製作所製)にセットし、速度10m/min、面圧0.5MPa、温度70℃、走行時間20時間の条件で試験を行った。相手材の材質は、表2に示すブロック用樹脂組成物と同一とした。摩擦係数は、ロードセルの電圧を10秒ごとにサンプリングし、試験時間20時間の平均値を算出した。摩耗量としては、試験前後における試験片の重量減少量を測定した。結果を表6に示す。
Figure 0006795466
なお、表1における原料の詳細を以下に示す。
HNBR(水素化ニトリルゴム):日本ゼオン(株)製「Zetpol(登録商標)2010L」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト116」
シリカ:Oriental Silicas Corporation社製「トクシール225G」、BET比表面積176m/g
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスDBD」
架橋剤:日油(株)製「パーブチルP−40」
グラフェン:グラフェンプラットフォーム(株)製「GNH−X1」
UHMW−PE(超高分子量ポリエチレン):Ticona Engineering Polymers社製「GUR−4150」
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン):(株)喜多村製「KTL−8F」。
[ブロックの成形]
二軸の樹脂混練機に表2に示す組成で各成分を投入して混練し、回収した混練物を粉状乃至粒状に粉砕してブロック用樹脂組成物を得た。
Figure 0006795466
なお、表2における原料の詳細を以下に示す。
ノボラック系フェノール樹脂:群栄化学工業(株)製「PSK−2320」
PAN系炭素繊維:東邦テナックス(株)製「HM35」、平均繊維長6mm
ピッチ系炭素繊維:三菱樹脂(株)製 「K223QE」、平均繊維長6mm
アラミド短繊維:帝人(株)製「テクノーラ」、平均繊維長1mm。
ブロックのインサート材(補強材)には、A2024P T361のジュラルミンを用い、慣用の方法でインサート材を前記樹脂組成物で被覆したブロックを作製した。ブロックは、ブロックのベルト厚み方向の長さを13mm、ブロックのベルト長手方向の長さを2.95mm、ベルト角度を26°とした。
[張力帯の成形]
バンバリーミキサーに表3に示す組成で各成分を投入して混練し、回収した混練物をオープンロールに通して所定の厚みの張力帯のゴム層用組成物を得た。
Figure 0006795466
なお、表3における原料の詳細を以下に示す。
HNBR:日本ゼオン(株)製:「Zetpol2010L」
HNBRアロイ(ジメタクリル酸亜鉛を配合した水素化ニトリルゴム):日本ゼオン(株)製「Zeoforte(登録商標)ZSC2295CX」
ポリアミド短繊維:旭化成(株)製「6,6−ナイロン」、平均繊維長6mm
アラミド短繊維:帝人(株)製「テクノーラ」、平均繊維径12μm、平均繊維長3mm
シリカ:Oriental Silicas Corporation社製「トクシール225G」
老化防止剤1:精工化学(株)製「ノンフレックスDBD」
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクラックMB」
老化防止剤3:精工化学(株)製「ノンフレックスRD」
架橋剤:日油(株)製「パーブチルP−40」。
前記張力帯ゴム層用組成物、心線前駆体及び補強布前駆体を用いて、前述の慣用の方法で張力帯を作製した。
なお、心線には、RFL水溶液に浸漬した後に加熱する処理及びゴム糊に浸漬した後に乾燥させる処理を施した直径0.72mmのアラミド繊維の撚りコードを用いた。
一方、上側及び下側の補強布のそれぞれは、補強布の摩擦係数及び摩耗量の測定で使用したポリアミド繊維の織布を表4に示すソーキング用ゴム糊に1分間浸漬した後、取り出して温度80℃で3分間乾燥した。さらに、ソーキング後の織布を、表1に示す配合A〜Fのスプレディング用ゴム糊を用いて、補強布の摩擦係数及び摩耗量の測定で作製した補強布前駆体と同様の方法で、厚み0.8mmの補強布前駆体を得た。重量変化と仕込み比から、布帛に対するグラフェンの割合を求めた。
Figure 0006795466
なお、表4における原料の詳細を以下に示す。
HNBR:日本ゼオン(株)製「Zetpol2010L」
HNBRアロイ:日本ゼオン(株)製「Zeoforte ZSC2295CX」
シリカ:Oriental Silicas Corporation社製「トクシール225G」
老化防止剤1:精工化学(株)製「ノンフレックスDBD」
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクラックMB」
老化防止剤3:精工化学(株)製「ノンフレックスRD」
架橋剤:日油(株)製「パーブチルP−40」。
[樹脂ブロックベルトの成形]
前記ブロックを前記張力帯に組み込んで、図1〜4に示される樹脂ブロックベルトと同様の構成の樹脂ブロックベルトを作製した。樹脂ブロックベルトは、心線ピッチライン上のベルト周長を612mm、心線ピッチライン上のベルト幅を25mm、ブロックのベルト厚み方向の長さを13mm、ブロックのベルト長手方向の長さを2.95mm、ブロックピッチは3mmとした。
[ベルト耐久走行試験]
ベルト耐久走行試験では、実施例及び比較例の各樹脂ブロックベルトを駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けて、70℃の雰囲気下で、駆動プーリを回転させた。駆動プーリ及び従動プーリのV溝の角度を26°、各プーリに対する樹脂ブロックベルトの巻き掛け径を表5に示す値とした。負荷を表5に示す値とし、無負荷の場合に回転数が5000rpmとなるように設定した。軸荷重は、負荷に対して伝動ベルトがスリップしない程度とし、表5に示す値とした。伝動ベルトの走行中、軸荷重が一定となるように、両プーリの軸間距離は固定しなかった。静止状態でのベルト張力は、軸荷重の約半分の値である。ベルト耐久走行試験では、400時間走行してベルトの耐久性を評価するとともに、走行中の騒音量を以下の方法で測定した。測定結果を、各補強布の摩耗試験の結果とともに、表6に示す。
(走行中の騒音)
駆動プーリと従動プーリとの中間、ベルトの端面から手前に150mmの位置で、騒音計((株)小野測器製「LA−4440」)を用いて、A特性で測定した。
Figure 0006795466
Figure 0006795466
表6の結果から明らかなように、摩擦係数低減剤を含まない比較例1では摩擦係数が高く、摩耗量が多く、走行試験では騒音が大きく、238時間でゴム割れ、切断故障に至った。
また、超高分子量ポリエチレンを含む比較例2では、摩擦係数の低下に一定の効果は見られたものの、グラフェンを添加した場合と比べて、その効果は低かった。さらに、走行試験では騒音が大きく、292時間でゴム割れ、切断故障に至った。
この2例では摩擦係数が高いことから、樹脂ブロックと補強布が擦れた際の発熱が大きいためにゴムが硬化劣化して割れ、また、補強布や樹脂ブロックの摩耗が進行してガタツキが発生し騒音が大きくなったと考えられる。
さらに、超高分子量ポリエチレンを多く含む比較例3では、比較的大きな摩擦係数低減効果があったものの、接着力も大きく低下した。この接着力の低下により、走行試験では張力帯のゴム層と補強布との間で剥離が起こり、短時間で故障に至った。
これに対して、グラフェンを添加した実施例1〜4では摩擦係数が大きく低下し、走行400時間でも故障は発生せず、騒音も低かった。特に、実施例2のようにグラフェンの配合量が増えるとその効果が大きく、また、高分子量ポリエチレンやPTFEを併用することでも効果が高まった。0.5質量部という少量の添加で大きな効果が得られることから、材料コストのアップを最小限とし、物性や接着性、加工性への影響も少ないというメリットがある。
本発明の伝動ベルトは、ベルト本体表面の少なくとも一部が補強布で被覆された各種のベルト、例えば、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト、樹脂ブロックベルトなどの摩擦伝動ベルト;歯付ベルトなどの噛み合い伝動ベルトなどとして利用でき、耐摩耗性に優れるため、高負荷で利用される樹脂ブロックベルトとして有効に利用できる。
1…樹脂ブロックベルト
2…張力帯
10…ブロック
11…上側ビーム部
12…下側ビーム部
13…センターピラー部
14…嵌合溝
15a,15b…凸条

Claims (13)

  1. ベルト本体表面の少なくとも一部が、グラフェン類、バインダー及び布帛を含む補強布で被覆されている伝動ベルトであって、前記グラフェン類の割合が、前記バインダー100質量部に対して0.1〜10質量部である伝動ベルト
  2. グラフェン類が、布帛の表面及び/又は繊維間に、バインダーを介して固定されている請求項1記載の伝動ベルト。
  3. グラフェン類の少なくとも一部が布帛表面に露出し、かつ残部のグラフェン類が布帛内部の繊維間に均一に存在する請求項1又は2記載の伝動ベルト。
  4. グラフェン類の平均粒子径が0.1〜3μmである請求項1〜3のいずれかに記載の伝動ベルト。
  5. バインダーが加硫ゴムである請求項1〜4のいずれかに記載の伝動ベルト。
  6. グラフェン類の割合が、バインダー100質量部に対して0.5〜10質量部である請求項1〜5のいずれかに記載の伝動ベルト。
  7. グラフェン類の割合が、布帛100質量部に対して0.1〜5質量部である請求項1〜6のいずれかに記載の伝動ベルト。
  8. 補強布がグラフェン類以外の摩擦係数低減剤をさらに含む請求項1〜7のいずれかに記載の伝動ベルト。
  9. バインダーがベルト本体の加硫ゴムと同一の加硫ゴムである請求項1〜8のいずれかに記載の伝動ベルト。
  10. ベルト本体である張力帯と、この張力帯の長さ方向に略等間隔のピッチで配列され、かつ嵌合により前記張力帯と一体化した複数のブロックとを備えた伝動ベルトであって、前記張力帯の表面のうち、少なくとも前記ブロックの上側ビーム部及び下側ビーム部との接触部が補強布で被覆されている請求項1〜9のいずれかに記載の伝動ベルト。
  11. バインダー前駆体を介してグラフェン類を布帛に固定して補強布前駆体を形成する補強布前駆体形成工程を含む請求項1〜10のいずれかに記載の伝動ベルトの製造方法。
  12. 補強布前駆体形成工程において、グラフェン類及びバインダー前駆体を含む液状組成物を布帛に含浸させた後、乾燥する請求項11記載の製造方法。
  13. バインダー前駆体が未加硫ゴムであり、未加硫ゴムを含むベルト本体前駆体表面の少なくとも一部を補強布前駆体で被覆して加硫する加硫工程をさらに含む請求項11又は12記載の製造方法。
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