(第1の実施の形態)
以下、図面に基づき、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12と、フレーム12の内側に配置された略円筒形状のスプール20と、乗員の身体を拘束するためのウェビング32(図2参照)と、スプール20の軸心部に配置されたトーションシャフト34と、移動機構70と、を含んで構成されている。また、図2に示すように、スプール20の軸方向一側(図2等の矢印C方向側)には、ロック機構50及びセンサ機構80が設けられており、スプール20の軸方向他側(図2等の矢印D方向側)には、プリテンショナ機構110及び切替機構128が設けられている。以下、それぞれの構成について説明する。
フレーム12は、車体に固定される板状の背板14を備えている。この背板14の幅方向両端部からは脚片16,18が略直角に延出されており、フレーム12は、平面視で略凹形状に形成されている。脚板16及び脚板18には、それぞれ円形状の配置孔16A及び配置孔18Aが貫通形成されており(図3参照)、配置孔16Aの内周部の全体には、ラチェット歯16B(内歯)が形成されている。
図3に示すように、スプール20は、脚片16と脚片18との間に配置孔16A、18Aと同軸上に配置されており、スプール20の軸心部には、シャフト収容部22が貫通形成されている。このシャフト収容部22内には、後述するメイントーションシャフト36とサブトーションシャフト42の一部とが挿入されており、このメイントーションシャフト36及びサブトーションシャフト42を介してスプール20がフレーム12に回転可能に支持されている。
また、スプール20のシャフト収容部22内には、スプール20の軸方向中間部において、略環状の第1環状壁24がスプール20と一体に形成されている。この第1環状壁24の内周部はメイン被係合部26とされており、メイン被係合部26はスプール20の軸方向視にてスプライン状に形成されている。また、スプール20のシャフト収容部22内には、脚片16側の位置において、略環状の第2環状壁28がスプール20と一体に形成されている。そして、第1環状壁24及び第2環状壁28には、後述するトリガワイヤ76を支持するための一対の第1支持孔24A及び第2支持孔28Aがそれぞれ貫通形成されている。この第1支持孔24A及び第2支持孔28Aは、断面円形状に形成されて、スプール20の軸方向と平行に配置されている。
さらに、シャフト収容部22における脚片18側の内周部は、サブ被係合部30とされており、サブ被係合部30はスプール20の軸方向視にてスプライン状に形成されている。
図2に示されるように、ウェビング32は長尺帯状に形成されており、ウェビング32の長手方向一端部(基端部)がスプール20に連結固定されている。そして、スプール20が巻取方向(図2等の矢印A方向)へ回転されることで、ウェビング32が自身の基端側からスプール20の外周部に層状に巻取られ、ウェビング32の長手方向他端部(先端部)側を引張ることで、スプール20が引出方向(図2等の矢印B方向)へ回転されて、ウェビング32がスプール20から引出されるように構成されている。
[トーションシャフト34について]
図1〜図4に示すように、トーションシャフト34は、「第1軸部」としてのメイントーションシャフト36と、「第2軸部」としてのサブトーションシャフト42と、を含んで構成されており、メイントーションシャフト36とサブトーションシャフト42とは別体に構成されている。
メイントーションシャフト36は、スプール20のシャフト収容部22内に挿入されて、スプール20と同軸上に配置されている。メイントーションシャフト36の一端部(図1等の矢印C方向側の端部)には、後述するロックベース52と結合される「結合部」としてのメイン結合部38が形成されており、メイン結合部38の外周部はスプライン状に形成されている。また、メイントーションシャフト36の他端部(図1等の矢印D方向側の端部)には、メイン係合部40が形成されており、メイン係合部40の外周部は、前述したスプール20のメイン被係合部26に対応して、スプライン状に形成されている。そして、メイン係合部40はメイン被係合部26内に嵌入されており、これにより、メイントーションシャフト36がスプール20に一体回転可能に連結されている。さらに、メイン係合部40とメイン結合部38との間の部分が、メインエネルギ吸収部36Aとされており、メインエネルギ吸収部36Aは断面円形のシャフト状を成している。
サブトーションシャフト42は、メイントーションシャフト36のスプール20の軸方向他側に配置されると共に、メイントーションシャフト36と同軸上に配置されている。サブトーションシャフト42の一端部(図1等の矢印C方向側の端部)には、サブ係合部44が形成されている。サブ係合部44の外周部は、スプール20のサブ被係合部30に対応してスプライン状に形成されており、サブ係合部44の外周部には複数の係合歯44Aが形成されている。そして、サブ係合部44は、サブ被係合部30内に移動可能に挿入されると共に、サブ被係合部30に一体回転可能に係合されている。これにより、サブトーションシャフト42は、スプール20と一体回転可能にされると共に、スプール20の軸方向(図1等の矢印C方向及び矢印D方向)に移動可能に構成されている。
サブトーションシャフト42の他端部(図1等の矢印D方向側の端部)には、後述するクラッチ130のスリーブ138と嵌合されるサブ嵌合部46が形成されており、サブ嵌合部46の外周部は、スプライン状に形成されている。さらに、サブ係合部44とサブ嵌合部46との間の部分が、サブエネルギ吸収部42Aとされており、サブエネルギ吸収部42Aは断面円形のシャフト状を成している。また、サブ嵌合部46のサブエネルギ吸収部42Aとは反対側の部分には、後述する切替機構128のトリガプレート132を支持するための軸部48が形成されており、軸部48は円柱状に形成されてサブトーションシャフト42と同軸状に配置されている。
図3に示すように、サブ係合部44のスプール20の軸方向他側には、付勢スプリング33が設けられている。この付勢スプリング33は、圧縮コイルスプリングとして構成されており、付勢スプリング33内にサブエネルギ吸収部42Aが挿入されている。また、付勢スプリング33の一端部はサブ係合部44に当接されると共に、付勢スプリング33の他端部は、後述するプリテンショナ機構110のスリーブ112に当接されている。これにより、サブトーションシャフト42は、付勢スプリング33によって、スプール20の軸方向一側へ付勢されて、スプール20の環状壁24に当接されている。
また、後述するように、メインエネルギ吸収部36A及びサブエネルギ吸収部42Aが捩れ変形することで、ウェビング32の引張りに供される乗員の運動エネルギをメインエネルギ吸収部36A及びサブエネルギ吸収部42Aが吸収するように構成されている。さらに、メインエネルギ吸収部36Aにおける機械的強度が、サブエネルギ吸収部42Aにおける機械的強度に比して、高く設定されている。
[ロック機構50について]
図2に示すように、ロック機構50は、「ロック部」としてのロックベース52とロックプレート66とを含んで構成されて、スプール20の脚片16側の端部に設けられている。
図3にも示すように、ロックベース52は、略円盤状のベース部54と、このベース部54の中央部からスプール20側へ突出された略円筒形状の筒部56と、を有している。そして、筒部56は、スプール20のシャフト収容部22内に相対回転可能に挿入されている。この筒部56の軸心部には、「被結合部」としての被結合孔58が形成されている。この被結合孔58の内周部は、前述したメイントーションシャフト36のメイン結合部38に対応して、スプライン状に形成されており、被結合孔58内にメイン結合部38が嵌入されている。これにより、ロックベース52がメイントーションシャフト36に一体回転可能に結合されている。
また、筒部56における脚片18側面が後述する移動機構70の一部を構成するカム部72とされている(図1参照)。
さらに、ベース部54の筒部56とは反対側面には、支持軸60が設けられており、支持軸60は、円柱状に形成されると共に、ベース部54の軸心部からスプール20とは反対側へ突出されている。図2に示すように、ベース部54には、後述するセンサ機構80のリターンスプリング96の端部を係止するための係止凸部62が設けられている。また、ベース部54には、後述するロックプレート66を収容するための移動溝64が形成されており、移動溝64はロックベース52の径方向外側へ開放されている。
ロックプレート66は、スプール20の軸方向視にて略三角形板状に形成されて、ロックベース52の移動溝64内に移動可能に配置されている。ロックプレート66には、円柱状の案内突起68が一体に形成されおり、案内突起68は、ロックプレート66からスプール20とは反対側へ突出されている。また、ロックプレート66の一端部には、ラチェット歯66Aが形成されており、ロックプレート66が移動溝64内をロックベース52の径方向外側へ移動されることで、ラチェット歯66Aが、フレーム12のラチェット歯16Bに噛合されるように構成されている。
[移動機構70について]
図1に示すように、移動機構70は、前述したロックベース52に形成されたカム部72と、「移動部材」としての一対のトリガワイヤ76と、を含んで構成されている。
このカム部72は、一般面73を有しており、一般面73はスプール20の軸方向に対して直交する方向に沿って配置されている。そして、一般面73の外周部には、一対の凹部74が形成されており、凹部74は、筒部56の径方向外側から見て略V字形状に形成されて、スプール20の軸方向他側へ開放されている。これにより、凹部74の内周面の一部が、引出方向(図1の矢印B方向)へ向かうに従いスプール20の軸方向他側へ傾斜されて、この傾斜された面が傾斜部75とされており、この傾斜部75と一般面73とが接続されている。
トリガワイヤ76は、略長尺棒状に形成されて、長手方向をスプール20の軸方向と平行にして、スプール20の第1支持孔24A及び第2支持孔28A内に移動可能に挿入されている(図3参照)。これにより、トリガワイヤ76は、スプール20と一体回転可能にされている。そして、トリガワイヤ76の長手方向両端部は、略半球状に形成されており、トリガワイヤ76の一端部が、ロックベース52の凹部74内に配置されると共に、トリガワイヤ76の他端部が、サブトーションシャフト42の係合歯44Aに当接されている。
[センサ機構80について]
図2に示すように、センサ機構80は、センサホルダ82と、Vギヤ88と、Wパウル104と、を含んで構成されて、フレーム12の脚片16の外側に配置されている。
センサホルダ82は、脚片16側へ開放された凹状に形成されて、脚片16に固定されている。このセンサホルダ82の内側には、ラチェット歯84(内歯)がリング状に形成されており(図5(A)及び(B)参照)、ラチェット歯84は後述するWパウル104の係合歯104Aに対応している。
また、センサホルダ82内には、略円筒状のブッシュ86が設けられている。このブッシュ86は、スプール20と同軸上に配置されて、センサホルダ82に回転可能に支持されている。そして、ブッシュ86内には、ロックベース52の支持軸60の先端部が挿入されており、これにより、ロックベース52(スプール20)がセンサホルダ82に回転可能に支持されている。
Vギヤ88は、前述したロックベース52とセンサホルダ82との間に配置されて、センサホルダ82内に収容されている。Vギヤ88は略円盤状に形成されており、Vギヤ88の外周部には、複数のロック歯90が形成されている。また、Vギヤ88の軸心部には、貫通孔92が形成されており、この貫通孔92内には、ロックベース52の支持軸60が貫通されている。これにより、Vギヤ88が、支持軸60に回転可能に支持されている。
図5(A)に示すように、Vギヤ88のロックベース52側の側面には、係止突起94が設けられている。この係止突起94と前述したロックベース52の係止凸部62との間には、リターンスプリング96が架け渡されており、リターンスプリング96は、圧縮コイルスプリングとして構成されて、Vギヤ88をロックベース52に対して引出方向(図5(A)の矢印B方向)へ付勢している。
また、Vギヤ88のロックベース52側の側面には、図示しない長尺状の案内溝が形成されており、この案内溝内には、前述したロックプレート66の案内突起68の先端部が挿入されている。そして、案内突起68は、リターンスプリング96の付勢力によって案内溝の一端に係止されている。これにより、案内溝の一端の位置において、リターンスプリング96によるVギヤ88のロックベース52に対する引出方向側への回転が制限されて、通常では、Vギヤ88はロックベース52(スプール20)と一体回転可能に構成されている。
さらに、Vギヤ88には、収容凹部98が形成されており、収容凹部98はセンサホルダ82側へ向けて開放されている。この収容凹部98には、円柱状のパウル支持軸100が設けられると共に、パウル支持軸100の引出方向側の位置に略矩形柱状のパウルストッパ102が設けられている。
Wパウル104は、スプール20の軸方向一側から見て略C字形板状に形成されている。また、Wパウル104は、収容凹部98内に配置されると共に、パウル支持軸100に揺動可能に軸支されている。
さらに、収容凹部98内には、センサスプリング108が設けられており、センサスプリング108は、板ばねにより構成されて、L字形状に屈曲されている。このセンサスプリング108の長手方向一端部はWパウル104に係止されると共に、センサスプリング108の長手方向他端部はVギヤ88に係止されており、センサスプリング108は、Wパウル104をパウル支持軸100の軸周りに引出方向側へ付勢している。
また、Wパウル104の他端(引出方向側端)には係合歯104Aが形成されており、センサスプリング108の付勢力によって係合歯104Aはパウルストッパ102に当接されている(以下、この位置を「待機位置」という)。また、Wパウル104がパウル支持軸100の軸周りにロック方向(図5(A)の矢印F方向)へ揺動されることで、係合歯104Aがセンサホルダ82のラチェット歯84に噛合されて、Vギヤ88の引出方向への回転が制限されるように構成されている(図5(B)参照)。なお、この状態では、Vギヤ88の巻取方向への回転は許可されるようになっている。一方、図5(B)に示す状態からWパウル104が待機位置側へ揺動されることで、係合歯104Aがラチェット歯84から離間されて、Vギヤ88の引出方向への回転規制が解除されるように構成されている。
また、センサ機構80は、Vギヤ88の下方の位置において、従来周知の加速度センサ(図示省略)を備えている。この加速度センサは、センサハウジングと、該センサハウジング上に配置された球状のボールと、該ボールに当接されかつ該センサハウジングに揺動可能に設けられたセンサレバーと、を備えている。そして、ボールがセンサハウジング上を転動することで、センサレバーが、揺動されて、Vギヤ88のロック歯90に係合されるようになっている。これにより、この場合においても、Vギヤ88の引出方向への回転が制限されるように構成されている(Vギヤ88の巻取方向への回転は許可される)。
ここで、スプール20及びVギヤ88が引出方向へ回転される状態において、Vギヤ88の引出方向への回転が制限される際には、ロックベース52がリターンスプリング96の付勢力に抗してVギヤ88に対して引出方向(図5(A)の矢印B方向)へ相対回転される。この際には、ロックプレート66の案内突起68がVギヤ88の案内溝の一端から他端へ移動されて、ロックプレート66がロックベース52の径方向外側へ移動されるようになっている。これにより、ロックプレート66のラチェット歯66Aが、フレーム12のラチェット歯16Bに噛合されるように構成されている。
[プリテンショナ機構110について]
図3に示されるように、プリテンショナ機構110は、ケース111と、スリーブ112と、クラッチ114と、ローラ122と、ピストン124(図2参照)と、を含んで構成されて、フレーム12の脚片18の外側に配置されている。ケース111は、フレーム12の脚片18側へ開放された凹状を成して、脚片18に固定されている。
スリーブ112は、略円筒形状に形成されており、スプール20と同軸上に配置されている。このスリーブ112におけるスプール20の軸方向一側の外周部は、スプライン状に形成されてスプール20のサブ被係合部30内に嵌入されている。これにより、スリーブ112がスプール20に一体回転可能に固定されている。
また、スリーブ112におけるスプール20とは反対側の外周部には、フランジ112Aが形成されており、フランジ112Aは脚片18の外側に配置されている。このフランジ112Aの外周部には、平目のローレット加工が施されている。
クラッチ114は、脚片18側へ開放された略有底円筒状に形成されると共に、スプール20と同軸上に配置されて、ケース111に回転可能に支持されている。このクラッチ114の底壁には、軸心部において、円形状の挿通孔114Aが貫通形成されており、この挿通孔114A内に、サブトーションシャフト42のサブエネルギ吸収部42Aが貫通されると共に、クラッチ114の内側にスリーブ112のフランジ112Aが配置されている。
また、クラッチ114の底壁には、脚片18とは反対側の部分において、環状のピニオン116が一体に設けられている。このピニオン116はクラッチ114と同軸上に配置されており、ピニオン116の外周部には、ピニオン歯118が形成されている。
図2に示すように、クラッチ114の内側には、後述するローラ122を収容するためのローラ収容凹部120が3箇所形成されている。このローラ収容凹部120は、脚片18側から見てクラッチ114の中心軸側へ開放された略U字形状に湾曲された内周面120Aを有すると共に、クラッチ114の周方向に120°毎に配置されて互いに連通している。そして、この内周面120Aとスリーブ112のフランジ112Aとの間の距離が最大になる部分が幅広部とされており、幅広部から巻取方向へ向かうに従いローラ収容凹部120の内周面120Aとフランジ112Aとの間の距離が短くなるように設定されている。さらに、ローラ収容凹部120の内周面には、平目のローレット加工が施されている。
ローラ122は、円柱状に形成されて、軸方向をスプール20の軸方向と平行にして、3箇所のローラ収容凹部120における幅広部にそれぞれ設けられている。また、ローラ122の外周部には、平目のローレット加工が施されている。
ピストン124は、クラッチ114のピニオン116の下方に配置されて、プリテンショナ機構110を構成する円筒状のシリンダ(図示省略)内に挿入されている。このピストン124には、ラック126が形成されており、ラック126はピニオン116のピニオン歯118に噛合可能に構成されている。さらに、シリンダの下端部内には、ガスジェネレータ(図示省略)が設けられており、このガスジェネレータは、車両の制御装置(図示省略)に電気的に接続されている。そして、制御装置の制御によってガスジェネレータが作動された際には、ガスジェネレータがガスを発生すると共に、当該ガスがシリンダ内に供給されて、ピストン124のラック126がピニオン116のピニオン歯118に噛合されるように構成されている。
[切替機構128について]
切替機構128は、クラッチ130(図2参照)と、切替機構部190(図7参照)、を含んで構成されて、フレーム12の脚片18の外側に配置されている。
(クラッチ130について)
図2に示すように、クラッチ130は、トリガプレート132(広義には、「係止部材」として把握される要素である)と、スリーブ138と、クラッチガイド146と、クラッチベース164と、クラッチカバー170と、一対のクラッチプレート180と、一対のクラッチスプリング184と、を含んで構成されている。
トリガプレート132は、中央部に円孔134が貫通形成された略細幅板状に形成されている。この円孔134内には、サブトーションシャフト42の軸部48が挿入されており、これにより、トリガプレート132が、サブトーションシャフト42に回転可能に支持されている。また、サブトーションシャフト42の軸部48の先端には、Eリング186が嵌合されており、これにより、トリガプレート132のサブトーションシャフト42に対する軸方向の相対移動が抑制されている。さらに、トリガプレート132の長手方向両端部は、スプール20側へ向けて屈曲されており、この屈曲された部分が係止部136とされている。
スリーブ138は、略円筒形状に形成されると共に、サブトーションシャフト42と同軸上に配置されて、ケース111に回転可能に支持されている。このスリーブ138の軸心部には、貫通孔140が形成されており、貫通孔140は、前述したサブトーションシャフト42のサブ嵌合部46に対応してスプライン状に形成されている。そして、この貫通孔140内に、サブ嵌合部46が軸方向に移動可能に挿入されている。これにより、スリーブ138はサブトーションシャフト42に一体回転可能に嵌合されると共に、サブトーションシャフト42がスリーブ138に対してスプール20の軸方向に相対移動可能に構成されている。
また、このスリーブ138における軸方向一側(図2の矢印C方向側)の部分は、六角形状の外形を有する嵌合部142として構成されており、このスリーブ138における嵌合部142より軸方向他側(図2の矢印D方向側)の部分は、円形状の外形を有する支持部144として構成されている。
クラッチガイド146は、軸方向に貫通する貫通孔148を有する環状に形成されている。この貫通孔148内には、スリーブ138の支持部144が挿入されており、これにより、クラッチガイド146は、スリーブ138に相対回転可能に支持されている。
図6(A)に示すように、クラッチガイド146における周方向の二箇所の位置には、後述するクラッチスプリング184を収容するための一対のスプリング収容部150が形成されている。これらのスプリング収容部150は、クラッチガイド146の中央部を中心とする点対称状に形成されており、それぞれ、クラッチガイド146の周方向に延びる外側壁部152及び内側壁部154と、クラッチガイド146の径方向に延びて外側壁部152と内側壁部154の各端部を連結する連結壁部156と、を有する略U字形状に形成されている。
また、このクラッチガイド146には、後述するクラッチプレート180を収容するための一対のクラッチプレート収容部158が各スプリング収容部150に隣接して形成されている。これらのクラッチプレート収容部158には、第一支持壁部160が形成されており、第一支持壁部160は、連結壁部156から内側壁部154とは反対側に向けて延びている。また、クラッチプレート収容部158には、第二支持壁部162が形成されており、第二支持壁部162は、連結壁部156に対する外側壁部152とは反対側に連結壁部156と離間して配置されている。
図2に示すように、クラッチベース164は、六角形状を成す環状の被嵌合部166を有して構成されている。この被嵌合部166の内側には、スリーブ138の嵌合部142が嵌入されており、これにより、クラッチベース164は、スリーブ138に一体回転可能に固定されている。また、このクラッチベース164は、一対の係止部168を有しており、各々の係止部168は、被嵌合部166から外側へ突出されて、後述するクラッチプレート180の基端部と係止されている。
クラッチカバー170は、軸方向に貫通する貫通孔172を有する環状に形成されて、スリーブ138と同軸上に配置されると共に、クラッチガイド146と対向して配置されている。クラッチカバー170の内周部には、複数(本実施の形態では6つ)の嵌合爪174が形成されており、嵌合爪174はクラッチカバー170の径方向内側に突出されている。そして、貫通孔172内にスリーブ138の嵌合部142が挿入されると共に、各嵌合爪174が嵌合部142と嵌合されることにより、クラッチカバー170が、スリーブ138に一体回転可能に固定されている。また、後述する十字爪178がクラッチガイド146に対して周方向に係合するようになっており、クラッチガイド146は、このクラッチカバー170に対して、図6(B)に示される作動位置と、図6(A)に示される非作動位置との間で相対回転可能とされている。
クラッチカバー170の外周部には、軸方向から見て径方向外側へ開放された一対の切欠部176が形成されている。また、クラッチカバー170には、各切欠部176の内側の位置において、一対の十字爪178が形成されている。これら一対の十字爪178は、クラッチカバー170の中央部を中心とする点対称状に形成されている。また、これらの十字爪178は、クラッチカバー170の径方向から見てクランク状に屈曲しており、先端側が基端側よりもクラッチガイド146側へ突出されている。
図6(A)に示すように、各十字爪178の先端側には、クラッチガイド146の径方向内側へ突出した内側突出部と、クラッチガイド146の径方向外側へ突出した外側突出部と、クラッチガイド146の巻取方向(図6の矢印A方向)へ突出した周方向突出部とが設けられており、各十字爪178の先端側は、クラッチガイド146の軸方向から見て十字状に形成されている。
クラッチプレート180は、略扇形板状に形成されると共に、クラッチガイド146のクラッチプレート収容部158内に収容されて、クラッチカバー170によって覆われている。このクラッチプレート180の基端部には回動軸182が形成されており、回動軸182は、円柱状に形成されると共に、クラッチカバー170側に突出されている。そして、この回動軸182がクラッチカバー170に形成された孔部171に挿入されることにより、クラッチプレート180が、クラッチカバー170に回動可能に支持されている。また、クラッチプレート180の先端部には、平歯状のローレット歯180Aが形成されている。
また、上述のクラッチガイド146及びクラッチカバー170には、孔部147、173がそれぞれ形成されている。これらの孔部147、173は、クラッチガイド146がクラッチカバー170に対して非作動位置に配置された状態で互いに対向するように形成されており、これらの孔部147、173には、トリガプレート132の係止部136がそれぞれ挿入されている。そして、クラッチガイド146は、非作動位置に配置された状態でスプール20及びクラッチカバー170に対する相対回転を制限されている(クラッチガイド146が非作動位置に拘束されている)。
さらに、上述したように、クラッチガイド146が非作動位置に拘束された状態では、クラッチガイド146の各スプリング収容部150における開口部付近に、クラッチカバー170の各十字爪178が位置される。そして、各十字爪178の周方向突出部は、各スプリング収容部150に収容されたクラッチスプリング184の軸方向一端部から当該クラッチスプリング184の内側に挿入されており、各十字爪178の内側突出部及び外側突出部は、クラッチスプリング184の軸方向一端部に当接している。これにより、クラッチスプリング184の軸方向一端部が各十字爪178に係止されている。また、このクラッチスプリング184の軸方向他端部は、スプリング収容部150の連結壁部156に係止されており、これにより、クラッチスプリング184によって、クラッチガイド146が、クラッチカバー170に対して巻取方向へ付勢されると共に、作動位置側へ付勢されている。
一方、この非作動位置の状態では、クラッチプレート180のローレット歯180Aがクラッチガイド146の外周部よりも内側に納まるように、クラッチプレート180がクラッチプレート収容部158に収容される。
(切替機構部190について)
図7に示すように、切替機構部190は、ボディ192と、ロックリング200(広義には「回転体」として把握される要素である)と、FLパウル204と、シリンダ214と、ピストン216と、ガスジェネレータ218と、を含んで構成されている。
ボディ192は、脚片18側(図7の矢印C方向側)へ開放された略箱状に形成されて、脚片18の外側に固定されている。また、ボディ192内には、前述したクラッチ130が配置されている。
また、ボディ192の上部には、脚片18とは反対側の部分において、後述するガスジェネレータ218を収容するためのガスジェネレータ収容部194が設けられている。このガスジェネレータ収容部194は、略有底円筒状に形成されて、軸方向を脚片18の延出方向にして配置されると共に、後述するシリンダ214と連通されている。
ロックリング200は、略円環板状に形成されて、ボディ192内に配置されている。このロックリング200のボディ192側面には、円環状の溝部(図示省略)が形成されており、この溝部内にボディ192に形成された円環状の凸部が挿入されて、ロックリング200がボディ192に回転自在に支持されている。また、ロックリング200は、前述したクラッチガイド146の外周側において、クラッチガイド146と同軸上に配置されている。このロックリング200の内周全体には、平歯状のローレット歯200Aが形成されており、このローレット歯200Aは、前述したクラッチプレート180のローレット歯180Aと噛合可能に構成されている。さらに、ロックリング200の外周部には、被係合部202が形成されており、被係合部202は、軸方向視にてロックリング200の径方向外側へ開放されて、後述するFLパウル204と係合可能に構成されている。
FLパウル204は、略板状に形成されると共に、ロックリング200の上側において、ボディ192内に収容されている。FLパウル204の下部には、断面略円形状のパウル側軸部206が形成されており、パウル側軸部206は、ボディ192に回動自在に支持されている。また、FLパウル204は、略L字形状のアーム部208を有している。アーム部208の下端部には、ロック部210が形成されており、ロック部210は、ロックリング200の被係合部202内に配置されて、ロックリング200に係合されている。さらに、アーム部208の下部には、断面円形状の係止孔212が貫通形成されている。この係止孔212内には、ボディ192に設けられたシェアピン(図示省略)が挿通されており、これにより、FLパウル204の回動が制限されて、FLパウル204によって、ロックリング200の回転が阻止されている。一方、FLパウル204に回動力が作用して、FLパウル204がボディ192のシェアピンを破断させることで、FLパウル204と被係合部202との係合が解除されて、ロックリング200の回転が許可されるように構成されている。
シリンダ214は、平面視で略L字形の筒状に形成されると共に、FLパウル204の引出方向側の位置において、ボディ192内に収容されている。またシリンダ214は、ガスジェネレータ収容部194と連通されている。
ピストン216は、略直方体状に形成されて、ピストン216の一端部が、FLパウル204のアーム部208の上端部209の側方に配置されている。また、ピストン216の他端部は、シリンダ214内に挿入されており、後述するガスジェネレータ218の作動によって、ピストン216が図7の矢印G方向に移動されるように構成されている。
ガスジェネレータ218は、略円柱状に形成されており、ボディ192のガスジェネレータ収容部194内に配置されている。このガスジェネレータ218は、車両の制御装置(図示省略)に電気的に接続されている。そして、制御装置の制御によってガスジェネレータ218が作動された際には、ガスジェネレータ218がガスを発生すると共に、当該ガスがシリンダ214内に供給されて、ピストン216がFLパウル204の上端部209側へ移動されるように構成されている。
また、制御装置は、図示しない衝突検出手段と電気的に接続されている。衝突検出手段は、例えば、車両の加速度(特に急減速)を検知する加速度センサや車両前方の障害物までの距離を検出する距離センサ等によって、車両の衝突を予知する。また、予め定められた基準値以上の衝突加速度を加速度センサが検知することで、車両が衝突したことを衝突検出手段が検出するように構成されており、この際には、制御装置によりプリテンショナ機構110のガスジェネレータが作動されるように構成されている。
さらに、制御装置は、図示しない体格検出手段と電気的に接続されており、体格検出手段は、例えば、荷重センサやベルトセンサやシートポジションセンサ等によって、座席に着座した乗員の体格を検出するようになっている。具体的には、荷重センサが、車両の座席に作用する荷重を検出して、検出された荷重によって体格検出手段が乗員の体格を検出する。また、ベルトセンサが、スプール20からのウェビング32の引出量を検出して、検出された引出量によって体格検出手段が乗員の体格を検出する。さらに、シートポジションセンサは、車両の座席の前後方向へのスライド位置を検出する位置検出センサや車室に設けられたカメラサンサによって構成されており、シートポジションセンサで検出された座席の位置によって体格検出手段が乗員の体格を検出する。
そして、制御装置が、体格検出手段からの信号に基づいて、乗員の体格が予め定められた基準値未満であると判定すると共に、衝突検出手段からの信号に基づいて、車両が衝突したと判定した場合に、制御装置により切替機構128のガスジェネレータ218及びプリテンショナ機構110のガスジェネレータが作動されるように構成されている。
次に第1の実施の形態における作用及び効果について説明する。
まず、ウェビング32の先端側を引張ることで、ウェビング32が、スプール20から引出されて乗員の身体に装着される。
[ロック機構50の作動について]
ウェビング32が乗員の身体に装着された状態で、例えば、車両が急減速状態になり、センサ機構80の加速度センサのボールがセンサハウジング上を転動すると、センサレバーが揺動される。これにより、センサレバーがVギヤ88のロック歯90に係合されて、Vギヤ88の引出方向への回転が制限される。
また、ウェビング32が乗員の身体に装着された状態で、例えば、慣性力によって乗員の身体が略車両前方側へ移動してウェビング32を急激に引張ることで、スプール20(メイントーションシャフト36及びサブトーションシャフト42を含む)が急激に引出方向へ回転されると、Vギヤ88がWパウル104と共に引出方向へ急激に回転される。この際には、Wパウル104は、慣性力によってVギヤ88に対し回転せずにその位置に留まろうとし、センサスプリング108の付勢力に抗してVギヤ88に対し相対的にロック方向(図5(A)の矢印F方向)へ揺動される。これにより、Wパウル104の係合歯104Aがセンサホルダ82のラチェット歯84に噛合されることで(図5(B)に示す状態である)、Vギヤ88の引出方向への回転が制限される。
このように、車両急減速時及びスプール20が急激に引出方向へ回転した時の少なくも一方の時にVギヤ88の引出方向への回転が制限されると、ロックベース52(スプール20)がリターンスプリング96の付勢力に抗してVギヤ88に対して引出方向へ相対回転される。つまり、Vギヤ88がロックベース52に対して巻取方向へ相対回転される。
ロックベース52(スプール20)がVギヤ88に対して引出方向へ相対回転されると、ロックプレート66の案内突起68がVギヤ88の案内溝の一端から他端へ移動されて、ロックプレート66がロックベース52の径方向外側へ移動される。このため、ロックプレート66のラチェット歯66Aがフレーム12のラチェット歯16Bに噛合される。これにより、ロックベース52及びスプール20の引出方向への回転が阻止される。したがって、スプール20からのウェビング32の引出しが制限されて、車両前方へ移動しようとする乗員の身体がウェビング32によって拘束される。
以上により、車両の急減速時やスプール20が急激に引出方向へ回転される際には、ロック機構50が作動されることで、乗員の身体を拘束できる。
[プリテンショナ機構110の作動について]
車両が衝突したことを衝突検出手段が検出する際(車両の緊急時)には、車両の制御装置によってプリテンショナ機構110が作動される。そして、プリテンショナ機構110のガスジェネレータがガスを発生することで、プリテンショナ機構110のシリンダ内に当該ガスが供給される。これにより、ピストン124が当該シリンダ内を移動して、ピストン124のラック126がピニオン116のピニオン歯118に噛合することで、ピニオン116及びクラッチ114が巻取方向へ回転される。
クラッチ114が巻取方向へ回転されると、クラッチ114のローラ収容凹部120内に配置されたローラ122が幅広部からクラッチ114の周方向へ移動されて、ローラ収容凹部120の内周面120Aとスリーブ112のフランジ112Aとの間に挟みこまれる。そして、ローラ122の外周面、ローラ収容凹部120の内周面、及びフランジ112Aの外周面には、いずれも平目のローレット加工が施されているため、これらが噛み合い状態になる。これにより、クラッチ114とスプール20とが連結されて、スプール20が巻取方向へ回転される。したがって、スプール20にウェビング32が巻取られて、乗員の身体がウェビング32に拘束される。
[切替機構128の作動について]
ロックベース52の引出方向への回転が阻止された状態では、車両前方へ移動しようとする乗員の身体がウェビング32によって拘束される。この状態で、乗員の身体が更に大きな力でウェビング32を引張り、引出方向へのスプール20の回転力がメイントーションシャフト36のメインエネルギ吸収部36Aの耐捩れ荷重(耐変形荷重)を上回ると、メインエネルギ吸収部36Aが捩れ変形してスプール20がロックベース52に対して引出方向へ相対回転される。
ここで、サブトーションシャフト42のサブ係合部44は、スプール20と一体回転可能にかつスプール20の軸方向に移動可能に係合されている。そして、ロックベース52のカム部72には凹部74が形成されており、凹部74の内周部の一部が傾斜部75として構成されて、傾斜部75は、引出方向へ向かうに従いスプール20の軸方向他側へ傾斜されている。さらに、凹部74内にはトリガワイヤ76の一端部が収容されており、トリガワイヤ76の他端部は、サブトーションシャフト42のサブ係合部44における係合歯44Aに当接されている。
これにより、スプール20がロックベース52に対して引出方向へ相対回転されると、トリガワイヤ76がスプール20と共に凹部74(ロックベース52)に対して引出方向へ相対回転される。そして、トリガワイヤ76の一端部が、傾斜部75上を摺動して傾斜部75から一般面73へ移動されることで、トリガワイヤ76がスプール20の軸方向他側へ移動される(図3の矢印D方向参照)。
トリガワイヤ76がスプール20の軸方向他側へ移動される際には、トリガワイヤ76の他端部がサブトーションシャフト42の係合歯44Aを押圧して、サブトーションシャフト42がスプール20の軸方向他側へ移動される。このように、スプール20のロックベース52に対する引出方向への相対回転に連動して、サブトーションシャフト42がスプール20の軸方向他側へ移動される(図4参照)。
そして、サブトーションシャフト42がスプール20の軸方向他側へ移動されると、クラッチ130のトリガプレート132(係止部136)がサブトーションシャフト42と共にスプール20の軸方向他側へ移動されて、係止部136がクラッチカバー170の孔部173から引抜かれる。これにより、サブトーションシャフト42の移動に連動して、クラッチカバー170に対するクラッチガイド146の相対回転の阻止状態が解消される。
クラッチカバー170に対するクラッチガイド146の相対回転の阻止状態が解消されると、クラッチスプリング184の付勢力により、クラッチガイド146が非作動位置から作動位置へと回転されて、クラッチプレート180の先端が連結壁部156によってクラッチガイド146の接線方向に押圧(案内)される。これにより、クラッチプレート180がロックリング200側へ回動されて(図6(A)の矢印G参照)、クラッチプレート180のローレット歯180Aがロックリング200のローレット歯200Aと噛合う(図6(B)図示状態)。したがって、クラッチプレート180とロックリング200とが結合される(サブトーションシャフト42のサブ嵌合部46とロックリング200とが連結される)ため、ロックリング200が、クラッチ130(スリーブ138、クラッチベース164及びクラッチプレート180)と一体に引出方向へ回転しようとする。
また、車両の制御装置は、体格検出手段からの信号に基づいて、乗員の体格が予め定められた基準値以上であるか否かを判定すると共に、衝突検出手段からの信号に基づいて、車両が衝突したか否かを判定している。そして、制御装置が、乗員の体格が予め定められた基準値以上であると判定した場合では、切替機構128のガスジェネレータ218が作動されないため、FLパウル204のロック部210とロックリング200の被係合部202との係合状態が維持されている。このため、ロックリング200の引出方向への回転がロック(阻止)されることで、クラッチ130の引出方向への回転が阻止される。つまり、メイントーションシャフト36のメイン結合部38(一端部)及びサブトーションシャフト42のサブ嵌合部46(他端部)における引出方向への回転が阻止されると共に、メイントーションシャフト36のメイン係合部40(他端部)及びサブトーションシャフト42のサブ係合部44(一端部)にスプール20から引出方向への回転力が作用する。
そして、スプール20の引出方向への回転力が、メイントーションシャフト36のメインエネルギ吸収部36Aの耐捩れ荷重(耐変形荷重)とサブトーションシャフト42のサブエネルギ吸収部42Aの耐捩れ荷重(耐変形荷重)との合計を上回ると、メインエネルギ吸収部36A及びサブエネルギ吸収部42Aの捩れ(変形)により、スプール20の引出方向への回転が許容される。
したがって、メインエネルギ吸収部36A及びサブエネルギ吸収部42Aの捩れ変形によって、ウェビング32による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、メインエネルギ吸収部36A及びサブエネルギ吸収部42Aの捩れ分だけウェビング32の引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
一方、制御装置が、体格検出手段からの信号に基づいて、乗員の体格が予め定められた基準値未満であると判定すると共に、衝突検出手段の信号に基づいて、車両が衝突したと判定した場合には、制御装置の制御により切替機構128のガスジェネレータ218が作動される。
ガスジェネレータ218が作動されると、ガスジェネレータ218からシリンダ214内にガスが供給される。シリンダ214内にガスが供給されると、ピストン216がFLパウル204のアーム部208側へ移動する。これにより、ピストン216がFLパウル204のアーム部208を押圧することで、FLパウル204に回動力が作用する。この回動力によって、FLパウル204の係止孔212の内周部が、ボディ192のシェアピンを破断させることで、FLパウル204の回動が許可されて、FLパウル204とロックリング200との係合が解除される。これにより、ロックリング200及びクラッチ130の引出方向への回転が許可される。つまり、サブトーションシャフト42のサブ係合部44にスプール20から引出方向への回転力が作用しても、サブエネルギ吸収部42Aは捩れ変形しない。
そして、スプール20の引出方向への回転力がメインエネルギ吸収部36Aの耐捩れ荷重(耐変形荷重)を上回ると、メインエネルギ吸収部36Aの捩れ(変形)により、スプール20の引出方向への回転が許容される。
したがって、メインエネルギ吸収部36Aの捩れ変形によって、ウェビング32による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、メインエネルギ吸収部36Aの捩れ分だけウェビング32の引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
以上により、乗員の体格が予め定められた基準値以上である場合では、フォースリミッタ荷重がメインエネルギ吸収部36Aの耐捩れ荷重とサブエネルギ吸収部42Aの耐捩れ荷重との合計にされて、フォースリミッタ荷重の荷重値が高荷重にされる。一方、乗員の体格が予め定められた基準値未満であり、車両の衝突が検出された場合には、フォースリミッタ荷重がメインエネルギ吸収部36Aの耐捩れ荷重にされて、フォースリミッタ荷重の荷重値が低荷重にされる。
したがって、スプール20を介してロックベース52(ロック機構50)とプリテンショナ機構110を配置した場合でも、スプール20とロックベース52との相対回転に連動して、フォースリミッタ荷重が直ちに高荷重又は低荷重に設定される。そして、これ以降では、設定されたフォースリミッタ荷重以上でのスプール20の引出方向への回転が許容される。これにより、設定されたフォースリミッタ荷重におけるトーションシャフト34の単位長さあたりの捻回数を確保できる。
しかも、サブトーションシャフト42のスプール20の軸方向への移動を利用して、サブトーションシャフト42のサブ嵌合部46と切替機構128のロックリング200とを連結できるため、切替機構128をプリテンショナ機構110の外側に容易に配置させることができる。
さらに、切替機構128のガスジェネレータ218が作動されるまでは、フォースリミッタ荷重が高荷重に設定されている。このため、ガスジェネレータ218の破損等で仮にガスジェネレータ218が作動されない場合でも、フォースリミッタ荷重が高荷重に設定されているため、衝突時における乗員に対する保護性能(フェールセール)を向上できる。
また、ロックベース52にカム部72を形成すると共に、スプール20にトリガワイヤ76を設けることで、サブトーションシャフト42をスプール20の軸方向他側へ移動させることができる。このため、簡易な構成でサブトーションシャフト42をスプール20の軸方向に移動させることができる。
さらに、ロック機構50及びセンサ機構80がスプール20の軸方向一側に配置されると共に、プリテンショナ機構110がスプール20の軸方向他側に配置されている。このため、ロック機構50、センサ機構80、及びプリテンショナ機構110をバランスよく配置してウェビング巻取装置10を構成できる。
(第2の実施の形態)
図8及び図9には、本発明の第2の実施の形態に係るウェビング巻取装置300が一部破断された簡略した断面図にて示されている。第2の実施の形態におけるウェビング巻取装置300は、第1の実施の形態におけるウェビング巻取装置10と略同様に構成されているが以下の点において異なる。
トーションシャフト34では、メイン係合部40とサブ嵌合部46とが一体化されて、シャフト係合部302とされている。つまり、メイントーションシャフト36とサブトーションシャフト42とが一体に構成されている。このシャフト係合部302は、スプール20のメイン被係合部26に一体回転可能かつスプール20の軸方向に相対回転可能に係合されている。
移動機構70では、カム部72及びトリガワイヤ76が省略されている。また、トーションシャフト34のメイン結合部38が、移動機構70の一部を構成しており、メイン結合部38の外周部には、複数のはすば状の外歯が形成されている。さらに、ロックベース52の被結合孔58が、移動機構70の一部を構成しており、被結合孔58の内周部には、複数のはすば状の内歯が形成されている。このメイン結合部38の外歯が被結合孔58の内歯に噛み合って、メイン結合部38が被結合孔58に対して相対回転可能な状態で、メイン結合部38と被結合孔58とが結合(ネジ結合)されている。そして、メイン結合部38が被結合孔58に対して引出方向へ相対回転されることで、メイン結合部38(トーションシャフト34)がロックベース52側(スプール20の軸方向一側)へ移動されて、メイン結合部38(トーションシャフト34)と被結合孔58(ロックベース52)とが引出方向へ一体回転可能に締結されるように構成されている。
さらに、被結合孔58の底面には、スプリング収容凹部304が形成されており、スプリング収容凹部304内には、付勢スプリング33が設けられている。付勢スプリング33の一端はスプリング収容凹部304の底面に当接されて、付勢スプリング33の他端はトーションシャフト34のメイン結合部38に当接されており、これにより、トーションシャフト34が、付勢スプリング33によってスプール20の軸方向他側へ付勢されている。
また、スプール20の脚片16側の端面には、ロックベース52を固定するためのシェアピン306が一体に設けられており、シェアピン306は、円柱状に形成されて、スプール20から脚片16側へ突出されている。このシェアピン306に対応して、ロックベース52のベース部54のスプール20側面には、嵌入凹部308が形成されており、嵌入凹部308は、断面円形状に形成されて、スプール20側へ開放されている。この嵌入凹部308内には、スプール20のシェアピン306が嵌入されており、これにより、ロックベース52がスプール20と一体回転可能に固定されている。さらに、スプール20の脚片18側の端部とスリーブ112とが一体にされて、スプール20からフランジ112Aが突出されている。
またさらに、切替機構128におけるトリガプレート132は、サブ嵌合部46のスプール20側の面に固定されており、トリガプレート132の係止部136は、スプール20とは反対側へ向けて屈曲されている。そして、係止部136は、クラッチカバー170側からクラッチカバー170の孔部173及びクラッチガイド146の孔部147内に挿入されている。
以上のように構成されたウェビング巻取装置300では、スプール20のシェアピン306がロックベース52の嵌入凹部308内に嵌入されているため、ロックベース52とスプール20とが一体回転可能に固定されている。
そして、ロックベース52の引出方向への回転が阻止された際には、スプール20の引出方向への回転が阻止されて、車両前方へ移動しようとする乗員の身体がウェビング32によって拘束される。この状態で、更に大きな力で乗員の身体がウェビング32を引張ると、ウェビング32に付与される荷重が徐々に大きくなり、スプール20のシェアピン306が破断されるまでウェビング32に付与される荷重が高くなる。
さらに、引出方向へのスプール20の回転力がスプール20のシェアピン306の機械的強度を上回ると、シェアピン306が破断されて、スプール20及びトーションシャフト34がロックベース52に対して引出方向へ相対回転される。
ここで、トーションシャフト34のメイン結合部38の外周部には、はすば状の外歯が形成されており、ロックベース52の被結合孔58の内周部には、はすば状の内歯が形成されている。そして、この外歯と内歯とが噛み合った状態でメイン結合部38と被結合孔58とがネジ結合されている。このため、トーションシャフト34がロックベース52に対して引出方向へ相対回転されると、メイン結合部38の外歯が、被結合孔58の内歯に沿って移動されるため、メイン結合部38が、被結合孔58に対して引出方向へ相対回転されつつ、被結合孔58に対してスプール20の軸方向一側(図8の矢印C方向側)へ相対移動される。そして、メイン結合部38の端面が被結合孔58の底面に当接されると、トーションシャフト34とロックベース52とが引出方向へ一体回転可能に結合される。
また、トーションシャフト34がスプール20の軸方向一側(ロックベース52側)へ移動されると、クラッチ130のトリガプレート132(係止部136)がトーションシャフト34と共にスプール20の軸方向一側へ移動されて、係止部136がクラッチガイド146の孔部147から引抜かれる(図9参照)。これにより、クラッチカバー170に対するクラッチガイド146の相対回転の阻止状態が解消される。したがって、クラッチ130によって、トーションシャフト34のサブ嵌合部46がロックリング200に連結されて、以降は第1の実施の形態と同様に作用する。
以上により、第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
また、上述したように、メイントーションシャフト36とサブトーションシャフト42とを一体化して、メイントーションシャフト36とロックベース52とをネジ結合することで、容易にサブトーションシャフト42をスプール20の軸方向一側へ移動させることができる。
しかも、メイン結合部38に形成された外歯及び被結合孔58に形成された内歯は、はすば状に形成されているため、ロックベース52に対するトーションシャフト34の相対回転量に対して、トーションシャフト34のスプール20の軸方向への移動量を大きくできる。これにより、スプール20のロックベース52に対する相対回転に連動して、直ちにフォースリミッタ荷重を高荷重又は低荷重に設定できる。
なお、第2の実施の形態では、メイントーションシャフト36とサブトーションシャフト42とが一体に形成されている。これに替えて、メイントーションシャフト36とサブトーションシャフト42と別体に形成して、両者を圧入等によって一体に構成してもよい。すなわち、本願における「一体的」には、メイントーションシャフト36とサブトーションシャフト42とが一体に形成されている場合、及びメイントーションシャフト36とサブトーションシャフト42とが別体に形成されて両者が一体化された場合が含まれる。
(第3の実施の形態)
図10及び図11には、本発明の第3の実施の形態に係るウェビング巻取装置400が一部破断された簡略した断面図にて示されている。第3の実施の形態におけるウェビング巻取装置400は、第1の実施の形態におけるウェビング巻取装置10と略同様に構成されているが以下の点において異なる。
スプール20には、脚片16側の端面において、断面略半円形状のワイヤ溝部402が形成されている。ワイヤ溝部402は、ロックベース52側へ向けて開放されて、軸方向視にて円環状に形成されている。
また、スプール20には、トリガワイヤ76を収容するための断面円形状のワイヤ収容部404が形成されており、ワイヤ収容部404はワイヤ溝部402と連通されると共に、スプール20の軸方向に沿ってスプール20の脚片18側面の手前まで延設されている。さらに、スプール20の内側には、後述するトリガカム414を収容するためのカム収容部406が形成されており、カム収容部406は、ワイヤ収容部404と連通されている。
サブトーションシャフト42のサブ係合部44は、第1の実施の形態におけるサブ係合部44より小径に形成されて、スプール20のメイン被係合部26内に挿入されている。そして、サブ係合部44は、メイン被係合部26と一体回転可能にかつスプール20の軸方向へ移動可能に係合されている。
付勢スプリング33は、メイントーションシャフト36のメイン係合部40とサブトーションシャフト42のサブ係合部44との間に配置されて、サブトーションシャフト42をスプール20の軸方向他側へ付勢している。
ロックベース52のベース部54には、トリガワイヤ76の一端部を固定するための固定凹部408が形成されており、固定凹部408はワイヤ収容部404と同軸上に配置されている。この固定凹部408の底壁には、貫通孔410が形成されている。
トリガワイヤ76は、ロックベース52の貫通孔410を挿通すると共に、スプール20のワイヤ収容部404内に延在されている。また、トリガワイヤ76の脚片18側の端部は、スプール20の径方向内側へ屈曲されて、スプール20のカム収容部406内に配置されている。このトリガワイヤ76の長手両端部には、略円柱状の固定ピン412が一体に固定されており、トリガワイヤ76の一端部における固定ピン412が固定凹部408内に固定されている。
スプール20のカム収容部406内には、移動機構70を構成する「カム部材」としてのトリガカム414が設けられている。このトリガカム414は、略矩形状の板金により製作されて、板厚方向をスプール20の軸方向として、カム収容部406内にスプール20の径方向に移動可能に収容されている。図12に示すように、トリガカム414は、側面視にて略クランク状に形成されており、トリガカム414の一端部とトリガカム414の他端部とが傾斜部416によって連結されている。そして、トリガカム414の一端部が、その他端部よりもスプール20の軸方向他側(図12の矢印D方向側)へ配置されており、傾斜部416が、トリガカム414の一端部から他端部へ向かうに従いスプール20の軸方向一側(図12の矢印C方向側)へ傾斜されている。また、トリガカム414の一端には、カム固定部418が一体に形成されており、カム固定部418はトリガカム414の一端からスプール20の軸方向一側へ向けて屈曲されている。これにより、トリガカム414の一端部は、側面視にて、スプール20の軸方向一側へ開放された凹状に形成されて、この部分が凹部74とされている。
トリガカム414には、係合溝420が形成されており、係合溝420は、スプール20の軸方向から見て略U字形状に形成されると共に、トリガカム414の他端から凹部74まで延設されている。そして、この係合溝420内にサブトーションシャフト42のサブエネルギ吸収部42Aが挿入されて、凹部74内にサブ係合部44が配置されている。この状態では、トリガカム414がサブ係合部44に当接されると共に、カム固定部418がサブ係合部44の径方向外側に配置されている。
また、カム固定部418には、径方向外側から見てU字形状の係止溝422が形成されており、係止溝422はスプール20の軸方向一側へ開放されている。そして、係止溝422内には、トリガワイヤ76の他端部が挿入されて、トリガワイヤ76の他端部における固定ピン412がカム固定部418に係止されている。
さらに、図10及び図12に示すように、切替機構128におけるトリガプレート132は、サブ嵌合部46のスプール20側面に固定されており、トリガプレート132の係止部136は、スプール20とは反対側へ向けて屈曲されている。そして、係止部136は、クラッチカバー170側からクラッチカバー170の孔部173及びクラッチガイド146の孔部147内に挿入されている。
以上のように構成されたウェビング巻取装置400では、ロックベース52の引出方向への回転が阻止された際には、スプール20の引出方向への回転が阻止されて、車両前方へ移動しようとする乗員の身体がウェビング32によって拘束される。この状態で、スプール20の引出方向への回転力がメイントーションシャフト36のメインエネルギ吸収部36Aの耐捩れ荷重(耐変形荷重)を上回ると、メインエネルギ吸収部36Aが捩れ変形して、スプール20がロックベース52に対して引出方向へ相対回転される。つまり、ロックベース52がスプール20に対して巻取方向へ相対回転される。
ロックベース52がスプール20に対して巻取方向へ相対回転されると、トリガワイヤ76の一端部がスプール20に対して相対的に巻取方向へ回転される。これにより、トリガワイヤ76が、スプール20のワイヤ収容部404の開口部にしごかれつつ、ワイヤ収容部404内から引き抜かれる。これにより、トリガワイヤ76の他端部が移動される。
トリガワイヤ76の他端部は、トリガカム414のカム固定部418に係止されているため、トリガワイヤ76の移動に伴ってトリガカム414がスプール20の径方向外側へ移動される。トリガカム414がスプール20の径方向外側へ移動されると、サブ係合部44(サブトーションシャフト42)が、傾斜部416上を摺動しつつスプール20の軸方向一側へ移動される。
さらに、サブトーションシャフト42がスプール20の軸方向一側(ロックベース52側)へ移動されると、クラッチ130のトリガプレート132(係止部136)がサブトーションシャフト42と共に軸方向一側へ移動されて、係止部136がクラッチガイド146の孔部147から引抜かれる。このため、クラッチカバー170に対するクラッチガイド146の相対回転の阻止状態が解消される。
これにより、クラッチ130によって、サブトーションシャフト42のサブ嵌合部46がロックリング200に連結されて、以降は第1の実施の形態と同様に作用する。以上により、第3の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
また、トリガワイヤ76及びトリガカム414を設けることで、サブトーションシャフト42をスプール20の軸方向一側へ移動させることができるため、簡易な構成でサブトーションシャフト42をスプール20の軸方向一側へ移動させることができる。
なお、第3の実施の形態では、凹部74がスプール20の軸方向他側へ窪むように形成されている。これに替えて、凹部74をスプール20の軸方向一側へ窪むように形成してもよい。この場合には、サブトーションシャフト42のサブ係合部44の軸方向一側にトリガカム414を配置すると共に、第1の実施の形態のように、トリガプレート132をサブ嵌合部46のスプール20の軸方向他側へ配置してもよい。
また、第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、ロック機構50のロックプレート66のラチェット歯66Aがフレーム12のラチェット歯16Bに噛合されるように構成されている。これに替えて、例えば、ロックベース52の外周部にラチェット歯(外歯)を形成して、車両の急減速時及びスプール20が急激に引出方向へ回転された時の少なくも一方の時に、脚片16に設けられたパウルがロックベース52のラチェット歯に噛合されるように構成してもよい。