JP3904118B2 - 電気、電子部品用銅合金とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、端子、コネクタ又は半導体用リードフレームなどの電気、電子部品に用いられる銅合金に関し、特に、高強度、高導電性を備え、さらに、ばね限界値、応力緩和特性、金型摩耗性、耐マイグレーション性に優れる電気、電子部品用銅合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高強度、高導電性を必要とする電気、電子部品用銅合金としては、Cu−Mg、Cu−Sn−P等の銅合金が用いられてきた。
一方、近年、民生用・産業用電気機器及び自動車等に搭載されている電気、電子部品は急速に小型化が進んでおり、使用環境も厳しくなっている。たとえば、自動車用電気部品(特にエンジン回り品)等は、使用中の温度が約150℃以上に達することがあり、これらの部品に使用される銅合金の端子、コネクター部品に対しては、高温での強度、特にばね特性の維持や応力緩和特性の向上が強く要求されている。
【0003】
さらに、これらの部品を実装する配線回路(ブスバー平面板、プリント配線板)もその影響を受けて高密度化、多層化となるため、リード間隔は狭くなり、従来の材料では金属の電気化学的なマイグレーションが生じて絶縁性が低下する問題が起きている。即ち、電極間に結露等が起こると金属元素がイオン化し、このイオン化した金属元素がクーロンフォースにより陰極に移動して析出し、めっき(電析)と同じように陰極から樹脂状に金属結晶が成長して陽極側まで達し短絡する現象である。
【0004】
また、これらの電子、電気部品は多くの場合、銅合金板材からプレス打抜き(スタンピング加工)成型される。最近、プレス打抜き製品の品質要求及びその生産性を向上させるために、打抜き後の端子のバリやだれの発生が少なく、かつ打抜きプレスの金型の磨耗が少ない(金型寿命が長い)銅合金素材の開発要求が高くなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の電気、電子部品用銅合金の上記問題点に鑑み、種々の要求に応えるべくなされたもので、高強度、高導電性を備え、さらに、ばね限界値、応力緩和特性、金型摩耗性、耐マイグレーション性に優れる電気、電子部品用銅合金を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電気、電子部品用銅合金は、Mg:0.05〜1.5重量%、Zn:0.05〜3.0重量%、P:0.0005〜0.1重量%,Pb:0.0005〜0.015重量%、S:0.05重量%以下を含有し、必要に応じてさらに、Sn:0.005〜1.0重量%、Cr:0.001〜0.5重量%、Mn:0.01〜0.5重量%のうちいずれかを含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなることを特徴とする。Snを含み、かつCrとMnのうちいずれか一方又は双方を含む場合、Sn、Cr、Mnの合計を1.0重量%以下とする。この銅合金は、結晶粒径20μm以下のとき、優れた強度、ばね限界値及び応力緩和率を示す。
【0007】
上記の銅合金は、最終冷間加工後又は最終冷間加工したものを電気、電子部品に成形後、100〜450℃の温度で10秒〜5時間加熱することで、結晶粒径20μm以下のとき、ばね限界値:30kgf/mm2以上(室温)、応力緩和 率:160℃にて35%以下、導電率:40%IACS以上、耐熱温度:350℃以上の材料特性値を得ることができる。なお、これらの材料特性値の測定手段については後述する。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る電気、電子部品用銅合金における各添加元素の添加理由及び組成限定理由を説明する。
【0009】
Mg:0.05〜1.5重量%
Mgは銅の導電率を大きく低下させることなく、強度、ばね限界値などの機械的性質を向上させる効果を有する。特に、R.T.〜160℃の使用温度においてもばね限界値の低下を抑制し、応力緩和特性の向上にも寄与する。また、電圧印加時の銅のマイグレーションの発生を防止する。さらに、Sによる熱間脆性を改善する。しかし、その含有量が0.05重量%未満の場合は上記の効果を得ることができない。
【0010】
さらに、Mgは銅合金中に含有されるSとMgSを形成し、銀めっきを行ったとき板材表面のMgSの部分でAgが突起状に異常析出する表面欠陥となる。AgめっきによってAgの突起を発生させるMg及びSの含有量は合金系によって異なるが、本合金系においてはMgの含有量が0.05%未満ではAg突起を発生させ易い。以上の理由で、Mgの含有量は0.05重量%以上でなければならない。
【0011】
一方、Mgを1.5重量%を超えて含有した場合は電気伝導度、曲げ加工性の低下を招く。従って、Mgの添加量は0.05〜1.5重量%とした。なお、好ましい範囲は、0.05〜1.0重量%である。
また、添加されたMgは材料の熱処理の際にSnよりも優先的に酸化して、表面におけるSnの酸化物の生成を抑制する。材料の表面に存在するMgを主体とする酸化物は通常の酸洗(硫酸などを使用)で容易に除去できるため、はんだ付け性、めっき性などに優れる効果を合わせ持つ。
【0012】
Zn:0.05〜3.0重量%
Znは、Mg同様、電圧が印加された電気、電子部品の極間に水の侵入又は結露等が生じた場合のCuのマイグレ−ションを抑制し、漏洩電流を抑制するための必須元素である。さらに、はんだの密着性向上やウイスカー発生を抑制する作用をもつ。Zn含有量が0.05重量%未満でははんだの密着性向上やウイスカー発生の抑制効果が小さく、Zn含有量が3.0重量%を超えた場合は、導電率が低くなり、また応力腐食割れを起こし易くなる。従って、Zn含有量は0.05〜3.0重量%とする。なお、Znの好ましい範囲は0.05〜2.5重量%である。
また、添加されたZnはMgと同様に、材料の熱処理においてSnよりも優先的に酸化して表面におけるSnの酸化物の生成を抑制する。材料の表面に存在するZn及びMgを主体とする酸化物は通常の酸洗(硫酸などを使用)で容易に除去できるため、はんだ付け性、めっき性などに優れる効果を合わせ持つ。
【0013】
P:0.0005〜0.1重量%
Pは主として鋳塊の健全性向上(脱酸・湯流れ等)に寄与する元素である。Pの含有量が、0.0005重量%未満では、溶湯の脱酸及び湯流れの改善効果が得られず、また、0.1重量%を超えて含有すると熱間加工性の劣化、導電率の低下をもたらし、さらには応力腐食割れが発生しやすくなり、酸化膜の密着性も低下する。従って、P含有量は0.0005〜0.1重量%とする。なお、Pの好ましい範囲は0.0005〜0.05重量%である。
【0014】
Pb:0.0005〜0.015重量%
Pbは、プレス打抜き時の金型の摩耗性を著しく改善する。その含有量が0.0005重量%未満では所望の改善効果が得られず、0.015重量%を超えて含有しても、含有量に見合う改善効果は得られず、かえって熱間加工性を低下させる。従って、Pbの含有量は0.0005〜0.015重量%とする。なお、Pbの好ましい範囲は、0.0005〜0.01重量%である。
【0015】
S:0.05重量%以下
Sは溶解雰囲気、炉材、原料、スクラップなどから混入する元素であり、鋳塊においては粒界に存在して粒界の強度を低下させるため熱間加工性を低下させる。また、本合金はMgを含有するためSと高融点で安定なMg化合物を形成し、熱間加工性が改善されるが、その含有量が0.05重量%を越すと、Mgを1.5重量%含有しても熱間加工性が低下し、さらには組織中に大量のMgSが形成され、材料の耐熱性及び応力緩和特性を低下させる。また、Mg含有量が0.05重量%未満のときには、材料にAgめっきを行ったときAgの突起が発生しやすくなる。したがって、Sの含有量は0.05重量%以下とする。好ましくは0.005重量%以下である。
【0016】
Cr:0.001〜0.5重量%
Mn:0.001〜0.5重量%
Cr及びMnは材料の耐熱性及びRT〜160℃における応力緩和特性の向上に寄与する元素である。しかし、いずれも0.001重量%未満では上記の効果が得られない。一方、Crを0.5重量%を超えて含有するとCrの酸化物が大量に発生して良好な鋳塊が得られず、また組織中に粗大なCrの晶出物が発生してスタンピングの金型摩耗を激しくし、曲げ加工性、伸びを低下させる。また、Mnを0.5重量%を超えて含有すると、はんだ耐熱剥離性が劣化すると共に導電率も低下する。従ってCr:0.001〜0.5重量%、Mn:0.001〜0.5重量%のうちいずれか一方又は双方を添加することとした。なお、Crの好ましい範囲は0.001〜0.2重量%、Mnの好ましい範囲は0.001〜0.05重量%である。
【0017】
Sn:0.005〜1.0重量%
Snは、Mgとの共添によって強度をさらに向上させる元素であり、必要に応じて添加される。その含有量が0.005重量%未満では効果が得られず、また、1.0重量%を超えて含有すると導電率の低下を招く。従って、Snの添加量は0.005〜1.0重量%とした。好ましい範囲は0.005〜0.8重量%である。なお、CrとMnの何れか一方又は双方とSnを共に添加する場合、導電率の観点から合計を1重量%以下、好ましくは0.8重量%以下とする。
【0018】
なお、銅合金中には不可避的不純物として、Fe、Si、Al、Ni、B、Ti及びZr等の元素が原料として用いるスクラップ等から混入することがあるが、これらの元素の総含有量が0.5重量%以下、個別には0.05重量%以下であれば、本合金の機械的性質、導電率、耐マイグレーション性、プレス加工性に悪影響を及ぼすおそれはないのでこの範囲の含有は許容される。
【0019】
本発明に係る銅合金は、通常の製造方法により製造することができる。具体的 には、連続鋳造によって作製したスラブを熱延し、その後冷延と中間焼鈍を組合わせて所定の厚さの薄板とする。あるいは、熱間圧延によらず横型連続鋳造で作製した10〜30mmの薄スラブを用い、これを冷延と熱処理を組合わせた工程で薄板とする方法でも製作可能である。
【0020】
本発明に係る銅合金は熱間加工性、冷間加工性とも良好で、製造に伴う割れなどの問題はほとんど発生しない。また、この合金は析出硬化型合金でないため、中間焼鈍にはバッチ式、連続式のどちらを採用してもよい。中間焼鈍はバッチ炉を用いた場合は350〜600℃×1〜5時間(材料の到達温度と到達後の保持時間)、連続焼鈍炉を用いた場合は400〜850℃の雰囲気で10秒〜300秒加熱(材料の到達温度と到達後の保持時間)することによって目的を達成できる。これらの中間焼鈍によって材料は再結晶するが、本合金に良好なプレス打抜き性及び曲げ加工性を与えるために、中間焼鈍後の材料の結晶粒径は30μm以下とすることが望ましい。
【0021】
また、中間焼鈍後の最終冷間圧延加工によって材料の強度が向上し、延性が低下する。目的とする強度、伸びの値によって加工率が決定されるが、通常は5〜90%の最終加工率が採用され、最終的に結晶粒径は20μm以下とされる。この最終加工のあと、さらにばね限界値の向上や延性の回復を目的とする熱処理を行ってもよい。この熱処理の方式としてバッチ式、連続式のどちらを採用しても目的とする最終特性を得ることが可能である。
【0022】
最終冷間加工後の熱処理は、100〜450℃の温度で10秒〜5時間行われる。この加熱により転位の再配列が発生し、材料内部の残留応力が均質化され、ばね限界値、応力緩和特性の向上、延性の回復、曲げ性の向上、疲労強度の向上、プレス加工後の材料の寸法精度の向上と歪の減少などの効果が認められる。なお、この熱処理により結晶粒径はほとんど変化しない。この熱処理は、端子、リードフレーム等の電気、電子部品に成形した後、行ってもよい。
【0023】
この加熱温度が100℃未満では上記の特性向上は認められず、450℃を越えると軟化し、強度低下が大きくなる。また、加熱時間が10秒未満ではその効果は得られず、5時間を超えて加熱しても上述の効果が飽和してしまい、不経済である。従って、加熱温度:100〜450℃、加熱時間:10秒〜5時間とする。好ましくは、加熱温度:200〜400℃、加熱温度:30秒〜3時間である。
【0024】
本発明に係る銅合金に加工率5〜90%の最終の冷間加工後、前記の条件で熱処理を行うことによって、ばね限界値:30kgf/mm2以上、応力緩和率: 160℃にて35%以下、導電率:40%IACS以上、耐熱温度:350℃以上の材料特性値を有する銅合金が製造でき、リードフレーム、端子、コネクターなどの電気、電子部品用として最適な特性を持つ。なお、この銅合金に錫めっきを行って、例えば端子材として用いる場合、めっき後のリフロー処理をこの熱処理と兼ねて行うことができる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の実施例について比較例と比較してその特性を説明する。
[実施例1]
下記表1及び表2に示す組成の銅合金を、電気炉により大気中で木炭被覆下で溶解し、厚さが150mm、幅が500mm、長さが3000mmの鋳塊を溶製した。このようにして溶製した鋳塊を800〜850℃に1時間加熱後、熱間圧延して厚さ15mmに仕上げた。
【0026】
次に、上記熱間圧延材の表面の酸化スケ−ルをフライスで除去した後、冷間圧延し、425〜575℃で2時間の焼鈍を行い、その後70%の最終冷間圧延を行って0.25mmの冷間圧延材を作製した。この薄板から各種試験片を加工し、以下の試験を実施した。
【0027】
(ばね限界値)
JISH3130に基づき、モーメント式試験により永久たわみ量を測定し、R.T.及び150℃におけるKb0.1を算出した。
(応力緩和特性)
図1及び図2に示すように、幅10mmの試験片1を片持ち梁式にて、長さ(l)80mmの位置に耐力の8割の曲げ応力を負荷し、応力を負荷した状態で160℃×1000Hr保持した後、応力の負荷を取り除く。応力を負荷したときの負荷点での試験片のたわみ量(δ)と、応力を取り除いたときの変位量(ε1) を測定し、次式により応力緩和率を算出した。
応力緩和率(%)=(ε1/δ)×100
なお、曲げ応力(σ)は次式で計算される。
σ=(3・E・t・δ)/(2・l2)
ただし、
σ:曲げ応力=耐力×0.8
E:試験片のヤング率(N/mm2)
t:試験片の板厚=0.25mm
【0028】
(機械的強度)
引張強さ、伸びは試験片の長手方向を圧延方向に平行としたJIS5号試験片にて測定した。
(導電率)
JISH0505に基づいて測定した。
(Agめっき性)
Agめっき性は、シアン系Agめっきを厚さ1μm行ったときに、局所的に厚さが厚くなる現象(突起)の有無を実体顕微鏡で観察した。
【0029】
(結晶粒径)
結晶粒径の測定は試料の組織が繊維状組織となっていないときは圧延方向に平行な断面においてJISH0501の伸銅品結晶粒度試験方法に従い、また試料の組織が繊維状となっているときは圧延方向に平行な断面において板厚方向の結晶粒の寸法を測定した。同一試料に対して5視野の観察を行い、その平均値を各試料の結晶粒径とした。本発明の合金は中間焼鈍により再結晶したとき結晶粒径がほぼ均一な整粒組織となるため、最終冷間加工の加工率によらず同一試料では異なる部位を観察しても結晶粒径の差はほとんどなかった。
【0030】
(はんだ耐熱剥離性)
6Sn/4Pbはんだを245±5℃×5秒にてはんだ付けした後、150℃のオーブンで1000Hrまで加熱した。この試験片を曲げ半径0.25mmで180゜曲げ戻しにて加工を加え、加工部のはんだが剥離するか観察した。
(耐熱温度)
試料を200〜600℃に5分保持後、水焼入れした試料の硬さを測定し、初期硬さの8割を有する温度を耐熱温度とした。
【0031】
(耐マイグレーション性)
幅3.0mm、長さ80mmの試験片を採取した。この試験片を2枚1組とし供試した。第3図及び第4図は、上記試験片を使用して漏洩電流を測定する試験方法の説明図である。第3図及び第4図において、2a、2bは試験片、3は厚さ1mmのABS樹脂、3aはこのABS樹脂3に形成された穴、4はこのABS樹脂3の押え板である。5は押え板4を押圧固定するため表面に絶縁塗料を塗布したクリップ、6はバッテリ−、7は電線である。試験片2a、2bは端部に電線7が接続されている。
第3図及び第4図に示す2枚の試験片2a、2bにバッテリ−6から直流電流14Vを印加して、水道水中に5分間浸漬した後、続いて10分間乾燥する乾燥試験を50回行い、その間の最大漏洩電流を高感度レコ−ダ−(図示せず)で測定した。
【0032】
(打抜加工性)
16ピンのリ−ドフレ−ムを連続打抜きし、打抜かれたリードフレームのバリが0.02mmになり、金型の再研磨が必要となるストロ−ク数を測定した。
【0033】
銅合金組成を表1、表2に、特性評価結果を表3、表4に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
表3の結果から明らかなように、本発明に規定する組成をもつNo.1〜No.7は、高強度と高導電率を兼ね備えているとともに、良好な耐マイグレーション性、プレス打抜加工性、はんだ耐熱剥離性、Agめっき性を有している。さらに、No.8、No.9、No.26は、Snの添加により引張強さ、ばね限界値及び応力緩和 特性が一段と向上している。
これに対し、No.10〜No.12はNo.1〜No.3と化学成分は同じであるが、結晶粒径が30μmと大きいため、引張強さ及びばね限界値が低く、応力緩和率が劣っている。
【0039】
また、比較合金No.13は、Mg含有量が本発明の規定範囲を超えているため 導電率が劣り、No.14は、反対にMg含有量が本発明の規定範囲に満たないた め、機械的性質に劣り、耐熱温度も低い。
比較合金No.15は、Zn含有量が本発明の規定範囲を超えているため導電率 が劣り、さらに応力腐食割れを起こしやすくなる。No.16は、Zn含有量が規 定範囲に満たないため、はんだ耐熱剥離性が劣っている。
【0040】
比較合金No.17は、P含有量が本発明の規定範囲を超えているため導電率が 劣っており、No.18は、反対にP含有量が規定範囲に満たないため、造塊時の 湯流れが悪く、鋳塊の表面に酸化物の巻込みが発生して良好な鋳塊を得られず、後の試験を断念した。
比較合金No.19は、Pb含有量が本発明の規定範囲を超えており、熱間圧延 時に割れが発生したため、後の試験を断念した。
比較合金No.20は、Pb含有量が本発明の規定範囲に満たないため、打抜き 加工性に劣っている。
【0041】
比較合金No.21は、Cr含有量が本発明の規定範囲を超えており、溶解時、 Crの酸化物が大量に発生して良好な鋳塊が得られなかったので、熱間圧延を断念した。
比較合金:No.22は、Sn含有量が請求範囲を超えており、機械的性質は向 上しているが、導電率が40%IACSを下回っている。
【0042】
比較合金No.23は、Mg及びZn含有量が本発明の規定範囲に満たないため 、強度が低く、耐マイグレーション性においても最大漏洩電流値が3.12Aと高く、さらに、応力緩和特性及びはんだ耐熱剥離性にも劣っている。
比較合金No.24は、S含有量が本発明の規定範囲を超えており、熱間圧延が 不可能であった。
比較合金No.25は、Mg及びZn含有量が本発明の規定範囲に満たないため 強度が低く、耐マイグレーション性においても最大漏洩電流値が3.04Aと高く、さらに、応力緩和特性、はんだ耐熱剥離性及びAgめっき性にも劣っている。
【0043】
[実施例2]
表1のNo.2の試料に、300℃×20秒(2−1)、250℃×2時間(2 −2)、50℃×20秒(2−3)、500℃×20秒(2−4)、300℃×5秒(2−5)の低温焼鈍を施した後の特性評価結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
表5の結果より、本発明に規定する条件で低温焼鈍を行ったNo.2−1及び2 −2は、ばね限界値及び応力緩和特性が向上するとともに、耐マイグレーション性、プレス打抜加工性及びはんだ耐熱剥離性も良好である。
これに対し、焼鈍温度が低いNo.2−3は、ばね限界値、応力緩和特性の向上 が認められず、焼鈍温度が高いNo.2−4は、強度、ばね限界値が低下し、焼鈍 時間が短いNo.2−5は、ばね限界値、応力緩和特性の向上が認められない。
【0046】
[実施例3]
表1のNo.2の組成の合金及びNo.24の組成の合金を、厚さ20mm、幅640mmの薄スラブコイルに水平連鋳し、700℃で6時間均質化処理を行った。均質化処理後、材料表面の酸化スケ−ルをフライスで除去して冷間圧延し、500℃で2時間の焼鈍を行った。その後70%の冷間圧延を行って0.25mmの薄板とし、その後300℃で20秒間の低温焼鈍を行った。
作製した薄板から試験片を採取し、実施例1と同じ試験を実施した。試験結果を表6に示す。
【0047】
【表6】
【0048】
本発明合金No.2−6は、高強度と高導電率を兼ね備えているとともに、良好 な耐マイグレーション性、プレス打抜加工性、はんだ耐熱剥離性を有している。一方、比較例合金No.24−2は、熱延しなかったため薄板に加工可能であった が、S含有量が多いため大量のMgSが形成され、耐熱性が低く、応力緩和率が大きい。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、ばね限界値をはじめとする機械的性質、応力緩和特性及びAgめっき性に優れ、かつ高い導電率を合わせ持つ電気、電子部品用銅合金を得ることができる。また、Cuのマイグレ−ション現象が抑制されるため、電極間の短絡がなく、さらにプレス打抜加工性に優れるため、金型寿命が延長され、金型交換に要するコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】応力緩和率特性を評価する方法を説明するための斜視図である。
【図2】その側面図である。
【図3】最大漏洩電流の測定方法を説明するための平面図である。
【図4】そのX−X断面図である。
【符号の説明】
1、2a、2b 試験片
Claims (7)
- Mg:0.05〜1.5重量%、Zn:0.05〜3.0重量%、P:0.0005〜0.1重量%、Pb:0.0005〜0.015重量%、S:0.05重量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなることを特徴とする電気、電子部品用銅合金。
- Mg:0.05〜1.5重量%、Zn:0.05〜3.0重量%、P:0.0005〜0.1重量%、Sn:0.005〜1.0重量%、Pb:0.0005〜0.015重量%、S:0.05重量%以下を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなることを特徴とする電気、電子部品用銅合金。
- Mg:0.05〜1.5重量%、Zn:0.05〜3.0重量%、P:0.0005〜0.1重量%、Pb:0.0005〜0.015重量%、S:0.05重量%以下を含有し、さらにCr:0.001〜0.5重量%、Mn:0.001〜0.5重量%のうちいずれか一方又は双方を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなることを特徴とする電気、電子部品用銅合金。
- Mg:0.05〜1.5重量%、Zn:0.05〜3.0重量%、P:0.0005〜0.1重量%、Sn:0.005〜1.0重量%、Pb:0.0005〜0.015重量%、S:0.05重量%以下を含有し、さらにCr:0.001〜0.5重量%、Mn:0.01〜0.5重量%のうちいずれか一方又は双方をSn、Cr、Mnの合計が1.0重量%以下となるように含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなることを特徴とする電気、電子部品用銅合金。
- 結晶粒径が20μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された電気、電子部品用銅合金。
- ばね限界値:30kgf/mm2以上、応力緩和率:160 ℃にて35%以下、導電率:40%IACS以上、耐熱温度:350℃以上の材料特性値を有することを特徴とする請求項5に記載された電気、電子部品用銅合金。
- 請求項1〜4のいずれかに記載された組成の銅合金を、最終冷間加工後又は最終冷間加工したものを電気、電子部品に成形後、100〜450℃の温度で10秒〜5時間加熱し、結晶粒径:20μm以下、ばね限界値:30kgf/mm2以上、応力緩和率:160℃にて35%以下、導電率:40% IACS以上、耐熱温度:350℃以上の材料特性値を有する電気電子部品用銅合金を得ることを特徴とする電気、電子部品用銅合金の製造方法。
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