JP3807475B2 - 端子・コネクタ用銅合金板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は端子、コネクタ、ワイヤハーネス及びターミナル等に用いられる銅合金板に関し、さらに詳しくは耐応力緩和特性及びはんだ耐候性に優れた、民生、産業用及び自動車等の端子・コネクタ用銅合金板に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記の用途には、従来、黄銅、りん青銅等の銅合金が用いられてきた。しかしながら、最近における端子・コネクタの小型化によって、黄銅並びにりん青銅よりも高い導電率及び強度が必要となってきた。また、部品の極間ピッチが狭くなったことにより、マイグレーションを起こすという問題が生じてきた。なお、マイグレーションとは、電極間に結露等が起こって金属元素がイオン化し、このイオン化した金属元素がクーロンフォースにより陰極に移動して析出し、めっき(電析)と同じように陰極から樹脂状に金属結晶が成長して陽極側まで達し短絡することをいう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これに対して、特開昭62−199741号公報では、Cu−Sn−Ni−P−Zn合金にて強度及び耐マイグレーション性に優れ、かつ応力腐食割れを抑制する合金を提供している。しかしがら、近年、民生用・産業用及び自動車等に搭載されている端子・コネクタ(特にエンジン回り品)等では、使用温度が約150℃にも達することから、高温状態での強度、特にばね特性の維持や応力緩和特性の向上が強く要求されており、従来の製造方法では対応できなくなってきている。
【0004】
また、特開昭62−199741号公報における合金は非析出強化合金であるにもかかわらず、中間焼鈍にバッチ(2Hr)工程を採用しているためりん化物の生成を招き、曲げ加工性の劣化やはんだあるいはSnめっきを施した場合、白化又はめっき剥離を生じるという問題があった。さらに、長時間焼鈍は生産の非効率につながりコストアップにもなる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、特に応力緩和特性に優れ、さらに強度、耐マイグレーション性、耐応力腐食割れ性、はんだ耐候性(耐熱剥離性)等にも優れた端子・コネクタ用銅合金板を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る端子・コネクタ用銅合金板は、Ni:0.1%以上0.5%未満、Sn:1.0%を超え2.5%未満、Zn:1.0%を超え15%以下、さらにP:0.0001%以上0.05%未満とSi:0.0001%以上0.05%以下のいずれか一方又は双方を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる安定化焼鈍後の製品板であり、焼鈍して得られる導電率の最大値に対して90%以下の導電率を有する。
上記銅合金は、さらにTi:0.0001%以上0.2%以下、Mg:0.0001%以上0.2%以下、Ag:0.0001%以上0.2%以下、及びFe:0.0001以上0.6重量%以下からなる群から選択された一種以上の成分を総量で0.0001〜1重量%含むことが望ましい。
さらに、上記銅合金は、S:0.0005%以上0.005%以下とし、さらにO含有量:50ppm以下、かつH含有量:10ppm以下とすることが望ましい。
そして、上記銅合金は、必要に応じてCa、Mn、Be、Al、V、Cr、Co、Zr、Nb、Mo、In、Pb、Hf、Ta、B、Ge、Sbの1種又は2種以上を総量で1%以下含むことができる。
【0007】
上記の端子・コネクタ用銅合金板は、必要に応じて熱間圧延した後、冷間圧延し、その冷間圧延途中で少なくとも1度焼鈍して再結晶させ、最終冷間圧延後さらに安定化焼鈍して製造されるが、優れた耐応力緩和特性を得るためには、安定化焼鈍後において、当該合金板を焼鈍したときに得られる導電率の最大値に対して90%以下の導電率となっている必要がある。あるいは、析出物の面積率が5%以下となっている必要がある。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る端子・コネクタ用銅合金板について詳細に説明する。
先ず、各添加元素の添加理由及び組成限定理由について説明する。
(Ni)
Niは、Snとの共添にて変調構造を形成し、強度及び耐応力緩和特性を向上させる元素である。しかしながら、Pと共存し、バッチ焼鈍等によりNiとPの化合物を形成した場合は変調構造部が少なくなり、耐応力緩和特性を著しく低下させるため、固溶させる必要がある。その含有量が0.1%未満では上記効果が得られず、また、0.5%以上含有されると導電率及びはんだ耐候性の低下を招き、コスト的にも不利である。従って、Niの添加量は0.1%以上0.5%未満とした。
【0009】
(Sn)
Snは、Niと共添にて変調構造を形成し、機械的性質の向上、特に耐力と伸びのバランスひいては成形加工性及びばね限界値並びに耐応力緩和特性の向上に効果をもたらすが、1.0%以下ではその効果が得られず、また、2.5%以上含有されると導電率の低下を招き、経済的でない。従って、Snの添加量は1.0%を超え2.5%未満とした。
【0010】
(Zn)
Znは、Mg同様、電圧が印加された電気・電子部品の極間に水の侵入又は結露等が生じた場合のCuのマイグレ−ションを抑制し、漏洩電流を抑制するための必須元素である。さらに、強度向上及びはんだの密着性向上やウイスカー発生を抑制する元素である。Zn含有量が1.0重量%以下では耐マイグレーション性やはんだの密着性向上、ウイスカー発生の抑制効果が小さく、Zn含有量が15%を超えた場合は、導電率が低くなり、また応力腐食割れを起こし易くなる。従って、Zn含有量は1.0%を超え15%以下とする。望ましくは1.0%を超え5%以下である。
【0011】
(P)
Pは主として鋳塊の健全性向上(脱酸・湯流れ等)に寄与する元素である。Pは含有量(合金中に残存する量)が0.0001%未満では、溶湯中の脱酸効果が得られない。一方、0.05%以上(特に0.01%以上)添加されると製造法によっては容易にNi−P金属間化合物を析出、凝集粗大化し、製品の機械的性質や曲げ加工性あるいはめっき性を阻害する。またNi−P化合物を析出させない範囲での熱処理が行われたとしても、0.05%以上添加されるとはんだ及びSnめっきの剥離現象を引き起こし、かつ応力腐食割れを生ずる。従ってP添加量は0.0001%以上0.05%未満とし、より望ましい範囲は0.0001%以上0.01%未満である。
【0012】
(Si)
Siは溶解鋳造時に添加されると脱酸材としての効果がある。そのためSiを加えることによって、最終製品での材料特性を劣化させるおそれのあるP残存量をそれだけ低減させることが可能となる。従って、Pの代わりに又はPとともに添加する。ただし、PとSiとではPの方が脱酸効果が大きい。しかし、応力腐食割れを考慮した場合はSiが好ましい。また、Siは脱酸材として添加する場合以外にも再結晶温度を上昇させる効果がある。これらの効果を得るためには、0.0001%以上残留させるのが望ましい。
一方、添加されたSiの大部分は脱酸後の酸化物として溶湯中から除去されるが、固溶分として母相中に残存したSiが0.05%以上あると、はんだ及びSnめっきの白化あるいは剥離を引き起こし、さらに導電率も低下する。また、変調構造の形成を抑制する。従ってSiは0.05%以下とする。より望ましい範囲は0.0001%以上0.01%未満である。
【0013】
(Ti、Mg、Fe、Ag)
これらの元素は微量添加によりさらに耐応力緩和特性を向上させる効果を有するが、いずれも0.0001%未満では効果がなく、総量で1%を超えて含有されると導電率、はんだ耐候性及び曲げ加工性の低下を招く。従って、総量で0.0001%以上1%以下とする。
(S)
Sは高温では単体、低融点の金属間化合物又は複合酸化物などとして結晶粒界に融出し、加工性を劣化させる有害な元素である。0.005%を超えて含有されると熱間圧延時にこの低融点部から粒界割れを起こし鋳塊に割れが発生してしまう。一方、Sは打抜プレスによる打抜加工性を向上させ(ばりの低減、残留応力の低減)、打抜金型の摩耗を低減することができる。0.0005%未満の含有量ではこの効果がない。従って、Sの含有量は0.0005%以上0.005%以下が望ましい。上記効果のためには0.001%を超える含有量がさらに望ましい。
【0014】
(O、H)
本発明合金も溶湯の段階では気体元素であるH及びOを吸収している。これらは凝固時に溶湯中から追い出されてくるため、O含有量を50ppm以下でかつH含有量を10ppm以下に規制しておかなければ鋳造時の湯流れ性や鋳塊肌が劣化する。また、特にHの残留は、板材加工まで至ったとしても、途中工程の圧延や焼鈍で表面に膨れを生じる原因となり、これは製品としての価値を損なう。従って、O含有量を50ppm以下、かつH含有量を10ppm以下に規制する。
【0015】
(その他の選択元素)
Ca、Mn、Be、Al、V、Cr、Co、Zr、Nb、Mo、In、Pb、Hf、Ta、B、Ge、Sbは、耐応力緩和特性を向上させる働きをもつ。いずれの元素も1%以下であれば本合金の主要成分であるNi、Snとは金属間化合物を造らないが、常温付近での固溶限が低い、もしくは酸素との親和力が強いため、これらの元素の1種又は2種以上が総量で1%を超えて含有されていると、溶解鋳造時、熱間圧延時あるいは加工熱処理中に粗大な酸化物を形成したり、粗大な晶出物が発生し、めっき性や曲げ加工性を低下させてしまう。また、導電率を低下させる。従って、これらの選択元素の1種又は2種以上の添加量は総量で1%以下とする。
【0016】
(導電率)
本発明者らは上記銅合金板において析出物が耐応力緩和特性を劣化させることを知見し、添加元素を固溶させることを目標とした。応力緩和率が160℃・1000Hr後にて30%以下を維持するためには、当該合金を焼鈍したときに得られる導電率の最大値に対して90%以下の導電率となっている必要がある。上記銅合金の場合、導電率の最大値は約500℃(数10分以上の場合)の焼鈍で得られ、500℃×4Hrの焼鈍条件で導電率はほぼ飽和するが、これは、この焼鈍により析出物が最大量生成し、以後導電率の上昇はほとんどないためである。なお、安定化焼鈍後において上記の導電率とするには、冷間圧延途中の焼鈍後(安定化焼鈍前)に上記の導電率となっている必要がある。
【0017】
さて、上記銅合金板において耐応力緩和特性の向上は、透過型電子顕微鏡で観察可能な結晶粒内部の微視的構造の調整があって初めて可能となる。具体的には、冷間圧延途中の焼鈍又は最終冷間圧延後に行われる安定化焼鈍において析出物の挙動を調整することにより、耐応力緩和特性が飛躍的に向上する。この析出物の挙動が導電率の変化として現れる。安定化焼鈍後の最終製品において導電率が最大値の90%以下ということは、焼鈍によってある程度析出物が生成されるが添加元素のほとんどが固溶した状態であり、母相自体の応力緩和に対する抵抗力(すべり線の移動や転位消滅をブロックする作用)を維持している。しかし、析出物が多く生成され導電率が90%を超えるようであると、母相中の転位は消滅するようになり、結果、材料特性が低下し、十分な耐応力緩和特性が得られなくなる。
なお、上記銅合金板において、導電率が最大値の90%以下というのは、析出物の面積率でほぼ5%以下に対応する。
【0018】
(応力緩和率の規定)
端子・コネクタの場合、耐応力緩和特性の劣化にともなって、端子間の嵌合力が低下するなどの支障を来たし、信頼性を損なうものとなる。しかしながら、応力緩和率が160℃・1000Hr後にて30%以下であれば特に問題はない。本発明の銅合金板においては、導電率と析出物面積率について前記条件を充足させることで、応力緩和率を160℃・1000Hr経過後にて30%以下とすることが可能である。
【0019】
本合金は耐応力緩和特性向上を主たる目的としているため、最終冷間圧延前に最も大きく弾性歪みエネルギーを蓄える熱間圧延後の冷間圧延途中で再結晶させておく必要がある。また、安定化焼鈍後の導電率を90%以下にするためには、冷間圧延途中の焼鈍後の段階で導電率を90%以下とすることが必要である。そのための熱処理条件として、本合金は析出硬化型合金ではないため、250〜850℃、より好ましくは、550〜650℃の範囲内の温度で5秒以上1分以下の加熱保持時間にて行う必要がある。この範囲よりも低温あるいは短時間では完全再結晶組織は得られず、この範囲よりも高温あるいは長時間では析出物が粗大化して面積率が大きくなり、導電率が上昇し、耐応力緩和特性は低下する。また結晶粒径が大きくなるため、機械的性質等の劣化を生じる。
【0020】
一方、最終圧延後にはさらに耐応力緩和特性を向上させ、材料特性(特にばね限界値)を向上させるための安定化焼鈍を行う必要があるが、そのためには250〜850℃、より好ましくは300〜450℃の温度範囲内の温度で5秒以上1分以下の加熱保持時間で行う必要がある。この範囲よりも低温あるいは短時間では冷間圧延で導入された転位が適切に解放されるに至らず、耐応力緩和特性や材料特性を向上させることができない。また、この範囲よりも高温あるいは長時間では析出物が粗大化して面積率が大きくなり、導電率が上昇し、耐応力緩和特性は低下しさらに経済的にも不利である。
【0021】
【実施例】
以下に本発明に係る銅合金板の実施例を説明する。実施例1にて板材の製造可否について、実施例2にて添加元素の作用について、実施例3にて導電率、析出物の面積率の作用及び熱処理条件について検証する。
(実施例1)
銅合金をクリプトル炉により大気中で木炭被覆下で溶解し、表1に示す組成の鋳塊を得た。ここで鋳造可否を判断した。次いで、この鋳塊を熱間圧延して厚さ15mmに仕上げ、熱間圧延時に割れが発生していないか目視にて判定した。なお、この本発明に係る銅合金は熱間圧延を必要としない横型連続鋳造によっても製作可能である。
【0022】
【表1】
【0023】
以上の結果、本発明例1〜11はいずれも鋳造可能で、かつ熱間圧延時の割れも発生しなかった。一方、比較例12は、P及びSiが不足しているため、脱酸不足により健全な鋳塊が得られなかった。比較例13は、H及びOが過剰で、湯流れ性が極端に低下したため鋳造を断念した。比較例14は鋳造可能であったが、Sが過剰に含有されているため熱間圧延時に割れが生じた。
【0024】
(実施例2)
比較例の銅合金をクリプトル炉により大気中で木炭被覆下で溶解し、表2のNo.15〜28に示す組成の鋳塊を得、次いで熱間圧延して厚さ15mmに仕上げた。この比較例合金はS、H、Oがすべて規定範囲内であるため、容易に良好な熱間圧延材が得られた。
本発明例No.1〜11及び比較例No.15〜28の熱間圧延材(板厚15mm)について、下記条件の冷間圧延と熱処理を組み合わせ、0.25mm厚の板材を得た。
(No.1〜11、15〜25、28)15mmt→0.5mmまで冷間圧延→600℃×20秒の焼鈍→0.25mmまで冷間圧延→300℃×20秒の安定化焼鈍。
(No.26)15mmt→3.0mmまで冷間圧延→550℃×2時間の焼鈍→1.5mmまで冷間圧延→450℃×2時間の焼鈍→0.34mmまで冷間圧延→400℃×2時間の焼鈍→0.25mmまで冷間圧延→350℃×20秒の安定化焼鈍。
(No.27)15mmt→3.0mmまで冷間圧延→490℃×2時間の焼鈍→1.0mmまで冷間圧延→360℃×2時間の焼鈍→0.25mmまで冷間圧延→350℃×20秒の安定化焼鈍。
これらの板材について下記要領で材料特性を評価、比較例と差異を確認した。
【0025】
【表2】
【0026】
(機械的強度)
耐力、引張強さは試験片の長手方向を圧延方向に平行としたJIS5号試験片(n=2)にて測定した。
(応力緩和特性)
図1及び図2に示すように、幅10mmの試験片1をEMAS−3003に記載の片持ち梁式にて、長さ80mm(l)の位置に試験片の耐力の80%の曲げ応力を付加し、応力を付加した状態で160℃又は180℃で1000時間保持した後応力を除去した。応力を付加したときの付加点での試験片のたわみ量(δ)と応力を除去したときの変異量(ε1)を測定し、次式によって応力緩和率を測定した(各温度でn=5)。
応力緩和率(%)=(ε1/δ)×100
なお、曲げ応力(σ)は次式によって算出される。
σ=(3×E×t×δ)/(2×l2)
ただし、
σ:曲げ応力=試験片の耐力×0.8
E:試験片のヤング率(N/mm2)
t:試験片の板厚=0.25mm
【0027】
(導電率)
電気伝導性は導電率を測定することにより評価した。導電率はJIS H 0505に基づいて測定した。
(はんだ耐候性)
MIL−STD−202F METHOD 208Dに基づいて、はんだ付けを行なった後、大気中150℃・1000Hr経過後、1mmφで180°曲げ戻しを行い、はんだの剥離の有無を目視で確認した(n=3)。
【0028】
(耐マイグレーション性)
上記板材から、幅3.0mm、長さ80mmの試験片を採取し、2枚1組として試験を行った(n=4)。第3図及び第4図は、上記試験片を使用した漏洩電流を測定する試験方法の説明図である。第3図及び第4図において2a、2bは試験片、3は厚さ1mmのABS樹脂、3aはこのABS樹脂に形成された穴、4はこのABS樹脂3の押え板である。5は押え板4を押圧固定するため表面に絶縁塗料を塗布したクリップ、6はバッテリ−、7は電線である。試験片2a、2bは端部に電線6が接続されている。
第3図及び第4図に示す2枚の試験片2a、2bにバッテリ−6から直流電流14Vを印加して、水道水中に5分間浸漬した後、続いて10分間乾燥する乾燥試験を50回行い、その間の最大漏電流を高感度レコ−ダ−(図示せず)で測定した。
【0029】
(曲げ加工性)
CESM0002金属材料W曲げ試験に規定されているB型曲げ治具で、幅10mm、長さ35mmに加工した供試材をはさみ、島津製作所製万能試験機RH−30を使用して1tの荷重でR/t=0にて先ずW曲げ加工を行った後、さらに1tの荷重で90°曲げ部を密着曲げして、曲げ部の割れの有無を判別した(n=2)。
(耐応力腐食割れ性)
上記板材から0.25mmt×12.7mmw×150mmlの試験片を切り出し、耐応力腐食割れ試験をトンプソンの方法(Materials Research & Standards(1961)1081)に準じて行った(n=4)。すなわち、試験片を図5に示すループ状にした後、14wt%のアンモニア水を入れ、40℃の温度で飽和蒸気を充満させたデシケータ中に暴露し、試験片が破断するまでの時間を測定した。
【0030】
以上の測定結果を表3及び表4に示す。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
表3に示すように、本発明例では耐力、導電率、密着曲げ加工性は良好で、耐マイグレーション性における最大漏洩電流値は低く抑制されており、さらにはんだ耐熱剥離性、耐応力腐食割れ性も良好であり、耐応力緩和特性にも優れている。
一方、比較例15はNiが過剰に含有されているため導電率が低く、はんだ耐候性試験にて剥離が生じた。比較例16はNiの含有量が不足しているため、耐力は低く応力緩和特性にも劣る。
比較例17はSnが過剰に添加されているため、導電率が低く、曲げ加工性に劣っている。比較例18はSnの含有量が不足しているため、十分な耐力が得られず耐応力緩和特性にも劣る。
比較例19はZnが過剰に添加されているため、導電率が低く耐応力緩和特性に劣り、さらに耐応力腐食割れ性において短時間で破損が認められた。比較例20はZnの含有量が不足しているため、はんだ耐候性試験にて剥離が生じ、さらに耐マイグレーション性における最大漏洩電流値が高く、自動車端子用には致命的である。
比較例21はPが過剰に添加されているため、はんだ耐候性試験にて剥離が生じている。比較例22はSiが過剰に添加されているため、はんだ耐候性試験にて剥離が生じている。比較例23はFeが過剰に添加されているため導電率が低下し、曲げ加工性試験では割れが発生、さらにはんだ耐候性試験にて剥離が生じている。比較例24はMgが過剰に添加されているため、曲げ加工性試験では割れが発生、さらにはんだ耐候性試験にて剥離が生じている。比較例25はMn等の選択元素が総量で過剰に含有されているため、導電率が低下し、曲げ加工性試験では割れが発生した。
比較例26はりん青銅であるが、導電率が低く、曲げ加工性試験では割れが発生、耐マイグレーション性及び耐応力緩和特性も劣り、はんだ耐候性試験にて剥離が生じている。比較例27は黄銅であるが、導電率が低く、曲げ加工性試験では割れが発生、耐応力緩和特性も劣り、耐応力腐食割れ性では短時間で破損している。比較例28はP、Siが過剰に添加されるため、はんだ耐候性試験にて剥離が生じ、耐応力腐食割れ性では短時間で破損している。
【0034】
(実施例3)
表1のNo.2の組成の熱間圧延材(15mm厚)について、表5に示す条件の冷間加工と焼鈍を組み合わせ、0.25mm厚の板材を得た。これらの板材について材料特性と、析出物の面積率を下記要領で測定した。
(析出物の面積率)
TEMを用いて90000倍(析出物を確認するのに最も適当な倍率であった)の倍率で3視野観察し、単位面積あたりに占める析出物の割合を測定し、平均値を面積率とした。
【0035】
【表5】
【0036】
以上の測定結果を表6及び表7に示す。
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
表6に示すように、本発明例2−1〜2−3では耐力、導電率、密着曲げ加工性は良好、耐マイグレーション性における最大漏洩電流値は低く抑制されて、さらにはんだ耐候性、耐応力腐食割れ性も良好である。また、導電率はバッチ焼鈍材(No.2−17)に比較して90%以下、析出物の面積率も5%以下であり、耐応力緩和特性に優れている。
一方、表7に示すように、比較例2−4は、冷間圧延途中の熱処理時間が短いため再結晶せず、耐応力緩和特性をはじめとする材料特性に劣る。比較例2−5は、冷間圧延途中の熱処理時間が長すぎたため結晶粒が粗大化し、析出物の面積率が過剰となり、導電率もバッチ焼鈍材の90%を超え、耐応力緩和特性が劣化し、さらに曲げ加工性にも劣る。比較例2−6は、冷間圧延途中の熱処理時間が短いため再結晶せず、耐応力緩和特性をはじめとする材料特性に劣る。比較例2−7は、冷間圧延途中の熱処理時間が長すぎたため結晶粒が粗大化し、析出物の面積率が過剰となり、導電率もバッチ焼鈍材の90%を超え、耐応力緩和特性が劣化し、さらに曲げ加工性にも劣る。
比較例2−8は、冷間圧延途中の熱処理温度が低すぎたため再結晶せず、耐応力緩和特性をはじめとする材料特性に劣る。比較例2−9は、冷間圧延途中の熱処理温度が高すぎたため、結晶粒が粗大化し、析出物の面積率が過剰となり、導電率もバッチ焼鈍材の90%を超え、耐応力緩和特性は劣化し、さらに曲げ加工性にも劣る。
【0040】
比較例2−10は、最終圧延後の安定化焼鈍が行われていないため転位が適切に解放されておらず、耐応力緩和特性に劣る。比較例2−11は、最終圧延後の焼鈍時間が短すぎたため、転位が適切に解放されておらず、耐応力緩和特性に劣る。比較例2−12は、最終圧延後の焼鈍時間が長すぎたため、析出物が粗大化して面積率が大きくなり、導電率もバッチ焼鈍材の90%を超え、耐応力緩和特性が劣った。比較例2−13は、最終圧延後の焼鈍時間が短すぎたため、転位が適切に解放されておらず、耐応力緩和特性に劣る。比較例2−14は、最終圧延後の焼鈍時間が長すぎたため、析出物が粗大化して面積率が大きくなり、導電率もバッチ焼鈍材の90%以上となり、耐応力緩和特性が劣る。
比較例2−15は、最終圧延後の焼鈍温度が低すぎたため、転位が適切に解放されておらず、耐応力緩和特性に劣る。比較例2−16は、最終圧延後の焼鈍温度が高すぎたため、析出物が粗大化して面積率が大きくなり、導電率もバッチ焼鈍材の90%以上となり、耐応力緩和特性が劣った。
比較例2−17はバッチ焼鈍材であり、冷間圧延途中の焼鈍時間が本請求範囲を超えるものであり、さらに最終圧延後の焼鈍も行われていないため、耐応力緩和特性をはじめとする材料特性に劣る。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、特に応力緩和特性に優れ、強度、耐マイグレーション性、耐応力腐食割れ性、はんだ耐熱剥離性等にも優れた端子・コネクタ用銅合金板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 応力緩和率特性を評価する方法を説明するための斜視図である。
【図2】 その側面図である。
【図3】 最大漏洩電流の測定方法を説明するための平面図である。
【図4】 その側面図である。
【図5】 耐応力腐食割れ試験に用いたループ状試験片を示す図である。
【符号の説明】
1、2a、2b 試験片
Claims (7)
- Ni:0.1%(質量%、以下同じ)以上0.5%未満、Sn:1.0%を超え2.5%未満、Zn:1.0%を超え15%以下、さらにP:0.0001%以上0.05%未満とSi:0.0001%以上0.05%以下のいずれか一方又は双方を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる安定化焼鈍後の製品板であり、焼鈍して得られる導電率の最大値に対して90%以下の導電率を有することを特徴とする端子・コネクタ用銅合金板。
- さらにTi:0.0001%以上0.2%以下、Mg:0.0001%以上0.2%以下、Ag:0.0001%以上0.2%以下、及びFe:0.0001以上0.6重量%以下からなる群から選択された一種以上の成分を総量で0.0001〜1重量%含むことを特徴とする請求項1に記載された端子・コネクタ用銅合金板。
- S:0.0005%以上0.005%以下とし、さらにO含有量:50ppm以下、かつH含有量:10ppm以下としたことを特徴とする請求項1又は2に記載された端子・コネクタ用銅合金板。
- Ca、Mn、Be、Al、V、Cr、Co、Zr、Nb、Mo、In、Pb、Hf、Ta、B、Ge、Sbの1種又は2種以上を総量で1%以下含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された端子・コネクタ用銅合金板。
- 析出物の面積率が5%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された端子・コネクタ用銅合金板。
- 160℃・1000hr経過後の応力緩和率が30%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された端子・コネクタ用銅合金板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載された銅合金に対し、冷間圧延工程の途中での再結晶を伴う焼鈍及び最終冷間圧延後の安定化焼鈍を、連続炉において250℃〜850℃の温度範囲で5秒以上1分以下実施することを特徴とする端子・コネクタ用銅合金板の製造方法。
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