JP4251672B2 - 電気電子部品用銅合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、Feを含有し、Fe又は/及びFe−P、Fe−Si、Fe−Tiなどの化合物を析出させた電気電子部品用銅合金、特に半導体用リードフレーム、端子、コネクター、ブスバーなどに用いる電気電子部品用銅合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅母相中にFe又はFe−P、Fe−Si、Fe−Tiなどの化合物を析出させると導電率と強度に優れる銅合金が比較的簡単に得られるため、C19400(Cu−2.35Fe−0.03P−0.12Zn)、C19500(Cu−1.5Fe−0.8Co−0.1P−0.6Sn)、C19700(Cu−0.6Fe−0.2P−0.05Mg)、Cu−Fe−Si、Cu−Fe−Tiなど多種のFe含有銅合金がリードフレーム、端子、コネクターなどの電気、電子部品材料として大量に用いられている。
【0003】
しかし、これらの材料を加工、成形する場合において、冷間圧延における板の波打ちや蛇行、残留応力の不均一、スリッターした条の蛇行、スタンピング加工における曲がりやバリの発生、リード曲げ加工部の肌荒れや割れ、製品での強度低下などの問題が発生することがあり、これが製品の歩留まりや加工時の生産性を低下させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、Fe又は/及びFe−P、Fe−Si、Fe−TiなどのFe系化合物の析出する前記のFe含有銅合金のように母相中に第2相が析出する合金においては、その熱処理において再結晶−粗大化と析出が同時に進行する。そのため、熱処理工程において、その熱処理条件(温度、昇温速度、保持時間)によっては粗大に成長した結晶粒と加熱中の析出によって成長を止められた微細な結晶粒が混在した組織(混粒組織)となる。また、一度混粒組織となるとその後の加工熱処理によって整粒組織の材料を作製することがきわめて難しい。そして、混粒組織を有する材料において、粗大結晶粒は微細結晶粒より変形能が大きく、耐力が小さい。そのため、このような混粒組織を呈する材料においては、部位によって変形能及び強度が異なるという現象が発生する。
【0005】
本発明者らの知見によれば、この混粒組織はFeの含有量が0.2%以上である前記のような銅合金において特に発生しやすく、その度合により部位による変形能及び強度の差が大きくなり、前記のような冷間圧延における板の波打ちや蛇行、残留応力の不均一、スリッターした条の蛇行、スタンピング加工における曲がりやバリの発生、リード曲げ加工部の肌荒れや割れ、製品での強度低下などの問題が発生する。
本発明は、本発明者らのこの知見に基づいてなされたもので、Fe含有銅合金において見られる上記の問題点を解消することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
Fe含有銅合金は、製造工程中に軟化、時効などの目的で行う熱処理によって、前述のように混粒組織となりやすく、また、一度混粒組織となるとその解消が難しく、製造工程、スタンピング工程において多大な問題を発生させる。逆に、例えば熱延材及び水平連鋳材を冷延する工程中で行う第1回目の熱処理において整粒組織とし、その後時効処理によってFe又は/及びFe−P、Fe−Si、Fe−TiなどのFe系化合物を析出させると、さらに冷延−熱処理を行っても混粒組織となることはなく、前述の問題は発生しない。
【0007】
このような観点から、本発明者らはFeを0.2〜4wt%含有する銅合金について、整粒組織とするための熱処理条件を検討した結果、結晶粒界の移動を妨げる析出が充分におこらない間に再結晶させればよいことを見い出した。また、このとき得られる再結晶粒の平均結晶粒径はその後の加工性、強度のことを考えると3〜60μmにすることが望ましく、同時に、新たに整粒化度(本発明では平均結晶粒径の80〜120%の寸法の結晶粒が全結晶粒に占める割合)という概念を導入して、前述の問題点を発生させないFe含有銅合金の条件として整粒化度70%以上という条件を見い出した。
【0008】
すなわち、本発明に係る電気電子部品用銅合金は、Feを0.2〜4%含有し、Fe又は/及びFe−P、Fe−Si、Fe−TiなどのFe基の化合物を析出し、残部が不可避不純物及びCuからなる銅合金において、圧延表面の板幅方向の平均結晶粒径の値が3〜60μmで、かつその値の80〜120%の寸法の結晶粒の数が全結晶粒の70%以上であることを特徴とする。この銅合金は、必要に応じてZn0.02〜5.0%、Sn:0.01〜3.0%、Co:0.01〜3.0%、Mg:0.01〜3.0%、Mn:0.01〜1.5%の1種又は2種以上を含有する。
【0009】
また、本発明に係る電気電子部品用銅合金は、上記組成の銅合金を、Fe又は/及びFe−P、Fe−Si、Fe−TiなどのFe基の化合物を析出させる時効処理に先立って、450〜950℃の温度範囲に0.1℃/秒以上の速度で昇温し、その温度で5秒〜10分保持して再結晶させた後、Fe又は/及びFe−P、Fe−Si、Fe−TiなどのFe基の化合物を析出させる時効処理を行うことで製造することができる。
【0010】
なお、銅合金中には不可避不純物としてAl,Ni,B,Zr,Cr,Pb,Sなどの元素が原料として用いるスクラップ、炉材などから混入することがあるが、Al,Ni,B,Zr,Crについてはそれぞれ0.2%以下、Pb,Sについてはそれぞれ0.03%以下、かつこれらの元素の総量が0.5%以下であれば、本合金の熱間・冷間加工性、機械的性質、導電率、曲げ加工性、プレス打抜き性などを大きく損なうことはないので含有させても差し支えない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る銅合金の成分組成等について、具体的に説明する。
(Feの含有量)
Fe含有量が0.2%未満であると、Fe又はFe−P、Fe−Si、Fe−TiなどのFe基化合物の析出量が少ないためリードフレーム、端子、コネクター等に要求される最近の高強度化要求に十分には応えることができず、また、特殊な加熱条件を設定しなくても整粒組織が得られるためFe含有量は0.2%以上必要である。また、Fe含有量が4%を越えると粗大なFeの晶出物が多量に発生し、これらの晶出物は強度向上にほとんど寄与せず、かえって曲げ加工性を劣化させ、プレス打抜き時に金型を摩耗させるため、Fe含有量は4.0%以下でなければならない。
従って、Feの含有量は0.2〜4.0%とする。この範囲の中でFeの含有量として望ましい範囲は0.3〜3.0%である。
【0012】
(Fe基の化合物形成元素)
P,Si,TiはFeと安定な化合物を形成し、Cuの母相に析出して銅合金の耐力、耐熱性を向上させる。化合物を形成させるために、P,Si,Tiの一種又は二種以上を添加するが、PはFeとFe2P又はFe3Pを、SiはFeとFe3Si、Fe5Si3又はFeSiを、TiはFeとFe2Ti又はFeTiを形成する。これらの含有量は、P:0.0001〜0.7%、Si:0.001〜1.0%、Ti:0.001〜1.0%であり、それぞれ下限値より少ないと耐力及び耐熱性が向上せず、上限値を越すと、導電率が低下し、鋳造が難しくなり熱延や冷延時に割れが発生しやすくなる。
【0013】
(Zn,Sn,Co,Mg,Mnの含有量)
Zn,Sn,Co,Mg,Mnは材料の強度を上昇させる。各元素のその他の添加効果とその含有量の限定理由は以下の通りである。
Znはプレス加工性の向上(金型摩耗の低減)、マイグレーションの防止、錫めっき及びはんだの耐熱剥離防止などの効果を有する。含有量が0.02%以下ではその効果が充分でなく、5.0%を越えて含有されるとはんだ濡れ性を低下させるため、その適正含有量を0.02〜5.0%とする。
Snはバネ限界値を向上させる。含有量が0.01%以下ではその効果が充分でなく、3.0%を越えて含有されると導電率を低下させるため、その適正含有量を0.01〜3.0%とする。
Coは耐熱性を向上させる。含有量が0.01%以下ではその効果が充分でなく、3.0%を越えて含有されると導電率を低下させるため、その適正含有量を0.01〜3.0%とする。
【0014】
Mgはバネ限界値及びプレス加工性(金型摩耗)を改善し、マイグレーションを防止する。また、Sと化合してMgSを形成し、鋳塊の熱間加工性を改善する。含有量が0.01%以下ではそれらの効果が充分でなく、3.0%を越えて含有されると導電率を低下させ、鋳造が難しくなるため、その適正含有量を0.01〜3.0%とする。
Mnは耐熱性、鋳塊の熱間加工性を向上させる。含有量が0.01%以下ではそれらの効果が充分でなく、1.5%を越えて含有されるとはんだ濡れ性と導電率を低下させ、鋳造が難しくなるため、その適正含有量を0.01〜1.5%とする。
なお、上記元素中Co、MnはそれぞれP、Siと化合物を形成するが、Fe−P、Fe−Si化合物以外にCo、Mnのりん化物又は/及び珪化物が形成されても本発明の合金の効果を害するものではない。
【0015】
(結晶粒径)
本発明の合金は、熱処理上がり、冷延上がり、又は冷延後、伸びを改善させるための低温−短時間加熱処理上がり、テンションアニーリング上がりあるいはテンションレベラー上がりとしても良いが、いずれの場合も圧延面で測定した板幅方向の平均結晶粒径の値が3〜60μmで、かつその値の80〜120%の寸法の結晶粒の数が全結晶粒の70%以上(整粒化度70%以上)であることを特徴とする。ここで、板表面において板幅方向の結晶粒径を測定するのは、焼鈍上がりにおいてもその後圧延を加えても板幅方向の結晶粒径がほとんど変化しないためである。
【0016】
平均結晶粒径の値を3〜60μmに限定するのは、平均結晶粒径が3μmを下回った場合、かえって曲げ加工性が低下するためであり、60μmを超えた場合は曲げ加工性が不良となり、スタンピング打抜き時のだれが大きくなり、直線性が悪化するからである。また、結晶粒径の分布を、平均結晶粒径の値の80〜120%の寸法の結晶粒の数が全結晶粒の70%以上(整粒化度70%以上)と限定するのは、整粒化度が70%を下回るときは、材料の曲げ加工性、スタンピング加工性、強度が低下するためである。さらに、平均結晶粒径の値は5〜40μm、整粒化度が全結晶粒の80%以上であるとプレス加工性や曲げ加工性がさらに向上する。
なお、平均結晶粒径は、圧延表面を光学顕微鏡で撮影した組織写真を用いJISH0501に規定されている切断法により測定する。また、結晶粒径の分布は、上記組織写真を画像解析装置で解析して求めることができる。
【0017】
(熱処理条件)
本発明の合金をその使用状態において前述の結晶粒径範囲及び整粒化度をもつ整粒組織とするには、時効処理に先だって通常の時効処理の加熱より急速加熱することが必要である。
本発明の合金はFeを含有することによって耐熱性が向上しており、450℃未満では0.1℃/秒以上の速度で昇温し、かつ当該温度に5秒以上保持しても均一に再結晶しない。従って、加熱温度は450℃以上とする。そして、高温−短時間加熱は微細で均一な粒径の再結晶組織とするには好ましい条件であるが(特にFeが0.5wt%を越える合金)、950℃を超える温度に加熱するとFeが少ない合金は加熱時間を5秒としても再結晶粒が粗大化しやすく、目的とする良好な曲げ性、スタンピング性が得られないからである。また、Fe含有量が多い合金に対しても950℃を越す温度であると再結晶粒の大きさを均一に制御することが難しい。さらには加熱雰囲気に含まれる酸素や水分によって内部酸化が発生してはんだ付け、めっきなどの表面処理性が低下しやすくなる。したがって、加熱温度範囲は450〜950℃とする。500℃〜950℃がより好ましい。
また、材料の加熱速度を0.1℃/秒以上とするのは、加熱速度が0.1℃/秒未満となると加熱中に析出が起き始め、結晶粒の成長速度に差を生じて微細結晶粒と粗大結晶粒の混粒組織となるからである。したがって、加熱速度は0.1℃/秒以上でなければならない。0.5℃/sec以上がより好ましい。
【0018】
さらに、上記条件で加熱しても、その保持時間が5秒未満では目的とする再結晶組織が得られず、10分を越えて保持しても結晶粒の成長が停止し、又はFeの含有量の少ない合金では結晶粒がかえって粗大化する。したがって、保持時間は5秒〜10分とする。10秒〜5分がより好ましい。
なお、整粒組織とするための加熱処理には例えば連続焼鈍炉を用いればよく、材料の表面酸化や内部酸化を防止するために還元雰囲気(例えば窒素−水素混合ガス雰囲気)で加熱し、冷却中の析出を防止するために加熱後急冷することが望ましい。室温までの冷却速度は5℃/秒以上であればその後の時効処理によって良好な特性が得られる。
【0019】
この後、整粒組織とした材料を時効処理する。この時効処理には通常バッチ加熱式のベル型炉などを用いるが、導電率が特に必要でない場合などには連続熱処理炉を用いてもよい。バッチ加熱の場合には通常、Fe又は/及びFeの化合物が析出する350〜650℃で1〜30時間程度材料を加熱する工程を採用する。なお、整粒組織を得るための急速加熱熱処理とその後の時効処理の間に冷延を行っても、その加工率が50%以下であれば本発明の効果を阻害するものではない。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、各実施例1〜3において結晶粒径及び整粒化度、引張り強さ、導電率、曲げ性及びはんだ濡れ性は、以下の方法で調査した。
(結晶粒径及び分布測定)
結晶粒径は、試料表面を研磨後エッチングして光学顕微鏡写真を撮影し、その組織写真からJISH0501に規定されている切断法(線分の向きを板幅方向とする)により測定した。なお、同一試料に対して5視野を観察し、その平均値を各試料の結晶粒径とした。
結晶粒径の分布は、上記の組織写真を画像解析装置を用いて解析した。すなわち、結晶粒を板幅方向に横切る線分の長さを300個以上の結晶粒について測定し、それらの平均値と度数分布を求めた。表1に示す整粒化度は、その平均値に対して80〜120%の粒径を持つ結晶粒の個数を求め、その個数の全結晶粒数うに対して占める割合(%)として算出した。
【0021】
(引張強さ)
試験片の長手方向を圧延方向に平行としたJIS5号試験片を作製し、測定した。
(導電率)
ミーリングにより短冊状の試験を加工し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により測定した。
(プレス性)
機械式プレスにより0.3mm幅のリードを打ち抜き、打ち抜いたリードのばり高さを測定して評価した。ばり高さは、10個のリードのばり面を走査型電子顕微鏡で観察し、各最大バリ高さの平均値で示した。
【0022】
(曲げ性)
曲げ加工性は、0.25mmRで90°曲げを行い、曲げ部の外面側を光学顕微鏡で観察し、肌荒れの有無及びクラックの有無で評価した。
(はんだぬれ性)
短冊状の試験片に弱活性フラックスを塗布し、230±5°Cに保持したはんだ浴(Sn/Pb=60/40)に5sec間浸漬した後引き上げ、試験片へのはんだの付着状況を観察し、ずれの有無及びはじきの有無で評価した。
【0023】
[実施例1]
表1に示す化学組成の銅合金を、電気炉により大気中で、厚さ50mm、幅80mm、長さ150mmの鋳塊に溶製し、その後、この鋳塊を900〜1000℃で1hr加熱した後、厚さ15mmに熱間圧延した。次に、この熱間圧延材の表面を面削して酸化膜を除去し、0.5mmまで冷間圧延した。この後、表1に示す条件(加熱温度とその温度に達してからの保持時間)で急速短時間加熱を行い、引き続き表1に示す条件で時効析出熱処理を行った。なお、急速短時間加熱の昇温速度は5℃/sec、短時間加熱後の冷却速度は10℃/sec以上、時効析出熱処理の昇温速度は0.01℃/secとした。
その後、加工率50%の冷間圧延を行って厚さ0.25mmの試験片を作製し、前記の試験を実施した。その結果を表1にあわせて示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から明らかなように、本発明に含まれるNo.1〜5は、急速短時間加熱と時効析出熱処理の組合せにより、整粒化された微細結晶粒を呈し、プレス加工によるばり高さも小さく良好であり、曲げ性も良好なもの得られた。
これに対して、比較例No.6では、Fe量が0.1%と少なくFeによる析出硬化が小さいため十分な強度を得ることができず、整粒化度が高いにもかかわらずプレス加工によるばり高さはかえって大きくなった。また、比較例No.7では、Fe量が4.5%と高すぎることから粗大なFe晶出物が多量に生成し、整粒化度が低下するとともにかえって曲げ性が劣化した。
【0026】
[実施例2]
表2に示す化学組成の銅合金を、電気炉により大気中で、厚さ50mm、幅80mm、長さ150mmの鋳塊に溶製し、その後、この鋳塊を900〜1000℃で1hr加熱した後、熱間圧延にて厚さ15mmに仕上げた。次に、この熱間圧延材の表面を面削した後0.5mmまで冷間圧延し、昇温速度5℃/sec、加熱温度725℃、保持時間30secにて急速短時間加熱を行い、水に焼き入れた。その後、昇温速度0.01℃/secで加熱温度500°Cに加熱し、4hr保持して時効析出熱処理を行った後、加工率50%の冷間圧延を行って厚さ0.25mmの試験片を作製し、結晶粒径、分布の測定及び各特性の調査を行った。その結果を表2にあわせて示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2から明らかなように、本発明であるNo.8〜12の実施例は、急速短時間加熱と時効析出熱処理の組合せにより整粒化された微細結晶粒を呈することから、プレス加工によるばり高さも小さく良好であり、曲げ性及び電気・電子部品用銅合金に不可欠なはんだぬれ性も良好であった。
これに対して、比較例No.13は、整粒化された微細結晶粒を呈し、プレス性、曲げ性ともに良好であるが、Znが6.0%と多いことから、はんだぬれ性においてはんだのずれが発生して不具合となった。また、比較例No.14〜16も同様に整粒化された微細結晶粒を呈し、プレス性は比較的良好であるが、いずれもそれぞれSn、Co、Mnを多く含有することから、曲げ性及びはんだぬれ性に不具合が発生した。
【0029】
[実施例3]
化学組成:Cu−0.6%Fe−0.1%Si−0.1%Znの銅合金を、電気炉により大気中で、厚さ50mm、幅80mm、長さ150mmの鋳塊に溶製し、その後、この鋳塊を900℃で1hr加熱した後、熱間圧延にて厚さ15mmに仕上げた。次に、上記熱間圧延材の表面を面削して酸化膜を除去した後、0.5mmまで冷間圧延し、表3に示す急速短時間加熱条件にて加熱処理を行った。それに引き続き昇温速度0.01℃/sec、加熱温度550℃、保持時間4hrにて時効析出熱処理を行った後、加工率50%の冷間圧延を行って厚さ0.25mmの試験片を作製し、結晶粒径、分布の測定及び各特性の調査を行った。その結果を表3にあわせて示す。
【0030】
【表3】
【0031】
表3から明らかなように、本発明であるNo.17〜22の実施例は、適正な急速短時間加熱と時効析出熱処理の組合せにより整粒化された微細結晶粒を呈することから、プレス加工によるばり高さも小さく良好であり、曲げ性も良好であった。なお、急速短時間加熱の昇温速度が速いほど、結晶粒の微細化及び整粒化の度合いは大きくなる。
これに対して、比較例No.23は急速短時間加熱を省略したものであり、整粒化度が大きく低下して混粒状態となることから、プレス加工によるばり高さが大きく、曲げにおいてもクラックが生じた。また、比較例No.24は急速短時間加熱の昇温速度が小さい場合であり、十分な結晶粒の微細化及び整粒化が得られないため、やはりプレス加工のばり高さが大きく、曲げにおいても肌荒れが生じた。さらに、比較例No.25は、急速短時間加熱の加熱温度が350℃と低く再結晶しなかったため混粒状態となり、曲げでクラックを生じた。逆に、比較例No.26は、急速短時間加熱の加熱温度が1000℃と高く、結晶が粗大化したためにプレス加工によるばり高さも大きく、曲げで肌荒れを生じた。比較例No.27は、急速短時間加熱の加熱時間が長く、結晶が粗大化した例であり、同様にプレス加工によるばり高さも大きく、曲げで肌荒れを生じた。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、プレス加工性(スタンピング性)及び曲げ加工性に優れたFe含有銅合金材を得ることができる。また、本発明方法によれば、適正な結晶粒径を持ち整粒化度が高い材料が得られるので、製造上の不具合(圧延、スリッター不具合)を減少させることもできる。従って、本発明は、製品歩留りの向上及び加工時の生産性、品質の向上など多大な効果を有する。
Claims (2)
- Feを0.2〜4%(質量%、以下同じ)、Pを0.0001〜0.7%、Znを0.02〜5.0%含有し、Fe又は/及びFe−P化合物を析出し、残部が不可避不純物及びCuからなる銅合金において、圧延表面の板幅方向の平均結晶粒径が3〜60μmで、かつその値の80〜120%の寸法の結晶粒の数が全結晶粒の70%以上であることを特徴とする電気電子部品用銅合金。
- さらにSn:0.01〜3.0%、Co:0.01〜3.0%、Mg:0.01〜3.0%、Mn:0.01〜1.5%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載された電気電子部品用銅合金。
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