JP6140032B2 - 銅合金板材およびその製造方法並びに通電部品 - Google Patents

銅合金板材およびその製造方法並びに通電部品 Download PDF

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Description

本発明は、曲げ加工性と耐応力緩和特性を改善したCu−Fe−P−Mg系銅合金板材であって、特に、音叉端子など、圧延方向と板厚方向の両方に対して垂直な方向(TD)に応力が付与された状態で使用される部品にも好適な高強度銅合金の板材に関する。また、その銅合金板材を加工してなる、音叉端子などの通電部品に関する。
Cu−Fe−P−Mg系銅合金は、導電性の良好な高強度部材を得ることが可能な合金であり、通電部品の用途に使用されている。この種の銅合金を用いて、強度、導電性、プレス加工性、曲げ加工性、あるいは耐応力緩和特性など、目的に応じた特性の改善が試みられている(特許文献1〜5)。
特開昭61−67738号公報 特開平10−265873号公報 特開2006−200036号公報 特開2007−291518号公報 米国特許第6093265号
コネクタなどの通電部品に使用する銅合金板材としては、曲げ加工性に優れること、および耐応力緩和特性に優れることが重要である。このうち、耐応力緩和特性については、従来、素材である板材の板厚方向に負荷応力(たわみ変位)を付与する方法で評価されている。しかしながら、音叉端子などの部品では、素材の板厚方向に対して垂直な方向、すなわち素材の板面に平行な方向の変位を受けた状態で使用されることとなる。板材において、圧延方向(LD)や、圧延方向と板厚方向の両方に対して垂直な方向(TD)は、いずれも「板厚方向に対して垂直な方向」に該当する。音叉端子の場合、素材である板材からの採取方向がどのようであっても、部品内には、付与されるたわみ変位の方向がLDとなる箇所とTDとなる箇所が生じる。
発明者らの検討によれば、付与されるたわみ変位の方向(負荷応力の方向)が、(i)板厚方向である場合、(ii)LDである場合、(iii)TDである場合、の3通りについて、同一の銅合金板材の耐応力緩和特性を比較した場合、(iii)のTDである場合の応力緩和率が最も悪い結果となりやすいことがわかった。したがって、音叉端子など、「板厚方向に対して垂直な方向」に変位を受けた状態で使用される部品の用途を考慮したとき、たわみ変位の方向がTDである場合の耐応力緩和特性を改善することが重要である。しかしながら、このような特性を改善した銅合金板材は知られていない。
本発明は、導電性の良好な高強度Cu−Fe−P−Mg系銅合金板材において、特に、曲げ加工性と、たわみ変位の方向がTDである場合の耐応力緩和特性を同時に改善することを目的とする。
発明者らの詳細な研究によれば、Cu−Fe−P−Mg系銅合金板材において、マトリクス中の固溶Mgと微細なFe−P系化合物が、たわみ変位の方向がTDである場合の耐応力緩和特性を改善するうえで極めて有効に作用することがわかった。また、特に粒子径100nm以上のMg−P系化合物は、曲げ加工性を低下させる要因となるも明らかとなった。そして、粒子径100nm以上のMg−P系化合物の生成を抑制し、かつ固溶Mg量を十分に確保するためには、微細なFe−P系化合物を600〜850℃の高温域で優先的に生成させてMgと結合するPを減少させたうえで、400〜590℃の低温域でさらにFe−P系化合物とMg−P系化合物を微細析出させる手法が有効であることがわかった。さらに、Mgについては、トータルMg含有量の50%以上のMgを固溶Mgとして含有していることが、曲げ加工性とたわみ変位の方向がTDである場合の耐応力緩和特性を改善するうえで極めて有効であるとのデータが得られた。本発明はこのような知見に基づいて完成したものである。
すなわち、上記目的は、質量%で、Fe:0.05〜2.50%、Mg:0.03〜1.00%、P:0.01〜0.20%、Sn:0〜0.50%、Ni:0〜0.30%、Zn:0〜0.30%、Si:0〜0.10%、Co:0〜0.10%、Cr:0〜0.10%、B:0〜0.10%、Zr:0〜0.10%、Ti:0〜0.10%、Mn:0〜0.10%、V:0〜0.10%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式を満たす化学組成を有し、倍率10万倍のTEM観察でのEDX分析により求まるCuマトリクス部分の平均Mg濃度(質量%)を固溶Mg量と呼ぶとき、下記(2)式により定義されるMg固溶率が50%以上であり、粒子径50nm以上のFe−P系化合物の存在密度が10.00個/10μm2以下であり、粒子径100nm以上のMg−P系化合物の存在密度が10.00個/10μm2以下である銅合金板材によって達成される。
Mg−1.18(P−Fe/3.6)≧0.03 …(1)
Mg固溶率(%)=固溶Mg量(質量%)/トータルMg含有量(質量%)×100 …(2)
ただし、(1)式の元素記号Mg、P、Feの箇所にはそれぞれの元素の含有量を質量%で表した値が代入される。
Fe−P系化合物およびMg−P系化合物の粒子径は、TEMにより観測される粒子の長径を意味する。
上記銅合金板材は、例えば、導電率が65%IACS以上であり、圧延方向をLD、圧延方向と板厚方向の両方に対して垂直な方向をTDと呼ぶとき、JIS Z2241に従うLDの0.2%耐力が450N/mm2以上であり、JIS Z3110に従うW曲げ試験において曲げ軸をLD、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを0.5とする条件にて割れが観測されない曲げ加工性を有し、片持ち梁方式の応力緩和試験において長手方向がLDに一致し、TDの幅が0.5mmである試験片を用い、たわみ変位の付与方向をTDとする方法でLDの0.2%耐力の80%の負荷応力を加え、150℃で1000時間保持した場合の応力緩和率が35%以下である特性を有するものである。本発明の銅合金板材の板厚は例えば0.1〜2.0mmの範囲とすることが好ましく、0.4〜1.5mmの範囲が一層好ましい。
上記銅合金板材の製造方法として、上記化学組成の銅合金の溶融物をモールドで凝固させ、凝固後の冷却過程における700〜300℃の平均冷却速度を30℃/min以上として鋳片を製造する鋳造工程、
得られた鋳片を850〜950℃の範囲に加熱保持する鋳片加熱工程、
前記加熱後の鋳片を最終パス温度が400〜700℃となるように熱間圧延した後、400〜300℃の平均冷却速度が5℃/sec以上となるように急冷して熱延板とする熱間圧延工程、
前記熱延板を圧延率30%以上で圧延する冷間圧延工程、
600〜850℃の範囲にある保持温度T℃まで、300℃からT℃までの平均昇温速度が5℃/sec以上となるように昇温し、T℃で5〜300sec保持し、T℃から300℃までの平均冷却速度が5℃/sec以上となるように冷却する第1中間焼鈍工程、
400〜600℃の範囲で0.5h以上保持したのち、その保持温度から300℃までの平均冷却速度が20〜200℃/hとなるように冷却する第2中間焼鈍工程、
圧延率5〜95%で圧延する仕上冷間圧延工程
200〜400℃で加熱する低温焼鈍工程、
を有する製造方法が提供される。
また本発明では、上記銅合金板材から加工された部品であって、前記銅合金板材の圧延方向と板厚方向の両方に対して垂直な方向(TD)に由来する部品内の方向に負荷応力が付与された状態で使用される通電部品が提供される。
本発明によれば、導電性、強度、曲げ加工性、耐応力緩和特性を高いレベルで兼ね備えた銅合金板材が提供される。特に、圧延方向と板厚方向の両方に対して垂直な方向(TD)に負荷応力が付与された状態で使用される通電部品において、高い耐久性を実現することができる。
《化学組成》
以下、合金元素の化学組成に関する「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
Feは、Pとの化合物を形成しマトリクス中へ微細析出することにより、強度向上および耐応力緩和特性の向上に寄与する元素である。これらの効果を十分に発揮させるために0.05%以上のFe含有量を確保する。ただし過剰のFe含有は導電率の低下を招く要因となるので、2.50%以下の範囲に制限する。1.00%以下であることがより好ましく、0.50%以下であることがさらに好ましい。
Pは、一般的に銅合金の脱酸剤として寄与するが、本発明ではFe−P系化合物およびMg−P系化合物の微細析出によって強度および耐応力緩和特性の向上をもたらす。これらの効果を十分に発揮させるために0.01%以上のP含有量を確保する。0.02%以上とすることがより好ましい。ただし、P含有量が多くなると熱間割れが生じやすくなるので、P含有量は0.20%以下の範囲とする。0.17%以下であることがより好ましく、0.15%以下であることがさらに好ましい。
Mgは、Cuマトリクスに固溶することにより耐応力緩和特性の向上に寄与する。また、微細なMg−P系化合物を形成することにより、強度および耐応力緩和特性の向上に寄与する。特に、付与されるたわみ変位の方向がTDである場合の耐応力緩和特性(以下、これを「たわみ方向がTDの耐応力緩和特性」という)に関しては、微細なFe−P系化合物の寄与に加えて、固溶Mgの寄与と、微細なMg−P系化合物の寄与が必要となる。そのためには、Mg含有量を0.03%以上とする必要がある。ただし、多量のMg添加は、熱間割れを招くなどトラブルの要因となる。種々検討の結果、Mg含有量は1.00%以下に制限される。0.50%以下であることがより好ましく、0.20%以下であることがさらに好ましい。
さらに、FeおよびPの含有量との関係において下記(1)式を満たすようにMgを含有させる。
Mg−1.18(P−Fe/3.6)≧0.03 …(1)
ここで、(1)式の元素記号Mg、P、Feの箇所にはそれぞれの元素の含有量を質量%で表した値が代入される。そのMg含有量は、後述(2)式のトータルMg含有量と同じものである。(1)式左辺は、化合物を形成しないフリーのMg存在量(質量%)を示す指標である。本発明では、少なくともこの指標によって表されるフリーのMg存在量が0.03%以上となるようMg含有量を確保する必要がある。(1)式左辺によって算出されるフリーのMg存在量は、理論上、Cuマトリクス中の固溶Mg量に相当すると考えられる。しかしながら、後述のように実測される固溶Mg量は、上記の理論上のフリーのMg存在量より少なくなる場合も多いことがわかった。そのため本発明では、後述(2)式により、実際の固溶Mg量を確保することを要件としている。
その他、必要に応じて以下に示す元素の1種以上を、それぞれ以下の含有量範囲内で含有させることができる。
Sn:0.50%以下、Ni:0.30%以下、Zn:0.30%以下、Si:0.10%以下、Co:0.10%以下、Cr:0.10%以下、B:0.10%以下、Zr:0.10%以下、Ti:0.10%以下、Mn:0.10%以下、V:0.10%以下
ただし、これらの任意含有元素の合計含有量は0.50%以下とすることが好ましい。
《Mg固溶率》
本発明では、耐応力緩和特性を向上させるために、Cuマトリクス中に固溶するMgの作用を利用する。MgはCuより原子半径が大きいため、コットレル雰囲気の形成や、空孔との結合によるマトリクス内の空孔減少をもたらし、これらの作用が転移の動きを阻害して耐応力緩和特性を向上させると考えられる。
上述のように、Cuマトリクス中の固溶Mg量は、化学組成に基づく(1)式左辺の計算によりある程度推定することができる。しかし、発明者らはTEM(透過型電子顕微鏡)を用いた微視的なEDX分析(エネルギー分散型X線分析)を詳細に行ったところ、実際にマトリクス中に固溶しているとみられるMg量は、必ずしも(1)式による推定値に近い値を示すとは限らず、大幅に低い値となる場合もあることが確認された。特に、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性を安定して改善するためには、直接的な測定に基づいて定まる「実際に固溶しているMgの量」を十分に確保することが極めて有効であることがわかった。
実際に固溶しているMgの量は、TEM観察でのEDX分析によるCuマトリクス部分のMg検出量を測定する手法により評価することができる。具体的には、倍率10万倍のTEM観察画像において、析出物が観察されないCuマトリクスの部分に電子線を照射してEDX分析を行い、Mg濃度を測定する。この測定を、ランダムに選択した10箇所において行い、各箇所でのMg濃度の測定値(質量%に換算したもの)の平均値を、当該銅合金板材の固溶Mg量とする。
発明者らの検討によれば、当該合金中に含有されるトータルMgのうちの50%以上が前記固溶Mg量(すなわち実測に基づく固溶Mg量)として存在していることが、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性を安定して改善するうえでの必要条件として重要であることがわかった。具体的には、たわみ変位の付与方向をTDとする後述の応力緩和試験による応力緩和率が35%以下である良好な耐応力緩和特性を安定して実現するために、下記(2)式で定義されるMg固溶率を50%以上に規定する。
Mg固溶率(%)=固溶Mg量(質量%)/トータルMg含有量(質量%)×100 …(2)
ここで、「固溶Mg量(質量%)」は上述の実測に基づく固溶Mg量であり、「トータルMg含有量(質量%)」は当該銅合金板材の化学組成として表示されるMg含有量(質量%)である。上記Mg固溶率の上限は特に規定する必要はなく、100%に近い値であっても構わないが、通常、95%以下の値となる。なお、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性を安定して改善するには、Mg固溶率を50%以上とするだけでは不十分であり、Fe−P化合物の微細粒子がCuマトリクスに分散した金属組織であることを要する。
《金属組織》
〔Fe−P系化合物〕
Fe−P系化合物は原子割合でFeが最も多く含まれ、次いでPが多く含まれる化合物であり、Fe2Pを主体とするものである。Fe−P系化合物のうち、粒子径が50nm未満の微細粒子は、Cuマトリクス中に分布することによって強度向上や耐応力緩和特性の向上に寄与する。しかし、粒子径が50nm以上の粗大粒子は、強度向上や耐応力緩和特性の向上に対する寄与が少ない。また、粗大化の程度が進むと曲げ加工性を低下させる要因となる。
強度および耐応力緩和特性の向上に有効である微細なFe−P系化合物が十分に存在しているかどうかについては、粗大なFe−P系化合物の量および粗大なMg−P系化合物の量が所定範囲に抑制されていることをもって、評価することができる。具体的には、本発明で規定する化学組成を満たす銅合金において、粒子径50nm以上のFe−P系化合物の存在密度が10.00個/10μm2以下に抑制されており、かつ粒子径100nm以上のMg−P系化合物の存在密度が10.00個/10μm2以下に抑制されている場合、良好なTDの耐応力緩和特性を実現するに足る量の微細Fe−P系化合物粒子が分散していると見てよい。粒子径50nm以上のFe−P系化合物の存在密度は5.00個/10μm2以下に抑制されていることがより効果的である。
なお、粒子径50nm以上のFe−P系化合物の存在密度を過剰に低減することは、製造条件の制約を大きくする観点からは好ましくない。通常、粒子径50nm以上のFe−P系化合物の存在密度は0.05〜10.00個/10μm2の範囲とすればよく、0.05〜5.00個/10μm2の範囲に管理してもよい。
〔Mg−P系化合物〕
Mg−P系化合物は原子割合でMgが最も多く含まれ、次いでPが多く含まれる化合物であり、Mg32を主体とするものである。Mg−P系化合物のうち、粒子径が100nm未満の微細粒子は、Cuマトリクス中に分布することによって強度向上や耐応力緩和特性の向上に寄与する。ただし、耐応力緩和特性に関しては固溶Mgの存在が有効であり、粒子径が100nm未満のMg−P系化合物を多量に存在させることは固溶Mgの減少を招くことにもなるので、本発明において、微細なMg−P系化合物を多量に存在させることは必ずしも好ましいとは限らない。一方、粒子径が100nm以上のMg−P系化合物粒子は、強度向上や耐応力緩和特性の向上に対する寄与が少ないだけでなく、曲げ加工性を低下させる大きな要因となることがわかった。種々検討の結果、粒子径が100nm以上のMg−P系化合物の存在密度は10.00個/10μm2以下に制限する必要があり、5.00個/10μm2以下であることがより好ましい。
なお、粒子径100nm以上のMg−P系化合物の存在密度を過剰に低減することは、製造条件の制約を大きくする観点からは好ましくない。通常、粒子径100nm以上のMg−P系化合物の存在密度は0.05〜10.00個/10μm2の範囲とすればよく、0.05〜5.00個/10μm2の範囲に管理してもよい。
《特性》
上記の化学組成、Mg固溶率および金属組織を有する銅合金板材において、以下の特性を有するものが提供できる。
(a)導電率が65%IACS以上、好ましくは70%IACS以上、
(b)圧延方向をLD、圧延方向と板厚方向の両方に対して垂直な方向をTDと呼ぶとき、JIS Z2241に従うLDの0.2%耐力が450N/mm2以上、
(c)JIS Z3110に従う90°W曲げ試験において曲げ軸をLD(B.W.)、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを0.5とする条件にて割れが観測されない曲げ加工性、
(d)片持ち梁方式の応力緩和試験において長手方向がLDに一致し、TDの幅が0.5mmである試験片を用い、たわみ変位の付与方向をTDとする方法でLDの0.2%耐力の80%の負荷応力を加え、150℃で1000時間保持した場合の応力緩和率が35%以下、好ましくは30%以下。
このような特性を有する銅合金板材は、音叉端子など、特に素材の板面に平行な方向のたわみ変位が付与される通電部材に適するものである。
なお、上記応力緩和試験は、日本電子材料工業会標準規格EMAS−1011に示される片持ち梁方式において、たわみ変位の付与方向をTDとして実施すればよい。
《製造方法》
Mg固溶率、Fe−P系化合物、Mg−P系化合物に関する上記各規定を満たし、上述の特性を呈する銅合金板材は、例えば以下のような製造方法によって得ることができる。
〔鋳造工程〕
上記規定に従う化学組成の銅合金の溶融物をモールド(鋳型)で凝固させ、凝固後の冷却過程における700〜300℃の平均冷却速度を30℃/min以上として鋳片を製造する。この平均冷却速度は鋳片の表面温度に基づくものである。700〜300℃の温度域ではFe−P系化合物およびMg−P系化合物が生成する。この温度域を上記より遅い冷却速度で冷却すると、極めて粗大なFe−P系化合物およびMg−P系化合物が多量に生成する。その場合、微細なFe−P系化合物が分散し、かつMg固溶率が前述の範囲にある板材を得ることが極めて難しくなる。鋳造方式としてはバッチ式鋳造、連続鋳造のいずれを適用することも可能である。鋳造後は必要に応じて鋳片表面の面削が実施される。
〔鋳片加熱工程〕
鋳造工程で得られた鋳片を850〜950℃の範囲に加熱保持する。この温度範囲での保持時間は0.5h以上とすることが好ましい。この保持により鋳造組織の均質化が進行し、また粗大なFe−P系化合物およびMg−P系化合物の固溶化が進行する。この熱処理は熱間圧延工程での鋳片加熱時に行うことができる。
〔熱間圧延工程〕
前記加熱後の鋳片を最終パス温度が400〜700℃となるように熱間圧延する。この最終パス温度範囲はFe−P系化合物が析出する温度域である。熱間圧延のロール圧下により歪みを加えながらFe−P系化合物を析出させることにより、Fe−P系化合物が微細に析出する。トータルの熱間圧延率は70〜98%程度とすることが好ましい。熱間圧延の最終パスを終えた後は、400〜300℃の平均冷却速度が5℃/sec以上となるように急冷して熱延板とする。この急冷温度範囲はMg−P系化合物が析出する温度域である。この温度域を急冷することにより、Mg−P系化合物の生成を極力抑制する。
〔冷間圧延工程〕
前記熱延板を圧延率30%以上、より好ましくは35%以上で冷間圧延する。この工程で付与される冷間加工歪によって、次工程の焼鈍でFe−P系化合物の析出処理を極めて短時間で行うことができ、Fe−P系化合物の微細化に有効となる。冷間圧延率の上限は目標板厚および冷間圧延機のミルパワーによって適宜設定することができる。通常、95%以下の圧延率とすればよく、70%以下の範囲で設定してもよい。
〔第1中間焼鈍工程〕
本発明に従う銅合金板材は、2段階の中間焼鈍工程を経ることによって好適に製造できる。まず、1段目の第1中間焼鈍では、高温短時間の熱処理によって微細なFe−P系化合物を優先的に析出させる。具体的には、600〜850℃の範囲にある保持温度T℃まで、300℃からT℃までの平均昇温速度が5℃/sec以上となるように昇温し、T℃で5〜300sec保持し、T℃から300℃までの平均冷却速度が5℃/sec以上となるように冷却する。
上記の平均昇温速度が遅すぎると、昇温過程でMg−P系化合物が生成してしまい、Fe−P系化合物の優先的な析出が達成できない。その結果、最終的にMg−P系化合物の粗大化やMg固溶率の低下が生じた組織状態となり、曲げ加工性や耐応力緩和特性の改善が不十分となる。600〜850℃の範囲ではFe−P系化合物が析出するが、Mg−P系化合物はほとんど析出しない。この温度域での保持時間を5sec〜5minの短時間とすることによって、析出したFe−P系化合物の粗大化を防止する。保持温度が600℃未満だとFe−P系化合物の析出に時間がかかり、場合によってはMg−P系化合物の析出を伴う場合もある。850℃を超える温度に昇温するとFe−P系化合物は再固溶して、微細Fe−P系化合物の生成量を十分に確保することが難しくなる。上記の平均冷却速度が遅すぎると、優先的に析出したFe−P系化合物の粗大化が生じやすい。
〔第2中間焼鈍工程〕
次に、2段目の第2中間焼鈍では、比較的低い温度域で比較的長時間の熱処理を施すことによって、再結晶化を十分に進行させる。具体的には、400〜590℃の範囲で0.5h以上保持したのち、その保持温度から300℃までの平均冷却速度が20〜200℃/hとなるように冷却する。冷却は、炉外で放冷する方法が適用でき、特段の急冷は要しない。保持時間の上限は特に規定しないが、通常5h以内とすればよく、3h以内に設定してもよい。
400〜590℃の温度範囲はFe−P系化合物とMg−P系化合物が生成する温度域であるが、第1中間焼鈍によりFe−P系化合物を優先的に生成させ、Pの多くをFe−P系化合物として消費しているので、この第2中間焼鈍ではMg−P系化合物の生成が抑制される。また、温度が比較的低いため、既に生成した微細なFe−P系化合物の成長が抑制され、この段階で新たに生じるFe−P系化合物も微細な粒子径の状態のまま成長が抑制される。このようにして、微細なFe−P系化合物に富み、Mg−P系化合物が少なく、かつ、粗大な各化合物も少ない組織状態が得られる。Mg−P系化合物が少ないため、その分、Mg固溶率も高くなる。
保持温度が400℃を下回るとFe−P系化合物よりもMg−P系化合物の生成が優勢となるので、粗大なMg−P系化合物が多く、Mg固溶率の低い組織状態となりやすい。また、590℃を上回る温度で0.5h以上の保持を行うと既に生成したFe−P系化合物の粗大化が生じやすい。
加熱保持後の冷却速度が速すぎると微細な析出物の生成量を十分確保できなくなるので、少なくとも300℃までの冷却速度を200℃/h以下とすることが望ましく、150℃/h以下とすることがより好ましい。ただし、冷却速度を過剰に遅くすることは製造性の低下を招くので、20℃/h以上、好ましくは50℃/h以上とすればよい。
〔仕上冷間圧延工程〕
上記の2段階の中間焼鈍の後、最終的な板厚調整や更なる強度向上のために、圧延率5〜95%の範囲で仕上冷間圧延を行う。過剰に高い圧延率に設定すると材料中の歪量が増加し、曲げ加工性が低下するため、圧延率は95%以下とすることが望ましく、70%以下とすることがより好ましい。ただし、強度向上の効果を十分に得るためには5%以上の圧延率を確保することが望ましく、20%以上の圧延率を確保することがより好ましい。
〔低温焼鈍工程〕
低温焼鈍は一般に連続焼鈍炉またはバッチ式焼鈍炉で行われる。いずれの場合も材料の物温が200〜400℃となるように加熱保持する。これにより、歪みが緩和され、導電率が向上する。また、曲げ加工性および耐応力緩和特性も向上する。加熱温度が200℃より低い場合は歪みの緩和効果が十分に得られず、特に仕上冷間圧延の加工率が高い場合には曲げ加工性の改善が難しい。加熱温度が400℃を超えると材料の軟化が生じやすく、好ましくない。保持時間は連続焼鈍の場合は3〜120sec、バッチ焼鈍の場合は10min〜24h程度とすればよい。
表1に示す化学組成を有する銅合金を溶解し、鋳片を得た。鋳造の際、モールド(鋳型)に設置した熱電対によって鋳片表面の冷却速度をモニターした。鋳造後の鋳片(鋳塊)から40mm×40mm×20mmの鋳片を切り出し、これを鋳片加熱工程以降の工程に供した。製造条件を表2に示す。熱間圧延工程では板厚5mmまで熱間圧延した。冷間圧延工程および仕上冷間圧延工程での圧延率を表2に示すように設定して、最終的に板厚を0.64mmに揃えた。なお、鋳片加熱工程は熱間圧延時の鋳片加熱を利用して行った。
表2中、第1中間焼鈍において、「平均昇温速度」は300℃から保持温度までの平均昇温速度、「保持時間」は前記保持温度に到達してから冷却を開始するまでの時間、「平均冷却速度」は保持温度から300℃までの平均冷却速度を意味する。その平均冷却速度の欄に「水冷」と記載したものは熱処理後の板材を水中に浸漬する方法で冷却したものであり、300℃までの平均冷却速度は10℃/secを超える。また、第2中間焼鈍において、「平均冷却速度」は保持温度から300℃までの平均冷却速度を意味する。
Figure 0006140032
Figure 0006140032
低温焼鈍を終えて得られた板厚0.64mmの板材(供試材)から試験片を採取して、以下の方法で析出物の存在密度、Mg固溶率、導電率、0.2%耐力、曲げ加工性、応力緩和率を調べた。
析出物の存在密度は以下のようにして求めた。供試材から採取した試料をTEMで倍率4万倍にて観察し、ランダムに選択した5視野について、それぞれ3.4μm2の観察領域中に存在する粒子径50nm以上のFe−P系化合物および粒子径100nm以上のMg−P系化合物の個数をカウントした。粒子径は観察される粒子の長径である。観察領域の境界線に掛かる粒子については、粒子面積の半分以上が領域内にあるものをカウント対象とした。粒子がFe−P系化合物であるかMg−P系化合物であるかは、EDX分析を利用して識別した。それぞれの粒子について、各視野でのカウント数を5視野について合計し、その合計数に、10μm2/(観察した総面積3.4μm2×5)の値を乗じることにより、10μm2当たりの個数を算出した。
Mg固溶率は以下のようにして求めた。供試材から採取した試料をTEMで倍率10万倍にて観察し、EDX分析によって、析出物のないCuマトリクス部分のMg濃度を測定する操作を、ランダムに選択した10視野について行った。各視野で測定されたMg濃度(質量%に換算した値)の平均値を、当該試料の固溶Mg量として定め、下記(2)式によってMg固溶率を求めた。
Mg固溶率(%)=固溶Mg量(質量%)/トータルMg含有量(質量%)×100 …(2)
なお、トータルMg含有量はICP発光分光分析法により供試材から採取した試料に含まれるMg含有量を測定する方法で求めた。
導電率は、JIS H0505に従って測定した。導電率65%IACS以上を合格とした。
0.2%耐力は、JIS Z2241に従って、LDの引張試験により測定した。0.2%耐力450N/mm2以上を合格とした。
曲げ加工性は、JIS H3110に示される治具を用いて、曲げ軸をLD(B.W.)、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを0.5とする条件でW曲げ試験を行い、曲げ加工部を光学顕微鏡により倍率50倍で観察して割れが認められないものを○(良好)、それ以外を×(不良)と評価した。
応力緩和率は、板厚0.64mmの供試材からワイヤーカットにてLDの長さが100mm、TDの幅が0.5mmの細長い試験片を切り出し、これを日本電子材料工業会標準規格EMAS−1011に示される片持ち梁方式の応力緩和試験にかけることによって求めた。ただし、試験片は、たわみ変位の方向がTDとなるように、0.2%耐力の80%に相当する負荷応力を付与した状態でセットし、150℃で1000時間保持後の応力緩和率を測定した。このようにして求めた応力緩和率を「たわみ方向がTDの応力緩和率」と呼ぶ。たわみ方向がTDの応力緩和率35%以上を合格と判定した。
調査結果を表3に示す。
Figure 0006140032
表3からわかるように、本発明に従う実施例1〜7の銅合金板材は、導電性、強度(0.2%耐力)、曲げ加工性、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性のすべてにおいて良好な特性を有する。
以下の比較例1〜8は、化学組成は適正であるが製造条件が不適切であった例である。
比較例1は、熱間圧延での最終パス温度が低すぎたことにより粗大なMg−P系化合物の存在量が多い熱延板が得られ、後工程においても組織状態の適正化ができなかった。その結果、曲げ加工性と、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性が悪かった。
比較例2は、熱間圧延の最終パス温度が高すぎたことにより、最終パス終了後の高温の時期に粗大なFe−P系化合物が多量生成し、後工程においても微細なFe−P系化合物を十分に生成させることができなかった。その結果、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性が悪かった。
比較例3は、第1中間焼鈍を省略したことにより、微細なFe−P系化合物を優先的に生成させることができなかった。その結果、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性が悪かった。
比較例4は、第1中間焼鈍の昇温速度が遅く、また保持温度が低かったことにより、粗大なMg−P系化合物が多量に生成し、曲げ加工性が悪かった。また、微細なFe−P系化合物の量およびMg固溶率が不十分となり、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性が悪かった。
比較例5は、第1中間焼鈍の冷却速度が遅いので、優先的に析出した微細なFe−P系化合物が当該冷却過程で粗大化した。その結果、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性が悪かった。
比較例6は、鋳造での凝固後の冷却速度が遅いので鋳片に非常に粗大なFe−P系化合物およびMg−P系化合物が多量に生成し、その後の鋳片加熱温度も低いので、最終的に微細析出物が分散した組織状態が得られなかった。その結果、曲げ加工性と、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性が悪かった。
比較例7は、冷間圧延率が低かったことにより第1中間焼鈍の短時間加熱では十分にFe−P系化合物が生成せず、続く第2中間焼鈍を高めの温度で実施することによりFe−P系化合物を生成させた。しかし、焼鈍前の加工率が低いことで再結晶化が不十分となり、また、第2中間焼鈍温度が高いためにFe−P系化合物が成長し、曲げ加工性の低下を招いた。また微細な析出物の分布が不十分となった結果、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性も悪かった。
比較例8は、第2中間焼鈍の温度が低すぎたことにより再結晶化が不十分となり、導電性に劣った。また、第2中間焼鈍にてMg−P系化合物の析出および成長がFe−P系化合物の析出よりも優勢となり、曲げ加工性と、たわみ方向がTDの耐応力緩和特性が悪くなった。
以下の比較例9〜15は、化学組成が本発明の規程を外れる例である。
比較例9は、FeおよびPが不足するため、微細なFe−P系化合物による強度向上作用と耐応力緩和特性の改善作用が発揮されなかった。
比較例10は、Feが過剰であるため、導電性に劣った。
比較例11は、Mgが本発明の規程をわずかに下回るものである。この場合、固溶Mgの絶対量が少なくなり、たわみ方向がTDの応力緩和率35%以下を目標とする厳しい耐応力緩和特性をクリアすることができなかった。
比較例12は、MgおよびPが過剰であるため、鋳造工程で極めて粗大なMg−P系化合物を多量に生成した。その結果、熱間割れが発生したので、その後の工程の実施を取りやめた。
比較例13、14および15は、それぞれSn、NiおよびZnが過剰であるため、いずれも導電性に劣った。

Claims (4)

  1. 質量%で、Fe:0.05〜2.50%、Mg:0.03〜1.00%、P:0.01〜0.20%、Sn:0〜0.50%、Ni:0〜0.30%、Zn:0〜0.30%、Si:0〜0.10%、Co:0〜0.10%、Cr:0〜0.10%、B:0〜0.10%、Zr:0〜0.10%、Ti:0〜0.10%、Mn:0〜0.10%、V:0〜0.10%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式を満たす化学組成を有し、倍率10万倍のTEM観察でのEDX分析により求まるCuマトリクス部分の平均Mg濃度(質量%)を固溶Mg量と呼ぶとき、下記(2)式により定義されるMg固溶率が50%以上であり、粒子径50nm以上のFe−P系化合物の存在密度が10.00個/10μm2以下であり、粒子径100nm以上のMg−P系化合物の存在密度が10.00個/10μm2以下である銅合金板材。
    Mg−1.18(P−Fe/3.6)≧0.03 …(1)
    Mg固溶率(%)=固溶Mg量(質量%)/トータルMg含有量(質量%)×100 …(2)
    ただし、(1)式の元素記号Mg、P、Feの箇所にはそれぞれの元素の含有量を質量%で表した値が代入される。
  2. 導電率が65%IACS以上であり、圧延方向をLD、圧延方向と板厚方向の両方に対して垂直な方向をTDと呼ぶとき、JIS Z2241に従うLDの0.2%耐力が450N/mm2以上であり、JIS Z3110に従うW曲げ試験において曲げ軸をLD、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを0.5とする条件にて割れが観測されない曲げ加工性を有し、片持ち梁方式の応力緩和試験において長手方向がLDに一致し、TDの幅が0.5mmである試験片を用い、たわみ変位の付与方向をTDとする方法でLDの0.2%耐力の80%の負荷応力を加え、150℃で1000時間保持した場合の応力緩和率が35%以下である請求項1に記載の銅合金板材。
  3. 質量%で、Fe:0.05〜2.50%、Mg:0.03〜1.00%、P:0.01〜0.20%、Sn:0〜0.50%、Ni:0〜0.30%、Zn:0〜0.30%、Si:0〜0.10%、Co:0〜0.10%、Cr:0〜0.10%、B:0〜0.10%、Zr:0〜0.10%、Ti:0〜0.10%、Mn:0〜0.10%、V:0〜0.10%、残部Cuおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式を満たす化学組成の銅合金の溶融物をモールドで凝固させ、凝固後の冷却過程における700〜300℃の平均冷却速度を30℃/min以上として鋳片を製造する鋳造工程、
    得られた鋳片を850〜950℃の範囲に加熱保持する鋳片加熱工程、
    前記加熱後の鋳片を最終パス温度が400〜700℃となるように熱間圧延した後、400〜300℃の平均冷却速度が5℃/sec以上となるように急冷して熱延板とする熱間圧延工程、
    前記熱延板を圧延率30%以上で圧延する冷間圧延工程、
    600〜850℃の範囲にある保持温度T℃まで、300℃からT℃までの平均昇温速度が5℃/sec以上となるように昇温し、T℃で5〜300sec保持し、T℃から300℃までの平均冷却速度が5℃/sec以上となるように冷却する第1中間焼鈍工程、
    400〜590℃の範囲で0.5h以上保持したのち、その保持温度から300℃までの平均冷却速度が20〜200℃/hとなるように冷却する第2中間焼鈍工程、
    圧延率5〜95%で圧延する仕上冷間圧延工程
    200〜400℃で加熱する低温焼鈍工程、
    を有する銅合金板材の製造方法。
    Mg−1.18(P−Fe/3.6)≧0.03 …(1)
    ただし、(1)式の元素記号Mg、P、Feの箇所にはそれぞれの元素の含有量を質量%で表した値が代入される。
  4. 請求項1または2に記載の銅合金板材から加工された部品であって、前記銅合金板材の圧延方向と板厚方向の両方に対して垂直な方向(TD)に由来する部品内の方向に負荷応力が付与された状態で使用される通電部品。
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