以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
図1、図2及び図6に示されるように、本発明の一実施形態に係るウェビング巻取装置10は、フレーム12と、スプール14と、ウェビング16と、回転部材としてのロックギヤ18と、フォースリミッタ機構26を構成する第1荷重付与部材としてのメイントーションシャフト20、トリガ部材としてのトリガワイヤ22、第2荷重付与部材としてのサブトーションシャフト24、及びクラッチ機構56と、切替手段としての切替機構200と、調整手段としての調整機構300と、を備えている。
図1に示されるように、フレーム12は、車体に固定される板状の背板28を備えている。背板28の幅方向両端部からは脚片30、32が略直角に延出されており、フレーム12は、平面視で略凹形状となっている。なお、脚片32の外側には、規制手段としての周知のロック機構(図示省略)が取付けられている。
スプール14は、軸方向に貫通する貫通孔15を有する円筒状に形成されており、フレーム12の脚片30と脚片32との間に配置されている。スプール14は、軸線方向が脚片30と脚片32の対向方向に沿う状態で配置されており、後述するメイントーションシャフト20、サブトーションシャフト24等を介してフレーム12に回転可能に支持されている。
ウェビング16は、乗員の身体に装着されるものであり、その長手方向一端部である基端部がスプール14に係止されている。スプール14は、一方の回転方向である巻取方向(図1等の矢印Aの方向)へ回転することでウェビング16を基端側から巻取って収納する構成となっている。
ロックギヤ18は、スプール14の軸方向一方側にスプール14と同軸状に配置されている。このロックギヤ18の外周部にはギヤ部34が形成されている。また、このロックギヤ18の軸心部には、軸方向に貫通する貫通孔36が形成されており、当該貫通孔の内周部には、スプライン状の被係合部38が形成されている。
車両の緊急時(急減速時等の所定の機会)には、上記ロック機構が、車両の加速度(特に減速加速度)が所定加速度以上であること又はウェビング16のスプール14からの引出加速度が特定加速度以上であることを検出して、作動することで、ロック機構33のロック部材(図示省略)がロックギヤ18のギヤ部34と係合して、ロックギヤ18の引出方向(図1等の矢印Bの方向)への回転が規制(ロック)される。
メイントーションシャフト20は、スプール14及びロックギヤ18と同軸状に配置されており、スプール14の貫通孔15及びロックギヤ18の貫通孔36にそれぞれ挿入されている。このメイントーションシャフト20には、その長手方向中央部にスプライン状の第一係合部40が形成されると共に、その先端部に同じくスプライン状の第二係合部42が形成されている。
そして、第一係合部40がロックギヤ18の被係合部38と係合されることにより、メイントーションシャフト20は、ロックギヤ18に一体回転可能に固定されている。また、第二係合部42がスプール14の内周部における軸線方向中間部に形成された図示しない被係合部と係合されることにより、メイントーションシャフト20がスプール14に一体回転可能に固定(連絡)されている。
このメイントーションシャフト20における第一係合部40と第二係合部42との間の部分は、後述する如くウェビング16の引張りに供される乗員の運動エネルギを吸収するための第一エネルギ吸収部44として構成されている。
トリガワイヤ22は、メイントーションシャフト20に沿って延在されている。このトリガワイヤ22の基端部22Aは、図1に示されるように、ロックギヤ18における貫通孔36よりも径方向外側の位置に形成された孔部46に挿入されて、ロックギヤ18に係止されている。一方、トリガワイヤ22における基端部22Aよりも先端側は、貫通孔15と並行してスプール14に形成された孔部48に挿入されており、その先端部22Bは、スプール14から軸方向他方側に突出されている。
サブトーションシャフト24は、メイントーションシャフト20と同軸状に配置されており、その長手方向中央部よりも基端側は、スプール14の貫通孔15に挿入されている。一方、このサブトーションシャフト24の長手方向中央部よりも先端側は、スプール14から軸方向他方側に突出されている。
このサブトーションシャフト24には、その基端部にスプライン状の第一係合部50が形成されると共に、その先端部に同じくスプライン状の第二係合部52が形成されている。第一係合部50は、スプール14の内周部における軸線方向中間部に形成された図示しない被係合部と係合されており、これにより、サブトーションシャフト24は、スプール14に一体回転可能に固定(連絡)されている。
また、このサブトーションシャフト24における第一係合部50と第二係合部52との間の部分は、後述する如くウェビング16の引張りに供される乗員の運動エネルギを吸収するための第二エネルギ吸収部54として構成されている。
図1及び図2に示されるように、クラッチ機構56は、ロック部材としてのスリーブ58と、クラッチガイド60と、クラッチベース62と、クラッチカバー64と、パウルである一対のクラッチプレート66と、スクリュー68と、一対のコイルスプリング70とを備えている。なお、図4には、このクラッチ機構56の作動途中の状態が示されており、図5には、このクラッチ機構56の作動が完了した状態が示されている。
スリーブ58は、サブトーションシャフト24と同軸状に配置されている。このスリーブ58の軸心部には、軸方向に貫通する貫通孔72が形成されており、この貫通孔74には、上述のサブトーションシャフト24が遊挿されている。また、このスリーブ58の内周部における先端側には、スプライン状の被係合部74が形成されており、この被係合部74にサブトーションシャフト24の第二係合部52が係合されることにより、スリーブ58は、サブトーションシャフト24に一体回転可能に固定されている。
また、このスリーブ58における基端側は、円形状の外形を有する支持部76として構成されており、このスリーブ58における支持部76よりも先端側は、六角形状の外形を有する嵌合部78として構成されている。
クラッチガイド60は、樹脂製とされており、軸方向に貫通する貫通孔80を有する環状に形成されている。この貫通孔80には、上述の支持部76が挿入されており、これにより、クラッチガイド60は、スリーブ58に相対回転可能に支持されている。
このクラッチガイド60における周方向の二箇所の位置には、図3に示されるように、コイルスプリング70を収容する一対のコイルスプリング収容部82が形成されている。これらのコイルスプリング収容部82は、クラッチガイド60の中央部を中心とする点対称状に形成されており、それぞれ、クラッチガイド60の周方向に延びる外側壁部83及び内側壁部84と、クラッチガイド60の径方向に延びて外側壁部83と内側壁部84の各端部を連結する連結壁部86とを有する略コの字状に形成されている。
また、このクラッチガイド60には、クラッチプレート66を収容する一対のクラッチプレート収容部88が各コイルスプリング収容部82に隣接して形成されている。これらのクラッチプレート収容部88には、連結壁部86から内側壁部84と反対側に向けて延びる第一支持壁部90と、連結壁部86に対する外側壁部83と反対側に連結壁部86と離間して第二支持壁部92が形成されている。
クラッチベース62は、六角形状を成す環状の被嵌合部94を有して構成されている。この被嵌合部94の内側には、スリーブ58の嵌合部78が嵌合(圧入)されており、これにより、クラッチベース62は、スリーブ58に一体回転可能に固定されている。なお、他の実施形態では、スリーブ58とクラッチベース62を一体に形成してもよい。また、このクラッチベース62には、被嵌合部94から外側に突出する一対の係止部96が形成されている。これらの係止部96は、後述するクラッチプレート66に形成されたアーム部106の基端部と係止されている。
クラッチカバー64は、スリーブ58と同軸状に配置されると共に、クラッチガイド60に対するスプール14と反対側にクラッチガイド60と対向して配置されている。このクラッチカバー64は、軸方向に貫通する貫通孔98を有する環状に形成されており、その内周部には、径方向内側に突出する嵌合爪100が複数形成されている。そして、貫通孔98にスリーブ58の嵌合部78が挿入されると共に、複数の嵌合爪100が嵌合部78と嵌合されることにより、クラッチカバー64は、スリーブ58、ひいては、サブトーションシャフト24に一体回転可能に固定されている。また、このクラッチカバー64は、後述する十字爪104がクラッチガイド60に対して周方向に係合するようになっており、クラッチガイド60は、このクラッチカバー64に対して、図5に示される作動位置と、図3に示される非作動位置との間で相対回転可能とされている。
また、このクラッチカバー64における周方向の二箇所の位置には、径方向外側に開口する軸方向視にて凹形状を成す切欠部102がそれぞれ形成されている。また、このクラッチカバー64には、各切欠部102の内側に位置されるように一対の十字爪104が形成されている。これら一対の十字爪104は、クラッチカバー64の中央部を中心とする点対称状に形成されている。また、これらの十字爪104は、クラッチカバー64の径方向から見てクランク状に屈曲しており、先端側が基端側よりもクラッチガイド60側へ突出している。
各十字爪104の先端側には、クラッチガイド60の径方向内側へ突出した内側突出部と、クラッチガイド60の径方向外側へ突出した外側突出部と、クラッチガイド60の周方向一方(巻取方向)へ突出した周方向突出部とが設けられており、各十字爪104の先端側は、クラッチガイド60の軸方向から見て十字状に形成されている。
クラッチプレート66は、クラッチカバー64とクラッチガイド60との間に配置されている。このクラッチプレート66は、アーム部106と、このアーム部106の先端部に形成された円弧部108とを有している。アーム部106の基端部には、クラッチカバー64側に突出すると共にサブトーションシャフト24の軸方向に沿って延びる回動軸110が形成されている。そして、この回動軸110がクラッチカバー64に形成された孔部112に挿入されることにより、クラッチプレート66は、クラッチカバー64に回動可能に支持されている。また、円弧部108の外周部(クラッチプレート66の先端部)には、平歯状のローレット歯66Aが形成されている。
スクリュー68は、ネジ部114と、このネジ部114よりも大径の押え部116とを有して構成されている。ネジ部114は、サブトーションシャフト24の先端部に形成されたネジ孔118に螺合されており、これにより、スクリュー68は、サブトーションシャフト24の先端部に固定されている。また、このように、スクリュー68がサブトーションシャフト24の先端部に固定された状態では、スリーブ58の先端部に押え部116が当接される。そして、これにより、スリーブ58のサブトーションシャフト24に対する抜き方向への移動が規制されている。なお、この状態では、クラッチガイド60は、クラッチカバー64とスプール14とによって軸方向の移動を制限されている。
また、上述のクラッチガイド60及びクラッチカバー64には、孔部120、122がそれぞれ形成されている。これらの孔部120、122は、クラッチガイド60がクラッチカバー64に対して非作動位置に配置された状態で互いに対向するように形成されており、これらの孔部120、122には、トリガワイヤ22の先端部22Bがそれぞれ挿入されている。これにより、クラッチガイド60は、非作動位置に配置された状態でスプール14及びクラッチカバー64に対する相対回転を規制されている(クラッチガイド60が非作動位置に拘束されている)。
またさらに、上述の如くクラッチガイド60が非作動位置に拘束された状態では、クラッチガイド60の各コイルスプリング収容部82における開口部付近に、クラッチカバー64の各十字爪104が位置される。そして、各十字爪104の周方向突出部は、各コイルスプリング収容部82に収容されたコイルスプリング70の軸方向一端部から当該コイルスプリング70の内側に挿入されており、各十字爪104の内側突出部及び外側突出部は、コイルスプリング70の軸方向一端部に当接している。これにより、コイルスプリング70の軸方向一端部が各十字爪104に係止されている。また、このコイルスプリング70の軸方向他端部は、コイルスプリング収容部82の連結壁部86(図3参照)に係止されている。
また、この状態では、十字爪104と連結壁部86との間隔がコイルスプリング70の自由状態での全長よりも短くなり、これにより、コイルスプリング70が圧縮状態とされる。そして、これにより、クラッチガイド60に対しては巻取方向の付勢力が付与されており、クラッチガイド60は作動位置へと付勢されている。
一方、この状態では、クラッチカバー64の孔部112(クラッチプレート66の回動軸110)と連結壁部86との間隔が十分に確保された状態となり、クラッチプレート66は、ローレット歯66Aがクラッチガイド60の外周部よりも内側に納まるように、クラッチプレート収容部88に収容される。また、この状態では、円弧部108の先端に連結壁部86が当接されている。
図6〜図8に示されるように、切替機構200は、本体部材としての板状のボデー202と、切替部材としてのロックリング204と、を備えており、調整機構300は、板状のギヤケース302と、ギヤ機構304(減速機構)と、箱状のスプリングカバー306と、付勢手段としてのぜんまいばね308と、備えている。
ボデー202、ギヤケース302及びスプリングカバー306は、フレーム12の脚片30外側に一体に取付けられており、フレーム12から離間する方向へ向けてボデー202、ギヤケース302及びスプリングカバー306がこの順で配置されている。
ボデー202には、円状の挿入孔206が貫通形成されており、挿入孔206には、クラッチ機構56が同軸上に挿入されている。ボデー202には、円状の配置孔208が形成されており、配置孔208は、挿入孔206と同軸上に配置されると共に、内部がフレーム12側に開放されている。ボデー202には、台形柱状の切替部210が形成されており、切替部210は、配置孔208の外周から内側へ突出されている。切替部210は、配置孔208の周方向に沿って湾曲されており、切替部210の巻取方向側の端面は、切替面210Aにされて、配置孔208の周方向に垂直に配置されている。
ロックリング204は、略円筒状にされて、フレーム12側から、ボデー202の挿入孔206に嵌合された状態で回転自在に支持されており、ロックリング204は、クラッチ機構56の径方向外側において、クラッチ機構56と同軸上に配置されている。ロックリング204には、台形柱状のロック部212が形成されており、ロック部212は、ロックリング204から径方向外側へ突出されると共に、ボデー202の配置孔208内に配置されている。ロック部212は、ロックリング204の周方向に沿って湾曲されており、ロック部212の引出方向側の端面は、ロック面212Aにされて、ロックリング204の周方向に垂直に配置されている。また、ロックリング204の内周部には、平歯状のローレット歯204Aが形成されている。
ギヤ機構304は、円環板状の連結ギヤ310を備えており、連結ギヤ310は、ギヤケース302のボデー202側に回転自在に支持されている。連結ギヤ310の内部には、クラッチ機構56が同軸上に挿入されており、連結ギヤ310は、ロックリング204に一体回転可能に連結されている。連結ギヤ310のギヤケース302側には、内周部において、円筒状の連結ギヤ部312が同軸上に形成されており、連結ギヤ部312の外周部には、平歯状の連結ギヤ歯312Aが形成されている。
ギヤ機構304は、中間ギヤ314を備えており、中間ギヤ314は、ギヤケース302のスプリングカバー306側に回転自在に支持されている。中間ギヤ314の中心軸部分には、円柱状の小ギヤ部316が設けられており、小ギヤ部316の外周部には、平歯状の小ギヤ歯316Aが形成されている。小ギヤ部316は、ギヤケース302を貫通しており、小ギヤ部316の小ギヤ歯316Aは、連結ギヤ310の連結ギヤ歯312Aに噛合されている。中間ギヤ314のスプリングカバー306側の部分には、円板状の大ギヤ部318が設けられており、大ギヤ部318の外周部には、平歯状の大ギヤ歯318Aが形成されている。
ギヤ機構304は、アダプタ320を備えており、アダプタ320は、ギヤケース302を回転自在に貫通されたクラッチ機構56のスクリュー68に一体回転可能に連結されている。アダプタ320のスクリュー68側の部分には、連絡ギヤ322が形成されており、連絡ギヤ322の外周部には、平歯状の連絡ギヤ歯322Aが形成されている。連絡ギヤ322の連絡ギヤ歯322Aは、大ギヤ部318の大ギヤ歯318Aに噛合されている。
スプリングカバー306内には、アダプタ320の連絡ギヤ322とは反対側の部分が回転自在に挿入されている。スプリングカバー306内には、ぜんまいばね308が収容されており、ぜんまいばね308の外周側端はスプリングカバー306の周壁に固定されると共に、ぜんまいばね308の内周側端はスプリングカバー306内のアダプタ320に固定されている。これにより、ぜんまいばね308がアダプタ320を巻取方向へ付勢している。
ここで、本実施形態に係るウェビング巻取装置10では、次の如く動作する構成とされている。
すなわち、スプール14、ロックギヤ18、メイントーションシャフト20、サブトーションシャフト24、クラッチ機構56(スリーブ58、クラッチベース62、クラッチプレート66及びスクリュー68を含む)及びアダプタ320は、一体に巻取方向及び引出方向へ回転可能にされると共に、ぜんまいばね308によって巻取方向へ付勢されている。
さらに、アダプタ320が巻取方向又は引出方向へ回転される際には、連絡ギヤ322、中間ギヤ314(大ギヤ部318及び小ギヤ部316)及び連結ギヤ310が回転されて、ロックリング204がアダプタ320に比し減速された速度でアダプタ320と同一方向へ回転される。
ウェビング16がスプール14に全量(最大限)巻取られた状態では、ロックリング204のロック部212のロック面212Aがボデー202の切替部210の切替面210Aから巻取方向へ離間されている。
ウェビング16がぜんまいばね308の付勢力に抗してスプール14から引出されることで、ウェビング16が車両の乗員の身体にぜんまいばね308の付勢力によって密着された状態で装着される。また、ウェビング16がスプール14から引出される際には、スプール14が引出方向へ回転されることで、ロックリング204が引出方向へ回転されて、ロック部212のロック面212Aが切替部210の切替面210Aに接近される(図9(A)参照)。
このため、図10に示すように、ウェビング16が装着される乗員の体格が大きい程、ウェビング16のスプール14からの引出量が多くなって、ウェビング16のスプール14への巻取量が少なくなるため、ロック部212(ロック面212A)の切替部210(切替面210A)からの巻取方向への離間距離(ロックリング204の引出方向への回転可能量)が小さくなる。一方、ウェビング16が装着される乗員の体格が小さい程、ウェビング16のスプール14からの引出量が少なくなって、ウェビング16のスプール14への巻取量が多くなるため、ロック部212(ロック面212A)の切替部210(切替面210A)からの巻取方向への離間距離(ロックリング204の引出方向への回転可能量)が大きくなる。
ウェビング16が車両の乗員の身体に装着された状態で、例えば、車両が急減速状態になり、ロック機構33が作動すると、ロックギヤ18の引出方向への回転が規制される。
そして、これにより、このロックギヤ18にメイントーションシャフト20を介して連結されたスプール14の引出方向への回転が規制されて、スプール14からのウェビング16の引出しが規制される。従って、これにより、車両前方へ移動しようとする乗員の身体がウェビング16によって拘束される。
また、ロックギヤ18の引出方向への回転が規制された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウェビング16を引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール14の回転力がメイントーションシャフト20の第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重(耐変形荷重)を上回ると、フォースリミッタ機構26が作動されて、第一エネルギ吸収部44の捩れ(変形)により、スプール14のフォースリミッタ荷重(第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重)以上での引出方向への回転が許容される。
従って、第一エネルギ吸収部44の捩れによりスプール14が引出方向へ回転されてスプール14からウェビング16が引出されることで、ウェビング16による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、第一エネルギ吸収部44の捩れ分だけウェビング16の引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
一方、上述のように、ロックギヤ18に対してスプール14が引出方向に回転されるということは、相対的にはスプール14に対してロックギヤ18が巻取方向に回転されると言うことである。従って、ロックギヤ18がスプール14に対して巻取方向に相対回転されると、トリガワイヤ22における基端部22Aよりも先端側がスプール14の孔部48に挿入されたまま、このトリガワイヤ22の基端部22Aがメイントーションシャフト20の周方向に移動されるので、このトリガワイヤ22における基端部22Aよりも先端側が孔部48に対してロックギヤ18側に引張られる。
これにより、トリガワイヤ22の先端部22Bがクラッチガイド60の孔部120とクラッチカバー64の孔部122から引抜かれて、スプール14及びクラッチカバー64に対するクラッチガイド60の相対回転規制が解消される。
そして、コイルスプリング70の付勢力により、クラッチガイド60が非作動位置から作動位置へと回転されると、クラッチカバー64の孔部112(クラッチプレート66の回動軸110)とクラッチガイド60の連結壁部86との間隔が短くなり、クラッチプレート66の円弧部108の先端が連結壁部86によってクラッチガイド60の接線方向に押圧(案内)される。これにより、クラッチプレート66がロックリング204側へ回動され(図4の矢印R参照)、クラッチプレート66のローレット歯66Aがロックリング204のローレット歯204Aと噛み合う(図5図示状態)。これにより、クラッチプレート66とロックリング204とが結合される。また、このときには、クラッチベース62に形成された係止部96がクラッチプレート66のアーム部106の基端部を引出方向へ押すことにより、クラッチプレート66がロックリング204に押し付けられ、両者の結合状態が維持される。これにより、クラッチ機構56(スリーブ58、クラッチベース62、クラッチプレート66及びスクリュー68)の引出方向への回転と一体に、ロックリング204が引出方向へ回転可能にされる。
従って、上述のように第一エネルギ吸収部44の捩れによってスプール14が引出方向に回転されると、ロックリング204が引出方向へ回転される(図9(B)参照)。
その後、ロックリング204のロック部212(ロック面212A)がボデー202の切替部210(切替面210A)に当接される(図9(C)参照)と、ロックリング204の引出方向への回転が規制(ロック)されることで、クラッチ機構56(スリーブ58、クラッチベース62及びクラッチプレート66)の引出方向への回転が規制される。
そして、スリーブ58の引出方向への回転が規制された状態で、更に大きな力で乗員の身体がウェビング16を引張り、この引張力に基づく引出方向へのスプール14の回転力がメイントーションシャフト20の第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重(耐変形荷重)とサブトーションシャフト24の第二エネルギ吸収部54の耐捩れ荷重(耐変形荷重)との合計を上回ると、第一エネルギ吸収部44及び第二エネルギ吸収部54の捩れ(変形)により、スプール14のフォースリミッタ荷重(第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重と第二エネルギ吸収部54の耐捩れ荷重との合計)以上での引出方向への回転が許容される。
従って、第一エネルギ吸収部44及び第二エネルギ吸収部54の捩れによりスプール14が引出方向へ回転されてスプール14からウェビング16が引出されることで、ウェビング16による乗員の胸部への負荷(負担)が軽減されると共に、第一エネルギ吸収部44及び第二エネルギ吸収部54の捩れ分だけウェビング16の引張りに供される乗員の運動エネルギが吸収される。
すなわち、図11に示すように、フォースリミッタ機構26が作動された後(スプール14の引出方向への回転が開始された後)には、ロックリング204のロック部212がボデー202の切替部210に当接されるまで(スプール14の引出方向への回転量(ストローク)が図11のS1になるまで)は、フォースリミッタ荷重が第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重(図11のF1)にされて低荷重にされる。さらに、ロックリング204のロック部212がボデー202の切替部210に当接された後には、スプール14の更なる引出方向への回転量が図11のS2になるまで、フォースリミッタ荷重が第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重(図11のF1)と第二エネルギ吸収部54の耐捩れ荷重(図11のF2)との合計にされて高荷重に切替えられる。
また、上述の如く、ウェビング16が装着される乗員の体格が大きい程、ロック部212の切替部210からの巻取方向への離間距離が小さくなる。一方、ウェビング16が装着される乗員の体格が小さい程、ロック部212の切替部210からの巻取方向への離間距離が大きくなる。
さらに、ロック部212の切替部210からの巻取方向への離間距離が小さくなる程、フォースリミッタ機構26の作動時にはロック部212が切替部210に当接されるまでのロックリング204の引出方向への回転量(図11のS3)が小さくなる。一方、ロック部212の切替部210からの巻取方向への離間距離が大きくなる程、フォースリミッタ機構26の作動時にはロック部212が切替部210に当接されるまでのロックリング204の引出方向への回転量(図11のS3)が大きくなる。
このため、ウェビング16が装着される乗員の体格が大きい程、フォースリミッタ機構26の作動時には、ロック部212が切替部210に当接されるまでのロックリング204の引出方向への回転量(図11のS3)が小さくなって、フォースリミッタ荷重が低荷重(第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重)にされた状態におけるスプール14の引出方向への回転量(図11のS1)が小さくなる。これにより、第一エネルギ吸収部44のみによる乗員の運動エネルギの吸収から早期に第一エネルギ吸収部44及び第二エネルギ吸収部54による乗員の運動エネルギの吸収に切替わって、体格が大きい乗員を適切に保護できる。
一方、ウェビング16が装着される乗員の体格が小さい程、フォースリミッタ機構26の作動時には、ロック部212が切替部210に当接されるまでのロックリング204の引出方向への回転量(図11のS3)が大きくなって、フォースリミッタ荷重が低荷重(第一エネルギ吸収部44の耐捩れ荷重)にされた状態におけるスプール14の引出方向への回転量(図11のS1)が大きくなる。これにより、第一エネルギ吸収部44のみによる乗員の運動エネルギの吸収量が多くなって、体格が小さい乗員を適切に保護できる。
このように、乗員の体格に応じて、フォースリミッタ荷重を低荷重にした状態におけるスプール14の引出方向への回転量を調整できるため、乗員を体格に応じて適切に保護できる。
また、メイントーションシャフト20の第二係合部42とサブトーションシャフト24の第一係合部50とがそれぞれスプール14内の被係合部に係合されて、メイントーションシャフト20とサブトーションシャフト24とが独立してスプール14に一体回転可能に固定されている。
このため、仮に、フォースリミッタ機構26の作動時において、サブトーションシャフト24の第二エネルギ吸収部54が破断等されて、サブトーションシャフト24のスプール14への固定が解除された場合でも、メイントーションシャフト20のスプール14への固定によって、スプール14に引出方向への回転に抗する荷重を付与できる。これにより、スプール14の引出方向への回転を制限できて、乗員を保護できる。
ここで、フォースリミッタ荷重を低荷重から高荷重に切替える切替機構200(ボデー202(切替部210)及びロックリング204(ロック部212))が、スプール14とロックギヤ18との間の外側かつスプール14とクラッチ機構56との間の外側に配置されている。
このため、切替機構200を組付ける際には、ボデー202の切替部210とロックリング204のロック部212とのロックリング204周方向における位置合わせを容易に行うことができる。これにより、切替機構200の組付けを容易にできる。
しかも、切替機構200がボデー202(切替部210)及びロックリング204(ロック部212)のみによって構成されている。このため、切替機構200を簡単な構成にでき、コストを低減できると共に、軽量化を図ることができる。
また、乗員の体格に応じてロックリング204の周方向位置を調整する調整機構300(ギヤケース302、ギヤ機構304、スプリングカバー306及びぜんまいばね308)も、スプール14とロックギヤ18との間の外側かつスプール14とクラッチ機構56との間の外側に配置されている。
このため、調整機構300を組付ける際には、ギヤ機構304の連結ギヤ310とロックリング204との周方向における位置合わせを容易に行うことができる。これにより、調整機構300の組付けを容易にできる。
さらに、ウェビング巻取装置10に調整機構300が設けられている。このため、ウェビング巻取装置10以外の機構を使用してロックリング204の周方向位置を調整する必要をなくすことができる。
なお、上記実施形態では、ボデー202に切替部210を形成した。しかしながら、ボデー202とは別に切替部210を設けて、ボデー202に切替部210を固定してもよい。
さらに、上記実施形態では、調整機構300(調整手段)が、ウェビング16のスプール14からの引出量によって乗員の体格を検知して、ロックリング204の周方向位置を乗員の体格に応じて調整する。しかしながら、調整手段が、検知手段によって乗員の体格(例えば乗員の体重や身長)を検知して、ロックリング204を回転させることで、ロックリング204の周方向位置を乗員の体格に応じて調整してもよい。さらに、調整機構300を設けずに、ウェビング巻取装置10が搭載される車両(搭載対象)に応じてロックリング204の周方向位置を調整してもよい。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。