JP5903832B2 - 電子機器用銅合金、電子機器用銅合金の製造方法、電子機器用銅合金圧延材及び電子機器用部品 - Google Patents
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Description
また、例えば特許文献2には、Cu−Ni−Si系合金(いわゆるコルソン合金)が提供されている。このコルソン合金は、Ni2Si析出物を分散させる析出硬化型合金であり、比較的高い導電率と強度、耐応力緩和特性を有するものである。このため、自動車用端子や信号系小型端子用途として多用されており、近年、活発に開発が進んでいる。
さらに、その他の合金として、非特許文献2に記載されているCu−Mg合金、や、特許文献3に記載されているCu−Mg−Zn−B合金等が開発されている。
さらに、母相中に多くの粗大な金属間化合物が分散されていることから、曲げ加工時にこれらの金属間化合物が起点となって割れ等が発生しやすいため、複雑な形状の電子機器用部品を成形することができないといった問題があった。
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100
の範囲内とされ、応力緩和率が150℃、1000時間で50%以下であることを特徴としている。
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100
の範囲内とされており、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされ、応力緩和率が150℃、1000時間で50%以下であることを特徴としている。
あるいは、Mgを、固溶限度以上の3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含有しており、かつ、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされていることから、CuとMgを主成分とする金属間化合物の析出が抑制されており、Mgが母相中に過飽和に固溶したCu−Mg過飽和固溶体とされていることになる。
また、CuとMgを主成分とする金属間化合物の粒径は、金属間化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とする。
さらに、Mgを過飽和に固溶させていることから、加工硬化によって強度を向上させることが可能となる。
ヤング率Eが125GPa以下、かつ、0.2%耐力σ0.2が400MPa以上である場合には、弾性エネルギー係数(σ0.2 2/2E)が高くなり、容易に塑性変形しなくなるため、端子、コネクタ、リレー、リードフレーム等の電子機器用部品に特に適している。
この場合、仕上熱処理工程によって、耐応力緩和特性を向上させることができ、応力緩和率を150℃、1000時間で50%以下とすることができる。
この構成の電子機器用銅合金圧延材によれば、弾性エネルギー係数(σ0.2 2/2E)が高く、容易に塑性変形しない。
この構成の電子機器用部品(例えば端子、コネクタ、リレー、リードフレーム)は、ヤング率が低く、かつ、耐応力緩和特性に優れているので、高温環境下でおいても使用することができる。
本実施形態である電子機器用銅合金は、Mgを、3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含み、残部がCu及び不可避不純物のみからなるCuとMgの2元系合金とされている。
そして、導電率σ(%IACS)が、Mgの含有量をX原子%としたときに、
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100
の範囲内とされている。
また、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされている。
また、この電子機器用銅合金は、ヤング率Eが125GPa以下とされ、0.2%耐力σ0.2が400MPa以上とされている。
Mgは、導電率を大きく低下させることなく、強度を向上させるとともに再結晶温度を上昇させる作用効果を有する元素である。また、Mgを母相中に固溶させることにより、ヤング率が低く抑えられ、かつ、優れた曲げ加工性が得られる。
ここで、Mgの含有量が3.3原子%未満では、その作用効果を奏功せしめることはできない。一方、Mgの含有量が6.9原子%を超えると、溶体化のために熱処理を行った際に、CuとMgを主成分とする金属間化合物が残存してしまい、その後の加工等で割れが発生してしまうおそれがある。
このような理由から、Mgの含有量を、3.3原子%以上6.9原子%以下に設定している。
CuとMgの2元系合金において、導電率σが、Mgの含有量をX原子%としたとき、
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100
の範囲内である場合には、CuとMgを主成分とする金属間化合物がほとんど存在しないことになる。
すなわち、導電率σが上記式を超える場合には、CuとMgを主成分とする金属間化合物が多量に存在し、サイズも比較的大きいことから、曲げ加工性が大幅に劣化することになる。また、CuとMgを主成分とする金属間化合物が生成し、かつ、Mgの固溶量が少ないことから、ヤング率も上昇してしまうことになる。よって、導電率σが、上記式の範囲内となるように、製造条件を調整することになる。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、導電率σ(%IACS)を、
σ≦1.7241/(−0.0300×X2+0.6763×X+1.7)×100
の範囲内とすることが好ましい。この場合、CuとMgを主成分とする金属間化合物がより少量であるために、曲げ加工性がさらに向上することになる。
上述の作用効果をさらに確実に奏功せしめるためには、導電率σ(%IACS)を、
σ≦1.7241/(−0.0292×X2+0.6797×X+1.7)×100
の範囲内とすることがさらに好ましい。この場合、CuとMgを主成分とする金属間化合物がさらに少量であるために、曲げ加工性がさらに向上することになる。
本実施形態である電子機器用銅合金においては、上述のように、応力緩和率が150℃、1000時間で50%以下とされている。
この条件における応力緩和率が低い場合には、高温環境下で使用した場合であっても永久変形を小さく抑えることができ、接圧の低下を抑制することができる。よって、本実施形態である電子機器用銅合金は、自動車のエンジンルーム周りのような高温環境下で使用される端子として適用することが可能となる。
なお、応力緩和率は150℃、1000時間で30%以下とすることが好ましく、150℃、1000時間で20%以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態である電子機器用銅合金においては、走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされている。すなわち、CuとMgを主成分とする金属間化合物がほとんど析出しておらず、Mgが母相中に固溶しているのである。
ここで、溶体化が不完全であったり、溶体化後にCuとMgを主成分とする金属間化合物が析出することにより、サイズの大きい金属間化合物が多量に存在すると、これらの金属間化合物が割れの起点となり、加工時に割れが発生したり、曲げ加工性が大幅に劣化することになる。また、CuとMgを主成分とする金属間化合物の量が多いと、ヤング率が上昇することになるため、好ましくない。
さらに、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、粒径0.05μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の個数が合金中に1個/μm2以下であることが、より好ましい。
また、CuとMgを主成分とする金属間化合物の粒径は、金属間化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とする。
結晶粒径は、耐応力緩和特性に大きな影響を与える因子であり、結晶粒径が必要以上に小さい場合には耐応力緩和特性が劣化することになる。また、結晶粒径が必要以上に大きい場合には曲げ加工性に悪影響を与えることになる。このため、平均結晶粒径は1μm以上100μm以下の範囲内とすることが好ましい。なお、平均結晶粒径は2μm以上50μm以下の範囲内とすることがより好ましく、さらに5μm以上30μm以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、後述する仕上加工工程S06の加工率が高い場合には、加工組織となって結晶粒径を測定できなくなることがある。そこで、仕上加工工程S06の前(中間熱処理工程S05後)の段階での平均結晶粒径について、上述の範囲内とすることが好ましい。
なお、下記の製造方法において、加工工程として圧延を用いる場合、加工率は圧延率に相当する。
(溶解・鋳造工程S01)
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、前述の元素を添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を製出する。なお、Mgの添加には、Mg単体やCu−Mg母合金等を用いることができる。また、Mgを含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。また、本合金のリサイクル材及びスクラップ材を用いてもよい。
ここで、銅溶湯は、純度が99.99質量%以上とされたいわゆる4NCuとすることが好ましい。また、溶解工程では、Mgの酸化を抑制するために、真空炉、あるいは、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気とされた雰囲気炉を用いることが好ましい。
そして、成分調整された銅合金溶湯を鋳型に注入して鋳塊を製出する。なお、量産を考慮した場合には、連続鋳造法又は半連続鋳造法を用いることが好ましい。
次に、得られた鋳塊の均質化及び溶体化のために加熱処理を行う。鋳塊の内部には、凝固の過程においてMgが偏析で濃縮することにより発生したCuとMgを主成分とする金属間化合物等が存在することになる。そこで、これらの偏析及び金属間化合物等を消失又は低減させるために、鋳塊を400℃以上900℃以下にまで加熱する加熱処理を行うことで、鋳塊内において、Mgを均質に拡散させたり、Mgを母相中に固溶させたりするのである。なお、この加熱工程S02は、非酸化性又は還元性雰囲気中で実施することが好ましい。
ここで、加熱温度が400℃未満では、溶体化が不完全となり、母相中にCuとMgを主成分とする金属間化合物が多く残存するおそれがある。一方、加熱温度が900℃を超えると、銅素材の一部が液相となり、組織や表面状態が不均一となるおそれがある。よって、加熱温度を400℃以上900℃以下の範囲に設定している。より好ましくは500℃以上850℃以下、更に好ましくは520℃以上800℃以下とする。
そして、加熱工程S02において400℃以上900℃以下にまで加熱された銅素材を、200℃以下の温度にまで、200℃/min以上の冷却速度で冷却する。この急冷工程S03により、母相中に固溶したMgがCuとMgを主成分とする金属間化合物として析出することを抑制し、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数を1個/μm2以下とすることが好ましい。すなわち、銅素材をCu−Mg過飽和固溶体とすることができるのである。
なお、粗加工の効率化と組織の均一化のために、前述の加熱工程S02の後に熱間加工を実施し、この熱間加工の後に上述の急冷工程S03を実施する構成としてもよい。この場合、加工方法に特に限定はなく、例えば最終形態が板や条の場合には圧延、線や棒の場合には線引きや押出や溝圧延等、バルク形状の場合には鍛造やプレス、を採用することができる。
加熱工程S02及び急冷工程S03を経た銅素材を必要に応じて切断するとともに、加熱工程S02及び急冷工程S03等で生成された酸化膜等を除去するために必要に応じて表面研削を行う。そして、所定の形状へと加工を行う。
なお、この中間加工工程S04における温度条件は特に限定はないが、冷間又は温間加工となる−200℃から200℃の範囲内とすることが好ましい。また、加工率は、最終形状に近似するように適宜選択されることになるが、最終形状を得るまでの中間熱処理工程S05の回数を減らすためには、20%以上とすることが好ましい。また、加工率を30%以上とすることがより好ましい。加工方法は特に限定されないが、最終形状が板、条の場合は圧延を採用することが好ましい。線や棒の場合には押出や溝圧延、バルク形状の場合には鍛造やプレスを採用することが好ましい。さらに、溶体化の徹底のために、S02〜S04を繰り返しても良い。
中間加工工程S04後に、溶体化の徹底、再結晶組織化または加工性向上のための軟化を目的として熱処理を実施する。
ここで、熱処理の方法は特に限定はないが、好ましくは400℃以上900℃以下の条件で、非酸化雰囲気又は還元性雰囲気中で熱処理を行う。より好ましくは500℃以上850℃以下、さらに好ましくは520℃以上800℃以下とする。
ここで、中間熱処理工程S05においては、400℃以上900℃以下にまで加熱された銅素材を、200℃以下の温度にまで、200℃/min以上の冷却速度で冷却する。このように急冷することによって、母相中に固溶したMgがCuとMgを主成分とする金属間化合物として析出することが抑制されることになり、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が1個/μm2以下とすることができる。すなわち、銅素材をCu−Mg過飽和固溶体とすることができるのである。
中間熱処理工程S05後の銅素材を所定の形状に仕上加工を行う。なお、この仕上加工工程S06における温度条件は特に限定はないが、常温で行うことが好ましい。また、加工率は、最終形状に近似するように適宜選択されることになるが、加工硬化によって強度を向上させるためには、20%以上とすることが好ましい。また、さらなる強度の向上を図る場合には、加工率を30%以上とすることがより好ましい。加工方法は特に限定されないが、最終形状が板、条の場合は圧延を採用することが好ましい。線や棒の場合には押出や溝圧延、バルク形状の場合には鍛造やプレスを採用することが好ましい。
次に、仕上加工工程S06によって得られた加工材に対して、耐応力緩和特性の向上、及び、低温焼鈍硬化を行うために、又は、残留ひずみの除去のために、仕上熱処理を実施する。
熱処理温度は、200℃超え800℃以下の範囲内とすることが好ましい。なお、この仕上熱処理工程S07においては、溶体化されたMgが析出しないように、熱処理条件(温度、時間、冷却速度)を設定する必要がある。例えば250℃で10秒〜24時間程度、300℃で5秒〜4時間程度、500℃で0.1秒〜60秒程度とすることが好ましい。非酸化雰囲気又は還元性雰囲気中で行うことが好ましい。
また、冷却方法は、水焼入など、加熱された前記銅素材を、200℃/min以上の冷却速度で、200℃以下にまで冷却することが好ましい。このように急冷することにより、母相中に固溶したMgがCuとMgを主成分とする金属間化合物として析出することが抑制されることになり、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が1個/μm2以下とすることができる。すなわち、銅素材をCu−Mg過飽和固溶体とすることができるのである。
さらに、上述の仕上加工工程S06と仕上熱処理工程S07とを、繰り返し実施してもよい。
また、導電率σ(%IACS)は、Mgの含有量をX原子%としたときに、
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100
の範囲内に設定されることになる。
さらに、仕上熱処理工程S07によって、本実施形態である電子機器用銅合金は、応力緩和率が150℃、1000時間で50%以下とされている。
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100
の範囲内に設定されている。さらに、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が1個/μm2以下とされている。
このようなCu−Mg過飽和固溶体からなる銅合金では、ヤング率が低くなる傾向にあり、例えばオスタブがメスのばね接触部を押し上げて挿入されるコネクタ等に適用しても、挿入時の接圧変動が抑制され、かつ、弾性限界が広いために容易に塑性変形するおそれがない。よって、端子、コネクタ、リレー、リードフレーム等の電子機器用部品に特に適している。
さらに、Mgを過飽和に固溶させていることから、加工硬化させることで、強度が向上することになり、比較的高い強度を有することが可能となる。
また、CuとMgと不可避不純物からなるCuとMgの2元系合金とされていることから、他の元素による導電率の低下が抑制され、導電率を比較的高くすることができる。
また、加熱工程S02によって400℃以上900℃以下にまで加熱された鋳塊または加工材を、200℃/min以上の冷却速度で200℃以下にまで冷却する急冷工程S03を備えているので、冷却の過程でCuとMgを主成分とする金属間化合物が析出することを抑制することが可能となり、急冷後の鋳塊または加工材をCu−Mg過飽和固溶体とすることができる。
また、中間加工工程S04の後に、溶体化の徹底、再結晶組織化または加工性向上のための軟化を目的として中間熱処理工程S05を備えているので、特性の向上及び加工性の向上を図ることができる。
また、中間熱処理工程S05においては、400℃以上900℃以下にまで加熱された銅素材を、200℃/min以上の冷却速度で200℃以下にまで冷却するので、冷却の過程でCuとMgを主成分とする金属間化合物が析出することを抑制することが可能となり、急冷後の銅素材をCu−Mg過飽和固溶体とすることができる。
また、この電子機器用銅合金は、ヤング率Eが125GPa以下とされ、0.2%耐力σ0.2が400MPa以上とされている。
例えば、上述の実施形態では、電子機器用銅合金の製造方法の一例について説明したが、製造方法は本実施形態に限定されることはなく、既存の製造方法を適宜選択して製造してもよい。
純度99.99質量%以上の無酸素銅(ASTM B152 C10100)からなる銅原料を準備し、これを高純度グラファイト坩堝内に装入して、Arガス雰囲気とされた雰囲気炉内において高周波溶解した。得られた銅溶湯内に、各種添加元素を添加して表1、2に示す成分組成に調製し、カーボン鋳型に注湯して鋳塊を製出した。なお、鋳塊の大きさは、厚さ約20mm×幅約20mm×長さ約100〜120mmとした。
そして、仕上圧延後に、表に示す条件でソルトバス中で仕上熱処理を実施し、その後、水焼入れを実施し、特性評価用条材を作成した。
表1,2に示す中間熱処理を行った後の試料について結晶粒径の測定を行った。各試料において、鏡面研磨及びエッチングを行い、光学顕微鏡にて、圧延方向が写真の横になるように撮影し、1000倍の視野(約300μm×200μm)で観察を行った。つぎに結晶粒径をJIS H 0501の切断法にしたがい、写真縦、横の所定長さの線分を5本ずつ引き、完全に切られる結晶粒数を数え、その切断長さの平均値を結晶粒径とした。
加工性の評価として、前述の冷間圧延時における耳割れの有無を観察した。目視で耳割れが全くあるいはほとんど認められなかったものを◎、長さ1mm未満の小さな耳割れが発生したものを○、長さ1mm以上3mm未満の耳割れが発生したものを△、長さ3mm以上の大きな耳割れが発生したものを×、耳割れに起因して圧延途中で破断したものを××とした。
なお、耳割れの長さとは、圧延材の幅方向端部から幅方向中央部に向かう耳割れの長さのことである。
(機械的特性)
特性評価用条材からJIS Z 2201に規定される13B号試験片を採取し、JIS Z 2241のオフセット法により、0.2%耐力σ0.2を測定した。なお、試験片は、圧延方向に平行な方向で採取した。
ヤング率Eは、前述の試験片にひずみゲージを貼り付け、荷重−伸び曲線の勾配から求めた。
なお、試験片は、引張試験の引張方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。
特性評価用条材から幅10mm×長さ60mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。また、マイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして、測定した電気抵抗値と体積とから、導電率を算出した。なお、試験片は、その長手方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。
耐応力緩和特性試験は、日本伸銅協会技術標準JCBA−T309:2004の片持はりねじ式に準じた方法によって応力を負荷し、150℃の温度で所定時間保持後の残留応力率を測定した。
試験片(幅10mm)は、その長手方向が特性評価用条材の圧延方向に対して平行になるように採取した。
試験片の表面最大応力が耐力の80%となるよう、初期たわみ変位を2mmと設定し、スパン長さを調整した。上記表面最大応力は次式で定められる。
表面最大応力(MPa)=1.5Etδ0/LS 2
ただし、
E:たわみ係数(MPa)
t:試料の厚み(t=0.25mm)
δ0:初期たわみ変位(2mm)
Ls:スパン長さ(mm)
である。
150℃の温度で、1000h保持後の曲げ癖から、残留応力率を測定し、応力緩和率を評価した。なお応力緩和率は次式を用いて算出した。
応力緩和率(%)=(δt/δ0)×100
ただし、
δt:150℃で1000h保持後の永久たわみ変位(mm)−常温で24h保持後の永久たわみ変位(mm)
δ0:初期たわみ変位(mm)
である。
各試料の圧延面に対して、鏡面研磨、イオンエッチングを行った。CuとMgを主成分とする金属間化合物の析出状態を確認するため、FE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)を用い、1万倍の視野(約120μm2/視野)で観察を行った。
次に、CuとMgを主成分とする金属間化合物の密度(個/μm2)を調査するために、金属間化合物の析出状態が特異ではない1万倍の視野(約120μm2/視野)を選び、その領域で、5万倍で連続した10視野(約4.8μm2/視野)の撮影を行った。金属間化合物の粒径については、金属間化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とした。そして、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の密度(個/μm2)を求めた。
日本伸銅協会技術標準JCBA−T307:2007の4試験方法に準拠して曲げ加工を行った。
圧延方向と試験片の長手方向が平行になるように、特性評価用条材から幅10mm×長さ30mmの試験片を複数採取し、曲げ角度が90度、曲げ半径が0.25mmのW型の治具を用い、W曲げ試験を行った。
そして、曲げ部の外周部を目視で確認し、破断した場合は×、一部のみ破断が起きた場合は△、破断が起きず微細な割れのみが生じた場合は○、破断や微細な割れを確認できない場合を◎として判定を行った。
また、Mgの含有量が本発明の範囲よりも高い比較例2、3においては、冷間圧延時に大きな耳割れが発生し、その後の特性評価を実施することが不可能であった。
さらに、Mgの含有量が本発明の範囲であるが、導電率及びCuとMgを主成分とする金属間化合物の個数が本発明の範囲から外れた比較例5においては、耐力と曲げ加工性に劣ることが確認される。
Claims (8)
- CuとMgの2元系合金からなり、前記2元系合金は、
Mgを、3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含み、残部がCu及び不可避不純物のみからなり、
導電率σ(%IACS)が、Mgの濃度をX原子%としたときに、
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100
の範囲内とされ、
応力緩和率が150℃、1000時間で50%以下であることを特徴とする電子機器用銅合金。 - CuとMgの2元系合金からなり、前記2元系合金は、
Mgを、3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含み、残部がCu及び不可避不純物のみからなり、
走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされ、
応力緩和率が150℃、1000時間で50%以下であることを特徴とする電子機器用銅合金。 - CuとMgの2元系合金からなり、前記2元系合金は、
Mgを、3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含み、残部がCu及び不可避不純物のみからなり、
導電率σ(%IACS)が、Mgの濃度をX原子%としたときに、
σ≦1.7241/(−0.0347×X2+0.6569×X+1.7)×100
の範囲内とされており、
走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされ、
応力緩和率が150℃、1000時間で50%以下であることを特徴とする電子機器用銅合金。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子機器用銅合金において、
ヤング率が125GPa以下、0.2%耐力σ0.2が400MPa以上とされていることを特徴とする電子機器用銅合金。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器用銅合金を製出する電子機器用銅合金の製造方法であって、
CuとMgの2元系合金からなり、Mgを、3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含み、残部がCu及び不可避不純物のみとされた組成の鋳塊を400℃以上900℃以下にまで加熱する加熱工程と、200℃/min以上の冷却速度で200℃以下の温度にまで冷却する急冷工程と、銅素材を所定の形状に加工する仕上加工工程と、この仕上加工工程の後に200℃超え800℃以下の範囲で熱処理を実施し、その後に、加熱された前記銅素材を200℃/min以上の冷却速度で200℃以下の温度にまで冷却する仕上熱処理工程と、を備えていることを特徴とする電子機器用銅合金の製造方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器用銅合金からなり、圧延方向に平行な方向におけるヤング率Eが125GPa以下、圧延方向に平行な方向における0.2%耐力σ0.2が400MPa以上とされていることを特徴とする電子機器用銅合金圧延材。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器用銅合金からなり、
端子、コネクタ、リレー、リードフレーム等の電子機器用部品を構成する銅素材として使用されることを特徴とする電子機器用銅合金圧延材。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器用銅合金からなることを特徴とする電子機器用部品。
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