JP5897084B1 - 耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料 - Google Patents

耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料 Download PDF

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Abstract

【課題】嵌合型端子の小型化に適し、160℃超えの温度で長時間使用しても接圧力の低下が少なく、高い導電率を持つ従来の導電材料に比べて優れた耐微摺動摩耗性を示す接続部品用導電材料の提供。【解決手段】リフロー処理後の母材表面に、Cu含有量が20〜70at%で、平均の厚さが0.2〜3.0μmのCu−Sn合金被覆層と、平均の厚さが0.05〜5.0μmのSn被覆層が形成され、材料表面の一方向における算術平均粗さRaが0.15μm以上で、全方向における算術平均粗さRaが3.0μm以下で、Sn被覆層の表面にCu−Sn合金被覆層の一部が露出し、その露出面積率が3〜75%で、Cu−Sn合金被覆層の表面の平均結晶粒径が2μm未満で、母材として用いる銅合金板条は、導電率が50%IACSを超え、200℃で1000時間保持後の応力緩和率が25%以下である耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。【選択図】図1

Description

本発明は、主として自動車分野や一般民生分野で用いられる端子等の接続部品用導電材料に関し、特に微摺動摩耗を低減できるSnめっき付接続部品用導電材料に関する。
自動車のエンジンを電子的に制御する機器(ECU:Electronic Control Unit)等に用いられる多極コネクタ用嵌合端子の素材として、Cu−Ni−Si系、Cu−Ni−Sn−P系、Cu−Fe−P系、Cu−Zn系等、種々の銅合金が用いられている。
このうちCu−Ni−Si系合金は、600MPa以上の引張り強さ、中程度の導電率(35〜50%IACS)、及び0.2%耐力の80%の曲げ応力負荷状態で150℃×1000時間保持後の応力緩和率が15〜20%程度の特性を有し、強度と耐応力緩和特性に優れている。
嵌合端子には、耐食性確保及び接触部における接触抵抗低減等のため、表面に厚さ1μm程度のSn被覆層(リフローSnめっきなど)が設けられる。Sn被覆層を形成した嵌合端子では、オス端子をメス端子に挿入する際、軟質なSn被覆層(Hv:10〜30程度)が塑性変形し、オス−メス端子間に生じたSn−Snの凝着部が剪断される。このとき発生する変形抵抗及び剪断抵抗により、Sn被覆層を形成した嵌合端子では、端子の挿入力が大きくなる。
前記ECUは、多数の嵌合端子を収容するコネクタにより接続されることから、局数の増大に伴って接続の際の挿入力が大きくなる。従って、作業者の負担の軽減、接続の完全性確保等の観点から、嵌合端子の挿入力低減が求められている。
端子嵌合後においては、微摺動摩耗現象が問題となる。微摺動摩耗現象とは、自動車のエンジンの振動や走行時の振動、及び雰囲気温度の変動に伴う膨張、収縮等により、オス端子とメス端子の間に摺動が発生し、これにより端子表面のSnめっきが摩耗する現象である。微摺動摩耗現象で生じたSnの摩耗粉が酸化し、接点部近傍に多量に堆積し、摺動する接点部同士の間にかみ込むと、接点部同士の接触抵抗が増大する。この微摺動磨耗現象はオス端子とメス端子の間の接圧力が小さいほど発生しやすくなることから、挿入力が小さい(接圧力が小さい)嵌合端子において特に発生しやすい。
自動車のエンジンルームのような高温環境で使用されるECUのような機器に組込まれる端子の場合、端子としての信頼性を確保するため、150℃程度の温度で長時間保持後も一定値以上の接圧力を維持できるように、端子の初期の接圧力が決められている。
応力緩和率の小さいCu−Ni−Si合金を用いて嵌合端子を製造すると、初期の接圧力を低く設定することが可能になり、端子の挿入力を大きく低減することができる。その反面、先に記載したとおり、接圧力が小さいことから微摺動摩耗が発生しやすくなるという問題がある。
一方、特許文献1には、銅合金母材表面に、厚さが0.1〜1.0μmのNi層、厚さ0.1〜1.0μmのCu−Sn合金層、及び厚さが2μm以下のSn層からなる表面めっき層がこの順に形成された接続部品用導電材料が記載されている。特許文献1の記載によれば、Sn層の厚さが0.5μm以下のとき動摩擦係数が低下し、多極の嵌合端子として用いたときに挿入力を低く抑えることができる。
特許文献2には、表面粗さを大きくした銅合金母材の表面に、必要に応じてNiめっきを行い、続いてCuめっき及びSnめっきをこの順に施した後、リフロー処理することにより得られた接続部品用導電材料が記載されている。この接続部品用導電材料は、銅合金母材の表面に、厚さが3μm以下のNi被覆層(Niめっきが行われた場合)、厚さが0.2〜3μmのCu−Sn合金被覆層、及び厚さが0.2〜5μmのSn被覆層からなる表面被覆層を有する。この接続部品用導電材料は、Sn被覆層の間から硬質のCu−Sn合金被覆層が一部露出しているため動摩擦係数が小さく、嵌合端子として用いたとき、端子の接圧力を小さくすることなく、挿入力を低減することができる。特許文献2には、銅合金母材をCu−Zn合金及びCu−Fe−P系合金とした発明例が記載されている。
特許文献3には、特許文献2と同様の被覆層構成を有する接続部品用導電材料と、同接続部品用導電材料において銅合金母材をCu−Ni−Si合金とした発明例が記載されている。
特開2004−68026号公報 特開2006−183068号公報 特開2007−258156号公報
近年の端子の小型化に伴い、嵌合部の接触面積も小さくなり、これによる端子の温度上昇が問題となっている。このため、160℃を超える温度、例えば180℃で1000時間保持後も20%程度の応力緩和率を有する端子用銅合金材が要求されるようになっている。同時に、端子嵌合部の温度上昇を抑制するため、Cu−Ni−Si系合金より導電率が高い銅合金が求められている。なお、一般的なCu−Ni−Si系合金の180℃×1000時間保持後の応力緩和率は25%を超え、導電率は最高で50%程度である。
一方、特許文献2,3に記載された接続部品用導電材料は、特許文献1に記載された接続部品用導電材料に比べて端子挿入時の動摩擦係数を低下させることができるため、低挿入力化のために端子の接圧力を小さくする必要がない。従って、従来のSnめっき付き銅合金材に比べて微摺動摩耗が起きにくく、Snの摩耗粉の発生量が少なく、その結果、接触抵抗の増大が抑えられる。このため、この接続部品用導電材料は、自動車等の分野で実際に使用が増えている。しかし同時に、端子の小型化に適するより高い導電率、及び耐微摺動摩耗特性のさらなる改善が求められている。
本発明は、嵌合型端子の小型化に適し、160℃を超える温度で長時間使用しても接圧力の低下が少なく、特許文献2に記載された従来の接続部品用導電材料に比べて優れた耐微摺動摩耗性を示す接続部品用導電材料の提供を目的とする。
本発明に係る接続部品用導電材料は、銅合金板条からなる母材の表面に、Cu含有量が20〜70at%のCu−Sn合金被覆層と、Sn被覆層がこの順に形成され、材料表面はリフロー処理されていて、前記Sn被覆層はリフローSnめっきであり、その材料表面は、少なくとも一方向における算術平均粗さRaが0.15μm以上で、全ての方向における算術平均粗さRaが3.0μm以下であり、前記Sn被覆層の表面に前記Cu−Sn合金被覆層の一部が露出して形成され、前記Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率が3〜75%である接続部品用導電材料において、前記銅合金板条の導電率が50%IACSを超え、かつ200℃で1000時間保持後の応力緩和率が25%以下であり、前記Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さが0.2〜3.0μmで同被覆層の表面の平均結晶粒径が2μm未満であり、Sn被覆層の平均の厚さが0.05〜5.0μmであることを特徴とする。
上記接続部品用導電材料において、母材となる銅合金板条は、例えばCr:0.15〜0.70質量%、Zr:0.01〜0.20質量%の1種又は2種を含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる。
前記銅合金は、好ましくはさらにTi:0.01〜0.30質量%を含む。
前記銅合金は、好ましくはさらにSi:0.01〜0.20質量%を含む。
前記銅合金は、必要に応じて、さらにZn:0.001〜1.0質量%、Sn:0.001〜0.5質量%、Mg:0.001〜0.15質量%、Ag:0.005〜0.50質量%、Fe:0.005〜0.50質量%、Ni:0.005〜0.50質量%、Co:0.005〜0.50質量%、Al:0.005〜0.10質量%、Mn:0.005〜0.10質量%の1種以上を、合計で1.0質量%以下を合計で1.0質量%以下含み得る。
上記接続部品用導電材料は、特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、以下の好ましい実施の形態をとり得る。
前記材料表面は、少なくとも一方向における前記Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔が0.01〜0.5mmである。
前記Sn被覆層表面に露出する前記Cu−Sn合金被覆層の厚さが0.2μm以上である。
前記母材の表面は、少なくとも一方向における算術平均粗さRaが0.3μm以上で、全ての方向における算術平均粗さRaが4.0μm以下である。
前記母材の表面は、少なくとも一方向における凹凸の平均間隔Smが0.01〜0.5mmである。
また、上記接続部品用導電材料の表面被覆層は、以下の好ましい実施の形態をとり得る。
前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにCu被覆層を有する。
前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにNi被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか1つからなる下地層が形成され、前記下地層の平均の厚さが0.1〜3.0μmである。
前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにNi被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか2つの下地層が形成され、2層からなる前記下地層の合計の平均厚さが0.1〜3.0μmである。
前記下地層が形成された場合に、前記下地層とCu−Sn合金被覆層の間にさらにCu被覆層を有する。
前記リフロー処理された材料表面にさらに平均厚さ0.02〜0.2μmのSnめっき層が形成されている。
前記Sn被覆層、Cu被覆層、Ni被覆層、Co被覆層及びFe被覆層は、それぞれSn、Cu、Ni、Co、Fe金属のほか、Sn合金、Cu合金、Ni合金、Co合金、Fe合金を含む。また、前記Snめっき層は、Sn金属のほか、Sn合金を含む。
本発明に係る接続部品用導電材料は、導電率が50%IACSを超え、かつ200℃で1000時間保持後の応力緩和率が25%以下の銅合金母材を使用することにより、嵌合型端子の小型化に適し、160℃を超える高温で長時間保持後も接圧力の低下が少ない。また、接圧力の低下が少ないことで、例えばCu−Ni−Si系合金に比べて耐微摺動摩耗性が向上する。また、Cu−Sn合金被覆層の表面の平均結晶粒径を2μm未満としたことにより、特許文献2に記載された従来の接続部品用導電材料に比べて優れた耐微摺動摩耗性を示す。リフロー処理後の材料表面にSnめっき層を形成した場合、特許文献2に記載された従来の接続部品用導電材料に比べて、はんだ付け性を改善することができる。
実施例No.6のCu−Sn合金被覆層表面のSEM(走査型電子顕微鏡)組織写真である。 微摺動摩耗測定治具の概念図である。 摩擦係数測定治具の概念図である。
[銅合金母材]
(1)銅合金の特性
嵌合型端子に広く用いられているCu−Ni−Si系合金は、0.2%耐力の80%の曲げ応力を負荷した状態で1000時間保持したときの応力緩和率は、保持温度が150℃のとき12〜20%である。しかし、保持温度の上昇に伴って応力緩和率が上昇し、160℃のとき15〜25%、180℃のとき25〜30%、200℃のとき30〜40%となる。応力緩和率に対する要求の厳しいメス端子の場合、先に記載したとおり、その設計基準として、想定した使用温度で1000時間保持後の応力緩和率が25%以下であることが求められることが多い。このため、想定する使用温度が例えば160℃を超える場合、メス端子の素材としてCu−Ni−Si系合金を用いることは難しい。
また、Cu−Ni−Si系合金の導電率は50%IACS以下であり、嵌合型端子のさらなる小型化に適するとはいえない。
本発明において、接続部品用導電材料の母材として用いる銅合金板条は、200℃で1000時間保持後の応力緩和率が25%以下であることから、雰囲気が160℃を超える高温環境においても、長時間の使用が可能になる。なお、応力緩和率の値はリフロー処理の前後で事実上変化しないと推測される。また、本発明に係る銅合金板条は、導電率が50%IACSを超え、嵌合型端子のさらなる小型化に適する。本発明に係る銅合金板条の導電率は、好ましくは60%IACS以上、さらに好ましくは70%IACS以上である。
このような銅合金板条としては、以下に示すCu−Cr系、Cu−Cr−Ti系、Cu−Zr系及びCu−Cr−Zr系合金が好適である。これらの合金は160℃を超える温度でも耐応力緩和特性に優れることから、初期の接圧力を小さく設定でき、それにより端子挿入時の挿入力を低減することができる。一方、接圧力を小さくしても、高温長時間経過後も接圧力の低下が少なく、同時に、本発明に係る表面被覆層の構成を採用することにより、接続部品用導電材料に優れた耐微摺動摩耗特性を付与することができる。
(2)銅合金の組成
本発明に係る銅合金は、Cr:0.15〜0.70質量%とZr:0.01〜0.20質量%の1種又は2種を含み、残部がCu及び不可避的不純物からなる。この銅合金は、好ましくはさらにTi:0.01〜0.30質量%又は/及びSi:0.01〜0.20質量%を含む。
Crは、Cr単体で、又はSi,Tiと共にCr−Si、Cr−Ti、Cr−Si−Tiなどの化合物を形成し、析出硬化によって銅合金の強度を向上させる。この析出により、Cu母相中のCr、Si及びTiの固溶量が減少し、銅合金の導電率が高まる。Crの含有量が0.15質量%未満では、析出による強度の増加が十分でなく、耐応力緩和特性も向上しない。一方、Crの含有量が0.7質量%を超えると、析出物が粗大化する原因となり、耐応力緩和特性及び曲げ加工性が低下する。従って、Crの含有量は0.15〜0.7質量%の範囲とする。Cr含有量の下限は好ましくは0.20質量%、さらに好ましくは0.25質量%であり、上限は好ましくは0.6質量%、さらに好ましくは0.50質量%である。
Zrは、Cu,Siと金属間化合物を形成し、析出硬化によって銅合金の強度と耐応力緩和特性を向上させる。この析出により、Cu母相中のSi及びTiの固溶量が減少し、銅合金の導電率が高まる。また、Zrは、結晶粒を微細化する作用効果を有する。Zrの含有量が0.01質量%未満では、前記効果が十分得られない。また、0.20質量%を超えると、粗大な化合物が形成され耐応力緩和特性及び曲げ加工性が低下する。従って、Zrの含有量は0.01〜0.20質量%の範囲とする。Zr含有量の下限は好ましくは0.015質量%、さらに好ましくは0.02質量%であり、上限は好ましくは0.18質量%、さらに好ましくは0.15質量%である。
Tiは、Cu母材中に固溶して銅合金の強度、耐熱性及び応力緩和特性を向上させる作用がある。また、Tiは、Cr,Siと共に析出物を形成し、析出硬化によって銅合金の強度を向上させる。この析出により、Cu母相中のCr、Si及びTiの固溶量が減少し銅合金の導電率が高まる。Tiの含有量が0.01質量%未満では、銅合金の耐熱性が低く焼鈍工程で軟化し高強度が得にくい。また、銅合金の耐応力緩和特性を向上させることができない。一方、Tiの含有量が0.30質量%を超えると、Cu母相中のTiの固溶量が増加して、導電率の低下を招く。従って、Tiの含有量は0.01〜0.30質量%の範囲とする。Ti含有量の下限は好ましくは0.02質量%、さらに好ましくは0.03質量%であり、上限は好ましくは0.25質量%、さらに好ましくは0.20質量%である。
Siは、Cr,Zr,Tiと共にCr−Si、Zr−Si、Ti−Si、Cr−Si−Ti等の化合物を形成して、析出硬化によって銅合金の強度を増加させる。この析出により、Cu母相中のCr、Zr、Si及びTiの固溶量が減少し導電率が高まる。Siの含有量が0.01質量%未満では、Cr−Si、Zr−Si、Ti−Si又はCr−Si−Ti等の析出物による強度の向上が十分ではない。一方、Siの含有量が0.20質量%を超えると、Cu母相中のSiの固溶量が増加し導電率が低下する。また、前記析出物が粗大化し、曲げ加工性及び耐応力緩和特性が低下する。従って、Siの含有量は0.01〜0.20質量%の範囲とする。Si含有量の下限は好ましくは0.015質量%、さらに好ましくは0.02質量%であり、上限は好ましくは0.15質量%、さらに好ましくは0.10質量%である。
上記銅合金は、必要に応じて、さらに、Zn:0.001〜1.0質量%、Sn:0.001〜0.5質量%、Mg:0.001〜0.15質量%、Ag:0.005〜0.50質量%、Fe:0.005〜0.50質量%、Ni:0.005〜0.50質量%,Co:0.005〜0.50質量%,Al:0.005〜0.10質量%,Mn:0.005〜0.10質量%の1種以上を、合計で1.0質量%以下を含有する。これらの元素はいずれも銅合金の強度を向上させるが、これらの元素の含有量が合計で1.0質量%を超えると、銅合金の導電率が悪化する。
これらの元素は、強度向上効果に加え、以下のような効果を有する。
Znは、電子部品の接合に用いるSnめっき又ははんだの耐熱剥離性を改善するために有効な元素である。Znの含有量が0.001質量%未満ではその効果がなく、1.0質量%を超えると、銅合金の導電率が低下する。従って、Znの含有量は0.001〜1.0質量%の範囲とする。Zn含有量の下限は好ましくは0.01質量%、さらに好ましくは0.1質量%であり、上限は好ましくは0.8質量%、さらに好ましくは0.6質量%である。
Sn,Mgは、応力緩和特性の向上に有効である。また、Mgは脱硫作用を有し、熱間加工性を改善する。しかし、Sn,Mgの各元素の含有量が0.001質量%未満では、いずれも効果が少ない。一方、Snの各元素の含有量が0.5質量%を超え、又はMgの含有量が0.15質量%を超えると、銅合金の導電率が低下する。従って、Snの含有量は0.001〜0.5質量%、Mgの含有量は0.001〜0.15%の範囲とする。Sn含有量の下限は好ましくは0.005質量%、さらに好ましくは0.01質量%であり、上限は好ましくは0.40質量%、さらに好ましくは0.30質量%である。Mg含有量の下限は好ましくは0.005質量%、さらに好ましくは0.01質量%であり、上限は好ましくは0.10質量%、さらに好ましくは0.05質量%である。
Agは、Cu母材中に固溶して銅合金の耐熱性及び応力緩和特性を向上させる作用がある。Agの含有量が0.005質量%未満では前記効果が小さく、0.5質量%を超えるとその効果が飽和するため、Agの含有量は0.005〜0.50質量%とする。Ag含有量の下限は好ましくは0.01質量%、さらに好ましくは0.015質量%であり、上限は好ましくは0.30質量%、さらに好ましくは0.20質量%である。
Fe,Ni,Coは、Siとの化合物を析出し、銅合金の導電性を向上させる作用を有するが、含有量が多くなると固溶量が多くなり導電性が悪化する。Fe,Ni,Coの含有量はそれぞれ0.005〜0.50質量%とする。これらの元素の下限は好ましくは0.01質量%、さらに好ましくは0.03質量%であり、上限は好ましくは0.40質量%、さらに好ましくは0.30質量%である。
AlとMnは脱硫作用を有し、熱間加工性を改善する。しかし、Al又はMnの含有量が0.005質量%未満ではその効果が少ない。一方、Al又はMnの含有量が0.1質量%を超えると、銅合金の導電率が低下する。これらの元素の下限は好ましくは0.01質量%、さらに好ましくは0.02質量%であり、上限は好ましくは0.08質量%、さらに好ましくは0.06質量%である。
なお、以上説明したCu−Cr系、Cu−Cr−Ti系、Cu−Zr系及びCu−Cr−Zr系合金の組成自体は公知である。
上記銅合金の不可避不純物として、As,Sb,B,Pb,V,Mo,Hf,Ta,Bi,In,H,Oが挙げられる。
As,Sb,B,Pb,V,Mo,Hf,Ta,Bi,Inについては、これらの合計含有量が0.5質量%を超えると、粒界に偏析したり、晶出物を形成して、耐応力緩和特性や曲げ加工性を劣化させる。従って、銅合金中ののこれらの元素の含有量は、合計で0.5質量%以下とするのが好ましい。より好ましくは合計で0.1質量%以下である。
Hは、溶解鋳造工程において、溶解原料や雰囲気より溶湯に取込まれる。溶湯中のHの含有量が多くなると、凝固時にHガスとして排出され、鋳塊内部にブローホールが形成され、また鋳塊の結晶粒界に濃縮して鋳塊の結晶粒界の強度を低下させる。このような鋳塊を所定温度まで加熱して熱間圧延すると、加熱時や熱間圧延時に内部割れが発生し、熱間加工性が低下する。また、熱間割れが起こらない場合でも、その後の加工熱処理工程で板表面に膨れが発生し、製品の歩留まりを低下させる。このため、銅合金中のHの含有量は0.0002質量%以下とするのが好ましい。H含有量は、より好ましくは0.00015質量%以下であり、さらに好ましくは0.0001質量%以下である。
本発明に係る銅合金は、Oとの親和力が大きいCr、Zrの1種以上を含み、好ましくはさらにTiを含むため、溶解鋳造工程で酸化されやすい。鋳塊に巻き込まれた酸化物は、鋳塊の熱間圧延時の割れ、冷間圧延時の表面疵、薄板の曲げ加工性低下等の問題を発生させる。このため、銅合金中のOの含有量は0.0030質量%以下とするのが好ましい。O含有量は、より好ましくは0.0020質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下である。
(3)銅合金板条の製造方法
Cu−Cr系、Cu−Zr系及びCu−Cr−Zr系合金板条は、通常、溶解、鋳造した鋳塊に均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、及び析出熱処理を施すことにより製造される。本発明に係る銅合金板条の場合も、この製造工程自体を大きく変更する必要はない。
銅合金の溶解、鋳造においては、溶湯中にH、及びOが取込まれないよう、原料の乾燥、溶解炉の不活性ガスシール(窒素、アルゴンなど)、溶解炉−鋳型間の不活性ガスシール等の対策を実施することが望ましい。
均質化処理は800〜1000℃で0.5時間以上行う。均質化処理後の熱間圧延は60%以上の加工率で行い、次いで700℃以上の温度から焼き入れる。700℃よりも低い温度域で焼き入れると粗大な析出物が生成し易くなり、耐応力緩和特性や曲げ加工性が低下する。
続いて、熱間圧延材を所望の厚さに冷間圧延した後、析出熱処理を施す。析出熱処理の後にさらに冷間圧延を行ってもよく、この冷間圧延後、さらに歪取り焼鈍を行ってもよい。また、前記の熱間圧延−冷間圧延−析出熱処理工程に代えて、熱間圧延−冷間圧延−溶体化処理−冷間圧延−析出熱処理の工程を採用してもよい。溶体化処理は、熱間圧延後の焼き入れ中に形成されるCr含有析出物を再固溶させるためのもので、750〜850℃で30秒以上の条件で実施し、その範囲内で、溶体化処理後の結晶粒径が熱間圧延終了後の結晶粒径よりも大きくなる条件を選択することが望ましい。析出熱処理はCr単体、Cu−Zr、Cr−Si、Cr−Si−Ti等の化合物を析出させるためのもので、400〜550℃で2時間以上の条件で実施し、その範囲内で、硬度ができるだけ高くかつ伸びが10%以上となる温度を選択することが望ましい。
[表面被覆層]
(1)Cu−Sn合金被覆層中のCu含有量
Cu−Sn合金被覆層中のCu含有量は、特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、20〜70at%とする。Cu含有量が20〜70at%のCu−Sn合金被覆層は、CuSn相を主体とする金属間化合物からなる。本発明ではCuSn相がSn被覆層の表面に部分的に突出しているため、電気接点部の摺動の際に接圧力を硬いCuSn相で受けてSn被覆層同士の接触面積を一段と低減でき、これによりSn被覆層の摩耗や酸化も減少する。一方、CuSn相はCuSn相に比べてCu含有量が多いため、これをSn被覆層の表面に部分的に露出させた場合には、経時や腐食などによる材料表面のCuの酸化物量などが多くなり、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。また、CuSn相はCuSn相に比べて脆いために、成形加工性などが劣るという問題点がある。従って、Cu−Sn合金被覆層の構成成分を、Cu含有量が20〜70at%のCu−Sn合金に規定する。このCu−Sn合金被覆層には、CuSn相が一部含まれていてもよく、母材及びSnめっき中の成分元素などが含まれていてもよい。しかし、Cu−Sn合金被覆層のCu含有量が20at%未満では凝着量が増して微摺動摩耗性が低下する。一方、Cu含有量が70at%を超えると経時や腐食などによる電気的接続の信頼性を維持することが困難となり、成形加工性なども悪くなる。従って、Cu−Sn合金被覆層中のCu含有量は20〜70at%とする。Cu−Sn合金被覆層中のCu含有量の下限は好ましくは45at%であり、上限は好ましくは65at%である。
(2)Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さ
Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さは、特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、0.2〜3.0μmとする。本発明では、Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さを、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSnの面密度(単位:g/mm)をSnの密度(単位:g/mm)で除した値と定義する。下記実施例に記載したCu−Sn合金被覆層の平均の厚さ測定方法は、この定義に準拠するものである。Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さが0.2μm未満では、本発明のようにCu−Sn合金被覆層を材料表面に部分的に露出形成させる場合には、高温酸化などの熱拡散による材料表面のCuの酸化物量が多くなる。材料表面のCuの酸化物量が多くなると、接触抵抗が増加し易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。一方、3.0μmを超える場合には、経済的に不利であり、生産性も悪く、硬い層が厚く形成されるために成形加工性なども悪くなる。従って、Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さを0.2〜3.0μmに規定する。Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さの下限は好ましくは0.3μmであり、上限は好ましくは1.0μmである。
(3)Sn被覆層の平均の厚さ
Sn被覆層の平均の厚さは0.05〜5.0μmとする。この範囲は、特許文献2に記載された接続部品用導電材料におけるSn被覆層の平均の厚さ(0.2〜5.0μm)と比べると、薄厚方向にやや広い。Sn被覆層の平均の厚さが0.2μm未満では、特許文献2に記載されているとおり、高温酸化などの熱拡散による材料表面のCuの酸化物量が多くなり、接触抵抗を増加させ易く、耐食性も悪くなる。その一方で、摩擦係数が低下し、大幅な低挿入力化を実現できる。しかし、Sn被覆層の平均の厚さがさらに薄く、0.05μm未満になると、軟らかいSnによる潤滑効果が発揮されなくなり、逆に摩擦係数が上昇する。Sn被覆層の平均の厚さが5.0μmを超える場合には、Snの凝着により、摩擦係数が上昇するだけでなく、経済的に不利であり、生産性も悪くなる。従って、Sn被覆層の平均の厚さを0.05〜5.0μmに規定する。このうち、低接触抵抗及び高耐食性が重視される用途の場合は0.2μm以上が好ましく、特に低摩擦係数が重視される用途の場合は0.2μm未満が好ましい。Sn被覆層の平均の厚さの下限は好ましくは0.07μm、さらに好ましくは0.10μmであり、上限は好ましくは3.0μm、さらに好ましくは1.5μmである。
Sn被覆層がSn合金からなる場合、Sn合金のSn以外の構成成分としては、Pb、Bi、Zn、Ag、Cuなどが挙げられる。Pbについては50質量%未満、他の元素については10質量%未満が好ましい。
(4)材料表面の算術平均粗さRa
特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、材料表面の少なくとも一方向における算術平均粗さRaが0.15μm以上、全ての方向における算術平均粗さRaが3.0μm以下とする。全ての方向において算術平均粗さRaが0.15μm未満の場合、Cu−Sn合金被覆層の材料表面突出高さが全体に低く、電気接点部の摺動の際に接圧力を硬いCuSn相で受ける割合が小さくなり、特に微摺動によるSn被覆層の摩耗量を低減することが困難となる。一方、いずれかの方向において算術平均粗さRaが3.0μmを超える場合、高温酸化などの熱拡散による材料表面のCuの酸化物量が多くなり、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。従って、母材の表面粗さは、少なくとも一方向の算術平均粗さRaが0.15μm以上かつ全ての方向の算術平均粗さRaが3.0μm以下と規定する。好ましくは、少なくとも一方向の算術平均粗さRaが0.2μm以上で、全ての方向の算術平均粗さRaが2.0μm以下である。
(5)Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率
Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率は、特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、3〜75%とする。なお、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率は、材料の単位表面積あたりに露出するCu−Sn合金被覆層の表面積に100をかけた値として算出される。Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率が3%未満では、Sn被覆層同士の凝着量が増し、耐微摺動摩耗性が低下してSn被覆層の摩耗量が増加する。一方、75%を超える場合には、経時や腐食などによる材料表面のCuの酸化物量などが多くなり、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。従って、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率を3〜75%に規定する。好ましくは下限が10%、上限が50%である。
(6)Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径
Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径は2μm未満とする。Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径が小さくなると、Cu−Sn合金被覆層表面の硬さ、及びCu−Sn合金被覆層の上に存在するSn被覆層の見かけの硬さが大きくなり、動摩擦係数がさらに小さくなる。また、Cu−Sn合金被覆層表面の硬さが大きくなることで、端子の摺動時にCu−Sn合金層が変形又は破壊しにくくなり、耐微摺動摩耗性が向上する。
さらに、Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径が小さくなると、Cu−Sn合金被覆層の表面の微視的な凹凸が小さくなり、露出したCu−Sn合金層被覆層と相手側端子との接触面積が増大する。これにより、Cu−Sn合金被覆層と相手側端子のCu−Sn合金被覆層又はSn被覆層の間の凝着力が大きくなり、端子の静摩擦係数が増大し、端子間に振動、熱膨張・収縮が作用しても端子同士がずれにくくなり、耐微摺動磨耗性が向上する。
そのため、Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径は2μm未満、好ましくは1.5μm以下、更に好ましくは1.0μm以下とする。なお、後述する実施例に示すとおり、特許文献2において好ましいとされるリフロー処理条件で得られた接続部品用導電材料では、Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径は2μmを越えている。
(7)Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔
Cu−Sn合金被覆層の少なくとも一方向における平均の材料表面露出間隔は、特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、0.01〜0.5mmとすることが好ましい。なお、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔は、材料表面に描いた直線を横切るCu−Sn合金被覆層の平均の幅(前記直線に沿った長さ)とSn被覆層の平均の幅を足した値と定義する。Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔が0.01mm未満では、高温酸化などの熱拡散による材料表面のCuの酸化物量が多くなり、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。一方、0.5mmを超える場合には、特に小型端子に用いた際に低い摩擦係数を得ることが困難となる場合が生じてくる。一般的に端子が小型になれば、インデントやリブなどの電気接点部(挿抜部)の接触面積が小さくなるため、挿抜の際にSn被覆層同士のみの接触確率が増加する。これにより凝着量が増すため、低い摩擦係数を得ることが困難となる。従って、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔を少なくとも一方向において0.01〜0.5mmとすることが好ましい。より好ましくは、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔を全ての方向において0.01〜0.5mmにする。これにより、挿抜の際のSn被覆層同士のみの接触確率が低下する。好ましくは下限が0.05mm、上限が0.3mmである。
(8)表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さ
本発明に係る接続部品用導電材料において、表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さは、特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、0.2μm以上とすることが好ましい。本発明のようにCu−Sn合金被覆層の一部をSn被覆層の表面に露出させる場合、製造条件によりSn被覆層の表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さが前記Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さと比較して極めて薄くなる場合が生じるからである。
なお、Sn被覆層の表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さは、断面観察により測定した値と定義する(前記Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さ測定方法とは異なる)。Sn被覆層の表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さが0.2μm未満の場合、微摺動摩耗現象が早期に生じやすい。また、高温酸化などの熱拡散による材料表面のCuの酸化物量が多くなり、また耐食性も低下することから、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。従って、Sn被覆層の表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さを0.2μm以上とすることが好ましい。より好ましくは0.3μm以上である。
(9)リフロー処理後に形成されるSnめっき層
リフロー処理後に接続部品用導電材料の表面に形成されるSnめっき層の平均の厚さは0.02〜0.2μmとする。このSnめっき層が形成された接続部品用導電材料は、はんだ濡れ性が向上するため、はんだ付け接合部を有する端子の製造に適する。Snめっきは、光沢Snめっき、無光沢Snめっき、あるいはその中間の光沢度が得られる半光沢Snめっきのいずれでもよい。Snめっき層の平均の厚さが0.02μm未満では、はんだ濡れ性の向上の効果が小さく、0.2μmを超えると摩擦係数が高くなり、かつ耐微摺動摩耗性が低下する。このSnめっき層の平均の厚さは0.03μm以上が好ましく、0.05μm以上がさらに好ましい。
このSnめっき層は、リフロー処理後の表面全体に均一な厚さで形成することが好ましいが、リフロー処理後の表面に露出したCu−Sn合金被覆層とSn被覆層とでは、Snめっきの付きやすさに差がある(後者が前者より付きやすい)。このため、露出したCu−Sn合金被覆層の部分には、Snめっきの未着部が一部存在する場合がある。
(10)その他の表面被覆層構成
(a)特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、母材とCu−Sn合金被覆層の間にCu被覆層を有していてもよい。このCu被覆層はリフロー処理後にCuめっき層が残留したものである。Cu被覆層は、Znやその他の母材構成元素の材料表面への拡散を抑制するのに役立ち、はんだ付け性などが改善されることが広く知られている。Cu被覆層は厚くなりすぎると成型加工性などが劣化し、経済性も悪くなることから、Cu被覆層の厚さは3.0μm以下が好ましい。
Cu被覆層には、母材に含まれる成分元素等が少量混入していてもよい。また、Cu被覆層がCu合金からなる場合、Cu合金のCu以外の構成成分としてはSn、Zn等が挙げられる。Snの場合は50質量%未満、他の元素については5質量%未満が好ましい。
(b)特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、母材とCu−Sn合金被覆層の間(Cu被覆層がない場合)、又は母材とCu被覆層の間に、下地層としてNi被覆層が形成されていてもよい。Ni被覆層はCuや母材構成元素の材料表面への拡散を抑制して、高温長時間使用後も接触抵抗の上昇を抑制するとともに、Cu−Sn合金被覆層の成長を抑制してSn被覆層の消耗を防止し、また亜硫酸ガス耐食性が向上することが知られている。また、Ni被覆層自身の材料表面への拡散はCu−Sn合金被覆層やCu被覆層により抑制される。このことから、Ni被覆層を形成した接続部品用材料は、耐熱性が求められる接続部品に特に適する。しかし、Ni被覆層の平均の厚さが0.1μm未満の場合、Ni被覆層中のピット欠陥が増加することなどにより、上記効果を充分に発揮できなくなる。このため、Ni被覆層の平均の厚さは0.1μm以上であることが好ましい。一方、Ni被覆層は厚くなりすぎると成型加工性などが劣化し、経済性も悪くなることから、Ni被覆層の平均の厚さは3.0μm以下が好ましい。Ni被覆層の平均厚さは、好ましくは下限が0.2μm、上限が2.0μmである。
Ni被覆層には、母材に含まれる成分元素等が少量混入していてもよい。また、Ni被覆層がNi合金からなる場合、Ni合金のNi以外の構成成分としては、Cu、P、Coなどが挙げられる。Cuについては40質量%以下、P、Coについては10質量%以下が好ましい。
(c)Ni被覆層に代え、下地層としてCo被覆層又はFe被覆層を用いることができる。Co被覆層はCo又はCo合金からなり、Fe被覆層はFe又はFe合金からなる。
Co被覆層又はFe被覆層は、Ni被覆層と同様に、母材構成元素の材料表面への拡散を抑制する。このため、Cu−Sn合金層の成長を抑制してSn層の消耗を防止し、高温長時間使用後において接触抵抗の上昇を抑制するとともに、良好なはんだ濡れ性を得るのに役立つ。しかし、Co被覆層又はFe被覆層の平均厚さが0.1μm未満の場合、Ni被覆層と同様に、Co被覆層又はFe被覆層中のピット欠陥が増加することなどにより、上記効果を充分に発揮できなくなる。また、Co被覆層又はFe被覆層の平均厚さが3.0μmを超えて厚くなると、Ni被覆層と同様に、上記効果が飽和し、また曲げ加工で割れが発生するなど端子への成形加工性が低下し、生産性や経済性も悪くなる。従って、Co被覆層又はFe被覆層を下地層としてNi被覆層の代わりに用いる場合、Co被覆層又はFe被覆層の平均厚さは0.1〜3.0μmとする。Co被覆層又はFe被覆層の平均厚さは、好ましくは下限が0.2μm、上限が2.0μmである。
(d)Ni被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか2つを、下地層として用いることができる。この場合、Co被覆層又はFe被覆層を、母材表面とNi被覆層の間、又は前記Ni被覆層とCu−Sn合金層の間に形成することが好ましい。2層の下地層(Ni被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか2つ)の合計の平均厚さは、下地層をNi被覆層のみ、Co被覆層のみ又はFe被覆層のみとした場合と同じ理由で、0.1〜3.0μmとする。この合計の平均厚さは、好ましくは下限が0.2μm、上限が2.0μmである。
[接続部品用導電材料の製造方法]
本発明の接続部品用導電材料は、銅合金母材の表面を粗化処理したうえで、該母材表面に直接に、あるいはNiめっき層やCuめっき層を介してSnめっき層を形成し、続いてリフロー処理することにより製造する。この製造方法のステップは、特許文献2に記載された接続部品用導電材料の製造方法と同じである。
母材の表面を粗化処理する方法としては、イオンエッチング等の物理的方法、エッチングや電解研磨等の化学的方法、圧延(研磨やショットブラスト等により粗面化したワークロールを使用)、研磨、ショットブラスト等の機械的方法がある。この中で、生産性、経済性及び母材表面形態の再現性に優れる方法としては、圧延や研磨が好ましい。
Niめっき層、Cuめっき層及びSnめっき層が、それぞれNi合金、Cu合金及びSn合金からなる場合、先にNi被覆層、Cu被覆層及びSn被覆層に関して説明した各合金を用いることができる。
Niめっき層の平均の厚さは0.1〜3μm、Cuめっき層の平均の厚さは0.1〜1.5μm、Snめっき層の平均の厚さは0.4〜8.0μmの範囲が好ましい。Niめっき層を形成しない場合、Cuめっき層を全く形成しないこともあり得る。
リフロー処理により、Cuめっき層又は銅合金母材のCuとSnめっき層のSnが相互拡散し、Cu−Sn合金被覆層が形成されるが、その際にCuめっき層が全て消滅する場合と一部残留する場合の両方があり得る。
粗化処理後の母材表面粗さは、特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、少なくとも一方向の算術平均粗さRaが0.3μm以上、かつ全ての方向の算術平均粗さRaが4.0μm以下であることが望ましい。全ての方向において算術平均粗さRaが0.3μm未満の場合、本発明の接続部品用導電材料の製造が困難となる。具体的にいえば、リフロー処理後の材料表面の少なくとも一方向における算術平均粗さRaを0.15μm以上とし、かつCu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率を3〜75%とし、同時にSn被覆層の平均の厚さを0.05〜5.0μmとすることが困難となる。一方、いずれかの方向において算術平均粗さRaが4.0μmを超える場合、溶融Sn又はSn合金の流動作用によるSn被覆層表面の平滑化が困難となる。従って、母材の表面粗さは、少なくとも一方向の算術平均粗さRaが0.3μm以上、かつ全ての方向の算術平均粗さRaが4.0μm以下とする。この表面粗さとしたことにより、溶融Sn又はSn合金の流動作用(Sn被覆層の平滑化)に伴い、リフロー処理で成長したCu−Sn合金被覆層の一部が材料表面に露出する。母材の表面粗さは、好ましくは、少なくとも一方向の算術平均粗さRaが0.4μm以上、全ての方向の算術平均粗さRaが3.0μm以下である。
また、特許文献2に記載された接続部品用導電材料と同じく、母材表面の前記一方向において算出された凹凸の平均間隔Smは、0.01〜0.5mmとすることが好ましい。リフロー処理によりCuめっき層又は銅合金母材と溶融したSnめっき層の間に形成されるCu−Sn拡散層は、通常、母材の表面形態を反映して成長する。このため、リフロー処理により形成されるCu−Sn合金被覆層の材料表面露出間隔は、母材表面の凹凸の平均間隔Smをおよそ反映したものとなる。従って、母材表面の前記一方向において算出された凹凸の平均間隔Smは、0.01〜0.5mmであることが好ましい。より好ましくは、下限が0.05mm、上限が0.3mmである。これにより、材料表面に露出するCu−Sn合金被覆層の露出形態を制御することが可能となる。
特許文献2には、リフロー処理の条件として、600℃以下の温度で3〜30秒で行うことが好ましいと記載され、そのうち特に300℃以下のできるだけ少ない熱量で行うことが好ましいと記載され、実施例は主として280℃×10秒の条件で行われている。また特許文献2の段落0035には、このリフロー処理条件で得られたCu−Sn合金被覆層の結晶粒径が、数〜数十μmであると記載されている。
一方、本発明者の知見によれば、Cu−Sn合金被覆層の結晶粒径をさらに小さく、2μm未満とするには、リフロー処理時の昇温速度を大きくする必要がある。この昇温速度を大きくするには、リフロー処理時に材料に与える熱量を大きくすればよく、つまりは昇温時においてリフロー処理炉の雰囲気温度を高く設定すればよい。昇温速度は15℃/秒以上が好ましく、さらに好ましくは20℃/秒以上である。なお、特許文献2には、Cu−Sn合金被覆層の結晶粒径が数μm〜数十μmと記載されているから、リフロー処理の昇温速度は8〜12℃/秒程度又はそれ以下ではないかと推測される。
実体温度としてのリフロー処理温度は400℃以上が好ましく、450℃以上が更に好ましい。一方、Cu−Sn合金被覆層のCu含有量が高くなり過ぎないように、リフロー処理温度は650℃以下が好ましく、600℃以下がさらに好ましい。また、上記リフロー処理温度に保つ時間(リフロー処理時間)は5〜30秒程度とし、リフロー処理温度が高いほど短時間とすることが望ましい。リフロー処理後は、定法に従い水中に浸漬し急冷する。
以上の条件でリフロー処理を行うことで、結晶粒径の小さいCu−Sn合金被覆層が形成される。また、Cu含有量が20〜70at%のCu−Sn合金被覆層が形成され、0.2μm以上の厚さを有するCu−Sn合金被覆層が表面に露出し、かつSnめっき層の過度の消耗が抑えられる。
リフロー処理後、必要に応じて、接続部品用導電材料の表面に、平均の厚さが0.02〜0.2μmのSnめっき層を形成する。このSnめっきは、光沢Snめっき、無光沢Snめっき、あるいはその中間の光沢度が得られる半光沢Snめっきのいずれでもよい。
表1に示す組成と機械的性質及び導電率を有する板厚0.25mmの銅合金板A〜Dに、機械的な方法(圧延又は研磨)で表面粗化処理を行い(No.1〜11)、又は表面粗化処理を行わず(No.12〜14)、種々の表面粗さを有する銅合金母材に仕上げた。この銅合金母材A〜Dに、Niめっきを行い(No.6,7,14は行わず)、さらに種々の厚さのCuめっき及びSnめっきを施した後、リフロー処理炉の雰囲気温度を調整し、表2に示す種々の条件(温度×時間)でリフロー処理を行うことにより試験材を得た。リフロー処理温度への昇温速度は、No.1〜10では15℃/秒以上、No.11〜14では10℃/秒程度であった。
なお、銅合金板A〜Dの機械的性質及び導電率は、以下の要領で測定した。
0.2%耐力は、各銅合金板から採取したASTME08試験片(圧延方向に平行(L.D.)及び垂直(T.D.)方向)を用いて測定した。
応力緩和率は、片持ち梁方式によって測定した。長さ方向が板材の圧延方向に対して平行方向(L.D.)及び直角方向(T.D.)になる幅10mm、長さ90mmの短冊状試験片を採取し、その一端を剛体試験台に固定する。固定端から距離lの位置で試験片にたわみd(=10mm)を与え、固定端に、それぞれの方向(L.D.又はT.D.)における材料の0.2%耐力の80%に相当する表面応力を負荷する。前記距離lは、日本伸銅協会技術標準(JCBA−T309:2004)の「銅及び銅合金薄板条の曲げによる応力緩和試験方法」により算出した。たわみを与えた試験片を200℃に加熱したオーブン中に1000時間保持した後に取り出し、たわみ量d(=10mm)を取り去ったときの永久歪みδを測定し、応力緩和率RS=(δ/d)×100を計算する。なお、200℃で1000時間保持の条件は、ラーソンミラーの式で計算すると160℃で約130,000時間保持の条件に相当する。
導電率は、Cu−Zn合金板から圧延平行方向に採取した試験片を用いて測定した。
得られた試験材について、各被覆層の平均の厚さ、Cu−Sn合金被覆層のCu含有量、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率、材料表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さ、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔、Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径、及び材料表面粗さを、下記要領で測定した。その結果を表2に示す。なお、No.1〜14の試験材は、リフロー処理によってCuめっき層は消滅し、Cu被覆層が存在しない。
下記測定方法は、Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径の測定方法を除き、特許文献2に記載された方法に倣った。
(Ni被覆層の平均の厚さ測定方法)
蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、リフロー処理後のNi被覆層の平均の厚さを測定した。測定条件は、検量線にSn/Ni/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。
(Cu−Sn合金被覆層のCu含有量測定方法)
まず、試験材をp−ニトロフェノール及び苛性ソーダを成分とする水溶液に10分間浸漬し、Sn被覆層を除去した。その後、EDX(エネルギー分散型X線分光分析器)を用いて、Cu−Sn合金被覆層のCu含有量を定量分析により求めた。
(Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さ測定方法)
まず、試験材をp−ニトロフェノール及び苛性ソーダを成分とする水溶液に10分間浸漬し、Sn被覆層を除去した。その後、蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚を測定した。測定条件は、検量線にSn/母材の単層検量線又はSn/Ni/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。得られた値をCu−Sn合金被覆層の平均の厚さと定義して算出した。
(Sn被覆層の平均の厚さ測定方法)
まず、蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、試験材のSn被覆層の膜厚とCu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚の和を測定した。その後、p−ニトロフェノール及び苛性ソーダを成分とする水溶液に10分間浸漬し、Sn被覆層を除去した。再度、蛍光X線膜厚計を用いて、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚を測定した。測定条件は、検量線にSn/母材の単層検量線又はSn/Ni/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。得られたSn被覆層の膜厚とCu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚の和から、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚を差し引くことにより、Sn被覆層の平均の厚さを算出した。
(表面粗さ測定方法)
接触式表面粗さ計(株式会社東京精密;サーフコム1400)を用いて、JIS B0601−1994に基づいて測定した。表面粗さ測定条件は、カットオフ値を0.8mm、基準長さを0.8mm、評価長さを4.0mm、測定速度を0.3mm/s、及び触針先端半径を5μmRとした。表面粗さの測定方向は、表面粗化処理の際に行った圧延又は研磨方向に直角な方向(表面粗さが最も大きく出る方向)とした。
(Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率測定方法)
試験材の表面を、EDX(エネルギー分散型X線分光分析器)を搭載したSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて200倍の倍率で観察した。得られた組成像の濃淡(汚れや傷等のコントラストは除く)から画像解析によりCu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率を測定した。
(Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔測定方法)
試験材の表面を、EDX(エネルギー分散型X線分光分析器)を搭載したSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて200倍の倍率で観察した。得られた組成像から、材料表面に引いた直線を横切るCu−Sn合金被覆層の平均の幅(前記直線に沿った長さ)とSn被覆層の平均の幅を足した値の平均を求めることにより、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔を測定した。測定方向(引いた直線の方向)は、表面粗化処理の際に行った圧延又は研磨方向に直角な方向とした。
(材料表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さ測定方法)
ミクロトーム法にて加工した試験材の断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて10,000倍の倍率で観察し、画像解析処理により材料表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さの最小値を測定した。
(Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径測定方法)
試験材をp−ニトロフェノール及び苛性ソーダを成分とする水溶液に10分間浸漬し、Sn被覆層を除去した。その後、試験材表面をSEMにより3000倍で観察し、画像解析により、各粒子を円としたときの直径(円相当直径)の平均値を求め、これをCu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径とした。なお、試験材No.6の表面組織写真を図1に示す。
また、得られた試験材について、下記要領で微摺動摩耗試験を行い、微摺動後の摩耗量を測定した。その結果を、同じく表2に示す。
(微摺動摩耗試験)
嵌合型接続部品における電気接点のインデント部の形状を模擬し、図2に示すような摺動試験機(株式会社山崎精機研究所;CRS−B1050CHO)を用いて評価した。まず、各試験材から切り出した板材のオス試験片1を水平な台2に固定し、その上に各試験材から切り出した半球加工材(外径をφ1.8mmとした)のメス試験片3をおいて被覆層同士を接触させた。なお、オス試験片1とメス試験片3は同一の試験材を使用した。メス試験片3に3.0Nの荷重(錘4)をかけてオス試験片1を押さえ、ステッピングモータ5を用いてオス試験片1を水平方向に摺動させた(摺動距離を50μm、摺動周波数を1Hzとした)。なお、矢印は摺動方向である。
摺動回数100回の微摺動を行ったオス試験片1をミクロトーム法にて加工し、摩耗痕の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により10,000倍の倍率で観察した。観察される摩耗痕の最大深さを微摺動後の摩耗量とした。
表2に示すように、No.1〜10は、各被覆層の平均の厚さ、Cu−Sn合金被覆層のCu含有量、材料表面粗さ、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率、材料表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さ、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔について、本発明の規定を満たす。このうち、リフロー処理温度が低く、昇温速度が小さかったNo.11は、Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径が3.2μmであり、本発明の規定を満たさない。これに対し、リフロー処理温度が高く、昇温速度が大きかったNo.1〜10は、Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径が本発明の規定を満たす。No.1〜10はいずれも、微摺動摩耗量がNo.11より少なく、特に母材が同じ材質で被覆層構造が類似するNo.3とNo.11を比較すると、No.3の微摺動摩耗量はNo.7の摩耗量の64%に減少している。
なお、No.11も、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率がゼロ(Cu−Sn合金被覆層が最表面に露出していない)のNo.12〜14に比べると、微摺動後の摩耗量が少ない。
表1に示す合金記号Bの銅合金板に、機械的な方法(圧延又は研磨)で表面粗化処理を行い(No.15〜22)、又は表面粗化処理を行わず(No.23〜25)、種々の表面粗さを有する銅合金母材に仕上げた。この銅合金母材に、下地めっき(Ni,Co,Feの1種又は2種)を行い(No.21,25は行わず)、さらに種々の厚さのCuめっき及びSnめっきを施した。次いで、リフロー処理炉の雰囲気温度を調整し、表3に示す種々の条件(温度×時間)でリフロー処理を行うことにより試験材を得た。リフロー処理温度への昇温速度は、No.15〜21では15℃/秒以上、No.22〜25では10℃/秒程度であった。
得られた試験材について、実施例1と同様の測定及び試験を行った。そのほか、得られた試験材について、下記要領でCo被覆層及びFe被覆層の平均厚さの測定,並びに摩擦係数の測定を行った。その結果を表3に示す。なお、No.11〜25の試験材において、Cuめっき層は消滅していた。
( Co層の平均厚さの測定)
蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、試験材のCo層の平均の厚さを算出した。測定条件は、検量線にSn/Co/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。
(Fe層の平均厚さの測定)
蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、試験材のFe層の平均の厚さを算出した。測定条件は、検量線にSn/Fe/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。
(摩擦係数の測定)
嵌合型接続部品における電気接点のインデント部の形状を模擬し、図3に示すような装置を用いて測定した。まず、No.15〜25の各試験材から切り出した板材のオス試験片6を水平な台7に固定し、その上にNo.23の試験材(表面にCu−Sn合金層が露出しない)から切り出した半球加工材(外径をφ1.8mmとした)のメス試験片8を置いて表面同士を接触させた。続いて、メス試験片8に3.0Nの荷重(錘9)をかけてオス試験片6を押さえ、横型荷重測定器(アイコーエンジニアリング株式会社;Model−2152)を用いて、オス試験片6を水平方向に引っ張り(摺動速度を80mm/minとした)、摺動距離5mmまでの最大摩擦力F(単位:N)を測定した。摩擦係数を下記式(1)により求めた。なお、10はロードセル、矢印は摺動方向であり、摺動方向は圧延方向に垂直な向きとした。
摩擦係数=F/3.0 ・・・(1)
表3に示すように、No.15〜21は、各被覆層の平均の厚さ、Cu−Sn合金被覆層のCu含有量、材料表面粗さ、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率、材料表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さ、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔について、本発明の規定を満たす。このうち、リフロー処理温度が低く、昇温速度が小さかったNo.22は、Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径が2.6μmであり、本発明の規定を満たさない。これに対し、リフロー処理温度が高く、昇温速度が大きかったNo.15〜21は、Cu−Sn合金被覆層表面の平均結晶粒径が本発明の規定を満たす。No.15〜21はいずれも、微摺動摩耗量がNo.22より少ない。なお、No.22も、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率がゼロ(Cu−Sn合金被覆層が最表面に露出していない)のNo.23〜25に比べると、微摺動後の摩耗量が少ない。
また、Sn被覆層の平均の厚さが0.2μm未満のNo.16,21は、摩擦係数が極めて低い。
実施例2で作製した発明例No.15に対し、リフロー処理後に種々の厚さで電気光沢Snめっきを施し、No.26〜29の試験材を得た。Snめっき層の平均の厚さは、下記要領で測定し、その結果を表4に示す。得られた試験材に対し、実施例2と同様の微摺動摩耗試験と摩擦係数の測定試験のほか、はんだ濡れ性の評価試験を行った。その結果を表4に示す。
(Snめっき層の平均の厚さ測定方法)
No.26〜29の試験材について、実施例1に記載した測定方法で、Sn被覆層全体(電気光沢SnめっきによるSnめっき層を含む)の平均の厚さを求めた。Sn被覆層全体の平均の厚さから、No.15のSn被覆層(電気光沢SnめっきによるSnめっき層を含まない)の平均の厚さを差し引くことにより、Snめっき層の平均の厚さを算出した。
(はんだ濡れ試験)
各々の試験材No.15,26〜29から切り出した試験片に対して、非活性フラックスを1秒間浸漬塗布した後、メニスコグラフ法にてゼロクロスタイムと最大濡れ応力を測定した。はんだ組成はSn−3.0Ag−0.5Cuとし、試験片を255℃のはんだに浸漬し、浸漬条件は、浸漬速度を25mm/sec、浸漬深さを12mm、浸漬時間を5.0secとした。はんだ濡れ性は、ゼロクロスタイム≦2.0sec、最大濡れ応力≧5mNを基準とし、いずれの基準も満たすものを○、いずれか一方のみ満たすものを△、いずれの基準も満たさないものを×と評価した。
表4に示すように、No.26〜29は、最表面にSnめっき層を有しているため、No.15に比べてはんだ濡れ性が良好である。中でも、No.26〜28は最表面のSnめっき層の平均の厚さが本発明の規定を満たしており、低摩擦係数とはんだ濡れ性を兼備し、微摺動摩耗量が少ない。なお、No.29ははんだ濡れ性は良好であるが、摩擦係数が大きくなった。
1,6 オス試験片
2,7 台
3,8 メス試験片
4,9 錘
5 ステッピングモータ
10 ロードセル

Claims (12)

  1. 銅合金板条からなる母材の表面に、Cu含有量が20〜70at%のCu−Sn合金被覆層と、Sn被覆層がこの順に形成され、前記Sn被覆層はリフローSnめっきであり、その材料表面は少なくとも一方向における算術平均粗さRaが0.15μm以上で、全ての方向における算術平均粗さRaが3.0μm以下であり、前記Sn被覆層の表面に前記Cu−Sn合金被覆層の一部が露出して形成され、前記Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率が3〜75%である接続部品用導電材料において、前記銅合金板条の導電率が50%IACSを超え、かつ200℃で1000時間保持後の応力緩和率が25%以下であり、前記Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さが0.2〜3.0μmで同被覆層の表面の平均結晶粒径が2μm未満であり、Sn被覆層の平均の厚さが0.05〜5.0μmであることを特徴とする耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。
  2. 前記銅合金板条が、Cr:0.15〜0.70質量%とZr:0.01〜0.20質量%の1種又は2種を含み、残部がCu及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載された耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。
  3. 前記銅合金板条が、さらにTi:0.01〜0.30質量%を含むことを特徴とする請求項2に記載された耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。
  4. 前記銅合金板条が、さらにSi:0.01〜0.20質量%を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載された耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。
  5. 前記銅合金板条が、さらにZn:0.001〜1.0質量%、Sn:0.001〜0.5質量%、Mg:0.001〜0.15質量%、Ag:0.005〜0.50質量%、Fe:0.005〜0.50質量%、Ni:0.005〜0.50質量%、Co:0.005〜0.50質量%、Al:0.005〜0.10質量%、Mn:0.005〜0.10質量%の1種以上を、合計で1.0質量%以下含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載された耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。
  6. 前記材料表面は、少なくとも一方向における平均の材料表面露出間隔が0.01〜0.5mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。
  7. 前記Sn被覆層表面に露出する前記Cu−Sn合金被覆層の厚さが0.2μm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。
  8. 前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにCu被覆層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載された接続部品用導電材料。
  9. 前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにNi被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか1つからなる下地層が形成され、同下地層の平均の厚さが0.1〜3.0μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載された接続部品用導電材料。
  10. 前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにNi被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか2つからなる下地層が形成され、前記下地層の合計の平均の厚さが0.1〜3.0μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに1項に記載された耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。
  11. 前記下地層とCu−Sn合金被覆層との間にさらにCu被覆層を有することを特徴とする請求項9又は10に記載された接続部品用導電材料。
  12. 前記材料表面に更に平均厚さ0.02〜0.2μmのSnめっき層が形成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載された耐微摺動摩耗性に優れる接続部品用導電材料。
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