JP5479240B2 - ウエビング巻取装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ウエビング巻取装置に関する。
従来、スプールと一体回転するトーションシャフトと、スプールを回転可能に支持するフレームとの間で荷重を伝達する荷重伝達機構を備えたウエビング巻取装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に示されたウエビング巻取装置では、トーションシャフトには第2ロックベースが一体的に連結されている。この第2ロックベースには第2ロックパウルが回動可能に取り付けられている。また、第2ロックベースの径方向外側にはフレームに支持されたロックリングが配置されている。このロックリングの内周部にはラチェットが形成されており、第2ロックパウルがロックリング側へ回動されると、第2ロックパウルの先端側に形成されたラチェットがロックリングのラチェットに噛み合うようになっている。これにより、第2ロックパウル等を介してトーションシャフトとロックリングとが結合され、スプール側に入力される荷重がフレーム側に伝達される。
特開2007−84042号公報
ところで、近年、車両の多機能軽量化に伴って、ウエビング巻取装置には小型軽量化が求められている。このため、上述の如き荷重伝達機構の各構成部材に関しても、更なる小型軽量化を達成する必要があるが、第2ロックパウル(パウル部材)とロックリング(リング部)との結合強度を良好に確保する必要もある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、小型軽量化を図ることができると共に、パウル部材とリング部との結合強度を良好に確保することができるウエビング巻取装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係るウエビング巻取装置は、スプールと一体回転する回転部材と、前記スプールを回転可能に支持するフレームとの間で荷重を伝達する荷重伝達機構を備えたウエビング巻取装置であって、前記荷重伝達機構は、前記フレーム側に設けられ、前記回転部材と同心状の内周部に複数の歯が設けられたリング部と、前記リング部の内側に配置され、先端部に設けられた複数の歯が前記リング部に設けられた複数の歯と噛み合う噛合位置へと移動可能に前記回転部材に支持されたパウル部材と、を備え、かつ、前記リング部及び前記パウル部材の何れか一方は、何れか他方よりも材料強度が低く設定され、前記一方に設けられた歯の歯丈は、前記他方に設けられた歯の歯丈よりも低く設定され、前記噛み合い時には、前記他方に設けられた歯の歯先が前記一方に設けられた歯の歯底に当る、ことを特徴としている。
請求項1に記載のウエビング巻取装置では、フレーム側に設けられたリング部の内周部に複数の歯が設けられている。また、スプールと一体回転する回転部材に支持されたパウル部材は、先端部に設けられた複数の歯がリング部の複数の歯と噛み合う噛合位置へと移動可能とされており、当該噛み合いによってリング部とパウル部材とが結合される。これにより、スプールとフレームとの間での荷重(トルク)の伝達が可能になる。
ここで、このウエビング巻取装置では、リング部及びパウル部材の何れか一方は、何れか他方よりも材料強度が低く設定されている。さらに、上記何れか一方(材料強度が低い方の部材)に設けられた歯の歯丈が、上記何れか他方(材料強度が高い方の部材)に設けられた歯の歯丈よりも低く設定されている。これにより、上記噛み合い時には、材料強度が高い方の部材に設けられた歯の歯先を、材料強度が低い方の部材に設けられた歯の歯底側に係合させることができるので、材料強度が低い方の部材は、歯の断面積の大きい歯底側において、材料強度が高い方の部材からの荷重を受ける。これにより、材料強度の低い方の部材のせん断面積を大きく設定することができるので、パウル部材とリング部との結合強度を良好に確保することができる。
これにより、最小限のパウル部材及びリング部の歯の大きさで、必要な結合強度を確保することができるため、パウル部材及びリング部の小型軽量化を図ることができ、結果として、装置の小型軽量化を図ることができる。なお、請求項1に記載の「材料強度」は、例えば、材料の引張強度により比較することができる。
請求項2に記載の発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1に記載のウエビング巻取装置において、前記噛み合い時には、前記他方に設けられた歯の歯先が前記一方に設けられた歯の歯底に当ることを特徴としている。
請求項2に記載のウエビング巻取装置では、パウル部材とリング部との噛み合い時には、材料強度が高い方の部材に設けられた歯の歯先が、材料強度が低い方の部材に設けられた歯の歯底当る。このため、材料強度が低い方の部材は、最も歯の断面積の大きい歯底において、材料強度が高い方の部材からの荷重を受ける。これにより、材料強度の低い方の部材のせん断面積を最大に設定することができるので、パウル部材とリング部との結合強度を一層良好に確保することができる。
請求項3に記載の発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1又は請求項2に記載のウエビング巻取装置において、前記パウル部材の先端部は、前記パウルが前記噛合位置に配置された状態で前記リング部の内周部に沿うように湾曲していることを特徴としている。
請求項3に記載のウエビング巻取装置では、パウルの先端部がリング部材の内周部に沿うように湾曲しているため、パウルの先端部に設けられた複数の歯と、リング部材に設けられた複数の歯を同時又は略同時に噛み合わせることが可能になる。これにより、パウル部材及びリング部の何れか他方(材料強度が高い方の部材)に設けられた複数の歯の歯先を、何れか一方(材料強度が低い方の部材)に設けられた複数の歯の歯底に同時又は略同時に当てることが可能になるので、パウル部材とリング部との結合強度を一層良好に確保することができる。
請求項4に記載の発明に係るウエビング巻取装置は、請求項3に記載のウエビング巻取装置において、前記一方に設けられた複数の歯の歯底を結ぶ円弧の曲率半径と、前記他方に設けられた複数の歯の歯先を結ぶ円弧の曲率半径とが等しく設定されていることを特徴としている。
請求項4に記載のウエビング巻取装置では、パウル部材及びリング部の何れか一方(材料強度が低い方の部材)に設けられた複数の歯の歯底を結ぶ円弧の曲率半径と、何れか他方(材料強度が高い方の部材)に設けられた複数の歯の歯先を結ぶ円弧の曲率半径とが等しく設定されている。このため、パウル部材とリング部との噛み合い時(結合時)には、材料強度が高い方の部材に設けられた複数の歯の歯先を、材料強度が低い方の部材に設けられた複数の歯の歯底に同時又は略同時に当てることができる。これにより、パウル部材とリング部との結合強度を最大限に発揮させることができる。
なお、請求項4に記載の「等しく」は、必ずしも同一である必要はなく、例えば百分の数ミリ程度の製造上の寸法誤差が生じている場合でも、上記の作用効果と同等の作用効果が得られるものであればよい。換言すれば、材料強度が高い方の部材に設けられた複数の歯の歯先の大部分が、荷重伝達時、パウル部材及びリング部の少なくとも一方の変形により材料強度が低い方の部材に設けられた複数の歯の歯底に当たるものであればよい。
以上説明したように、本発明に係るウエビング巻取装置では、小型軽量化を図ることができると共に、パウル部材とリング部との結合強度を良好に確保することができる。
本発明の一実施形態に係るウエビング巻取装置の主要部の構成を示す分解斜視図である。 図1に示されるウエビング巻取装置の構成部材である荷重伝達機構の部分的な構成を示す分解斜視図である。 図1に示されるウエビング巻取装置の構成部材である荷重伝達機構をスプールとは反対側から見た図である。 図3に示される荷重伝達機構のクラッチプレートがロックリング側へ回動し始めた状態を示す図である。 図3に示される荷重伝達機構のクラッチプレートがロックリングに噛み合った状態を示す図である。 図5において符号F6が付された部分を拡大した拡大図である。
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
図1,図2に示されるように、本発明の一実施形態に係るウエビング巻取装置10は、フレーム12と、スプール14と、ウエビングベルト16と、ロックギヤ18と、メイントーションシャフト20と、トリガワイヤ22と、回転部材としてのサブトーションシャフト24と、荷重伝達機構26とを備えている。
フレーム12は、車体に固定される板状の背板28を備えている。背板28の幅方向両端部からは脚片30、32が略直角に延出されており、フレーム12は、平面視で略凹形状となっている。
スプール14は、軸方向に貫通する貫通孔15を有する円筒状に形成されており、フレーム12の脚片30と脚片32との間に配置されている。スプール14は、軸線方向が脚片30と脚片32の対向方向に沿う状態で配置されており、後述するメイントーションシャフト20、サブトーションシャフト24等を介してフレーム12に回転可能に支持されている。
ウエビングベルト16は、乗員の身体に装着されるものであり、その長手方向一端部である基端部がスプール14に係止されている。スプール14は、一方の回転方向である巻取方向へ回転することでウエビングベルト16を基端側から巻取って収納する構成となっている。
ロックギヤ18は、スプール14の軸方向一方側にスプール14と同軸状に配置されている。このロックギヤ18の外周部にはギヤ部34が形成されている。また、このロックギヤ18の軸心部には、軸方向に貫通する貫通孔36が形成されており、当該貫通孔の内周部には、スプライン状の被係合部38が形成されている。
メイントーションシャフト20は、スプール14及びロックギヤ18と同軸状に配置されており、スプール14の貫通孔15及びロックギヤ18の貫通孔36にそれぞれ挿入されている。このメイントーションシャフト20には、その長手方向中央部にスプライン状の第一係合部40が形成されると共に、その先端部に同じくスプライン状の第二係合部42が形成されている。
そして、第一係合部40がロックギヤ18の被係合部38と係合されることにより、メイントーションシャフト20は、ロックギヤ18に一体回転可能に固定されている。また、第二係合部42がスプール14の内周部における軸線方向中間部に形成された図示しない被係合部と係合されることにより、メイントーションシャフト20がスプール14に一体回転可能に固定されている。
このメイントーションシャフト20における第一係合部40と第二係合部42との間の部分は、後述する如くウエビングベルト16の引張りに供されるエネルギを吸収するための第一エネルギ吸収部44として構成されている。
トリガワイヤ22は、メイントーションシャフト20に沿って延在されている。このトリガワイヤ22の基端部22Aは、図1に示されるように、ロックギヤ18における貫通孔36よりも径方向外側の位置に形成された孔部46に挿入されて、ロックギヤ18に係止されている。一方、トリガワイヤ22における基端部よりも先端側は、貫通孔15と並行してスプールに形成された孔部48に挿入されており、その先端部22Bは、スプール14から軸方向他方側に突出されている。
サブトーションシャフト24は、メイントーションシャフト20と同軸状に配置されており、その長手方向中央部よりも基端側は、スプール14の貫通孔15に挿入されている。一方、このサブトーションシャフト24の長手方向中央部よりも先端側は、スプール14から軸方向他方側に突出されている。
このサブトーションシャフト24には、その基端部にスプライン状の第一係合部50が形成されると共に、その先端部に同じくスプライン状の第二係合部52が形成されている。第一係合部50は、スプール14の内周部における軸線方向中間部に形成された図示しない被係合部と係合されており、これにより、サブトーションシャフト24は、スプール14に一体回転可能に固定されている。
また、このサブトーションシャフト24における第一係合部50と第二係合部52との間の部分は、後述する如くウエビングベルト16の引っ張りに供されるエネルギを吸収するための第二エネルギ吸収部54として構成されている。
荷重伝達機構26は、クラッチ機構56を含んで構成されている。クラッチ機構56は、スリーブ58と、クラッチガイド60と、クラッチベース62と、クラッチカバー64と、パウル部材としての一対のクラッチプレート66と、スクリュー68と、一対のコイルスプリング70とを備えている。
スリーブ58は、サブトーションシャフト24と同軸状に配置されている。このスリーブ58の軸心部には、軸方向に貫通する貫通孔72が形成されており、この貫通孔72には、上述のサブトーションシャフト24が遊挿されている。また、このスリーブ58の内周部における先端側には、スプライン状の被係合部74が形成されており、この被係合部74に第二係合部52が係合されることにより、スリーブ58は、サブトーションシャフト24に一体回転可能に固定されている。
また、このスリーブ58における基端側は、円形状の外形を有する支持部76として構成されており、このスリーブ58における支持部76よりも先端側は、六角形状の外形を有する嵌合部78として構成されている。
クラッチガイド60は、樹脂成形品とされており、軸方向に貫通する貫通孔80を有する環状に形成されている。この貫通孔80には、上述の支持部76が挿入されており、これにより、クラッチガイド60は、スリーブ58、ひいては、サブトーションシャフト24に相対回転可能に支持されている。
このクラッチガイド60における周方向の二箇所の位置には、図3に示されるように、コイルスプリング70を収容する一対のコイルスプリング収容部82が形成されている。これらのコイルスプリング収容部82は、クラッチガイド60の中央部を中心とする点対称状に形成されており、それぞれ、クラッチガイド60の周方向に延びる外側壁部82及び内側壁部84と、クラッチガイド60の径方向に延びて外側壁部82と内側壁部84の各端部を連結する連結壁部86とを有する略コの字状に形成されている。各外側壁部82には、連結壁部86とは反対側の端部に切欠部87が形成されている。これらの切欠部87は、後述するクラッチカバー64の十字爪104に対応している。
また、このクラッチガイド60には、クラッチプレート66を収容する一対のクラッチプレート収容部88が各コイルスプリング収容部82に隣接して形成されている。これらのクラッチプレート収容部88には、連結壁部86から内側壁部84と反対側に向けて延びる第一支持壁部90と、連結壁部86に対する外側壁部82と反対側に連結壁部86と離間して第二支持壁部92が形成されている。
クラッチベース62は、六角形状を成す環状の被嵌合部94を有して構成されている。この被嵌合部94の内側には、嵌合部78が嵌合(圧入)されており、これにより、クラッチベース62は、スリーブ58に一体回転可能に固定されている。また、このクラッチベース62には、被嵌合部94から外側に突出する一対の係止部96が形成されている。これらの係止部96は、後述するクラッチプレート66に形成されたアーム部106の基端部と係止されている。
クラッチカバー64は、スリーブ58と同軸状に配置されると共に、クラッチガイド60に対するスプール14と反対側にクラッチガイド60と対向して配置されている。このクラッチカバー64は、軸方向に貫通する貫通孔98を有する環状に形成されており、その内周部には、径方向内側に突出する嵌合爪100が複数形成されている。そして、貫通孔98に上述の嵌合部78が挿入されると共に、複数の嵌合爪100が嵌合部78と嵌合されることにより、クラッチカバー64は、スリーブ58、ひいては、サブトーションシャフト24に一体回転可能に固定されている。
また、このクラッチカバー64における周方向の二箇所の位置には、径方向外側に開口する軸方向視にて凹形状を成す切欠部102がそれぞれ形成されている。また、このクラッチカバーには、各切欠部102の内側に位置されるように一対の十字爪104が形成されている。これら一対の十字爪104は、クラッチカバー64の中央部を中心とする点対称状に形成されており、各十字爪104が前述の切欠部87に引っ掛かることで、クラッチカバー64とクラッチガイド60との軸方向の離間が阻止されている。
クラッチプレート66は、クラッチカバー64とクラッチガイド60との間に配置されている。このクラッチプレート66は、アーム部106と、このアーム部106の先端部に形成された円弧部108とを有している。
アーム部106の基端部には、クラッチカバー64側に突出すると共にサブトーションシャフト24の軸方向に沿って延びる回動軸110が形成されている。そして、この回動軸110がクラッチカバー64に形成された孔部112に挿入されることにより、クラッチプレート66は、クラッチカバー64に回動可能に支持されている。また、円弧部108の外周部(クラッチプレート66の先端部)には、平歯状の複数の歯66Aが形成されている。これらの歯64Aは、例えば転造による平目のローレット加工やプレス加工などにより形成されたものであり、円弧部108の周方向に並んで配置されている。
スクリュー68は、ネジ部114と、このネジ部114よりも大径の押え部116とを有して構成されている。ネジ部114は、サブトーションシャフト24の先端部に形成されたネジ孔118に螺合されており、これにより、スクリュー68は、サブトーションシャフト24の先端部に固定されている。また、このように、スクリュー68がサブトーションシャフト24の先端部に固定された状態では、スリーブ58の先端部に押え部116が当接される。そして、これにより、スリーブ58のサブトーションシャフト24に対する抜き方向への移動が規制されている。
また、上述のクラッチガイド60及びクラッチカバー64には、孔部120、122がそれぞれ形成されている。この孔部120、122には、トリガワイヤ22の先端部22Bがそれぞれ挿入されており、これにより、スプール14及びクラッチカバー64に対するクラッチガイド60の相対回転が規制されている。
また、このようにしてスプール14及びクラッチカバー64に対するクラッチガイド60の相対回転が規制された状態では、略コの字状に形成されたコイルスプリング収容部82における開口部付近に十字爪104が位置される。そして、この十字爪104には、コイルスプリング収容部82に収容されたコイルスプリング70の軸方向一端部が係止されており、このコイルスプリング70の軸方向他端部は、連結壁部86に係止されている。
また、この状態では、十字爪104と連結壁部86との間隔がコイルスプリング70の自由状態での全長よりも短くなり、これにより、コイルスプリング70が圧縮状態とされる。そして、これにより、クラッチガイド60に対しては、巻取方向に付勢力が作用されている。
一方、この状態では、クラッチカバー64の孔部112(クラッチプレート66の回動軸110)と連結壁部86との間隔が十分に確保された状態となり、クラッチプレート66は、複数の歯66Aがクラッチガイド60の外周部よりも内側に納まるように、クラッチプレート収容部88に収容される。また、この状態では、円弧部108の先端に連結壁部86が当接されている。
また、この荷重伝達機構26は、上記クラッチ機構56に加え、図3に示されるように、切替機構124を備えている。切替機構124は、リング部としてのロックリング126と、係合部材128と、図示しないガスジェネレータとを備えている。ロックリング126は、リング状に形成されてクラッチ機構56の径方向外側に同軸的に配置されており、フレーム12の脚片30に対して相対回転可能に取り付けられている。ロックリング126の内周部には、平歯状の複数の歯126Aが形成されている。これらの歯126Aは、例えば転造による平目のローレット加工やプレス加工などにより形成されたものであり、ロックリング126の周方向に並んで配置されている。これらの歯126Aは、クラッチプレート66の複数の歯66Aと係合可能(噛み合い可能)とされている。
係合部材128は、ロックリング126の外周部に形成された凹部130と係合されている。これにより、フレーム12に対するロックリング126の相対回転が規制されている。また、この切替機構124に設けられた図示しないガスジェネレータは、図示しないECUからの作動信号を受けて作動すると、係合部材128を回動させて、係合部材128とロックリング126の凹部130との係合状態を解消させる。これにより、フレーム12に対するロックリング126の相対回転規制が解除される構成になっている。
ここで、本実施形態に係るウエビング巻取装置10では、次の如く動作する構成とされている。
すなわち、スプール14から引き出されたウエビングベルト16が車両の乗員の身体に装着された状態で、例えば、車両が急減速状態になり、図示しないロック機構が作動すると、このロック機構に備えられた図示しないロック部材がロックギヤ18のギヤ部34と係合され、ロックギヤ18の回転が規制される。
そして、これにより、このロックギヤ18にメイントーションシャフト20を介して連結されたスプール14の引出方向への回転が規制されて、スプール14からのウエビングベルト16の引き出しが規制される。従って、これにより、前方へ移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト16によって拘束される。
また、ロックギヤ18の回転が規制された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウエビングベルト16を引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール14の回転力が第一エネルギ吸収部44の機械的強度を上回ると、第一エネルギ吸収部44が捩れ、この捩れ分だけスプール14が引出方向に回転される。
従って、このスプール14の引出方向への回転量だけスプール14からウエビングベルト16が引き出される。これにより、ウエビングベルト16による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、上記捩れ分だけウエビングベルト16の引っ張りに供されるエネルギが吸収される。
一方、上述のように、ロックギヤ18に対してスプール14が引出方向に回転されるということは、相対的にはスプール14に対してロックギヤ18が巻取方向に回転されると言うことである。従って、ロックギヤ18がスプール14に対して巻取方向に相対回転されると、トリガワイヤ22における基端部よりも先端側が孔部48に挿入されたまま、このトリガワイヤ22の基端部がメイントーションシャフト20の周方向に移動されるので、このトリガワイヤ22における基端部よりも先端側が孔部48に対してロックギヤ18側に引っ張られる。
これにより、トリガワイヤ22の先端部22Bがクラッチガイド60の孔部120とクラッチカバー64の孔部122から引抜かれて、スプール14及びクラッチカバー64に対するクラッチガイド60の相対回転規制が解消される。
そして、コイルスプリング70の付勢力により、クラッチガイド60がクラッチカバー64に対して巻取方向へ相対回転されると、クラッチカバー64の孔部112(クラッチプレート66の回動軸110)と連結壁部86との間隔が短くなり、円弧部108の先端が連結壁部86によってクラッチガイド60の接線方向に押圧(案内)される。これにより、クラッチプレート66がロックリング126側へ回動され(図4の矢印R参照)、クラッチプレート66の複数の歯66Aがロックリング126の複数の歯126Aと噛み合う(図5図示状態)。これにより、クラッチプレート66とロックリング126とが結合される。また、このときには、クラッチベース62に形成された係止部96がアーム部106の基端部を引出方向へ押すことにより、クラッチプレート66がロックリング126に押し付けられ、両者の結合状態が維持される。これにより、ロックリング126に対するクラッチベース62の回転、ひいては、スリーブ58の回転が規制される。この状態では、スプール14に入力される引出方向への回転力が、サブトーションシャフト24、スリーブ58、クラッチベース62、クラッチプレート66、ロックリング126、及び係合部材128を介してフレーム12側に伝達される。
そして、スリーブ58の回転が規制された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウエビングベルト16を引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール14の回転力が第二エネルギ吸収部54の機械的強度を上回ると、第二エネルギ吸収部54が捩れ、この捩れ分だけスプール14が引出方向へ回転される。
従って、このスプール14の引出方向への回転量だけスプール14からウエビングベルト16が引き出される。これにより、ウエビングベルト16による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、上記捩れ分だけウエビングベルト16の引っ張りに供されるエネルギが吸収される。
一方、上述の図示しないロック機構の作動前に、図示しない体格検出器からの信号に基づき、ECUが乗員の体格を予め定められた基準値未満であると判定した場合には、このECUによって図示しないガスジャネレータが作動される。
そして、ガスジェネレータは、作動すると、係合部材128を回動させて、係合部材128とロックリング126の凹部130との係合状態を解消させる。従って、この場合、クラッチ機構56が作動している状態では、スプール14の回転力がクラッチ機構56を介してロックリング126に伝達されるので、ロックリング126がスプール14と共に引出方向に回転される。このため、この状態では、第一エネルギ吸収部44に捩れは生じるが、第二エネルギ吸収部54に捩れは生じないので、第二エネルギ吸収部54によるエネルギ吸収は生じない。
すなわち、このウエビング巻取装置10では、乗員の体格に応じて、第二エネルギ吸収部54によってエネルギ吸収するモードと、第二エネルギ吸収部54によってエネルギ吸収しないモードとを選択して切り替えることができるようになっている。
次に、本実施形態の要部について説明する。
図6には、前述したクラッチプレート66がロックリング126との噛合位置に配置された状態が、図5の一部(符号F6を付した部分)を拡大した拡大図にて示されている。この図6に示されるように、クラッチプレート66に設けられた複数の歯66A、及びロックリング126に設けられた複数の歯126Aは、ロックリング126の軸方向から見て略三角形の形状をなしており、歯先及び歯底が曲面状に滑らかに連続している。これらの歯66A、126Aは、歯先側から歯底側へ向かうに従い断面積が増加するように形成されている。
また、本実施形態では、クラッチプレート66に設けられた複数の歯66AのピッチP1と、ロックリング126に設けられた複数の歯126AとのピッチP2とが等しく設定されている(P1=P2)。さらに、本実施形態では、図5に示されるように、クラッチプレート66の先端部(円弧部108の外周部)は、ロックリング126に噛み合った状態で、ロックリング126の内周部に沿うように湾曲して形成されている。より詳細には、本実施形態では、図6に示されるように、クラッチプレート66に設けられた複数の歯66Aの歯先を結ぶ円弧C1の曲率半径R1と、ロックリング126に設けられた複数の歯126Aの歯底を結ぶ円弧C2の曲率半径R2と、が等しく設定されている(R1=R2)。
また、この実施形態では、ロックリング126の歯126Aの歯丈H2は、クラッチプレート66の歯66Aの歯丈H1よりも低く設定されている。このため、クラッチプレート66に設けられた複数の歯66Aが、ロックリング126に設けられた複数の歯66Aと噛み合った状態では、複数の歯126Aの歯先と複数の歯66Aの歯底との間には隙間が確保される一方、複数の歯66Aの歯先と複数の歯126Aの歯底とが当る(接触する)ようになっている。
さらに、本実施形態では、クラッチプレート66が例えば鉄系の材料により形成される一方、ロックリング126が例えばアルミ系の材料により形成されており、ロックリング126の材料強度がクラッチプレート66の材料強度よりも低く設定されている。
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
上記構成のウエビング巻取装置10によれば、前述したように、サブトーションシャフト24の第二エネルギ吸収部54によってエネルギ吸収するモードでは、フレーム12に対するロックリング126の相対回転が規制された状態で、クラッチプレート66の複数の歯66Aがロックリング126の複数の歯126Aと噛み合う(図5参照)。これにより、クラッチプレート66とロックリング126とが結合され、ロックリング126に対するクラッチベース62の回転が規制される。
この状態で、ウエビングベルト16が過大な荷重で引っ張られると、スプール14、サブトーションシャフト24、スリーブ58、及びクラッチベース62には、引出方向への回転力が作用し、クラッチプレート66のアーム部106がクラッチベース62の係止部96によって引出方向へ押される。これにより、クラッチプレート66がロックリング126側に押し付けられ、両者の結合強度が維持される。またこのとき、クラッチベース62からクラッチプレート66に入力される引出方向への回転力は、クラッチプレート66の複数の歯66Aとロックリング126の複数の歯126Aとのせん断強度によって支持される。これにより、スリーブ58の引出方向への回転が強固に規制される。従って、この状態で、更に大きな力でウエビングベルト16が引っ張られると、当該引っ張り力に基づく引出方向へのスプール14の回転力によって、サブトーションシャフト24の第二エネルギ吸収部54が捩れ、この捩れ分だけスプール14が引出方向に回転される。これにより、ウエビングベルト16の引っ張りに供されるエネルギが吸収される。
ここで、この実施形態では、上述のロックリング126は、クラッチプレート66よりも材料強度が低く設定されている。さらに、この実施形態では、ロックリング126(材料強度が低い方の部材)に設けられた歯126Aの歯丈H2が、クラッチプレート66(材料強度が高い方の部材)に設けられた歯66Aの歯丈H1よりも低く設定されている。これにより、クラッチプレート66とロックリング126との噛み合い時には、クラッチプレート66に設けられた歯66Aの歯先が、ロックリング126に設けられた歯126Aの歯底に当る。このため、ロックリング126は、最も歯126Aの断面積の大きい歯底において、クラッチプレート66からの引出方向への荷重を受ける。つまり、ロックリング126の複数の歯126Aには、その歯底を結ぶ円弧C2に沿ったせん断力が作用するため、当該歯126Aのせん断部の長さLを最大限に確保することができる(ここでは、L≒P1=P2)。これにより、ロックリング126のせん断面積を最大に設定することができるので、クラッチプレート66とロックリング126との結合強度(トルク伝達強度)を良好に確保することができる。
これにより、最小限の歯66A、126Aの大きさで、クラッチプレート66とロックリング126とに必要な結合強度を確保することができるため、クラッチプレート66及びロックリング126の小型軽量化を図ることができ、結果として、装置の小型軽量化を図ることができる。
さらに、この実施形態では、クラッチプレート66に設けられた複数の歯66Aの歯底を結ぶ円弧C1の曲率半径R1と、ロックリング126に設けられた複数の歯126Aの歯先を結ぶ円弧C2の曲率半径R1とが等しく設定されている。このため、クラッチプレート66とロックリング126との噛み合い時(結合時)には、クラッチプレート66(材料強度が高い方の部材)に設けられた複数の歯66Aの歯先を、ロックリング126(材料強度が低い方の部材)に設けられた複数の歯126Aの歯底に同時に当てることができる。これにより、クラッチプレート66とロックリング126との結合強度を、最大限に発揮させることができる。
以上詳述したように、本発明の一実施形態によれば、小型軽量化を図ることができると共に、クラッチプレート66とロックリング126との結合強度を良好に確保することができる。
なお、上記実施形態では、リング部としてのロックリング126がフレーム12とは別体に形成されて、フレーム12の脚片30に回転可能に取り付けられた(支持された)構成にしたが、請求項1〜4に係る発明はこれに限らず、リング部がフレームと一体に設けられた構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、クラッチプレート66の複数の歯66A及びロックリング126の複数の歯126Aがローレット加工等により形成された構成にしたが、請求項1〜4に係る発明はこれに限らず、複数の歯の加工方法は適宜変更することができる。
また、上記実施形態では、リング部としてのロックリング126の材料強度が、パウル部材としてのクラッチプレート66の材料強度よりも低く設定された構成にしたが、請求項1〜請求項4に係る発明はこれに限らず、パウル部材の材料強度がリング部の材料強度よりも低く設定された構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、クラッチプレート66に設けられた複数の歯66Aの歯先を結ぶ円弧C1の曲率半径R1と、ロックリング126に設けられた複数の歯126Aの歯底を結ぶ円弧C2の曲率半径R2とが等しく設定された構成にしたが、請求項1〜3に係る発明はこれに限らず、曲率半径R1、R2が異なる構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、クラッチプレート66(パウル部材)とロックリング126(リング部)との噛み合い時には、クラッチプレート66に設けられた歯66Aの歯先が、ロックリング126に設けられた歯126Aの歯底に当る構成にしたが、請求項1に係る発明はこれに限らず、パウル部材及びリング部のうち材料強度が低い方の部材に設けられた歯の歯丈が、材料強度が高い方の部材に設けられた歯の歯丈よりも低く設定されていればよい。この場合でも、パウル部材とリング部との噛み合い時には、材料強度が高い方の部材に設けられた歯の歯先を、材料強度が低い方の部材に設けられた歯の歯底側に係合させることができるので、材料強度が低い方の部材は、歯の断面積の大きい歯底側において、材料強度が高い方の部材からの荷重を受ける。これにより、材料強度の低い方の部材のせん断面積を大きく設定することができるので、パウル部材とリング部との結合強度を良好に確保することができる。
また、上記実施形態では、サブトーションシャフト24とフレーム12との間で荷重を伝達する荷重伝達機構26に対して本発明が適用された場合について説明したが、本発明は、スプールと一体回転する回転部材とフレームとの間で荷重を伝達する荷重伝達機構に対して適用することができる。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
10 ウエビング巻取装置
12 フレーム
14 スプール
24 サブトーションシャフト(回転部材)
66 クラッチプレート(パウル部材)
66A 複数の歯
126 ロックリング(リング部)
126A 複数の歯

Claims (4)

  1. スプールと一体回転する回転部材と、前記スプールを回転可能に支持するフレームとの間で荷重を伝達する荷重伝達機構を備えたウエビング巻取装置であって、
    前記荷重伝達機構は、
    前記フレーム側に設けられ、前記回転部材と同心状の内周部に複数の歯が設けられたリング部と、
    前記リング部の内側に配置され、先端部に設けられた複数の歯が前記リング部に設けられた複数の歯と噛み合う噛合位置へと移動可能に前記回転部材に支持されたパウル部材と、
    を備え、
    かつ、前記リング部及び前記パウル部材の何れか一方は、何れか他方よりも材料強度が低く設定され、前記一方に設けられた歯の歯丈は、前記他方に設けられた歯の歯丈よりも低く設定されていることを特徴とするウエビング巻取装置。
  2. 前記噛み合い時には、前記他方に設けられた歯の歯先が前記一方に設けられた歯の歯底に当ることを特徴とする請求項1に記載のウエビング巻取装置。
  3. 前記パウル部材の先端部は、前記パウルが前記噛合位置に配置された状態で前記リング部の内周部に沿うように湾曲していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウエビング巻取装置。
  4. 前記一方に設けられた複数の歯の歯底を結ぶ円弧の曲率半径と、前記他方に設けられた複数の歯の歯先を結ぶ円弧の曲率半径とが等しく設定されていることを特徴とする請求項3に記載のウエビング巻取装置。
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