JP6286241B2 - Cu−Ti系銅合金板材およびその製造方法並びに通電部品 - Google Patents

Cu−Ti系銅合金板材およびその製造方法並びに通電部品 Download PDF

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Description

本発明は、コネクタ、リレー、スイッチなどの通電部品に適した耐疲労特性に優れるCu−Ti系銅合金板材であって、特に従来のCu−Ti系銅合金板材の耐疲労特性レベルでは103〜104回で疲労限に達する厳しい条件下での耐疲労特性を改善した、耐久性に優れた板材、およびその製造方法に関する。また、その銅合金板材を材料に用いた通電部品に関する。
電気・電子部品を構成する通電部品に使用される材料には、「強度」、「曲げ加工性」、「耐応力緩和特性」に優れることが要求される。また、特にコネクタ、リレー、スイッチなどの可動部を有する通電部品には繰り返しの応力負荷に耐え得る「耐疲労特性」も重要となる。
Cu−Ti系銅合金は、銅合金中でCu−Be系銅合金に次ぐ高強度を有し、Cu−Be系銅合金を凌ぐ耐応力緩和性を有する。また、コストと環境負荷の点でCu−Be系銅合金より有利である。このためCu−Ti系銅合金(例えばC1990;Cu−3.2質量%Ti合金)は、一部のCu−Be系銅合金の代替材としてコネクタ材などに使用されている。
Cu−Ti系銅合金では、Tiの変調構造(スピノーダル構造)を利用して強度を向上させることができる反面、板材の製造過程で粗大な粒状析出物が生成しやすく、また結晶粒界から粒界反応相が生成しやすいという問題がある。図1に、従来一般的なCu−Ti系銅合金板材の圧延方向に垂直な断面の金属組織写真(SEM写真)を例示する。記号Aで示すような粒状析出物と、記号Bで示すような層状の粒界反応相が多く見られる。これらの粒状析出物と粒界反応相は、疲労特性や曲げ加工性に悪影響を及ぼす要因となる。
これまでCu−Ti系銅合金の特性を改善するために、上記粒状析出物や粒界反応相などの第二相の生成状態を制御する研究が行われている。例えば、特許文献1には、直径1μm以上の介在物が2〜41個/1000μm2(2×103〜41×103個/mm2)であるCu−Ti系銅合金が示されている。特許文献2には、直径1μm以上の第二相粒子の面積率が0〜0.16%であるCu−Ti系銅合金が示されている。特許文献3には、粒内に存在するCu−Ti系化合物の面積率が、粒界に存在するCu−Ti系化合物の面積率よりも大きいCu−Ti系銅合金が示されている。特許文献4には、直径0.5μm以上の第二相粒子が0.04〜0.11個/μm2(4×104〜11×104個/mm2)であるCu−Ti系銅合金が示されている。
特開2005−187885号公報 特開2011−202218号公報 特開2011−195881号公報 特開2012−97308号公報
コネクタなどのばね材に用いられる銅合金板材は180°U字曲げを施して使用されることが多い。特に民生用電子機器では抜き挿しの動作が繰り返される場合の耐久性向上ニーズが高まっており、180°U字曲げを施した実装部品に近い形状の試験片による耐疲労特性の評価が望まれている。しかし、これまで銅合金板材の耐疲労特性の評価は、プーリー試験やナイフエッジ式試験など、平板状試料による評価が主流であり、上記のような実装形状を反映した耐久性は十分に把握されていないのが現状である。
発明者らの検討によれば、180°U字曲げ部を有する実装部品に近い形状の試験片において、従来のCu−Ti系銅合金板材の耐久性レベルでは103回から104回程度で疲労限を迎えるような負荷を付与する厳しい条件での評価手法が、上記耐久性向上ニーズに応えるために有効であることがわかった。特許文献1〜4をはじめとする従来の第二相制御技術では、上記ニーズに十分に応えることはできない。本発明は、Cu−Ti系銅合金において、上述のような実装部品に近い形状の試験片で把握される、厳しい評価基準での耐久性を安定して向上させることを目的とする。
Cu−Ti系銅合金板材の工業的生産において、粒状析出物と粒界反応相の生成量を同時に低減させることは必ずしも容易ではない。これらの第二相はいずれもTi化合物であるため、粒状析出物の生成量を低減することはマトリックスに多量に残存するTiの粒界反応析出を助長する要因となる。すなわち、粒界反応を抑制するためにはマトリックス中のTiを粒状析出物の生成に消費させることが有効であるので、粒状析出物の生成量を過度に抑制することは難しい。このように、粒状析出物の抑制と粒界反応相の抑制は、トレードオフの傾向を有する。
発明者らの詳細な研究によれば、上述のような厳しい耐久性を付与するためには、直径500nm以上の粒状析出物の存在量、および幅500nmを超える粒界反応相の存在量を、ともに厳しく制限することが極めて有効であることがわかった。また、それを実現するための製造方法として、以下の手法が極めて有効であることを見出した。
(i)熱間圧延において920℃以上の高温域で60%以上の圧下率を稼ぐとともに、その高温域で材料とロールの摩擦を高めて材料全体に大きなせん断力を加えることにより、鋳造組織中の偏析相の破壊・分断を促進させ、かつ、できるだけ高温状態から水冷する。
(ii)溶体化処理後に550〜750℃の中温域に保持する「前駆熱処理」を行う、
(iii)時効処理を300〜410℃という低めの温度で行う。
本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明では、質量%で、Ti:2.0〜4.0%、Ni:0〜1.5%、Co:0〜1.0%、Fe:0〜0.5%、Sn:0〜1.2%、Zn:0〜2.0%、Mg:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Al:0〜1.0%、Si:0〜1.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Cr:0〜1.0%、Mn:0〜1.0%、V:0〜1.0%であり、前記元素のうちSn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、MnおよびVの合計含有量が3.0%以下であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板材であって、圧延方向に垂直な断面の金属組織において、直径500nm以上の粒状析出物の個数密度が10.0×103個/mm2以下であり、結晶粒界の交点に挟まれる粒界部分を「粒界セグメント」と呼ぶとき、幅500nmを超える粒界反応相が存在する粒界セグメントの個数割合が5.0%以下であり、板の圧延方向の0.2%耐力が800MPa以上である銅合金板材が提供される。板厚は例えば0.03〜1.0mmとすることができ、特に0.05〜0.3mmの薄板材は通電部品の小型化に有用である。圧延方向に垂直な断面の金属組織において、粒界反応相の最大幅は例えば1.5μm以下である。
上記銅合金板材の圧延方向に垂直な断面における平均結晶粒径は例えば5〜25μmである。導電率は12%IACS以上となる。また、板の圧延方向をLD、圧延方向と板厚方向に直角の方向をTDとするとき、JIS H3130に従う90°W曲げ試験において割れが発生しない最小曲げ半径MBRと板厚tとの比MBR/tの値がLD、TDとも1.5以下となる曲げ加工性を有するものが提供できる。
図2に、本発明に従うCu−Ti系合金板材について、圧延方向に垂直な断面を電解研磨した金属組織写真(SEM写真)を例示する。これは、後述の本発明例No.2の例である。図中には、1000μm2に相当する矩形領域を破線で示し、その矩形領域内に存在する各粒界セグメントに1から34までの番号を付してある。粒界反応相の幅は、結晶粒界に対して直角方向の粒界反応相の長さである。図2の例では、番号1の粒界セグメントに幅が500nmを超える粒界反応相が存在する。
粒状析出物の個数密度、および粒界セグメントの個数割合は、以下の方法で特定することができる。
〔粒状析出物の個数密度および粒界セグメントの個数割合の特定方法〕
圧延方向に垂直な断面のSEM観察において1000μm2の矩形領域が設定できる観察視野をランダムに12視野選択する。1つの観察視野において、設定した矩形領域内(境界を含む)に全部または一部が存在する粒状析出物のうち、当該粒子を取り囲む最小円の直径が500nm以上である粒子の数をカウントする。また、この矩形領域内に全部または一部が存在する粒界セグメントのすべてを測定対象として「幅500nmを超える粒界反応相が存在する粒界セグメント」の数をカウントする。この作業を上記12視野について行い、取り囲む最小円の直径が500nm以上である粒子の総数をN(個)、測定対象とした粒界セグメントの総数をN0(個)、「幅500nmを超える粒界反応相が存在する粒界セグメント」の総数をN1(個)とするとき、N/0.012で表される値を「粒状析出物の個数密度(個/mm2)」とし、N1/N0×100で表される値を「幅500nmを超える粒界反応相が存在する粒界セグメントの個数割合(%)」とする。
なお、上記N2/0.012における分母の0.012は、12視野における矩形領域のトータル面積1000μm2×12=12000μm2を、mm2に換算した数値である。
また、前記粒界反応相の最大幅についても同様に前記12視野内で観察し、幅が1.5μmを越える粒界反応相の有無を確認する。
上記銅合金板材の製造方法として、前記組成を有する銅合金板材を、熱間圧延、溶体化処理、前駆熱処理、時効処理を有する工程で製造するに際し、
熱間圧延は、加熱温度を960℃以下とし、920℃以上で行う圧延パスで水分含有量97.0質量%以上の潤滑液を使用し、920℃以上での合計圧延率を60%以上とし、熱間圧延最終パス温度を下記(1)式のTs(℃)以上とし、Ts−100℃以上の温度から水冷を開始する条件で行い、
溶体化処理は、750〜900℃で加熱保持したのち550℃から300℃までの平均冷却速度が100℃/sec以上となるように冷却する条件で行い、
前駆熱処理は、300℃から550℃までの平均昇温速度が60℃/sec以上となるように昇温し、550〜730℃の温度範囲で10〜120sec保持したのち550℃から300℃までの平均冷却速度が100℃/sec以上となるように冷却する条件で行い、
時効処理は、前駆処理後に圧延率3%以上の冷間圧延による加工歪を導入した材料に対して、300〜410℃に加熱保持する条件で行う製造方法が提供される。
Ts=151.5×ln[Ti]+620.5 …(1)
ここで、lnは自然対数、[Ti]は質量%で表される当該合金のTi含有量である。
上記の前駆処理は、溶体化処理後の冷却過程において550〜730℃の温度範囲で10〜120sec保持したのち550℃から300℃までの平均冷却速度が100℃/sec以上となるように冷却する条件で行ってもよい。
また本発明では、上記銅合金板材を材料に用いた通電部品が提供される。
本発明によれば、Cu−Ti系銅合金板材において、180°U字曲げ部を有する試料を用いた厳しい評価手法で判定される耐久性を向上させることができた。従って本発明は、特にコネクタ、スイッチ、リレー等の可動部分を有する通電部品の耐久性向上に寄与するものである。
一般的なCu−Ti系銅合金板材の金属組織を例示したSEM写真。 本発明に従うCu−Ti系合金板材の金属組織を例示したSEM写真。 耐久性を評価するための試験片の形状を例示した図。 耐久回数と荷重低下率の関係を例示したグラフ。
《合金組成》
本発明ではCu−Tiの2元系基本成分に、必要に応じてNi、Co、Feや、その他の合金元素を配合したCu−Ti系銅合金を採用する。以下、合金組成に関する「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
Tiは、強度上昇および耐応力緩和性向上に寄与する元素であり、ここではTi含有量2.0%以上の合金を対象とする。2.5%以上であることがより好ましい。過剰なTi含有は、熱間加工性や冷間加工性を低下させる要因となる他、溶体化処理の適正温度域を狭める要因ともなるので、Ti含有量は4.0%以下とする。3.5%以下に管理してもよい。
Ni、Co、Feは、Tiとの金属間化合物を形成して強度の向上に寄与するので、必要に応じてこれらの1種以上を添加することができる。特に、Cu−Ti系銅合金の溶体化処理においては、これらの金属間化合物が結晶粒の粗大化を抑制するので、より高温域での溶体化処理が可能になり、Tiを十分に固溶させる上で有利となる。これら1種以上を添加する場合の含有量は、Ni:0.05%以上、Co:0.05%以上、Fe:0.05%以上とすることがより効果的であり、Ni:0.1以上、Co:0.1%以上、Fe:0.1%以上とすることが更に効果的である。ただし、Fe、Co、Niを過剰に含有させると、粗大な粒状析出物が形成しやすくなり、耐久性の低下を招く。したがってNi、Co、Feの1種以上を添加する場合は、Ni:1.5%以下、Co:1.0%以下、Fe:0.5%以下の範囲とする。Ni:0.25%以下、Co:0.25%以下、Fe:0.25%以下の範囲に管理してもよい。
Snは、固溶強化作用と耐応力緩和性の向上作用を有するので、必要に応じて積極的に添加してもよい。0.1%以上のSn含有量を確保することが効果的である。ただし、過剰のSn含有は鋳造性と導電率の低下を招くので、Snを含有させる場合は1.2%以下とする。0.5%以下あるいは0.25%以下の範囲に管理してもよい。
Znは、はんだ付け性および強度を向上させる作用を有する他、鋳造性を改善させる作用もあるので、必要に応じて積極的に添加してもよい。0.1%以上のZn含有量を確保することが効果的であり、0.3以上とすることが一層効果的である。ただし、過剰のZn含有は導電性や耐応力腐食割れ性の低下要因となりやすいので、Zn含有量は2.0%以下とし、1.0%以下あるいは0.5%以下の範囲に管理してもよい。
Mgは、耐応力緩和性の向上作用と脱S作用を有するので、必要に応じて積極的に添加してもよい。0.01%以上のMg含有量を確保することが効果的であり、0.05%以上とすることがより効果的である。ただし、Mgは酸化されやすい元素であり、過剰添加は鋳造性が損なう要因となるので、Mgを含有させる場合は1.0%以下の含有量とし、0.5%以下の範囲で調整することが一層好ましい。通常、0.1%以下とすればよい。
その他の元素として、Zr:1.0%以下、Al:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.1%以下、B:0.05%以下、Cr:1.0%以下、Mn:1.0%以下、V:1.0%以下の1種以上を含有させることができる。例えば、ZrとAlはTiとの金属間化合物を形成することができ、SiはTiとの析出物を生成できる。Cr、Zr、Mn、Vは不可避的不純物として存在するS、Pbなどと高融点化合物を形成しやすく、また、Cr、B、P、Zrは鋳造組織の微細化効果を有し、熱間加工性の改善に寄与しうる。Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vの1種以上を含有させる場合は、各元素の作用を十分に得るためにこれらの総量が0.01%以上となるように含有させることが効果的である。
ただし、Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vを多量に含有させると、熱間または冷間加工性に悪影響を与え、かつコスト的にも不利となる。したがって、前述のSn、Zn、Mgと、Zr、Al、Si、P、B、Cr、Mn、Vの合計含有量は3.0%以下に抑えることが望ましく、2.0%以下あるいは1.0%以下の範囲に規制することができ、0.5%以下の範囲に管理しても構わない。経済性を加味したより合理的な上限規制としては、例えばZr:0.2%以下、Al:0.15%以下、Si:0.2%以下、P:0.05%以下、B:0.03%以下、Cr:0.2%以下、Mn:0.1%以下、V:0.2%以下の規制を設けることができる。
《金属組織》
従来一般的なCu−Ti系銅合金板材には、図1に示したように「粒状析出物」と「粒界反応相」が観察される。本発明に従うCu−Ti系銅合金板材にもこれらの第二相は観察されるが、その存在量が後述のように厳しく制限されている。なお、Cu−Ti系銅合金の強化機構は主として変調構造(スピノーダル構造)によるものである。変調構造自体は析出相とは異なり光学顕微鏡やSEMでは観測されない。
〔粒状析出物〕
Cu−Ti系銅合金の母相(マトリックス)中に観察される粒状析出物としては、添加する合金元素の種類に応じてNi−Ti系、Co−Ti系、Fe−Ti系などの金属間化合物も存在しうるが、量的にはCu−Ti系金属間化合物であるα相が大部分を占める。粒状析出物の粒径が例えば数nm〜数十nmと小さい場合、硬化作用を発現し、特に害を及ぼさない。しかしながら、粗大な粒状析出物は、板材の耐久性に悪影響を及ぼす。発明者らの検討によれば、上述の厳しい評価方法による耐久性を向上させるためには、圧延方向に垂直な断面に観察される直径500nm以上の粒状析出物の個数密度を10.0×103個/mm2以下に制限することが極めて有効であることがわかった。7.0×103個/mm2以下であることがより好ましい。なお、本発明で規定する個数密度の測定対象となる粒状析出物はCu−Ti系金属間化合物に限定されるものでなく、粒状析出物の組成・種類は問わない。
従来、Cu−Ti系銅合金では、耐疲労特性や曲げ加工性の低下を抑制するためには直径1μm以上の粒状析出物の数を制限することが有効であると考えられている。しかしながら、本発明で目的とする厳しい耐久性を安定的に付与するためには、直径1μm以上の粒子の制限のみでは不十分であり、直径500nm以上の粒子を制限することが極めて有効となる。その理由については現時点で必ずしも明確ではないが、180°U字曲げ部を有する試験片による厳しい疲労試験では、直径500nm〜1μm程度の粒状析出物であっても、マイクロクラックの起点および伝播経路として作用しやすいものと考えられる。
〔粒界反応相〕
粒界反応相は脆弱な部分であり、疲労破壊や曲げ割れの起点となる。上述のように、厳しい耐久性を安定的に付与するためには直径500nm以上の粒状析出物の存在量を制限することが極めて有効であるが、それだけでは不十分であり、粒界反応相の生成量をも同時に制限する必要がある。粒界反応相の生成量を規定する方法としては、一般的には当該反応相の面積率をパラメータとする方法が考えられる。しかし、180°U字曲げ部を有する試験片による厳しい耐久性評価においては、結晶粒界でのクラックの伝播を防ぐことが重要であり、単に反応相の面積率で規定しても、耐久性の良好なものを精度良く区別することは困難であった。そこで、発明者らは、粒界セグメントを「良い粒界セグメント」と「悪い粒界セグメント」に分類し、「悪い粒界セグメント」の個数割合を制限するという思想に基づいて、粒界反応相の生成量を規定した。その結果、上記の厳しい耐久性を精度良く判定することができた。
具体的には、圧延方向に垂直な断面において、結晶粒界の交点に挟まれる粒界部分に相当する「粒界セグメント」のうち、幅500nmを超える粒界反応相が存在する粒界セグメントの個数割合が5.0%以下であるときに、上記の粒状析出物の制限規定と相俟って、上記の厳しい耐久性を安定して実現することが可能となることがわかった。粒界反応相の最大幅は1.5μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。粒界セグメントの個数割合の求め方は、上述した通りである。
〔平均結晶粒径〕
結晶粒の微細化は曲げ加工性や耐疲労特性に有利となる反面、耐応力緩和特性に不利となる。種々検討の結果、平均結晶粒径は5〜25μmの範囲に調整することが望ましく、5〜20μmに管理してもよい。平均結晶粒径のコントロールは主として溶体化処理によって行うことができる。ここで、平均結晶粒径は、圧延方向に垂直な断面の金属組織観察において、300μm×300μm以上の視野で100個以上の結晶粒の粒径をJIS H0501の切断法で測定することによって求めることができる。
《特性》
〔導電率〕
通電部品の薄肉化ニーズを考慮すると、12%IACS以上の導電率を有することが望ましく、15%IACS以上であることがさらに好ましい。上述の化学組成および組織によって前記導電率を満たすことができる。
〔強度〕
LDの0.2%耐力は800MPa以上であることが望ましい。830MPa以上であることがより好ましく、850MPa以上であることが一層好ましい。耐久性を向上させる観点からは強度は高い方が望ましいが、過度に強度を高めた場合、曲げ加工性が低下し、180°U字曲げ部でのクラック発生を招き、耐久性を低下させることが懸念される。曲げ加工性を重視する場合、LDの0.2%耐力は1000MPa以下の範囲で調整することが好ましい。970MPa以下あるいは930MPa以下の範囲に管理してもよい。
〔曲げ加工性〕
JIS H3130に従う90°W曲げ試験において割れが発生しない最小曲げ半径MBRと板厚tとの比MBR/tの値がLD、TDとも1.5以下となる曲げ加工性を具備していることが望ましい。「LDの曲げ加工性」は長手方向がLDの試験片により評価される曲げ加工性であり、曲げ軸はTDである。「TDの曲げ加工性」は長手方向がTDの試験片により評価される曲げ加工性であり、曲げ軸はLDである。
〔耐疲労特性〕
耐疲労特性は一般に平板状試験片によって評価されるが、ここでは上述のように、180°U字曲げ加工部を有する試験片を用いて、より実装状態に近い耐久性を把握する。具体的には、例えば後述の実施例に示す方法が適用できる。
〔耐応力緩和特性〕
耐応力緩和特性は、車載用コネクタなどの用途では特に重要となる。後述の応力緩和特性の評価方法において、長手方向がTDである試験片を200℃で1000時間保持した場合の応力緩和率が5%以下であることが好ましく、4%以下であることが一層好ましい。
《製造方法》
上述の特性を具備するCu−Ti系銅合金板材は、熱間圧延、溶体化処理、前駆熱処理、時効処理を有する工程で製造することができる。より具体的には、例えば下記の工程を例示することができる。
「溶解・鋳造→熱間圧延→冷間圧延→溶体化処理→前駆熱処理→中間冷間圧延→時効処理」
ここで「前駆熱処理」は、溶体化処理と時効処理の間で実施される特定温度範囲での加熱保持工程である。この熱処理は、後の時効処理で変調構造(スピノーダル構造)やα相を本格的に形成させるに先立って、変調構造への変化やα相の微細な核晶生成が僅かに生じ始めると考えられる、いわば時効の前駆的な組織状態を作り出すための熱処理である。そのため本明細書ではこれを「前駆熱処理」と呼んでいる。なお、上記工程中には記載していないが、溶解・鋳造後には必要に応じて均熱処理(又は熱間鍛造)が行われ、熱間圧延後には必要に応じて面削が行われ、各熱処理後には必要に応じて酸洗、研磨、あるいは更に脱脂が行われる。また、用途に応じて「時効処理」の後に「仕上冷間圧延」と「低温焼鈍」を追加してもよい。以下、各工程について説明する。
〔溶解・鋳造〕
連続鋳造、半連続鋳造等により鋳片を製造すればよい。Tiの酸化を防止するために、不活性ガス雰囲気または真空溶解炉で行うのがよい。
〔熱間圧延〕
熱間圧延では、できるだけ高温で大きな圧延率を稼ぎ、かつ材料全体に大きなせん断力を加えて鋳造組織中の偏析相の破壊・分断を促進させること、熱間圧延最終パスをα相の固溶度線以上の温度で終えること、および最終パス終了後はできるだけ高温状態から水冷することが極めて効果的である。
熱間圧延前の加熱温度は960℃以下とする。それより高いと鋳造組織に起因して融点が低下している部分が存在すると、その部分が溶融する恐れがあり、熱間割れを招く要因となる。加熱温度範囲は930〜960℃、加熱時間は2h以上とすることが好ましい。材料表面温度が920℃以上であるうちに合計圧延率60%以上、より好ましくは65%以上の圧下を付与する。すなわち、920℃以上での合計圧延率を60%以上、より好ましくは65%以上とする。この温度域で大きな加工度を稼ぐことによって、鋳造組織のデンドライト樹間に生じやすいTiの濃化部分を破壊、分断し、粗大な第二相粒子に成長しやすい核源を十分に消失させる。920℃以上での合計圧延率が60%に満たないと、最終的に粗大な粒状析出物の個数密度を上記所望の範囲に低減することが難しくなる。920℃以上の温度域で行う熱間圧延パスのうち、最も圧下率の大きい熱間圧延パスでの圧下率(最大圧下率)を15%以上とすることが効果的である。特に、920℃以上の温度域で行う各熱間圧延パスでの圧下率の平均値(平均圧下率)を15%以上をすることがより好ましい。
熱間圧延最終パス温度は下記(1)式のTs(℃)以上とする。
Ts=151.5×ln[Ti]+620.5 …(1)
ここで、lnは自然対数を意味し、[Ti]の箇所には質量%で表される当該合金のTi含有量の値が代入される。
このTsはCu−Ti二元合金におけるα相の固溶度線温度(℃)を示す指標であり、上記(1)式により精度良く近似される。通常、固溶度線より低温側の固溶度線近傍の温度域では核形成は起こりにくいが、加工歪が加わった場合にはその温度域で核形成が起こりやすい。一旦、その温度域で核形成が起こってしまうと、高温であるためにその後の成長も速い。従って、粗大な粒状析出物の存在数を減じるためには、Ts以上の温度で熱間圧延を終了することが極めて有効である。熱間圧延での合計圧延率は60%以上95%以下の範囲で設定すればよい。
なお、ある板厚t0(mm)からある板厚t1(mm)までの圧延率は、下記(2)式により求まる。後述の各工程における圧延率も同様である。
圧延率(%)=(t0−t1)/t0×100 …(2)
また、この高温域で材料全体に大きなせん断力を加えるためには、圧延ロールと材料間の摩擦力を利用して、材料表面に付与する引張応力成分を増大させることが極めて有効であることがわかった。
一般に圧延加工では、ロールと接触する表面近くでは引張応力状態、板厚中央に近い部分では圧縮応力状態となり、材料の表層部と内部とで異なる方向の応力が負荷される。このうち引張応力は主としてロールと材料の摩擦力によって生じる。この摩擦力はロール寿命低下などの要因となるため、通常の熱間圧延操業では潤滑液を使用して摩擦力の低減を図っている。熱間圧延用の潤滑液としては、一般に冷却能力と難燃性の点から水に水溶性の潤滑成分(油分)を数%加えたソリュブルオイルが使用される。
最終的な板材製品において、粗大な第二相の存在が厳しく制限された本発明に従う組織状態を実現するためには、この摩擦力を積極的に利用し、材料の表面近くに生じる引張応力を増大させることが極めて有効である。引張応力の増大によって表層部と内部の応力方向の差が大きくなり、材料全体に大きなせん断力を加わるため、鋳造組織中の偏析相の破壊・分断が促進される。種々検討の結果、水にソリュブルオイル等の潤滑成分を添加して水分含有量が97.0質量%以上となるように潤滑成分の配合量を制限した潤滑液を使用することが、本発明に従う組織状態の板材製品を得るうえで非常に効果的である。水分含有量が98.0質量%以上の潤滑液を使用することがより好ましく、99.0質量%以上のものが一層好ましい。潤滑液は水分含有量100%(すなわち水)とすることもできるし、例えば水分含有量99.8質量%以下の範囲に管理することもできる。潤滑液中の水分含有量は加熱乾燥式水分計によって測定できる。
熱間圧延最終パス終了後の冷却過程でも、第二相の生成をできるだけ防止する必要がある。熱間圧延最終パス終了後の冷却過程では、加工歪の導入を伴わないので、固溶度線温度近傍での第二相の生成はほとんど起こらないと考えてよい。しかし、固溶度線からの温度差が大きくなると析出が活発に起こるようになる。種々検討の結果、Ts−100℃の温度を下回ると第二相の生成が問題となる場合がある。従って、熱間圧延最終パス終了後は、材料表面温度がTs−100℃以上の温度であるときに水冷を開始する。水冷方法は、熱間圧延材を搬送するテーブル上で材料表面に十分な量の冷却水を接触させる方法や、巻き取ったコイルを水槽中に浸漬させる方法などが採用できる。それらの水冷手法によって、Ts−100℃の温度から200℃までの平均冷却速度を20℃/sec以上とすることができ、50℃/sec以上に管理することもできる。
〔冷間圧延〕
最終製品の板厚を考慮して、溶体化処理前の段階で適宜冷間圧延を実施することができる。中間焼鈍を挟んだ複数回の冷間圧延を実施してもよい。溶体化処理に供する板材の冷間圧延率は、90%以上とすることが効果的である。
〔溶体化処理〕
溶体化処理の加熱保持温度は750〜900℃の範囲とする。この温度域においてα相を十分に固溶させることができる。900℃を超えると結晶粒が粗大化しやすい。750℃未満ではα相の固溶が不十分となりやすい。750〜900℃での保持時間は5sec〜5minの範囲で設定すればよい。溶体化処理の保持温度、保持時間によって最終製品の平均結晶粒径を調整することができる。溶体化処理の冷却過程を利用して、後述の前駆熱処理を行うことができる。溶体化処理後に一旦常温付近まで冷却する場合は、550℃から300℃までの平均冷却速度が100℃/sec以上となるように急冷することが望ましい。
〔前駆熱処理〕
溶体化処理後には、550〜730℃の温度範囲で10〜120sec保持する前駆熱処理を施す。溶体化処理の冷却過程を利用して前駆熱処理を行う場合は、例えば、複数の加熱ゾーンを備える連続通板ラインを用いて、溶体化処理と前駆熱処理を連続して実施すればよい。550〜730℃の温度域は、Cu−Ti系銅合金の通常の時効処理において変調構造(スピノーダル構造)の形成により最高強度が得られる420〜500℃の温度域より高い温度範囲にある。発明者らの研究によれば、溶体化処理を終えたCu−Ti系銅合金をこの温度域に保持すると、結晶粒界および粒内に微細なα相の粒状析出物が生成し、かつ変調構造への僅かな変化が生じる。そして、その微細なα相および変調構造への変化が存在する組織状態のものを時効処理に供したときには、粒界反応相の生成が顕著に抑制されることがわかった。また、前駆熱処理を経た場合には、時効温度を300〜410℃といった低温側へシフトできることがわかった。その理由については十分に解明されていないが、550〜730℃の保持によって変調構造への変化が僅かに起こり始めているような前駆的な組織構造が得られ、その特異な組織構造が、変調構造(スピノーダル構造)の本格的な生成を比較的低温から非常に起こりやすくしているのではないかと推察される。前駆熱処理の保持温度が高すぎると微細な粒状α相の生成量および変調構造への変化量が不足しやすい。保持温度が低すぎると粒界反応相が析出してしまう。保持時間が長すぎると粒状α相のサイズが大きくなり、耐久性の向上に支障をきたす。保持時間が短すぎると微細な粒状α相の生成量および変調構造への変化量が不足しやすい。
前駆熱処理は、溶体化処理の冷却過程を利用して行うこともできるが、溶体化処理後に一旦常温付近まで冷却した後に昇温して前駆熱処理を行う場合は、その昇温時に粒界反応相が形成する温度域を通過することに十分留意する必要がある。具体的には、溶体化処理後の組織状態のまま300〜550℃の温度域で熱処理された場合、粒界反応析出の核が先に形成されてしまい、前駆熱処理の効果が十分に発揮されなくなる。発明者らの研究によれば、前駆熱処理を溶体化処理と分けて行う場合は、300℃から550℃までの平均昇温速度を60℃/sec以上とした場合に、十分な前駆熱処理の効果が得られることがわかった。昇温速度は炉内温度や炉内雰囲気、炉内ファンの回転数などにより制御することが可能である。
前駆熱処理の上記加熱保持後は、水冷などにより、550℃から300℃までの平均冷却速度が100℃/sec以上となるように冷却する。この冷却速度が遅いと通常の時効処理温度域での時効が生じてしまい、粒状析出物や粒界反応層の生成量を十分に抑制することができない。
〔中間冷間圧延〕
時効処理の前には、圧延率3%以上、好ましくは4%以上の冷間圧延により加工歪を導入しておく。この冷間圧延を行わない場合や、圧延率が低すぎる場合は、時効の際の核源や拡散が不十分となり、時効時間の増加を招くだけでなく、得られる強度が低くなる。過度な圧延はコスト増に繋がるので、圧延率は例えば35%以下の範囲で設定すればよい。
〔時効処理〕
時効処理は300〜410℃という低温域で行う。350〜410℃とすることがより好ましい。通常、Cu−Ti系銅合金の時効処理は、変調構造(スピノーダル構造)の形成による強度上昇作用が最も顕著に現れる420〜500℃の範囲で行われることが多い。この範囲は同時に粒界反応相が形成されやすい温度域と重なる。そのため、従来Cu−Ti系の高強度銅合金において粒界反応相の形成を抑制することは難しかった。ところが、上述の前駆熱処理を経たCu−Ti系銅合金の場合、時効処理温度を低温側へシフトさせることができるとともに、粒界反応相の生成を抑制することができる。また、前駆熱処理で微細なα相粒子を多数生成させているので、時効処理時におけるα相の析出は主として既に存在する微細なα相粒子の表面で起こり、数が多いために、500nm以上の粒子径に成長する粒状析出物の割合は少ない。時効温度が低いので粒子の急激な成長も抑制される。このようにして、粒界反応相と粒状析出物の生成量を上述のように抑制した組織状態が得られるのである。時効時間は1〜10hの範囲で設定すればよい。時効処理中の表面酸化を極力抑制する場合には、水素、窒素またはアルゴン雰囲気を使うことができる。
〔仕上冷間圧延〕
時効処理後には、板厚調整や強度レベル調整などを目的として、必要に応じて仕上冷間圧延を行うことができる。仕上冷間圧延率は、例えば5〜15%の範囲で調整すればよい。
〔低温焼鈍〕
仕上冷間圧延後には、板材の残留応力の低減や曲げ加工性の向上、空孔やすべり面上の転位の低減による耐応力緩和特性向上を目的として、低温焼鈍を施すことができる。加熱温度150〜430℃、加熱時間5〜3600secの範囲で条件設定すればよい。仕上冷間圧延を省略した場合は、通常、この低温焼鈍も省略される。
表1に示す銅合金を溶製し、縦型半連続鋳造機を用いて鋳造した。得られた鋳片を表2に示す種々の条件で熱間圧延した。市販のソリュブルオイルを水に添加して潤滑液を作製した。潤滑液の水分含有量は加熱乾燥式水分計(エー・アンド・デイ社製ML−50)を用いて測定した。一部の実施例(No.6)では潤滑液として水を使用した。鋳片の加熱時間は4hとした。熱間圧延後の水冷は、得られたコイルを水槽に浸漬する方法で行った。このときの水冷開始温度から200℃までの平均冷却速度は50℃/sec以上であった。鋳片からのトータルの熱間圧延率は約90%である。熱間圧延後、表層の酸化層を機械研磨により板の表裏それぞれ約0.5mmを除去(面削)し、厚さ10mmの圧延板を得た。次いで、圧延率95〜98%で冷間圧延を行った後、表2に示す条件で溶体化処理を施した。溶体化処理後の冷却過程で後述の前駆熱処理を行った場合(No.5、No.8、No.12)を除き、水冷により溶体化処理後の冷却速度は550℃から300℃までの平均冷却速度を100℃/sec以上とした。
一部の比較例を除き、前駆熱処理を行った。前駆熱処理後には水冷を行い、550℃から300℃までの平均冷却速度を100℃/sec以上とした。次いで、一部の比較例を除き中間冷間圧延を施し、その後、時効処理を行って最終板厚0.20mmの供試材を得た。 た。前駆熱処理、中間冷間圧延、時効処理の各条件は表2中に示してある。
各供試材について、以下の項目を調査した。
〔平均結晶粒径〕
供試材の圧延方向に垂直に切断した断面を研磨したのちエッチングし、その面を光学顕微鏡で観察し、300μm×300μmの視野において100個以上の結晶粒の粒径をJIS H0501の切断法で測定した。
〔粒状析出物の個数密度、粒界セグメントの個数割合〕
供試材の圧延方向に垂直に切断した断面を電解研磨して、その面についてSEM観察を行い、上述の「粒状析出物の個数密度および粒界セグメントの個数割合の特定方法」に従って、直径500nm以上の粒状析出物の個数密度、および幅500nmを超える粒界反応相が存在する粒界セグメントの個数割合求めた。また、サンプルで最大の粒界反応相の幅が1.5μmを超えるものの有無を確認した。なお、電解研磨液は、体積比で、蒸留水:10、リン酸:5、エタノール:5、2−プロパノール:1の混合液とした。電解研磨はElectroMet4(BUEHLER社製、)を用い、φ10mmの領域に電圧15Vで20秒間電解研磨を行った。
〔導電率〕
JIS H0505に従って各供試材の導電率を測定した。
〔0.2%耐力〕
各供試材からLDの引張試験片(JIS 5号)を採取し、n=3でJIS Z2241の引張試験行い、n=3の平均値によって0.2%耐力を定めた。
〔曲げ加工性〕
供試材の板材から長手方向がLDの曲げ試験片およびTDの曲げ試験片(いずれも幅10mm)を採取し、JIS H3130の90°W曲げ試験を行った。試験後の試験片について曲げ加工部の表面および断面を光学顕微鏡にて100倍の倍率で観察することにより、割れが発生しない最小曲げ半径MBRを求め、これを供試材の板厚tで除することによりLD、TDそれぞれのMBR/t値を求めた。各供試材のLD、TDともn=3で実施し、n=3のうちの最も悪い結果を当該供試材の成績としてMBR/t値を表示した。
〔耐久回数〕
供試材をプレス加工して実際の通電部品に近い形状の試験片を作製して疲労試験に供した。その試験片の形状を図3に示す。この試験片は、板厚0.20mmの板からTDを長手方向とする幅1.4mmの材料を打抜き、これに180°U字曲げを含む曲げ加工を施したものに相当する。図3中の矢印で示す位置に、一定の押込み量にて繰り返し荷重Pを負荷した。押込み量は、初期荷重20Nを付与したときの変位量に設定した。この押込み量にて繰り返し荷重を付与し、1000回毎に荷重を測定し、初期荷重の50%以下となった回数を耐久回数とした。初期荷重の50%を基準とする理由は、SEMにて試験片表面を観察したとき、初期荷重の50%以下となった試験片にクラックが観測されるからである。試験数n=5とし、それらの中で最も悪い耐久回数を当該板材の成績値として採用した。この試験において耐久回数が10000回以上となるものは、従来一般的なCu−Ti系銅合金と比べ、電子機器に実装された通電部品としての繰り返しの抜き挿しやスイッチング動作について、耐久性が顕著に改善されていると判断できる。
〔応力緩和率〕
各供試材から長手方向がTDの曲げ試験片(幅10mm)を採取し、試験片の長手方向における中央部の表面応力が0.2%耐力の80%の大きさとなるようにアーチ曲げした状態で固定した。上記表面応力は次式により定まる。
表面応力(MPa)=6Etδ/L0 2
ただし、
E:弾性係数(MPa)
t:試料の厚さ(mm)
δ:試料のたわみ高さ(mm)
この状態の試験片を大気中200℃の温度で1000時間保持した後の曲げ癖から次式を用いて応力緩和率を算出した。
応力緩和率(%)=(L1−L2)/(L1−L0)×100
ただし、
0:治具の長さ、すなわち試験中に固定されている試料端間の水平距離(mm)
1:試験開始時の試料長さ(mm)
2:試験後の試料端間の水平距離(mm)
この応力緩和率が5%以下のものは、車載用コネクタとして高い耐久性を有すると評価される。
これらの結果を表3に示す。
表3からわかるように、本発明に従う銅合金板材はいずれも直径500nm以上の粒状析出物の個数密度が10.0×103個/mm2以下、かつ幅500nmを超える粒界反応相が存在する粒界セグメントの個数割合が5.0%以下であり、上記の疲労試験による耐久回数が10000回以上という、優れた耐久性を呈した。導電率、0.2%耐力、曲げ加工性、応力緩和率についても良好であった。
これに対し、比較例No.21は前駆熱処理を施さなかったので時効処理で多量の粒界反応相が生成し、耐久性(耐久回数)が低かった。No.22は熱間圧延で920℃以上での圧下を行っておらず、また固溶度線温度を表すTsより低温で熱間圧延最終パスを終えたことにより粗大な粒状析出物の個数密度が過大となり、耐久性が低かった。No.23は時効温度が低すぎ、またNo.26はTi含有量が少なすぎたので、これらはいずれもTiの変調構造による高強度化が不十分であり、強度不足に起因して耐久性が低かった。No.24は時効温度が高すぎたので粒界反応相の生成量が多く、耐久性が低かった。No.25は熱間圧延で920℃以上の温度域での圧延率が不足したので粗大な粒状析出物が多くなり、耐久性に劣った。No.27はTi含有量が多すぎたので熱間圧延で割れが生じ、その後の工程を中止した。No.28はFe含有量が多すぎ、No.30はCo含有量が多すぎ、No.32はNi含有量が多すぎたので、これらはいずれも粗大な粒状析出物が多くなり、耐久性が低かった。No.29は熱間圧延での鋳片加熱温度が高すぎたので局部的な溶融に起因して熱間圧延で割れが生じ、その後の工程を中止した。No.32は溶体化処理温度が低かったので粗大な粒状析出物が多くなり、耐久性が低かった。No.33は溶体化処理温度が高すぎたので結晶粒が粗大化し、その結果、幅500nmを超える粒界反応相が存在する粒界セグメントの個数割合が増大して耐久性の改善が不十分であった。No.34は熱間圧延の最終パス温度がTsより低かったので最終的に粗大な粒状析出物が多くなり、耐久性が低かった。No.35は前駆熱処理での昇温速度が遅いため、粒界反応相の生成量が多く、耐久性が低かった。No.36は熱間圧延時の潤滑液として潤滑成分(油分)の多いものを使用したため鋳造組織中の濃縮Tiの破壊、分断が不十分となり、最終的に粗大な粒状析出物が多くなって耐久性が低かった。
図4に、本発明例No.2と比較例No.22について、耐久回数と荷重低下率の関係を例示する。本発明に従えば耐久性が大幅に向上することがわかる。

Claims (8)

  1. 質量%で、Ti:2.0〜4.0%、Ni:0〜1.5%、Co:0〜1.0%、Fe:0〜0.5%、Sn:0〜1.2%、Zn:0〜2.0%、Mg:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Al:0〜1.0%、Si:0〜1.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Cr:0〜1.0%、Mn:0〜1.0%、V:0〜1.0%であり、前記元素のうちSn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、MnおよびVの合計含有量が3.0%以下であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板材であって、圧延方向に垂直な断面の金属組織において、直径500nm以上の粒状析出物の個数密度が10.0×103個/mm2以下であり、結晶粒界の交点に挟まれる粒界部分を「粒界セグメント」と呼ぶとき、幅500nmを超える粒界反応相が存在する粒界セグメントの個数割合が5.0%以下であり、板の圧延方向の0.2%耐力が800MPa以上である銅合金板材。
  2. 前記圧延方向に垂直な断面の金属組織において、平均結晶粒径が5〜25μmである請求項1に記載の銅合金板材。
  3. 圧延方向に垂直な断面の金属組織において、粒界反応相の最大幅が1.5μm以下である、請求項1または2に記載の銅合金板材。
  4. 導電率が12%IACS以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金板材。
  5. 板の圧延方向をLD、圧延方向と板厚方向に直角の方向をTDとするとき、JIS H3130に従う90°W曲げ試験において割れが発生しない最小曲げ半径MBRと板厚tとの比MBR/tの値がLD、TDとも1.5以下となる曲げ加工性を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金板材。
  6. 質量%で、Ti:2.0〜4.0%、Ni:0〜1.5%、Co:0〜1.0%、Fe:0〜0.5%、Sn:0〜1.2%、Zn:0〜2.0%、Mg:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Al:0〜1.0%、Si:0〜1.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Cr:0〜1.0%、Mn:0〜1.0%、V:0〜1.0%であり、前記元素のうちSn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、MnおよびVの合計含有量が3.0%以下であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板材を、熱間圧延、溶体化処理、前駆熱処理、時効処理を有する工程で製造するに際し、
    熱間圧延は、加熱温度を960℃以下とし、920℃以上で行う圧延パスで水分含有量97.0質量%以上の潤滑液を使用し、920℃以上での合計圧延率を60%以上とし、熱間圧延最終パス温度を下記(1)式のTs(℃)以上とし、Ts−100℃以上の温度から水冷を開始する条件で行い、
    溶体化処理は、750〜900℃で加熱保持したのち550℃から300℃までの平均冷却速度が100℃/sec以上となるように冷却する条件で行い、
    前駆熱処理は、300℃から550℃までの平均昇温速度が60℃/sec以上となるように昇温し、550〜730℃の温度範囲で10〜120sec保持したのち550℃から300℃までの平均冷却速度が100℃/sec以上となるように冷却する条件で行い、
    時効処理は、前駆処理後に圧延率3%以上の冷間圧延による加工歪を導入した材料に対して、300〜410℃に加熱保持する条件で行う、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の銅合金板材の製造方法。
    Ts=151.5×ln[Ti]+620.5 …(1)
    ここで、lnは自然対数、[Ti]は質量%で表される当該合金のTi含有量である。
  7. 質量%で、Ti:2.0〜4.0%、Ni:0〜1.5%、Co:0〜1.0%、Fe:0〜0.5%、Sn:0〜1.2%、Zn:0〜2.0%、Mg:0〜1.0%、Zr:0〜1.0%、Al:0〜1.0%、Si:0〜1.0%、P:0〜0.1%、B:0〜0.05%、Cr:0〜1.0%、Mn:0〜1.0%、V:0〜1.0%であり、前記元素のうちSn、Zn、Mg、Zr、Al、Si、P、B、Cr、MnおよびVの合計含有量が3.0%以下であり、残部Cuおよび不可避的不純物からなる組成を有する銅合金板材を、熱間圧延、溶体化処理、前駆熱処理、時効処理を有する工程で製造するに際し、
    熱間圧延は、加熱温度を960℃以下とし、920℃以上で行う圧延パスで水分含有量97.0質量%以上の潤滑液を使用し、920℃以上での合計圧延率を60%以上とし、熱間圧延最終パス温度を下記(1)式のTs(℃)以上とし、Ts−100℃以上の温度から水冷を開始する条件で行い、
    溶体化処理は、750〜900℃で加熱保持する条件で行い、
    前駆熱処理は、溶体化処理後の冷却過程において550〜730℃の温度範囲で10〜120sec保持したのち550℃から300℃までの平均冷却速度が100℃/sec以上となるように冷却する条件で行い、
    時効処理は、前駆処理後に圧延率3%以上の冷間圧延による加工歪を導入した材料に対して、300〜410℃に加熱保持する条件で行う、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の銅合金板材の製造方法。
    Ts=151.5×ln[Ti]+620.5 …(1)
    ここで、lnは自然対数、[Ti]は質量%で表される当該合金のTi含有量である。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の銅合金板材を材料に用いた通電部品。
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