<第1の実施の形態の構成>
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体的な構成の概略が正面断面図により示されている。
この図に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は、例えば、略車両前後方向に沿って互いに対向する一対の脚板14、16を備えている。この脚板14と脚板16との間にはスプール18が設けられている。スプール18は軸方向が脚板14、16の対向方向に沿った略円筒形状に形成されている。
スプール18には長尺帯状のウエビングベルト20の長手方向基端側が係止されており、スプール18の中心軸線周りの一方である巻取方向にスプール18を回転させると、ウエビングベルト20がその長手方向基端側からスプール18の外周部に巻き取られて格納され、ウエビングベルト20をその先端側へ引っ張ると、スプール18に巻き取られているウエビングベルト20が引き出されると共に、巻取方向とは反対の引出方向にスプール18が回転する。
一方、スプール18の軸心部分を貫通する貫通孔22の内側にはトーションシャフト24が配置されている。トーションシャフト24は、軸方向がスプール18の軸方向に沿った棒状のトーションシャフト本体26を備えている。トーションシャフト本体26の脚板14側の端部に対応してスプール18の脚板14側には嵌挿孔28が形成されている。嵌挿孔28は内周形状が貫通孔22の内周形状よりも大きく形成されていると共に、スプール18の脚板14側の端部にて開口しており、その底部にて貫通孔22の脚板14側の端部が開口している。嵌挿孔28にはアダプタ30が嵌挿されており、嵌挿孔28に嵌挿されたアダプタ30はスプール18に対する相対回転が不能とされている。
嵌挿孔28に嵌挿されたアダプタ30に対応して、トーションシャフト本体26(トーションシャフト24)の脚板14側の端部にはスプール側連結部32が形成されている。スプール側連結部32はアダプタ30に形成された嵌挿孔34に嵌挿され、これにより、トーションシャフト24がアダプタ30に対して相対回転不能に連結されている。アダプタ30には図示しない軸部がスプール18に対して同軸的に突出形成されている。アダプタ30の軸部は、脚板14の外側(すなわち、脚板14の脚板16とは反対側)で脚板14に装着されたハウジング36に入り込んでおり、アダプタ30の軸部は直接又は他の部材を介して間接的に回転自在にハウジング36に軸支されている。
ハウジング36の内側には、スプール付勢手段としての図示しない渦巻きばねが収容されている。渦巻きばねは、その渦巻き方向外側の端部がハウジング36に直接又は間接的に係止されており、渦巻き方向内側の端部がアダプタ30の軸部に直接又は間接的に係止されている。この渦巻きばねは、スプール18と共にアダプタ30の軸部が引出方向に回転することで巻き締められて、アダプタ30の軸部を介してスプール18を巻取方向に付勢する。
スプール18の脚板16側には、ロック手段としてのロック機構50のロックベース54が設けられている、ロックベース54は嵌挿部56を備えている。嵌挿部56に対応してスプール18には内周形状がスプール18の内周形状よりも大きな嵌挿孔58が形成されている。嵌挿孔58はスプール18の脚板16側の端部で開口していると共に、その底部にて貫通孔22の脚板16側の端部が開口している。嵌挿孔58の内周形状はスプール18に対して同軸の円形とされており、ロックベース54の嵌挿部56はスプール18に対して相対回転可能に嵌挿孔58に嵌挿されている。
ロックベース54の嵌挿部56には嵌挿孔60が形成されており、トーションシャフト24の脚板16側の端部に形成されたロックベース側連結部62がロックベース54に対して相対回転不能な状態で連結されている。上記のように、ロックベース54はスプール18に対して相対回転可能に嵌挿部56が嵌挿孔58に嵌挿されているが、トーションシャフト24はハウジング36を介してスプール18に対して相対回転が不能であるため、ロックベース54はトーションシャフト24を介してスプール18に相対回転不能に連結されている。
また、ロックベース54は00ロックベース側連結部62を備えている。ロックベース側連結部62はスプール18の脚板16側の端面に隣接した状態で、嵌挿部56に対して同軸的且つ一体的に形成されている。嵌挿孔60に嵌挿されたロックベース側連結部62のトーションシャフト本体26とは反対側の端部からは、軸部66がスプール18に対して同軸的に突出形成されている。この軸部66は嵌挿部56及びラチェット部64を貫通し、脚板16の外側(すなわち、脚板16の脚板14とは反対側)で脚板16に装着されたハウジング68の内側に入り込んでいる。ハウジング68に入り込んだ軸部66は直接又は間接的にハウジング68に回転自在に支持されている。
一方、図1及び図3に示されるように、ロックベース54を構成するラチェット部64の回転半径方向外側には、ロックパウル70が配置されている。ロックパウル70はスプール18の軸方向と同じ向きを軸方向とする軸周りに回動自在にフレーム12やハウジング68等に支持されており、その回動方向一方にロックパウル70が回動すると、その先端に形成されたラチェット歯がラチェット部64(ロックベース54)の外周部に形成されたラチェット歯に接近して噛み合う(図2の二点鎖線状態)。このように、ロックパウル70のラチェット歯がラチェット部64(ロックベース54)のラチェット歯に噛み合うことでロックベース54の引出方向への回転が規制される。
さらに、上記のハウジング68の内側には、車両が急減速状態になった場合の加速度(減速度)を検知して作動する所謂「VSIR機構」を構成する各種部品や、軸部66の引出方向への加速度が所定の大きさを越えて急激に引出方向に回転した際に作動する所謂「WSIR機構」を構成する各種部品が収容されており、これらの「VSIR機構」や「WSIR機構」が作動すると、ロックパウル70の先端側をラチェット部64(ロックベース54)の外周部へ接近させる向きにロックパウル70を回動させる。
また、図1に示されるように、脚板16の外側には、プリテンショナ80を構成するシリンダ82が配置されている。図3に示されるように、シリンダ82は軸方向がウエビング巻取装置10の上下方向に沿った筒形状に形成されており、図示しない締結手段によって脚板14に固定されている。シリンダ82の上端部にはガス発生手段としてのガスジェネレータ84が取り付けられている。ガスジェネレータ84の内部には、着火されることで瞬時にガスを発生させるガス発生剤、このガス発生剤を着火させる着火剤、この着火剤を点火するための点火装置等が収容されている。
このガスジェネレータ84の点火装置は制御手段としてのECUに電気的に接続されている。このECUは車両の急減速状態を検出する加速度センサに電気的に接続されており、加速度センサが車両の急減速状態を検知すると、ECUが点火装置を作動させる。作動させられた点火装置は着火剤を点火し、更に、点火した着火剤がガス発生剤を燃焼される。ガス発生剤が燃焼することで発生したガスは、シリンダ82内に供給される。
一方、シリンダ82の内部には、ピストン86がシリンダ82の軸方向に摺動自在に収容されており、ガスジェネレータ84内のガス発生剤が燃焼することによりピストン86とシリンダ82の上端部との間でシリンダ82の内圧が上昇するとピストン86が下方へ摺動する。ピストン86の下端部(ガスジェネレータ84とは反対側の端部)にはラックバー88が一体的に形成されている。ラックバー88は長手方向がシリンダ82の軸方向に沿っており、ラックバー88におけるスプール18の軸方向及びシリンダ82の長手方向の双方に対して直交する側の面にはラック歯が形成されている。
このラックバー88の先端部の近傍にはピニオンギヤ90が配置されている。ピニオンギヤ90はトーションシャフト24に対して同軸的に設けられていると共に、ラックバー88に対してはラックバー88におけるラック歯が形成された側に設けられており、下方へ摺動するピストン86と共にラックバー88が下降すると、ラックバー88のラック歯がピニオンギヤ90に噛み合ってピニオンギヤ90を巻取方向に回転させる。
ピニオンギヤ90はスプール18に対して同軸的にラチェット部64から形成された円筒形状の筒体94に設けられている。筒体94とピニオンギヤ90との間には図示しないクラッチが介在しており、クラッチは巻取方向及び引出方向への軸部66の何れの回転もピニオンギヤ90に伝えることはないが、ピニオンギヤ90が巻取方向に回転するとクラッチがピニオンギヤ90と軸部66とを機械的に連結し、ピニオンギヤ90の巻取方向への回転を筒体94、すなわち、ロックベース54に伝えてロックベース54を巻取方向に回転させる。
一方、図1に示されるように、上述したロックベース54のラチェット部64には有底の円孔96が形成されている。図3に示されるように、円孔96はロックベース54に対して同軸的に形成されており、図1に示されるように、ラチェット部64のロックベース54とは反対側で開口している。この円孔96の開口端は、ラチェット部64のロックベース54とは反対側で軸部66に装着された蓋体98に閉止されている。
さらに、図2に示されるように、円孔96の底部からは円孔96の開口端側へ向けて一対のガイド壁102が立設されている。これらのガイド壁102は、ロックベース54の中心軸線を中心に放射状に延びる1本の仮想線(図示省略)を挟んで互いに対向するように形成されている。これらのガイド壁102の間には、切替部材として切替手段を構成すると共に解除手段を構成するスライダ110が配置されている。図2に示されるように、スライダ110は一対の結合ピンガイド112を備えている。
これらの結合ピンガイド112はガイド壁102の対向方向に沿って互いに対向している。さらに、これらの結合ピンガイド112の外周部近傍には複数の連結片114が設けられている。これらの連結片114は、結合ピンガイド112の外周部のうち、蓋体98の底部側の部分以外で一方の結合ピンガイド112と他方の連結片114とを一体的に連結している。これにより、全体的に蓋体98の側へ向けて開口した略ボックス状とされたスライダ110は、双方のガイド壁102に案内されて双方のガイド壁102の間の中央とロックベース54の中心軸線とを結ぶ仮想直線に沿ってスライドできるようになっている。
また、上記の結合ピンガイド112にはガイド孔116が形成されている。ガイド孔116は第1保持部118を備えている。第1保持部118は長径方向が円孔96の底面に対して略平行な長孔とされている。ロックベース54の中心軸線側の第1保持部118の端部からは第1誘導部120が連続して形成されている。第1誘導部120は第1保持部118の側から離間するにつれて、漸次円孔96の底面から離間するように傾斜する長孔とされている。
一方、上記の第1保持部118よりも円孔96の底面とは反対側には第2保持部122が第1保持部118に対して平行に形成されている。第2保持部122は第1保持部118と同様に長径方向が円孔96の底面に対して略平行な長孔とされている。ロックベース54の中心軸線側の第2保持部122の端部からは第2誘導部124が連続して形成されている。第2誘導部124は第2保持部122の側から離間するにつれて、漸次円孔96の底面に接近するように長孔とされている。
さらに、第2誘導部124の第2保持部122とは反対側と第1誘導部120の第1保持部118の反対側とはロックベース54の軸方向に沿って長手とされた軸方向ガイド部126により繋がっている。このような第1保持部118、第1誘導部120、第2保持部122、第2誘導部124、及び軸方向ガイド部126により構成されたガイド孔116は全体的に内幅寸法が略均一の略U字形状とされている。
以上の構成のスライダ110には、規制部材としての結合ピン132が設けられている。結合ピン132はガイド軸134を備えている。ガイド軸134は軸方向が上記の結合ピンガイド112の対向方向に沿った円柱形状に形成されている。また、ガイド軸134の外径寸法はガイド孔116の内幅寸法よりも極僅かに小さく形成されている。ガイド軸134の軸方向一端側は一方の結合ピンガイド112のガイド孔116に入り込んでいると共に、軸方向他端側は他方の結合ピンガイド112のガイド孔116に入り込んでおり、ガイド孔116を構成する第1保持部118の第1誘導部120とは反対側の端部から第2保持部122の第2誘導部124とは反対側の端部までの間をガイド孔116に案内されつつ移動できるようになっている。
このガイド軸134の軸方向略中央部からは結合ピン本体136が突出形成されている。結合ピン本体136は軸方向がガイド軸134の半径方向に沿った棒状に形成されており、その先端部(ガイド軸134とは反対側の端部)はガイド軸134とは反対側へ張り出すように湾曲した湾曲面とされている。この結合ピン本体136は、軸方向がスプール18の軸方向と同じ向きとされ、その先端は円孔96の底面の側へ向いている。この結合ピン本体136に対応して円孔96の底部、すなわち、ロックベース54のラチェット部64には内径寸法が結合ピン本体136の外径寸法よりも極僅かに大きなロックベース側回転規制部としての円形の透孔138が形成されており、結合ピン本体136は透孔138を通過している。
さらに、この透孔138に対応してスプール18にはスプール側回転規制部(更に、本実施の形態では何れか一方の回転規制部)としての結合孔140が形成されている。結合孔140はスプール18の脚板16側の端面にて開口しており、スプール18の軸方向に沿って透孔138と対向している。但し、透孔138とは異なり結合孔140はスプール18の中心軸線が曲率の中心となるように湾曲した有底の孔とされている。さらに、スプール18の中心軸線周り方向に沿った結合孔140の中間部よりも巻取方向側は底部がスライダ110と共に解除手段を構成する斜面142とされている。
斜面142は巻取方向側へ向けて漸次スプール18の脚板16側の端面に接近するように傾斜しており、結合孔140の巻取方向側の端部では斜面142がスプール18の脚板16側の端面に直接繋がっている。上記のガイド軸134が第1保持部118内に位置している状態では、結合ピン本体136が透孔138を通過して結合孔140に入り込むが、ガイド軸134が第2保持部122内に位置している状態では、結合ピン本体136が透孔138に入り込んでいるものの、結合孔140に入り込まないように結合ピン本体136の長さや、第1保持部118と第2保持部122との間隔が設定されている。
一方、図3に示されるように、ロックベース54の中心軸線側の各ガイド壁102の端部の間は平板状のストッパ146により繋がっており、スライダ110はストッパ146に当接することでそれ以上ロックベース54の中心軸線側に変位することが規制される。このストッパ146の形成位置は、ガイド孔116における第1保持部118の第1誘導部120とは反対側の端部又は第2保持部122の第2誘導部124とは反対側の端部に結合ピン132のガイド軸134が当接する状態でスライダ110がストッパ146に当接するように設定されている。
また、図1及び図3に示されるように、ストッパ146とは反対側のスライダ110の端部と円孔96の内周面との間には圧縮コイルばね148が配置されており、この圧縮コイルばね148の付勢力でスライダ110はストッパ146との当接状態で保持される。但し、ロックベース54が所定の大きさ以上の加速度(更に言えば、上記のプリテンショナ80が作動することでロックベース54に付与される巻取方向への回転加速度)で回転すると、このときに生じる遠心力でスライダ110が圧縮コイルばね148の付勢力に抗してロックベース54の回転半径方向外方へスライドする。
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置10では、車両のシートに着座した乗員の身体にウエビングベルト20が装着された状態で、車両が急減速状態になると、ロック機構50を構成する「VSIR機構」が作動する。また、車両が急減速することで、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体が急激にウエビングベルト20を引っ張ると、スプール18が急激に引出方向へ回転する。このようにしてスプール18に急激な引出方向への回転が生じるとロック機構50を構成する「WSIR機構」が作動する。
ロック機構50を構成する「VSIR機構」及び「WSIR機構」の少なくとも何れか一方が作動すると、図3にて二点鎖線で示されるように、ロックパウル70が回動してロックパウル70の先端部に形成されたラチェット歯がラチェット部64の外周部に形成されたラチェット歯に噛み合う。これにより、ロックベース54の引出方向への回転が規制される。
ロック機構50を構成するロックベース54はスプール18に対して回転自在に嵌挿孔58に嵌挿されているものの、スプール側連結部32にてスプール18に対して相対回転不能にスプール18に繋げられたトーションシャフト24のロックベース側連結部62に相対回転不能に繋げられているので、ロックベース54の引出方向への回転が規制されることでスプール18の引出方向への回転が規制され、これにより、スプール18からのウエビングベルト20の引き出しが規制され、乗員の身体はウエビングベルト20により強固に拘束される。
一方、車両が急減速状態になったことを上記の加速度センサが検知すると、上記のECUがプリテンショナ80のガスジェネレータ84内の点火装置を作動させる。これにより、点火装置が着火剤を点火すると、点火した着火剤によってガス発生剤が燃焼させられる。ガス発生剤が燃焼することで発生したガスはシリンダ82内に供給され、これにより上昇したシリンダ82の内圧はピストン86を下方(すなわち、シリンダ82におけるガスジェネレータ84が設けられた側とは反対側)へ摺動させる。
このようにピストン86が摺動することで、図5に示されるように、ピストン86と一体のラックバー88が下降する。下降するラックバー88はラック歯がピニオンギヤ90に噛み合ってピニオンギヤ90を巻取方向に回転させる。ピニオンギヤ90が巻取方向に回転することでクラッチがピニオンギヤ90と筒体94、すなわち、ロックベース54とを連結し、巻取方向へのピニオンギヤ90の回転力がロックベース54に伝わりロックベース54を巻取方向に回転させる。
上記のように、ロックベース54の嵌挿部56にはトーションシャフト24のロックベース側連結部62が相対回転不能に繋がっているので、ピニオンギヤ90からロックベース54に伝えられた巻取方向への回転力はトーションシャフト24に伝わり、更に、トーションシャフト24及びアダプタ30を介してスプール18に回転力が伝わる。さらに、この状態では、ロックベース54の透孔138を貫通している結合ピン本体136が結合孔140に入り込んでいるため、巻取方向へ回転するロックベース54は透孔138の内周部が結合ピン本体136を巻取方向に押圧し、更に、結合ピン本体136が結合孔140の斜面142を巻取方向に押圧し、スプール18に巻取方向への回転力を付与する。
このようにして巻取方向への回転力が付与されたスプール18が強制的に巻取方向に回転させられることでスプール18にウエビングベルト20が巻き取られ、これにより、それまでよりも乗員の身体がウエビングベルト20によって強く拘束される。
ところで、本ウエビング巻取装置10では、プリテンショナ80が作動することで生じたピニオンギヤ90の巻取方向への回転力はロックベース54の筒体94に伝わる。ここで、ロックベース54の嵌挿部56はスプール18の嵌挿孔58に回転可能に嵌挿されているので、ピニオンギヤ90によって巻取方向に回転させられたロックベース54は、その回転の初期の状態で嵌挿部56に相対回転不能にロックベース側連結部62が嵌挿されているトーションシャフト24を巻取方向に捩じろうとする。
しかしながら、図4の(A)及び(B)にて示されるように、本ウエビング巻取装置10では、ロックベース54のラチェット部64に形成された結合ピン132を貫通している結合ピン132の結合ピン本体136がスプール18の結合孔140に入り込んでいる。
ロックベース54がトーションシャフト24を巻取方向に捩るとスプール18に対してロックベース54が巻取方向に相対回転して、結合孔140の斜面142が結合ピン本体136を脚板16の側へ押圧するが、この状態では、結合ピン132のガイド軸134がスライダ110の結合ピンガイド112に形成されたガイド孔116のうち、第1保持部118に入り込んでいる。このため、ガイド軸134は第1保持部118の内周部に干渉されて円孔96の底面から離間する向き(すなわち、特許請求の範囲で言うところの「解除方向」)へ移動できない。
したがって、この状態では、結合ピン本体136が結合孔140から抜け出ること(すなわち、結合ピン本体136と結合孔140との係合を解除すること)はできず、結合ピン本体136によってスプール18に対するロックベース54の相対回転が規制される。このように、スプール18に対するロックベース54の相対回転が規制されることで、ピニオンギヤ90の巻取方向の回転力がロックベース54に付与された際の巻取方向へのロックベース54の回転の初期にトーションシャフト24のトーションシャフト本体26で捩じれが生じることを防止又は効果的に抑制できる。
また、上記のようなロックベース54の巻取方向への回転の初期の後、図5に示されるように、ロックベース54が巻取方向に回転すると、スライダ110が遠心力で圧縮コイルばね148の付勢力に抗してロックベース54の回転半径方向外方へガイド壁102に案内されつつスライドする。このようにスライダ110がスライドすることで結合ピン132のガイド軸134は、第1保持部118の第1誘導部120とは反対側の端部から離間して第1誘導部120に入り込む。
上記のように第1誘導部120は第1保持部118の側から離間するにつれて、漸次円孔96の底面から離間するように傾斜している。このため、スライダ110がロックベース54の回転半径方向外方へスライドすることで、結合ピン132のガイド軸134が第1誘導部120に案内されて漸次円孔96の底面から離間するように(すなわち、解除方向へ)スライドする。但し、図6の(A)及び(B)に示されるように、第1誘導部120の第1保持部118とは反対側の端部にガイド軸134が接する状態になっても、結合ピン本体136の先端部は結合孔140から抜け切らない。
次いで、このような状態から、車両が急減速することで車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張り、これによりスプール18に付与された引出方向への回転力が付与されると、引出方向への回転が規制され、しかも、巻取方向への回転力が付与されているロックベース54に対してスプール18が引出方向へ回転しようとし、これにより、トーションシャフト24のスプール側連結部32がロックベース側連結部62に対して相対的に引出方向に回転するような捩じれがトーションシャフト本体26に生じる。
このようにしてスプール18がロックベース54に対して引出方向に相対回転を開始すると、図7の(B)に示されるように、結合孔140の斜面142が結合ピン本体136を押圧して、図7の(A)に示されるように、軸方向ガイド部126内を第1誘導部120の側から第2誘導部124の側(すなわち、解除方向)へスライドさせる。
また、上記のように、スプール18に引出方向への回転力が付与されることで、ロックベース54の巻取方向への回転が停止すると、スライダ110をロックベース54の半径方向外方へスライドさせる遠心力が解消される。これにより、図8に示されるように、スライダ110は圧縮コイルばね148の付勢力でストッパ146に当接するまでスライドする。
このように、スライダ110がスライドすると、ガイド軸134は第2誘導部124内を第2保持部122の側へ向けて移動する。第2誘導部124は第1誘導部120とは逆に第1保持部118の側から離間するにつれて、漸次円孔96の底面に接近するように傾斜しているので、第2誘導部124内を第2保持部122の側へガイド軸134が移動することで、更に、結合ピン本体136が円孔96の底面から離間するように移動する。
このようにして、スライダ110が圧縮コイルばね148に当接するまでスライドすると、図9の(A)及び(B)に示されるように、結合ピン本体136は第2誘導部124から第2保持部122に入り込み、これに伴う円孔96の底面から離間する方向へのガイド軸134のスライドで、結合ピン本体136の先端は結合孔140から抜け出て透孔138に収容される。
このように、結合ピン本体136の先端が結合孔140から抜け出て透孔138に収容された状態(すなわち、結合ピン本体136と結合孔140との係合が解除された状態)では、結合ピン本体136によるロックベース54に対するスプール18の相対回転の規制が解消される。したがって、ロックパウル70に引出方向への回転が規制されたロックベース54に対し、上記のようにスプール18が引出方向へ回転することでスプール18とロックベース54との間に相対回転が生じると、トーションシャフト24のトーションシャフト本体26に捩じれが生じる。
このトーションシャフト本体26の捩じり変形分だけスプール18は引出方向へ回転でき、この引出方向へのスプール18の回転量に応じた長さのウエビングベルト20がスプール18から引き出される。このようにして引き出されたウエビングベルト20の長さ分だけ乗員は車両前方側へ慣性移動できると共に、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの一部がトーションシャフト本体26の捩じり変形に供されて吸収される。
このように、本ウエビング巻取装置10では、プリテンショナ80が作動してロックベース54が巻取方向に回転した際には、ロックベース54に対するスプール18の相対回転を防止又は効果的に抑制でき、これにより、プリテンショナ80の作動によってトーションシャフト24のトーションシャフト本体26に捩じりを生じさせることを防止又は効果的に抑制できる。このように、プリテンショナ80の作動によってトーションシャフト24のトーションシャフト本体26に捩じりを生じさせることを防止又は効果的に抑制できることで、トーションシャフト24の機械的強度をプリテンショナ80の作動荷重より低く設定することもできる。
さらに、プリテンショナ80によるロックベース54の巻取方向への回転が停止した際には、ロックベース54に対するスプール18の巻取方向への相対回転を特に大きく規制することなく結合ピン132の結合ピン本体136を結合孔140から抜き取ることができる。このため、本ウエビング巻取装置10では、結合ピン132の結合ピン本体136を結合孔140から抜き取るに際して特に大きな荷重を要しない。これにより、トーションシャフト24のトーションシャフト本体26に捩じり変形が生じる際に、トーションシャフト本体26の捩じり変形に要する荷重に更に荷重が重畳されることを防止又は効果的に抑制できる。
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
図10には本発明の第2実施の形態に係るウエビング巻取装置170の要部の構成が分解斜視図によって示されている。この図に示されるように、本ウエビング巻取装置170はロックベース54を備えておらず、代わりにロックベース172を備えている。ロックベース172は基本的にロックベース172と同じ構成であるが、円孔96の底部にガイド壁102が形成されておらず代わりに円孔96の底部からガイド壁174がロックベース172の軸方向に沿って円孔96の開口端側へ向けて立設されている。ガイド壁174はロックベース172の中心軸線を曲率の中心として湾曲している。
また、本ウエビング巻取装置170はスライダ110を備えておらず、代わりに切替部材として切替手段を構成すると共に解除手段を構成するスライダ180を備えている。スライダ180は一対の結合ピンガイド182を備えている。結合ピンガイド182の各々は厚さ方向がロックベース172の半径方向に沿った平板状に形成されており、その厚さ方向に沿って互いに対向した状態で上記のガイド壁174と円孔96の内周部との間に配置されている。
ガイド壁174の周方向に沿った結合ピンガイド182の両端側にはそれぞれ連結ブロック184が設けられており、ガイド壁174の周方向に沿った両結合ピンガイド182の一端は一方の連結ブロック184によって連結され、両結合ピンガイド182の他端は他方の連結ブロック184によって連結されている。ロックベース172の回転半径方向に沿った各連結ブロック184の両端面はロックベース172の中心軸線を曲率の中心として湾曲している。
ロックベース172の半径方向内方側を向いた連結ブロック184の端面はガイド壁174の外周面(ロックベース172の半径方向外方を向く面)に接しており、ロックベース172の半径方向外方側を向いた連結ブロック184の端面は円孔96の内周面に接している。このため、スライダ180はガイド壁174と円孔96の内周面に案内されてロックベース172の中心軸線周りに回動できる。
また、スライダ180の結合ピンガイド182の各々にはガイド孔186が形成されている。ガイド孔186が各結合ピンガイド182の厚さ方向に結合ピンガイド182を貫通する孔とされている。このガイド孔186は第1保持部188を備えている。第1保持部188は長径方向が円孔96の底面に対して略平行な長孔とされている。また、ガイド孔186は誘導部190を備えている。
誘導部190は一端が第1保持部188の引出方向側の端部に繋がった長孔で、その長径方向は他端側(すなわち、第1保持部188と繋がっている側の端部からその反対側)へ向けて漸次円孔96の底面から離間するように傾斜している。但し、この誘導部190の長径方向の傾斜角度は第1保持部188の長径方向に対して90度を超えた鈍角となるように誘導部190の形状が設定されている。さらに、ガイド孔186は第2保持部192を備えている。第2保持部192は第1保持部188よりも円孔96の底面から離間した位置に設定されており、その一端は誘導部190の他端に繋がっている。
以上の構成のこのような第1保持部188、誘導部190、及び第2保持部192により構成されたガイド孔186は全体的に内幅寸法が略均一の略V字形状とされている。
また、本ウエビング巻取装置170は結合ピン132を備えておらず、代わりに規制部材としての結合ピン202を備えている。結合ピン202は結合ピン本体136を備えている点では結合ピン132と同じであるが、ガイド軸134を備えておらず、代わりにガイド軸204を備えている。ガイド軸204は軸方向が結合ピン202の結合ピン本体136の軸方向に対して直交する向きに設定された円柱形状に形成されており、このガイド軸204の軸方向略中央から結合ピン本体136が突出形成されている。
このガイド軸204の外径寸法はガイド孔186の内幅寸法よりも僅かに小さく、ガイド軸204の軸方向一端側は一方の結合ピンガイド182に形成されたガイド孔186に入り込んでおり、ガイド軸204の軸方向他端側は一方の結合ピンガイド182に形成されたガイド孔186に入り込んでおり、ガイド孔186を構成する第1保持部188の誘導部190とは反対側の端部から第2保持部192の誘導部190とは反対側の端部までの間をガイド孔186に案内されつつ移動できるようになっている。
また、本ウエビング巻取装置170ではスプール18に結合孔140が形成されておらず、代わりにスプール側回転規制部(更に、本実施の形態では何れか一方の回転規制部)としての結合孔210が形成されている。結合孔210はスプール18の脚板16側の端面にて開口しているという点では結合孔140と同じであるが、内周形状は透孔138と同じ円形で、しかも、斜面142が形成されていない。上記のガイド軸204が第1保持部188内に位置している状態では、結合ピン本体136が透孔138を通過して結合孔140に入り込むが、ガイド軸204が第2保持部192内に位置している状態では、ガイド軸204が透孔138に入り込んでいるものの、結合孔140に入り込まないように結合ピン本体136の長さや、第1保持部188と第2保持部192との間隔が設定されている。
一方、ロックベース172の周方向に沿った引出方向側のガイド壁174の端部と円孔96の内周面との間は平板状のストッパ214により繋がっており、スライダ180はストッパ214に当接することでそれ以上ロックベース172に対して引出方向に相対的に回動することが規制される。このストッパ214の形成位置は、ガイド孔186における第1保持部188の誘導部190とは反対側の端部又は第2保持部192の誘導部190とは反対側の端部に結合ピン132のガイド軸134が当接する状態でスライダ180がストッパ214に当接するように設定されていると共に、巻取方向にロックベース172が回転すると、スライダ180がストッパ214に押圧され、これにより、ロックベース172にスライダ180が追従するように回転する。
また、ロックベース172の周方向に沿った巻取方向側のガイド壁174の端部と円孔96の内周面との間は平板状の係止板216により繋がっており、図11に示されるように、この係止板216と対向する側のスライダ180の端部と係止板216との間には圧縮コイルばね218が配置されており、この圧縮コイルばね218の付勢力でスライダ180はストッパ214との当接状態で保持される。但し、ロックベース172が所定の大きさ以上の速度(更に言えば、上記のプリテンショナ80が作動することでロックベース172に付与される巻取方向への回転速度)で回転し、この回転が急停止された際には、スライダ180が圧縮コイルばね218の付勢力に抗してロックベース172に対して巻取方向側へ慣性移動する。
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置170では、図12に示されるように、結合ピン202のガイド軸204がスライダ180の結合ピンガイド182に形成されたガイド孔186のうち、第1保持部188に入り込んでいる状態では、ガイド軸204は第1保持部188の内周部に干渉されて円孔96の底面から離間する向き(すなわち、特許請求の範囲で言う「解除方向」)へ移動できない。このため、この状態では、結合ピン本体136が結合孔210から抜け出ること(すなわち、結合ピン本体136と結合孔210との係合を解除すること)はできず、結合ピン本体136によってスプール18に対するロックベース172の相対回転が規制される。
車両が急減速状態になってプリテンショナ80が作動し、これにより、ロックベース172を巻取方向に回転すると、ストッパ214に押圧されたスライダ180がロックベース172に追従するようにロックベース172に対して一体的に回転する。この状態では、結合ピン202のガイド軸204が第1保持部188に入り込んでいる状態であるので、上記のように結合ピン本体136が結合孔210から抜け出ることはできず、結合ピン本体136によってスプール18に対するロックベース172の相対回転が規制されている。これにより、ピニオンギヤ90の巻取方向の回転力がロックベース172に付与された際の巻取方向へのロックベース172の回転の初期にトーションシャフト24のトーションシャフト本体26で捩じれが生じることを防止又は効果的に抑制できる。
次いで、このような状態から、車両が急減速することで車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張り、これによりスプール18に付与された引出方向への回転力が付与されると、スプール18の引出方向への回転力がロックベース172の巻取方向への回転力を相殺してロックベース172を急停止させる。このようにロックベース172が急停止すると、図13に示されるように、圧縮コイルばね218の付勢力に抗してスライダ180がロックベース172に対して巻取方向に相対的に回転(移動)する。
このように、スライダ180がロックベース172に対して相対的に巻取方向に回転すると、結合ピン202のガイド軸204はガイド孔186の第1保持部188から誘導部190に相対的に移動し、誘導部190に案内されて円孔96の底面から離間するように(すなわち、解除方向へ)ススライドして、図14に示されるように、誘導部190の第2保持部192側の端部に到達する。誘導部190の第2保持部192側の端部は第2保持部192の誘導部190側の端部でもあるので、ガイド軸204が第2保持部192の誘導部190側の端部に到達することで結合ピン本体136の先端が結合孔210から抜け出る。
さらに、上記のように慣性移動したスライダ180は圧縮コイルばね218の付勢力で引出方向に押圧されて引出方向側へ回転し、再びストッパ214に当接する。ここで、上記のようにガイド軸204が第2保持部192の誘導部190側の端部に到達した状態でスライダ180がストッパ214に当接するまで回転した際には、図15に示されるように、ガイド軸204が第2保持部192内を移動して第2保持部192の誘導部190とは反対側の端部に当接する。この状態では、ガイド軸134が結合孔210に入り込む方向へ移動しようとすると、ガイド軸204が第2保持部192の内周部に干渉される。これにより、結合ピン202は結合ピン本体136が結合孔210から抜け出た状態(すなわち、結合ピン本体136と結合孔210との係合が解除された状態)で保持される。
このように、プリテンショナ80によって巻取方向に回転させられたロックベース172が急停止することにより結合ピン本体136が結合孔210から抜け出るので、結合ピン本体136によるロックベース172に対するスプール18の相対回転の規制が解消される。したがって、ロックパウル70に引出方向への回転が規制されたロックベース172に対し、上記のようにスプール18が引出方向へ回転することでスプール18とロックベース172との間に相対回転が生じると、トーションシャフト24のトーションシャフト本体26に捩じれが生じる。
このトーションシャフト本体26の捩じり変形分だけスプール18は引出方向へ回転でき、この引出方向へのスプール18の回転量に応じた長さのウエビングベルト20がスプール18から引き出される。このようにして引き出されたウエビングベルト20の長さ分だけ乗員は車両前方側へ慣性移動できると共に、乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張るエネルギーの一部がトーションシャフト本体26の捩じり変形に供されて吸収される。
しかも、結合ピン202の結合ピン本体136を結合孔210から抜き取るに際してロックベース172とスプール18との相対回転を必要としないので、これにより、トーションシャフト24のトーションシャフト本体26に捩じり変形が生じる際に、トーションシャフト本体26の捩じり変形に要する荷重に更に荷重が重畳されることを防止又は効果的に抑制できる。
<第3の実施の形態の構成>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図16には本実施の形態に係るウエビング巻取装置240の要部の構成が分解斜視図によって示されている。この図に示されるように、本ウエビング巻取装置240はロックベース54を備えておらず、代わりにロックベース242を備えている。ロックベース242は基本的にロックベース54と同じであるが透孔138が形成されておらず、代わりにロックベース側回転規制部としての透孔244が形成されている。
透孔244は透孔138とは異なり、長径方向がロックベース242の中心軸線が曲率の中心となるように湾曲した長孔とされている。透孔244の内幅寸法(スプール18の半径方向に沿った透孔244の幅寸法)は、結合孔140の内幅寸法(スプール18の半径方向に沿った結合孔140の幅寸法)に略等しく設定されており、スプール18の軸方向に沿って結合孔140と透孔244とが対向している。
また、本ウエビング巻取装置240は結合ピン132を備えておらず、代わりに規制部材としての結合ピン246を備えている。結合ピン246は結合ピン本体136を備えているもののガイド軸134を備えておらず、代わりに小径部248を備えている。小径部248は外径寸法が結合ピン本体136の外径寸法よりも小さな円柱形状に形成されており、軸方向一端部が結合ピン本体136に対して同軸的に結合ピン本体136の基端部(結合ピン本体136の結合孔140に入り込む側とは反対側の端部)に一体的に繋がっている。
この結合ピン本体136の基端部の端面のうち小径部248の外側の部分に対応して上記の透孔244の内周部にはストッパ250が形成されている。ストッパ250は、ロックベース242の周方向に沿った透孔244の中間部よりも巻取方向側で透孔244の内周部から内方側へ延出されている。ストッパ250の内周形状は小径部248の外周形状に対応しており、ストッパ250の内周側を結合ピン246の小径部248は通過した状態では、ストッパ250のスプール18側の面が結合ピン本体136の基端部の端面のうち小径部248の外側の部分と対向する。
したがって、この状態で結合孔140から抜け出る方向へ結合ピン246は移動しようとすると、結合ピン本体136の基端部の端面にストッパ250のスプール18側の面が干渉する。このため、この状態では、結合孔140から抜け出る方向へ結合ピン246が移動することはできない。但し、上記のように、透孔244は長孔とされているため、ロックベース242の周方向に沿った引出方向側の透孔244の端部に結合ピン246の結合ピン本体136が当接した状態では、ストッパ250のスプール18側の面と結合ピン本体136の基端部の端面との対向状態が解消されるので、結合孔140から抜け出る方向へ結合ピン246が移動することができる。
一方、本ウエビング巻取装置240はスライダ110を備えておらず、代わりに切替部材として切替手段を構成するスライダ252を備えている。スライダ252は全体的に矩形のブロック状に形成されており、スライダ110と同様にガイド壁102に案内されてスライダ252の半径方向にスライド可能であると共に、圧縮コイルばね148の付勢力でストッパ146に当接させられている。
このロックベース242には少なくとも円孔96の底面側の端面にて開口した(本実施の形態では、円孔96の底面側の端面とその反対側の端面の双方にて開口した貫通形状)の退避孔254が形成されている。退避孔254はロックベース242の半径方向に沿ったスライダ252の中間部よりも外方側に形成されており、結合孔140から抜け出る方向へ移動した結合ピン246は小径部248を含む結合ピン246の基端側が退避孔254に入り込む。
スライダ252における退避孔254の形成位置よりもロックベース242の半径方向内方側の部分はストッパ256とされており、ガイド壁102に案内されてスライダ252がロックベース242の半径方向外側へスライドすると、上記の透孔244と退避孔254との対向状態が解消されて、スライダ252のストッパ256が透孔244を閉止する。したがって、この状態では、結合孔140から抜け出る方向へ結合ピン246が移動しようとすると、0258がストッパ256に干渉されるので、結合孔140から抜け出る方向へ結合ピン246が移動することはできない。
<第3の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置240では、図17の(A)から(C)に示されるように、通常の状態で結合ピン本体136(結合ピン246)の中間部よりも基端側が透孔244の巻取方向側の端部に当接している。この状態で結合孔140から抜け出る方向へ結合ピン246が移動しようとすると、ストッパ250が結合ピン本体136の基端部の端面に干渉するので結合ピン246は結合孔140から抜け出ることができない。
一方、プリテンショナ80が作動してロックベース242が巻取方向に回転すると、このときにロックベース242に付与される巻取方向への回転加速度によって生じる遠心力で、図18の(A)に示されるように、スライダ252が圧縮コイルばね148の付勢力に抗してロックベース242の回転半径方向外方へスライドする。また、このときのロックベース242の巻取方向への回転で、スプール18に対してスライダ252が巻取方向に相対回転しようとする。
しかしながら、図18の(B)に示されるように、結合ピン246が透孔244の引出方向側の端部に当接することで、スプール18に対するそれ以上のスライダ252の巻取方向への相対回転が規制される。これにより、ピニオンギヤ90の巻取方向の回転力がロックベース54に付与された際の巻取方向へのロックベース54の回転の初期にトーションシャフト24のトーションシャフト本体26で捩じれが生じることを効果的に抑制できる。
また、この状態では、図18の(A)から(C)に示されるように、ストッパ250と結合ピン本体136の基端部の端面との対向状態が解消されるが、この状態では、図18の(A)に示されるように、スライダ252がロックベース242の回転半径方向外方へスライドしているので、透孔244がスライダ252のストッパ256によって閉止される。このため、この状態で結合孔140から抜け出る方向へ結合ピン246が移動しようとすると、結合ピン246の小径部248がストッパ256に干渉されるので、結合孔140から抜け出る方向へ結合ピン246が移動することができない。これにより、スプール18に対するスライダ252の巻取方向への相対回転の規制を維持できる。
次いで、このような状態から、車両が急減速することで車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張り、これによりスプール18に付与された引出方向への回転力が付与されると、スプール18の引出方向への回転力がロックベース242の巻取方向への回転力を相殺してロックベース242を停止させる。このようにロックベース242が停止すると、スライダ252をロックベース242の半径方向外方へスライドさせる遠心力が解消され、図19の(A)に示されるように、スライダ252は圧縮コイルばね148の付勢力でストッパ146に当接するまでスライドする。このように、ストッパ250がスライドすると退避孔254と透孔244とが対向する。
次いで、車両前方側へ慣性移動しようとする乗員の身体がウエビングベルト20を引っ張ることによってトーションシャフト本体26の機械的な強度を上回る引出方向への回転力が付与されたスプール18は、トーションシャフト24のトーションシャフト本体26を捩じり変形させつつロックパウル70によって引出方向への回転が規制されたロックベース242に対し引出方向に相対回転する。
ここで、この状態では、図19の(A)から(C)に示されるように、退避孔254と透孔244とが対向しており、しかも、ストッパ250と結合ピン本体136の基端部の端面との対向状態が解消されている。したがって、スライダ252に対するスプール18の巻取方向への相対回転が生じると、結合孔140の斜面142が結合ピン本体136(結合ピン246)の先端を押圧して、図20の(A)から(C)に示されるように、結合孔140から結合ピン246を押し出す(すなわち、結合ピン246を解除方向へ移動させる)。このようにして結合ピン246によるスプール18とロックベース242との相対回転の規制が解消されると共に、トーションシャフト24のトーションシャフト本体26に捩じれ変形が生じる。
このように、本ウエビング巻取装置240では、プリテンショナ80が作動してロックベース54が巻取方向に回転した際には、ロックベース54に対するスプール18の相対回転を効果的に抑制でき、これにより、プリテンショナ80の作動によってトーションシャフト24のトーションシャフト本体26に捩じりを生じさせることを効果的に抑制できる。
さらに、トーションシャフト本体26の機械的強度を上回る力でウエビングベルト20が引っ張られ、これにより、プリテンショナ80によるロックベース54の巻取方向への回転が停止した際には、特に大きな荷重を要することなく結合ピン246の結合ピン本体136を結合孔140から抜き取ってロックベース242に対するスプール18の相対回転の規制を解消できる。これにより、トーションシャフト24のトーションシャフト本体26に捩じり変形が生じる際に、トーションシャフト本体26の捩じり変形に要する荷重に更に荷重が重畳されることを防止又は効果的に抑制できる。
なお、上記の各実施の形態では、スプール側回転規制部としての結合孔140や結合孔210から結合ピン132、202、246が抜け出ることで、結合ピン132、202、246によるスプール18とロックベース54、172、242との相対回転規制が解消される構成であった。しかしながら、本発明の観点からすれば、本発明がこのような構成に限定されるものではない。
例えば、スライダ110、180、252等の切替手段をロックベース54、172、242にではなくスプール18に設けると共に、第1の実施の形態から第3の実施の形態の各々で説明した切替手段の動作によって結合ピン132、202、246が透孔138から抜け出る構成とし、結合ピン132、202、246が透孔138から抜け出ることでスプール18とロックベース54、172、242との相対回転規制が解消される構成としてもよい。