JP3729749B2 - 耐アーク性に優れる銅合金板又は条 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に端子用として好適な、耐アーク性に優れる銅合金板又は条に関する。
【0002】
【従来の技術】
地球環境保護の観点から低燃費車の開発が指向されるなかで、自動車用電源の高電圧化が検討されている。現行の12ボルト電源を例えば42ボルトに代えると、同じ電力を得るために電流は1/3で済むため、電線、端子等の導電部品を小型化でき、それだけで、自動車1台当り、数10キログラムの軽量化が可能であるといわれている。
現在、自動車用の端子材料として、Cu−30Zn、りん青銅、脱酸銅、OFC、Cu−Fe−P系等の各種銅合金板又は条が多用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
自動車用電源を高電圧化した場合は、例えば通電中に誤ってコネクタを外したようなとき、あるいは走行時の振動によって電極間が瞬間的にオープンになる時(チャッタリング現象発生時)に、オス−メス端子間にアークが発生し、端子が焼損するおそれがある。焼損した端子はコネクタごとワイヤから切断し交換せざるを得ないことから、耐アーク性に優れた端子材料が必要とされる。ここで、耐アーク性とは、▲1▼アーク放電が継続しにくい、▲2▼アーク放電が発生しても、端子が焼損しにくい、▲3▼アーク放電が発生しても、オスーメス端子が溶着しにくい性質を指す。
本発明者の知見によれば、Cu−Fe系及びCu−Fe−P系合金は耐アーク性に優れている。しかし、これらは再結晶組織が容易には得られず、かつ成型に際して異方性が強く出て、特に圧延直角方向の曲げ加工性に劣り、小型でかつ複雑な構造を持つ端子の成型に適さないという問題がある。
【0004】
そのほか、自動車電装品の配線用コネクタ(特にメス端子)を小型化し、なおかつその信頼性を確保(接圧力を維持)するためには、素材のばね特性(ばね限界値)を一層向上させる必要がある。また、エンジンルーム内のように高温環境において長時間保持されてもへたり(経時的な嵌合力の低下)がこないようにするためには耐応力緩和特性の向上が必要である。さらに、オス・メス端子の接触抵抗を減らし、耐食性を向上させるため優れたSnめっき密着性を有することも求められる。
【0005】
本発明は、このような従来材料の問題点に鑑みてなされたもので、耐アーク性に優れると同時に、曲げ加工性や、さらにばね限界値、耐応力緩和特性、Snめっき性にも優れ、特に端子用として好適な銅合金板又は条を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る耐アーク性に優れる銅合金板又は条(以下、銅合金板という)は、Fe:1.0〜2.5%、Si:0.005〜0.1%、Sn:0.05〜0.5%、Mg:0.05〜0.5%、Zn:0.01〜1.0%を含有し、H含有量が0.0001%以下、O含有量が0.004%以下、残部がCu及び不可避不純物からなる。この銅合金は、必要に応じて、さらにP:0.03%未満、又は/及び、Ag、Ti、Ca、Mn、Be、Al、V、Pb、Co、Zr、In、Ni、B、Sbのそれぞれ0.001〜0.1%の1種又は2種以上を総量で0.001〜0.1%含むことができる。
上記銅合金板は、圧延方向に対し平行な断面にて、板厚の中間部分を圧延平行方向に15μm以下の間隔をおいて荷重0.98N以下のビッカース硬さ計で硬さを30点測定した場合の硬さ測定値集合の標準偏差が5以下で、かつその方向に直交する板厚方向に15μm以下の間隔をおいて荷重0.98N以下のビッカース硬さ計で硬さを30点測定した場合の硬さ測定値集合の標準偏差が5以下であるとき、曲げ加工性が特に優れる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る銅合金板の成分組成について説明する。
Fe;
Feは析出してこの銅合金の強度を向上させると同時に、耐アーク性を向上させる。しかし、1%未満ではその効果が不十分であり、2.5%を超えて含有すると粗大なFe粒子が晶出及び析出して曲げ加工性が低下し、耐アーク性も劣るようになる。従って、Feの含有量は1.0〜2.5%とする。望ましくは1.0〜2.1%、さらに望ましくは1.8〜2.0%である。なお、Cu−Fe合金においては、Fe粒子の析出は再結晶とほぼ同じ熱処理条件で発生するため、析出粒子が再結晶界面移動を妨害する強い相互作用を起こす。このため、再結晶熱処理(中間焼鈍)後は再結晶軟化した組織中に、硬質の繊維状組織が多数残存する。この繊維状組織は実操業範囲内の焼鈍温度では消滅せず、これにより銅合金の異方性が強くなり、曲げ加工性が低下する。
【0008】
Si;
SiはFe析出物による再結晶の阻害作用を抑制し、再結晶焼鈍時に再結晶による繊維状組織の消滅を促進する作用を有する。しかし、この作用は0.005%未満の添加量では十分発揮されず、一方、0.1%を超えて含有するとFe−Si析出物が形成され、かえって再結晶を阻害し、銅合金板の異方性が改善されない。そのほか、上記範囲の含有で、Snとともに耐応力緩和特性及びばね限界値を向上させる作用を有する。従って、Siの含有量は0.005〜0.1%、望ましくは0.03〜0.07%である。
【0009】
Mg;
Mgは固溶Snと共添することで耐応力緩和特性及びばね限界値を大きく向上させる作用がある。しかし、Mgは酸化しやすく、添加量が多くなると大気溶解が難しくなり、導電率も低下する。上記銅合金(Cu−Fe系)においてMgの添加量が0.5%を超えると均一な再結晶が阻害されて曲げ加工性が劣化し、一方、0.05%未満であると特に耐応力緩和特性が向上しない。従って、Mgの含有量は0.05〜0.5%とする。望ましくは0.05〜0.15%であり、この範囲で固溶Snとの共添により耐応力緩和特性及びばね限界値がより向上する。なお、MgとSnを共添しない場合は耐応力緩和特性等の向上はみられない。
【0010】
Sn;
Snは固溶Mgと共添することでばね限界値及び耐応力緩和特性を大きく向上させ、さらに曲げ加工性を向上させる作用がある。しかし、Snの添加量が0.5%を超えると導電率が低下し、一方、0.05%未満であると特にばね限界値及び曲げ加工性が向上しない。従って、Snの含有量は0.05〜0.5%とする。望ましくは0.05〜0.15%であり、この範囲で固溶Mgとの共添によりばね限界値、耐応力緩和特性及び曲げ加工性がより向上する。
Zn;
ZnはSn及びはんだめっきの剥離防止に大きい効果がある。しかし、1.0%を超えて含有されると低沸点のZn金属蒸気が放散しやすく、耐アーク性が劣化する。一方、0.01%未満であるとSn及びはんだめっきの剥離が防止できない。従って、Znの含有量は0.01〜1.0%とする。望ましくは0.1〜0.2%であり、この範囲で特に上記効果が大きい。
【0011】
P;
Pは不可避不純物としてスクラップ等から混入し、あるいは脱酸補助及び湯流れ性の改善のため必要に応じて添加される。しかし、Pが含有されるとSiの作用(Fe析出物による再結晶の阻害作用を抑制する作用)が阻害されるため、含有量は0.03%未満(0%を含む)としなくてはならない。Pの含有量が0.03%以上となると、たとえSiが0.005%以上添加されても、中間焼鈍で均一微細な再結晶組織が得られない。この場合、中間焼鈍の温度を上げても未再結晶部分が残り、すなわち未軟化繊維状組織が残留し、銅合金板の断面組織に硬度のばらつきがでて曲げ加工性が低下する。なお、この未再結晶部分は、量産工程で通常行われている焼鈍条件範囲内では、単に焼鈍回数を2回以上に増やしても消失させることができない。P含有量は少ないほどよく、望ましくは0.005%以下とする。
【0012】
O、H;
これらの元素は不可避不純物として混入する。O、Hが多いと鋳塊にブローホールが発生し、またOが多いと溶湯中に酸化物が大量に発生して湯流れを阻害するため、O含有量は0.004%以下、H含有量は0.0001%以下に制限する必要がある。
Ag〜Sb;
これらの元素は、銅合金の再結晶を遅らせ、結晶粒径を細かくし、曲げ加工性を向上させる作用があり、また再結晶温度を上昇させ耐応力緩和特性を向上させる用があるため、それぞれ0.001%以上が必要に応じて添加される。しかし、これらの元素のうち、Ca、V、Pb、B、Sbを除く元素が析出又は晶出すると、特に酸化物を形成した場合はそれがアーク発生の起点となり、耐アーク性を劣化させるので、個別に及び総量で0.1%以下に規制される。Ca、V、Pb、B、Sbについては、銅中にほとんど固溶せず、溶湯からの凝固中に結晶粒界などに偏析するため、熱間圧延時に割れを誘発しやすくなる。従って、これらは個別に及び総量で0.1%以下に規制される。
【0013】
上記銅合金は、下記実施例に示すように、鋳造後均質化処理を行った後、熱間圧延を行い、続いて冷間圧延及び中間焼鈍を行い、さらに最終冷間圧延後、仕上げ焼鈍を行うという一般的な製造方法で製造できる。冷間圧延及び中間焼鈍は必要に応じて2回以上繰り返すことができる。
【0014】
【実施例】
次に本発明に係る銅合金板の実施例について、比較例と比較して説明する。
表1〜表3に示す組成の銅合金をクリプトル炉において、大気中で木炭被覆下に溶解、鋳造した。次いで、鋳塊を970℃で1時間保持後、熱間圧延を施し、続いて面削後厚さ0.83mmまで冷間圧延し、450℃で2時間の中間焼鈍を実施した。次いで、この板材の酸化スケールを除去後、厚さ0.25mmまで冷間圧延し、仕上げ焼鈍を400℃で20秒行った。最後にこの板材を酸洗して酸化スケールを除去し、最終製品の板材とした。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
ただし、No.36は水素含有量が過剰で、作製した鋳塊にブローホールが多数認められ、その後の熱間・冷間圧延工程を断念した。No.37は酸素含有量が過剰で、鋳造時に添加元素酸化物が多数発生し、湯流れ性が極度に低下したため、鋳造を断念した。No.41は銅に対してほとんど固溶しないCaの含有量が過剰で、凝固時、粒界に濃縮したため、熱間圧延で割れが発生し製造を断念した。No.45はVの含有量が過剰で、凝固時、粒界に濃縮したため、熱間圧延で割れが発生し製造を断念した。No.46は銅に対してほとんど固溶しないPbの含有量が過剰で、凝固時、粒界に濃縮したため、熱間圧延で割れが発生し製造を断念した。No.50は銅に対してほとんど固溶しないBの含有量が過剰で、凝固時、粒界に濃縮したため、熱間圧延で割れが発生し製造を断念した。No.51は銅に対してほとんど固溶しないSbの含有量が過剰で、凝固時、粒界に濃縮したため、熱間圧延で割れが発生し製造を断念した。
【0019】
上記製造工程で得られた銅合金板について、下記特性を下記要領にて測定した。その結果を表4〜表6に示す。
(硬さの標準偏差)
切り出した材料を、圧延方向に対し平行な断面(板面に垂直)を下にして樹脂に埋め込み、この断面が平滑・鏡面になるように研磨する。このようにして圧延方向に平行な断面を作成する。この断面にて、板厚の中間部分を圧延平行方向に15μm以下の間隔をおいて荷重0.98N以下のビッカース硬さ計で硬さを30点測定する。この硬さ測定値集合の標準偏差を計算した。また、その断面にて、圧延平行方向に直交する方向(板厚方向)に15μm以下の間隔をおいて荷重0.98N以下のビッカース硬さ計で硬さを30点測定する。この硬さ測定値集合の標準偏差を計算した。
下記実施例にみられるように、どちらの方向とも硬さ測定値の標準偏差が5以下であれば、曲げ加工性に優れることがわかった。その場合、再結晶は一様に完了したと考えられる。
【0020】
(引張特性)
JIS5号引張試験片を機械加工にて作製し、島津製作所製万能試験機UH−10Bで引張試験を実施して測定した。このうち自動車用端子材として特に重要視される耐力は、ここではJISZ2241で規定される永久伸び0.2%に相当する引張強さである。
(導電率)
導電率測定はJISH0505に規定されている非鉄金属材料導電率測定法に準拠して、横川電機製ダブルブリッジ5752を用いた。導電率50%IACS以上であれば、自動車用のパワー系統用端子で自己発熱を抑制できる。
(ばね限界値)
ばね限界値はJISH3130に規定されているばね限界値のモーメント式試験に準拠して測定した。ばね限界値300N/mm2以上であれば、自動車用のパワー系統用端子で必要とする接点嵌合力を維持できる。
【0021】
(180゜曲げの限界曲げ半径)
180°曲げ試験は、幅10mm、長さ35mmの試験片を圧延平行方向及び直角方向に切り出し、JISZ2248に準拠して行った。各曲げ半径(R)を備えたVブロック曲げ治具で試験片を挟み、島津製作所製万能試験機RH-30を使って9.8×103N(1ton)の荷重で予備曲げ加工を行い、さらに平らな金属テーブル上に予備曲げされた試験片を置き、島津製作所製万能試験機RH-30を使って9.8×103Nの荷重で180゜曲げを行った。上記曲げ治具の各曲げ半径に対し、供試材の曲げ部が割れ等を呈していないかどうかルーペで検鏡し、割れのない最小の曲げ半径(R)と試験片の厚さ(t=0.25mm)の比R/tで曲げ加工性を判定した。なお、R=0は180゜密着曲げである。
【0022】
(耐応力緩和特性)
耐応力緩和特性は、片持ち梁方式を用いて測定した。具体的には、材料の圧延方向に対し直角な方向から幅10mmの短冊状試験片を切り出し、その一端を剛体試験台に固定し、試験開始時に試験片を10mmそらせ、材料耐力の80%に相当する表面応力が材料に負荷されるようにする。これを120〜170℃まで5℃きざみに設定した各オーブン中にそれぞれの材料を1000時間保持し、除荷後のそりLが初期の弾性範囲内の10mmのそりにどれだけ近づいたのか、その割合Rを測定することによって評価した。すなわち、R=(10−L)/10×100(%)を算出して比較した。この評価でR:70%以上を維持できる最高温度を上限温度とした。
【0023】
(Snめっき密着性)
Snめっき密着性は、硫酸第一錫40g/lit、硫酸100g/lit、クレゾールスルフォン酸30g/lit、ホルマリン5mlit/lit、分散剤20g/lit、光沢剤10mlit/litからなるSnめっき浴中(20℃)で電流密度2.5A/dm2にてめっき厚さ1.5μmのSnめっきを施した後、105℃オーブン中で500時間加熱し、その後2mmRで180゜曲げた後平板に曲げ戻し、その際の材料からのSnめっきの剥離の有無を目視で評価した。
【0024】
(耐アーク性)
42ボルト・3アンペアの通電条件で、図1に示すように、90°曲げ(曲げR=0mm)した同種供試材同士をクロスバー状に点接触・解離させた。点接触・解離のサイクルは、図2に示す条件で3サイクルとし、接触時の荷重は150g(1.47N)、近接及び解離のスピードは5mm/分とした。接点解離後1.5秒で接点移動方向を反転させ、さらに1.5秒後に再度接点が荷重1.47Nで接触するようにした。すなわち接点解離距離は最大で125μmである。
1サイクル目の解離の際に同種供試材で構成した対向電極間に発生するアーク放電の電圧変化波形を島津理化器械株式会社製デジタルストレージオシロスコープDSS−210型で観察し、その継続時間を測定した。具体的には接点解離の瞬間から(42ボルト通電状態)から0ボルトに遷移するまでの時間を1秒単位で読み取った。また、3サイクル終了後、供試材の接触部表面について、焼損発生及び溶着の有無を観察した。具体的には接触点に直径0.5mm以上の溶融・再凝固した痕跡がある場合、焼損発生とした。また、接点形成に必要な垂直加重1.47Nを除荷して、接点引き離し方向に接点を移動させた時に、すでに対向電極が一体化してしまって解離できない場合を溶着有りと見なした。
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】
【表6】
【0028】
表4〜表6に示すように、本発明の規定範囲内の組成を有するNo.1〜22は、強度特性及びばね特性、伸び、耐応力緩和特性、Snめっき密着性、導電率、耐アーク性に優れ、かつ、硬さの標準偏差が5以下で、曲げ加工性が両方向とも良好であり、自動車用端子材として好適な銅合金板であった。
一方、No.23はFe含有量が低いため、アーク継続時間が3秒に達する。No.24は逆にFe添加量が過剰でアーク放電は1秒未満で終了するが、接点が焼損・溶着してしまう。なお、アーク継続時間が3秒ということは、図3に示すように、供試材が解離している間ずっとアーク放電が続いていたことを意味する。また、図4に示すように、2サイクル目以降の接触時に火花及びスパッタが発生して接触部位が損傷するとともに溶着し、続いて解離し、これが繰り返されて焼損が大きくなる。あるいは溶着で対向接点同士が一体化してしまう。
【0029】
No.25はFe添加量は適正であるが、Si含有量が過剰なため、Fe−Si金属間化合物が析出し、再結晶が阻害され遅延する。その組織の不均一性を示す圧延平行方向、直角方向の硬さの標準偏差はいずれの方向とも5を越え、その結果、両方向とも曲げ加工性限界が低くなり、R/tが2以上の曲げにしか耐えられなくなる。No.26は逆に再結晶を促進する効果のあるSi含有量が低いため、析出粒子と再結晶粒界の相互作用が低減できず、異方性をもった異常組織の成長を招く。そのため、その組織の不均一性を示す圧延平行方向、直交方向の硬さの標準偏差はいずれの方向とも5を越え、その結果、両方向とも曲げ加工性限界が低くなり、R/tが2以上の曲げにしか耐えられなくなる。No.27はFe,Si添加量は適正であるが、P添加量が過剰なため、Fe−P金属間化合物が析出し、再結晶が阻害され遅延する。その組織の不均一性を示す圧延平行方向、直角方向の硬さの標準偏差はいずれの方向とも5を越え、その結果、両方向とも曲げ加工性限界が低くなり、R/tが2以上の曲げにしか耐えられなくなる。
【0030】
No.28はSn添加量が低いため、十分な耐力を確保できない。ばね特性も十分得られない。また、強度が低いため伸びは得やすいが、曲げ加工性は低下する。No.29は逆にSn添加量が過剰なため、機械的特性は良好であるが、導電率が低下してしまう。No.30はMgが適正量添加されているが、Snが共添されていないため、ばね限界値及び耐応力緩和特性が得られていない。No.31はMg添加量が低いため、ばね限界値及び耐応力緩和特性が得られていない。No.32は逆にMg添加量が過剰なため、再結晶が阻害され、特に圧延直角方向にできた強い異方性が解消されておらず、この方向の硬さの標準偏差が5を越える。このため、この方向の曲げ加工性限界がR/tで3以上となってしまう。No.33はSnが適正量添加されているが、Mgが共添されていないため、ばね限界値及び耐応力緩和特性が得られていない。No.34はZn添加量が少ないため、Snめっきの剥離が防止できない。No.35は逆にZn添加量が過剰なため、低沸点のZn金属蒸気が放散しやすく耐アーク性が劣化する。
【0031】
No.38はNi含有量が過剰で、粗大なNi−Si金属間化合物が析出し、ここを基点にアーク放電が発生しやすくなり、焼損・溶着に至った。No.39はAg含有量が過剰で、材料表面にAgが濃縮、大気と反応し接触抵抗値の高い被膜を形成、この被膜がフリッティング現象で破壊されるとき、大きく焼損し、溶着に至った。No.40はTi含有量が過剰で、粗大なTi粒子が析出し、焼鈍時の内部酸化によりTi酸化物となり、ここを基点にアーク放電が発生しやすくなり、焼損・溶着に至った。No.42はMn含有量が過剰で、粗大なMn−Si金属間化合物が析出し、ここを基点にアーク放電が発生しやすくなり、焼損・溶着に至った。No.43はBe含有量が過剰で、粗大なBe粒子が析出し、焼鈍時の内部酸化によりBe酸化物となり、ここを基点にアーク放電が発生しやすくなり、焼損・溶着に至った。
【0032】
No.44はAl含有量が過剰で、焼鈍時に強固なAl酸化物被膜が形成され、この被膜がフリッティング現象で破壊されるとき、大きく焼損し、溶着に至った。No.47はCo含有量が過剰で、粗大なCo粒子が析出し、焼鈍時の内部酸化によりCo酸化物となり、ここを基点にアーク放電が発生しやすくなり、焼損・溶着に至った。No.48はZr含有量が過剰で、粗大なZr粒子が析出し、焼鈍時の内部酸化によりZr酸化物となり、ここを基点にアーク放電が発生しやすくなり、焼損・溶着に至った。No.49はIn含有量が過剰で、粗大なIn粒子が析出し、焼鈍時の内部酸化によりIn酸化物となり、ここを基点にアーク放電が発生しやすくなり、焼損・溶着に至った。No.52は添加元素量は適正であったが、Ag,Ni,Pb,Inの添加量合計が0.1重量%を越えていたために、アーク放電が発生しやすくなり、焼損・溶着に至った。No.53は添加元素量は適正であったが、Ni,Mn,Pb,Sbの添加量合計が0.1重量%を越えていたために、アーク放電が発生しやすくなり、焼損・溶着に至った。
【0033】
No.54は高導電率端子用にも使われるCDA19400合金であるが、析出焼鈍時に再結晶しづらく、特に圧延直角方向の硬さの標準偏差が5を越え、さらにばね限界値が低く、応力緩和特性も劣る。またアーク放電は1秒未満で終了するが、接点が焼損・溶着してしまう。No.55は自動車用高導電率端子用にも使われるCDA18665合金であるが、加工硬化が著しく、曲げ加工性が劣る。またアーク放電が継続しやすく、接点が焼損・溶着してしまう。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係る銅合金板は、耐アーク性に優れると同時に、曲げ加工性、さらにばね限界値、耐応力緩和特性、Snめっき密着性など、端子・コネクタ用材料として必要とされる特性を兼ね備え、特に自動車用電源を高電圧化した場合の端子材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 耐アーク性試験の説明図である。
【図2】 耐アーク性試験方法の説明図である。
【図3】 耐アーク試験の1サイクル目の説明図である。
【図4】 耐アーク試験の2サイクル目以降の説明図である。
Claims (5)
- Fe:1.0〜2.5%(質量%、以下同じ)、Si:0.005〜0.1%、Sn:0.05〜0.5%、Mg:0.05〜0.5%、Zn:0.01〜1.0%を含有し、H含有量が0.0001%以下、O含有量が0.004%以下、残部がCu及び不可避不純物からなる耐アーク性に優れる銅合金板又は条。
- さらに、P:0.03%未満を含むことを特徴とする請求項1に記載された耐アーク性に優れる銅合金板又は条。
- Ag、Ti、Ca、Mn、Be、Al、V、Pb、Co、Zr、In、Ni、B、Sbのそれぞれ0.001〜0.1%の1種又は2種以上を、総量で0.001〜0.1%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載された耐アーク性に優れる銅合金板又は条。
- 圧延方向に対し平行な断面にて、板厚の中間部分を圧延平行方向に15μm以下の間隔をおいて荷重0.98N以下のビッカース硬さ計で硬さを30点測定した場合の硬さ測定値集合の標準偏差が5以下で、かつその方向に直交する板厚方向に15μm以下の間隔をおいて荷重0.98N以下のビッカース硬さ計で硬さを30点測定した場合の硬さ測定値集合の標準偏差が5以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された耐アーク性に優れる銅合金板又は条。
- 請求項1〜4のいずれかに記載された銅合金板又は条より作製した耐アーク性に優れる端子。
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