JP6324431B2 - 銅合金板材および銅合金板材の製造方法 - Google Patents
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(1)3.0〜25.0質量%Niおよび3.0〜9.0質量%Snを含有し、ならびに0〜0.2質量%Fe、0〜0.05質量%Si、0〜0.3質量%Mg、0〜0.5質量%Mn、0〜0.1質量%Zn、0〜0.15質量%Zrおよび0〜0.1質量%Pからなる群から選ばれる少なくとも1成分を合計で0〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有する銅合金板材であって、溶質原子Snの濃度が周期的に変動する微細な構造形態を持ち、結晶粒の(001)面にて母相中のSn濃度を面分析して測定したときのSn濃度の最大値と最小値の差が、4〜18質量%の範囲であり、(001)[100]方位に沿って測定したときのSnの周期的な濃度ゆらぎの平均波長が、1nm以上15nm以下であり、かつ平均結晶粒径が0.1μm超6μm以下であることを特徴とする銅合金板材。
本発明に従う銅合金板材は、3.0〜25.0質量%Niおよび3.0〜9.0質量%Snを含有し、ならびに0〜0.2質量%Fe、0〜0.05質量%Si、0〜0.3質量%Mg、0〜0.5質量%Mn、0〜0.1質量%Zn、0〜0.15質量%Zrおよび0〜0.1質量%Pからなる群から選ばれる少なくとも1成分を合計で0〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有する銅合金板材であって、溶質原子Snの濃度が周期的に変動する微細な構造形態を持ち、結晶粒の(001)面にて母相中のSn濃度を面分析して測定したときのSn濃度の最大値と最小値の差が、4〜18質量%の範囲であり、(001)[100]方位に沿って測定したときのSnの周期的な濃度ゆらぎの平均波長が、1nm以上15nm以下であり、かつ平均結晶粒径が0.1μm超6μm以下である。
本発明の銅合金板材の成分組成とその作用について示す。
本発明の銅合金板材は、3.0〜25.0質量%Niおよび3.0〜9.0質量%Snを含有している。
Niは、Snとともにスピノーダル分解を生じさせて強度を向上させるための作用を有する重要な元素である。かかる作用を発揮するには、Ni含有量は3.0質量%以上含有することが必要である。一方、Ni含有量が25.0質量%よりも多いと、金属間化合物が生成しやすくなり、生成した金属間化合物が残存すると、それが起点となって冷間加工時に割れが生じ、冷間加工性が著しく劣化する。このため、Ni含有量は、3.0〜25.0質量%の範囲とし、好ましくは9〜20質量%とした。
Snは、Niとともにスピノーダル分解を生じさせて強度を向上させるための作用を有する重要な元素である。かかる作用を発揮するには、Sn含有量は3.0質量%以上含有することが必要である。一方、Sn含有量が9.0質量%よりも多いと、金属間化合物が生成しやすくなり、生成した金属間化合物が残存すると、それが起点となって冷間加工時に割れが生じ、冷間加工性が著しく劣化する。このため、Sn含有量は、3.0〜9.0質量%の範囲とし、好ましくは5〜8質量%とした。
本発明の銅合金板材は、NiおよびSnの必須の添加成分に加えて、さらに、任意添加元素として、0.02〜0.20質量%Fe、0.01〜0.05質量%Si、0.01〜0.30質量%Mg、0.01〜0.50質量%Mn、0.01〜0.10質量%Zn、0.01〜0.15質量%Zrおよび0.01〜0.10質量%Pからなる群から選ばれる少なくとも1成分を合計で1.0質量%以下含有させることができる。
Feは、導電率、強度、応力緩和特性、めっき性等の製品特性を改善する作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Fe含有量を0.02%以上とすることが必要である。しかしながら、Fe含有量が0.20質量%を超えると、導電率の低下が大きく、効果も飽和する。このため、Fe含有量は、0.02〜0.20質量%とする。
Siは、半田付け時の耐熱剥離性や耐マイグレーション性を向上させる作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Si含有量を0.01質量%以上とすることが必要である。しかしながら、Si含有量が0.05質量%超えだと、効果が飽和する上、Niとの強度に寄与しない粗大な析出粒子を形成して強度が低下するおそれがある。このため、Si含有量は、0.01〜0.05質量%とする。
Mgは、応力緩和特性を向上させる作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Mg含有量を0.01質量%以上とすることが必要である。しかしながら、Mg含有量が0.30質量%を超えると、導電率が大きく低下するおそれがあるため好ましくない。このため、Mg含有量は、0.01〜0.30質量%とする。
Mnは、母相に固溶して圧延加工性を向上させると共に、粒界反応型析出を抑制する効果を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Mn含有量を0.01質量%以上、好ましくは0.10〜0.30質量%とすることが好ましい。また、Mnを0.50質量%よりも多く含有させても、効果の向上が期待できないだけではなく、導電率を低下や曲げ加工性への悪影響を及ぼす傾向がある。このため、Mn含有量は、0.01〜0.50質量%とする。
Znは、曲げ加工性を改善するとともに、Snめっきやはんだめっきの密着性やマイグレーション特性を改善する作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Zn含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。また、Znを0.10質量%よりも多く含有させると、導電性を低下させる傾向がある。このため、Zn含有量は、0.01〜0.10質量%とする。
Zrは、主に結晶粒を微細化させて、銅合金板材の強度や曲げ加工性を向上させる作用を有する元素である。かかる作用を発揮させるには、Zr含有量を0.01質量以上とすることが好ましい。また、Zrを0.15質量%よりも多く含有させると、化合物を形成し、導電率及び銅合金板の圧延などの加工性が著しく低下する傾向がある。このため、Zr含有量は、0.01〜0.15質量%とする。
Pは、0.01質量%以上の含有で、導電率を損なわずに強度、応力緩和特性等の製品特性を改善する作用を有する元素である。しかしながら、Pを0.10質量%よりも多く含有させても、特性を改善する効果の向上が期待できないだけではなく、化合物を成形して、熱間加工性が低下する傾向がある。このため、P含有量は、0.01〜0.10質量%とする。
Fe、Si、Mg、Mn、Zn、ZrおよびPからなる群から選ばれる少なくとも1成分の含有量は、合計で1.0質量%以下であることが好ましい。
上記任意添加成分の少なくとも1成分の含有量が合計で1.0質量%以下であれば、加工性や導電率の低下が生じにくいことから、上記任意添加成分の含有量は、合計で1.0質量%以下とする。
本発明の銅合金板材は、溶質原子Snの濃度が周期的に変動する微細な構造形態を持ち、結晶粒の(001)面にて母相中のSn濃度を面分析して測定したときのSn濃度の最大値と最小値の差が、4〜18質量%の範囲であり、かつ(001)[100]方位に沿って測定したときのSnの周期的な濃度ゆらぎの平均波長が、1nm以上15nm以下であり、かつ平均結晶粒径が0.1μm超6μm以下である。
次に、本発明の銅合金板材の好ましい製造方法について説明する。
本発明の銅合金板材は、3.0〜25.0質量%Niおよび3.0〜9.0質量%Snを含有させ、さらに必要に応じて、任意添加成分であるFe、Si、Mg、Mn、Zn、ZrおよびPについては適宜含有させ、残部がCuと不可避不純物から成る合金組成を有する銅合金素材を用意し、この銅合金素材に、鋳造[工程1]、均質化熱処理[工程2]、熱間加工[工程3]、面削[工程4]、第1冷間加工[工程5]、中間熱処理[工程6]、第2冷間加工[工程7]、溶体化熱処理[工程8]、第3冷間加工[工程9]、時効処理[工程10]をこの順に施すことによって製造される。特に本発明の銅合金板材を製造するには、中間熱処理[工程6]、第2冷間加工[工程7]、溶体化熱処理[工程8]、第3冷間加工[工程9]および時効処理[工程10]の各条件を厳しく管理することが好ましい。
R=(t0−t)/t0×100 ・・(2)
なお、式中、t0は圧延前の板厚であり、tは圧延後の板厚である。
本発明の銅合金板材は、例えばコネクタのような電気電子部品として使用する場合には、引張強度が900MPa以上でかつ伸びが10%以上であることが好ましい。
まず、DC(Direct Chill)法により、表1に示す合金組成を有する銅合金を溶解して、これを鋳造して、厚さ30mm、幅100mm、長さ150mmの鋳塊を得た。次にこれら鋳塊を900℃に加熱し均質化処理を行い、この温度に1時間保持後、厚さ14mmに熱間圧延し、速やかに冷却した。次いで両面を各1mmずつ面削して酸化被膜を除去した後、第1冷間加工として加工率90〜98%の冷間圧延を施した。この後、表2に示す条件で中間熱処理を行い、第2冷間加工として加工率80%の冷間圧延を実施した。その後、表2に示す条件で溶体化熱処理を行った。次いで、第3冷間加工として表2に示す加工率で冷間圧延を施した。次に、不活性ガス雰囲気中で、表2に示す条件で時効処理を施して作製した銅合金板材を用いて、各種特性評価を行った。
各試験片について、硝酸20%のメタノール溶液にて電解研磨することで観察用試料を作製し、結晶粒の(001)面を観察した。観察には透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、検出(Sn濃度の分析)は、エネルギー分散形X線分光器(EDS)を用い、電子線のスポット径20nmで行った。観察は観察倍率を200,000倍で行い、(001)[100]方向、及び(001)[010]方向に、それぞれ100nm間隔で5点ずつ測定を行い、計25点の測定箇所におけるSn濃度を分析した。なお、析出物の影響による測定誤差を防ぐため、析出物が存在しない位置を測定箇所として選択した。そして、25点の測定箇所で測定したSn濃度のデータから、最小値および最大値を求め、その差を算出した。同様の分析を異なる観察視野で3回繰り返し、それらの平均を算出してSn濃度の最大値と最小値の差の測定値とした。また、Sn濃度の標準偏差は、上述した測定条件より得られた75点(3つの観察視野で各々25点)のSn濃度のデータより算出した。表1に、Sn濃度の最大値と最小値の差の測定値と標準偏差の算出値を表1に示す。
Snの周期的な濃度ゆらぎの平均波長の測定方法は、X線回折法や電子線回折法により求めることができる。例えば、Snの周期的な濃度ゆらぎの平均波長をX線回折法により測定する場合について以下で説明する。観察用試料としては、端子等の利用状態での特性を反映するために時効処理後の材料を用いて組織観察を実施した。板材から10mm×10mmの試料を切出し、軽くバフ研磨して表面の酸化層を取り除き、X線回折装置を用いて(200)回折のサイドバンドを観察した。その回折線を模式的に示した回折チャートの一例を図2に示す。図2に示したように、主回折線(200)とその両側のサイドバンドについて、主回折線の回折角θ、回折線のミラー指数h、k、l、格子定数a、サイドバンドのピークの主回折線からの角度の変位をΔθとし、得られたX線サイドバンドに対して、下記(1)式に示すDaniel-Lipsonの式を用いて、変調構造の波長λ(すなわちSnの周期的な濃度ゆらぎの平均波長)を得た。Snの周期的な濃度ゆらぎの平均波長を表1に示す。
λ=(h・a・tanθ)/{(h2+k2+l2)・Δθ} ・・(1)
試験片の圧延方向に垂直な断面を湿式研磨、バフ研磨により鏡面に仕上げた後、クロム酸:水=1:1の液で数秒間、研磨面を腐食した後、SEMの二次電子像を用いて400〜1000倍の倍率で写真をとり、断面の平均結晶粒径(μm)をJIS H0501−1986の切断法に準じて測定した。断面は、圧延方向横断面で測定した。平均結晶粒径を表1に示す。
供試材(試験片)の圧延平行方向から切り出したJIS Z2201−13B号の試験片をJIS Z2241:2011に準じて3本測定しその平均値を表3に示す。
JIS Z 2241:2011に準じて3本測定し、その平均値(%)を表3に示す。
試料のB.W.方向に幅10mm、長さ50mmの短冊形試料を作製し、W曲げ試験(JIS H3130:2012)を曲げ半径R(mm)と板厚t(mm)の比(R/t)=1となる条件で行い、曲げ凸面外観を日本伸銅協会標準JBMA T307:1999による評価基準と比較し、割れが生じない場合を良好であるとして「〇」、割れが生じた場合を不良であるとして「×」として表3に示す。
導電率は、JIS H0505−1975に基づく四端子法を用いて、20℃(±1℃)に管理された恒温槽中で、各試験片の2本について導電率を測定し、その平均値(%IACS)を表3に示す。このとき端子間距離は100mmとした。
Claims (7)
- 3.0〜25.0質量%Niおよび3.0〜9.0質量%Snを含有し、ならびに0〜0.2質量%Fe、0〜0.05質量%Si、0〜0.3質量%Mg、0〜0.5質量%Mn、0〜0.1質量%Zn、0〜0.15質量%Zrおよび0〜0.1質量%Pからなる群から選ばれる少なくとも1成分を合計で0〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有する銅合金板材であって、
溶質原子Snの濃度が周期的に変動する微細な構造形態を持ち、
結晶粒の(001)面にて母相中のSn濃度を面分析して測定したときのSn濃度の最大値と最小値の差が、4〜18質量%の範囲であり、
(001)[100]方位に沿って測定したときのSnの周期的な濃度ゆらぎの平均波長が、1nm以上15nm以下であり、かつ
平均結晶粒径が0.1μm超6μm以下であることを特徴とする銅合金板材。 - 結晶粒の(001)面にて母相中のSn濃度を面分析して測定したときのSn濃度の標準偏差が1〜4質量%である、請求項1に記載の銅合金板材。
- 0.02〜0.20質量%Fe、0.01〜0.05質量%Si、0.01〜0.30質量%Mg、0.01〜0.50質量%Mn、0.01〜0.10質量%Zn、0.01〜0.15質量%Zrおよび0.01〜0.10質量%Pからなる群から選ばれる少なくとも1成分を合計で1.0質量%以下含有する、請求項1または2に記載の銅合金板材。
- 引張強度が900MPa以上でかつ伸びが10%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金板材。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金板材からなるコネクタ。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金板材を用いた時計用部品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金板材を製造する方法であって、
前記銅合金板材を与える合金成分組成からなる銅合金素材に、鋳造[工程1]、均質化熱処理[工程2]、熱間加工[工程3]、面削[工程4]、第1冷間加工[工程5]、中間熱処理[工程6]、第2冷間加工[工程7]、溶体化熱処理[工程8]、第3冷間加工[工程9]、時効処理[工程10]をこの順に施し、
前記中間熱処理は、加熱温度が300℃〜850℃、該加熱温度での保持時間が10〜300秒間および平均冷却速度が100℃/秒以上であり、
前記第2冷間加工は、総加工率が50〜90%であり、
前記溶体化熱処理は、溶体化温度が650〜850℃、該溶体化温度での保持時間が10〜300秒間および平均冷却速度が100℃/秒以上であり、
前記第3冷間加工は、総加工率が5〜70%であり、および、
前記時効処理は、時効処理温度が300〜500℃および該時効処理温度での保持時間が0.1〜15時間であることを特徴とする銅合金板材の製造方法。
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