JP5490439B2 - 電子部品用チタン銅の製造方法 - Google Patents

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Description

近年では携帯端末などに代表される電子機器の小型化が益々進み、従ってそれに使用されるコネクターは狭ピッチ化及び低背化の傾向が著しい。小型のコネクターほどピン幅が狭く、小さく折り畳んだ加工形状となるため、使用する素材には、必要なバネ性を得るための高い強度と、過酷な曲げ加工に耐え得る優れた曲げ加工性が求められる。
この点、チタンを含有する銅合金(以下、「チタン銅」と称する。)は、比較的強度が高く、応力緩和特性にあっては銅合金中最も優れているため、特に素材強度が要求される信号系端子用素材として、古くから使用されてきた。チタン銅は時効硬化型の銅合金である。具体的には、溶体化処理によって溶質原子であるTiの過飽和固溶体を形成させ、その状態から低温で比較的長時間の熱処理を施すと、スピノーダル分解によって、母相中にTi濃度の周期的変動である変調構造が発達し、強度が向上する。かかる強化機構を基本としてチタン銅の更なる特性向上を目指して種々の手法が研究されている。
この際、問題となるのは、強度と曲げ加工性が相反する特性である点である。すなわち、強度を向上させると曲げ加工性が損なわれ、逆に、曲げ加工性を重視すると所望の強度が得られないということである。そこで、Fe、Co、Ni、Siなどの第三元素を添加する(特許文献1)、母相中に固溶する不純物元素群の濃度を規制し、これらを第二相粒子(Cu−Ti−X系粒子)として所定の分布形態で析出させて変調構造の規則性を高くする(特許文献2)、結晶粒を微細化させるのに有効な微量添加元素と第二相粒子の密度を規定する(特許文献3)、などの観点から、チタン銅の強度と曲げ加工性の両立を図ろうとする研究開発が従来なされてきた。
特許文献1では0.2%耐力が最大で888MPaのチタン銅が得られており、このときのMBR/tが0.7であったことが記載されている(実施例No.10)。特許文献2では、0.2%耐力が最大で839MPaのチタン銅が得られており、このときのMBR/tが1.7であったことが記載されている(実施例No.10)。特許文献3では、0.2%耐力が最大で888MPaのチタン銅が得られており、このときのMBR/tが0.5であったことが記載されている(実施例No.10)。
また、特許文献4では、チタン銅の場合、母相であるα相に対して整合性の悪いβ相(TiCu3)と、整合性の良いβ’相(TiCu4)が存在し、β相は曲げ加工性に悪影響を与える一方で、β’相を均一かつ微細に分散させることが強度と曲げ加工性の両立に寄与するとして、β相を抑制しつつβ’相を微細分散させたチタン銅を開示している。特許文献4では、0.2%耐力が最大で1019MPaのチタン銅が得られており、このときのMBR/tが2であったことが記載されている(実施例No.4)。
また、これらの文献にはチタン銅を、インゴットの溶解鋳造→均質化焼鈍→熱間圧延→(焼鈍及び冷間圧延の繰り返し)→最終溶体化処理→冷間圧延→時効処理の順序によって製造することが記載されている。特に、最終溶体化処理では安定相であるTiCu3又は母相に対して非整合な第2相粒子の析出を抑制することが重要とされている。
特開2004−231985号公報 特開2004−176163号公報 特開2005−97638号公報 特開2006−283142号公報
このように、チタン銅は、インゴットの溶解鋳造→均質化焼鈍→熱間圧延→(焼鈍及び冷間圧延の繰り返し)→最終溶体化処理→冷間圧延→時効処理の順序によって製造するのが一般的であり、この工程を基本として特性の改善を図ってきたのである。しかしながら、より優れた特性をもつチタン銅を得る上では既成概念に囚われない新たな製造方法を見出すことが有用であると考える。
そこで、本発明はチタン銅の特性改善を図ることのできる新たな製造方法を提供することを主たる課題とする。
従来のチタン銅の製造方法は、最終の溶体化処理によってチタンを母相に充分に固溶させた後、冷間圧延を行って強度を一定程度上昇させ、最後に時効処理でスピノーダル分解を起こして高強度チタン銅を得るというものであった。そのため、せっかく固溶したチタンの安定相が析出しかねない熱処理を冷間圧延前に実施することは考えられなかった。
しかしながら、本発明者は鋭意研究の結果、チタンの準安定相又は安定相が生成しないか又は一部生成する程度の熱処理によって冷間圧延前に予め一定程度スピノーダル分解を起こしておくと、その後に冷間圧延及び時効処理を行って最終的に得られるチタン銅の強度が有意に向上することを見出した。すなわち、従来のチタン銅の製造方法がスピノーダル分解を起こす熱処理工程を時効処理の一段階で行っていたのに対し、本発明のチタン銅の製造方法では、冷間圧延を挟んでスピノーダル分解を二段階で起こす点で大きく異なる。
更に、熱処理工程を追加した上で時効処理を従来に比べて低温側で行うことで、強度及び曲げ加工性のバランスが飛躍的に向上したチタン銅が得られることも分かった。
上記の製造工程を採用することによりチタン銅の特性が向上した理由は十分解明されていない。理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、これは以下のように推測される。チタン銅では、時効処理においてチタンの変調構造が発達していくにつれ、チタンの濃度変化の振幅(濃淡)が大きくなっていくが、一定の振幅にまで達すると、ゆらぎに耐えられなくなった頂点付近のチタンがより安定なβ’相、更にはβ相へと変化する。すなわち、溶体化処理によって母相に固溶したチタンは、その後に熱処理を加えていくことで、Ti濃度の周期的変動である変調構造が徐々に発達していき、これが準安定相であるβ’相へ変化し、最終的には安定相であるβ相へと変化するのである。ところが、最終溶体化処理後、冷間圧延前に、予めスピノーダル分解を起こすことのできる所定の熱処理を施すと、時効処理時に通常ではβ’相が析出するはずの振幅に達してもβ’相が析出しにくくなり、より大きな振幅を有する変調構造にまで成長したと考えられる。そして、このようなゆらぎの大きな変調構造がチタン銅に粘りを与えたと考えられる。ただし、チタン濃度の振幅を測定するのは技術的に困難を伴い、特性向上のメカニズムの詳細は明らかになっていない。いずれにしても、本発明の製造方法を採用することでスピノーダル分解を一段階しか行っていなかった従来の製造方法に比べて高強度のチタン銅を得ることが可能となる。
以上を基礎として完成した本発明は一側面において、Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてMn、Fe、Mg、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で0〜0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる電子部品用銅合金の製造方法であって、最終の溶体化処理後に、導電率を0.5〜8%IACS上昇させる熱処理を行い、冷間圧延、及び時効処理を順に行うチタン銅の製造方法である。
本発明は別の一側面において、Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてMn、Fe、Mg、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で0〜0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる電子部品用銅合金の製造方法であって、最終の溶体化処理の後、熱処理、冷間圧延、及び時効処理を順に行い、熱処理は材料温度300〜700℃で0.001〜12時間加熱の条件で行う製造方法である。
本発明に係る銅合金の製造方法は一実施形態において、時効処理は材料温度300〜400℃で3〜12時間加熱の条件で行う。
本発明に係る銅合金の製造方法は別の一実施形態において、熱処理は材料温度400〜650℃で0.0025〜0.5時間加熱の条件で行い、時効処理は材料温度300〜400℃で3〜12時間加熱の条件で行う。
本発明は別の一側面において、上記の方法によって銅合金を製造する工程と、該銅合金を加工する工程を含む電子部品の製造方法である。
本発明に係る電子部品の製造方法は一実施形態において、電子部品がコネクターである。
本発明によれば、チタン銅の強度を向上させることができる。また、本発明の好ましい実施形態では、強度と曲げ加工性を高次元で達成することのできるチタン銅が得られる。
Ti含有量
Tiが2質量%未満ではチタン銅本来の変調構造の形成による強化機構を充分に得ることができないことから十分な強度が得られず、逆に4質量%を超えると粗大なTiCu3が析出し易くなり、強度及び曲げ加工性が劣化する傾向にある。従って、本発明に係る銅合金中のTiの含有量は2.0〜4.0質量%であり、好ましくは2.7〜3.5質量%である。このようにTiの含有量を適正化することで、電子部品用に適した強度及び曲げ加工性を共に実現することができる。
第3元素
第3元素は結晶粒の微細化に寄与するため、所定の第3元素を添加することができる。具体的には、Tiが十分に固溶する高い温度で溶体化処理をしても結晶粒が容易に微細化し、強度が向上しやすい。また、第3元素は変調構造の形成を促進する。更に、TiCu3の析出を抑制する効果もある。そのため、チタン銅本来の時効硬化能が得られるようになる。
チタン銅において上記効果が最も高いのがFeである。そして、Mn、Mg、Co、Ni、Si、Cr、V、Nb、Mo、Zr、B及びPにおいてもFeに準じた効果が期待でき、単独の添加でも効果が見られるが、2種以上を複合添加してもよい。
これらの元素は、合計で0.05質量%以上含有するとその効果が現れだすが、合計で0.5質量%を超えるとTiの固溶限を狭くして粗大な第二相粒子を析出し易くなり、強度は若干向上するが曲げ加工性が劣化する。同時に、粗大な第二相粒子は、曲げ部の肌荒れを助長し、プレス加工での金型磨耗を促進させる。従って、第3元素群としてMn、Fe、Mg、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で0〜0.5質量%含有することができ、合計で0.05〜0.5質量%含有するのが好ましい。
これら第3元素のより好ましい範囲は、Feにおいて0.17〜0.23質量%であり、Co、Mg、Ni、Cr、Si、V、Nb、Mn、Moにおいて0.15〜0.25質量%、Zr、B、Pにおいて0.05〜0.1質量%である。
本発明に係る銅合金の製造方法
本発明に係る銅合金は、先述した特許文献1〜4に記載されているような公知のチタン銅の製造方法に所定の改変を加えることで製造可能である。すなわち、最終溶体化処理の後、冷間圧延前に予めスピノーダル分解を起こすことのできる熱処理を行うことである。
従来のチタン銅の製造方法は、最終の溶体化処理によってチタンを母相に充分に固溶させた後、冷間圧延を行って強度を一定程度上昇させ、最後に時効処理でスピノーダル分解を起こして高強度チタン銅を得るものである。そこで、最後の時効処理が重要で、最終の溶体化処理によってチタンを母相に充分に固溶させ、時効処理において適正な温度と時間で最大限のスピノーダル分解を起こさせることがポイントとなっていた。温度が低く時間が短くなり過ぎると時効処理においてスピノーダル分解によって生じる変調構造の発達が不十分となりやすく、温度を高く、時間を長くすることでスピノーダル分解によって生じる変調構造の成長することで適度な曲げ加工性を維持しつつ、強度が上昇していく。しかしながら、材料の温度が高く長くなり過ぎると、強度にそれほど寄与しないβ’相や曲げ加工性を悪化させるβ相の析出がしやすくなり、強度上昇が見られないまま、あるいは強度が減少しつつ、曲げ加工性が悪化する。
一方、本発明では、最終の溶体化処理後に熱処理を入れ、予めスピノーダル分解を起こし、その後に、従来レベルの冷間圧延、従来レベルの時効処理あるいはそれより低温・短時間の時効処理を行うことでチタン銅の高強度化を図る。
溶体化処理後のチタン銅を熱処理すると、スピノーダル分解の進行に伴い導電率が上昇するので、本発明では、適切な熱処理の度合を熱処理の前後での導電率の変化を指標として規定することとした。本発明者の研究によれば、熱処理は導電率が0.5〜8%IACS上昇する条件で行うのが好ましい。なお、β’相やβ相は少量析出する程度であれば問題ないが、多量に析出すると本発明の意図する強度向上効果が得られなくなったり、強度が高くても負け加工性が顕著に悪化したりするので、より好ましくは1〜4%IACS上昇させるような条件で行うのが望ましい。このような導電率の上昇に対応する具体的加熱条件は、材料温度300〜700℃として0.001〜12時間加熱する条件である。
熱処理は以下の何れかの条件で行うのが好ましい。
・材料温度300℃以上400℃未満として0.5〜3時間加熱
・材料温度400℃以上500℃未満として0.01〜0.5時間加熱
・材料温度500以上600℃未満として0.005〜0.01時間加熱
・材料温度600℃以上700℃未満として0.001〜0.005時間加熱
熱処理は以下の何れかの条件で行うのがより好ましい。
・材料温度400℃以上450℃未満として0.25〜0.5時間加熱
・材料温度450℃以上500℃未満として0.01〜0.25時間加熱
・材料温度500℃以上550℃未満として0.0075〜0.01時間加熱
・材料温度550℃以上600℃未満として0.005〜0.0075時間加熱
・材料温度600℃以上650℃未満として0.0025〜0.005時間加熱
以下、工程毎に好ましい実施形態を説明する。
1)インゴット製造工程
溶解及び鋳造によるインゴットの製造は、基本的に真空中又は不活性ガス雰囲気中で行う。溶解において添加元素の溶け残りがあると、強度の向上に対して有効に作用しない。よって、溶け残りをなくすため、FeやCr等の高融点の添加元素は、添加してから十分に攪拌したうえで、一定時間保持する必要がある。一方、TiはCu中に比較的溶け易いので第3元素群の溶解後に添加すればよい。従って、Cuに、Mn、Fe、Mg、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で0〜0.50質量%含有するように添加し、次いでTiを2.0〜4.0質量%含有するように添加してインゴットを製造する。
2)均質化焼鈍及び熱間圧延
ここでは凝固偏析や鋳造中に発生した晶出物をできるだけ無くすことが望ましい。後の溶体化処理において、第二相粒子の析出を微細かつ均一に分散させる為であり、混粒の防止にも効果があるからである。
インゴット製造工程後には、900〜970℃に加熱して3〜24時間均質化焼鈍を行った後に、熱間圧延を実施するのが好ましい。液体金属脆性を防止するために、熱延前及び熱延中は960℃以下とし、且つ、元厚から全体の加工度が90%までのパスは900℃以上とするのが好ましい。そして、パス毎に適度な再結晶を起こしてTiの偏析を効果的に低減するために、パスごとの圧下量を10〜20mmで実施するとよい。
3)第一溶体化処理
その後、冷延と焼鈍を適宜繰り返してから溶体化処理を行うのが好ましい。ここで予め溶体化を行っておく理由は、最終の溶体化処理での負担を軽減させるためである。すなわち、最終の溶体化処理では、第二相粒子を固溶させるための熱処理ではなく、既に溶体化されてあるのだから、その状態を維持しつつ再結晶のみ起こさせればよいので、軽めの熱処理で済む。具体的には、第一溶体化処理は加熱温度を850〜900℃とし、2〜10分間行えばよい。そのときの昇温速度及び冷却速度においても極力速くし、第二相粒子が析出しないようにするのが好ましい。
4)中間圧延
最終の溶体化処理前の中間圧延における加工度を高くするほど、最終の溶体化処理における第二相粒子が均一かつ微細に析出する。但し、加工度をあまり高くして最終の溶体化処理を行うと、再結晶集合組織が発達して、塑性異方性が生じ、プレス整形性を害することがある。従って、中間圧延の加工度は好ましくは70〜99%ある。加工度は{((圧延前の厚み−圧延後の厚み)/圧延前の厚み)×100%}で定義される。
5)最終の溶体化処理
最終の溶体化処理では、析出物を完全に固溶させることが望ましいが、完全に無くすまで高温に加熱すると、結晶粒が粗大化するので、加熱温度は第二相粒子組成の固溶限付近の温度とする(Tiの添加量が2.0〜4.0質量%の範囲でTiの固溶限が添加量と等しくなる温度は730〜840℃であり、例えばTiの添加量が3質量%では800℃程度)。そしてこの温度まで急速に加熱し、冷却速度も速くすれば粗大な第二相粒子の発生が抑制される。また、固溶温度での加熱時間は短い程、結晶粒が微細化する。従って、材料を730〜840℃のTiの固溶限が添加量よりも大きくなる温度で0.5〜3分加熱した後に水冷するのが好ましい。
6)熱処理
最終の溶体化処理の後、熱処理を行う。熱処理の条件は先述した通りである。
7)最終の冷間圧延
上記熱処理後、最終の冷間圧延を行う。最終の冷間加工によってチタン銅の強度を高めることができる。この際、加工度が10%未満では充分な効果が得られないので加工度を10%以上とするのが好ましい。但し、加工度が高いほど次の時効処理で粒界析出が起こり易いので、加工度を50%以下、より好ましくは25%以下とする。
8)時効処理
最終の冷間圧延の後、時効処理を行う。時効処理の条件は慣用の条件でよいが、時効処理を従来に比べて軽めに行うと、強度と曲げ加工性のバランスが更に向上する。具体的には、時効処理は材料温度300〜400℃で3〜12時間加熱の条件で行うのが好ましい。
時効処理は以下の何れかの条件で行うのがより好ましい。
・材料温度300℃以上320℃未満として7〜12時間加熱
・材料温度320℃以上340℃未満として6〜11時間加熱
・材料温度340℃以上360℃未満として5〜8時間加熱
・材料温度360℃以上380℃未満として4〜7時間加熱
・材料温度380℃以上400℃以下として3〜6時間加熱
時効処理は以下の何れかの条件で行うのが更により好ましい。
・材料温度300℃以上320℃未満として8〜11時間加熱
・材料温度320℃以上340℃未満として7〜10時間加熱
・材料温度340℃以上360℃未満として6〜7時間加熱
・材料温度360℃以上380℃未満として5〜6時間加熱
・材料温度380℃以上400℃以下として4〜5時間加熱
なお、当業者であれば、上記各工程の合間に適宜、表面の酸化スケール除去のための研削、研磨、ショットブラスト酸洗等の工程を行なうことができることは理解できるだろう。
本発明に係る銅合金の特性
本発明に係る製造方法によって得られる銅合金は一実施形態において、以下の特性を兼備することができる。
(A)圧延平行方向の0.2%耐力が900〜1250MPa
(B)BadwayのW曲げ試験を行って割れの発生しない最小半径(MBR)の板厚(t)に対する比であるMBR/t値が0.5〜2.5
本発明に係る製造方法によって得られる銅合金は好ましい一実施形態において、以下の特性を兼備することができる。
(A)圧延平行方向の0.2%耐力が900〜1050MPa
(B)BadwayのW曲げ試験を行って割れの発生しない最小半径(MBR)の板厚(t)に対する比であるMBR/t値が0.5〜2.0
本発明に係る製造方法によって得られる銅合金は更に別の好ましい一実施形態において、以下の特性を兼備することができる。
(A)圧延平行方向の0.2%耐力が1050〜1250MPa
(B)BadwayのW曲げ試験を行って割れの発生しない最小半径(MBR)の板厚(t)に対する比であるMBR/t値が1.5〜2.5
本発明に係る製造方法によって得られる銅合金は一般に、導電率が7〜20%IACSであり、典型的には10〜15%IACSである。
本発明に係る銅合金の用途
本発明に係る銅合金は種々の板厚の伸銅品に加工することができ、各種の電子部品の材料として有用である。本発明に係る銅合金は特に高い寸法精度が要求される小型のばね材として優れており、限定的ではないが、スイッチ、コネクター、ジャック、端子、リレー等の材料として好適に使用することができる。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
例1(製造工程がチタン銅の特性に与える影響)
本発明例の銅合金を製造するに際しては、活性金属であるTiが第2成分として添加されるから、溶製には真空溶解炉を用いた。また、本発明で規定した元素以外の不純物元素の混入による予想外の副作用が生じることを未然に防ぐため、原料は比較的純度の高いものを厳選して使用した。
まず、Cuに、Mn、Fe、Mg、Co、Ni、Cr、Mo、V、Nb、Zr、Si、B及びPを表1に示す組成でそれぞれ添加した後、同表に示す組成のTiをそれぞれ添加した。添加元素の溶け残りがないよう添加後の保持時間にも十分に配慮した後に、これらをAr雰囲気で鋳型に注入して、それぞれ約2kgのインゴットを製造した。
Figure 0005490439
上記インゴットに対して950℃で3時間加熱する均質化焼鈍の後、900〜950℃で熱間圧延を行い、板厚10mmの熱延板を得た。面削による脱スケール後、冷間圧延して素条の板厚(2.0mm)とし、素条での第1次溶体化処理を行った。第1次溶体化処理の条件は850℃で10分間加熱とした。次いで、中間の板厚(0.10mm)まで冷間圧延した後、急速加熱が可能な焼鈍炉に挿入して最終の溶体化処理を行った。このときの加熱条件は820℃で1分間とした。次いで、表2に記載の条件で熱処理を行った。酸洗による脱スケール後、冷間圧延して板厚0.075mmとし、不活性ガス雰囲気中で時効して発明例及び比較例の試験片とした。熱処理及び時効処理の条件は表2に記載した。
得られた各試験片について、以下の条件で特性評価を行った。
<強度>
引張方向が圧延方向と平行になるように、プレス機を用いてJIS13B号試験片を作製した。JIS−Z2241に従ってこの試験片の引張試験を行ない、圧延平行方向の0.2%耐力(YS)を測定した。
<曲げ加工性>
JIS H 3130に従って、Badway(曲げ軸が圧延方向と同一方向)のW曲げ試験を行って割れの発生しない最小半径(MBR)の板厚(t)に対する比であるMBR/t値を測定した。
<導電率>
JIS H 0505に準拠し、4端子法で導電率(%IACS)を測定した。
Figure 0005490439
No.1は従来例である。これに対して、熱処理を加えたNo.2の場合、強度が向上することが分かる。
No.3は熱処理を行わずに時効処理を低温で行った比較例である。これに対して、熱処理を加えたNo.5の場合、強度が向上することが分かり、しかも、No.5は時効処理を低温で行ったため、強度と曲げ加工性が高い次元で両立できている。一方、熱処理を行わずに時効処理を高温で行ったNo.4の場合には、高強度が得られない上に、曲げ加工性が悪くなってしまう。すなわち、熱処理を行わずに時効処理のみでは高強度は得られないことがわかる。
No.6は、発明例ではあるが、時効処理の温度を低くし過ぎた例である。No.7は熱処理時の加熱温度をできるだけ高くした発明例である。No.8は熱処理時の加熱温度をできるだけ低くした発明例である。
No.9は熱処理の加熱温度が高すぎた比較例であり、No.10は熱処理の加熱温度が低すぎた比較例である。
No.11は熱処理による導電率の上昇度合いを大きくした発明例である。No.12及びNo.13は熱処理による導電率の上昇度合いが大きすぎた比較例である。強度は向上したが、曲げ加工性が極端に悪くなった。
No.14と15は第三元素を添加した系での本発明の効果を示したものである。
No.16と17は異なる第三元素を添加した系での本発明の効果を示したものである。
例2(組成がチタン銅の特性に与える影響)
チタン銅の組成を表3のように変化させた他は、No.5の試験片と同様の製造条件で試験片を製造した。
Figure 0005490439
得られた各試験片の特性評価の結果を表4に示す。No.18はチタン濃度が低すぎた比較例であり、No.21はチタン濃度が高すぎた例である。
Figure 0005490439

Claims (6)

  1. Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてMn、Fe、Mg、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で0〜0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる電子部品用銅合金の製造方法であって、最終の溶体化処理後に、冷間圧延を行わずに導電率を0.5〜8%IACS上昇させる熱処理を行い、冷間圧延、及び時効処理を順に行うことを含む製造方法。
  2. Tiを2.0〜4.0質量%含有し、第3元素群としてMn、Fe、Mg、Co、Ni、Cr、V、Nb、Mo、Zr、Si、B及びPよりなる群から選択される1種又は2種以上を合計で0〜0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる電子部品用銅合金の製造方法であって、最終の溶体化処理の後、冷間圧延を行わずに熱処理、冷間圧延、及び時効処理を順に行い、熱処理は材料温度300〜700℃で0.001〜12時間加熱することにより導電率を0.5〜8%IACS上昇させることを含む製造方法。
  3. 時効処理は材料温度300〜400℃で3〜12時間加熱の条件で行う請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 熱処理は材料温度400〜650℃で0.0025〜0.5時間加熱の条件で行い、時効処理は材料温度300〜400℃で3〜12時間加熱の条件で行う請求項1又は2に記載の製造方法。
  5. 請求項1〜4の何れか一項記載の方法によって銅合金を製造する工程と、該銅合金を加工する工程を含む電子部品の製造方法。
  6. 電子部品がコネクターである請求項5に記載の製造方法。
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