<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の構成の概略が正面断面図により示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置10は車体の所定部位に締結固定されるフレーム12を備えている。このフレーム12は一対の脚板14、16を備えている。脚板14、16の各々は平板状に形成されており、各々の厚さ方向に互いに対向している。脚板14と脚板16との間にはスプール18が配置されている。スプール18は軸方向が脚板14と脚板16との対向方向に沿った略円筒形状に形成されており、自らの中心軸線周りに回転可能とされている。
スプール18には長尺帯状のウエビングベルト20の長手方向基端部が係止されている。スプール18は自らの中心軸線周り一方である巻取方向(各図の矢印A方向)に回転すると、ウエビングベルト20をその長手方向基端側から外周部に層状に巻き取る。また、ウエビングベルト20を先端側へ引っ張るとスプール18に巻き取られているウエビングベルト20が引き出されると共にスプール18が巻取方向とは反対の引出方向(各図の矢印B方向)に回転する。
また、スプール18には第1挿通孔22が形成されている。第1挿通孔22はスプール18の回転半径方向中央でスプール18の中心軸線に沿って形成されており、スプール18の軸方向に沿った第1挿通孔22の両端はスプール18の軸方向両端部にて開口している。スプール18の軸方向に沿った第1挿通孔22の中間部よりも脚板16の側では、第1挿通孔22の開口形状が多角形や星形等の非円形とされている。この第1挿通孔22の脚板16の側の開口端からはアダプタ24が嵌挿されている。アダプタ24の第1挿通孔22に嵌挿された部分の外周形状は、第1挿通孔22の脚板16の側での内周形状に対応した非円形とされており、このため、第1挿通孔22に嵌挿されたアダプタ24は、スプール18に対して相対回転不能とされている。
また、第1挿通孔22の内側には第1エネルギー吸収手段としてのトーションシャフト26が設けられている。トーションシャフト26は連結部28の中心軸線に沿って長手の棒形状とされており、その脚板16側の端部には連結部28が形成されている。この連結部28に対応してアダプタ24にはスプール18の軸方向に沿った脚板14の側へ向けて開口した嵌挿孔30が形成されており、連結部28は嵌挿孔30に嵌挿されている。連結部28の外周形状は多角形や星形等の非円形とされ、嵌挿孔30の内周形状は連結部28が嵌挿可能な非円形とされている。
このため、連結部28(すなわち、トーションシャフト26)はアダプタ24に対して相対回転不能で、ひいては、スプール18に対して相対回転不能とされている。さらに、連結部28の脚板14とは反対側の端面からは軸部32がトーションシャフト26の本体部分に対して同軸的に突出形成されている。軸部32はアダプタ24、ひいては、脚板16を貫通して脚板16の外側(脚板16の脚板14とは反対側)に突出している。
脚板16の外側(脚板16の脚板14とは反対側)にはスプリングケース34が脚板16に取り付けられており、上記の軸部32はスプリングケース34内に入り込み、その先端はスプリングケース34に回転自在に支持されている。スプリングケース34の内側にはスプール付勢手段としての渦巻きばね36が収容されている。渦巻きばね36の渦巻き方向外側の端部はスプリングケース34に直接又は間接的に係止されている。
これに対し、渦巻きばね36の渦巻き方向内側の端部は軸部32に直接又は間接的に係止され、軸部32(すなわち、トーションシャフト26で間接的にはスプール18)が上記の巻取方向とは反対の引出方向に回転すると渦巻きばね36が巻き締められ、軸部32(すなわち、トーションシャフト26で間接的にはスプール18)を巻取方向に付勢する。このため、スプール18からウエビングベルト20が引き出されることで引出方向に回転すると、これにより生じた渦巻きばね36の付勢力がスプール18を巻取方向に付勢し、この付勢力でスプール18にウエビングベルト20を巻き取らせることができる。
一方、スプール18の脚板14の側には第2ロック手段を構成する第2ロックベース38が設けられている。第2ロックベース38は外周形状が円形の嵌挿部40を備えている。この嵌挿部40に対応してスプール18の軸方向中間部よりも脚板14側では第1挿通孔22の開口形状がスプール18に対して同軸の円形とされ、嵌挿部40は第1挿通孔22の脚板14側の開口端からスプール18に対して相対回転自在に嵌挿されている。
嵌挿部40には脚板16の側へ向けて開口した嵌挿孔42が形成されており、トーションシャフト26の脚板14側の端部に形成された連結部44が嵌挿孔42に嵌挿されている。連結部44の外周形状は多角形や星形等の非円形とされ、嵌挿孔42の内周形状は連結部44が嵌挿可能な非円形とされている。このため、連結部44(すなわち、トーションシャフト26)はアダプタ24に対して相対回転不能で、ひいては、スプール18に対して相対回転不能とされている。
嵌挿部40の脚板16とは反対側には第2ロックベース本体46が嵌挿部40に対して一体形成されている。第2ロックベース本体46には外周一部にて開口したパウル収容部48が形成されており、その内側には第2ロック部材としての第2ロックパウル50が収容されている。図2に示されるように、パウル収容部48内ではスプール18の軸方向と同じ方向を軸方向とするパウル支持軸52がパウル収容部48に形成されており、第2ロックパウル50はパウル支持軸52周りに回動可能にパウル支持軸52に支持されている。
また、第2ロックベース本体46には第2ロック部材付勢手段としてのパウル付勢ばね54が設けられている。パウル付勢ばね54は捩じりコイルばねとされ、その一端は第2ロックベース本体46に係止されている。また、パウル付勢ばね54の他端は第2ロックパウル50に係止され、パウル支持軸52周りに第2ロックパウル50の先端側が第2ロックベース本体46の外周部におけるパウル収容部48の開口端から突出する向きに第2ロックパウル50を付勢している。
さらに、パウル支持軸52周りの第2ロックパウル50の回転半径方向外側の第2ロックパウル50の先端には外歯のラチェット歯により構成されたラチェット部56が形成されており、パウル付勢ばね54の付勢力で第2ロックパウル50が回動すると、このラチェット部56が第2ロックベース本体46の外周部におけるパウル収容部48の開口から第2ロックベース本体46の外側へ突出する。
また、図1に示されるように、第2ロックベース本体46の嵌挿部40とは反対側には支持部58が形成されている。支持部58はスプール18に対して同軸の円筒形状に形成されており、その内側には連結部44の脚板16とは反対側の端面からトーションシャフト26の本体部分に対して同軸的に突出形成された軸部60が通過している。また、支持部58には第1ロック手段としての第1ロック機構62を構成する第1ロックベース64が回転自在に支持されている。
図4に示されるように、第1ロックベース64には第1ロックベース64の外周一部で開口したパウル収容部66が形成されており、その内側には第1ロック部材としての第1ロックパウル68が収容されている。この第1ロックパウル68には、例えば、第1ロックベース64の第2ロックベース38とは反対側でパウル収容部66に対して追従回転可能に軸部60に支持されて、第1ロックベース64と共に第1ロック機構62を構成する図示しない回転体が係合しており、第1ロックベース64の引出方向への回転に対し回転体が追従せずに第1ロックベース64に対して相対回転すると、第1ロックパウル68の先端側が第1ロックベース64の外周一部におけるパウル収容部66の開口から第1ロックベース64の外側へ突出するように回転体が第1ロックパウル68を移動させる。
第1ロックパウル68の先端部には第2ロックパウル50に形成されたラチェット部56と同様のラチェット部70が形成されており、上記の回転体に対する第1ロックベース64が引出方向への相対回転で回転体に伴われて第1ロックパウル68が移動すると、このラチェット部70が第1ロックパウル68の外周部におけるパウル収容部66の開口から第1ロックパウル68の外側へ突出する。
さらに、第1ロック機構62は、車両急減速状態で上記の回転体の引出方向への回転を規制する所謂「VSIR機構」を構成する各部品や、軸部60が急激に引出方向に回転した際に、上記の回転体の引出方向への回転を規制する所謂「WSIR機構」を構成する各部品を備えており、これらの各部品が脚板14の外側(脚板14の脚板16とは反対側)で脚板14に設けられたハウジング72に収容されている。
一方、第2ロックパウル50に形成されたラチェット部56及び第1ロックパウル68に形成されたラチェット部70に対応して脚板14にはラチェット筒74が一体形成されている。ラチェット筒74はスプール18に対して同軸的な筒状に形成されており、第2ロックベース38の第2ロックベース本体46及び第1ロックベース64はラチェット筒74の内側でラチェット筒74に対して同軸的に配置されている。
ラチェット筒74の内周部には第2ロックパウル50のラチェット部56及び第1ロックパウル68のラチェット部70の双方が噛み合い可能なラチェット部76が形成されており、図3に示されるように、第2ロックパウル50のラチェット部56がラチェット筒74のラチェット部76に噛み合うと引出方向への第2ロックベース38の回転が規制され、図5に示されるように、第1ロックパウル68のラチェット部70がラチェット筒74のラチェット部76に噛み合うと引出方向への第1ロックパウル68の回転が規制される。
一方、図1に示されるように、第1挿通孔22よりもスプール18の回転半径方向外側ではスプール18に第2挿通孔92が形成されている。第2挿通孔92は少なくともスプール18の脚板14側の端部で開口しており、本ウエビング巻取装置10ではスプール18の軸方向両端部にて第2挿通孔92が開口している。第2挿通孔92の開口方向がスプール18の軸方向と同方向とされており、その内側には第2エネルギー吸収手段及び規制手段の双方を兼ねるワイヤ94のワイヤ本体96が挿通されている。
ワイヤ本体96は第2挿通孔92の貫通方向に沿って長手とされた棒状に形成されている。このワイヤ本体96の脚板14側は第2挿通孔92の脚板14側の開口端からスプール18の外部に突出している。このようにスプール18から突出した第2挿通孔92に対応して、第2ロックベース38の第2ロックベース本体46には貫通孔98が形成されている。貫通孔98は内周形状がワイヤ本体96の外周形状よりも僅かに大きく、一端がスプール18の軸方向に沿った第2ロックベース本体46の脚板16側の端面にて開口している。
これに対し、貫通孔98の他端はパウル収容部48の底面(パウル収容部48の第1ロックベース64と対向する面)にて開口している。さらに、図2に示されるように、貫通孔98の他端は、第2ロックベース本体46の外周一部におけるパウル収容部48の開口から第2ロックパウル50が突出せずに、パウル収容部48に収容された状態でのパウル付勢ばね54による付勢方向側の第2ロックパウル50の側面の側方で開口している。第2挿通孔92の脚板14側の開口端から突出したワイヤ本体96は、貫通孔98を通過してパウル収容部48に入り込み、パウル付勢ばね54に付勢されている第2ロックパウル50に干渉して第2ロックパウル50の回動を規制している。
図6に示されるように、第2挿通孔92を通過したワイヤ本体96の第1ロックベース64側の端部からは連続して湾曲部100が形成されている。図1及び図7に示されるように、第1ロックベース64には湾曲部100に対応してガイド溝102が形成されている。
図7に示されるように、ガイド溝102はスプール18に対して同軸的に湾曲しており、第1ロックベース64の第2ロックベース本体46と対向する側の端面にて開口している。ガイド溝102の開口幅寸法は湾曲部100における第2挿通孔92の外径寸法よりも僅かに大きく、湾曲部100はワイヤ本体96の端部からスプール18の回転周方向巻取方向側へ屈曲することで形成されて、更に、湾曲部100はガイド溝102に倣って湾曲し、ガイド溝102の内側に収容されている。
また、湾曲部100のワイヤ本体96とは反対側の端部からは連続して頭部104が形成されている。頭部104に対応して第1ロックベース64には保持孔106が形成されている。保持孔106はガイド溝102の底部にて開口しており、保持孔106からガイド溝102の側へ頭部104が抜け出ることがないように頭部104が保持孔106に入り込んでいる。
上記のように、第1ロックベース64は第2ロックベース38の支持部58に回転自在に支持されているが、ワイヤ94のワイヤ本体96がスプール18の第2挿通孔92に挿通され、ワイヤ94の頭部104が第1ロックベース64の保持孔106から抜け出ることがないように保持孔106に入り込んでいることから、第2挿通孔92からワイヤ本体96が引き出されない限り第1ロックベース64はスプール18と共に一体的に回転する。
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置10の動作の説明を通して本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置10では、車両の座席に着座した乗員がスプール18に巻き取られているウエビングベルト20を引き出して身体に装着している状態で、車両が急減速状態になると、第1ロック機構62を構成する「VSIR機構」が作動して、第1ロックベース64に対して追従回転可能に軸部60に支持された回転体の引出方向への回転を第1ロック機構62の「VSIR機構」が規制する。
一方、車両が急減速状態になることで乗員が車両前方側へ慣性移動しようとし、これにより、乗員の身体がウエビングベルト20を急激に引っ張ることで、スプール18、ひいては、トーションシャフト26が急激に引出方向に回転すると、第1ロック機構62を構成する「WSIR機構」が作動して、上記の回転体の引出方向への回転を第1ロック機構62の「WSIR機構」が規制する。
このようにして上記の回転体の引出方向への回転が規制された状態で、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張り、これにより、スプール18、ひいては、第1ロックベース64が引出方向回転すると、上記の回転体と第1ロックベース64との間に相対回転が生じ、この相対回転に第1ロックパウル68が連動して第1ロックベース64の外周一部におけるパウル収容部66の開口から第1ロックパウル68の先端が突出するように移動する。
このように、第1ロックパウル68が移動すると、第1ロックパウル68の先端に形成されたラチェット部70がラチェット筒74の内周部に形成されたラチェット部76に接近して、ラチェット筒74のラチェット部76に第1ロックパウル68のラチェット部70が噛み合う。これにより、第1ロックベース64の引出方向への回転が規制される。
上記のように、第1ロックベース64はワイヤ94によりスプール18に対して相対回転が不能とされているので、引出方向への第1ロックベース64の回転が規制されることでスプール18の引出方向への回転が規制され、これにより、スプール18からのウエビングベルト20の引き出しが規制される。このように、スプール18からのウエビングベルト20の引き出しが規制されることで、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト20により強く保持される。
この状態で、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張ることに起因したスプール18の引出方向への回転力が、ワイヤ94の機械的強度を上回っていると、引出方向への回転が規制された第1ロックベース64に対してスプール18が引出方向に回転し、この回転に連動して第2挿通孔92の脚板14側の端部からワイヤ94のワイヤ本体96が引き出される。このように引き出されたワイヤ本体96は、第2ロックベース本体46における第1ロックベース64側の縁部でしごかれて、スプール18の回転半径方向に屈曲し、更に、ガイド溝102の湾曲に倣って湾曲しつつガイド溝102の内側に入り込む。
このように、第2挿通孔92から引き出されてガイド溝102に倣って変形できる分だけ、スプール18は引出方向に回転し、このスプール18の回転分だけウエビングベルト20がスプール18から引き出されて、スプール18から引き出されたウエビングベルト20の長さ分だけ乗員の身体は車両前方側へ移動できる。さらに、乗員がウエビングベルト20を引っ張るエネルギー(すなわち、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体の運動エネルギー)の一部は、第2挿通孔92から引き出されたワイヤ本体96の上記の変形に供される(すなわち、乗員の身体の運動エネルギーの一部が、ワイヤ本体96の変形により吸収される)。
次いで、第1ロックベース64に対するスプール18の引出方向への回転が続くと、スプール18の回転量に応じた長さだけ第2挿通孔92からワイヤ本体96が引き出され、更に、第2挿通孔92からワイヤ本体96が全て引き出されてガイド溝102に収容されると、第2ロックパウル50に対するワイヤ本体96の干渉が解消される。
第2ロックパウル50に対するワイヤ本体96の干渉が解消されるとパウル付勢ばね54の付勢力によりパウル支持軸52周りに第2ロックパウル50が回動し、その先端に形成されたラチェット部56がラチェット筒74のラチェット部76に接近する。これにより、第2ロックパウル50のラチェット部56がラチェット筒74のラチェット部76に噛み合うと、第2ロックベース38の引出方向への回転が規制される。
ここで、例えば、ウエビングベルト20を装着している乗員が比較的小柄で、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張ることで生じた引出方向へのスプール18の回転力が、トーションシャフト26の機械的強度を上回っていなければ、この状態で引出方向へのスプール18の回転が再び規制されて、ウエビングベルト20により車両前方側への乗員の身体の移動が規制される。
これに対し、例えば、ウエビングベルト20を装着している乗員が比較的大柄で、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張ることで生じた引出方向へのスプール18の回転力が、トーションシャフト26の機械的強度を上回っていると、引出方向への回転が規制された第2ロックベース38に対してスプール18が引出方向へ回転し、これにより、連結部28と連結部44との間でトーションシャフト26が捩じれるようにトーションシャフト26に変形が生じる。
このトーションシャフト26の捩じり変形分だけスプール18は引出方向に回転し、このスプール18の回転分だけウエビングベルト20がスプール18から引き出されて、スプール18から引き出されたウエビングベルト20の長さ分だけ乗員の身体は車両前方側へ移動できる。さらに、乗員がウエビングベルト20を引っ張るエネルギー(すなわち、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体の運動エネルギー)の一部は、トーションシャフト26の変形に供される(すなわち、乗員の身体の運動エネルギーの一部が、トーションシャフト26の変形により吸収される)。
このように、本ウエビング巻取装置10では、トーションシャフト26の変形は、ワイヤ本体96(ワイヤ94)の変形の終了後(すなわち、ワイヤ本体96の変形開始よりも後)に生じるので、ワイヤ本体96の変形の開始からトーションシャフト26の変形の終了までの間に吸収するエネルギー量を変化させることができる。
しかも、本ウエビング巻取装置10では、吸収するエネルギー量をその吸収過程で変化させるに際して、変形させる部材をワイヤ本体96からトーションシャフト26に替えている。ここで、トーションシャフト26はスプール18の第1挿通孔22に設けられているのに対し、第2挿通孔92のワイヤ本体96は第1挿通孔22よりも回転半径方向外側に形成された第2挿通孔92に設けられる。
このため、トーションシャフト26及びワイヤ本体96の各々をスプール18の軸方向に充分長く設定でき、これにより、トーションシャフト26の変形に必要な回転力、すなわち、トーションシャフト26の変形で吸収するエネルギーの量を大きくする等、トーションシャフト26の変形で吸収するエネルギーの量や変形開始から終了までの時間的長さを比較的自由に設定できる。
さらに、ワイヤ本体96が全て第2挿通孔92から抜け出るまで第2ロックパウル50のラチェット部56をラチェット筒74のラチェット部76に噛み合わせることができない。したがって、第2挿通孔92へのワイヤ本体96の挿し込みの長さで、ワイヤ本体96の変形が開始されてから、トーションシャフト26の変形が開始されるまでのタイミングを容易に設定できる。
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
図8には本実施の形態に係るウエビング巻取装置130の構成の概略が正面断面図により示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置130は第1ロック機構62を備えておらず、代わりに第1ロック機構132を備えている。第1ロック機構132は第1ロックベース134を備えている。第1ロックベース134は、前記第1の実施の形態における第2ロックベース38の嵌挿部40及び第2ロックベース本体46に対応した嵌挿部136及び第1ロックベース本体138を備えている。嵌挿部136には第2ロックベース38の嵌挿部40と同様に嵌挿孔42が形成されており、トーションシャフト26の連結部44が嵌挿されている。
一方、第1ロックベース本体138からは第2ロックベース本体46と同様に軸部60が形成されているが、第1ロックベース本体138にはパウル収容部48が形成されておらず、前記第1の実施の形態における第1ロックベース64と同様に内側に第1ロックパウル68が収容されたパウル収容部66が形成されている。また、この第1ロックベース134を含めて構成される第1ロック機構132は、前記第1の実施の形態における第1ロック機構62と同様に「VSIR機構」や「WSIR機構」を構成する各部品を備えており、これらの各部品が前記第1の実施の形態と同様に脚板14に設けられたハウジング72に収容されている。
さらに、本実施の形態では、脚板14にラチェット筒74が形成されておらず、代わりに、脚板14を貫通するラチェット孔140が形成されている。このラチェット孔140にはラチェット筒74の内周部と同様の内歯のラチェット歯が形成されており、このラチェット孔140のラチェット歯に第1ロックパウル68のラチェット部70が噛み合うことで第1ロックベース134の引出方向への回転が規制されるようになっている。
一方、本ウエビング巻取装置130はアダプタ24を備えておらず、代わりに第2ロック手段としての第2ロックベース142を備えている。第2ロックベース142は前記第1の実施の形態における第2ロックベース38の嵌挿部40に対応する嵌挿部145を備えている。嵌挿部145は嵌挿部40と同様に外周形状が円形とされ、スプール18の脚板16側の開口端からスプール18に対して相対回転自在に嵌挿されている。しかしながら、嵌挿部40とは異なり、嵌挿部145には連結部28の嵌挿が可能な嵌挿孔42が形成されておらず、第2ロックベース142には軸部32が通過可能に貫通した貫通孔が形成されており、軸部32周りに回転自在に軸部32に支持されている。
このように、嵌挿部145には連結部28の嵌挿が可能な嵌挿孔42が形成されていないことから、図8に示されるように、連結部28は嵌挿部145の脚板14側でスプール18に対して相対回転不能な状態でスプール18に連結されている。
また、第2ロックベース142は第2ロックベース本体46に代わる第2ロックベース本体144を備えている。図9に示されるように、第2ロックベース本体144は第2ロックパウル50を収容したパウル収容部48が形成されている点で前記第1の実施の形態における第2ロックベース38の第2ロックベース本体46と同じである。この第2ロックベース本体144に設けられた第2ロックパウル50に対応して本ウエビング巻取装置10では脚板16にはラチェット孔146が形成されている。脚板16のラチェット孔146は脚板14のラチェット孔140と同じく内歯のラチェット歯とされており、図10に示されるように、第2ロックパウル50がラチェット孔146のラチェット歯に噛み合うことで第2ロックベース142の引出方向への回転が規制されるようになっている。
これに対して、第2ロックベース38の第2ロックベース本体46とは異なり第2ロックベース142の第2ロックベース本体144にはガイド溝148が形成されている。ガイド溝148は第2ロックベース本体144のスプール18と対向する側の面にて開口した有底の溝で、図11に示されるように、前記第1の実施の形態における第1ロックベース64や、本実施の形態における第1ロックベース134の第1ロックベース本体138に形成されているガイド溝102と同様にスプール18の中心軸線周りに湾曲している。
さらに、図11に示されるように、第2ロックベース本体144には、前記第1の実施の形態における第1ロックベース64や、本実施の形態における第1ロックベース134の第1ロックベース本体138に形成されている保持孔106と同様に保持孔150が形成されており、本実施の形態では、ワイヤ94はワイヤ本体96の脚板16側の端部に湾曲部100が形成されてガイド溝148に入り込んでおり、更に、第2挿通孔92の頭部104はスプール18の側に頭部104が抜け出ることがないように頭部104が保持孔150に入り込んでいる。
一方、本ウエビング巻取装置130では第2挿通孔92とは別に第3挿通孔152がスプール18に形成されている。第3挿通孔152はスプール18の軸方向両端で開口しており、その開口方向がスプール18の軸方向と同方向とされている。第3挿通孔152の内側には干渉手段としての干渉ワイヤ154が収容されている。干渉ワイヤ154の一端側は第3挿通孔152の脚板14側の開口端から抜け出てガイド溝102に入り込んでいる。さらに、ガイド溝102に入り込んだ干渉ワイヤ154の一端側は保持孔106からスプール18の側に抜け出ることがないように保持孔106に入り込んで保持されている。
これに対して、干渉ワイヤ154の他端側は第3挿通孔152の脚板16側の開口端を抜け出て、第2ロックベース本体144に形成された貫通孔98を通過している。さらに、貫通孔98を通過してパウル収容部48に入り込んだ干渉ワイヤ154の他端側に対応して、第2ロックベース本体144には収容溝156が形成されている。図9に示されるように、収容溝156は第2ロックベース本体144のスプール18とは反対側の面で開口した溝で、スプール18の中心軸線周りに湾曲している。この収容溝156の一端は連結部44に連通するように開口しており、パウル収容部48に入り込んだ干渉ワイヤ154の他端側は更に収容溝156に入り込んでいる。
このように、パウル収容部48を通過して収容溝156に入り込んでいる干渉ワイヤ154は、パウル付勢ばね54に付勢されている第2ロックパウル50に干渉して第2ロックパウル50の回動を規制している。
なお、このように、本ウエビング巻取装置130はワイヤ94を備えているものの、干渉手段としての干渉ワイヤ154を備えているため、本ウエビング巻取装置130ではワイヤ94は干渉手段としての機能を有していない。
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置130の動作の説明を通して本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置130では、第1ロック機構132を構成する「VSIR機構」又は「WSIR機構」が作動することで第1ロックパウル68が脚板14に形成されたラチェット孔140のラチェット歯に噛み合うと引出方向への第1ロックベース134の回転が規制され、これにより、スプール18からのウエビングベルト20の引き出しが規制される。このように、スプール18からのウエビングベルト20の引き出しが規制されることで、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト20により強く保持される。
この状態で、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張ることに起因したスプール18の引出方向への回転力が、トーションシャフト26の機械的強度を上回っていると、引出方向への回転が規制された第1ロックベース134に対してスプール18が引出方向へ回転し、これにより、連結部28と連結部44との間でトーションシャフト26が捩じれるようにトーションシャフト26に変形が生じる。
このトーションシャフト26の捩じり変形分だけスプール18は引出方向に回転し、このスプール18の回転分だけウエビングベルト20がスプール18から引き出されて、スプール18から引き出されたウエビングベルト20の長さ分だけ乗員の身体は車両前方側へ移動できる。さらに、乗員がウエビングベルト20を引っ張るエネルギー(すなわち、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体の運動エネルギー)の一部は、トーションシャフト26の変形に供される(すなわち、乗員の身体の運動エネルギーの一部が、トーションシャフト26の変形により吸収される)。
一方、上記のように、スプール18が第1ロックベース134に対して引出方向に相対回転すると、第1ロックベース本体138(第1ロックベース134)の保持孔106に一端が保持された干渉ワイヤ154が第1ロックベース134にスプール18の引出方向への相対回転量に応じた長さだけ第3挿通孔152の脚板14側の開口端から引き出されてガイド溝102に収容される。
このように第1ロックベース134に対するスプール18の相対回転で干渉ワイヤ154が第3挿通孔152の脚板14側の開口端から引き出されると、干渉ワイヤ154の他端側が漸次第3挿通孔152の脚板16側の開口端から第3挿通孔152に引き込まれる。このようにして干渉ワイヤ154の他端部が第3挿通孔152に引き込まれるまで第1ロックベース134に対してスプール18が相対回転すると、干渉ワイヤ154による第2ロックパウル50の干渉が解消される。
第2ロックパウル50に対するワイヤ本体96の干渉が解消されるとパウル付勢ばね54の付勢力によりパウル支持軸52周りに第2ロックパウル50が回動し、その先端に形成されたラチェット部56が脚板16に形成されたラチェット孔146のラチェット歯に接近する。これにより、第2ロックパウル50のラチェット部56がラチェット孔146のラチェット歯に噛み合うと、第2ロックベース142の引出方向への回転が規制される。
この状態で、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張ることに起因したスプール18の引出方向への回転力が、トーションシャフト26の機械的強度と第2挿通孔92の機械的強度との和を上回っていると、引出方向への回転が規制された第1ロックベース134及び第2ロックベース142の双方に対してスプール18が引出方向に回転する。このスプール18の引出方向への回転でトーションシャフト26が更に変形されると共に、スプール18の引出方向への回転に連動して第2挿通孔92の脚板16側の端部からワイヤ94のワイヤ本体96が引き出される。
このように引き出されたワイヤ本体96は、第2ロックベース本体46における第2挿通孔92の脚板16側の開口端の縁部でしごかれて、スプール18の回転半径方向に屈曲し、更に、ガイド溝148の湾曲に倣って湾曲しつつガイド溝148の内側に入り込む。このように、スプール18が捩じり変形されて第2挿通孔92から引き出されてガイド溝148に倣って変形できる分だけ、スプール18は引出方向に回転し、このスプール18の回転分だけウエビングベルト20がスプール18から引き出されて、スプール18から引き出されたウエビングベルト20の長さ分だけ乗員の身体は車両前方側へ移動できる。
さらに、乗員がウエビングベルト20を引っ張るエネルギー(すなわち、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体の運動エネルギー)の一部は、トーションシャフト26の捩じり変形と第2挿通孔92から引き出されたワイヤ本体96の上記の変形とに供される(すなわち、乗員の身体の運動エネルギーの一部が、トーションシャフト26及びワイヤ本体96の変形により吸収される)。
このように、本ウエビング巻取装置130では、ワイヤ本体96(第2挿通孔92)の変形はトーションシャフト26の変形途中から生じるので、ワイヤ本体96の変形が開始されると、トーションシャフト26の変形に供されるエネルギーとワイヤ本体96の変形に供されるエネルギーとの和に相当するエネルギーが吸収されるので、トーションシャフト26のみが変形されていた状態に比べて吸収されるエネルギーが増加(変化)する。
しかも、本ウエビング巻取装置130では、前記第1の実施の形態と同様にトーションシャフト26とワイヤ94とでエネルギーを吸収しているので、トーションシャフト26の変形で吸収するエネルギーの量や変形開始から終了までの時間的長さを比較的自由に設定できる。
さらに、本実施の形態では、干渉ワイヤ154の他端部が第3挿通孔152に引き込まれるまで第2ロックパウル50のラチェット部56をラチェット孔146の内歯に噛み合わせることができない。したがって、干渉ワイヤ154の第2ロックパウル50に干渉している部位から干渉ワイヤ154の他端部までの長さで、トーションシャフト26の変形が開始されてから、ワイヤ本体96の変形が開始されるまでのタイミングを容易に設定できる。
なお、本実施の形態では、干渉手段に干渉ワイヤ154を用いた。この干渉ワイヤ154は、ワイヤ94とは異なり、変形によるエネルギー吸収が求められないので、機械的強度及び剛性としては、第2ロックパウル50に干渉した状態で第2ロックパウル50の回動を規制できさえすればよい。したがって、可撓性を有するワイヤやチェーン等で干渉ワイヤ154を構成してもよい。また、第3挿通孔152内において干渉ワイヤ154は伸直状態で収容されていてもよいし、第3挿通孔152内で干渉ワイヤ154が弛んだ状態で収容されていてもよい。干渉ワイヤ154を弛ませた状態で第3挿通孔152内に干渉ワイヤ154を収容した場合には、この干渉ワイヤ154の弛み分でもトーションシャフト26の変形が開始されてから、ワイヤ本体96の変形が開始されるまでのタイミングを調整できる。
また、本実施の形態では、第1エネルギー吸収手段にトーションシャフト26を適用し、第2エネルギー吸収手段にワイヤ94を適用した構成であった。しかしながら、第1エネルギー吸収手段や第2エネルギー吸収手段がこのような構成に限定されるものではない。
例えば、第1エネルギー吸収手段にワイヤ94を適用して第2エネルギー吸収手段にトーションシャフト26を適用する構成としてもよい。また、トーションシャフト26の軸方向中間部にてスプール18に対して相対回転不能にトーションシャフト26をスプール18に繋げ、トーションシャフト26のスプール18との連結部分よりも一方の側を第1エネルギー吸収手段とし、トーションシャフト26のスプール18との連結部分よりも他方の側を第2エネルギー吸収手段とする構成にしてもよい。さらに、複数のワイヤ94を設けて、一方のワイヤ94を第1エネルギー吸収手段とし、他方のワイヤ94を第2エネルギー吸収手段とする構成としてもよい。