JP2006161148A - 銅合金 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 Ni及びSiからなる析出物Xと、NiとSiの一方若しくは両方を含有しない析出物Yを有し、前記析出物Xの粒径が0.001〜0.1μmで、前記析出物Yの粒径が0.01〜1μmである銅合金。
【選択図】 なし
Description
近年、電気・電子機器の小型化、軽量化、さらにこれに伴う高密度実装化に対する要求が高まり、これらに適用される銅系材料にも種々の特性が求められている。主な特性として、機械的性質、導電性、耐応力緩和特性、曲げ加工性などが挙げられる。その中でも近年の部品小型化の要求を満足するため、引張強度および、曲げ加工性の向上が強く要求されている。
その中で、Cu中にNiとSiを加えてそのNiとSiから構成される析出物を形成させて強化させたコルソン合金と呼ばれる合金は、多くの析出型合金の中ではその強化する能力が非常に高く、いくつかの市販合金(例えば、CDA(Copper Development Association)登録合金であるCDA70250)でも用いられている方法である。この一般に析出強化される合金が端子・コネクタ材に用いられる場合、その製造工程に、次の2つの重要な熱処理を取り入れて製造されている。まず、溶体化処理と呼ばれる融点に近い高温(通常は700℃以上)にて鋳造や熱間圧延で析出したNiとSiをCu母相に固溶させる目的の熱処理と、溶体化処理温度より低い温度で熱処理するいわゆる時効処理で、高温で固溶したNiとSiを析出物として析出させる目的である。これは、高い温度と低い温度でNiとSiがCuに固溶する濃度の差を使って強化する方法であり、析出型合金の製造方法においては周知の技術である。
しかし、この析出型合金の問題点は溶体化処理時に結晶粒径が粗大化し、時効処理の時には一般的に再結晶を伴わないため、溶体化処理時の結晶粒径がそのまま製品の結晶粒径になることである。添加されるNiやSi量が多くなれば、それだけ高温での溶体化処理が必要なため結晶粒径が短時間熱処理で粗大化する傾向になる。結晶粒が粗大化することにより曲げ加工性が著しく低下する問題が発生する。
また、銅合金の曲げ加工性を向上させる方法として、Ni−Si析出物を利用せず、Mn,Ni,Pを添加し、相互に反応させて化合物を析出させる方法がある(例えば、特許文献2参照)。
しかし、この合金では引張強度がせいぜい640MPa程度であり、近年の部品小型化による高強度への要求を満たすには充分でなくなっている。また、この銅合金にSiを添加しても、Ni−P析出物が減少して強度と導電率が共に低下してしまう。またSiおよびPが過剰となり熱間加工時に割れが生じる問題が発生する。
引張強度が高くなる程曲げ加工性を維持することは困難であり、引張強度、曲げ加工性、導電性を高度に併立した銅合金が求められていた。
すなわち本発明は、
(1)Ni及びSiからなる析出物Xと、NiとSiの一方若しくは両方を含有しない析出物Yを有し、前記析出物Xの粒径が0.001〜0.1μmで、前記析出物Yの粒径が0.01〜1μmであることを特徴とする銅合金、
(2)前記析出物Yの融点が溶体化処理温度よりも高いことを特徴とする(1)記載の銅合金、
(3)Niを2〜5質量%、Siを0.3〜1.5質量%、Bを0.005〜0.1質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなり、前記析出物Xの1mm2あたりの数が前記析出物Yの1mm2あたりの数の20〜2000倍であることを特徴とする(1)又は(2)記載の銅合金、
(4)Niを2〜5質量%、Siを0.3〜1.5質量%、Mnを0.01〜0.5質量%、Pを0.01〜0.5質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなり、前記析出物Xの1mm2あたりの数が前記析出物Yの1mm2あたりの数の20〜2000倍であることを特徴とする(1)又は(2)記載の銅合金、
(5)Niを2〜5質量%、Siを0.3〜1.5質量%、Bを0.005〜0.1質量%、Mnを0.01〜0.5質量%、Pを0.01〜0.5質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなり、前記析出物Xの1mm2あたりの数が前記析出物Yの1mm2あたりの数の20〜2000倍であることを特徴とする(1)又は(2)記載の銅合金、
(6)前記析出物Xの数が1mm2あたり108〜1012個で、かつ、前記析出物Yの数が1mm2あたり104〜108個であることを特徴とする(1)又は(2)記載の銅合金、
(7)銅合金がAl、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、Vの少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜0.5質量%含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の銅合金、
(8)前記析出物YがAl−As、Al−Hf、Al−Zr、Al−Cr、Ti−C、Cu−Ti、Cu−Zr、Cr−Si、Fe−P、Fe−Si、Fe−Zr、In−Ni、Mg−Sb、Mn−Si、Ni−Sb、Si−Ta、V−Zrの少なくとも1つからなることを特徴とする(6)又は(7)記載の銅合金、
(9)前記銅合金組成が更に、Snを0.1〜1.0質量%、Znを0.1〜1.0質量%、Mgを0.05〜0.5質量%の少なくとも1種以上を含有することを特徴とする(3)〜(8)のいずれか1項記載の銅合金、及び
(10)電気・電子機器用であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項記載の銅合金
を提供するものである。
本発明は、合金の結晶粒径を制御するものである。具体的には粒径を制御する方法として、2つの観点から実験を進めていき本発明の合金組織及び組成に到達した。
1つ目は溶体化処理時に結晶粒径を粗大化させない元素の探索を行ったことである。NiとBからなる析出物は高温の溶体化処理の温度でもCu母相に固溶されず、Cu母相の結晶粒及び粒内に存在して、母相の結晶粒の成長を抑制する作用効果を発揮することを見出した。この作用効果は、他に実験を行ったAl−As、Al−Hf、Al−Zr、Al−Cr、Ti−C、Cu−Ti、Cu−Zr、Cr−Si、Fe−P、Fe−Si、Fe−Zr、In−Ni、Mg−Sb、Mn−Si、Ni−Sb、Si−Ta、V−Zrも効果が見られた。
上記の析出物は、溶体化処理時においてもCu母相に固溶しないことが重要である。すなわち、溶体化処理温度よりも融点が高い析出物であることが求められる。溶体化処理温度よりも融点が高い析出物であれば、前記析出物群に限定されるわけでなく、前記析出物群以外の場合も本発明に包含される。そして、本発明においては、溶体化処理温度よりも融点が高い析出物であれば、溶体化処理時における結晶粒粗大化を防止し、あるいは再結晶の核生成サイトとなって多くの結晶粒を形成させる(核生成する)効果を有する。
本発明の銅合金は安価で、曲げ加工性に優れ、他の特性でも良好な高性能銅合金であり、電気・電子機器用、例えば、車載用の端子・コネクタあるいはリレー、スイッチ等の電子部品にも好適である。
NiとSiは、NiとSiの添加比を制御することによりNi−Si析出物を形成させて析出強化を行い銅合金の強度を向上させるために添加する元素である。Niの含有量は2〜5質量%、好ましくは2.1〜4.6質量%である。引張強度800MPa以上でかつ曲げ加工性はR/t<1.5、あるいは引張強度900MPa以上でかつ曲げ加工性がR/t<2を満たすためには、3.5〜4.6質量%であることがさらに好ましい。Ni量が少ないとその析出硬化量が小さく強度が不足し、多すぎれば導電率が著しく低下するためである。
また、Siは質量%で計算するときはNi添加量の約1/4の時に最も強化量が大きくなることが知られており、その量を規定した。また、Siの添加量が1.5質量%を越えると鋳塊の熱間加工時に割れが生じやすくなるため、それも考慮してNi添加量の上限を決めた。Siの添加量は0.3〜1.5質量%、好ましくは0.5〜1.1質量%、より好ましくは0.8〜1.1質量%である。
MnとPの析出物は溶体化処理時の結晶粒の核生成サイトを形成する効果があり、析出強化は担わない。この特性が確認されたのが、Mn、Pを共に0.01質量%以上0.5質量%以下、好ましくは0.02〜0.3質量%添加した材料であり、下限未満では効果が得られない。また、MnとPを上限以上添加すると熱間加工時に割れを生じて薄板への加工ができないという問題が発生する。
その他にも溶体化処理時において、結晶粒径の粗大化を抑制し、あるいは、結晶粒の核生成サイトを形成する効果がある析出物は、Al−As、Al−Hf、Al−Zr、Al−Cr、Ti−C、Cu−Ti、Cu−Zr、Cr−Si、Fe−P、Fe−Si、Fe−Zr、In−Ni、Mg−Sb、Mn−Si、Ni−Sb、Si−Ta、V−Zrがある。前記効果を発揮するためにAl、Zr、Cr、C、Ti、Fe、In、As、Hf、Sb、Ta、Vの少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜0.5質量%、好ましくは0.01〜0.4質量%含むことが好ましい。添加量が多すぎると溶解鋳造時に粗大な晶出物を形成して鋳塊品質に問題を生じ、少ないと添加した効果がない。
Znを0.1〜1.0質量%とした理由は、Znは母相に固溶する元素であるが、Znを添加することによりハンダ脆化が著しく改善するからである。本合金の主な用途は電気・電子機器及び車載用端子・コネクタあるいはリレー、スイッチ等の電子部品端子材であり、これらの大部分はハンダにより接合されるため重要な要素技術の1つである。
また、Znの添加により合金の融点が低下することによりNiとBからなる析出物ならびにMnとPからなる析出物の形成状態を制御することができる。前記析出物は両者とも凝固時に生成するために、その合金の凝固温度が高いとその粒径が大きくなり、結晶粒径の粗大化の抑制や結晶粒の核生成サイトを形成する効果の寄与が小さくなる。Znの下限を0.1質量%としたのは、ハンダ脆化の改善が見られる最低量であり、上限を1.0質量%としたのはそれ以上添加すると導電率が悪くなるためである。
Snの下限を0.1質量%としたのは、耐クリープ特性の改善が見られる最低量であり、上限を1質量%としたのはそれ以上添加すると導電率が悪くなるためである。
また、Mgの下限を0.05質量%としたのは、0.05質量%未満では耐クリープ特性について効果が得られず、0.5質量%以上はその効果が飽和するだけでなく、熱間加工性が低下しまうためである。
これらSnとMgは、NiとSiからなる析出物の形成を促進させる作用がある。これらの元素は微細な前記析出物の核生成サイトとして寄与するために好ましい量を添加することが重要である。
NiとSiからなる金属間化合物である析出物Xの粒径は0.001〜0.1μm、好ましくは0.003〜0.05μm、更に好ましくは0.005〜0.02μmである。その理由は、小さすぎるとその粒径では強度向上が見られず、大きすぎると一般的に言われる過時効状態であり強度増加が見られないだけでなく、曲げ加工性が低下してしまう。
NiとSiからなる金属間化合物の析出物以外の析出物を本明細書(特許請求の範囲も含む)では、析出物Yという。析出物Yは、Ni−Si析出物Xとの相互作用により、結晶粒を微細化する効果がある。この効果は析出物Xが存在していることにより顕著となる。析出物Yの粒径は0.01〜1μmが好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.5μm、最も好ましくは0.05〜0.13μmである。その理由は、小さすぎると粒成長抑制効果および核生成サイトの増加の効果が見られなかったためであり、大きすぎると曲げ加工性が低下するためである。
析出物YがNi−Si以外のAl−As、Al−Hf、Al−Zr、Al−Cr、Ti−C、Cu−Ti、Cu−Zr、Cr−Si、Fe−P、Fe−Si、Fe−Zr、In−Ni、Mg−Sb、Mn−Si、Ni−Sb、Si−Ta、V−Zrのいずれかの金属間化合物の場合、析出物Xの数が1mm2あたり108〜1012個で、かつ、析出物Yの数が1mm2あたり104〜108個であることが好ましい。その理由は、曲げ加工性が特に優れる範囲であり、前記析出物の数が前記の範囲よりも少ないと所定の強度が得られず、多いと曲げ加工性が低下するためである。さらに好ましくは、析出物Xの数が1mm2あたり5×109〜6×1011個で、かつ、析出物Yの数が1mm2あたり104〜4×107個である。
上記X、Yの効果はNi量、Si量が多くなるほど顕著となる。前記XとYの限定により、これまで達成できなかった、引張強度800MPa以上でかつ曲げ加工性がR/t<1.5、あるいは900MPa以上でかつR/t<2を実現するに至った。
本明細書(特許請求の範囲も含む)でいう析出物とは、例えば、金属間化合物、炭化物、酸化物、硫化物、窒化物、化合物(固溶体)、及び元素状金属を包含する。
本発明の合金の製造方法は、例えば、前記した所望の成分組成を持つ銅合金を溶解し、鋳造し、鋳塊を熱間圧延する際、鋳塊を昇温速度20〜200℃/時間で加熱し、850〜1050℃×0.5〜5時間の間に熱間圧延し、熱間圧延の終了温度は300〜700℃として急冷する。これにより析出物X及びYが生成する。熱間圧延後は、例えば、溶体化熱処理、焼鈍、冷間圧延を組み合わせ、所望の板厚にする。
前記溶体化熱処理の目的は鋳造や熱間加工時に析出したNiとSiを再固溶させると同時に再結晶させる熱処理である。前記溶体化熱処理の温度は添加したNi量によって調整を行い、例えば、Ni量が2.0〜2.5質量%未満は650℃、2.5〜3.0質量%未満は800℃、3.0〜3.5質量%未満は850℃、3.5〜4.0質量%未満は900℃、4.0〜4.5質量%未満は950℃、4.5〜5.0質量%は980℃とする。
これは、例えば、Ni=3.0質量%材を850℃で熱処理すれば十分に析出したNiとSiが再固溶されて、結晶粒が10μm以下を得ることができるが、この温度でNi量が低い合金を処理した場合は結晶粒が粒成長を起こして粗大化して10μm以下にはならない。また、逆に、Ni量が多くなると理想的な溶体化状態を得ることはできなくなり、その後の時効熱処理で強度を向上させることができなくなる。
Niを4.2質量%、Siを1.0質量%、さらにCrを添加し、残部がCuと不可避不純物から成る合金を高周波溶解炉により溶解した。Crの添加量は、本発明例1が0.05質量%、本発明例2が0.15質量%、本発明例3が0.25質量%、本発明例4が0.5質量%、本発明例5が0.7質量%、本発明例6が0.9質量%、比較例1が0.005質量%、比較例2が0.2質量%、比較例3が0.5質量%、比較例4が0.8質量%とした。これを10〜30℃/秒の冷却速度で鋳造して厚さ30mm、幅100mm、長さ150mmの鋳塊を得た。これを900℃×1hrの保持後、熱間圧延により板厚t=12mmの熱延板を作製し、その両面を各1mm面削してt=10mmとし、次いで冷間圧延によりt=0.167mmに仕上げた。その板材を950℃×20secで溶体化処理を行った。
溶体化処理の後は直ちに水焼入を行った。次いで、全ての合金は時効熱処理を450〜500℃×2hrで実施した後、加工率10%で冷間圧延を行ってt=0.15mmの供試材とした。
a.導電率:
20℃(±0.5℃)に保たれた恒温漕中で四端子法により比抵抗を計測して導電率を算出した。なお、端子間距離は100mmとした。
b.引張強度:
圧延平行方向から切り出したJIS Z2201−13B号の試験片をJIS Z2241に準じて3本測定しその平均値を示した。
c.曲げ加工性:
圧延方向に平行に幅10mm、長さ25mmに切出し、これに曲げの軸が圧延方向に直角に曲げ半径R=0、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6(mm)で90°W曲げし、曲げ部における割れの有無を50倍の光学顕微鏡で目視観察および走査型電子顕微鏡によりその曲げ加工部位を観察し割れの有無を調査した。なお、評価結果はR/t(Rは曲げ半径、tは板厚)で表記し、割れが発生する限界のRを採用してR/tを算出した。仮に、R=0.15で割れが発生せず、R=0.1で割れが発生した場合は、板厚(t)=0.15mmなのでR/t=0.15/0.15=1と表記した。
d.析出物の粒径と分布密度:
供試材を直径3mmへ打ち抜き、ツインジェット研磨法を用いて薄膜研磨を行った後、加速電圧300kVの透過型電子顕微鏡で5000倍と100000倍の写真を任意で3ヶ所撮影して、その写真上で析出物の粒径と密度を測定した。析出物の粒径と密度を測定するとき、Ni−Siからなる析出物Xの場合は電子線の入射方位を[001]とし、微細なので高倍の100000倍の写真でn=100(nは観察の視野数)で、その個数を測定し、析出物Yは低倍の5000倍の写真でn=10で、その個数を測定することで、個数の局所的な偏りを排除するように測定した。その個数を単位面積当たり(/mm2)へ演算した。
表2に示す組成で、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例1と同様の調査を行った。製造方法、測定方法についても実施例1と同様である。
表2で明らかなように、本発明は強度、曲げ加工性とも優れた特性を有する。しかし比較例5はNi、Si量が本発明で規定する範囲より少ないために要求の引張特性を満足できない。比較例6はNi量が高濃度であるため加工途中でワレを生じて評価できる材料を作製できなかった。比較例7、8はB量が本発明で規定する範囲外で、また、XとYの個数の比も外れているので要求強度と曲げ加工性を両立できなかった。
表3に示す組成で、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例1と同様の調査を行った。製造方法、測定方法についても実施例1と同様である。
表3で明らかなように、本発明は強度、曲げ加工性とも優れた特性を有する。しかし比較例9はNi、Si量が本発明で規定する範囲より少ないために要求の引張特性が劣った。比較例10はNi量が高濃度であるため冷間加工途中でワレを生じて評価できる材料を作製できなかった。比較例11〜14はMn、P量が本発明で規定する範囲外で、また、XとYの個数の比も外れているのでR/tが2以上となり曲げ加工性が劣った。
Niを4.2質量%、Siを1.0質量%、さらに表4に示す元素を含み、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例1と同様の調査を行った。製造方法、測定方法についても実施例1と同様である。
表4で明らかなように、本発明は引張強度の900MPa以上でかつR/t<2を有する。しかし比較例15はB量とXとYの個数の比が、比較例16はMn量とYの粒径が、比較例17はP量とYの粒径が、比較例18はMn量とXとYの個数の比が、比較例19はP量とXとYの個数の比がそれぞれ本発明で規定する範囲外であるので、R/tが2以上となり曲げ加工性が劣った。
表5に示すNiとSiとSbを含み、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例1と同様の調査を行うと共に結晶粒径の測定を行った。製造方法、測定方法についても実施例1と同様である。なお、Sbは比較例28は0.01質量%、比較例29は1.0質量%、比較例30は0.02質量%、比較例31は1.2質量%、それ以外は0.1質量%である。
なお、結晶粒径は、JIS H 0501(切断法)に基づき測定した。また、曲げ加工性の評価は、先に記載した圧延方向に幅10mm、長さ25mmに切出した供試材に、曲げの軸が圧延方向に直角なものをGWとして、さらに供試材の切出しが圧延方向に幅25mm、長さ10mmで、曲げの軸が圧延方向に平行でGWと同様に曲げ、曲げ部を同様に観察調査したものをBWとして示した。
表5で明らかなように、本発明例は優れた特性を有している。しかし比較例20はNiが少ないため析出物Xの析出密度が少なく、引張特性が劣った。比較例21はNi量が多かったため、最終板厚まで加工は出来たが加工割れが激しく、組織の調査はできたが特性調査が出来なかった。比較例22はSi量が少ないため、析出物Xの析出密度が少なくて引張特性が劣った。比較例23はSi量が多かったため、最終板厚まで加工できたが加工割れが激しく、組織の調査はできたが特性調査が出来なかった。比較例24は析出物Xのサイズが小さく、比較例25は析出物Xのサイズが大きく、また、比較例26は析出物Xの析出密度が少ないためにいずれも引張特性が劣った。比較例27はSi量が多く析出物Xの析出密度が高いために脆化割れしてしまい、最終板厚まで加工は出来たが加工割れが激しく、組織の調査はできたが特性調査が出来なかった。比較例28は、析出物Yのサイズが小さく、比較例29は析出物Yのサイズが大きく、また、比較例30は析出物Yの析出密度が少ないためにいずれも結晶粒径が粗大化し、曲げ加工性が劣った。比較例31は析出物Yの析出密度が高いために脆化割れしてしまい、最終板厚まで加工は出来たが加工割れが激しく、組織の調査はできたが特性調査が出来なかった。
表6に示すNiとSiとCrを含み、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例5と同様の調査を行った。製造方法、測定方法についても実施例5と同様である。なお、Crは比較例40は0.005質量%、比較例41は0.8質量%、比較例42は0.01質量%、比較例43は1.0質量%、それ以外は0.05質量%である。
表6で明らかなように、本発明例は優れた特性を有している。しかし比較例32はNiが少ないため析出物Xの析出密度が少なく、引張特性が劣った。比較例33はNi量、Si量が共に多かったため、最終板厚まで加工は出来たが加工割れが激しく、組織の調査はできたが特性調査が出来なかった。比較例34はSi量が少なく、析出物Xの析出密度が少なく、引張特性が劣った。比較例35はSi量が多かったため、最終板厚まで加工できたが加工割れが激しく、組織の調査はできたが特性調査が出来なかった。比較例36は析出物Xのサイズが小さく、比較例37は析出物Xのサイズが大きく、また、比較例38は析出物Xの析出密度が少ないためにいずれも引張特性が劣った。比較例39は析出物Xの析出密度が高いために脆化割れしてしまい、最終板厚まで加工は出来たが加工割れが激しく、組織の調査はできたが特性調査が出来なかった。比較例40は析出物Yのサイズが小さく、比較例41は析出物Yのサイズが大きく、また、比較例42は析出物Yの析出密度が少ないためにいずれも結晶粒径が粗大化し、曲げ加工性が劣った。比較例43は析出物Yの析出密度が高いために脆化割れしてしまい、最終板厚まで加工は出来たが加工割れが激しく、組織の調査はできたが特性調査が出来なかった。
本発明例についてはNiを4.0質量%、Siを1.0質量%とし、さらに表7に示す元素を含み、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例5と同様の調査を行った。製造方法、測定方法についても実施例5と同様である。なお、比較例44はNiを3.1質量%、Siを0.7質量%、比較例45はNiを3.9質量%、Siを0.9質量%、比較例46はNiを4.9質量%、Siを1.2質量%、それぞれ残部がCuと不可避不純物から成る銅合金とした。
表7で明らかなように、本発明は優れた特性を有している。しかし比較例44、45、46では析出物Yが存在しないため銅合金の結晶粒径がきわめて大きく、曲げ加工性が劣った。
Ni、Si、Sn、Zn、Mg、さらに表8に示す元素を含み、残部がCuと不可避不純物から成る銅合金について実施例5と同様の調査を行った。製造方法、測定方法についても実施例5と同様である。
表8で明らかなように、本発明は優れた特性を有している。しかし、比較例47、48、49、50は析出物Yが存在しないため、銅合金の結晶粒径がきわめて大きく、曲げ加工性が劣った。
Claims (10)
- Ni及びSiからなる析出物Xと、NiとSiの一方若しくは両方を含有しない析出物Yを有し、前記析出物Xの粒径が0.001〜0.1μmで、前記析出物Yの粒径が0.01〜1μmであることを特徴とする銅合金。
- 前記析出物Yの融点が溶体化処理温度よりも高いことを特徴とする請求項1記載の銅合金。
- Niを2〜5質量%、Siを0.3〜1.5質量%、Bを0.005〜0.1質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなり、前記析出物Xの1mm2あたりの数が前記析出物Yの1mm2あたりの数の20〜2000倍であることを特徴とする請求項1又は2記載の銅合金。
- Niを2〜5質量%、Siを0.3〜1.5質量%、Mnを0.01〜0.5質量%、Pを0.01〜0.5質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなり、前記析出物Xの1mm2あたりの数が前記析出物Yの1mm2あたりの数の20〜2000倍であることを特徴とする請求項1又は2記載の銅合金。
- Niを2〜5質量%、Siを0.3〜1.5質量%、Bを0.005〜0.1質量%、Mnを0.01〜0.5質量%、Pを0.01〜0.5質量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなり、前記析出物Xの1mm2あたりの数が前記析出物Yの1mm2あたりの数の20〜2000倍であることを特徴とする請求項1又は2記載の銅合金。
- 前記析出物Xの数が1mm2あたり108〜1012個で、かつ、前記析出物Yの数が1mm2あたり104〜108個であることを特徴とする請求項1又は2記載の銅合金。
- 銅合金がAl、As、Hf、Zr、Cr、Ti、C、Fe、P、In、Sb、Mn、Ta、Vの少なくとも1つ以上をそれぞれ0.005〜0.5質量%含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の銅合金。
- 前記析出物YがAl−As、Al−Hf、Al−Zr、Al−Cr、Ti−C、Cu−Ti、Cu−Zr、Cr−Si、Fe−P、Fe−Si、Fe−Zr、In−Ni、Mg−Sb、Mn−Si、Ni−Sb、Si−Ta、V−Zrの少なくとも1つからなることを特徴とする請求項6又は7記載の銅合金。
- 前記銅合金組成が更に、Snを0.1〜1.0質量%、Znを0.1〜1.0質量%、Mgを0.05〜0.5質量%の少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の銅合金。
- 電気・電子機器用であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の銅合金。
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