JP2002371328A - 銅合金の製造方法 - Google Patents

銅合金の製造方法

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JP2002371328A
JP2002371328A JP2001180103A JP2001180103A JP2002371328A JP 2002371328 A JP2002371328 A JP 2002371328A JP 2001180103 A JP2001180103 A JP 2001180103A JP 2001180103 A JP2001180103 A JP 2001180103A JP 2002371328 A JP2002371328 A JP 2002371328A
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Michio Miura
道夫 三浦
Minoru Isshiki
実 一色
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Dowa Metanix Co Ltd
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Yamaha Metanix Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度であると共に、導電率を向上させるこ
とができる高強度高導電率銅合金の製造方法を提供す
る。 【解決手段】 高強度高導電率銅合金の製造方法は、銅
よりも酸化されやすい傾向を有する元素を1種以上含有
する銅合金を、不活性ガス、Hガス、及びNガスか
らなる群から選択された1種以上のガスに対して、分圧
が2.66Pa乃至66.5kPaの水蒸気を混合した
溶体化用ガス雰囲気中にて溶体化処理する工程と、前記
溶体化処理後に前記溶体化処理温度よりも低い温度で時
効処理する工程と、を有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高導電率化及び高
強度化を図ったバネ用導電材料等に好適な高強度高導電
率銅合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】リードフレーム及びバネ材料等、LSI
(大規模集積回路)の周辺分野に用いられる銅合金には
高導電率及び高強度が求められている。情報・通信関連
機器等に実装される民生用の狭ピッチコネクタは製品の
小型化に伴いピンの板厚の薄肉化及びピン幅の細線化が
進んでいる。情報量の面からは大容量化及び高速化が進
み、実装における導体の抵抗の低減、即ち高い導電率が
求められている。このような材料の特性は、添加元素並
びに加工及び熱処理の組み合わせで決まるため、従来、
これらの組み合わせによって、特性の向上が図られてい
る。
【0003】(1)銅合金の強化方法としては、析出硬
化による強化と、酸化物を分散させる内部酸化法等によ
る強化が知られている。この内部酸化法による強化の例
としては、例えば、特開平12−156452号公報
に、銅合金のリードフレームと封止樹脂との密着性改良
のため、表面に酸化処理を施したリードフレームの製造
方法が開示されている(従来例1)。この従来例1に記
載の技術においては、リードフレームの母体として、C
uにCr、Zr、又はTiを0.005乃至2質量%添
加したCu基合金を使用することにより、導電性を低下
させることなく強度を向上させる。銅合金は溶体化処理
後、所望の形状に冷間加工を行い、その後、時効処理を
行う。次いで、このリードフレーム母体の表面に、実質
的に酸化銅からなる均一な層を1〜80nmの厚さで形
成すると共に、この層中に分散粒子の酸化物を分布させ
ることにより、リードフレーム母体と樹脂との密着性の
向上を図っている。
【0004】また、日本金属学会誌 第48巻 第6号
(1984)p662−668には、Cu−Al−Ti
合金の内部酸化について開示されている(従来例2)。
この従来例2においては、Cu−Al、Cu−Ti及び
Cu−Al−Ti合金をCu:CuO:Al
1:2:3(質量比)の混合粉末の中に埋没し、石英管
に封入して700乃至1050℃で6時間、加熱するこ
とにより内部酸化処理を行う。
【0005】更に、特開平10−230362号公報に
は、耐磨耗性及び耐スパッタ付着性が優れ、高導電性を
兼ね備えた分散強化銅合金からなる溶接トーチ用部材及
びその製造方法が開示されている(従来例3)。従来例
3に記載の技術においては、Al、Si及びTi等の1
種以上の元素を含有する銅合金材から溶接トーチ部材に
成形し、成形したトーチ部材を酸素分圧0.1乃至10
0Paの雰囲気にて750乃至950℃の温度で高温加
熱処理することにより、トーチ部材表面から5乃至50
0μmの層に、前記元素の酸化物が分散した耐火物粒子
分散強化銅の層を作り、耐溶着性の改良を図っている。
【0006】また、上述の銅合金以外に、圧延鋼材(特
開2000−54067号公報)又はAg合金材(特開
2000−309834号公報、特開平9−13463
2号公報及び特開平6−316734号公報等)が内部
酸化を利用した技術として従来公知である。
【0007】(2)一方、析出硬化型の銅合金の例とし
ては、以下に示すものがある。CuNiSi合金は、
コルソン系合金であり、CuNiが全律固溶であるが、
Siを添加することにより、NiSiとしてCu中から
析出する。CuTi系合金においては、CuTiと
して析出し、析出物が微細でCu母相を強化すると共
に、転位の発生を分断する。また、Tiとしての固溶が
若干大きく、導電率が低い。CuCr系合金は、Cr
の固溶が低く導電率は高いが、析出物のサイズが大きく
Cu強化の程度が低い。CuBe系合金は、微細なγ
CuBe相金属間化合物が析出し、Cu相を強化する。
また、Coを0.3質量%程度添加することで過時効を
防止することができる。このCuBe系合金は、強度及
び導電率のバランスがとれた材料であるが、環境問題の
点から今後の使用は好ましくない。また、CuSnP系
合金においてはCuPが析出する。
【0008】以下、従来のCuTi系合金を例にとって
その製造方法について説明する。従来、溶解−鋳造−熱
間鍛造−面削−冷間圧延−溶体化−冷間圧延−溶体化−
時効の各工程を順次実施してCuTi合金が製造されて
いる。最初の溶体化処理は、例えば880℃に加熱した
後、水冷し、2回目の溶体化処理は、例えば900℃に
加熱した後、水冷するものである。また、酸洗には、硝
酸及び硫酸の混酸を使用し、最初の冷間圧延により、厚
さが0.3乃至0.5mm、幅が400mmの薄板と
し、2回目の冷間圧延により、厚さが0.1乃至0.2
mm、幅が400mmの薄板とする。最後の時効処理
は、例えば窒素ガス中で450℃に120分間加熱する
ことにより行う。
【0009】一般に、バネ用導電材料は通常高温で溶体
化(均質化)処理をした後、低温で時効析出させること
により強度と導電率とのバランスが図られている。従来
の溶体処理においては、例えば、銅合金からなる板材を
900℃の温度に保持した溶体化炉に入れ、例えば、板
材を2m/分程度の速度で送り、その後水冷して、溶体
化処理を行う。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
従来例1に記載の添加元素、又は従来例1乃至3に記載
の内部酸化においては、強度を低下することなく、十分
に導電性を向上させることができない。バネ材料等とし
て使用する銅合金としては、強度が高いと共に導電率が
高いことが好ましいが、導電率を高くしようとすると、
例えば過時効となり強度が落ちてしまう。また、強度に
最適な条件で時効すると導電率が不足してしまう。導電
率の不足は、銅合金において、時効処理により金属間化
合物等が銅母層中から十分に析出しきれずに固溶して残
っているために生じる。このようなことから、高強度に
すると、十分に導電率を上げられないという問題点があ
る。
【0011】また、両者を満足させる方法として、Cu
粉とCuTi粉を酸化させた後、混合して板材に加工す
る方法もあるが、この板材は酸化析出物が大きいため、
打ち抜き特性が悪く、ダイスが長持ちしないという問題
点もある。
【0012】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、高強度であると共に、導電率を向上させる
ことができる高強度高導電率銅合金の製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本願第1発明に係る銅合
金の製造方法は、銅よりも酸化されやすい傾向を有する
元素を1種以上含有する銅合金を、不活性ガス、H
ス、及びNガスからなる群から選択された1種以上の
ガスに対して、分圧が2.66Pa乃至66.5kPa
の水蒸気を混合した溶体化用ガス雰囲気中にて溶体化処
理する工程と、前記溶体化処理後に前記溶体化処理温度
よりも低い温度で時効処理する工程と、を有することを
特徴とする。
【0014】本願第2発明に係る銅合金の製造方法は、
銅及び銅よりも酸化されやすい傾向を有する元素を1種
以上含有する組成を有する銅合金の溶湯の中にArガス
と酸素ガスとの混合ガスをバブリングする工程と、前記
溶湯を鋳造して銅合金鋳塊を得、この銅合金鋳塊を加工
後溶体化処理する工程と、前記溶体化処理後に前記溶体
化処理温度よりも低い温度で時効処理する工程と、を有
することを特徴とする。
【0015】本願第3発明に係る銅合金の製造方法は、
銅よりも酸化されやすい傾向を有する元素を1種以上含
有する銅合金を銅の含有量を5乃至15質量%少なくし
て溶解する工程と、溶湯の中にCuOを所定の銅含有
量となるように添加する工程と、前記溶湯を鋳造して銅
合金鋳塊を得、この銅合金鋳塊を加工後溶体化処理する
工程と、前記溶体化処理後に前記溶体化処理温度よりも
低い温度で時効処理する工程と、を有することを特徴と
する。
【0016】また、前記銅よりも酸化されやすい傾向を
有する元素は、例えば、Be、Zr、Ti、Si、C
r、Mn、Fe、P及びSnである。
【0017】本発明においては、銅よりも酸化されやす
い傾向を有する元素を1種以上含有する銅合金を水蒸気
を混合した溶体化ガス雰囲気中にて溶体化処理し、その
後時効処理することにより、銅合金に前記元素の酸化物
を析出させることができる。これにより、強度を低下す
ることなく、銅合金中の固溶元素を低減して導電率を向
上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】上述の課題を解決すべく本願発明
者等が鋭意実験研究した結果、銅よりも酸化されやすい
傾向を有する元素を含有した銅合金を、不活性ガス、H
ガス、及びNガスからなる群から選択された1種以
上のガスに対して、分圧が2.66Pa乃至66.5k
Paの水蒸気を混合した溶体化用ガス雰囲気中で溶体化
処理し、これを溶体化処理よりも低い温度で時効処理す
ることにより、銅合金の母相中の固溶元素の濃度を下
げ、これにより、導電率を高めることができることを知
見した。
【0019】この理由としては、以下に示すものが考え
られる。即ち、水蒸気を含む雰囲気中で溶体化させるこ
とにより、銅合金内部に平衡状態に達するまで酸素を侵
入させた場合、一部は酸化物として析出するが、銅母相
中に固溶酸素が残っている。しかし、低温で時効させる
ことにより、金属間化合物と酸化物とが同時に析出する
ことにより、銅合金の母相中の固溶元素の濃度を下げる
ことができ、これにより、銅合金の導電率を向上させる
ことができる。
【0020】以下、本発明の実施例に係る銅合金の製造
方法について添付の図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本実施例の高導電率銅合金の溶体化処理工程を
示す模式図である。なお、本実施例においては、この溶
体化処理を2回目の溶体化に適用しているが、1回目の
み、又は1回目及び2回目の両方に適用してもよい。
【0021】先ず、溶解、鋳造して得られた銅合金鋳塊
に熱間圧延及び冷間圧延を行い、最初の溶体化処理を行
った後、冷間圧延を行う。次に、図1に示すように、銅
より酸化されやすい傾向を有する元素を含有した銅合金
板2を溶体化炉1に、例えば2m/分の速度で供給し、
溶体化炉1から出炉した板材2を冷却槽3で水冷する。
このような溶体化炉は従来と同様の装置である。本実施
例においては、溶体化炉1内の雰囲気を、不活性ガス、
ガス、及びNガスからなる群から選択された1種
以上のガスに対して、水蒸気を2.66Pa乃至66.
5kPa混合したものとする。このように、水蒸気分圧
を2.66Pa乃至66.5kPaにコントロールした
溶体化用ガスを溶体化炉2内に供給し、炉内を例えば9
00℃の温度に保持し、銅合金板1を溶体化処理する。
溶体化処理時間は例えば数分乃至60分程度、溶体化温
度は例えば800乃至950℃程度であり、Cuに添加
する添加元素の種類等により、種々変更する。
【0022】本発明においては、溶体化炉内雰囲気(溶
体化用ガス)として、Hガス、N 及びHガスの混
合ガス、又はAr等の不活性ガスに対して、水蒸気分圧
が2.66Pa乃至66.5kPaの範囲で水蒸気(H
O)を混合したものを使用する。このとき、水蒸気分
圧が2.66Pa以下では合金の内部酸化に要する時間
又は合金内へ酸素を取り込む時間が長くなるため、実用
的でない。一方、66.5kPa以上では、合金の内部
酸化又は合金内へ酸素を取り込むよりも表面酸化の傾向
の方が強くなり、薄い板材などには適用できない。特
に、133Pa乃至33.25kPaの水蒸気分圧で溶
体化処理すると、生産効率及び特性のバランス等から更
に好ましい。
【0023】このような水蒸気分圧を有する内部酸化雰
囲気を形成する場合、水蒸気に添加するガスとして、H
ガス、N及びHの混合ガス又はAr及びHの混
合ガスにすると、更に一層導電率を向上させることがで
きる。水素は合金内部を移動しやすく、このことによ
り、酸素を内部に侵入させやすいと考えられる。このた
め、銅母相中に適度の酸素を取り込めるので、酸化物の
析出が多くなるからである。
【0024】また、銅合金の出発材料としては、Cuに
Be等の銅より酸化されやすい傾向を有する添加元素を
含むものを使用する。銅より酸化されやすい添加元素と
しては、 Be≧Zr≧Ti≧Si≧Cr≧Mn≧Fe≧P≧Sn 等がある。なお、上記元素は、左側ほど内部酸化が生じ
やすいことを示す。なお、通常、例えばこれらの元素を
0.1乃至5質量%程度添加してバネ材としている。例
外的に、Crは15質量%程度添加する。
【0025】溶体化処理後、溶体化炉2から送り出され
た板材1は、水冷された後、時効処理される。時効処理
は、例えば350乃至500℃程度で例えば数分乃至6
0分程度行う。これらの時効処理条件は、銅合金の種類
によって依存する。また、例えば500℃程度の温度で
時効処理した後、例えば460℃程度に温度を下げて更
に時効処理する2段時効を行うと更に導電率向上の効果
が大きい。時効処理による析出硬化により、導電率を向
上させつつ高強度の銅合金を得ることができる。この場
合、時効処理は、窒素雰囲気又はArガス雰囲気等で行
われる。なお、CuTiは時効における相分解がスピノ
ーダル分解によるもので、2段時効とした方が酸化物の
析出量が多い。
【0026】また、本発明においては、溶体化処理にお
ける雰囲気中に水蒸気を混合して、銅合金中に酸化物を
析出させ、更に時効処理することにより、銅合金の強度
及び導電率を向上させるが、これに加えて、溶体化処理
後、又は時効処理後に、下記表7に示すように冷間圧延
等による加工により、銅合金の強度を向上させることも
できる。
【0027】本実施例においては、溶体化炉内の雰囲気
ガスに水蒸気を混合するため、Be、Zr、Ti、S
i、Cr、Mn、Fe、P及びSn等の銅より酸化され
やすい傾向を有する元素を含む銅合金を生産工程の変更
を伴わずに導電率を向上させることができる。また、溶
体化処理、加工、及び時効処理の組み合わせで更なる導
電率及び強度の向上を図ることができる。
【0028】なお、銅合金内部に酸素を侵入させる方法
としては、本実施例に限定されるものではなく、後述す
る方法によってもできる。
【0029】CuTi溶解後のArガス+酸素ガスの
バブリング この方法は、水蒸気混合ガス雰囲気で銅合金を溶体化処
理するのに代えて溶解工程中にArガスと酸素ガスとの
混合ガスを溶湯にバブリングする方法である。先ず、A
rガスに0.1Paの酸素を混合し、CuTi溶湯中に
パイプを挿入し、Arガス及び酸素ガスの混合ガスによ
り3分バブリングする。バブリング終了後、5分以内に
鋳造する。なお、5分以上長くおくと、TiOは軽い
ため溶湯表面に浮いて組成が変動する。下記表1に示す
ように、バブリングをすると導電率及びビッカース硬さ
が向上する。また、バブリング開始後、5分を超えてか
ら鋳造すると、組成が変動しTiの量が減少し、バネ性
及びビッカース硬さが低下する。なお、下記表1に示す
導電率の単位である%IACS(International Anneal
ed Copper Standard)とは、標準軟銅の導電率を100
%としたときの値である。また、バブリング有りとは、
Arガスに0.1Paの酸素を混ぜCuTi溶湯中にパ
イプを挿入し、Arガス及び酸素ガスの混合ガスにより
3分バブリングしたものである。
【0030】
【表1】
【0031】CuTi合金溶解後のCuO添加 この方法は、CuTi合金を溶解した後、CuOを添
加する方法である。96.5質量%Cu−3.5質量%
TiからなるCuTi合金のうち、Cuの10質量%分
を引いて溶解した後、10質量%分のCuOを添加
し、添加したCu Oが溶解した後、5分以内に鋳造す
る。5分を超えた後に鋳造すると、組成が変動し、Ti
の量が減少してバネ性が低下する。また、CuOの添
加量が5質量%未満では、その効果がない。一方、Cu
Oの添加量が15質量%を超えると、CuOが溶解
して溶湯中に完全に混合されるまでに時間がかかりす
ぎ、鋳塊の組成が目標値からずれる。下記表2に示すよ
うに、CuTi合金が溶解した後、この溶湯にCu
を添加すると、導電率及びビッカース硬さが向上する。
なお、CuOの場合は、あまり多くのCuOを添加
できないので、十分な酸素を添加することができない。
なお、下記表2において、CuOの添加有りとは、1
0質量%分のCuOを添加したものである。
【0032】
【表2】
【0033】但し、及びのどちらの方法も、鋳造し
て得られたインゴット(鋳塊)に熱間鍛造、溶体化処理
及び冷間圧延等の加工熱処理を行い、最終板厚が0.3
mmになったところで、Arガス雰囲気中で900℃の
温度で20分の溶体化を行い、そして、Arガス雰囲気
中で500℃の温度で20分の熱処理、更に460℃の
温度で1時間の熱処理を行う。
【0034】
【実施例】以下、本発明の銅合金の製造方法により実際
に製造した実施例の効果を、本発明範囲から外れる比較
例と比較して説明する。
【0035】第1試験例 2回目の溶体化処理における炉内の水蒸気分圧と導電率
との関係について調査した。図2(a)及び図2(b)
は、本実施例の試験装置を示す模式図である。図2
(b)に示すように、密閉容器10内に水11が貯蔵さ
れ、容器10の蓋12に、外部から容器10内へガスを
供給する供給管13と、容器10から外部へガスを取り
出す導出管14が設られている。容器10内の供給管1
3の先端は水11内まで延出されている。また、導出管
14は、容器10から取り出されたガスを溶体化炉21
に供給するため、図2(a)に示す溶体化炉21に接続
されている。溶体化炉21においては、石英管22の両
端に蓋23a、23bが設けられており、この蓋23
a、23bに、溶体化炉21内へガスを供給するチュー
ブ24a及び溶体化炉21外へガスを排出するチューブ
24bが取り付けられている。そして、Arガスを供給
管13から容器10内の水11内に導入し、水11内を
通して、ガスを導出管14から取り出し、溶体化炉21
内へ供給する。このとき、容器10内の圧力及び温度等
により、容器10から溶体化炉21へ供給される溶体化
用ガスの水蒸気分圧を調整することができる。
【0036】溶体化処理は次のように行った。先ず、図
2(a)に示すように、溶体化炉21を900℃に保持
した。温度を一定に保った容器10の水11の中に露点
が−70℃のArガスを通し、所望の水蒸気分圧を有す
るArガスを炉21内に供給し、雰囲気が一定になった
後に、熱間鍛造、面削、冷間圧延、溶体化処理及び冷間
圧延により厚さが0.3mmのCu−3.5質量%Ti
合金板試料20を得、これを溶体化炉21に入れた。各
試料は、溶体化炉21内に20分間保持し、水冷した。
【0037】また、比較のため、露点が−70℃である
同一のArガスを、容器10を通さず、つまり水蒸気を
混合せずに、900℃に保たれた溶体化炉内に供給し、
900℃、20分の同様の条件で溶体化処理した試料も
作成した。
【0038】溶体化炉21内の雰囲気中の水蒸気分圧を
種々変更して、20分間の溶体化処理を行った各試料に
対して、2種類の時効処理を施した。即ち、460℃で
1時間の1段時効処理及び、500℃で20分の時効処
理後、温度を460℃に下げて1時間の時効処理を施す
2段時効処理の2種類の時効処理を施した。そして、溶
体化処理後、1段時効処理後、2段時効処理後の3種類
の導電率を測定した。その結果を下記表3及び図3に示
す。図3は、横軸に水素蒸気分圧の対数をとり、縦軸に
導電率をとって、水蒸気分圧と導電率との関係を示すグ
ラフ図である。
【0039】
【表3】
【0040】比較例1の水蒸気分圧が0.266Paの
ものは、容器を通さず水蒸気を混合させていないArガ
ス(露点が−70℃のArガス)を供給した場合を示
す。表3及び図3に示すように、比較例1は、溶体化処
理における炉内に供給するガスに水蒸気を混合させてい
ないため、導電率が低い。また、比較例2は、水蒸気分
圧が本発明の下限値未満であるため、十分に導電率を向
上する効果が得られない。
【0041】これに対して、実施例2乃至8は、本発明
を満たすため、比較例に比して導電率が向上することが
わかる。また、460℃で1時間の1段時効処理した後
よりも、500℃で20分の時効処理後、温度を460
℃に下げて1時間の時効処理を施す2段時効処理した後
の方が導電率が向上した。特に、炉内雰囲気中の水蒸気
ガス分圧が429Paより大きいと、導電率がより高く
なり、好ましい(図3)。
【0042】第2試験例 溶体化処理における処理時間と、導電率との関係につい
て調査した。第1試験例の図2に示す試験装置を使用
し、先ず、水蒸気分圧が1330Paに保たれた容器1
0の中にArガスを通し、溶体化炉内の雰囲気中の水蒸
気分圧を、実施例4と同様の1330Paとした。そし
て、溶体化時間を5乃至60分の間で変化させ、第1試
験例と同様条件で1段時効処理及び2段時効処理の2種
類の時効処理を行い、これらの時効処理後の導電率の変
化を調べた。下記表4及び図4にその結果を示す。図4
は、横軸に溶体化処理時間をとり、縦軸に導電率をとっ
て、溶体化処理時間と導電率との関係を示すグラフ図で
ある。なお、図4において、丸印の点は、下記表4に示
す比較例13であり、炉内雰囲気を水蒸気混合なしのA
rガスのみとした試料(比較例1と同様)について、溶
体化処理時間を20分としたものの導電率を示す。
【0043】
【表4】
【0044】上記表4及び図4から明らかなように、5
分という短時間の溶体化でも十分に導電率を向上させら
れることがわかった。
【0045】第3試験例 第1試験例及び第2試験例で使用したCu−3.5質量
%Ti合金以外の銅合金からなる銅合金板について、合
金の種類と導電率との関係の調査をした。即ち、第2試
験例と同様に、水蒸気分圧が1330PaのArガスを
溶体化炉内に供給し、溶体化処理時間を20分として、
下記表3に示す種々の銅合金について溶体化処理をし
た。なお、時効処理時間は、全て1時間とし、溶体化処
理温度及び時効処理温度は合金の種類により変更した。
また、これらの銅合金においても、炉内に供給するガス
として、水蒸気を混合しないArガスのみのものと比較
した。そして、時効処理後における各合金板の導電率を
測定した。この結果を下記表5に示す。全ての合金板厚
は0.3mmである。
【0046】
【表5】
【0047】上記表5に示すように、いずれの合金にお
いても、同一の合金であれば、炉内雰囲気をArのみと
した比較例よりも、Arガスに水蒸気分圧が1330P
aとなるように、水蒸気を混合した実施例の方が導電率
が向上した。
【0048】第4試験例 水蒸気を混合するガスにArと、流量比で80%Ar及
び20%Hガスの混合ガスとを使用し、溶体化炉内に
供給するガスの種類と導電率との関係を調べた。Cu−
3.5質量%Tiの銅合金板を使用し、Arと、流量比
で80%N及び20%Hガスの混合ガスとに、いず
れも水蒸気分圧が1330Paとなるように水蒸気を混
合し、900℃の温度で、20分の溶体化処理を行い、
水冷した後、500℃で20分及び460℃で1時間の
2段時効処理後における導電率を比較した。この結果を
下記表6に示す。
【0049】
【表6】
【0050】上記表6に示すように、Arガスに水蒸気
を混合した実施例22に比して、H 及びArの混合ガ
スに水蒸気を混同した実施例23の方が、大きな導電率
が得られた。
【0051】第5試験例 Cu−35質量%Tiの銅合金板を使用し、水蒸気を混
合する割合を変えて溶体化炉内に供給する水蒸気分圧と
硬度との関係を調べた。なお、全ての銅合金板厚は0.
3mmである。
【0052】第1試験例と同様に、溶体化処理及び2種
類の時効処理を施した。そして、溶体化処理後、1段時
効処理後及び2段時効処理後の3種類の導電率を測定し
た。その結果を下記表7及び図5に示す。図5は、横軸
に水素蒸気分圧の対数をとり、縦軸にビッカーズ硬度を
とって、水蒸気分圧と導電率との関係を示すグラフ図で
ある。
【表7】
【0053】上記表7及び図5に示すように、比較例2
4及び比較例30は硬さが低い。これに対して、実施例
25乃至29は、本発明を満たすため、比較例に比して
硬さが向上することがわかる。
【0054】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、水
蒸気を混合した雰囲気中で溶体化処理することにより、
製造工程を複雑にすることなく、銅合金の母相中の固溶
元素の濃度を下げて、高強度であると共に、高導電率の
銅合金を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の銅合金の溶体化処理工程を
示す模式図である。
【図2】 本発明の第1試験例の溶体化炉内に水蒸気を
混合するための装置を示す模式図である。
【図3】 横軸に水素蒸気分圧の対数をとり、縦軸に導
電率をとって、水蒸気分圧と導電率との関係を示すグラ
フ図である。
【図4】 横軸に溶体化処理時間をとり、縦軸に導電率
をとって、溶体化処理時間と導電率との関係を示すグラ
フ図である。
【図5】 横軸に水素蒸気分圧の対数をとり、縦軸にビ
ッカーズ硬度をとって、水蒸気分圧と導電率との関係を
示すグラフ図である。
【符号の説明】
1,21;溶体化炉、 2;板材、 10;容器、 1
1;水、 12、23a、23b;蓋、 13;供給
管、 14;導出管、 22;石英管、 24a、24
b;チューブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 602 C22F 1/00 602 630 630A 661 661A 682 682 691 691B (72)発明者 一色 実 宮城県仙台市太白区鈎取3丁目2−14 Fターム(参考) 4K020 AC04 BB22

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅よりも酸化されやすい傾向を有する元
    素を1種以上含有する銅合金を、不活性ガス、H
    ス、及びNガスからなる群から選択された1種以上の
    ガスに対して、分圧が2.66Pa乃至66.5kPa
    の水蒸気を混合した溶体化用ガス雰囲気中にて溶体化処
    理する工程と、前記溶体化処理後に前記溶体化処理温度
    よりも低い温度で時効処理する工程と、を有することを
    特徴とする銅合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 銅及び銅よりも酸化されやすい傾向を有
    する元素を1種以上含有する組成を有する銅合金の溶湯
    の中にArガスと酸素ガスとの混合ガスをバブリングす
    る工程と、前記溶湯を鋳造して銅合金鋳塊を得、この銅
    合金鋳塊を加工後溶体化処理する工程と、前記溶体化処
    理後に前記溶体化処理温度よりも低い温度で時効処理す
    る工程と、を有することを特徴とする銅合金の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 銅よりも酸化されやすい傾向を有する元
    素を1種以上含有する銅合金を銅の含有量を5乃至15
    質量%少なくして溶解する工程と、溶湯の中にCu
    を所定の銅含有量となるように添加する工程と、前記溶
    湯を鋳造して銅合金鋳塊を得、この銅合金鋳塊を加工後
    溶体化処理する工程と、前記溶体化処理後に前記溶体化
    処理温度よりも低い温度で時効処理する工程と、を有す
    ることを特徴とする銅合金の製造方法。
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JP2006249516A (ja) * 2005-03-11 2006-09-21 Mitsubishi Electric Corp 銅合金およびその製造方法
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JP2016180130A (ja) * 2015-03-23 2016-10-13 Dowaメタルテック株式会社 Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム

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