JP3470889B2 - 電気・電子部品用銅合金 - Google Patents

電気・電子部品用銅合金

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JP3470889B2
JP3470889B2 JP2000207566A JP2000207566A JP3470889B2 JP 3470889 B2 JP3470889 B2 JP 3470889B2 JP 2000207566 A JP2000207566 A JP 2000207566A JP 2000207566 A JP2000207566 A JP 2000207566A JP 3470889 B2 JP3470889 B2 JP 3470889B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、端子・コネクタ、
リレー、バスバー等の電気・電子部品用銅合金、特に強
度(耐力)、導電率、ばね限界値、耐応力緩和特性、曲
げ加工性に優れ、さらにSnめっき性にも優れた電気・
電子部品用銅合金に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の電装化が進むなかで、バッテリ
ーや制御装置と各種電装品、アクチュエータ、センサ類
等の配線のワイヤハーネスにおいてコネクタの極数が増
加し、その小型化が求められている。また、エンジン部
付近に搭載されるコネクタは常にエンジン部の高温・高
振動環境下にあり、特にパワー系統用(電力供給用)コ
ネクタは大きい電流が流れることで自己発熱しさらに高
温となる。従って、このようなコネクタ(特にメス端
子)には、前記の環境下で高い信頼性を有する(へたり
がこない)ことが求められている。
【0003】一方、従来の自動車用等の銅合金コネクタ
材として、Cu−Fe−P系合金(CDA19400)
やCu−Mg−P系合金が知られている。前者はFe及
びPを共添してFe−P化合物を析出させ、強度を向上
させたものであり、さらにZnを添加して耐マイグレー
ション性を向上させた合金(特開平1−168830号
公報参照)、Mgを添加して耐応力緩和特性を向上させ
た合金(特開平4−358033号公報参照)なども知
られている。後者は、Mg及びPを共添することで強度
と熱クリープ特性を向上させ、引張強さ、導電率及び耐
応力緩和特性を向上させたものである(特公平1−54
420号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】自動車電装品の配線用
コネクタ(特にメス端子)を小型化し、なおかつその信
頼性を確保(接圧力を維持)するためには、素材の強度
(耐力)及びばね特性(ばね限界値)を一層向上させる
必要がある。また、長時間高温に保持されてもへたり
(経時的な嵌合力の低下)がこないようにするためには
耐応力緩和特性の向上が必要であり、同時に導電率を向
上させて自己発熱を抑制することが必要となる。そのほ
か、小型コネクタの成形のため優れた成形加工性(特に
曲げ加工性)を有すること、及びオス・メス端子の接触
抵抗を減らし、耐食性を向上させるため優れたSnめっ
き密着性を有することも求められる。
【0005】しかし、従来のコネクタ材であるCu−F
e−P系銅合金は成形加工性に優れるが、ばね限界値が
低く、耐応力緩和特性に劣るという問題がある。なお、
この系にMgを添加した合金はばね限界値が向上する
が、成形加工性、導電率が低下する。また、Cu−Mg
−P系銅合金は耐応力緩和特性に優れるが、成形加工性
が劣り、Snめっき密着性にも劣るという問題がある。
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされ
たもので、耐力、導電率、ばね限界値、耐応力緩和特
性、曲げ加工性に優れ、さらにSnめっき性にも優れた
電気・電子部品用銅合金を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る電気・電子
部品用銅合金は、Fe:0.5〜2.4%、Si:0.
02〜0.1%、Mg:0.01〜0.2%、Sn:
0.01〜0.7%、Zn:0.01〜0.2%を含有
し、P:0.03%未満、Ni:0.03%以下、M
n:0.03%以下であり、さらに残部がCu及び不可
避不純物からなる。本発明に係る電気・電子部品用銅合
金は、必要に応じて、さらにPb:0.0005〜0.
015%、又は/及びBe、Al、Ti、V、Cr、C
o、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Hf、Ta、Bの
1種又は2種以上を総量で1%以下含有することができ
る。上記銅合金の不可避不純物として、製造上の観点か
ら、Bi、As、Sb及びSはそれぞれ個別に0.00
3%以下、かつこれらの合計は0.005%以下に制限
し、さらに、O含有量を10ppm以下、かつH含有量
を20ppm以下に制限することが望ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る電気・電子部
品用銅合金の成分組成について説明する。 Fe;Feは析出してこの銅合金の強度を向上させる。
しかし、2.4%を超えて含有すると粗大なFe粒子が
晶出又は析出し、曲げ加工性が低下し、一方、0.5%
未満であるとFeの析出が起こりにくく、強度と導電率
が低下し、また再結晶粒が成長して曲げ加工時に割れが
発生しやすくなる。従って、Feの含有量は0.5〜
2.4%とする。望ましくは1.0〜2.1%であり、
この範囲内で耐応力緩和特性とばね限界値がより向上す
る。さらに望ましくは1.8〜2.0%であり、この範
囲内で熱間圧延時の割れの発生を抑える効果が高くな
る。
【0008】Si;Siは従来のPに代わって銅合金を
脱酸し(FeもSiとともに脱酸に寄与する)、Pの含
有量が0.03%未満であれば、Pによる再結晶の阻害
作用を抑制して、均一微細な再結晶を促進する作用があ
る。また導電率を余り低下させずにMg及びSnととも
に耐応力緩和特性及びばね限界値を向上させる作用があ
る。これらの作用は0.02%未満の添加量では十分発
揮されず、一方、0.1%を超えて含有すると曲げ加工
性が劣化する。従って、Siの含有量は0.02〜0.
1%とする。望ましくは0.03〜0.07%であり、
この範囲で耐応力緩和特性がより向上する。
【0009】Mg;Mgは固溶Snと共添することで耐
応力緩和特性及びばね限界値を大きく向上させる作用が
ある。しかし、Mgは酸化しやすく、添加量が多くなる
と大気溶解が難しくなり、導電率も低下するので、上記
銅合金では、Mg及びSnの作用の一部をSiで補って
いる。上記銅合金(Cu−Fe系)においてMgの添加
量が0.2%を超えると均一な再結晶が阻害されて曲げ
加工性が劣化し、一方、0.01%未満であると特に耐
応力緩和特性が向上しない。従って、Mgの含有量は
0.01〜0.2%とする。望ましくは0.05〜0.
15%であり、この範囲で固溶Snとの共添により耐応
力緩和特性及びばね限界値がより向上する。なお、Mg
とSnを共添しない場合は耐応力緩和特性等の向上はみ
られない。
【0010】Sn;Snは固溶Mgと共添することでば
ね限界値及び耐応力緩和特性を大きく向上させ、さらに
曲げ加工性を向上させる作用がある。しかし、Snの添
加量が0.7%を超えると導電率が低下し、一方、0.
01%未満であると特にばね限界値及び曲げ加工性が向
上しない。従って、Snの含有量は0.01〜0.7%
とする。望ましくは0.05〜0.15%であり、この
範囲で固溶Mgとの共添によりばね限界値、耐応力緩和
特性及び曲げ加工性がより向上する。Zn;ZnはSn
及びはんだめっきの剥離防止に大きい効果がある。しか
し、0.2%を超えて含有されると脱Znを起こし、曲
げ加工性も劣化し、一方、0.01%未満であるとSn
及びはんだめっきの剥離が防止できない。従って、Zn
の含有量は0.01〜0.2%とする。望ましくは0.
1〜0.2%であり、この範囲で特に上記効果が大き
い。
【0011】P;Pは不可避不純物として混入し、ある
いは脱酸補助及び湯流れ性の改善のため必要に応じて添
加される。しかし、含有量が多くなると均一な再結晶を
阻害するため、含有量は0.03%未満(0%を含む)
とする。Pの含有量が0.03%以上となると、Siが
0.02%以上添加されても、中間焼鈍で均一微細な再
結晶組織が得られない。この場合、中間焼鈍の温度を上
げても未再結晶部分が残り、銅合金板に硬度のばらつき
がでて曲げ加工性が低下する。なお、この未再結晶部分
は、量産工程で通常行われている焼鈍条件範囲内では、
単に焼鈍回数を2回以上に増やしても消失させることが
できない。P含有量は望ましくは0.005%以下とす
る。これは、Fe、Si、Mg、Snを上記範囲内で含
有する銅合金では、Pをこの範囲内に制限することによ
り、中間焼鈍時のFe析出による導電率の向上ピーク
と、再結晶の完了をほぼ一致させる(導電率がピークを
迎えたとき、再結晶がほぼ完了する)ことができるから
である。これにより高導電率と優れた曲げ加工性を両立
させることができる。
【0012】Ni;Niは不可避不純物として混入し、
あるいは上記銅合金において粒界を強化し熱間圧延時の
割れを防止する作用があるため、必要に応じて添加され
る。しかし、0.03%を超えるとNi−Si金属間化
合物を形成し、耐応力緩和特性を低下させる。従って、
含有量は0.03%以下(0%を含む)とする。 Mn;Mnは不可避不純物として混入し、あるいは上記
銅合金において粒界を強化し熱間圧延時の割れを防止す
る作用があるため、必要に応じて添加される。しかし、
0.03%を超えるとMn−Si金属間化合物を形成
し、耐応力緩和特性を低下させる。従って、含有量は
0.03%以下(0%を含む)とする。望ましくは0.
01%以下である。 Pb;Pbは不可避不純物として混入し、あるいは切削
性及びプレス打ち抜き性を向上させるため必要に応じて
添加される。Pbは最終製品板の各特性に影響を与えな
いが、0.015%を超えて含有されると、粒界に偏析
して熱間圧延時に割れが発生し、一方、0.0005%
未満では上記作用が得られない。従って、Pbの含有量
は0.015%以下(0%を含む)とし、上記作用を必
要とする場合は0.0005%以上含有させる。
【0013】Be〜B;これらの元素は、不可避不純物
として混入し、あるいは再結晶温度を上昇させ耐応力緩
和特性を向上させる作用があるため、必要に応じて添加
される。しかし、これらの元素が析出又は晶出すると導
電率を低下させるので、総量で1%以下に規制される。
望ましくは0.5%以下である。 Bi〜H;これらの元素は不可避不純物として混入す
る。Bi、As、Sb及びSは粒界に偏析し熱間圧延時
に割れを発生させるため、それぞれ個別に0.003%
以下、合計で0.005%以下に制限することが望まし
い。O、Hが多いと鋳塊にブローホールが発生し、また
Oが多いと溶湯中に酸化物が大量に発生して湯流れを阻
害するため、O含有量は10ppm以下、H含有量は2
0ppm以下に制限することが望ましい。
【0014】上記電気・電子部品用銅合金は、下記実施
例に示すように、鋳造後均質化処理を行った後、熱間圧
延を行い、続いて冷間圧延及び中間焼鈍を行い、さらに
最終冷間圧延後、仕上げ焼鈍を行うという一般的な製造
方法で製造できる。冷間圧延及び中間焼鈍は必要に応じ
て2回以上繰り返すことができる。また、冷間圧延と中
間焼鈍の間に650℃〜750℃で5〜20秒の短時間
焼鈍を行うと、この焼鈍処理中に再結晶が先行して起こ
り、再結晶を阻害するFe粒子が析出してこない。この
再結晶状態の板材を、続く中間焼鈍で焼鈍するとFeの
析出が起こり、導電率、強度が向上するとともに未再結
晶部分が残存していない再結晶組織を得ることができ、
曲げ加工性をさらに向上させることができる。
【0015】
【実施例】次に本発明に係る電気・電子部品用銅合金の
実施例について、比較例と比較して説明する。表1、2
(本発明例)及び表3、4(比較例)に示す組成の銅合
金をクリプトル炉において、大気中で木炭被覆下に溶
解、鋳造した。ここで鋳造可否を判断した。次いで、鋳
塊を800℃〜1000℃で30分保持後、加工率50
%〜80%の熱間圧延を施し、厚さ18mmの板材を作
製した。ここで熱延時に割れが発生していないか目視及
び蛍光探傷法で判定した。なお、蛍光探傷法は、これら
の試験材全面にマークテック株式会社製浸透探傷用蛍光
染料スーパーグローDN-2800IIを塗布、水洗・乾燥し、
同じく現像剤のスーパーグローDN-600Sをスプレーして
現像後、この試験材に紫外線光を照射することによって
行った。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】次いで、この熱延材を次工程の面削機に導
入し、面削機のフライス刃の焼き付きの有無を判断し
た。このときのフライス刃は台金をクロモリ系鋼とし、
フライス刃の部分はタングステンカーバイドの超硬チッ
プを銀ろうにて台金にろう付けしてあり、刃の周速は6
m/秒、切削量は1.5mm/1面である。切削油など
は用いていない。幅200mm×厚さ18mm×長さ1
80mmの寸法の熱延材を各合金毎に20個準備し、そ
れらが全て厚さ15mmになるまで両面全面面削後、フ
ライス刃の表面をSEM観察し、表面の焼き付き状況を
調査した。刃表面に切り屑の溶着の痕跡があれば、焼き
付きがあったものと判断した。
【0021】以上の判定基準から、まず本発明に係る合
金板材の作成可否を確認した。その結果を表5に示す。
表5に示すように、No.44は鋳造可能であったが、
Pb添加量が過剰であり、熱間圧延で割れが生じた。N
o.50は大気から溶湯を遮蔽するシールが十分でなか
ったため、H及びOが多く、これによって添加元素S
i、Mg、Snの酸化物が溶湯中に発生し、湯流れ性が
極端に劣化したため、鋳造を断念した。No.43は鋳
造及び熱間圧延が可能であったが、Pb添加量が少な
く、フライス刃の焼き付きが発生した。
【0022】No.45〜49は鋳造可能であったが、
No.45〜48はBi、As、Pb、Sがそれぞれ個
別に過剰であり、No.49はBi、As、Pb、Sの
総量が過剰であり、いずれも熱延時に割れを生じた。N
o.42は鋳造可能であったが、脱酸剤Siが少なく、
かつPの添加もないため、脱酸不足から鋳塊鋳肌がザラ
メ状、つまり、脆弱な多孔質状になった。このため、そ
れ以後の工程は断念した。これに対し、本発明の規定範
囲内の組成を有するNo.1〜23(及び一部元素の含
有量が規定範囲外のNo.24〜41、51)は、鋳塊
品質、熱延性が良好で容易に熱間圧延材が得られ、また
フライス刃の焼付が発生せず、その寿命の延長が可能で
ある。
【0023】
【表5】
【0024】続いて、No.1〜41、51の銅合金の
熱延板を板厚2.5〜0.50mmまで冷間圧延し、中
間焼鈍を電気炉中で370〜600℃の温度で1〜20
時間実施した。次いで、この板材の酸化スケールを除去
後、再結晶率及び板材の硬さ分布を測定した(詳しくは
後述)。さらにこの焼鈍材を厚さ0.25mmまで冷間
圧延し、仕上げ焼鈍を250℃〜490℃の範囲内で5
秒〜2時間行った。各銅合金の製造条件を表6に示す。
最後にこの板材を酸洗して酸化スケールを除去し、最終
製品の板材とした。なお、いずれの合金も最終製品の形
状、板厚まで容易に製作できた。
【0025】
【表6】
【0026】上記製造工程で得られた中間焼鈍後の途中
工程材及び最終製品について、下記〜の特性を下記
要領にて測定した。その結果を表7及び表8に示す。 中間焼鈍後の再結晶率 板材断面が観察できるように研磨用樹脂に埋め込み、鏡
面研磨仕上げしたあと、倍率200倍以上の光学顕微鏡
で観察し、観察視野全面を100%とした場合に対し、
再結晶が完了している面積がその何%を占めるかで評価
した。なお、再結晶率が90%以上であれば、曲げ加工
性など最終製品の機械的性質に影響を及ぼさない。
【0027】中間焼鈍後の板材の硬さ測定値の標準偏
差 板材表面をバフ研磨したあと10〜100グラム荷重の
マイクロビッカース硬度計を用い、圧延とは直角の方向
に50μm間で30点の硬さを計り、その30個の計測
値の分布に対する標準偏差を計算することで評価した。
なお、標準偏差が5未満であれば、再結晶は一様に完了
し、曲げ加工性など最終製品の機械的性質に影響を及ぼ
さない。 最終製品の耐力 自動車用端子材として特に重要視される機械的性質であ
る耐力は、JIS5号引張試験片を機械加工にて作成
し、島津製作所製万能試験機UH-10Bで引張試験を実施し
て測定した。ここで、耐力とはJISZ2241で規定
されている永久伸び0.2%に相当する引張強さであ
る。耐力450N/mm以上であれば、自動車用の電
力供給用小型コネクタで必要とする接点嵌合力を維持
し、オス端子挿入時のコジリにも耐えられる。
【0028】最終製品の導電率 導電率測定はJISH0505に規定されている非鉄金
属材料導電率測定法に準拠して、横川電気製ダブルブリ
ッジ5752を用いた四端子法で行った。導電率50%
IACS以上であれば、自動車用の電力供給用小型コネ
クタで自己発熱を抑制できる。 最終製品のばね限界値 ばね限界測定値はJISH3130に規定されているば
ね限界値のモーメント式試験に準拠して測定した。ばね
限界値300N/mm以上であれば、自動車用の電力
供給用小型コネクタで必要とする接点嵌合力を維持でき
る。
【0029】最終製品の耐応力緩和特性上限温度 耐応力緩和特性は、片持ち梁方式を用いて測定した。具
体的には、材料の圧延方向に対し直角な方向から幅10
mmの短冊状試験片を切り出し、その一端を剛体試験台
に固定し、試験開始時に試験片を10mmそらせ、材料
耐力の80%に相当する表面応力が材料に負荷されるよ
うにする。これを120〜160℃まで5℃きざみに設
定した各オーブン中にそれぞれの材料を1000時間保
持し、除荷後のそりLが初期の弾性範囲内の10mmの
そりにどれだけ近づいたのか、その割合Rを測定するこ
とによって評価した。すなわち、R=(10−L)/1
0×100(%)を算出して比較した。この評価でR:
70%以上を維持できる最高温度が150℃以上であれ
ば、自動車用の電力供給用小型コネクタで必要とする接
点嵌合力を維持できる。
【0030】最終製品の圧延長手方向の180°曲げ
の限界曲げ半径 180°曲げ試験は曲げ加工性はJISZ2248に規
定されているVブロック法曲げ試験で各曲げ半径を備え
たVブロック曲げ治具で幅10mm、長さ35mmに加
工した供試材を挟み、島津製作所製万能試験機RH-30を
使って1tonの荷重で予備曲げ加工を行い、さらに平ら
な金属テーブル上に予備曲げされた試験片を置き、島津
製作所製万能試験機RH-30を使って1tonの荷重で密着さ
せた。曲げ加工性は上記曲げ治具の各曲げ半径に対し、
供試材の曲げ部が割れ等を呈していないかどうかルーペ
で検鏡して判別した。この評価で最小曲げ半径が材料板
厚0.25mmに対し0mmであれば、自動車用の電力
供給用小型コネクタが成形できる。
【0031】最終製品の圧延直角方向のW曲げの限界
曲げ半径 W字形状の曲げ加工性はCESM0002金属材料W曲
げ試験方法に規定され、各曲げ半径を備えたB型曲げ治
具で幅10mm、長さ35mmに加工した供試材を挟み
島津製作所製万能試験機RH-30を使って1tonの荷重で曲
げ加工を行って測定した。曲げ加工性は上記曲げ治具の
各曲げ半径に対し、供試材の曲げ部が割れ等を呈してい
ないかどうかルーペで検鏡して判別した。この評価で最
小曲げ半径が材料板厚0.25mmに対し0.125m
m以下であれば、自動車用の電力供給用小型コネクタが
成形できる。
【0032】最終製品のSnめっき剥離の有無 Snめっき密着性は、硫酸第一錫40g/lit、硫酸
100g/lit、クレゾールスルフォン酸30g/l
it、ホルマリン5mlit/lit、分散剤20g/
lit、光沢剤10mlit/litからなるSnめっ
き浴中(20℃)で電流密度2.5A/dmにてめっ
き厚さ1.5μmのSnめっきを施した後、105℃オ
ーブン中で500時間加熱し、その後2mmRで180
℃曲げた後平板に曲げ戻し、その際の材料からのSnめ
っきの剥離の有無を目視で評価した。この評価でSnめ
っきの剥離が生じなければ、自動車の電力供給用小型コ
ネクタに使用できる。
【0033】なお、最終製品板について、酸化物、粗大
析出物、粗大晶出物、粒界反応型析出等、板材の品質低
下を引き起こすような異物の有無の判定を断面観察によ
って行った。具体的には製品板材断面が観察できるよう
に研磨用樹脂に埋め込み鏡面研磨仕上げしたあと、倍率
200倍以上の光学顕微鏡で観察し、前記異物の有無を
確認した。さらに、光学顕微鏡観察以外にも、製品板材
断面について、代表部位としてその中央及び両端から1
0mm×10mm×0.25mmの板材を切り出し、断
面が観察できるように研磨用樹脂に埋め込み、鏡面研磨
したあと、EDX-SEMで断面観察を行い、異物の検出・寸
法測定及び組成同定を行った。30μm×50μmの範
囲で径1μm以上の酸化物又は晶出物が1個以上ある場
合は、酸化物又は晶出物有りと判断した。
【0034】
【表7】
【0035】
【表8】
【0036】表7に示すように、No.1〜23は、全
ての特性が良好で、自動車用コネクタ材などに好適な電
気・電子部品用銅合金である。一方、表8に示すよう
に、No.24(CDA19400)は、高耐力、高導
電率であるが、コネクタあるいはリレーなどの高ばね限
界値を要求される用途には不十分な231N/mm
いう低いばね限界値しか得られない。また、耐応力緩和
特性上限温度もりん青銅なみの120℃しか有しない。
No.25(特公平1−54420号公報で開示された
Cu−Mg−P合金)は、高耐力、高導電率、高ばね限
界値、高耐応力緩和特性を兼備するが、曲げ加工性及び
Snめっき性が劣る。
【0037】No.26、27(CDA19400合金
に類似するP脱酸Cu−Fe合金にMg、Sn、Znを
添加した合金)は、高耐力、高導電率、高ばね限界値、
高耐応力緩和特性を兼備するが、Siが添加されていな
いため、実用的範囲内での中間焼鈍で再結晶が容易では
なく、それゆえ、中間焼鈍後の硬さも一様ではなく、曲
げ加工性が劣化する。No.28はFe添加量が過少
で、導電率60%IACS以上は確保できるが、耐力、
ばね限界値、耐応力緩和特性、曲げ加工性等の機械的性
質が劣る。No.29はSi添加量が過剰で、高耐力、
高ばね限界値、高耐応力緩和特性が得られるが、導電率
が50%IACSを下回り、曲げ加工性も劣る。No.
30はSiの添加量は適性であるがP添加量が過剰で、
実用的範囲内での中間焼鈍で再結晶が容易ではなく、製
品品質が一様ではなくなる。それゆえ、中間焼鈍後の硬
さも一様でなく、曲げ加工性が劣化する。
【0038】No.31はMg添加量が過剰で、熱間圧
延後の冷間圧延工程で導入された圧延組織が中間焼鈍で
消失せず、均一微細な再結晶組織が得られず、曲げ加工
性が劣る。No.32、33、35はMg、Snの両方
を適正量で含有せず、ばね限界値(No.32、33、
35)、曲げ加工性(No.32、33、35)及び耐
応力緩和特性(No.35)が劣る。No.34はSn
を適正量含有するがMgが共添されてなく、耐応力緩和
特性が劣る。No.36はMgを適正量含有するがSn
が共添されてなく、耐応力緩和特性及び曲げ加工性が劣
る。No.37はZn添加量が過少で、Snめっき性が
劣る。No.38はZn添加量が過剰で、Sn、Mgに
加えて固溶強化作用をもつ元素がさらに1つ加わること
になり、それゆえ曲げ加工性が劣化する。No.39は
Ni添加量が過剰で、耐応力緩和特性を向上させるSi
がNi−Si金属間化合物形成に奪われ、ゆえに耐応力
緩和特性が劣化し、さらにその金属間化合物発生によっ
て曲げ加工性が劣化する。No.40はMn添加量が過
剰で、耐応力緩和特性を向上させるSiがMn−Si金
属間化合物形成に奪われ、ゆえに耐応力緩和特性が劣化
し、さらにその金属間化合物発生によって曲げ加工性が
劣化する。
【0039】No.41はFe添加量が過剰で、前記光
学顕微鏡及びEDX-SEMによる断面組織観察で粗大なFe
粒子の発生が確認された。そのため、曲げ加工性が極端
に劣化していた。No.51はTi等の元素が過剰で、
前記光学顕微鏡及びEDX-SEMによる断面組織観察でT
i、Cr、Zrの粗大な粒子の発生が確認された。その
ため、曲げ加工性が極端に劣化していた。
【0040】次に、Pbが最終製品板の各特性に影響を
与えないことを確認するため、Pb含有量を0.000
1%に抑えた表9(a)、(b)に示す組成の銅合金か
ら最終製品板を作製した。この場合、熱間圧延で発生す
る酸化スケールを除去する際にフライス刃に溶着・焼き
付きが発生するため、これを避ける熱延工程を適用し
た。具体的には、鋳塊板厚が36mmとなるように組ん
だモールドで鋳込み、酸化スケールがほとんど発生しな
い800℃の加熱温度で30分間保持し、1パスのみで
加工率50%を加えて厚さ18mmの熱延板とし、先の
実施例と同様にフライス刃による面削を行った。このと
き、わずかに発生した一次スケールは完全に粉砕され、
しかも酸化スケールの押し込みも発生しないため、特に
Pbを0.0005%以上含有していなくてもフライス
刃に溶着・焼き付きは発生しない。なお、効率を重視す
る実操業では大型鋳塊を使用するため、熱延パス回数の
増加とそれに伴う二次スケールの発生と押し込みは避け
ることができない。これらの酸化スケールがフライス刃
の凝着核となり、フライス刃に溶着・焼き付きが発生す
る恐れがある。先のNo.1〜51では、この状況を再
現するために、5〜8パスの熱延を実施していた。
【0041】
【表9】
【0042】以降は、表9(c)に示す条件で冷間圧
延、中間焼鈍及び仕上げ焼鈍を行い、最終製品の板材と
した。この製造工程で得られた中間焼鈍後の途中工程材
及び最終製品について、先の実施例と同じ要領にて各特
性を測定した。表9(d)、(e)に示すように、Pb
を0.0001%に抑えたNo.52でも、優れた特性
の最終製品板が得られている。
【0043】
【発明の効果】本発明に係る電気・電子部品用銅合金
は、強度(耐力)、導電率、ばね限界値、耐応力緩和特
性、曲げ加工性、Snめっき性など、端子・コネクタ、
リレー、バスバー等の電気・電子部品用材料として必要
とされる特性の全てを兼ね備え、特に自動車用配線材
料、なかでも電力供給用小型コネクタ用材料として好適
である。また、本発明に係る電気・電子部品用銅合金
は、脱酸作用を有するSiを添加して、均一な再結晶を
阻害するP添加量を最小限にとどめ、低コストで生産性
よく製造できる利点がある。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−358033(JP,A) 特開 平10−130755(JP,A) 特開 平5−311288(JP,A) 特開 平2−141562(JP,A) 特開 平5−311278(JP,A) 特開 平2−232327(JP,A) 特開 平10−265874(JP,A) 特開 平11−199954(JP,A) 特開 平7−18356(JP,A) 特開 平11−222641(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 9/00 C22C 9/01 C22C 9/02 C22C 9/06 H01R 13/03

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe:0.5〜2.4%(質量%、以下
    同じ)、Si:0.02〜0.1%、Mg:0.01〜
    0.2%、Sn:0.01〜0.7%、Zn:0.01
    〜0.2%を含有し、P:0.005%以下、Ni:
    0.03%以下、Mn:0.03%以下であり、さらに
    残部がCu及び不可避不純物からなる電気・電子部品用
    銅合金。
  2. 【請求項2】 さらに、Pb:0.0005〜0.01
    5%を含有することを特徴とする請求項1に記載された
    電気・電子部品用銅合金。
  3. 【請求項3】 Be、Al、Ti、V、Cr、Co、Z
    r、Nb、Mo、Ag、In、Hf、Ta、Bの1種又
    は2種以上を総量で1%以下含有することを特徴とする
    請求項1又は2に記載された電気・電子部品用銅合金。
  4. 【請求項4】 Bi、As、Sb及びSをそれぞれ個別
    に0.003%以下、かつこれらの合計を0.005%
    以下とし、さらに、O含有量を10ppm以下、かつH
    含有量を20ppm以下としたことを特徴とする請求項
    1〜3のいずれかに記載された電気・電子部品用銅合
    金。
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