JP6248388B2 - 電子・電気機器用銅合金、電子・電気機器用部品及び端子 - Google Patents
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これらのCu−Mg系合金では、図1に示すCu−Mg系状態図から分かるように、Mgの含有量が3.3原子%以上の場合、溶体化処理と、析出処理を行うことで、CuとMgからなる金属間化合物を析出させることができる。すなわち、これらのCu−Mg系合金においては、析出硬化によって比較的高い導電率と強度を有することが可能となるのである。
特に、携帯電話やパソコン等の民生品に使用される電子・電気機器用部品においては、小型化及び軽量化が求められており、強度と曲げ加工性とを両立した電子・電気機器用銅合金が求められている。しかしながら、上述のCu−Mg系合金のような析出硬化型合金においては、析出硬化によって強度及び耐力を向上させると曲げ加工性が著しく低下してしまうことになる。このため、薄肉で複雑な形状の電子・電気機器用部品を成形することはできなかった。
このCu−Mg合金は、優れた強度、導電率、曲げ性のバランスに優れており、上述の電子・電気機器用部品の素材として、特に適している。
小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーは、加工時に導入された転位の密度が高い領域であるため、これらの割合が高くなると、実質的に加工組織が残存していることになる。そこで、小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーの割合を80%以下に設定することで、再結晶組織を維持させることが可能となり、曲げ加工性が優れることになる。
この場合、図1の状態図に示すように、Mgを固溶限度以上の3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含有しており、かつ、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされていることから、CuとMgを主成分とする金属間化合物の析出が抑制されており、Mgが母相中に過飽和に固溶したCu−Mg過飽和固溶体となる。
また、CuとMgを主成分とする金属間化合物の粒径は、金属間化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とする。
さらに、Mgを過飽和に固溶させていることから、加工硬化によって強度を向上させることが可能となる。
σ≦1.7241/(−0.0347×A2+0.6569×A+1.7)×100の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、図1の状態図に示すように、Mgを固溶限度以上の3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含有しており、かつ、導電率が上記の範囲内とされていることから、Mgが母相中に過飽和に固溶したCu−Mg過飽和固溶体となる。
よって、上述のように、母相中には、割れの起点となる粗大なCuとMgを主成分とする金属間化合物が多く分散されておらず、曲げ加工性が向上することになる。
さらに、Mgを過飽和に固溶させていることから、加工硬化によって強度を向上させることが可能となる。
これらの元素は、Cu−Mg合金の強度等の特性を向上させる作用効果を有することから、要求特性に応じて適宜添加することが好ましい。ここで、上述の元素の添加量の合計が0.01原子%未満では、上述した強度向上の作用効果を十分に得ることができない。
一方、上述の元素の添加量の合計が0.4原子%を超えると導電率が大きく低下することになる。そこで、本発明では、上述の元素の添加量の合計を0.01原子%以上0.4原子%以下の範囲内に設定している。
このような0.2%耐力が400MPa以上の機械特性を有する電子・電気機器用銅合金は、例えば電磁リレーの可動導電片あるいは端子のバネ部のごとく、特に高強度が要求される電子・電気機器用部品に適している。なお、0.2%耐力は、520MPa以上とされていることが好ましい。
また、本発明の端子は、上述の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴としている。
この構成の電子・電気機器用部品及び端子は、耐力―曲げバランスに優れた電子・電気機器用銅合金を用いて製造されているので、複雑な形状であっても割れ等が発生せず、信頼性が向上することになる。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金の成分組成は、Mgを3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含み、残部が実質的にCu及び不可避不純物とされており、いわゆるCu−Mgの2元系合金とされている。
また、本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、0.2%耐力が400MPa以上とされている。
σ≦1.7241/(−0.0347×A2+0.6569×A+1.7)×100の範囲内とされている。
また、走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされている。
すなわち、本実施形態である電子・電気機器用銅合金は、CuとMgを主成分とする金属間化合物がほとんど析出しておらず、Mgが母相中に固溶限度以上に固溶したCu−Mg過飽和固溶体とされているのである。
Mgは、導電率を大きく低下させることなく、強度を向上させるとともに再結晶温度を上昇させる作用効果を有する元素である。また、Mgを母相中に固溶させることにより、優れた曲げ加工性が得られる。
ここで、Mgの含有量が3.3原子%未満では、その作用効果を奏功せしめることはできない。一方、Mgの含有量が6.9原子%を超えると、溶体化のために熱処理を行った際に、CuとMgを主成分とする金属間化合物が残存してしまい、その後の加工等で割れが発生してしまうおそれがある。このような理由から、Mgの含有量を、3.3原子%以上6.9原子%以下に設定している。
なお、Mgの含有量が少ないと、強度が十分に向上しない。また、Mgは活性元素であることから、過剰に添加されることによって、溶解鋳造時に、酸素と反応して生成されたMg酸化物を巻きこむおそれがある。したがって、Mgの含有量を、3.7原子%以上6.3原子%以下の範囲とすることが、さらに好ましい。
CuとMgとの2元系合金において、導電率σが、Mgの含有量をA原子%としたときに、σ≦1.7241/(−0.0347×A2+0.6569×A+1.7)×100の範囲内である場合には、金属間化合物がほとんど存在しないことになる。
すなわち、導電率σが上記式を超える場合には、金属間化合物が多量に存在し、サイズも比較的大きいことから、曲げ加工性が大幅に劣化することになる。よって、導電率σが、上記式の範囲内となるように、製造条件を調整する。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、導電率σ(%IACS)を、
σ≦1.7241/(−0.0292×A2+0.6797×A+1.7)×100の範囲内とすることが好ましい。この場合、CuとMgを主成分とする金属間化合物がより少量であるために、曲げ加工性がさらに向上することになる。
本実施形態である電子・電気機器用銅合金においては、走査型電子顕微鏡で観察した結果、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされている。すなわち、CuとMgを主成分とする金属間化合物がほとんど析出しておらず、Mgが母相中に固溶しているのである。
ここで、溶体化が不完全であったり、溶体化後にCuとMgを主成分とする金属間化合物が析出することにより、サイズの大きい金属間化合物が多量に存在すると、これらの金属間化合物が割れの起点となり、加工時に割れが発生したり、曲げ加工性が大幅に劣化することになる。
さらに、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、粒径0.05μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の個数が合金中に1個/μm2以下であることが、より好ましい。
また、CuとMgを主成分とする金属間化合物の粒径は、金属間化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とする。
ここで、CuとMgを主成分とする金属間化合物は、化学式MgCu2、プロトタイプMgCu2、ピアソン記号cF24、空間群番号Fd−3mで表される結晶構造を有するものである。
結晶粒径の長径をa、短径をbとしたとき、b/aで表されるアスペクト比は、材料の加工度を表す指標であり、アスペクト比が小さい結晶粒(すなわち、長径aと短径bとの差が大きい結晶粒)の割合が高くなるほど加工度も高くなる。このアスペクト比b/aが0.3以下となる結晶粒数の割合を、Partition fractionで、測定した結晶粒数全体の90%以下に制御することによって、耐力を維持したまま、曲げ加工性を向上させることができる。一方、アスペクト比b/aが0.3以下となる結晶粒数の割合が、結晶粒数全体の90%を超えると、高い加工ひずみの結晶が存在している割合が高くなり、曲げ加工性が損なわれる。
以上のことから、本実施形態では、アスペクト比b/aが0.3以下となる結晶粒数の割合が、Partition fractionで、測定した結晶粒数全体の90%以下となるように設定している。なお、アスペクト比b/aが0.3以下となる結晶粒数の割合は、上記の範囲内でも85%以下が好ましく、さらには80%以下が好ましい。
ここで、EBSD装置の解析ソフトOIMにより解析したときのCI値(信頼性指数)は、測定点の結晶パターンが明確ではない場合にその値が小さくなり、CI値が0.1以下ではその解析結果を信頼することが難しい。よって、本実施形態では、アスペクト比の評価においてCI値が0.1以下である信頼性の低い測定点を除いた。
小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーは加工時に導入された転位の密度が高い領域であるため、この小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーの割合を80%以下に制御することによって、耐力を維持したまま、さらに曲げ加工性を向上させることができる。なお、小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーの割合は、上記の範囲内でも75%以下が好ましく、さらには70%以下が好ましい。
まず、銅原料を溶解して得られた銅溶湯に、前述の元素を添加して成分調整を行い、銅合金溶湯を製出する。なお、Mgの添加には、Mg単体やCu−Mg母合金等を用いることができる。また、Mgを含む原料を銅原料とともに溶解してもよい。また、本合金のリサイクル材およびスクラップ材を用いてもよい。
ここで、銅溶湯は、純度が99.99質量%以上とされたいわゆる4NCuとすることが好ましい。また、溶解工程では、Mgの酸化を抑制するために、真空炉、あるいは、不活性ガス雰囲気または還元性雰囲気とされた雰囲気炉を用いることが好ましい。
そして、成分調整された銅合金溶湯を鋳型に注入して鋳塊を製出する。なお、量産を考慮した場合には、連続鋳造法または半連続鋳造法を用いることが好ましい。
次に、得られた鋳塊の均質化および溶体化のために加熱処理を行う。鋳塊の内部には、凝固の過程においてMgが偏析で濃縮することにより発生したCuとMgを主成分とする金属間化合物等が存在することになる。そこで、これらの偏析および金属間化合物等を消失または低減させるために、鋳塊を400℃以上900℃以下にまで加熱する加熱処理を行うことで、鋳塊内において、Mgを均質に拡散させたり、Mgを母相中に固溶させたりするのである。なお、この加熱工程S02は、非酸化性または還元性雰囲気中で実施することが好ましい。
ここで、加熱温度が400℃未満では、溶体化が不完全となり、母相中にCuとMgを主成分とする金属間化合物が多く残存するおそれがある。一方、加熱温度が900℃を超えると、銅素材の一部が液相となり、組織や表面状態が不均一となるおそれがある。よって、加熱温度を400℃以上900℃以下の範囲に設定している。より好ましくは500℃以上850℃以下、更に好ましくは520℃以上800℃以下とする。
そして、加熱工程S02において400℃以上900℃以下にまで加熱された銅素材を、その温度をスタート温度として、熱間加工する。これにより、組織の均一化及び粗加工の効率化を図ることが可能となる。
この熱間加工工程S03においては、加工後の冷却を、200℃以下の温度にまで、60℃/min以上の冷却速度となるように設定することが好ましい。これにより、母相中に固溶したMgが、CuとMgを主成分とする金属間化合物として析出することを抑制し、銅素材をCu−Mg過飽和固溶体とすることができる。なお、熱間加工の加工方法に特に限定はなく、例えば最終形態が板や条の場合には圧延、線や棒の場合には線引きや押出や溝圧延等、バルク形状の場合には鍛造やプレス、を採用することができる。
熱間加工工程S03を経た銅素材を必要に応じて切断するとともに、表面に生成された酸化膜等を除去するために必要に応じて表面研削を行う。そして、所定の形状へと塑性加工を行う。
なお、この中間加工工程S04における温度条件は特に限定はないが、冷間または温間加工となる−200℃から200℃の範囲内とすることが好ましい。また、加工率は、最終形状に近似するように適宜選択されることになるが、最終形状を得るまでの中間熱処理工程S05の回数を減らすためには、20%以上とすることが好ましい。また、加工率を30%以上とすることがより好ましい。塑性加工方法は特に限定されないが、例えば最終形態が板や条の場合には圧延、線や棒の場合には線引きや押出や溝圧延等、バルク形状の場合には鍛造やプレス、を採用することができる。さらに、溶体化の徹底のために、S02〜S04を繰り返しても良い。
中間加工工程S04後に、溶体化の徹底、再結晶組織化または加工性向上のための軟化を目的として熱処理を実施する。
熱処理の方法は特に限定はないが、好ましくは400℃以上900℃以下の条件で、非酸化雰囲気または還元性雰囲気中で熱処理を行う。より好ましくは400℃以上850℃以下、さらに好ましくは420℃以上800℃以下とする。
なお、中間加工工程S04及び中間熱処理工程S05は、繰り返し実施してもよい。
中間熱処理工程S05後の銅素材を所定の形状に仕上加工を行う。なお、この仕上加工工程S06における温度条件は特に限定はないが、常温で行うことが好ましい。また、加工率は、最終形状に近似するように適宜選択されることになるが、加工硬化によって強度を向上させるためには、20%以上とすることが好ましい。また。さらなる強度の向上を図る場合には、加工率を30%以上とすることがより好ましい。ここで、加工方法に特に限定はなく、例えば最終形態が板や条の場合には圧延、線や棒の場合には線引きや押出や溝圧延等、バルク形状の場合には鍛造やプレス、を採用することができる。
次に、仕上加工工程S06によって得られた塑性加工材に対して、仕上熱処理を実施する。
熱処理温度は、100℃以上800℃以下の範囲内とすることが好ましい。なお、この仕上熱処理工程S07においては、溶体化されたMgが析出しないように、熱処理条件(温度、時間、冷却速度)を設定する必要がある。例えば100℃では1分〜24時間程度、800℃では1秒〜5秒程度とすることが好ましい。この熱処理は、非酸化雰囲気または還元性雰囲気中で行うことが好ましい。
さらに、上述の仕上加工工程S06と仕上熱処理工程S07とを、繰り返し実施してもよい。
また、本実施形態である電子・電気機器用部品及び端子は、上述の電子・電気機器用銅合金塑性加工材に対して、打ち抜き加工、曲げ加工等を施すことによって製造される。
σ≦1.7241/(−0.0347×A2+0.6569×A+1.7)×100の範囲内とされており、Mgが母相中に過飽和に固溶したCu−Mg過飽和固溶体とされている。
このため、母相中には、割れの起点となる粗大なCuとMgを主成分とする金属間化合物が多く分散されておらず、曲げ加工性が向上することになる。よって、複雑な形状のコネクタ等の端子、リレー、リードフレーム等の電子・電気機器用部品等を成形することが可能となる。さらに、Mgを過飽和に固溶させていることから、加工硬化によって強度を向上させることが可能となる。
また、本実施形態である電子・電気機器用部品及び端子は、上述の電子・電気機器用銅合金塑性加工材を用いて製造されているので、耐力が高く、かつ、曲げ加工性に優れており、複雑な形状であっても割れ等がなく、信頼性が向上することになる。
例えば、上述の実施形態では、電子・電気機器用銅合金の製造方法及び電子・電気機器用銅合金塑性加工材の製造方法の一例について説明したが、製造方法は本実施形態に限定されることはなく、既存の製造方法を適宜選択して製造してもよい。
Sn、Zn、Al、Ni、Si、Mn、Li、Ti、Fe、Co、Cr、Zr、Pといった元素は、Cu−Mg合金の強度等の特性を向上させる元素であることから、要求特性に応じて適宜添加することが好ましい。ここで、添加量の合計を0.01原子%以上としているので、Cu−Mg合金の強度を確実に向上させることができる。一方、添加量の合計を3.0原子%以下としているので、導電率を確保することができる。
なお、上述の元素を含有する場合には、実施形態で説明した導電率の規定は適用されないが、析出物の分布状態からCu−Mgの過飽和固溶体であることを確認することができる。
純度99.99質量%以上の無酸素銅(ASTM B152 C10100)からなる銅原料を準備し、これを高純度グラファイト坩堝内に装入して、Arガス雰囲気とされた雰囲気炉内において高周波溶解した。得られた銅溶湯内に、各種添加元素を添加して表1に示す成分組成に調製し、カーボン鋳型に注湯して鋳塊を製出した。なお、鋳塊の大きさは、厚さ約150mm×幅約350mm×長さ約2000mmとした。
このブロックを、Arガス雰囲気中において、表1に記載の温度条件で4時間の加熱を行う加熱工程を実施した。
この熱間鍛造体を切断するとともに、酸化被膜を除去するために表面研削を実施した。その後、常温で、表1に記載された圧延率で中間圧延を実施した。
そして、得られた条材に対して、表1に記載された条件でソルトバスにて中間熱処理を実施した。その後、水焼入れを実施した。
そして、仕上圧延後に、表1に示す条件で、Ar雰囲気中で仕上熱処理を実施し、その後、水焼入れを行い、特性評価用条材を作成した。
加工性の評価として、前述の中間圧延及び仕上圧延時における耳割れの有無を観察した。目視で耳割れが全くあるいはほとんど認められなかったものを◎、長さ1mm未満の小さな耳割れが発生したものを○、長さ1mm以上3mm未満の耳割れが発生したものを△、長さ3mm以上の大きな耳割れが発生したものを×、耳割れに起因して圧延途中で破断したものを××とした。
なお、耳割れの長さとは、圧延材の幅方向端部から幅方向中央部に向かう耳割れの長さのことである。
各試料の圧延面に対して、鏡面研磨、イオンエッチングを行った。CuとMgを主成分とする金属間化合物の析出状態を確認するため、FE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡)を用い、1万倍の視野(約120μm2/視野)で観察を行った。
次に、CuとMgを主成分とする金属間化合物の密度(個/μm2)を調査するために、金属間化合物の析出状態が特異ではない1万倍の視野(約120μm2/視野)を選び、その領域で、5万倍で連続した10視野(約4.8μm2/視野)の撮影を行った。金属間化合物の粒径については、金属間化合物の長径(途中で粒界に接しない条件で粒内に最も長く引ける直線の長さ)と短径(長径と直角に交わる方向で、途中で粒界に接しない条件で最も長く引ける直線の長さ)の平均値とした。そして、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の密度(個/μm2)を求めた。
特性評価用条材の圧延方向に対して垂直な面、すなわちRD(roll direction)面に対し、耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Analysis ver.5.3)によって、電子線の加速電圧20kV、測定間隔0.1μmステップで1000μm2以上の測定面積で、CI値が0.1以下である測定点を除いて各結晶粒(双晶を含む)の方位差の解析を行い、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を粒界として、各結晶粒の結晶粒径の長径をa、短径をbとしたとき、b/aであらわされるアスペクト比を測定した。また、アスペクト比の測定ではEBSD上のGrain Sizeとして、Grain Tolerance Angleを5°、Minimum Grain Sizeを2ピクセルとして測定した。
特性評価用条材の圧延方向に対して垂直な面、すなわちRD(roll direction)面に対し、耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。そして、EBSD測定装置(FEI社製Quanta FEG 450,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Analysis ver.5.3)によって、電子線の加速電圧20kV、測定間隔0.1μmステップで1000μm2以上の測定面積で、CI値が0.1以下である測定点を除いて、各結晶粒の方位差の解析を行ない、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を大傾角粒界とし、2°以上15°以下を小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーとして、測定した全粒界における小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーの割合を、Partition Fractionにより算出した。
なお、この小傾角粒界、サブグレインバウンダリーの測定は、実際には、前述の(アスペクト比)の測定と兼ねて行った。
特性評価用条材からJIS Z 2201に規定される13B号試験片を採取し、JIS Z 2241のオフセット法により、0.2%耐力を測定した。なお、試験片は、圧延方向に垂直な方向で採取した。
特性評価用条材から幅10mm×長さ150mmの試験片を採取し、4端子法によって電気抵抗を求めた。また、マイクロメータを用いて試験片の寸法測定を行い、試験片の体積を算出した。そして、測定した電気抵抗値と体積とから、導電率を算出した。なお、試験片は、その長手方向が特性評価用条材の圧延方向に対して垂直になるように採取した。
日本伸銅協会技術標準JCBA−T307:2007の4試験方法に準拠して曲げ加工を行った。
圧延方向と試験片の長手方向が垂直になるように、特性評価用条材から幅10mm×長さ30mmの試験片を複数採取し、曲げ角度が90度、曲げ半径0.25mmのW型の治具を用い、W曲げ試験を行った。
そして、曲げ部の外周部を目視で確認し割れが観察された場合は×、破断や微細な割れを確認できない場合を○として判定を行った。
Mgの含有量が本発明の範囲よりも高い比較例2においては、中間圧延時に大きな耳割れが発生し、その後の特性評価を実施することが不可能であった。
また、アスペクト比が0.3以下の割合、小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーの割合が本発明の範囲よりも高い比較例3,4においては、曲げ加工性に劣ることが確認された。
Claims (8)
- Mgを3.3原子%以上6.9原子%以下の範囲で含み、残部がCu及び不可避不純物とされ、
EBSD法により1000μm2以上の測定面積を測定間隔0.1μmステップで測定して、データ解析ソフトOIM(登録商標)ver.5.3により解析された信頼性指数CI値が0.1以下である測定点を除いて解析したとき、隣接する測定点間の方位差が15°以上の測定点間を粒界としたときの結晶粒の結晶粒径(双晶を含む)の長径aと短径bで表されるアスペクト比b/aが0.3以下となる結晶粒数の割合が、Partition fractionで測定した結晶粒数全体の90%以下とされていることを特徴とする電子・電気機器用銅合金。 - EBSD法により1000μm2以上の測定面積を測定間隔0.1μmステップで測定して、データ解析ソフトOIM(登録商標)ver.5.3により解析された信頼性指数CI値が0.1以下である測定点を除いて解析したとき、隣接する測定点間の方位差が15°を超える測定点間を大傾角粒界とし、前記方位差が2°以上15°以下となる測定点間を小傾角粒界およびサブグレインバウンダリーとしたとき、測定した全粒界における前記小傾角粒界および前記サブグレインバウンダリーの割合がPartition fractionで80%以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の電子・電気機器用銅合金。
- 走査型電子顕微鏡観察において、粒径0.1μm以上のCuとMgを主成分とする金属間化合物の平均個数が、1個/μm2以下とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子・電気機器用銅合金。
- 導電率σ(%IACS)が、Mgの含有量をA原子%としたときに、
σ≦1.7241/(−0.0347×A2+0.6569×A+1.7)×100の範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金。 - さらに、Sn、Zn、Al、Ni、Si、Mn、Li、Ti、Fe、Co、Cr、Zr、Pのうち1種または2種以上を合計で0.01原子%以上0.4原子%以下の範囲内で含んでいることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金。
- 0.2%耐力が400MPa以上の機械的特性を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金。
- 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする電子・電気機器用部品。
- 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電子・電気機器用銅合金からなることを特徴とする端子。
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