次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、摩擦伝動ベルトとして、ベルトの長手方向に延びる複数のリブを有するVリブドベルトに本発明を適用したものである。
図1に示すようにVリブドベルト1は、心線2をベルト長手方向に沿って埋設した接着層3と、この接着層3の一方の面に設けられた圧縮層4と、接着層3の他方の面を被覆するカバー帆布からなる伸張層5とを有する。そして圧縮層4には、ベルト長手方向に延びる断面略三角形状の複数のリブ6が設けられている。ここで、圧縮層4の表面8がプーリと摩擦接触して動力を伝動する摩擦伝動面となる。
本発明で使用する心線2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリアミド繊維、ガラス繊維、またはアラミド繊維などから構成される撚糸コードが使用できる。
前記心線は接着処理を施されることが望ましく、例えば(1)未処理コードをエポキシ化合物やイソシアネート化合物から選ばれた処理液を入れたタンクに含浸してプレディップした後、(2)160〜200℃に温度設定した乾燥炉に30〜600秒間通して乾燥し、(3)続いてRFL液からなる接着液を入れたタンクに浸漬し、(4)210〜260℃に温度設定した延伸熱固定処理器に30〜600秒間通し、1〜3%延伸して延伸処理コードとする、ことができる。
この前処理液で使用するイソシアネート化合物としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン2,4−ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルシイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアリールポリイソシアネート(例えば商品名としてPAPIがある)等がある。このイソシアネート化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
また、上記イソシアネート化合物にフェノール類、第3級アルコール類、第2級アルコール類等のブロック化剤を反応させてポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートも使用可能である。
エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールや・ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールとエピクロルヒドリンのようなハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物や、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキジフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類やハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物などである。上記エポキシ化合物はトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に混合して使用される。
RFL処理液はレゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物をゴムラテックスと混合したものであり、この場合レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は1:2〜2:1にすることが接着力を高める上で好適である。モル比が1/2未満では、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂の三次元化反応が進み過ぎてゲル化し、一方2/1を超えると、逆にレゾルシンとホルムアルデヒドの反応があまり進まないため、接着力が低下する。
ゴムラテックスとしては、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどがあげられる。
また、レゾルシン・ホルムアルデヒドの初期縮合物と上記ゴムラテックスの固形分質量比は1:2〜1:8が好ましく、この範囲を維持すれば接着力を高める上で好適である。上記の比が1/2未満の場合には、レゾルシン−ホルムアルデヒドの樹脂分が多くなり、RFL皮膜が固くなり動的な接着が悪くなり、他方1/8を超えると、レゾルシン・ホルムアルデヒドの樹脂分が少なくなるため、RFL皮膜が柔らかくなり、接着カが低下する。
更に、上記RFL液には加硫促進剤や加硫剤を添加してもよく、添加する加硫促進剤は、含硫黄加硫促進剤であり、具体的には2−メルカプトベンゾチアゾール(M)やその塩類(例えば、亜鉛塩、ナトリウム塩、シクロヘキシルアミン塩等)ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)等のチアゾール類、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等のチウラム類、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(TP)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(PZ)、ジエチルジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(EZ)等のジチオカルバミン酸塩類等がある。
また、加硫剤としては、硫黄、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛)、有機過酸化物等があり、上記加硫促進剤と併用する。
接着層3は、ゴム成分としてエチレン・α−オレフィンゴム単独またはその他の種類ゴムからなる相手ゴムを混ぜ合わせたブレンドゴムを用いることが望ましい。エチレン・α−オレフィンゴムにブレンドする相手ゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)の少なくとも一種のゴムを挙げることができる。
また、摩擦伝動面8を有する圧縮層4は、エチレン・α−オレフィンエラストマーを主成分とするゴム組成物である。この圧縮層4の組成については、後ほど詳細に説明する。
伸張層5を構成する帆布は、織物、編物、不織布などから選択される繊維基材である。構成する繊維素材としては、公知公用のものが使用できるが、例えば綿、麻等の天然繊維や、金属繊維、ガラス繊維等の無機繊維、そしてポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリフロルエチレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリエステル、アラミド等の有機繊維が挙げられる。織物の場合は、これらの糸を平織、綾織、朱子織等することにより製織される。
上記帆布は、公知技術に従ってRFL液に浸漬することが好ましい。またRFL液に浸漬後、未加硫ゴムを帆布に擦り込むフリクションを行ったり、ゴムを溶剤に溶かしたソーキング液に浸漬処理することができる。尚、RFL液には適宜カーボンブラック液を混合して処理反を黒染めしたり、公知の界面活性剤を0.1〜5.0質量%加えてもよい。
次に、圧縮層4の組成について詳細に説明する。圧縮層4は、エチレン・α−オレフィンエラストマーに対して、可塑剤や無機充填剤等が配合されたゴム組成物で構成されている。
エチレン・α−オレフィンエラストマーとしては、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、ブチン、ヘキセン、あるいはオクチン)の共重合体、あるいは、エチレンと上記α−オレフィンと非共役ジエンの共重合体などであり、具体的にはEPMやEPDMなどのゴムをいう。上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。
可塑剤は、溶解度指数(SP値)が、エチレン・α−オレフィンエラストマーの溶解度指数(8.0(cal/cm3)1/2程度)よりも大きい、即ち8.3〜10.5(cal/cm3)1/2の範囲内のものが好適に用いられる。エチレン・α−オレフィンエラストマーより大きなSP値の可塑剤を配合することでゴム表面にブリードが生じ、摩擦伝動面8に膜を形成して潤滑剤として作用することでスティックスリップ現象を効果的に抑制することができる。尚、SP値は、SP=dΣG/M(d:密度、G:分子引力定数、M:分子量)により求められる。
この溶解度指数が8.3〜10.7(ca1/cm3)1/2の範囲内の可塑剤としては、例えば、エ一テル系、エステル系、エ一テルエステル系、フタル酸誘導体系、アジピン酸誘導体系、セバシン酸誘導体系、トリメリット酸誘導体系、リン酸誘導体系の可塑剤を使用することができる。なかでも、トリクレジールフォスフェート(SP値8.4)、ジオクチルセパケート(SP値8.5)、トリフェニルホスフェート(SP値8.5)、ジオクチルアジペート(SP値8.7)、ジブチルフタレート(SP値9.3〜10.7)、エーテルエステル系の可塑剤(SP値8.3〜9.2)が好ましく用いられる。
また、可塑剤は、水との親和性を備える親水基である、OH基、カルボキシル基、エーテル基等を有する分子構造であるものが用いられる。なかでも、トリクレジールフォスフェート(変性カルボキシル基)、ジオクチルセパケート(変性カルボキシル基)、トリフェニルホスフェート(変性カルボキシル基)、ジオクチルアジペート(変性カルボキシル基)、ジブチルフタレート(変性カルボキシル基)、エーテルエステル系の可塑剤(エーテル基)が好ましく用いられる。
水との親和性を備える親水基である、OH基、カルボキシル基、エーテル基等を有する分子構造を備える可塑剤は、摩擦伝動面8に滲み出ている。被水時には、この滲み出た親水性可塑剤の膜上の全面に均一な水膜が形成される。
また、前記可塑剤の配合量は、エチレン・α−オレフィンエラストマー100重量部に対し、10〜25重量部であることが好ましい。配合量が10重量部未満では、可塑剤が摩擦伝動面8を覆う量として不十分であることから、均一な水濡れ性を確保することが困難であり、また潤滑剤としての効果に乏しい。一方、配含量が25重量部を超えると逆に表面の摩擦係数が著しい低下が見られると共に、耐摩耗性が極端に低下するといった不具合がある。尚、高温環境下での揮発防止を考慮すると、可塑剤の平均分子量は300以上であることが好ましい。
無機充填剤は、カーボンブラック、金属炭酸塩、金属珪酸塩などを挙げることができる。尚、補強性を考慮すると、少なくともカーボンブラックが含有されることが望ましい。
カーボンブラックは限定されるものではないが、窒素吸着比表面積20〜150cm2/g、DBP吸油量が50〜160cm3/100gの特性を有するものを使用することが好ましい。ここで、窒素吸着比表面積(N.SA)は、カーボンブラックの比表面積であって、JIS K6217−2に従い測定される。またDBP吸油量(ジブチルフタレート吸油量)は、ストラクチャーの指標であって、JIS K6217−4に従い測定される。
金属炭酸塩としては、炭酸カルシウムを挙げることができ、金属珪酸塩としては、珪酸カルシウム、珪酸カリウムアルミニウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウムなどが挙げられる。更に具体的には、珪酸アルミニウムとしてはクレイ、珪酸マグネシウムとしてはタルク、珪酸カリウムアルミニウムとしてはマイカなどを挙げることができる。これらは単独又は併用することができる。なかでも炭酸カルシウムは、ゴムとの相溶性が良く、強度等の機械物性に悪影響を及ぼさないことから望ましい。
上記無機充填剤の平均一次粒径は、0.01〜3.00μmのものが好ましい。3.00μmを超えるとベルトの耐久性に悪影響があるといった不具合があり、0.01μm未満のものは分散性が悪くゴム物性が不均一になる。
上記無機充填剤の含有量はエチレン・α−オレフィンエラストマー100重量部に対して60〜110重量部であることが好ましい。60重量部未満の場合は、可塑剤をブリードさせる効果が小さい。一方で、110重量部を超えると、耐屈曲性が低下するといった不具合がある。
前記ゴム組成物には架橋剤として有機過酸化物を配合することができる。有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルグミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−モノ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等を挙げることができる。この有機過酸化物は、単独もしくは混合物として、ポリマー成分100重量部に対して0.5〜8重量部の範囲で好ましく使用される。
また前記ゴム組成物は、ポリマー成分100重量部に対して、N,N'−m−フェニレンジマレイミド及び/又はキノンジオキシム類を好ましくは0.5〜13重量部配合することができる。N,N’−m−フェニレンジマレイミド及び/又はキノンジオキシム類は共架橋剤として作用し、0.5重量部未満では添加による効果が顕著でなく、13重量部を超えると引裂き力並びに接着力が急激に低下する。このとき、共架橋剤としてN,N’−m−フェニレンジマレイミドを選択した場合、架橋密度が高くなり、耐摩耗性が高く、また被水時とドライ時の伝達性能の差が少ないといった特徴がある。またキノンジオキシム類を選択した場合は、繊維基材との接着性に優れるといった特徴がある。
キノンジオキシム類としては、p−ベンゾキノンジオキシム、p,p’−ジベンゾキノンジオキシム、テトラクロロベンゾキノンポリ(P−ジニトロベンゾキノン)等が挙げられる。接着性や架橋密度を考慮すると、p−ベンゾキノンジオキシムやp,p’−ベンゾキノンジオキシムなどのベンゾキノンジオキシム類が好ましい。
さらに、圧縮層4からブリードした可塑剤の膜が形成される摩擦伝動面8には、扁平状の無機質粉体が付着されている。図2は、摩擦伝動面8の拡大図である。前述したように、圧縮層4に可塑剤が配合されて、この可塑剤が圧縮層4の摩擦伝動面8に膜を形成することで、摩擦伝動面8のプーリに対する摩擦接触状態が安定する。しかし、この可塑剤の膜の存在により摩擦伝動面8の摩擦係数が低くなり、動力伝動性能が低下する虞があった。しかし、本願発明者らは、摩擦伝動面8にタルク等の無機質粉体11を付着させることにより、可塑剤の膜形成によって生じる摩擦係数の低下を抑制できることを知見した。
ここで、従来から、スティックスリップを抑制するために、摩擦伝動面に、タルク等の無機質粉体を付着させることが知られている(例えば、本願出願人が出願した実公平7−31006公報等)。そのため、上述したように、摩擦伝動面8に無機質粉体を付着させると、従来思想に基づけば、摩擦係数が低下してしまうことが想起される。しかし、摩擦伝動面8に可塑剤の膜が形成されている状況で、無機質粉体を付着させると、逆に、摩擦係数が増大することがわかった。その理由は次のように考えられる。
摩擦伝動面8に付着したタルク等の無機質粉体11は、ドライ時であっても完全に乾燥しているわけではなく、圧縮層4中から摩擦伝動面8にブリードした可塑剤を吸収し、ある程度ウェットな状態(非乾燥状態)になっていると考えられる。そして、摩擦伝動面8に付着した無機質粉体11が非乾燥状態である場合には、乾燥状態と比べると、摩擦伝動面8のプーリに対する摩擦係数が大きくなることは容易に推測がつく。尚、これに関連したデータが公表特許公報(特表2004−532913号)に開示されている。この特許出願は、ポリエステル容器表面の摩擦係数低下を目的として、ポリエステルに乾燥タルクを配合することに主眼を置いてなされたものであるが、その図9には、非乾燥タルクを使用した場合には、乾燥タルクを使用した場合よりも摩擦係数が大きくなることが開示されている。
ここで、使用される扁平状の無機質粉体11は、滑石と呼ばれる原石を機械的に粉砕・加工・分級により得られる扁平状の無機充填剤であってその主成分が含水ケイ酸マグネシウムであり、比表面積が5,000〜25,000cm2/g、より好ましくは6,000〜25,000cm2/gであり、見かけ密度が0.25〜0.65g/ml、より好ましくは0.30〜0.65g/ml、吸油量が40ml/100g以下、好ましくは38ml以下であって、具体的にはタルク、雲母、クレー、グラファイト等であり、好ましくはタルクが使用される。
無機質粉体11の比表面積が5,000cm2/g未満の場合には、摩擦伝動面に膜を形成する可塑剤を吸収する量が少なく、摩擦係数を増加させる効果が小さい。逆に比表面積が25,000cm2/gよりも大きい(粉体が小さくなる)と、可塑剤を吸収する量が大きくなり過ぎて、可塑剤の膜が形成されることによる異音発生抑制効果が小さくなる。また、ゴム組成物から可塑剤が吸い出され過ぎることにより、ベルトの耐久性が低下する。
また、無機質粉体11がタルクである場合には、含有する不純物である酸化鉄、酸化アルミニウムや炭酸マグネシウムの含有量の合計が10重量%以下、好ましくは3〜10重量%である。このような特定を満たすタルクとしては、例えば冨士タルク工業S社製のLMP−90、DS−34、SP−38、農用等がある。
さらに、圧縮層4には、ナイロン6,6、ナイロン6,10等のポリアミド短繊維、綿、アラミド繊維等の短繊維が配合される。それらの短繊維のうち、圧縮層4の摩擦伝動面8では、図2に示すように、ポリアミド繊維がその面から30μm以上、より好ましくは60〜90μm突出し、且つ、ポリアミド繊維の突出部の先端部10が、突出部10の基端側(摩擦伝動面8側)部分よりも扁平に張り出した形状になっている。その一方で、摩擦伝動面8の、ポリアミド繊維の突出部10が存在していない領域9には、前述した扁平状の無機質粉体11が付着し、扁平状に張り出したポリアミド繊維の突出部の先端部10が、摩擦伝動面8(特に、突出部の基端部周囲)に付着した扁平状の無機質粉体11を抱え込む形となっている。これにより、ベルト走行時における無機質粉体11の摩擦伝動面8からの離脱を防止し、長期にわたって無機質粉体11が摩擦伝動面8に付着した状態が維持される。尚、無機質粉体11の占有面積は、ポリアミド繊維の存在していない領域9を100とすると好ましくは40〜90%である。
上述した扁平状の短繊維が突出し、且つ、無機質粉体11が付着した摩擦伝動面8は、例えば、次のようにして形成される。圧縮層4のリブ6は研磨成形により形成されることが好ましく、例えば短繊維入りの圧縮層4に対して、グラインダー表面に80〜200メッシュのダイヤモンドが装着された乾式のグラインダーホイールを用いてVリブ形状の研磨成形作業が実行される。そして、研磨成形作業を終えたスリーブを他の駆動ロールと従動ロールの2軸に装着して、張力を付与して回転しながら、所定量の扁平状の無機質粉体11をリブ面に吹き付けて付着させる。その後、ブラシによって短繊維に付着している余剰の無機質粉体11を除去する。
V形リブ6の摩擦伝動面8より突出したポリアミド繊維は、図2に示すように、例えば前記乾式のグラインダーによる研磨によって、その面から30μm以上、好ましくは600〜90μm程度に突出し、且つ、突出部の先端部10は扁平し、面積の広まった特有の形状になる。このため、ポリアミド繊維の突出部の形態が扁平状の無機質粉体11を抱え込む形、即ち包囲して保護しやすい形となり長期にわたり無機質粉体11の摩擦伝動面8への付着を可能にしている。
尚、短繊維のうち、前述したポリアミド繊維以外は、無機質粉体11を抱え込むような形状になりにくい。例えば、パラ系アラミド繊維はポリパラフェニレンイソフタルアミドであり、摩擦伝動面8より突出した形態がフィブリル化した状態を呈する。このパラ系アラミド繊維にあって顕著に派生するフィブリル化とは、ゴム表面から突出した短繊維のフィラメントが、長さ方向に裂かれて、細分化された状態をいい、このフィブリル化した突出部分の長さは0.5mm以下で、かつフィブリル化部分の太さは、圧縮層4内に埋設されたフィラメントの太さの1/2〜1/8で、フィラメントのフィブリル化部分の少なくともその一部はカール状態にある。このような形態は付着した無機質粉体11を抱え込むこと、即ち包囲して保護することが困難になり、走行直後に無機質粉体11が摩擦伝動面8から脱落しやすくなる。
また、メタ系アラミド繊維はポリメタフェニレンイソフタルアミドであり、研磨した後にはフィブリル化した突出部分にならず、カール状に細長く突出するが、このような形態では付着した扁平状の無機質粉体11を抱え込む形になりにくい。
さらに、綿においては摩擦伝動面8には突出せず、カット面になるために、扁平状の無機質粉体11を抱え込むこと、即ち包囲して保護することが困難になる。
以上説明した以外に、圧縮層4には、必要に応じて、老化防止剤、安定剤、加工助剤、着色剤のような通常のゴム配合物に配合されるものが使用される。これらの配合成分をゴム組成物に混合させる方法としては特に制限はなく、例えば、ハンバリーミキサー、ニーダー等を用い、適宜公知の手段、方法によって混練することができる。
次に、上述したゴム組成物による摩擦伝動面の摩擦特性を以下に説明する。プーリと摩擦伝動面の摩擦状態をモデル化すると、図3のようになる。
このモデルにおける、シミュレーション運動方程式は、下記の数式(1)となる。
この(1)式において、(C+N(dμ/dV))<0であれば、不安定状態となる。すなわち、図3において、摩擦面での作用力F1がベルト及びプーリの走行方向に向かうため、不安定状態となり、自励振動を誘発し、異音が発生する。
逆に、(1)式において、(C+N(dμ/dV))>0であれば、安定状態となる。すなわち、図3において、摩擦面での作用力F2がベルト及びプーリの走行方向と逆向きになるため、安定状態となり、自励振動は発生せず、異音は発生しない。
C>0、N>0のとき、dμ/dV(プーリ速度とベルト速度との差で示される滑り速度Vの変化に対する摩擦係数μの変化)≧0にすると、安定状態となることが判った。そこで、本発明では、上述したように、ドライ時に摩擦伝動面に可塑剤の膜を形成し、プーリとの摩擦が可塑剤の流体膜を介するようにして、流体潤滑に似た滑り特性になるようにしている。即ち、ドライ時の摩擦伝動面に可塑剤の均一な流体膜を形成するために、上述した特定の可塑剤を用いている。この流体膜による摩擦特性は流体潤滑に類似するものとなり、滑り速度が大きくなってもμは低下せず、常にdμ/dV≧0となる。これにより、安定状態となって異音が発生しにくくなる。
Vリブドベルトの被水時には、摩擦伝動面に水が介在する。このとき、摩擦伝動面の表面に滲み出た可塑剤が水との親和性があるものであるため、摩擦伝動面の表面の全体に均一な水膜が形成される。これにより、摩擦伝動面には可塑剤と水膜との均一な流体膜が形成されるため、また滑り速度が大きくなってもμは低下せず、常にdμ/dV≧0となる。これにより、安定状態となって異音が発生しにくくなる。すなわち、ドライ時から被水時という条件変化があっても、安定状態が保たれ、異音は発生しにくくなる。
尚、被水時というのは、自動車(乗用車)のVリブドベルトにあっては、洗車時又は冠水路走行時のように、Vリブドベルトの摩擦伝動面の表面が水に濡れた状態、或いは水滴を載せた状態をいう。わずかの量の水がVリブドベルトの摩擦伝動面に不均一に存在すると、摩擦の安定状態が崩れる。そのため、わずかな量の水であっても、Vリブドベルトの摩擦伝動面に均一に展開し、偏在しないようにしている。被水時という水の存在の場合を説明したが、プーリの塗装種の変更によるμの変化があっても、もとも低いμが大きく変化することなく、やはり安定状態が保たれ、異音は発生しにくくなる。
しかしながら、可塑剤の流体膜が存在することによって、摩擦伝動面のプーリに対する摩擦係数は若干低いものとなる。そこで、本発明では、さらに、摩擦伝動面に無機質粉体を付着させることにより、dμ/dV≧0を保ちつつも、摩擦係数μを増大させているのである。
尚、Vリブドベルトは、図1のような構成に限定されず、例えば接着層3を配置しないVリブドベルトや、背面に帆布5を粘着せずゴムを露出させたVリブドベルトなども本発明の技術範囲に属する。以下、これらの実施形態を図面をもとに説明する。
図4に示すVリブドベルト21は、背面28が植毛層24を設けたゴム組成物で形成された伸張層25と、該伸張層25の下層に接着層22が配設され、更にその下層に圧縮層26を配置した構成を有する。心線23は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されてなり、その一部が伸張層25に接し、残部が接着層22に接した状態となっている。そして前記圧縮層26はベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ27が設けられている。ここで、圧縮層26に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈し、表面近傍の短繊維はリブ形状に沿って配向している。
図5に示すVリブドベルト31は、背面38が短繊維34を含有するゴム組成物で形成された伸張層35と、該伸張層35の下層に圧縮層36を配置した構成を有する。心線33は、ベルト長手方向に沿って本体内に埋設されてなり、その一部が伸張層35に接し、残部が圧縮層36に接した状態となっている。そして、前記圧縮層35にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ37が設けられており、該リブ表面には植毛層39が設けられている。ここで、伸張層35に含有される短繊維はランダム方向に配向している。
ここで図5では、伸張層35を帆布で構成せず、短繊維を含有するゴム組成物で形成した構成を示したが、この際、背面駆動時の異音を抑制すべく、背表面に凹凸パターンを設けることができる。凹凸パターンとしては、編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターンなどを挙げることができるが、最も好ましくは織物パターンである。また短繊維としては、ポリエステル、アラミド、ナイロン、綿などを所望に応じて配合することができる。尚、伸張層、圧縮層及び接着層を構成するゴム組成物、心線などは上述と同様のものが使用できる。
そして図5では伸張層35に含有される短繊維はランダム方向に配向しているが、ベルト幅方向に配向させるなど一方向に配向していてもかまわない。尚、ランダム方向に配向させた場合、多方向からの裂きや亀裂の発生を抑制できるといった特徴があるが、このとき短繊維として屈曲部を有する短繊維(例えばミルドファイバー)を選択すると、より多方向から作用する力に対して耐性ができるといった特徴がある。
また図5のように接着層を配置しない構成の場合、心線33は伸張層35と圧縮層36の境界領域でベルト本体に埋設されることになる。この時、心線33とベルト本体との接着性を考慮すると、伸張層35及び圧縮層36のどちらか一方のゴム層は、短繊維を含有しないゴム組成物で構成することが望ましい。
尚、図4では、伸張層25を、短繊維を含有しないゴム組成物表面に植毛層24を設けた構成としているが、短繊維を含有するゴム組成物表面に植毛層を設けた構成とすることも可能である。
また図4では圧縮層26に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈しているが、短繊維が幅方向に配向した構成としてもかまわない。
尚、Vリブドベルトが背面伝動を行う場合は、伸張層の表面も摩擦伝動面となりうる。よって、伸張層を本発明のゴム組成物で構成してもかまわない。
次に、これらVリブドベルトの製造方法を説明する。製造方法としては限定されるものではないが例えば以下のような方法がある。
第1の方法としては、まず、円筒状の成形ドラムの局面に伸張層を構成する部材と接着層を構成する接着ゴムシートとを巻き付けた後、この上にコードからなる心線を螺旋状にスピニングし、更に圧縮層を構成する圧縮ゴムシートを順次巻き付けて未加硫スリーブを形成した後、加硫して加硫スリーブを得る。次に、加硫スリーブを駆動ロールと従動ロールに掛架され所定の張力下で走行させ、更に回転させた研削ホイールを走行中の該加硫スリーブに当接するように移動してスリーブの圧縮層表面に3〜100個の複数の溝状部を一度に研磨して摩擦伝動面を形成する。このようにして得られたスリーブを駆動ロールと従動ロールから取り外し、該スリーブを他の駆動ロールと従動ロールに掛架して走行させ、カッターによって所定に幅に切断して個々のVリブドベルトに仕上げる。
第2の方法としては、局面にリブ刻印を設けた円筒状の成形ドラムに、圧縮層を構成する圧縮ゴムシート、接着層を構成する接着ゴムシートを巻き付けた後、心線をスピニングし、伸張層を構成する部材を巻き付けて未加硫スリーブを配置する。その後、該未加硫スリーブを成形ドラムに押圧しながら加硫することで、圧縮層にリブを型付けする。得られた加硫スリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
第3の方法としては、円筒状の成形ドラムに装着された可撓性ジャケットの上に伸張層を構成する部材、接着層を構成する接着ゴムシートを巻き、その上に心線をスピニングした後、さらに圧縮層を構成する圧縮ゴムシートを順次無端状に捲き付けて未加硫スリーブを形成する。そして、可撓性ジャケットを膨張させて、未加硫スリーブをリブに対応した刻印を有する外型に抑圧して加硫成形する。得られた加硫スリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
第4の方法としては、円筒状の成形ドラムに装着された可携性ジャケットの上に圧縮層を構成する圧縮ゴムシートを配置した第1未加硫スリーブを形成した後、可撓性ジャケットを膨張させて、該第1未加硫スリーブをリブに対応した刻印を有する外型に抑圧して、リブを有する予備成型体を作製すする。そして、前記予備成型体を密着させた外型から、内型を離間させ、次いで、内型に伸張層を構成する部材、接着層を構成する接着ゴムシートを配置し、心線をスピニングして第2未加硫スリーブを形成する。そして、可撓性ジャケットを膨張させて、前記予備成型体を密着させた外型に、該第2未加硫スリーブを内周側から抑圧して予備成型体と一体的に加硫する。得られた加硫ベルトスリーブにはリブが形成されてなるが、必要に応じてリブ表面を研磨し、所定幅に切断して個々のVリブドベルトとする。
尚、Vリブドベルトの圧縮層を表層と内層の2層からなる構成とする場合、表層と内層の2層構成を有する圧縮ゴムシートを巻き付ける、もしくは表層用圧縮ゴムシートと内層用圧縮ゴムシートを順次巻き付けるなどにより、表層と内層の2層構成を有する圧縮層を配置した未加硫スリーブを形成する必要がある。このとき、第1の方法では研磨によりリブを形成するため、得られたVリブドベルトのリブ山には表層が存在するがリブ側面やリブ底には内層が露出することが考えられる。そのため、表層と内層の2層からなるVリブドベルトは、第2の方法、第3の方法、もしくは第4の方法で製造することが望ましい。
また図5のような接着層を配置しないVリブドベルトは、上記方法において接着ゴムシートを配置せずに製造することで得ることができる。更に図4のように圧縮層26に含有される短繊維はリブ形状に沿った流動状態を呈しているVリブドベルトは、例えば第2の方法、第3の方法、もしくは第4の方法で製造することで得られる。そして、圧縮層に含有される短繊維が幅方向に配向したVリブドベルトは、例えば第1の方法で製造することで得られる。
尚、本実施形態は、Vリブドベルトに本発明を適用した一例であるが、Vリブドベルトに限らず、他の種類の摩擦伝動ベルトにも本発明を適用することは可能である。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。
(Vリブドベルトの作製)
まず、円筒状モールドに経糸と緯糸とが綿糸からなる平織物に、ゴムをフリクションしたゴム付帆布を1プライ巻き付けた後、EPDMゴム組成物からなる接着ゴムシートを巻き、その上に、ポリエステル繊維コードをスピニングし、さらに、その上に、EPDMゴム組成物からなる圧縮ゴムシート(リブゴムシート)を巻き付けた。これを公知の方法で150℃、30分で加硫して円筒状の加硫ゴムスリーブを得た。尚、接着ゴムシート及び圧縮ゴムシートのゴム配合としては、表1の4種類の配合(A,B,C,D)を採用した。但し、表1中の短繊維(ナイロン6,6カット糸)は圧縮ゴムシートにのみ含まれるものであり、接着ゴムシートには含まれていない。また、圧縮ゴムシート、接着ゴムシートは、それぞれ、バンバリーミキサーで混練後、カレンダーロールで圧延したものを用いた。
また、表1に示す4種類の配合のゴム組成物を165℃で30分間プレス架橋した後の架橋ゴム特性を評価した。得られた架橋ゴムの硬度(JIS−A)をJIS K6253に、切断時の伸びEB(短繊維の配向方向に対して直角方向CMD)をJIS K6251に従って測定した結果を表2に示す。
上記加硫ゴムスリーブを研磨機の駆動ロールと従動ロールに装着して、ゴムスリーブに張力を付与した状態で回転させた。そして、150メッシュのダイヤモンドが表面に装着された研磨ホイールを1,600rpmで回転させ、これを加硫ゴムスリーブに当接させ、研磨によってリブを形成した。
さらに、研磨機から取り外したゴムスリーブを、別の駆動ロールと従動ロールの2軸に装着して、張力を付与した状態で回転させながら、所定量のタルクをスリーブのリブ面に吹きつけた。さらに、ブラシによって短繊維に付着している余剰のタルクを除去するとともに、タルクを、リブ表面(摩擦伝動面)の短繊維が存在しない領域に付着させた。その後、スリーブを切断機に設置した後、回転させながら所定幅のベルトに切断した。これにより、実施例1〜6、及び、比較例1の、計7種類のVリブドベルトを作製した。
以上の工程によって作製されたVリブドベルトは、コードからなる心線が接着層に埋設され、接着層の上側にはゴム付綿帆布が1プライ積層される一方で、接着層の下側にはベルト幅方向に配向した短繊維を有する圧縮層があり、圧縮層には7個のリブがベルト長手方向に延在するものであった。このVリブドベルトは、RMA規格による長さ1,140mmのK型7リブドベルトであり、リブピッチ3.56mm、リブ高さ2.9mm、リブ角度40°であった。
上記工程によって作製された実施例1〜6、及び、比較例1のVリブドベルトに対して、摩擦試験を行い、摩擦抵抗μを求めた。また、特に実施例2と比較例1に対して、μ−V特性測定試験、伝達能力測定試験、及び、実機走行試験を行った。
(摩擦試験)
Vリブドベルト1を7リブ幅にカットしたものを準備し、これを、図6に示すように、SUS製案内ローラ40(直径60mm、プーリ溝角度36°、プーリ溝先端部ピッチ3.56mm)に、Vリブドベルト1の巻き付け角度が90°となるように巻き掛けた。そして、ベルト1の一端を固定するとともに、もう一方の端に5.7N/リブ(7リブで40N)のウェイトを垂下させ、23±3℃の雰囲気温度下で案内ローラを42rpmで回転させた。このときのロードセルの値から張り側張力T1と緩み側張力T2を検出し、張力比(T1/T2)から摩擦係数μ=(1/2π)ln(T1/T2)を求めた。尚、測定時間はプーリ回転開始後30秒間とし、その時間平均値から摩擦係数μを求めた。
(μ−V特性測定試験)
図7に示すように、μ−V測定に用いた走行試験機は、駆動プーリ50(直径120mm)、従動プーリ51(直径110mm)、アイドラープーリ52,53(直径77mm)、テンションプーリ54(直径60mm)、アイドラープーリ55(直径77mm)を順に配置して構成したものである。そして、試験機の各プーリ50〜55にVリブドベルト1を掛架し、Vリブドベルト1のテンションプーリ54への巻き付け角度を180度に、アイドラープーリ52への巻きつけ角度を120度にして、駆動プーリ50の回転数0〜300rpm、ベルト張力130N/リブの試験条件で、駆動プーリ50に荷重を付与してVリブドベルト1を走行させ又、従動プーリ51には負荷を与え走行させた。そして、駆動プーリ50において、滑り速度Vの変化に対してμの変化をオイラー式で測定した。また、内蔵エンコーダにて、ベルト速度とプーリ速度を算出した。ベルト速度は、背面アイドラー部の内蔵エンコーダにて算出され、背面アイドラー部でのスリップ率が0%であるとして算出している。
(伝達能力測定試験)
図8に示すように、Vリブドベルト1を所定の張力(100N,150N)で駆動プーリ60(直径120mm)と従動プーリ61(直径120mm)に巻き掛け、駆動プーリ60を2,000rpmで回転させたときの、2%スリップ時の駆動プーリ出力(駆動力)を測定した。より詳細には、駆動プーリ60にトルクを付与していき、駆動プーリ60が1960rpm(2%スリップ)になった時のトルクから、駆動プーリ60の駆動力(kW)を算出する。
(実機走行試験)
図9に示すようなプーリ配置に係る駆動装置に、7PK1140のサイズのベルトを掛け、ベルト張力は90N/リブとし、ゼロからのスタートで、ベルト及びプーリの速度、並びにスリップ率を測定した。
実施例1〜6、及び、比較例1のベルト条件、及び、各試験結果を表3に示す。また、実施例2と比較例1のμ−V特性測定試験については、図9、図10に、実機走行試験については、図11、図12にそれぞれ示す。
表1から、可塑剤が配合されたゴム配合で、且つ、タルクを付着させた実施例1〜6では、タルクを付着させていない比較例1と比べて、摩擦係数が大きくなっていることがわかる。
また、図10、図11のμ−V特性から、タルクを付着させた実施例2(図10)では、dμ/dV≧0であり、さらに、比較例1(図11)と比べると、摩擦係数μが大きくなっていることがわかる(摩擦係数の最大値比較で77%増加)。このように、摩擦係数μが高くなることから、表3のように、実施例2は、比較例1に比べて、動力伝達能力が向上している(約50%増加)。
さらに、図12,図13、及び、表3から、実機での試験においても、実施例2では、比較例1と比べて、スリップ率が小さくなっており(スリップ率の最大値比較で35%低減)、異音が発生しにくいことがわかる。