JP4308402B2 - ウェビング巻取装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウェビング巻取装置に係り、特にウェビングの引出しを阻止するときに、ウェビングの引出しを許容してエネルギを吸収することができるウェビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ウェビング巻取装置では、スプール(巻取軸)のウェビング引出方向の回転が車両急減速時にロックされて、ウェビングの引き出しが阻止される。このロック機構としては、スプールの一端側の装置フレーム近傍にロック手段が配置されており、車両急減速時にはこのロック手段が作動されることで、スプールのウェビング引出方向の回転が阻止される構成である。
【0003】
また、このようなウェビング巻取装置において、ウェビングの引き出しを阻止する際に、ウェビングの引き出しを所定量許容して、エネルギの吸収を図ることが行われている。このエネルギ吸収機構としては、例えば、スプールとこれと同軸的にトーションバーを配置した構成のものがある。一般的にトーションバーは、一端部をスプールに、他端部をロック手段に接続されたロックベースに、それぞれ相対回転しないように連結されている。通常は、スプールとロックベースとはトーションバーを介して一体に回転するが、車両急減速時にロックベースのウェビング引出方向の回転が阻止された状態では、スプールが、ウェビング引張力により、ロックベースに対してウェビング引出方向へ回転する。このとき、トーションバーが捩じられてエネルギが吸収され、スプールの所定量の回転が許容される構成である。このような吸収エネルギは、ウェビングに付加される荷重(フォースリミッタ荷重)とウェビング引出量(スプール回転量)の積で決まるものであり、ウェビング巻取装置では、フォースリミッタ荷重及びスプールの許容回転量(トーションバーの捩り限界)が与えられている。
【0004】
しかしながら、このような従来のウェビング巻取装置では、エネルギ吸収時のフォースリミッタ荷重はトーションバーの材料物性値及び寸法形状に支配され、例えば、乗員の体重、体格及び衝突時の車両速度等をパラメータとする衝突エネルギ等の乗員の慣性エネルギに拘わらず一定の値しか採ることができなかった。
【0005】
そこで、乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を変更できるウェビング巻取装置が考えられているが、このような従来のウェビング巻取装置では、フォースリミッタ荷重を変更可能とするために例えば、トーションバーを複数本備えエネルギを吸収するトーションバー若しくはその組合せを変更する、または、異径のトーションバーを同軸的に組合せてそのエネルギ吸収位置を変更する、構成であるため、構造が複雑であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実を考慮し、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を変更することができるウェビング巻取装置を得ることが目的である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明のウェビング巻取装置は、ウェビングが巻取り引出しされる筒状のスプールと、前記スプールの一端側に前記スプールと同軸的でかつ相対回転可能に設けられたロックベースと、前記ロックベースに接続して設けられ、所定の加速度が検知された際にフレームに係合して前記ロックベースのウェビング引出方向回転を阻止する第1のロック手段と、前記スプール内に前記スプールと同軸的に設けられ、一端が前記スプールに連結されると共に他端が前記ロックベースに連結され、通常は前記スプールと前記ロックベースとを一体に回転させ、前記第1のロック手段による前記ロックベースのウェビング引出方向回転阻止状態ではウェビング引張力により捩じれながら前記スプールを前記ロックベースに対してウェビング引出方向へ相対回転させるトーションバーと、を備えたウェビング巻取装置において、前記スプールと同軸的でかつ回転自在に設けられた回転部材と、前記回転部材に係合してそのウェビング引出方向回転を阻止する第2のロック手段と、前記スプールと前記回転部材とに連結され、通常は前記スプールと前記回転部材とを一体に回転させ、前記第2のロック手段による前記回転部材のウェビング引出方向回転阻止状態では前記スプールの回転の抵抗となる抵抗手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載のウェビング巻取装置では、スプールとロックベースとはトーションバーを介して連結されており、通常は、これらが一体に回転してウェビングの巻取り引出しが自由とされる。
【0009】
ここで、例えば、車両衝突時等の車両急減速時に、乗員の体重、急減速直前の車両速度、加速度(減速度)等を検知して乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を変更する構成においては、乗員の慣性エネルギが小さい場合は、所定の加速度(減速度)が検知されると第1のロック手段のみが作動してロックベースのウェビング引出方向の回転が阻止される。このとき、ウェビング引張力がスプールを介してトーションバーにウェビング引出し方向の回転力として作用する。このため、トーションバーが捩れ、ウェビング(乗員)に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプールがロックベースに対してウェビング引出方向へ回転されてウェビングが引出され、エネルギ吸収が果たされる。なお、第2のロック手段は作動されず、回転部材は抵抗手段を介してスプールと一体に回転される。
【0010】
一方、乗員の慣性エネルギが大きい場合は、第1のロック手段と共に第2のロック手段が作動され、ロックベースと共に回転部材のウェビング引出方向の回転が阻止される。このとき、ウェビング引張力が作用するとスプールが回転部材に対しても抵抗手段の抵抗力に抗してウェビング引出方向へ回転するため、前述のトーションバーの捩り荷重に加えて抵抗手段に抵抗荷重がフォースリミッタ荷重としてウェビング(乗員)に作用する。すなわち、トーションバーの捩り荷重のみによって得られるフォースリミッタ荷重よりも大きなフォースリミッタ荷重が得られ、ウェビング引出速度(スプール回転速度)を低く抑えて適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0011】
このように、請求項1に係る発明のウェビング巻取装置では、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を変更することができる。
【0012】
請求項2に係る発明のウェビング巻取装置は、請求項1に記載のウェビング巻取装置において、前記回転部材を、外周部にロック歯を有する歯車とし、前記第2のロック手段を、前記ロック歯に係合可能なパウルと、前記パウルを前記ロック歯と係合しない位置から前記ロック歯と係合する位置まで移動させる駆動手段と、で構成した、ことを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載のウェビング巻取装置では、通常時または乗員の慣性エネルギが小さい場合は、駆動手段を作動させずパウルをロック歯と係合しない位置に保持している。一方、乗員の慣性エネルギが大きい場合は、駆動手段の作動によってパウルがロック歯との係合位置まで移動されることによりパウルがロック歯と噛合い、回転部材である歯車のウェビング引出方向の回転が確実に阻止される。
【0014】
このように、請求項2に係る発明のウェビング巻取装置では、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を確実に変更することができる。
【0015】
請求項3に係る発明のウェビング巻取装置は、請求項1または請求項2に記載のウェビング巻取装置において、前記抵抗手段を、コイル状に形成され、両端部が前記回転部材に固定されると共に内周部が前記スプールの外周部に接触するブレーキスプリングとした、ことを特徴としている。
【0016】
請求項3に係る発明のウェビング巻取装置では、両端部を回転部材(歯車)に固定されたブレーキスプリングの内周部がスプールまたはその軸部材の外周部に接触されているため、通常は、スプールと回転部材とはブレーキスプリングを介して一体で回転する。このため、車両急減速時に回転部材の回転が第2のロック手段(パウル及び駆動手段)によって阻止されない場合はトーションバーの捩りによるフォースリミッタ荷重のみが作用する。
【0017】
一方、車両急減速時に第2のロック手段によって回転部材の回転が阻止された場合は、ウェビング引張力が作用するとスプールを介してトーションバーが捩られると共に回転が停止したブレーキスプリングによる制動抵抗がスプールに作用するため、前述のトーションバーの捩り荷重に加えてブレーキスプリングの制動荷重がフォースリミッタ荷重としてウェビング(乗員)に作用する。すなわち、トーションバーの捩り荷重のみによって得られるフォースリミッタ荷重よりも大きなフォースリミッタ荷重が得られ、ウェビング引出速度(スプール回転速度)を低く押さえて適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0018】
このように、請求項3に係る発明のウェビング巻取装置では、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を一層確実に変更することができる。
【0019】
請求項4に係る発明のウェビング巻取装置は、請求項1または請求項2に記載のウェビング巻取装置において、前記抵抗手段を、一端部が前記回転部材に固定され、他端部及び中間部が前記スプール内に挿入されたワイヤとしたことを特徴としている。
【0020】
なお、請求項4に記載したワイヤとは、容易に変形しない(例えば、自重や人力によっては変形しない)棒状の部材を含むものである。
【0021】
請求項4に係る発明のウェビング巻取装置では、スプールと回転部材(歯車)とがワイヤによって連結されており、通常は、スプールと回転部材とは一体で回転する。このため、車両急減速時に回転部材の回転が第2のロック手段(パウル及び駆動手段)によって阻止されない場合はトーションバーの捩りによるフォースリミッタ荷重のみが作用する。
【0022】
一方、車両減速時に第2のロック手段によって回転部材の回転が阻止された場合は、ウェビング引張力が作用するとスプールを介してトーションバーが捩られると共に、一端部及び中間部をスプール内に挿入されていたワイヤがスプールからの抜き出しに伴ってスプール出口部においてしごかれ回転部材側面に巻き取られながらスプールが回転するため、前述のトーションバーの捩り荷重に加えてワイヤのしごき荷重がフォースリミッタ荷重としてウェビング(乗員)に作用する。すなわち、トーションバーの捩り荷重のみによって得られるフォースリミッタ荷重よりも大きなフォースリミッタ荷重が得られ、ウェビング引出速度(スプール回転速度)を低く押さえて適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0023】
このように、請求項4に係る発明のウェビング巻取装置では、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を一層確実に変更することができる。
【0024】
請求項5に係る発明のウェビング巻取装置は、請求項1または請求項2に記載のウェビング巻取装置において、前記抵抗手段を、前記スプールの一端部側面に設けられた突起と、一部が前記回転部材と前記スプールとの間に挟持されると共に少なくとも一方の端部が拘束を受けない状態で前記回転部材側面に設けられ、前記スプールのウェビング引出方向の回転が阻止された際に前記突起と係合可能なプレートと、で構成したことを特徴としている。
【0025】
請求項5に係る発明のウェビング巻取装置では、プレートがスプールと回転部材(歯車)との間に挟持されることでスプールと回転部材がプレートを介して連結されているため、通常は、スプールと回転部材とは一体で回転する。このため、車両急減速時に回転部材の回転が第2のロック手段(パウル及び駆動手段)によって阻止されない場合はトーションバーの捩りによるフォースリミッタ荷重のみが作用する。
【0026】
一方、車両急減速時に第2のロック手段によって回転部材の回転が阻止された場合は、ウェビング引張力が作用するとスプールを介してトーションバーが捩られると共に、スプール側面に設けられた突起によって回転部材側面に設けられ運動が停止されたプレートがしごかれ、かつプレートとスプールの軸部材との間の摩擦力に抗しながらスプールが回転するため、前述のトーションバーの捩り荷重に加えてプレートのしごき荷重及びプレートとスプールの軸部材との間の摩擦荷重がフォースリミッタ荷重としてウェビング(乗員)に作用する。すなわち、トーションバーの捩り荷重のみによって得られるフォースリミッタ荷重よりも大きなフォースリミッタ荷重が得られ、ウェビング引出速度(スプール回転速度)を低く押さえて適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0027】
このように、請求項5に係る発明のウェビング巻取装置では、構造が簡単でかつ乗員の体格及び衝突形態に基づいた乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を一層確実に変更することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【0029】
図1には、第1の実施の形態に係るウェビング巻取装置10の構成が示されている。
【0030】
ウェビング巻取装置10は、フレーム12を備えている。フレーム12は略コ字型であり、対向する一対の脚片及び各脚片を連結する背片から成り、背片部において車体に固定されている。
【0031】
フレーム12の対向する一対の脚片の間には、軸方向が脚片の対向方向とされた筒状のスプール14が設けられている。このスプール14にはウェビング34の一端が係止され、スプール14の回転により、ウェビング34がスプール14に対して巻取り引出し自在となる。
【0032】
スプール14の筒内には、一端(図1(A)の左側端)部にロックベース16が配置されている。ロックベース16は、フレーム12の脚片開口部にスプール14と同軸的でかつ回転自在に支持されている。ロックベース16にはロック手段を構成するロックプレート36が接続され、図示しない加速度センサが所定の加速度(減速度)を検知した場合にロックプレート36がフレーム12に噛込むことによりロックベース16の回転を阻止する構成となっている。
【0033】
また、ロックベース16には、スプール14の筒内軸心部分に配置されたトーションバー20の六角部20Aが挿入されており、ロックベース16が常にトーションバー20の一端側六角部20Aと一体に回転するように構成されている。
【0034】
一方、スプール14の筒内他端(図1(A)の右側端)部には、スリーブ18が配置されている。スリーブ18は、スプライン状の歯(図示省略)が嵌合することでスプール14と一体に連結されると共に、フレーム12の脚片開口部にスプール14と同軸的でかつ回転自在に支持されている。スリーブ18の先端部は脚片から外方へ突出しており、さらに、その突出部端にはぜんまいばね(図示省略)が設けられている。これにより、スリーブ18は常にウェビング34を巻取る方向に回転付勢されている。
【0035】
さらに、このスリーブ18は、前述したトーションバー20の他端六角部20Bが挿入されることにより、ロックベース16と連結されている。これにより、通常は、スプール14、スリーブ18、トーションバー20、及びロックベース16は一体に回転するよう構成されている。
【0036】
また、スプール14は、フレーム12の一対の脚片間においてスリーブ挿入側の円板部の軸方向外側(図1(A)の右側)に向かって筒部が延長されている。この延長された筒部14Aの径方向外側に歯車22がスプール14と同軸的でかつ回転自在に支持されている。さらに、歯車22の外周部には、第2のロック手段を構成するロック歯24が形成されている。
【0037】
スプール14外周面と歯車22内周面との間には、コイル状のブレーキスプリング26が設けられている。ブレーキスプリング26は、一端部(図1に示す上端部)が歯車22に固定されると共に、内周部がスプール14の延長された筒部14Aの外周部に接触している。これにより、歯車22は、ブレーキスプリング26を介してスプール14と連結されており、通常は、スプール14と一体に回転するようになっている。
【0038】
また、歯車22の下方には、ロック歯24に係合可能に形成されたパウル28が設けられている。このパウル28は、フレーム12の歯車22設置側の脚片に設けられたピン30に接続され、ピン30を軸として回動可能な構成となっている。さらに、パウル28には、パウル28をロック歯24に係合しない位置からロック歯24との係合位置まで移動可能な駆動手段32が接続されている。これにより、パウル28は、通常はロック歯24と係合しない位置に保持され、所定の場合(例えば、乗員の体重、体格、急減速直前の車両速度、急減速の加速度等の検出結果に基づいて図示しない制御手段が車両急減速時の乗員の慣性エネルギが大きいことを検知した場合)にロック歯24との係合位置まで回動され歯車22のウェビング引出方向の回転を阻止するようになっている。
【0039】
なお、スプール14に延長された筒部14Aを設ける構成とせず、スプール14の軸部材、例えばスリーブ18のスプール14に挿入されていない部分、の外周部にブレーキスプリング26介して歯車22を設けた構成としても良い。
【0040】
また、駆動手段32はソレノイド等の電磁的なアクチュエータであってもガスジェネレータ等の流体駆動式のアクチュエータであっても良い。
【0041】
次に本第1の実施の形態の作用を説明する。
【0042】
上記構成のウェビング巻取装置10では、スプール14とロックベース16とはトーションバー20によって連結されており、また、スプール14と歯車22とはブレーキスプリング26によって連結されているので、通常は、これらが一体に回転してウェビング34の引出し巻取りが自由とされる。
【0043】
車両急減速時には、急減速直前の乗員の慣性エネルギ(乗員の体重、体格、急減速直前の車両速度、急減速の加速度等をパラメータとする)に応じて作用が異なるので、乗員の慣性エネルギの大小の別に作用を説明する。
(乗員の慣性エネルギが小さい場合)
例えば、乗員の体重が小さい場合または急減速直前の車両速度が低い場合は、乗員の慣性エネルギが小さい。この場合、所定の加速度(減速度)が検知されるとロックプレート36がフレーム12に噛込み、ロックベース16のウェビング引出方向の回転が阻止される。このとき、ウェビング引張力がスプール14及びスリーブ18を介してトーションバー20にウェビング引出方向の回転力として作用する。
【0044】
このため、トーションバー20が捩じれ、ウェビング34に作用する荷重を一定に保ちながら(一定のフォースリミッタ荷重が作用しながら)スプール14がロックベース16に対してウェビング34引出方向(図1(B)に示す矢印Aの方向)へ回転されてウェビング34が引出され、エネルギ吸収が果たされる。なお、駆動手段32は作動されず、歯車22はブレーキスプリング26を介してスプール14と一体に回転される。
【0045】
このときのウェビング引張力とスプール14の回転量は、図2の破線で示される関係となり、所定のフォースリミッタ荷重(図2のF1)がウェビング34に作用する。
(乗員の慣性エネルギが大きい場合)
一方、例えば、乗員の体重が大きい場合または急減速直前の車両速度が高い場合は、乗員の慣性エネルギが大きい。この場合、ロックベース16のウェビング引出方向の回転が阻止されると共に、駆動手段32が作動しパウル28が歯車22のロック歯24に係合することにより歯車22のウェビング引出方向の回転も阻止される。このため、ウェビング引張力が作用するとトーションバー20が捩じれると共に、ブレーキスプリング26の制動力に抗しながらスプール14がロックベース16及び歯車22に対してウェビング引出方向へ回転されるため、トーションバー20の捩り荷重に加えてブレーキスプリング26の制動荷重がフォースリミッタ荷重としてウェビング34に作用する。
【0046】
このときのウェビング引張力とスプール14の回転量とは、図2の実線で示される関係となり、トーションバーの捩り荷重のみによって得られるフォースリミッタ荷重(図2のF1)より大きなフォースリミッタ荷重(図2のF2)が得られるため、ウェビング34引出速度(スプール14回転速度)を低く押さえて適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0047】
したがって、図2に示される如く、車両急減速直前の乗員の慣性エネルギに応じて大小二のフォースリミッタ荷重特性(図2の破線及び実線)を選択して適切なエネルギ吸収を果たすことができる。
【0048】
このように、第1の実施の形態に係るウェビング巻取装置10では、構造が簡単でかつ乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を確実に変更することができる。
【0049】
次に、本発明の第2の実施の形態を図3に基づいて説明する。なお、前記第1の実施の形態と基本的に同一の部品には前記第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図3には、第2の実施の形態に係るウェビング巻取装置50の構成が示されている。このウェビング巻取装置50では、スリーブ18のスプール52に挿入されていない部分の外周部に、例えば、図示しないベアリング等を介して、歯車56がスプール52と同軸的でかつ回転自在に設けられている。歯車56の外周部には、第2のロック手段を構成するロック歯58が設けられている。
【0051】
また、ウェビング巻取装置50では、一端部が歯車56の側面に固定された状態で、中間部及び他端部がスプール52の歯車56設置側の端部に開口して設けられた孔54に抜き出し自在に挿入されたワイヤ60が設けられている。ここで、孔54は、トーションバー20等が挿入される中心孔と干渉しないように設けられている。これにより、歯車56は、ワイヤ60を介してスプール52と連結されており、通常は、スプール52と一体に回転するようになっており、また、ワイヤ60は孔54に挿入された状態が保持される構成となっている。
【0052】
なお、孔54は、例えばスプール52の軸線に沿った直線状であってもスプール52の軸線に対して螺旋状であってもその他の曲線状であっても良い。さらに、孔54及びワイヤ60は複数設けても良い。
【0053】
次に本第2の実施の形態の作用を説明する。なお、車両急減速時において乗員の慣性エネルギが小さい場合は、前記第1の実施の形態と同様の作用であるため、説明を省略する。
【0054】
上記構成のウェビング巻取装置50では、スプール52とロックベース16とはトーションバー20によって連結されており、スプール52と歯車56とがワイヤ60によって連結されているので、通常は、これらが一体に回転してウェビング34の引出し巻取りが自由とされる。
【0055】
車両急減速時において乗員の慣性エネルギが大きい場合、ロックベース16のウェビング引出方向の回転が阻止されると共に、駆動手段32が作動しパウル28が歯車56のロック歯58に係合することにより歯車56のウェビング引出方向の回転も阻止される。このため、ウェビング引張力が作用するとトーションバー20が捩じれると共に、一端部及び中間部をスプール52に設けられた孔54内に挿入されていたワイヤ60がスプールからの抜き出しに伴って出口部においてしごかれ回転部材側面に巻き取られながら、スプール52が図3(B)の矢印Aの方向へ回転するため(図3(C)及び(D)参照)、トーションバー20の捩り荷重に加えてワイヤ60のしごき荷重がフォースリミッタ荷重としてウェビング34に作用する。
【0056】
このときのウェビング引張力とスプール52の回転量は、図4の実線で示される関係となり、トーションバーの捩り荷重のみによって得られるフォースリミッタ荷重(図4のF1)より大きなフォースリミッタ荷重(図4のF2)が得られるため、ウェビング34引出速度(スプール52回転速度)を低く押さえて適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0057】
また、図4の実線に示される如く、スプール52が所定量回転するとワイヤ60が全長に亘ってスプール52から抜き出されるため、フォースリミッタ荷重が減少する(図4の荷重F1)。これは、車両急減速の初期には荷重F2を付加して時間当りのエネルギ吸収量を大きくしてウェビング34の引出量(乗員の移動量)を抑えて、所定のエネルギ吸収後はより小さい荷重F1を付加して時間当りのエネルギ吸収量を小さくすることによって乗員への負荷を軽減することができるため、望ましい特性である。特に、エアバッグ装置を備えた車両においては、エアバッグと乗員との接触直前にフォースリミッタ荷重を減少することによって乗員に作用する荷重を減じることが可能で乗員の傷害をさらに軽減することができる。また、エアバッグ装置を備えない車両においても、ステアリングホイールやインストルメントパネル(ダッシュボード)等の車内物と乗員との接触直前にフォースリミッタ荷重を減少することによって乗員に作用する荷重を減じることが可能で乗員の傷害を軽減することができる。
【0058】
なお、荷重F2を保持するスプール52の回転量(図4のA部)は、ワイヤ60の長さによって設定可能である。すなわち、スプール52の許容回転量(トーションバー20の捩れ限界)に対してワイヤ60を長くしておくことによってフォースリミッタ荷重をF2に保つことも可能である。
【0059】
したがって、図4に示される如く、車両急減速直前の乗員の慣性エネルギに応じて大小二のフォースリミッタ荷重特性(図4の破線及び実線)を選択して適切なエネルギ吸収を果たすことができる。
【0060】
このように、第2の実施の形態に係るウェビング巻取装置50では、構造が簡単でかつ乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を確実に変更することができる。
【0061】
次に、本発明の第3の実施の形態を図5に基づいて説明する。なお、前記第1の実施の形態と基本的に同一の部品には前記第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図5には、第3の実施の形態に係るウェビング巻取装置70の構成が示されている。このウェビング巻取装置70では、スプール72のスリーブ18挿入側端部(図5(A)の右側端)に、円柱状の突起74が設けられている。
【0063】
また、スリーブ18のスプール72に挿入されていない部分の径方向外側には歯車76がスプール72と同軸的でかつ回転自在に設けられている。歯車76の外周部には、第2のロック手段を構成するロック歯78が設けられている。
【0064】
歯車76には、軸廻りに略半円筒状に形成された一対のハブ76A及びハブ76Bが所定の隙間82A及び隙間82Bを介して相対した状態で、スプール72に向けて設けられている。また、ハブ76A及びハブ76Bは、スリーブ18との間に略半円弧状の所定の隙間84A及び隙間84Bを有するように構成されている。
【0065】
また、隙間84Aには、プレート80の中間部が挿入されスリーブ18とハブ76Aとによってプレート80が挟持される構成となっている。プレート80は、それぞれ隙間82Aまたは隙間82Bを通してハブ76A及びハブ76Bの径方向外側に歯車76の側面に沿って案内され、スプール72に設けられた突起74のスプール72のウェビング引出方向(図5(B)の矢印A方向)回転側に係合されている。さらに、プレート80は、ロック歯78に干渉しないように突起74外周に沿って湾曲、収容されている(図5(B)参照)。
【0066】
これにより、プレート80及びスリーブ18を介して歯車76とスプール72とが連結され、通常は、スプール72と歯車76とが一体に回転する構成となっている。また、プレート80は、通常は、ハブ76A及びハブ76Bの径方向外側においては拘束を受けない状態で突起74と係合する構成となっている。
【0067】
なお、プレート80を1枚とせず、複数設けても良い。この場合、突起74は必要に応じて増加することができ、ハブは必要に応じて分割されるものとする。
【0068】
また、一端部がスリーブ18とハブとの間で挟持され、中間部及び他端部がハブの径方向外側に案内された1枚または複数のプレートを設けた構成としても良い。この場合も、突起74は必要に応じて1個とすることも、増加することもでき、ハブは必要に応じて分割されるものとする。
【0069】
次に本第3の実施の形態の作用を説明する。なお、車両急減速時において乗員の慣性エネルギが小さい場合は、前記第1の実施の形態と同様の作用であるため、説明を省略する。
【0070】
上記構成のウェビング巻取装置70では、スプール72とロックベース16とはトーションバー20によって連結されており、スプール52と常に一体に回転するスリーブ18と歯車76に設けられたハブ76Aとの間にプレート80挟持することにより連結されているので、通常は、これらが一体に回転してウェビング34の引出し巻取りが自由とされる。
【0071】
車両急減速時において乗員の慣性エネルギが大きい場合、ロックベース16のウェビング引出方向の回転が阻止されると共に、駆動手段32が作動しパウル28が歯車76のロック歯78に係合することにより歯車76のウェビング引出方向の回転も阻止される。
【0072】
このため、ウェビング引張力が作用するとトーションバー20が捩じれると共に、スプール72側面に設けられた突起74によって歯車76側面に設けられ運動が停止されたプレート80がしごかれ(図5(C)参照)、かつプレート80とスリーブ18との間の摩擦力に抗しながらスプール72が図5(B)の矢印Aの方向へ回転するため、トーションバー20の捩り荷重に加えてプレート80のしごき荷重及びプレート80とスリーブ18との間の摩擦荷重がフォースリミッタ荷重としてウェビング34に作用する。
【0073】
このときのウェビング引張力とスプール72の回転量は、図6の実線で示される関係となり、トーションバーの捩り荷重のみによって得られるフォースリミッタ荷重(図6のF1)より大きなフォースリミッタ荷重(図6のF2)が得られるため、ウェビング34引出速度(スプール72回転速度)を低く押さえて適切なエネルギ吸収が果たされる。
【0074】
また、図6の実線に示される如く、スプール72が所定量回転すると、プレート80が全長に亘ってハブ76A及びハブ76B外周部に巻き取られることにより突起74とプレート80との係合が解かれるため、フォースリミッタ荷重が減少する(図6の荷重F3)。これは、車両急減速の初期には荷重F2を付加して時間当りのエネルギ吸収量を大きくしてウェビング引出量(乗員の移動量)を抑えて、所定のエネルギ吸収後はより小さい荷重F3を付加して時間当りのエネルギ吸収量を小さくすることによって乗員への負荷を軽減することができるため、望ましい特性である。特に、エアバッグ装置を備えた車両においては、エアバッグと乗員との接触直前にフォースリミッタ荷重を減少することによって乗員に作用する荷重を減じることが可能で乗員の傷害をさらに軽減することができる。また、エアバッグ装置を備えない車両においても、ステアリングホイールやインストルメントパネル(ダッシュボード)等の車内物と乗員との接触直前にフォースリミッタ荷重を減少することによって乗員に作用する荷重を減じることが可能で乗員の傷害を軽減することができる。
【0075】
なお、荷重F2を保持するスプール72の回転量(図6のA部)は、プレート80の長さによって設定可能である。すなわち、スプール52の許容回転量(トーションバーの捩れ限界)に対してプレート80を長くしておくことによってフォースリミッタ荷重をF2に保つことも可能である。
【0076】
さらに、プレート80の長さに依存しないプレート80とスリーブ18との間の摩擦抵抗を利用しているため、スプール72が所定量回転した後においてもF1よりも大きいフォースリミッタ荷重F3を維持することができる。
【0077】
したがって、図6に示される如く、車両急減速直前の乗員の慣性エネルギに応じて大小二のフォースリミッタ荷重特性(図6の破線及び実線)を選択して適切なエネルギ吸収を果たすことができる。
【0078】
このように、第3の実施の形態に係るウェビング巻取装置70では、構造が簡単でかつ乗員の慣性エネルギに応じてフォースリミッタ荷重を確実に変更することができる。
【0079】
なお、上記第1から第3の実施の形態では、車両急減速時の乗員の慣性エネルギに応じて2種類のフォースリミッタ荷重特性を選択可能な構成としたが、車両急減速時にロック手段を作動させず駆動手段32のみを作動させ歯車22または歯車56または歯車76の回転のみを阻止した場合の第3のフォースリミッタ荷重特性を選択可能な構成としても良い。
【0080】
また、上記第1から第3の実施の形態では、車両衝突時等の車両急減速時に、乗員の体重、急減速直前の車両速度、加速度(減速度)等を検知して乗員の慣性エネルギに応じたフォースリミッタ荷重を変更する構成としたが、例えば、乗員が着座した際に、乗員の体重等に応じて歯車22または歯車56または歯車76の回転を予め阻止する構成としても良い。この場合、車両急減速直前の車両速度や加速度(減速度)に応じて歯車22または歯車56または歯車76の回転阻止状態を解除可能な構成とすることもできる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係るウェビング巻取装置は、構造が簡単でフォースリミッタ荷重を変更することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るウェビング巻取装置の全体構成を示す断面図、(B)はフレーム内側から見た概略右側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るウェビング巻取装置におけるウェビング引張力(フォースリミッタ荷重)とウェビング引出方向回転量との関係を示す線図である。
【図3】(A)は本発明の第2の実施の形態に係るウェビング巻取装置の全体構成を示す断面図、(B)はフレーム内側から見た概略右側面図、(C)は駆動手段作動時の断面図、(D)は駆動手段作動時の概略右側面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るウェビング巻取装置におけるウェビング引張力(フォースリミッタ荷重)とウェビング引出方向回転量との関係を示す線図である。
【図5】(A)は本発明の第3の実施の形態に係るウェビング巻取装置の全体構成を示す断面図、(B)はA−A方向から見た概略側面図、(C)はA−A方向から見た駆動手段作動時の概略側面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るウェビング巻取装置におけるウェビング引張力(フォースリミッタ荷重)とウェビング引出方向回転量との関係を示す線図である。
【符号の説明】
10 ウェビング巻取装置
12 フレーム
14 スプール
16 ロックベース
18 スリーブ
20 トーションバー
22 歯車(回転部材)
24 ロック歯(第2のロック手段)
26 ブレーキスプリング(抵抗手段)
28 パウル(第2のロック手段)
30 ピン
32 駆動手段(第2のロック手段)
34 ウェビング
36 ロックプレート(第1のロック手段)
50 ウェビング巻取装置
52 スプール
54 孔
56 歯車(回転部材)
60 ワイヤ(抵抗手段)
70 ウェビング巻取装置
72 スプール
74 突起(抵抗手段)
76 歯車(回転部材)
76A ハブ
80 プレート(抵抗手段)

Claims (5)

  1. ウェビングが巻取り引出しされる筒状のスプールと、
    前記スプールの一端側に前記スプールと同軸的でかつ相対回転可能に設けられたロックベースと、
    前記ロックベースに接続して設けられ、所定の加速度が検知された際にフレームに係合して前記ロックベースのウェビング引出方向回転を阻止する第1のロック手段と、
    前記スプール内に前記スプールと同軸的に設けられ、一端が前記スプールに連結されると共に他端が前記ロックベースに連結され、通常は前記スプールと前記ロックベースとを一体に回転させ、前記第1のロック手段による前記ロックベースのウェビング引出方向回転阻止状態ではウェビング引張力により捩じれながら前記スプールを前記ロックベースに対してウェビング引出方向へ相対回転させるトーションバーと、
    を備えたウェビング巻取装置において、
    前記スプールと同軸的でかつ回転自在に設けられた回転部材と、
    前記回転部材に係合してそのウェビング引出方向回転を阻止する第2のロック手段と、
    前記スプールと前記回転部材とに連結され、通常は前記スプールと前記回転部材とを一体に回転させ、前記第2のロック手段による前記回転部材のウェビング引出方向回転阻止状態では前記スプールの回転の抵抗となる抵抗手段と、
    を備えたことを特徴とするウェビング巻取装置。
  2. 前記回転部材を、外周部にロック歯を有する歯車とし、
    前記第2のロック手段を、前記ロック歯に係合可能なパウルと、前記パウルを前記ロック歯と係合しない位置から前記ロック歯と係合する位置まで移動させる駆動手段と、で構成した、
    ことを特徴とする請求項1記載のウェビング巻取装置。
  3. 前記抵抗手段を、コイル状に形成され、両端部が前記回転部材に固定されると共に内周部が前記スプールの外周部に接触するブレーキスプリングとした、ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のウェビング巻取装置。
  4. 前記抵抗手段を、一端部が前記回転部材に固定され、他端部及び中間部が前記スプール内に挿入されたワイヤとしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のウェビング巻取装置。
  5. 前記抵抗手段を、前記スプールの一端部側面に設けられた突起と、一部が前記回転部材と前記スプールとの間に挟持されると共に少なくとも一方の端部が拘束を受けない状態で前記回転部材側面に設けられ、前記スプールのウェビング引出方向の回転が阻止された際に前記突起と係合可能なプレートと、で構成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のウェビング巻取装置。
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