JP2001260811A - ウェビング巻取装置及び車両 - Google Patents

ウェビング巻取装置及び車両

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JP2001260811A JP2000078407A JP2000078407A JP2001260811A JP 2001260811 A JP2001260811 A JP 2001260811A JP 2000078407 A JP2000078407 A JP 2000078407A JP 2000078407 A JP2000078407 A JP 2000078407A JP 2001260811 A JP2001260811 A JP 2001260811A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 構造が簡単で、かつ異なるフォースリミッタ
荷重を選択することができるウェビング巻取装置及び車
両を得る。 【解決手段】 スプール14は、トーションバー22及
びピニオン32に連結されている。車両急減速時には、
シリンダ34内に供給されたガスがピストン38を駆動
し、ピニオン32が回転されウェビング26が巻取られ
る。その後のエネルギ吸収過程では、孔34Aが開放さ
れるとシリンダ34内のガスが排出され、トーションバ
ー22の捩り荷重のみがフォースリミッタ荷重として作
用する。一方、孔34が閉鎖しているとピストン38の
移動荷重がフォースリミッタ荷重に加わる。また、ピス
トン38が初期位置に復帰するとこの付加的な荷重は除
去される。このため、簡単な構造で異なるフォースリミ
ッタ荷重を選択できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両急減速時にウ
ェビングを乗員拘束方向へ緊張させるウェビング巻取装
置に係り、特にウェビングの引出しを阻止するときに、
ウェビングの引出しを許容してエネルギを吸収すること
ができるウェビング巻取装置に関する。
【0002】また、本発明は、このウェビング巻取装置
を備えた車両に関する。
【0003】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ウェビ
ング巻取装置では、スプール(巻取軸)のウェビング引
出方向の回転が車両急減速時にロックされて、ウェビン
グの引き出しが阻止される。このロック機構としては、
スプールの一端側の装置フレーム近傍にロック手段が配
置されており、車両急減速時にはこのロック手段が作動
されることで、スプールのウェビング引出方向の回転が
阻止される構成である。
【0004】また、このようなウェビング巻取装置にお
いて、ウェビングの引き出しを阻止する際に、ウェビン
グの引き出しを所定量許容して、エネルギーの吸収を図
ることが行われている。このエネルギー吸収機構として
は、例えばスプールとこれと同軸的にトーションバーを
配置した構成のものがある。一般的にトーションバー
は、一端部をスプールに、他端部をロック手段に接続さ
れたロックベースに、それぞれ相対回転しないように連
結されている。通常は、スプールとロックベースとはト
ーションバーを介して一体に回転するが、車両急減速時
にロックベースのウェビング引出方向の回転が阻止され
た状態では、スプールが、ウェビング引張力により、ロ
ックベースに対してウェビング引出方向へ回転する。こ
のとき、トーションバーが捩じられてエネルギが吸収さ
れ、スプールの所定量の回転が許容される構成である。
このような吸収エネルギは、ウェビングに付加される荷
重(フォースリミッタ荷重)とウェビング引出量(スプ
ール回転量)の積で決まるものであり、ウェビング巻取
装置では、フォースリミッタ荷重及びスプールの許容回
転量(トーションバーの捩り限界)が与えられている。
【0005】しかしながら、このような従来のウェビン
グ巻取装置では、エネルギ吸収時のフォースリミッタ荷
重はトーションバーの材料物性値及び寸法形状に支配さ
れ、例えば、乗員の体重、体格及び衝突時の車両速度等
をパラメータとする衝突エネルギ等の乗員の慣性エネル
ギに拘わらず一定の値しか採ることができなかった。ま
た、エネルギ吸収の開始から終了までの間においても一
定の値しか与えることができなかった。すなわち、従来
のウェビング巻取装置では、車両急減速前及びエネルギ
吸収過程の何れにおいても、異なるフォースリミッタ荷
重を選択することができなかった。
【0006】ところで、エネルギ吸収過程においてスプ
ールが所定量回転した後にフォースリミッタ荷重を低減
させる(小さなフォースリミッタ荷重を選択する)こと
ができれば、車両急減速の初期には大きなフォースリミ
ッタ荷重を作用させてスプール回転量(ウェビング引出
量)当りのエネルギ吸収量を大きくすることにより、ウ
ェビング引出量(乗員の移動量)を抑えることができ
る。一方、所定のエネルギ吸収後は、フォースリミッタ
荷重を低減させることにより、乗員に作用する負荷(荷
重)を低減することができる。
【0007】特に、エアバッグ装置を備えた車両におい
ては、エアバッグと乗員との接触直前にフォースリミッ
タ荷重を低減することによって乗員に作用する総荷重を
減じることが可能で乗員の傷害をさらに軽減することが
できる。
【0008】そこで、乗員の慣性エネルギに応じて異な
るフォースリミッタ荷重を選択できるウェビング巻取装
置が考えられているが、このような従来のウェビング巻
取装置では、フォースリミッタ荷重を変更可能とするた
めに例えば、トーションバーを複数本備えエネルギを吸
収するトーションバー若しくはその組合せを変更する、
または、異径のトーションバーを同軸的に組合せてその
エネルギ吸収位置を変更する、構成であるため、構造が
複雑であった。
【0009】本発明は係る事実を考慮し、構造が簡単
で、かつ異なるフォースリミッタ荷重を選択できるウェ
ビング巻取り装置を得ることが第1の目的である。
【0010】また、本発明は、上記のウェビング巻取装
置及びエアバッグ装置を備え、乗員に作用する荷重を減
じることができる車両を得ることが第2の目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記第1の課題を解決す
るために、請求項1の発明に係るウェビング巻取装置
は、ウェビングが巻取り引出しされる筒状のスプール
と、前記スプールの一端側に前記スプールと同軸的でか
つ相対回転可能に設けられたロックベースと、前記ロッ
クベースに接続して設けられ、所定の加速度が検知され
た際にフレームに係合して前記ロックベースのウェビン
グ引出方向回転を阻止するロック手段と、前記スプール
内に前記スプールと同軸的に設けられ、一端が前記スプ
ールに連結されると共に他端が前記ロックベースに連結
され、通常は前記スプールと前記ロックベースとを一体
に回転させ、前記ロック手段による前記ロックベースの
ウェビング引出方向回転阻止状態ではウェビング引張力
により捩じれながら前記スプールを前記ロックベースに
対してウェビング引出方向へ相対回転させるトーション
バーと、前記スプールに係合可能に設けられたピストン
と、前記フレームに固定され前記ピストンが挿入された
シリンダと、前記シリンダに連通され前記シリンダ内に
ガスを供給可能なガス供給手段と、を有し、車両急減速
時には前記ガス供給装置が作動され、前記ピストンが前
記シリンダ内でスライド移動することにより前記スプー
ルを強制的に回転させて前記ウェビングを乗員拘束方向
へ緊張させるプリテンショナ機構と、を備えたウェビン
グ巻取装置において、前記シリンダに供給されたガスを
排出可能なガス排出手段を備えたことを特徴としてい
る。
【0012】請求項1に記載のウェビング巻取装置で
は、スプールとロックベースとはトーションバーを介し
て連結されており、通常はこれらが一体に回転する。ま
た、プリテンショナ機構では、通常は、ピストンとスプ
ールとは非係合状態とされ、ピストンがスプールの回転
の障害となることがない。このため、通常は、ウェビン
グの巻取り引出しが自由とされる。
【0013】車両が急減速状態に至ると、プリテンショ
ナ機構のガス供給装置が作動され、シリンダ内にガスが
供給される。このガスの圧力により、ピストンがスプー
ルと係合しながらスライド移動することによりスプール
が強制的にウェビング巻取方向へ回転され、ウェビング
の緩みが除去されて乗員に緊密に装着される(プリテン
ショナ機構の作動が終了する)。
【0014】プリテンショナ機構作動後、乗員の慣性エ
ネルギによるウェビング引張力が作用すると、所定量の
ウェビング引出しが許容するエネルギ吸収段階に移行す
る。
【0015】このとき、既に車両急減速時の所定の加速
度(減速度)が検知されているため、ロック手段が作動
しフレームに係合し、ロックベースのウェビング引出方
向の回転が阻止されている。
【0016】ここで、例えば、車両衝突時等の車両急減
速時に、乗員の体重、急減速直前の車両速度、加速度
(減速度)等を検知して乗員の慣性エネルギに応じてフ
ォースリミッタ荷重を変更する構成においては、乗員の
慣性エネルギが小さい場合は、プリテンショナ機構作動
直後にガス排出手段が作動され、シリンダ内のガスが排
出される。
【0017】このとき、乗員の慣性移動に伴うウェビン
グ引張力がスプールを介してトーションバーにウェビン
グ引出し方向の回転力として作用する。ここで、スプー
ルがウェビング引出方向へ回転されるとピストンが初期
位置復帰方向へ移動されるが、シリンダ内のガスが排出
されているため、ピストンの移動に伴う抵抗力は発生し
ない。
【0018】このため、トーションバーが捩れ、ウェビ
ング(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(トー
ションバーの捩れ荷重のみが一定のフォースリミッタ荷
重として作用しながら)スプールがロックベースに対し
てウェビング引出方向へ回転されてウェビングが引出さ
れ、エネルギ吸収が果たされる。
【0019】一方、乗員の慣性エネルギが大きい場合
は、プリテンショナ機構作動直後にガス排出手段は作動
されない。このため、ガスの圧縮荷重またはガス漏洩の
圧力損失による荷重(シリンダ内外の圧力差とピストン
断面積との積で与えられる荷重)がピストンの初期位置
復帰方向への移動に伴って発生する。
【0020】このとき、ウェビング引張力が作用する
と、前述のトーションバーの捩り荷重に加えてガスの圧
縮荷重またはガス漏洩の圧力損失による荷重がフォース
リミッタ荷重としてウェビング(乗員)に作用する。す
なわち、トーションバーの捩り荷重のみによって得られ
るフォースリミッタ荷重よりも大きなフォースリミッタ
荷重が得られ、ウェビング引出速度(スプール回転速
度)を低く抑えて適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0021】したがって、ガス排出手段の作動の有無に
よって異なるフォースリミッタ荷重を選択することがで
きる。
【0022】また、エネルギ吸収過程においてスプール
が所定量回転した後にスプールとピストンとの係合が解
除される構成とすると(例えば、ピストンがスプールと
係合して移動する長さをウェビングの許容引出量に対応
する長さより短く設定しておけば)、上述の乗員の慣性
エネルギが大きくガス排出手段が作動されない場合に、
エネルギ吸収過程においてフォースリミッタ荷重を減少
することができる。すなわち、スプールが所定量回転す
るまでの間は上述の大きなフォースリミッタ荷重が作用
し、第1次のエネルギ吸収が果たされる。一方、スプー
ルが所定量回転されると、スプールとピストンとの係合
が解除されるため、ウェビング引張力はトーションバー
の回転力としてのみ作用し、ガスの圧縮荷重またはガス
漏洩の圧力損失による荷重の分だけフォースリミッタ荷
重が減少する。このとき、トーションバーの捩り荷重の
みがフォースリミッタ荷重として作用しながら第2次の
エネルギ吸収が果たされる。
【0023】さらに、必要に応じて、第1次のエネルギ
吸収の過程においてガス排出手段を作動させることによ
り、任意の時期にフォースリミッタ荷重を減少させ、第
2次のエネルギ吸収過程に移行することができる。
【0024】このように、請求項1に係る発明のウェビ
ング巻取装置では、構造が簡単で、かつ異なるフォース
リミッタ荷重を選択することができる。
【0025】一方、請求項2の発明に係るウェビング巻
取装置は、請求項1記載のウェビング巻取装置におい
て、前記ガス排出手段を、前記シリンダに設けた孔と、
前記孔を閉塞可能なカバー部材と、前期カバー部材と係
合可能に配置され、前記カバー部材を移動させることに
より前記孔を開閉可能な駆動手段と、で構成したことを
特徴としている。
【0026】請求項2記載のウェビング巻取装置では、
プリテンショナ機構作動時にカバー部材がシリンダに設
けられた孔を閉塞することにより、ピストンがガス圧力
により正常にスライド移動される。一方、必要に応じて
シリンダ内のガスを排出する場合は、駆動手段がカバー
部材を移動させることによりシリンダに設けられた孔が
開放される。これにより、シリンダ内のガスが確実に排
出され、小さなフォースリミッタ荷重が選択される。
【0027】このように、請求項2に記載のウェビング
巻取装置では、構造が一層簡単で、かつ異なるフォース
リミッタ荷重を確実に選択することができる。
【0028】また、請求項3の発明に係るウェビング巻
取装置は、請求項2記載のウェビング巻取装置におい
て、前記孔を前記シリンダの胴に設け、前記カバー部材
を、前記孔に対応する孔が形成され、前記シリンダ外周
部に配置され、前記シリンダに対して相対回転可能なリ
ング部材としたことを特徴としている。
【0029】請求項3記載のウェビング巻取装置では、
プリテンショナ機構作動時にリング部材がシリンダの胴
に設けられた孔を閉塞することにより、ピストンがガス
圧力により正常にスライド移動される。一方、必要に応
じてシリンダ内のガスを排出する場合は、駆動手段がリ
ング部材をシリンダ外周部で回転させる。これにより、
リング部材に設けられた孔の位置がシリンダに設けられ
た孔の位置と一致されるとシリンダに設けられた孔が開
放され、シリンダ内のガスが確実に排出されて小さなフ
ォースリミッタ荷重が選択される。
【0030】このように、請求項3に記載のウェビング
巻取装置では、構造がより一層簡単で、かつ異なるフォ
ースリミッタ荷重を一層確実に選択することができる。
【0031】さらに、請求項4の発明に係るウェビング
巻取装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の
ウェビング巻取装置において、前記シリンダ内のガスを
排出可能な小孔を設けたことを特徴としている。
【0032】請求項4記載のウェビング巻取装置では、
プリテンショナ機構作動後のエネルギ吸収時においてガ
ス排出手段を作動させない場合に、ウェビング引張力が
スプールを介してピストンの移動力として作用すると、
シリンダ内に残留するガスを小孔から確実に排出しなが
ら(ガス圧力を小孔から逃がしながら)ピストンが初期
位置復帰方向へ移動される。これにより、不安定な挙動
を示すガスの圧縮に伴う荷重の影響を受けず、ガス排出
に伴う圧力損失による安定した荷重(シリンダ内外の圧
力差とピストン断面積との積で与えられる荷重)のみが
フォースリミッタ荷重として作用する。
【0033】このように、請求項4に記載のウェビング
巻取装置では、構造がより一層簡単で、かつ異なるフォ
ースリミッタ荷重をより一層確実に選択することができ
る。
【0034】上記第2の課題を解決するために、請求項
5の発明に係る車両は、請求項1乃至請求項4の何れか
1項記載のウェビング巻取装置を備え、かつエアバッグ
装置を備えた車両であって、エアバッグと乗員との接触
直前に前記ガス排出手段が作動されることを特徴として
いる。
【0035】請求項5記載の車両では、エアバッグと乗
員との接触直前に、前記ガス排出手段が作動されること
によりフォースリミッタ荷重が減少するため、エアバッ
グと乗員との接触前においては、大きなフォースリミッ
タ荷重を付加して時間当りのエネルギ吸収量を大きくし
てウェビング引出量(乗員の移動量)を抑えることがで
きる。一方、エアバッグと乗員との接触後は、より小さ
いフォースリミッタ荷重を付加して外部から人体に作用
する力を軽減することにより、乗員の傷害をさらに軽減
することができる。
【0036】このように、請求項5記載の車両は、上記
のウェビング巻取装置及びエアバッグ装置を備え、乗員
に作用する荷重を減じることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図1から図
3に基づいて説明する。
【0038】図1には、本実施の形態に係るウェビング
巻取装置10の全体構成が示されている。
【0039】ウェビング巻取装置10は、フレーム12
を備えている。フレーム12は、対向する一対の脚片1
2A、脚片12Bと各脚片を連結する背片12Cとを有
し、略コ字型に形成されている。背片12Cは下方に延
出されており、その下端部が車体にボルト止めされて固
定されている。
【0040】フレーム12の対向する脚片12A、12
Bの間には、軸方向が脚片12A、12Bの対向方向と
された筒状のスプール14が設けられている。このスプ
ール14にはウェビング26の一端が係止され、スプー
ル14の回転により、ウェビング26がスプール14に
対して巻取り引出し自在となる。
【0041】スプール14の筒内には、脚片12A側の
端部にロックベース16が配置されている。ロックベー
ス16は、フレーム12の脚片12Aの開口部にスプー
ル14と同軸的でかつ回転自在に支持されている。ロッ
クベース16にはロック手段を構成するロックプレート
24が接続され、図示しない加速度センサが所定の加速
度(減速度)を検知した場合にロックプレート24がフ
レーム12に噛込むことによりロックベース16の回転
を阻止する構成となっている。
【0042】また、ロックベース16には、スプール1
4の筒内軸心部分に配置されたトーションバー20の六
角部が挿入されており、ロックベース16が常にトーシ
ョンバー20の一端側六角部と一体に回転するように構
成されている。
【0043】一方、スプール14筒内の脚片12B側端
部には、スリーブ18が配置されている。スリーブ18
は、スプライン状の歯20が嵌合することでスプール1
4と一体に連結されると共に、脚片12Bの開口部にス
プール14と同軸的でかつ回転自在に支持されている。
スリーブ18の先端部は脚片から外方へ突出しており、
さらに、その突出部端にはぜんまいばね(図示省略)が
設けられている。これにより、スリーブ18は常にウェ
ビング34を巻取る方向に回転付勢されている。
【0044】さらに、このスリーブ18は、前述したト
ーションバー20の他端六角部が挿入されることによ
り、ロックベース16と連結されている。これにより、
通常は、スプール14、スリーブ18、トーションバー
20、及びロックベース16は一体に回転するよう構成
されている。
【0045】また、ウェビング巻取装置10は、プリテ
ンショナ機構30を備えており、プリテンショナ機構3
0はピニオン32を備えている。ピニオン32は、スリ
ーブ18のスプール14外側端に連結されており、スリ
ーブ18を介してスプール14と常に一体となって回転
するようになっている。このため、ピニオン18が回転
することによりスプール14が回転し、ウェビング26
の巻取りまたは巻き戻しができる構成となっている。
【0046】また、脚片12Bにはシリンダ34が固定
されている。シリンダ34は円筒状に形成されており、
上端がピニオン32の近傍で開口している。このシリン
ダ34内には、ピストン38が設けられている。ピスト
ン38の底部は円盤状に形成されており、シリンダ34
内をスライド移動可能とされている。ピストン38の底
部にはシール保持部42が連結されており、シール保持
部42の外周にはシリンダ34の内壁との間をシールす
るためのOリング44が嵌合されている。
【0047】一方、シリンダ34の底部には、凹部36
が一体に形成されている。この凹部36はシリンダ内径
より小径とされ、シリンダ34と凹部36とは段付きと
されている。この段部にOリング44が係合することに
より、ピストン38が底付きしない構成となっている。
また、Oリング44がこの段部に係合する位置がピスト
ン38の初期位置とされている。
【0048】また、シリンダ34にはガス供給装置46
が接続され、また、ガス供給装置46には制御手段48
が接続されている。これにより、車両急減速時には、制
御手段48がガス供給装置46を作動させ、供給される
ガス圧力によりピストン38が図2(A)の矢印Aの方
向へ移動される構成となっている。
【0049】さらに、図2に示される如く、シリンダ3
4には、その胴を貫通して孔34Aが設けられている。
また、シリンダ34の外周部にはリング50が設けられ
ている。リング50は、孔34Aに対応する孔50Aを
有し、シリンダ34に対して相対回転可能に設置されて
いる。さらに、リング50には駆動手段52が接続され
ている。駆動手段52は、リング50をシリンダ34廻
りに回転駆動できるようになっている。これにより、通
常は、孔34Aはリング50によって閉塞されており、
駆動手段作動時には、孔34Aと孔50Aの位置を合わ
せることによりシリンダ内のガスを排出可能な構成とな
っている。
【0050】なお、駆動手段は、ソレノイドまたはガス
ジェネレータ等を有する直線運動をするアクチュエータ
であっても、回転運動をするモータ等であっても良い。
【0051】一方、ピストン38の先端部にはラック4
0が一体に設けられている。このラック40は前述した
ピニオン32に対応しており、通常はピニオン32から
所定の隙間を有して位置している(非係合状態とされて
いる)。これにより、ラック40がピストン38と共に
シリンダ34内をピストン38の先端方向(図1の上方
向)へスライド移動すると、ラック40がピニオン32
に噛み合ってピニオン32をウエビング26巻取方向へ
回転させるようになっている。
【0052】また、ピストン38の底部には、小孔38
Aが設けられている。この小孔38Aは、シリンダ34
の内外を連通しており、ピストン38の移動時にシリン
ダ内のガスを排出する構成となっている。なお、孔38
Aの寸法は、プリテンショナ機構30の作動時にピスト
ン38が正常に移動することを妨げないように決められ
ている。
【0053】次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0054】上記構成のウェビング巻取装置10では、
スプール14とロックベース16とはトーションバー2
0によって連結されているので、通常は、これらが一体
に回転する。また、ピストン38に設けられたラック4
0はピニオン32と非係合状態とされ、ラック40がス
プール14の回転の障害となることがない。このため、
通常は、ウェビング26の巻取り引出しが自由とされ
る。
【0055】車両が急減速状態に至ると、まず、プリテ
ンショナ機構30が作動する。すなわち、ガス供給装置
46が作動することによりシリンダ34内に供給された
ガスの圧力によってピストン38がその先端方向へスラ
イド移動され、ラック40がピニオン32に噛み合いな
がら移動することでピニオン32がウェビング巻取方向
へ回転される。これによって、スプール14が強制的に
ウエビング巻取方向へ回転され、ウエビング26の緩み
が除去されて乗員に緊密に装着される。
【0056】プリテンショナ機構30の作動後、ウェビ
ング26の所定量の引出を許容するエネルギ吸収段階に
移行する。
【0057】ここで、図示しない制御手段によって予め
または車両急減速直前に異なるフォースリミッタ荷重が
選択される。この選択は、例えば、乗員の体格及び衝突
形態に基づく乗員の慣性エネルギに応じて行われるた
め、乗員の慣性エネルギの大小の別に作用を説明する。
【0058】なお、この時点では、プリテンショナ機構
30の作動時に既に車両急減速時の所定の加速度(減速
度)が検知されているため、ロック手段の作動によりロ
ックプレート24がフレーム12に係合し、ロックベー
ス16のウェビング引出方向の回転が阻止されている。 (乗員の慣性エネルギが小さい場合)例えば、乗員の体
重が小さい場合または急減速直前の車両速度が低い場合
は、乗員の慣性エネルギが小さい。
【0059】この場合、プリテンショナ機構30の作動
終了直後に駆動手段52によってリング50が回転さ
れ、孔50Aの位置が孔34Aの位置と一致される(図
3(B)参照)ことにより、シリンダ34内のガスが排
出される。
【0060】このとき、乗員の慣性移動に伴うウェビン
グ引張力は、スプール14を介してトーションバー22
にウェビング引出し方向の回転力として作用する。一
方、スプール14がウェビング引出方向へ回転されると
ピニオン32を介してピストン38が初期位置復帰方向
へ移動されるが、シリンダ34内のガスが排出されてい
るため、ピストン38の移動に伴う抵抗力は発生しな
い。
【0061】これにより、トーションバー22が捩れ、
図4に破線で示される如く、ウェビング26(乗員)に
作用する荷重を一定に保ちながら(トーションバー22
の捩れ荷重のみが一定のフォースリミッタ荷重として作
用しながら)スプール14がロックベース16に対して
ウェビング引出方向へ回転されてウェビング26が引出
され、エネルギ吸収が果たされる。 (乗員の慣性エネルギが大きい場合)一方、例えば、乗
員の体重が大きい場合または急減速直前の車両速度が高
い場合は、乗員の慣性エネルギが大きい。この場合、プ
リテンショナ機構30の作動直後にはガス排出手段は作
動されず、孔34Aは、リング50によって閉塞された
状態が保持される(図3(A)参照)。
【0062】このため、シリンダ34内にガスが残留
し、ウェビング引張力が作用しスプール14を介してピ
ニオン32が逆回転されると(図4に示すスプール回転
量Cに達した後)、シリンダ34内に残留するガスの圧
力をピストン38に設けられた小孔38Aから確実に逃
がしながらピストン38が初期位置まで移動される。こ
れにより、ピストン38が初期位置まで移動される間に
おいて、ガス排出に伴う圧力損失による安定した荷重
(シリンダ34の内外の圧力差とピストン38の断面積
との積で与えられる荷重)がフォースリミッタ荷重とし
て作用する。
【0063】したがって、ウェビング引張力が作用する
と、前述のトーションバー22の捩り荷重に加えてガス
排出に伴う圧力損失による荷重がフォースリミッタ荷重
としてウェビング(乗員)に作用する。すなわち、トー
ションバー22の捩り荷重のみによって得られるフォー
スリミッタ荷重(図4のF1)よりも大きなフォースリ
ミッタ荷重(図4のF2)が得られ、ウェビング引出速
度(スプール回転速度)を低く抑えて第1次のエネルギ
吸収が果たされる(図4に示す領域A)。
【0064】また、スプール14がさらに回転(図4に
示すスプール回転量D)されピストン38が初期位置ま
で移動されると、ピニオン38とラック40との係合が
解かれるため、ウェビング引張力はトーションバー22
の回転力としてのみ作用する。このため、図4に実線で
示される如く、ガス排出に伴う圧力損失による荷重の分
だけフォースリミッタ荷重が減少する。したがって、ト
ーションバー22の捩り荷重のみがフォースリミッタ荷
重(図4のF1)として作用しながら第2次のエネルギ
吸収が果たされる(図4に示す領域B)。
【0065】なお、エネルギ吸収時に許容するウェビン
グ引出量の方がプリテンショナ機構30によるウェビン
グ巻取り量より大きくされているため、図4に実線で示
されるフォースリミッタ荷重特性が得られる。
【0066】また、必要に応じて、第1次のエネルギ吸
収の過程において駆動手段52によってリング50を回
転させ、孔50Aの位置を孔34Aの位置と一致させる
ことにより、任意の時期(例えば、図4に示すスプール
回転量Xとなる時期)に図4に一点鎖線で示される如く
フォースリミッタ荷重を減少させ、第2次のエネルギ吸
収過程に移行することができる。
【0067】なお、本実施の形態に係るウェビング巻取
装置10では、ピストン38に小孔38Aを設けた構成
としたが、小孔をシリンダに設けた構成としても良い。
また、孔34Aの一部を開放することにより、ガス排出
に伴う圧力損失による荷重を得る構成としても良い。こ
の場合、孔34Aの開放面積を調整することにより第1
次のエネルギ吸収時のフォースリミッタ荷重を調整する
こともできる。さらに、リング50に孔50Aとは別個
に小孔を設け、この小孔の位置を孔34Aの位置と一致
させる構成としても良い。
【0068】さらに、本実施の形態に係るウェビング巻
取装置10では、プリテンショナ機構30の作動前また
は作動中にシリンダ34に設けた孔を開放することによ
り、プリテンショナ機構30によるウェビングの巻取力
を調整することも可能である。このウェビング巻取力の
調整は、例えば、リング50に設けられた孔50Aをシ
リンダ34に設けられた孔34Aの位置と若干ずらした
位置に停止させ、孔34Aの開放面積を調整することに
より行うことができる。また、上述のようにリング50
に別個に小孔を設け、この小孔の位置を孔34Aの位置
と一致させることによりウェビング巻取力を調整するこ
ともできる。
【0069】このように、本実施の形態に係るウェビン
グ巻取装置10では、構造が簡単で、かつ異なるフォー
スリミッタ荷重を選択することができる。
【0070】また、上記実施の形態に係るウェビング巻
取装置10は、エアバッグ装置を備えた車両に適用する
ことができる。
【0071】この車両では、乗員とエアバッグ前面の位
置をそれぞれ検知するセンサ及び制御手段を備えている
ことが望ましい。
【0072】この場合、プリテンショナ機構30の作動
後、孔34Aが開放されずに第1次のエネルギ吸収が行
われている際に、前記のセンサが乗員とエアバッグとが
接触する直前であることを検知すると、制御手段が駆動
手段52を作動させリング50が回転される。これによ
り、孔50Aの位置が孔34Aの位置と一致すると、シ
リンダ34内のガスが排出され、ガス排出に伴う圧力損
失による荷重の分だけフォースリミッタ荷重が減少す
る。
【0073】したがって、エアバッグと乗員との接触前
においては、大きなフォースリミッタ荷重を付加してス
プール14の回転量当りのエネルギ吸収量を大きくする
ことにより、ウェビング引出量(乗員の移動量)を抑え
ることができる。一方、エアバッグと乗員との接触後
は、一方、エアバッグと乗員との接触後は、フォースリ
ミッタ荷重が低減されているため、乗員に作用する総荷
重が低減され、乗員の傷害の程度を軽減することができ
る。
【0074】このように、上記実施の形態に係るウェビ
ング巻取装置10を適用し、エアバッグ装置を備えた車
両は、乗員に作用する荷重を減じることができる。
【0075】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係るウェビ
ング巻取装置は、構造が簡単で、かつ異なるフォースリ
ミッタ荷重を選択することができるという優れた効果を
有する。
【0076】さらに、本発明に係る車両は、上記のウェ
ビング巻取装置及びエアバッグ装置を備え、乗員に作用
する荷重を減じることができるという優れた効果を有す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、本発明の実施の形態に係るウェビン
グ巻取り装置の側面図、(B)は、全体構成を示す断面
図である。
【図2】(A)は、本発明の実施の形態に係るウェビン
グ巻取り装置を構成するシリンダ及びリングの組立前の
状態を示す斜視図、(B)は、シリンダに設けた孔の閉
塞状態を示す斜視図、(C)は、シリンダに設けた孔の
開放状態を示す斜視図である。
【図3】(A)は、本発明の実施の形態に係るウェビン
グ巻取装置を構成するプリテンショナ機構のシリンダに
設けた孔の閉塞状態を示す断面図、(B)は、シリンダ
に設けた孔の開放状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るウェビング巻取装置
のウェビング引張力(フォースリミッタ荷重)とスプー
ルのウェビング引出方向回転量との関係を示す線図であ
る。
【符号の説明】
10 ウェビング巻取装置 12 フレーム 14 スプール 16 ロックベース 18 スリーブ 22 トーションバー 24 ロックプレート(ロック手段) 26 ウェビング 30 プリテンショナ機構 32 ピニオン 34 シリンダ 34A 孔(排出手段) 38 ピストン 38A 小孔 40 ラック 46 ガス供給装置 50 リング(排出手段、カバー部材) 50A 孔 52 駆動手段(排出手段)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ウェビングが巻取り引出しされる筒状の
    スプールと、 前記スプールの一端側に前記スプールと同軸的でかつ相
    対回転可能に設けられたロックベースと、 前記ロックベースに接続して設けられ、所定の加速度が
    検知された際にフレームに係合して前記ロックベースの
    ウェビング引出方向回転を阻止するロック手段と、 前記スプール内に前記スプールと同軸的に設けられ、一
    端が前記スプールに連結されると共に他端が前記ロック
    ベースに連結され、通常は前記スプールと前記ロックベ
    ースとを一体に回転させ、前記ロック手段による前記ロ
    ックベースのウェビング引出方向回転阻止状態ではウェ
    ビング引張力により捩じれながら前記スプールを前記ロ
    ックベースに対してウェビング引出方向へ相対回転させ
    るトーションバーと、 前記スプールに係合可能に設けられたピストンと、前記
    フレームに固定され前記ピストンが挿入されたシリンダ
    と、前記シリンダに連通され前記シリンダ内にガスを供
    給可能なガス供給手段と、を有し、車両急減速時には前
    記ガス供給装置が作動され、前記ピストンが前記シリン
    ダ内でスライド移動することにより前記スプールを強制
    的に回転させて前記ウェビングを乗員拘束方向へ緊張さ
    せるプリテンショナ機構と、 を備えたウェビング巻取装置において、 前記シリンダに供給されたガスを排出可能なガス排出手
    段を備えたことを特徴とするウェビング巻取装置。
  2. 【請求項2】 前記ガス排出手段を、 前記シリンダに設けた孔と、 前記孔を閉塞可能なカバー部材と、 前記カバー部材と係合可能に配置され、前記カバー部材
    を移動させることにより前記孔を開閉可能な駆動手段
    と、 で構成したことを特徴とする請求項1記載のウェビング
    巻取装置。
  3. 【請求項3】 前記孔を前記シリンダの胴に設け、 前記カバー部材を、前記孔に対応する孔が形成され、前
    記シリンダ外周部に配置され、前記シリンダに対して相
    対回転可能なリング部材とした、 ことを特徴とする請求項2記載のウェビング巻取装置。
  4. 【請求項4】 前記シリンダ内のガスを排出可能な小孔
    を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れ
    か1項記載のウェビング巻取装置。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の
    ウェビング巻取装置を備え、かつエアバッグ装置を備え
    た車両であって、 エアバッグと乗員との接触直前に前記ガス排出手段が作
    動されることを特徴とする車両。
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