JP5479798B2 - 銅合金板材、銅合金板材の製造方法、および電気電子部品 - Google Patents

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本発明は、コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品に適したCu−Ti系銅合金板材であって、特に高強度を維持しながら、優れた曲げ加工性を有する銅合金板材、製造方法、およびその銅合金板材を用いた電気電子部品に関する。
電気・電子部品を構成するコネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの部品に使用される材料には、電気・電子機器の組立時や作動時に付与される応力に耐え得る高い強度が要求される。また、電気・電子部品は一般に曲げ加工により成形されることから、優れた曲げ加工性が要求される。
特に近年、電気・電子部品は高集積化、小型化および軽量化が進む傾向にあり、それに伴って素材である銅および銅合金には薄肉化の要求が高まっている。そのため、素材に要求される強度のレベルは一層厳しいものとなっている。具体的には、0.2%耐力850MPa以上、好ましくは900MPa以上、さらに好ましくは950MPa以上の強度レベルが望まれる。
素材に要求される強度レベルが一層厳しくなるに伴い、強度とトレードオフの関係がある曲げ加工性を同時に満足する銅合金板材を得るのは難しいとされている。また、圧延工程を経て製造される一般的な銅合金板材は、LD(圧延方向)を曲げ軸とするBadWay曲げと、TD(圧延方向および板厚方向に垂直な方向)を曲げ軸とするGoodWay曲げとの間で、曲げ加工性が大きく異なることが知られている。電気・電子部品の小型化、形状の複雑化に対応するには、曲げ加工品では、板材に対してGoodWayとBadWay両方の曲げ加工を施して成形されることが多いため、この曲げ加工性の異方性を改善させることが強く求められる。
しかしながら、強度と曲げ加工性との間にはトレードオフの関係がある。従来、このような通電部品には、用途に応じて、強度あるいは曲げ加工性のいずれかが良好な材料が適宜選択されて使用されている。
Cu−Ti系銅合金は、銅合金の中でCu−Be系合金に次ぐ高強度を有し、Cu−Be系合金を凌ぐ耐応力緩和性を有する。また、コストと環境負荷の視点から、Cu−Be系合金よりも有利である。このため、Cu−Ti系銅合金、例えばC199(Cu−3.2wt%Ti)は、一部のCu−Be系合金の代替材としてコネクタ材などに使用されている。しかし、Cu−Ti系合金は、高強度Cu−Be系合金、例えばC17200と比較すると、同等な曲げ加工性における強度、または、同等な強度における曲げ加工性に関しては劣っていることが、一般に知られている。
Cu−Ti系銅合金の強度を向上させる方法は、一般にTi添加量の増加または高質別材の選択がある。しかしながら、前者は、Ti濃度が高すぎる(例えば5wt%Ti以上)と、熱間圧延や冷間圧延で割れが発生しやすく、生産性が著しく低下してしまう。また、粗大な析出物が発生しやすく、最終製品は、強度が高いものの、曲げ加工性が低いために一般的な電気・電子部品用材料としては使えなくなってしまう。また、後者は、時効処理前後の圧延率を増大することにより強度を向上させるため、最終製品の板材は、強度が高いものの、異方性が生じてしまう。つまり、圧延方向に平行する方向での曲げ加工性、すなわち曲げ軸が圧延方向に直角な所謂GW曲げは比較的良好であるものの、圧延方向に直角な方向での曲げ加工性、すなわち曲げ軸が圧延方向に並行する所謂BW曲げは、著しく悪くなることが一般的に知られている。
曲げ加工性を改善するためには、一般的に結晶粒を微細化することが有効である。そのため、Cu−Ti系合金の溶体化処理は、すべての析出物(または晶出物)が固溶する高温域ではなく、再結晶粒の成長をピンニングさせるための一部の析出物(または晶出物)が残留するような比較的低温域で行われることが多い。しかしその場合、結晶粒の微細化は実現できても、Tiの固溶量が少なくなるので、時効処理後の強度レベルは必然的に低下する。
特に、Cu−Ti系銅合金では、析出物が、主に結晶粒内の変調構造(スピノーダル構造)の形態で存在し、再結晶粒の成長をピンニングさせる作用の第2相粒子とする析出物が比較的少なく、溶体化処理過程中で再結晶粒の生成時間のずれにより混粒組織を生じやすい特徴があり、均一な微細結晶粒を生成させることが容易ではない。
近年、Cu−Ti系合金の特性改善には、結晶粒の微細化や結晶方位(集合組織)を制御することが提案されている(特許文献1〜4)。
特開2002−356726号公報 特開2004−231985号公報 特開2006−241573号公報 特開2006−274289号公報
「日本金属学会 金属データブック 改定3版」、丸善、361頁
よく知られているように、Cu−Ti系合金において、Tiは、母相内に周期的な濃度変動を有する変調構造(スピノーダル構造)と、第2相粒子であるTiとCuの金属間化合物(β相)との2種類の形態で存在する。変調構造は、Ti溶質原子濃度の連続的なゆらぎによって生成され、かつ母相と完全な整合性を保ちながら生成される構造である。材料は著しく硬化し、かつ延性(曲げ加工性)の損失が少ない。一方、β相(TiCu)は、通常の結晶粒内と粒界に点在する析出物であり、粗大化しやすく、また変調構造より硬化作用が極めて小さいにも関わらず、延性の損失が著しく大きい。
したがって、強度と曲げ加工性を両立させるためには、変調構造を発達させ、β相の生成を抑制することが有効である。また、曲げ加工性のもう一つ重要な影響因子は結晶粒径である。すなわち、結晶粒径が小さいほど、曲げ変形歪が分散され、曲げ加工性が向上する。
ところが、Cu−Ti系合金の結晶粒径は最終溶体化工程で決められ、再結晶粒の成長をピンニングさせる作用のβ相を極力避ければ、結晶粒が粗大化しやすい問題がある。
また、Cu−Ti系合金には、溶体化処理過程中での再結晶粒の生成時間のずれにより、混粒組織を生じやすい特徴があり、均一な微細結晶粒を生成させることが容易ではない。これにより、曲げ変形中に粒径の違う組織の境界付近に割れが発生しやすい。
更に、強度を向上させるために、時効処理前後の圧延率を増大することにより、{220}結晶面を主方位成分とする圧延集合組織が発達し、曲げ加工性の異方性が生じやすい問題がある。
結晶粒を微細化させるための一般的な手法は、溶体化処理を、合金組成の固溶線以下の温度域で実施することである。すなわち、Tiを全量固溶させず、一部分をピンニングさせる作用のあるβ相として残留させる。その結果、結晶粒が微細化できるものの、β相の残留により、結晶粒微細化による曲げ加工性向上の効果と相殺されてしまう。
例えば特許文献1では、溶体化処理の温度は合金組成の固溶線以下10℃〜60℃の温度域で実施し、得られた材料は0.2%耐力900MPa程度の場合、BW曲げの最小曲げ半径R/tが5程度に止まる。
特許文献2では、Cu−Ti合金にFe、Co、Niなどの添加により、TiとFeなどの添加元素の金属間化合物を生成させ、上述のβ相に替わって、これらの金属間化合物が再結晶粒界をピンニングして、結晶粒の微細化を達成した。しかしながら、Feなどの第3元素とTiとの金属間化合物の形成により、Tiの変調組織の発達が阻害されるという欠点があり、十分な特性を改善できると言えない。
特許文献3では、強度と導電率を向上させるために{220}面と{111}面のX線回折強度比をI{220}/I{111}>4に規定している。このような{220}面を主方位成分とする圧延集合組織に調整することは、強度と導電率の向上に有効であるが、発明者らの検討によると、{220}面が圧延集合組織であり、BW方向の曲げ加工性が著しく低下する。現に、特許文献3には曲げ加工性についての言及がない。
特許文献4では、曲げ加工性を改善するために、{111}正極点図上において、{110}<115>、{110}<114>、{110}<113>を含む4つの領域内でX線回折強度の極大値が5.0〜15.0(但し、ランダム方位に対する比)となる集合組織を提案している。また、このような集合組織を得るために、溶体化前の冷間圧延率を85〜97%に規定している。このような集合組織は、典型的な合金型圧延集合組織({110}<112>〜{110}<100>)であり、その{111}正極点図が70/30黄銅の{111}正極点図に類似している(例えば非特許文献1参照)。このように、従来一般的な集合組織をベースに結晶方位分布を調整する手法では、曲げ加工性の大幅な改善は困難である。現に、特許文献4では、0.2%耐力が870MPa程度で、曲げ加工性R/tは1.6に止まっている。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、引張強さ900MPa以上、0.2%耐力が850MPa以上の高強度を保持しつつ、異方性が少なく、優れた曲げ加工性を有するCu−Ti系銅合金板材およびその製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは詳細な検討の結果、Cu−Ti系銅合金板材の強度と曲げ加工性との両立が困難な原因を明確にした。すなわち、結晶粒の微細化と結晶粒径の均一化が困難であること、および、BW方向の曲げ加工性がGW方向の曲げ加工性より明らかに悪く、曲げ加工の異方性が生じやすいことである。
Cu−Ti系銅合金の結晶方位(集合組織)について、通常の製造工程をとる場合、板表面(圧延面)からのX線回折パターンは、一般に{111}、{200}、{220}、{311}の4つの結晶面の回折ピークで構成され、他の結晶面からのX線回折強度はこれらの結晶面からのものに比べ非常に小さい。通常、溶体化(再結晶)処理後には、{200}面、{220}面と{311}面の回折強度は比較的大きい。その後の冷間圧延によって{200}面と{311}面の回折強度は減少するとともに、{220}面のX線回折強度が相対的に増大する。これに伴い、強度が高くなると同時にBW方向の曲げ加工性が著しく悪くなることは一般的である。
発明者らは詳細な検討の結果、溶体化処理前に適量なβ相を存在させることにより、溶体化処理後に微細かつ均一な結晶粒を達成できることを見出した。
また、異方性の少ない{200}方位(Cube方位)とする結晶粒と異方性の高い{220}方位(B方位)とする結晶粒を特定の割合で存在させることによって、曲げ加工性の異方性を顕著に改善できる可能性があることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明では、質量%で、Ti:1.5〜5.0%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が5〜25μmであり、I{200}を当該銅合金板材の板面における{200}結晶面のX線回折強度、I{200}を純銅標準粉末の{200}結晶面のX線回折強度として、下記(1)式を満たす結晶配向を有することを特徴とする銅合金板材が提供される。
I{200}/I{200}≧0.5 (1)
また、I{220}を当該銅合金板材の板面における{220}結晶面のX線回折強度、I{220}を純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折強度として、下記(2)式を満たす結晶配向を有する。
I{220}/I{220}≦5.0 (2)
I{200}とI{200}は同一測定条件で測定され、I{220}とI{220}も同一測定条件で測定される。また、平均結晶粒径は、板面(圧延面)を研磨したのちエッチングし、その面を顕微鏡観察して、JIS H0501の切断法にて求めることができる。
さらに、本発明の銅合金板材は、必要に応じて、Ni:1.5%以下、Co:1.0%以下、Fe:0.5%以下のうち1種以上を含有する組成を有する。
上記組成において、さらに、Sn:1.2%以下、Zn:2.0%以下、Mg:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Al:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.1%以下、B:0.05%以下、Cr:1.0%以下、Mn:1.0%以下、V:1.0%以下のうち1種以上を合計3質量%以下の範囲で含有する組成を有するものが提供される。
上記の銅合金板材において、特に、LD(圧延方向)の0.2%耐力が850MPa以上であり、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験において割れが発生しない最小曲げ半径Rと板厚tとの比R/tの値が、圧延方向、圧延方向および板厚方向に対して直角方向ともに1.0以下となる曲げ加工性を備えたものが好適な対象となる。
本発明による上記銅合金板材の製造方法は、1.5〜5.0質量%のTiを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解および鋳造工程と、この溶解および鋳造工程の後に、950℃から400℃に温度を下げながら熱間圧延を行う熱間圧延工程と、この熱間圧延工程の後に、圧延率50%以上で冷間圧延を行う第1の冷間圧延工程と、この第1の冷間圧延工程の後に、加熱温度450〜600℃で熱処理を行う中間焼鈍工程と、この中間焼鈍工程の後に、圧延率70%以上で冷間圧延を行う第2の冷間圧延工程と、この第2の冷間圧延工程の後に、平均結晶粒径が5〜25μmとなるように、700〜980℃で溶体化処理を行う溶体化処理工程と、この溶体化処理工程の後に、圧延率0〜50%で中間冷間圧延を行う中間冷間圧延工程と、この中間冷間圧延工程の後に、400〜600℃で時効処理を行う時効処理工程とを備え、前記中間焼鈍工程の際に、前記中間焼鈍前後の導電率をそれぞれEbおよびEa、ビッカース硬さをそれぞれHbおよびHaとして、Ea/Eb≧1.5かつHa/Hb≦0.8を満たすようにすることを特徴とする。
上記中間冷間圧延の「圧延率0%」は、中間冷間圧延を行わない場合を意味する。すなわち、中間冷間圧延を省略することができる。なお、ある工程での圧延率ε(%)は、当該工程で行う連続する圧延パスのうち、最初の圧延パスに供する前の板厚をt(mm)、最後の圧延パス終了後の板厚をt(mm)とするとき、下記(3)式によって定まる。
ε=(t−t)/t×100 (3)
前記溶体化処理工程においては、700〜980℃域の保持時間および到達温度、すなわち、当該合金組成の固溶線よりも50℃以上の炉温に設定し、保持時間(通板速度)を調整することにより、溶体化処理後の平均結晶粒径が5〜25μmとなる。
さらに、本発明の銅合金板材の製造方法は、前記時効処理工程の後に、圧延率50%以下で冷間圧延を行う仕上げ冷間圧延工程を備えてもよい。さらに、前記仕上げ冷間圧延工程の後に、150〜550℃で加熱処理を行う低温焼鈍工程を備えてもよい。
また、本発明の銅合金板材の製造方法は、前記銅合金の原料として、さらにNi:1.5%以下、Co:1.0%以下、Fe:0.5%以下のうち1種以上、および、さらにSn:1.2%以下、Zn:2.0%以下、Mg:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Al:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.1%以下、B:0.05%以下、Cr:1.0%以下、Mn:1.0%以下、V:1.0%以下のうち1種以上を合計3質量%以下の範囲で含む
さらに、本発明による電気電子部品は、上記の銅合金板材を材料として用いたことを特徴とする。この電気電子部品が、コネクタ、リードフレーム、リレーまたはスイッチであるのが好ましい。
本発明によれば、コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品に必要な基本特性を具備するCu−Ti系銅合金の板材において、高強度を有し、かつ優れた成形性(特に曲げ加工性)を有するものが提供される。
このため、Cu−Ti系銅合金板材からの加工部品において、寸法精度を向上させることが容易となり、今後ますます進展が予想される電気・電子部品の小型化、薄肉化のニーズに対応し得る。
面心立方晶のシュミット因子の分布を表した標準逆極点図である。 本発明の銅合金の製造手順を示すフローチャートである。
本発明では、主として銅合金板材の結晶粒組織状態(平均結晶粒径、結晶粒径の分散状態)およびある特異な結晶配向をもつ集合組織にコントロールすることによって、強度および曲げ加工性の同時改善を可能にしたものである。以下、本発明を特定するための事項について説明する。
先ず、銅合金板材の組成について説明する。本発明では、Cu−Tiの2元系基本成分に、必要に応じてNi、Co、Fe等、あるいはその他の合金元素を配合したCu−Ti系銅合金とする。
Tiは、Cuマトリックスにおいて時効硬化作用が高い元素で、強度上昇および耐応力緩和性向上に寄与する。Cu−Ti系銅合金では溶体化処理によって過飽和固溶体が生成され、より低温で時効を行うと、準安定相である変調構造(スピノーダル構造)が発達し、さらに時効を続けると安定相(β相)が生成される。変調構造とは、通常の核生成・成長による析出物とは異なり、核生成を必要とせず、溶質原子濃度の連続的なゆらぎによって生成され、かつ母相と完全な整合性を保ちながら生成される構造である。その発達段階で材料は著しく硬化し、かつ延性の損失が少ない。一方、安定相(β相)は通常の結晶粒内と粒界に点在する析出物であり、粗大化しやすく、準安定相である変調構造より硬化作用が小さいにも関わらず、延性の損失が大きい。
したがって、できるだけ準安定相によって高強度化を図り、安定相(β相)の生成を抑制することが、Cu−Ti系銅合金の強化手段として望ましい。Ti含有量が1.5質量%未満では、準安定相による強化作用を十分に引き出すことが難しい。一方、Ti含有量が過剰になると安定相(β相)が生成しやすく、熱間と冷間加工過程中に割れが発生しやすく、生産性の低下を招きやすい。また、溶体化処理が可能な温度域が狭くなり、良好な特性を引き出すことが困難になる。種々検討の結果、Ti含有量は5.0質量%以下とする必要があることが判明した。したがって、本発明では、Ti含有量は、1.5〜5.0質量%に規定される。Ti含有量は2.0〜4.0質量%とすることがより好ましく、2.5〜3.5質量%の範囲に調整することが一層好ましい。
Ni、Co、Feは、Tiとの金属間化合物を形成して強度の向上に寄与する元素であり、必要に応じてこれらの1種以上を添加することができる。特に、Cu−Ti系銅合金の溶体化処理においては、これらの金属間化合物が結晶粒の粗大化を抑制するので、より高温域での溶体化処理が可能になり、Tiを十分に固溶させる上で有利となる。ただし、Fe、Co、Niを過剰に含有させると、それらの金属間化合物の生成によって消費されるTiの量が多くなるので、固溶するTiの量が必然的に少なくなる。この場合、逆に強度低下を招きやすい。したがってNi、Co、Feを添加する場合は、Ni:1.5質量%以下、Co:1.0質量%以下、Fe:0.5質量%以下の範囲とする。上記作用を十分に発揮させるには、Ni:0.05〜1.5質量%、Co:0.05〜1.0質量%、Fe:0.05〜0.5質量%の含有量範囲でこれらの1種以上を添加することが効果的である。Ni:0.1〜1.0質量%、Co:0.1〜0.5質量%、Fe:0.1〜0.3質量%の範囲でこれらの1種以上を含有させることが、より好ましい。
Snは、固溶強化作用と耐応力緩和性の向上作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるには、0.1質量%以上のSn含有量が好ましい。ただし、Sn含有量が1.2質量%を超えると、鋳造性と導電率が著しく低下してしまう。このため、Snを含有させる場合は1.2質量%以下の含有量とする必要がある。Sn含有量は0.1〜1.0質量%とすることがより好ましく、0.1〜0.5質量%の範囲に調整することが一層好ましい。
Znは、はんだ付け性および強度を向上させる作用を有する他、鋳造性を改善させる作用もある。さらに、Znを含有させる場合に安価な黄銅スクラップが使用できるメリットがある。ただし、2.0質量%を超えるZn含有は導電性や耐応力腐食割れ性の低下要因となりやすい。このため、Znを含有させる場合は2.0質量%以下の含有量範囲とする。上記の作用を十分に得るには0.1質量%以上のZn含有量を確保することが望ましく、特に0.3〜1.0質量%の範囲に調整することが一層好ましい。
Mgは、耐応力緩和性の向上作用と脱S作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるには、0.01質量%以上のMg含有量を確保することが好ましい。ただし、Mgは酸化されやすい元素であり、1.0質量%を超えると鋳造性が著しく低下してしまう。このため、Mgを含有させる場合は、1.0質量%以下の含有量とする必要がある。Mg含有量は0.01〜1.0質量%とすることが好ましく、0.1〜0.5質量%の範囲に調整することが一層好ましい。
その他の元素として、Zr:1.0%以下、Al:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.1%以下、B:0.05%以下、Cr:1.0%以下、Mn:1.0%以下、V:1.0%以下の1種以上を含有させることができる。例えば、ZrとAlはTiとの金属間化合物を形成することができ、SiはTiとの析出物を生成できる。Cr、Zr、Mn、Vは不可避的不純物として存在するS、Pbなどと高融点化合物を形成しやすく、また、Cr、B、P、Zrは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与しうる。
Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vの1種以上を含有させる場合は、各元素の作用を十分に得るために、これらの総量が0.01質量%以上となるように含有させることが効果的である。ただし、多量に含有させると、熱間または冷間加工性に悪影響を与え、かつコスト的にも不利となる。したがって、前述のSn、Zn、Mgと、Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vの合計含有量は、3質量%以下に抑えることが望ましく、2質量%以下あるいは1質量%以下の範囲に規制することができ、0.5質量%以下の範囲に規制しても構わない。
次に、平均結晶粒径について説明する。前述のように、平均結晶粒径が小さいほど曲げ加工性の向上に有利であるが、Cu−Ti系銅合金では結晶粒微細化に伴い、β相が残留しやすい問題がある。また、平均結晶粒径が小さすぎると、耐応力緩和性が悪くなりやすい。種々検討の結果、最終的に平均結晶粒径が5μm以上の値、好ましくは8μmを超える値であれば好適であることが判明した。10μm以上であることが、より好ましい。ただし、あまり平均結晶粒径が大きくなりすぎると、曲げ部表面の肌荒れが起こりやすく、曲げ加工性の低下を招く場合があるので、25μm以下の範囲とすることが望ましい。さらに20μm以下、あるいは15μm以下の範囲に調整することが、より好ましい。最終的な平均結晶粒径は、溶体化処理後の段階における結晶粒径によってほぼ決まってくる。したがって、平均結晶粒径のコントロールは、後述の溶体化処理条件によって行うことができる。
なお、本明細書での平均結晶粒径は、300μm×300μm以上の視野において100個以上の結晶粒の粒径をJIS H0501の切断法で測定したものである。
次に、集合組織について説明する。一般に、Cu−Ti系銅合金の圧延板材の集合組織は、{100}<001>、{110}<112>、{113}<112>、{112}<111>およびそれらの中間方位で構成されている。板表面(圧延面、ND)からのX線回折パターンでは、相応的に{200}、{220}、{311}、{422}の4つの結晶面の回折ピークで構成されている。各方位と曲げ加工性およびその異方性のメカニズム、また各方位の生成条件については、以下のように考えられる。
結晶のある方向に外力が加えられたときの塑性変形(すべり)の生じやすさを示す指標として、シュミット因子がある。結晶に加えられる外力の方向と、すべり面の法線とのなす角度をφ、結晶に加えられる外力の方向と、すべり方向とのなす角度をλとするとき、シュミット因子はcosφ・cosλで表され、その値は0.5以下の範囲をとる。シュミット因子が大きいほど(すなわち0.5に近いほど)すべり方向へのせん断応力が大きいことを意味する。したがって、ある結晶にある方向から外力を付与したとき、シュミット因子が大きいほど(すなわち0.5に近いほど)、その結晶は変形しやすいことになる。Cu−Ni−Si系銅合金の結晶構造は面心立方(fcc)である。面心立方晶のすべり系は、すべり面{111}、すべり方向<110>であり、実際の結晶においてもシュミット因子が大きいほど変形しやすく加工硬化も小さくなることが知られている。図1に、面心立方晶のシュミット因子の分布を表した標準逆極点図を示す。
{200}結晶面({100}<001>方位)は、ND(板厚方向)、LD(圧延方向)、TD(圧延方向および板厚方向に垂直な方向)の三つの方向に同様な特性を示し、通常Cube方位と呼ばれる。また、LD:<001>とTD:<010>のいずれもすべりに寄与し得るすべり面とすべり方向の組み合わせは、12通り中8通りで、その全てのシュミット因子は0.41である。さらに、{200}結晶面上のすべり線は、曲げ軸に対して45°および135°と対称性を良好にすることができるため、せん断帯を形成することなく曲げ変形が可能であることがわかった。すなわち、Cube方位は、GoodWayとBadWayの曲げ加工性がともに良好であり、異方性がないという特徴がある。
Cube方位は純銅型再結晶集合組織の主方位であることが良く知られているが、銅合金について、一般的な工程条件ではCube方位を発達させることは困難である。しかしながら、本発明では、Cu−Ti系において以下の製造工程に示すように、特定条件下での中間焼鈍工程と適切な溶体化条件とを組み合わせることにより、以下に述べる(1)式と(2)式を満たす結晶配向を有する板材を得ることができた。
本発明では、下記(1)式を満たす結晶配向を有することが必要で、(1a)式を満たす結晶配向を有することが、より好ましい。
I{200}/I{200}≧0.5 (1)
I{200}/I{200}≧1.0 (1a)
ここで、I{200}は当該銅合金板材の板面における{200}結晶面のX線回折ピークの積分強度、I{200}は純銅標準粉末の{200}結晶面のX線回折ピークの積分強度である。
{220}結晶面({110}<112>方位)は、黄銅(合金)型圧延集合組織の主方位であり、通常Brass方位(またはB方位)と呼ばれる。B方位のLDが<112>方向、TDが<111>方向であり、そのシュミット因子は、LDが0.408、TDが0.272である。すなわち、通常、仕上げ圧延率の増大に伴って、B方位の発達によりBadWay曲げ加工性は悪くなることが良く知られている。
ただし、時効処理後の仕上げ圧延は強度の向上に有効であるので、本発明では、Cu−Ti系において以下の製造工程に示すように、時効処理後の仕上げ圧延率を限定することにより、強度とBadWay曲げ加工性の両立が実現できた。
{200}主方位成分とする集合組織は、後述の溶体化処理による再結晶集合組織として形成される。ただし、銅合金板材を高強度化するためには、溶体化処理後に冷間圧延することが極めて有効である。この冷間圧延率が増加するに伴い、{220}を主方位成分とする圧延集合組織が発達していく。{220}方位密度の増大に伴い{200}方位密度は減少するが、前記(1)式が維持されるように圧延率を調整すればよい。ただし、あまり{220}を主方位成分とする集合組織が発達しすぎると加工性低下を招く場合があるので、下記(2)式を満たすことが好ましい。また、強度と曲げ加工性とを高いレベルでバランス良く両立させる意味では、下記(2a)式を満たすことが一層好ましい。
I{220}/I{220}≦5.0 (2)
I{220}/I{220}≦4.0 (2a)
ここで、I{220}は当該銅合金板材の板面における{220}結晶面のX線回折ピークの積分強度、I{220}は純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折ピークの積分強度である。
{311}結晶面({113}<112>方位)は、黄銅(合金)型再結晶集合組織の主方位である。{113}<112>方位の発達により、BadWay曲げ加工性は良くなるが(特許文献1、2)、GoodWay曲げ加工性は悪くなり、曲げ加工性の異方性が顕著になってしまう。
本発明では、以下の製造工程に示すように、溶体化処理後のCube方位を発達させることにより、必然的に{113}<112>方位の生成が抑制され、曲げ加工性の異方性が改善できた。
後述の実施例で示すように、このような特異な結晶配向を有する板材においては、当該合金に特有な高強度が維持される。さらに、曲げ加工性の改善のために結晶粒を極度に微細化する必要がなくなり、Tiの添加による耐応力緩和性の向上作用を十分に発揮させることが可能になった。
Cu−Ti系銅合金を用いて電気・電子部品の更なる小型化、薄肉化に対応するには、0.2%耐力850MPa以上、好ましくは900MPa以上、さらに好ましくは950MPa以上の強度レベルが望ましい。上記化学組成を満たす銅合金に後述の製造条件を適用することによって、この強度特性を具備させることが可能である。
曲げ加工性については、LD、TDいずれにおいても90°W曲げ試験における最小曲げ半径Rと板厚tの比R/tが1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。
上述したような銅合金板材は、本発明の製造方法によって製造することができる。本発明の銅合金板材の製造方法は、図2に示すように、上述した組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解・鋳造工程(S1)と、この溶解・鋳造工程の後に、950℃から400℃に温度を下げながら熱間圧延を行う熱間圧延工程(S2)と、この熱間圧延工程の後に、圧延率50%以上で冷間圧延を行う第1の冷間圧延工程(S3)と、この第1の冷間圧延工程の後に、加熱温度450〜600℃で析出を目的とした中間焼鈍を行う中間焼鈍工程(S4)と、この熱処理工程の後に、圧延率70%以上で冷間圧延を行う第2の冷間圧延工程(S5)と、この第2の冷間圧延工程の後に、加熱温度700〜980℃で溶体化処理を行う溶体化処理工程(S6)と、この溶体化処理工程の後に、圧延率0〜50%で中間冷間圧延を行う中間冷間圧延工程(S7)と、この中間冷間圧延工程の後に、400〜600℃で時効処理を行う時効処理工程(S8)と、この時効処理工程の後に、圧延率50%以下で冷間圧延を順次施す仕上げ冷間圧延工程(S9)とを備える。なお、中間冷間圧延工程(S7)において、圧延率0%とは、中間冷間圧延を行わないことを意味する。中間焼鈍工程(S4)の際には、中間焼鈍前後の導電率をそれぞれEbおよびEa、ビッカース硬さをそれぞれHbおよびHaとして、Ea/Eb≧1.5かつHa/Hb≦0.8を満たすようにする。なお、仕上げ冷間圧延工程(S9)の後に、さらに150〜550℃で加熱処理を施す低温焼鈍工程(S10)を備えることが好ましい。また、熱間圧延工程(S2)後には、必要に応じて面削を行い、中間焼鈍工程(S4)後には、必要に応じて酸洗、研磨、脱脂を行ってもよい。以下、これらの各工程について詳細に説明する。
先ず、溶解・鋳造工程(S1)として、連続鋳造や半連続鋳造等により鋳片を製造する。Tiの酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で行うことが好ましい。
鋳片の熱間圧延工程(S2)は、950℃から400℃に温度を下げながら数パスに分けて行う。トータルの圧延率は、概ね80〜95%にすればよい。熱間圧延終了後には、水冷などにより急冷するのが好ましい。また、熱間圧延後には、必要に応じて面削や酸洗を行ってもよい。
第1の冷間圧延工程(S3)では、圧延率を50%以上にする必要があり、70%以上、さらに80%以上にするのが、より好ましい。このような圧延率で加工された材料に対して、次工程で中間焼鈍工程(S4)を施すことにより、析出物の量を増加させることができる。
次に、析出を目的として、熱処理による中間焼鈍工程(S4)を行う。従来の製造工程では、この中間焼鈍工程を行わないか、または、次工程における圧延負荷を軽減する目的で板材を軟化あるいは再結晶させるために、比較的高温での熱処理を行うが、いずれにしても、次の溶体化工程後に{200}結晶面(Cube方位)を主方位成分とする再結晶集合組織の形成が不十分になっていた。
本発明者らが詳細に調査・研究した結果、再結晶過程中のCube方位の形成は、再結晶直前の母相の積層欠陥エネルギーの影響を受ける。積層欠陥エネルギーが高い方がCube方位を形成しやすい。例えば、積層欠陥エネルギーの低い方から並べると黄銅、純銅、純アルミであり、低いほどCube方位が形成しにくい。すなわち、積層欠陥エネルギーが純銅に近い銅合金では、Cube方位の密度が高く生成される可能性が高い。
Cu−Ti系合金では、Cube方位の密度を高く生成させるために、中間焼鈍工程(S4)でTiの析出(β相の生成)によって固溶元素(Ti量)を減少させる。これにより、積層欠陥エネルギーを高くすることができる。更に、生成したβ相は、溶体化処理工程(S6)で再結晶粒の成長をピンニングする作用があり、β相の(再)固溶に伴い、再結晶粒が成長する。すなわち、結晶粒の均一化を制御しやすい効果がある。
この中間焼鈍工程(S4)を、450〜600℃の温度で、熱処理時間を1〜20時間の範囲内で「過時効」程度で行うことにより、良好な結果が得られる。
このとき、焼鈍温度が低すぎるか、または焼鈍時間が短すぎると、十分に析出できず、導電率の回復が不十分で固溶元素量が多く、積層欠陥エネルギーの向上が少ない。焼鈍温度が高すぎると、固溶元素の固溶限が高くなり、焼鈍時間が長くなっても、十分に析出できない。
具体的には、中間焼鈍工程(S4)の際に、中間焼鈍前後の導電率をそれぞれEbおよびEa、ビッカース硬さをそれぞれHbおよびHaとして、Ea/Eb≧1.5かつHa/Hb≦0.8を満たすようにすることが好ましい。さらに、Ea/Eb≧2.5、Ha/Hb≦0.75を満たすようにすることが、より好ましい。
また、この中間焼鈍工程(S4)により、ビッカース硬さが80%以下に軟化するため、次工程における圧延負荷が軽減される効果もある。
続いて、第2の冷間圧延(S5)を行う。この冷間圧延では、圧延率を70%以上にするのが好ましい。この第2の冷間圧延工程(S5)では、前工程の析出物の存在により、効率よく歪エネルギーを導入することができる。歪エネルギーが不足すると、溶体化処理時に生じる再結晶粒径が不均一となる可能性があり、また、{200}結晶面を主方位成分とする再結晶集合組織の形成が不十分になる。すなわち、再結晶集合組織は、再結晶前の析出物の分散状態と量や、冷間圧延における圧延率に依存する。なお、この冷間圧延における圧延率の上限は、特に規定する必要はないが、前工程により軟化しているため、さらに強圧延を施すことも可能である。圧延率を80%以上にするのが、より好ましい。
従来の溶体化処理は、溶質元素のマトリックス中への再固溶と再結晶化を主目的としていたが、本発明では更に、{200}を主方位成分とする再結晶集合組織の形成をも重要な目的とする。
溶体化処理工程(S6)は、成分に応じ、700〜980℃、好ましくは700〜900℃で、10秒〜10分間の加熱処理を行うのが好ましい。温度が低すぎると再結晶が不完全で溶質元素の固溶も不十分となる。一方、温度が高すぎると結晶粒が粗大化してしまい、曲げ加工性の低下を招き易い。
具体的に、この溶体化処理工程(S6)は、再結晶粒の平均粒径(双晶境界を結晶粒界とみなさない)が5〜25μmとなるように700〜980℃域の保持時間および到達温度を設定して実施することが望ましく、平均粒径が10〜15μmとなるように調整することが一層好ましい。再結晶粒径が微細になりすぎると、{200}成分の密度が低くなる。再結晶粒径が粗大になりすぎると、曲げ加工部の表面肌荒れが発生し易い。再結晶粒径は、溶体化処理前の冷間圧延率や化学組成によって変動するが、予め実験によりそれぞれの合金について溶体化処理ヒートパターンと平均結晶粒径との関係を求めておくことにより、700〜980℃域の保持時間および到達温度を設定することができる。具体的には、本発明で規定する化学組成の合金では、700〜980℃の温度で10sec〜10min保持する加熱条件において適正条件を設定できる。
続いて、0〜50%の圧延率で、中間冷間圧延工程(S7)を行う。この段階における冷間圧延は、次工程の時効処理中の析出を促進する効果があり、必要な導電率や硬さなどの特性を引き出すための時効時間を短くすることができる。この冷間圧延によって、{220}結晶面を主方位成分とする集合組織が発達していくが、50%以下の圧延率では、{200}結晶面が板面に平行な結晶粒もまだ十分に残存している。特に、この冷間圧延における圧延率は、時効処理後に行う仕上げ冷間圧延における圧延率と適切に組合せることにより、最終的な高強度化と曲げ加工性の改善に寄与する。この段階の冷間圧延は、圧延率50%以下で行う必要があり、圧延率0〜35%にするのがさらに好ましい。この圧延率が高過ぎると、次の時効処理工程で析出が不均一に発生して過時効になり易く、前述の式(1)と式(2)を満たすような理想的な結晶配向を得難くなる。
なお、この圧延率がゼロである場合とは、溶体化処理工程(S6)後に中間冷間圧延工程(S7)を行わず、直接、時効処理工程(S8)に供することを意味する。また、生産性を向上させるために、この中間冷間圧延工程(S7)を省略してもよい。
続いて、時効処理工程(S8)を行う。この時効処理工程では、Cu−Ti系銅合金板材の導電性と強度の向上に有効な条件の中で、あまり温度を上げ過ぎないようにする。時効処理温度が高くなり過ぎると、溶体化処理工程(S6)によって発達した{200}結晶面を優先方位とする結晶配向が弱められ、十分な強度が得られない場合がある。一方、加熱温度が低過ぎると、上述した特性を改善する効果が十分に得られないか、また時効時間が長すぎて生産性の面で不利になる。具体的には、400〜600℃、さらには400〜500℃の温度で行うのが好ましい。時効処理時間は、概ね1〜10時間程度で良好な結果が得られる。なお、時効処理工程では再結晶させないので、基本的に時効処理工程の前後で、I{200}/I{200}、I{220}/I{220}のX線回折積分強度比は変わらない。
仕上げ冷間圧延工程(S9)では、強度レベルの向上を図るとともに、{220}結晶面を主方位成分とする圧延集合組織を発達させていく。仕上げ冷間圧延の圧延率が低過ぎると、強度を高める効果を十分に得ることができない。一方、仕上げ冷間圧延の圧延率が高過ぎると、{220}結晶面を主方位成分とする圧延集合組織が相対的に優勢になり過ぎ、強度と曲げ加工性の両方が良好な中間的な結晶配向を実現することができない。
仕上げ冷間圧延工程(S9)の圧延率の上限については、時効処理工程(S8)前に行った中間冷間圧延工程(S7)の寄与分を考慮しなければならない。本発明者らの詳細な研究の結果、その上限は、上述した中間冷間圧延工程(S7)の圧延率との合計で、溶体化処理から最終工程までの板厚の減少率が50%を超えないように設定する必要があることがわかった。すなわち、中間冷間圧延工程(S7)の圧延率(%)をε1、仕上げ冷間圧延工程(S9)の圧延率(%)をε2とすると、10≦ε2≦(50−ε1)/(100−ε1)×100を満たすように仕上げ冷間圧延を行う。具体的な仕上げ冷間圧延工程の圧延率としては、概ね35%以下が好ましい。このようにして、本発明のI{200}/I{200}、I{220}/I{220}のX線回折積分強度比を満足させる銅合金板材を得ることができる。なお、次の低温焼鈍工程では再結晶させないので、基本的に前記X線回折積分強度比は変わらない。
最終的な板厚としては、概ね0.05〜1.0mmにするのが好ましく、0.08〜0.5mmにするのがさらに好ましい。
仕上げ冷間圧延工程(S9)の後には、板材の残留応力の低減、ばね限界値と耐応力緩和特性の向上を目的として、低温焼鈍工程(S10)を施してもよい。このときの加熱温度は、150〜550℃に設定するのが好ましい。これにより板材内部の残留応力が低減され、強度の低下をほとんど伴わずに曲げ加工性を向上させることができる。また、導電率を向上させる効果もある。この加熱温度が高過ぎると、短時間で軟化し、バッチ式でも連続式でも特性のバラツキが生じ易くなる。一方、加熱温度が低過ぎると、上述した特性を改善する効果が十分に得られない。加熱時間は、5秒以上にするのが好ましく、通常1時間以内で良好な結果が得られる。
以上のように、本発明の銅合金板材の製造方法によれば、高強度レベルを維持しながら曲げ加工性を安定して顕著に向上させるという、従来のCu−Ti系銅合金製造技術では困難であったことが実現できる。したがって、本発明の銅合金板材は、コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチなどの電気・電子部品として好適に用いることができる。
表1に示す組成の銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。
Figure 0005479798
本発明例1〜12および比較例1〜12の製造条件を表2に示す。
Figure 0005479798
本発明例1〜12について、得られた鋳片を950℃に加熱し、950℃から400℃まで温度を下げながら熱間圧延を行って、本発明例1は厚さ約9mm、本発明例2〜10は厚さ約10mm、本発明例11は厚さ約7mm、本発明例12は厚さ約4mmの板材にした後、水冷によって急冷し、その後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。それぞれの板材の厚さは、各本発明例の冷間圧延の圧延率と最終板厚との関係より決めたものである。次いで、表2に示すように、それぞれ56〜86%の圧延率で第1の冷間圧延を行った後、中間焼鈍処理に供した。
次いで、それぞれ510℃〜550℃で6時間または8時間、中間焼鈍(熱処理)を行った。中間焼鈍前後の導電率をそれぞれEbおよびEa、ビッカース硬さをそれぞれHbおよびHaとして、表2に示すように、本発明例1〜12ではいずれもEa/Ebが3.0前後、Ha/Hbが0.6前後であった。その後、それぞれ圧延率86〜90%で第2の冷間圧延を行った。
次いで、圧延板の表面における(JIS H0501の切断法による)平均結晶粒径が5μmより大きく且つ25μm以下になるように、合金の組成に応じて770〜900℃の範囲内で調整した温度で10秒〜30分間保持して溶体化処理を行った。この溶体化処理における保持温度と保持時間は、本発明例1〜12のそれぞれの合金の組成に応じて最適な温度と時間を予備実験により求めた。
続いて、本発明例4のみ圧延率20%の中間圧延を行い、他の本発明例は中間圧延を省略した。次いで、450℃で時効処理を行った。時効処理時間は、銅合金の組成に応じて、450℃の時効で硬さがピークになる時間に調整した。なお、この時効処理時間については、本発明例1〜12のそれぞれの合金の組成に応じて最適な時効処理時間を予備実験により求めた。
次いで、一部の上記時効処理後の板材に対して、更に0〜32%の圧延率で仕上げ冷間圧延を施した。さらに、炉温450℃での焼鈍炉内に保持時間1minの低温焼鈍を実施した。なお、必要に応じて途中で研磨、面削を行い、板厚は0.10mmに揃えた。
さらに、比較例1〜10について、表1に示す組成の銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を950℃に加熱し、950℃から400℃まで温度を下げながら熱間圧延を行って、比較例1、4、8、9は厚さ約9mm、比較例2、3、5、7は厚さ約10mm、比較例6、10は厚さ約15mmの板材にした後、水冷によって急冷し、その後、表層の酸化層を機械研磨により除去(面削)した。それぞれの板材の厚さは、各比較例の冷間圧延の圧延率と最終板厚との関係より決めたものである。ただし、比較例7は熱間圧延で割れが発生し、その後の工程を進めることができなかった。次いで、比較例7を除き、表2に示すように、それぞれ82〜86%の圧延率で第1の冷間圧延を行った後、中間焼鈍処理に供した。
表2に示すように、それぞれ520℃〜900℃で15秒〜6時間、中間焼鈍(熱処理)を行った。中間焼鈍前後の導電率をそれぞれEbおよびEa、ビッカース硬さをそれぞれHbおよびHaとして、表2に示すように、比較例1〜6ではEa/Ebが0.4〜0.8、Ha/Hbが0.32〜0.9であり、比較例8〜10ではEa/Ebが3.3、Ha/Hbが0.72であった。その後、それぞれ圧延率86〜90%で第2の冷間圧延を行った。
次いで、表2に示す保持温度と保持時間の条件で、溶体化処理を行った。比較例1〜6、10において、圧延板の表面における(JIS H0501の切断法による)平均結晶粒径が5μm〜25μmとなるように、合金の組成に応じて775〜900℃の範囲内に調整した温度で15秒〜10分間保持して溶体化処理を行った。この溶体化処理における保持温度と保持時間は、比較例1〜6、10のそれぞれの合金の組成に応じて、温度と時間を予備実験により求めた。比較例8は、900℃で15分保持して溶体化処理を行った。比較例9は、690℃で10分保持して溶体化処理を行った。
次いで、中間圧延を省略し、450℃で時効処理を行った。時効処理時間は、銅合金の組成に応じて、450℃の時効で硬さがピークになる時間に調整した。なお、この時効処理時間については、比較例1〜6、8〜10のそれぞれの合金の組成に応じて、最適な時効処理時間を予備実験により求めた。
次いで、表2に示す通り、一部の上記時効処理後の板材に対して、更に0〜60%の圧延率で仕上げ冷間圧延を施した。さらに、炉温450℃での焼鈍炉内に保持時間1minの低温焼鈍を実施した。なお、必要に応じて途中で研磨、面削を行い、板厚は0.10mmに揃えた。
次に、上記の製造条件で得られた本発明例1〜12および比較例1〜12の銅合金板材から試料を採取し、結晶粒組織(平均粒径)、X線回折強度、0.2%耐力、曲げ加工性を、以下のように調べた。
時効処理後(本発明例4、比較例4)及び低温焼鈍後(本発明例1〜3,5〜12、比較例1〜3,5,6,8〜10)の各供試材から試験片を採取して平均結晶粒径、集合組織、導電率、0.2%耐力、曲げ加工性を調べた。なお、比較例11および比較例12は、それぞれ市販のCu−Ti系銅合金C199−1/2HおよびC199−EH(板厚0.15mm)を入手して供試材としたものである。
組織および特性の調査は、以下の方法で行った。
供試材の板面(圧延面)を研磨したのちエッチングし、その面を光学顕微鏡で観察し、300μm×300μmの視野において100個以上の結晶粒の粒径をJIS H0501の切断法で測定し、平均結晶粒径Dを求めた。
供試材の板面(圧延面)を#1500耐水ペーパーで研磨仕上げした試料を準備し、X線回折装置(XRD)を用いて、Mo−Kα線、管電圧40kV、管電流30mAの条件で、前記研磨仕上げ面について{200}面および{220}面の反射回折面積分強度を測定した。一方、上記と同じX線回折装置を用いて、上記と同じ測定条件で純銅標準粉末の{200}面および{220}面のX線回折積分強度を測定した。これらの測定値を用いて、{200}面のX線回折強度比I{200}/I{200}と、{220}面のX線回折強度比I{220}/I{220}を求めた。
各供試材から圧延方向(LD)の引張試験片(JIS 5号)を採取し、n=3でJIS Z2241に準拠した引張試験行い、0.2%耐力を測定した。n=3の平均値によって0.2%耐力を求めた。
供試材の板材から、長手方向が圧延方向(LD)の曲げ試験片および圧延方向および板厚方向に垂直な方向(TD)の曲げ試験片(いずれも幅10mm)を採取し、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験を行った。試験後の試験片について曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡にて50倍の倍率で観察することにより、割れが発生しない最小曲げ半径Rを求め、これを供試材の板厚tで除することによりLD、TDそれぞれのR/t値を求めた。各供試材のLD、TDともn=3で実施し、n=3のうち最も悪い結果となった試験片の成績を採用してR/t値を表示した。また、R/t=5.0の曲げ条件でも割れる場合、それ以上のRでの評価を行わずに「破」と示した。
これらの結果を表3に示す。表3中に記載されているLDおよびTDは、試験片の長手方向を意味する。
Figure 0005479798
表3からわかるように、本発明例の銅合金板材は、いずれも平均結晶粒径が5〜25μmの範囲内であり、前述の(1)式及び(2)式を満たす結晶配向を有し、0.2%耐力が900MPa以上であり、R/t値がLD、TDとも1.0以下と優れた曲げ加工性を有していた。
これに対し、比較例No.1〜5は、本発明例No.1〜5と同じ組成の銅合金について、通常の工程で製造したもの(中間焼鈍を行い、熱間圧延後、溶体化処理前に中間溶体化処理工程を入れたもの)である。これらはいずれも、{200}結晶面のX線回折強度が弱く、また、{220}結晶面のX線回折強度が高く、強度と曲げ加工性(TD)の間にトレードオフの関係が見られた。
比較例No.6、7は、Tiの含有量が規定範囲外であることにより、良好な特性が得られなかった例である。No.6はTiの含有量が低すぎたことにより析出物の生成が少なかった。そのため、仕上げ冷間圧延率を50%と高くしても、強度レベルが低く、しかも、{220}結晶面のX線回折強度が高いので、曲げ加工性(TD)が悪くなった。No.7は、Tiの含有量が高すぎたので、熱間圧延中に割れが発生し、評価できる板材を作れなかった。
比較例No.8、9は、溶体化処理条件が規定範囲外であったことにより、良好な特性が得られなかった例である。No.8は溶体化処理時間が長すぎたので、溶体化処理後の平均結晶粒径は5〜25μmを大きくはずれて約62μmと粗大化し、良好な曲げ加工性が得られなかった。No.9は逆に溶体化処理温度が690℃と低すぎたので再結晶自体が十分進行せずに混粒組織となり、強度、曲げ加工性全てが悪い結果となった。
比較例No.10は、仕上げ圧延率が規定する上限を超えたので、{200}を主方位成分とする結晶配向が弱くなり、逆に{220}を主方位成分とする結晶配向が強すぎ、強度は高いものの曲げ加工性(TD)が著しく悪くなった。
比較例No.11、12は、Cu−Ti系銅合金を代表するC199−1/2HとC199−EHの市販品である。これらはいずれも{200}結晶面のX線回折強度が弱く、また{220}結晶面のX線回折強度が高く、ほぼ同様の組成を有する本発明例No.1と比較して、強度、曲げ加工性と耐応力緩和性がともに劣っていた。なお、表1〜3において、比較例1〜12について、本発明の範囲から外れている部分には下線を付した。

Claims (12)

  1. 質量%で、Ti:1.5〜5.0%、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が5〜25μmであり、
    I{200}を当該銅合金板材の板面における{200}結晶面のX線回折強度、I{200}を純銅標準粉末の{200}結晶面のX線回折強度として、下記(1)式を満たし、
    I{220}を当該銅合金板材の板面における{220}結晶面のX線回折強度、I {220}を純銅標準粉末の{220}結晶面のX線回折強度として、下記(2)式を満たす結晶配向を有することを特徴とする銅合金板材。
    I{200}/I{200}≧0.5 (1)
    I{220}/I {220}≦5.0 (2)
  2. さらに、Ni:1.5%以下、Co:1.0%以下、Fe:0.5%以下のうち1種以上を含有する組成を有する請求項1に記載の銅合金板材。
  3. さらに、Sn:1.2%以下、Zn:2.0%以下、Mg:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Al:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.1%以下、B:0.05%以下、Cr:1.0%以下、Mn:1.0%以下、V:1.0%以下のうち1種以上を合計3質量%以下の範囲で含有する組成を有する請求項1または2のいずれかに記載の銅合金板材。
  4. 0.2%耐力が850MPa以上であり、JIS H3110に準拠した90°W曲げ試験において割れが発生しない最小曲げ半径Rと板厚tとの比R/tの値が、圧延方向、圧延方向および板厚方向に対して直角方向ともに1.0以下となる曲げ加工性を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の銅合金板材。
  5. 請求項1に記載の銅合金板材の製造方法であって、
    1.5〜5.0質量%のTiを含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解および鋳造工程と、
    この溶解および鋳造工程の後に、950℃から400℃に温度を下げながら熱間圧延を行う熱間圧延工程と、
    この熱間圧延工程の後に、圧延率50%以上で冷間圧延を行う第1の冷間圧延工程と、
    この第1の冷間圧延工程の後に、加熱温度450〜600℃で熱処理を行う中間焼鈍工程と、
    この中間焼鈍工程の後に、圧延率70%以上で冷間圧延を行う第2の冷間圧延工程と、
    この第2の冷間圧延工程の後に、平均結晶粒径が5〜25μmとなるように、700〜980℃で溶体化処理を行う溶体化処理工程と、
    この溶体化処理工程の後に、圧延率0〜50%で中間冷間圧延を行う中間冷間圧延工程と、
    この中間冷間圧延工程の後に、400〜600℃で時効処理を行う時効処理工程とを備え、
    前記中間焼鈍工程の際に、前記中間焼鈍前後の導電率をそれぞれEbおよびEa、ビッカース硬さをそれぞれHbおよびHaとして、Ea/Eb≧1.5かつHa/Hb≦0.8を満たすようにすることを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
  6. 請求項2に記載の銅合金板材の製造方法であって、
    1.5〜5.0質量%のTiを含み、さらにNi:1.5%以下、Co:1.0%以下、Fe:0.5%以下のうち1種以上を含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解および鋳造工程と、
    この溶解および鋳造工程の後に、950℃から400℃に温度を下げながら熱間圧延を行う熱間圧延工程と、
    この熱間圧延工程の後に、圧延率50%以上で冷間圧延を行う第1の冷間圧延工程と、
    この第1の冷間圧延工程の後に、加熱温度450〜600℃で熱処理を行う中間焼鈍工程と、
    この中間焼鈍工程の後に、圧延率70%以上で冷間圧延を行う第2の冷間圧延工程と、
    この第2の冷間圧延工程の後に、平均結晶粒径が5〜25μmとなるように、700〜980℃で溶体化処理を行う溶体化処理工程と、
    この溶体化処理工程の後に、圧延率0〜50%で中間冷間圧延を行う中間冷間圧延工程と、
    この中間冷間圧延工程の後に、400〜600℃で時効処理を行う時効処理工程とを備え、
    前記中間焼鈍工程の際に、前記中間焼鈍前後の導電率をそれぞれEbおよびEa、ビッカース硬さをそれぞれHbおよびHaとして、Ea/Eb≧1.5かつHa/Hb≦0.8を満たすようにすることを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
  7. 請求項3に記載の銅合金板材の製造方法であって、
    1.5〜5.0質量%のTiを含み、さらにSn:1.2%以下、Zn:2.0%以下、Mg:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Al:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.1%以下、B:0.05%以下、Cr:1.0%以下、Mn:1.0%以下、V:1.0%以下のうち1種以上を合計3質量%以下の範囲で含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解および鋳造工程と、
    この溶解および鋳造工程の後に、950℃から400℃に温度を下げながら熱間圧延を行う熱間圧延工程と、
    この熱間圧延工程の後に、圧延率50%以上で冷間圧延を行う第1の冷間圧延工程と、
    この第1の冷間圧延工程の後に、加熱温度450〜600℃で熱処理を行う中間焼鈍工程と、
    この中間焼鈍工程の後に、圧延率70%以上で冷間圧延を行う第2の冷間圧延工程と、
    この第2の冷間圧延工程の後に、平均結晶粒径が5〜25μmとなるように、700〜980℃で溶体化処理を行う溶体化処理工程と、
    この溶体化処理工程の後に、圧延率0〜50%で中間冷間圧延を行う中間冷間圧延工程と、
    この中間冷間圧延工程の後に、400〜600℃で時効処理を行う時効処理工程とを備え、
    前記中間焼鈍工程の際に、前記中間焼鈍前後の導電率をそれぞれEbおよびEa、ビッカース硬さをそれぞれHbおよびHaとして、Ea/Eb≧1.5かつHa/Hb≦0.8を満たすようにすることを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
  8. 請求項3に記載の銅合金板材の製造方法であって、
    1.5〜5.0質量%のTiを含み、さらにNi:1.5%以下、Co:1.0%以下、Fe:0.5%以下のうち1種以上を含み、さらにSn:1.2%以下、Zn:2.0%以下、Mg:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Al:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.1%以下、B:0.05%以下、Cr:1.0%以下、Mn:1.0%以下、V:1.0%以下のうち1種以上を合計3質量%以下の範囲で含み、残部がCuおよび不可避不純物である組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解および鋳造工程と、
    この溶解および鋳造工程の後に、950℃から400℃に温度を下げながら熱間圧延を行う熱間圧延工程と、
    この熱間圧延工程の後に、圧延率50%以上で冷間圧延を行う第1の冷間圧延工程と、
    この第1の冷間圧延工程の後に、加熱温度450〜600℃で熱処理を行う中間焼鈍工程と、
    この中間焼鈍工程の後に、圧延率70%以上で冷間圧延を行う第2の冷間圧延工程と、
    この第2の冷間圧延工程の後に、平均結晶粒径が5〜25μmとなるように、700〜980℃で溶体化処理を行う溶体化処理工程と、
    この溶体化処理工程の後に、圧延率0〜50%で中間冷間圧延を行う中間冷間圧延工程と、
    この中間冷間圧延工程の後に、400〜600℃で時効処理を行う時効処理工程とを備え、
    前記中間焼鈍工程の際に、前記中間焼鈍前後の導電率をそれぞれEbおよびEa、ビッカース硬さをそれぞれHbおよびHaとして、Ea/Eb≧1.5かつHa/Hb≦0.8を満たすようにすることを特徴とする、銅合金板材の製造方法。
  9. 前記時効処理工程の後に、圧延率50%以下で冷間圧延を行う仕上げ冷間圧延工程を備えたことを特徴とする、請求項5〜8のいずれかに記載の銅合金板材の製造方法。
  10. 前記仕上げ冷間圧延工程の後に、150〜550℃で加熱処理を行う低温焼鈍工程を備えたことを特徴とする、請求項9に記載の銅合金板材の製造方法。
  11. 請求項1〜のいずれかに記載の銅合金板材を材料として用いたことを特徴とする、電気電子部品。
  12. 前記電気電子部品が、コネクタ、リードフレーム、リレーまたはスイッチであることを特徴とする、請求項11に記載の電気電子部品。
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