ところで、このようなウエビング巻取装置では、例えば、座席に着座した乗員が座席の座面に付与する荷重をセンサで検出し、センサが検出した荷重が一定値を超えていない場合には、車両の急減速状態等に速度をセンシングして、ソレノイドや火薬等のアクチュエータを作動させ、第2ロック機構によるトーションシャフトの他端の保持が可能な状態から不能な状態に切り替えている。
しかしながら、このようなセンサや、配線、アクチュエータ、及びシステムは高価でウエビング巻取装置のコストの削減の障害の一因となっている。
本発明は、上記事実を考慮して、ガスジェネレータのような高価な部品を用いずに乗員の体格に応じてエネルギー吸収手段によるエネルギー吸収量を変えることができるウエビング巻取装置を得ることが目的である。
請求項1に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、長尺帯状に形成されたウエビングベルトの基端部が係止され、自らの軸周りの一方である巻取方向に回転することで前記ウエビングベルトを基端側から層状に巻き取って収納すると共に、前記ウエビングベルトが先端側へ引っ張られて引き出されることで前記巻取方向とは反対の引出方向に回転するスプールと、前記スプールの中心軸心に沿って前記スプールの内側に配置されると共に、軸方向中間部にて前記スプールに一体的に連結されたエネルギー吸収手段と、車両の急減速状態及び前記スプールが前記引出方向に一定の加速度以上で回転を開始した際に作動し、前記エネルギー吸収手段の一端を保持して前記スプールとの連結部分よりも一端側における前記エネルギー吸収手段の前記引出方向への回転を規制する第1ロック手段と、前記第1ロック手段に連動して前記エネルギー吸収手段の他端の保持が可能で、前記エネルギー吸収手段の他端を保持した状態では前記スプールとの連結部分よりも他端側における前記エネルギー吸収手段の前記引出方向への回転を規制する第2ロック手段と、前記スプール及び前記第2ロック手段の双方に直接又は間接的に連結され、前記引出方向への前記スプールが一定量回転するまでは前記第2ロック手段を前記エネルギー吸収手段の他端の保持が不能な状態とし、前記引出方向への前記スプールが一定量回転することで作動して前記第2ロック手段を前記エネルギー吸収手段の他端の保持が可能な状態に切り替える切替手段と、を備えている。
請求項1に記載の本発明に係るウエビング巻取装置によれば、乗員の身体にウエビングベルトが掛け回されている状態で、車両が急減速状態になったり、又は、このような車両が急減速した際の慣性で乗員の身体が急激にウエビングベルトを引っ張り、これにより、スプールが急激に引出方向に回転したりすると第1ロック手段が作動する。第1ロック手段が作動すると、エネルギー吸収手段の一端が保持され、これにより、エネルギー吸収手段の引出方向への回転が規制され、ひいては、スプールの引出方向への回転が規制される。
一方、本発明に係るウエビング巻取装置では、乗員が小柄で、乗員の身体に掛け回すために必要なウエビングベルトの長さが一定値を超えていないと、スプールが一定量引出方向に回転しない。このため、この状態では、第2ロック手段がエネルギー吸収手段の他端の保持可能な状態に切り替わらない。
この状態では、第1ロック手段によりスプールの一端が保持されているので、スプールとの連結部分よりも一端側でのエネルギー吸収手段の機械的強度を上回る引出方向への回転力が、スプールを介してエネルギー吸収手段とスプールとの連結部分に付与されると、エネルギー吸収手段のスプールとの連結部分よりも一端側で捩じり変形が生じる。このエネルギー吸収手段の変形分だけスプールからのウエビングベルトの引き出しが許容され、ウエビングベルトに拘束されている乗員の身体は、スプールからのウエビングベルトの引出分だけ前方へ移動できる。さらに、このようにエネルギー吸収手段に捩じり変形することで荷重が吸収される。
これに対して、乗員が大柄で、乗員の身体に掛け回すために必要なウエビングベルトの長さが一定値を超えていると、スプールが一定量を超えて引出方向に回転する。このように、スプールが一定量を超えて引出方向に回転すると、スプールに直接又は間接的に連結された切替手段が作動し、切替手段に直接又は間接的に連結された第2ロック手段をエネルギー吸収手段の他端の保持が可能な状態に切り替える。
この状態では、第1ロック手段と第2ロック手段とによりエネルギー吸収手段の両端が保持されているため、スプールとの連結部分よりも一端側でのエネルギー吸収手段の機械的強度と、スプールとの連結部分よりも他端側でのエネルギー吸収手段の機械的強度との和を上回る引出方向への回転力がスプールを介してエネルギー吸収手段とスプールとの連結部分に付与されることでエネルギー吸収手段に捩じり変形が生じる。
すなわち、本発明に係るウエビング巻取装置においては、乗員が小柄な場合に比べて大柄な場合にエネルギー吸収手段の捩じり変形に必要な引出方向へのスプールの回転力を大きくできる。しかも、このような切り替えは引出方向へのスプールの回転量に基づいて機械的になされるので、ガスジェネレータや乗員の体格を検出するセンサ等が不要でコストを安価にできる。
請求項2に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項1に記載の本発明において、前記スプールの回転に連動して回転すると共に、前記引出方向への前記スプールの回転に連動した一定量回転で前記エネルギー吸収手段の他端の保持が可能な位置へ前記第2ロック手段を移動させる回転体を含めて前記切替手段を構成することを特徴としている。
請求項2に記載の本発明に係るウエビング巻取装置によれば、乗員がウエビングベルトを装着するためにウエビングベルトを引き出すと、スプールが引出方向に回転する。このようにスプールが回転すると、このスプールの回転に連動して切替手段を構成する回転体が回転する。
ウエビングベルトを装着しようとする乗員が大柄で、乗員の身体に掛け回すために必要なウエビングベルトの長さが一定値を超えていると、スプールが一定量を超えて引出方向に回転する。このように、スプールが一定量を超えて引出方向に回転し、これに伴い、回転体の回転量が一定値を超えると、回転体により第2ロック手段をエネルギー吸収手段の他端の保持が可能な位置へ移動させられる。これにより、この状態で車両が急減速状態になったり、スプールが急激に引出方向に回転したりすると第1ロック手段及び第2ロック手段によりエネルギー吸収手段の他端が保持される。
請求項3に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、長尺帯状のベルト部材の基端部が係止され、自らの軸周りの一方である巻取方向に回転することで前記ベルト部材を基端側から層状に巻き取って収納すると共に、前記ベルト部材が先端側へ引っ張られて引き出されることで前記巻取方向とは反対の引出方向に回転するスプールと、前記スプールに機械的に連結されて、前記スプールの回転に伴い回転すると共に、一端がロックされた状態で他端に所定の大きさ以上のトルクが前記スプールとの連結部位に付与されることで捩じり変形が生じるエネルギー吸収手段と、車両の急減速状態及び前記スプールが前記引出方向に一定の加速度以上で回転を開始した際に作動し、前記エネルギー吸収手段の一端を保持して前記スプールとの連結部分よりも一端側における前記エネルギー吸収手段の前記引出方向への回転を規制するロック手段と、前記スプールの前記引出方向への回転により前記エネルギー吸収手段の前記スプールとの連結部分に前記トルクを付与すると共に、前記ベルト部材と同一又は前記ベルト部材とは別体で構成されて前記ベルト部材に機械的に繋がっている拘束ベルトを乗員の身体に掛け回して装着するに際して必要な前記拘束ベルトの長手方向に沿った前記拘束ベルトの変位量に応じて前記エネルギー吸収手段の前記スプールとの連結部位に付与するトルクの大きさを変化させるトルク増減手段と、を備えている。
請求項3に記載の本発明に係るウエビング巻取装置によれば、乗員の身体に拘束ベルトが掛け回されている状態で、車両が急減速状態になったり、又は、このような車両が急減速した際の慣性で乗員の身体が急激に拘束ベルトを引っ張り、これにより、スプールが急激に引出方向に回転したりするとロック手段が作動する。ロック手段が作動すると、エネルギー吸収手段の一端が保持される。エネルギー吸収手段はスプールに機械的に連結されているため、エネルギー吸収手段の一端が保持されることで、スプールの引出方向への回転が規制され、拘束ベルトと同一又は拘束ベルトとは別に構成されて拘束ベルトに繋がっているベルト部材のスプールからの引き出しが規制される。
一方、本発明に係るウエビング巻取装置では、スプールが引出方向に回転すると、この回転量に応じたトルクがトルク増減手段を介してエネルギー吸収手段のスプールとの連結部位に伝えられる。ここで、トルク増減手段は拘束ベルトを引っ張った際の引っ張り量に応じてエネルギー吸収手段のスプールとの連結部位に伝えるトルクの大きさを変化させる。
このため、乗員が小柄で乗員の身体に掛け回すために必要な拘束ベルトの長さが短い場合に比べて乗員が大柄で乗員の身体に掛け回すために必要な拘束ベルトの長さが長い場合には、拘束ベルトの引っ張り量が長くなり、これに応じてスプールが引出方向に1回転した際にトルク増減手段がエネルギー吸収手段のスプールとの連結部位に伝えるトルクは小さくなる。
これにより、エネルギー吸収手段を捩じり変形させるためのスプールの引出方向への回転力は、乗員が小柄の場合に比べて大柄の場合の方が大きくなる。しかも、このようなトルクの増減にガスジェネレータや乗員の体格を検出するセンサ等が不要でコストを安価にできる。
請求項4に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項3に記載の本発明において、前記拘束ベルトの長手方向基端部に設けられ、車体に先端が係止された前記ベルト部材の長手方向中間部が折り返された状態で支持される支持手段を含めて前記トルク増減手段を構成することを特徴としている。
請求項4に記載の本発明に係るウエビング巻取装置によれば、拘束ベルトとは別体で構成されたベルト部材の先端側は車体に係止される。このベルト部材の長手方向中間部は折り返され、この折り返し部分が支持手段により支持される。支持手段は拘束ベルトの長手方向基端部に設けられており、乗員が拘束ベルトを装着するために拘束ベルトを引っ張ると、拘束ベルトと共に支持手段が移動する。このように支持手段が移動すると、支持手段に支持されたベルト部材の長手方向中間部が引っ張られる。このようにして支持手段が移動すると、ベルト部材の支持手段による支持位置から先端までの長さが支持手段の移動量だけ長くなり、また、ベルト部材の支持手段による支持位置からスプールまでの長さも支持手段の移動量だけ長くなる。このため、スプールからは支持手段の移動量、すなわち、拘束ベルトの引っ張り長さの2倍だけスプールからベルト部材が引き出される。
したがって、ベルト部材を用いずに拘束ベルトの長手方向基端側をスプールに係止させた従来のウエビング巻取装置に比べて、本発明に係るウエビング巻取装置では拘束ベルトの引き出し長さに応じたスプールの回転数を大きくでき、この結果、拘束ベルトの引っ張り長さに対するスプールの回転軸心位置からベルト部材の最外周位置までの長さの変化量を大きくできる。
このように、拘束ベルトの引っ張り長さに対するスプールの回転軸心位置からベルト部材の最外周位置までの長さの変化量が大きくなることでエネルギー吸収手段のスプールとの連結部位に伝わるトルクの増減が大きくなる。これにより、エネルギー吸収手段を捩じり変形させるためのスプールの引出方向への回転力は、乗員が小柄の場合に比べて大柄の場合の方が大きくなる。しかも、このようなトルクの増減にガスジェネレータや乗員の体格を検出するセンサ等が不要でコストを安価にできる。
しかも、本発明に係るウエビング巻取装置では、ベルト部材は乗員の身体に拘束される拘束ベルトとは別体であるため、ベルト部材の幅寸法等を拘束ベルトよりも短くできる。このため、スプールの軸方向長さを短くでき、装置の本体部分を小型化できる。
さらに、乗員の身体に装着される拘束ベルトとは異なりベルト部材はスプールに巻き取れる程度の可撓性を有していればよい。このため、ベルト部材の厚さ寸法を拘束ベルトよりも大きく設定することが可能になる。このように、ベルト部材の厚さ寸法を大きく(厚く)設定することで、スプールの1回転当たりのスプールの回転軸心位置からベルト部材の最外周位置までの長さの変化量を更に大きくできる。
請求項5に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項3又は請求項4に記載の本発明において、先端側が前記スプールに係止されて厚さ方向に沿って前記ベルト部材と重なった状態で前記ベルト部材と共に前記スプールに巻き取られると共に、前記ベルト部材が引き出される際に前記スプールに巻き取られた部分が前記ベルト部材と共に前記スプールから引き出される巻厚増加ベルトを含めて前記トルク増減手段を構成することを特徴としている。
請求項5に記載の本発明に係るウエビング巻取装置によれば、スプールにはベルト部材がその長手方向基端側から巻き取られる。また、このスプールには巻厚増加ベルトの先端側が係止されており、スプールが巻取方向に回転してベルト部材が長手方向基端側から巻き取られる際には、ベルト部材に巻厚増加ベルトが重なった状態で巻き取られる。
すなわち、スプールが巻取方向に1回転すると、スプールの中心軸心位置からベルト部材の最外周までの長さは、ベルト部材の厚さと巻厚増加ベルトの厚さとの和だけ増加し、スプールが引出方向に1回転すると、スプールの中心軸心位置からベルト部材の最外周までの長さは、ベルト部材の厚さと巻厚増加ベルトの厚さとの和だけ減少する。
このため、巻厚増加ベルトを備えない従来のウエビング巻取装置では、ベルト部材の厚さとスプールの回転回数との積だけしかスプールの中心軸心位置からベルト部材の最外周までの長さが増減しないのに対し、本発明に係るウエビング巻取装置では更に巻厚増加ベルトの厚さとスプールの回転回数との積の分の長さだけ増減することになる。
このため、トルク増減手段を介してエネルギー吸収手段のスプールとの連結部位に伝わるトルクの増減が大きくなる。これにより、エネルギー吸収手段を捩じり変形させるためのスプールの引出方向への回転力は、乗員が小柄の場合に比べて大柄の場合の方が大きくなる。しかも、このようなトルクの増減にガスジェネレータや乗員の体格を検出するセンサ等が不要でコストを安価にできる。
請求項6に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項3から請求項5の何れか1項に記載の本発明において、前記スプールに前記ベルト部材が巻き取られる際に、前記ベルト部材の幅方向端部が前記ベルト部材幅方向中央側へ向くように前記ベルト部材の幅方向中間部にて前記ベルト部材を折り曲げる折り曲げ手段を含めて前記トルク増減手段を構成することを特徴としている。
請求項6に記載の本発明に係るウエビング巻取装置によれば、ベルト部材がスプールに巻き取られる際に折り曲げ手段によってベルト部材の幅方向端部がベルト部材幅方向中央側へ向くようにベルト部材の幅方向中間部にてベルト部材を折り曲げられる。このため、ベルト部材はこのように折り曲げられた状態でスプールに巻き取られる。
このように、ベルト部材が折り曲げられた状態でスプールに巻き取られることで、スプール1回転あたりのスプールの回転軸心位置からベルト部材の最外周位置までの長さの変化量は、ベルト部材の厚さ2倍以上になる。このため、エネルギー吸収手段のスプールとの連結部位に伝わるトルクの増減が大きくなる。これにより、エネルギー吸収手段を捩じり変形させるためのスプールの引出方向への回転力は、乗員が小柄の場合に比べて大柄の場合の方が大きくなる。しかも、このようなトルクの増減にガスジェネレータや乗員の体格を検出するセンサ等が不要でコストを安価にできる。
請求項7に記載の本発明に係るウエビング巻取装置は、請求項3から請求項6の何れか1項に記載の本発明において、前記スプールと前記エネルギー吸収手段の他端とを連結すると共に、前記スプールの引出方向への回転数の増加に連動して前記スプールから前記エネルギー吸収手段への回転伝達比が増加する連結手段を含めて前記前記トルク増減手段を構成することを特徴としている。
請求項7に記載の本発明に係るウエビング巻取装置によれば、スプールとエネルギー吸収手段とは連結手段により連結され、ロック手段によってエネルギー吸収手段の一端が保持された状態でスプールに引出方向への回転力が作用すると、この回転力が連結手段を介してエネルギー吸収手段に伝わり、この回転力がエネルギー吸収手段の機械的強度を上回っていれば、エネルギー吸収手段が捩じり変形させられる。
ところで、連結手段はスプールの回転をエネルギー吸収手段の他端へ伝えるが、スプールの引出方向への回転数が増加するにつれてスプールからエネルギー吸収手段への回転伝達比(回転比)が大きくなる。このため、エネルギー吸収手段を捩じり変形させるためのスプールの引出方向への回転力は、乗員が小柄の場合に比べて大柄の場合の方が大きくなる。しかも、このようなトルクの増減にガスジェネレータや乗員の体格を検出するセンサ等が不要でコストを安価にできる。
以上説明したように、本発明に係るウエビング巻取装置では、ガスジェネレータのような高価な部品を用いずに乗員の体格に応じてエネルギー吸収手段によるエネルギー吸収量を変えることができる。
<第1の実施の形態の構成>
図5には本発明の第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10の構成の概略が正面断面図によって示されている。
この図に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は、車体に固定される板状の背板14を備えている。背板14の幅方向一方の端部からは脚板16が背板14に対して略直角に延出されている。これに対して、背板14の幅方向他端部からは脚板18が脚板16の延出方向と同方向に延出されており、フレーム12は平面視で略凹形状となっている。
脚板16と脚板18との間にはスプール20が設けられている。スプール20は軸方向が脚板16と脚板18との対向方向に沿った筒形状とされており、その軸方向中間部には長尺帯状のウエビングベルト22の基端部が係止されている。スプール20はその軸周りの一方である巻取方向へ回転することでウエビングベルト22の基端側から層状に巻き取って収納する。
一方、スプール20はその中心軸線に沿って中空とされており、その内側にはエネルギー吸収手段としてのトーションシャフト24が収容されている。トーションシャフト24はスプール側結合部26を備えている。スプール側結合部26はスプール20の軸方向両端の間に位置しており、このスプール側結合部26にてトーションシャフト24がスプール20に一体的に連結されている。トーションシャフト24の脚板16の側の端部からは棒状の第1変形部28がスプール20に対して同軸的に延出されている。
一方、脚板16の脚板18とは反対側(脚板16の側におけるフレーム12の外方)には第1ロック手段としての第1ロック機構30が設けられている。第1ロック機構30はハウジング32を備えている。ハウジング32は脚板16の脚板18とは反対側の面に固定されている。ハウジング32の内側にはロックベース34が収容されている。ロックベース34はスプール20の軸方向に沿ってみた場合の側面視で円形の連結部36を備えている。連結部36はスプール20に対して同軸的に相対回転可能にスプール20に連結されていると共に、第1変形部28のスプール側結合部26とは反対側に形成された結合部38が連結部36に対して相対回転不能な状態で連結されている。
ロックベース34はラチェット部40を備えている。図4に示されるように、ラチェット部40は外周部にラチェット歯が形成されたギヤで、連結部36に対して同軸的且つ一体的に形成されており、このラチェット部40の連結部36とは反対側の端部においてスプール20に対して同軸的に形成された軸部等が直接又は他の軸部材を介してハウジング32に回転可能に支持されている。ラチェット部40の外周部の側方にはロックパウル42が配置されている。ロックパウル42はラチェット部40の外周部に対して接離移動可能にフレーム12に支持されている。
ハウジング32の内側には車両が急減速状態になった場合やスプール20が急激に上記の巻取方向とは反対の引出方向に回転した際にロックパウル42をラチェット部40の外周部へ接近させる構成が収容されており、これらの構成がロックパウル42をラチェット部40の外周部へ接近させると、図4の仮想線(二点鎖線)で示されるように、ロックパウル42に形成されたラチェット歯がラチェット部40の外周部に形成されたラチェット歯に噛み合い、ラチェット部40の引出方向への回転を規制するようになっている。
一方、図5に示されるように、脚板18の脚板16とは反対側(脚板18の側におけるフレーム12の外方)には第2ロック手段としての第2ロック機構44が設けられている。第2ロック機構44はハウジング46を備えている。ハウジング46は脚板18の脚板16とは反対側で脚板18に固定されている。ハウジング46の内側にはスプール20に対して同軸的な略円板状のロックベース48が収容されている。ロックベース48に対応してスプール側結合部26の脚板18側の面からは棒状の第2変形部50が連続して形成されている。
この第2変形部50のスプール側結合部26とは反対側の端部には第2結合部52が第2変形部50に対して同軸的且つ一体的に形成されており、この第2結合部52がロックベース48に対して同軸的な相対回転が不能に連結されている。図1に示されるように、ロックベース48には一対のパウル収容部54が形成されている。これらのパウル収容部54はロックベース48の外周一部にて開口していると共に、ロックベース48のスプール20とは反対側の端面にて開口している。
これらのパウル収容部54内には、噛合パウル56が収容されている。各噛合パウル56はパウル収容部54内に形成されたパウル支持ピン58によりスプール20と平行な軸周りに回動可能に軸支されている。各噛合パウル56は基本的にパウル収容部54内に収容されているが、パウル支持ピン58周りの一方へ回動すると、各噛合パウル56の先端側はパウル収容部54の外周部における開口部分から外側へ突出する。
一方、上記のロックベース48を介してスプール20とは反対側には回転円板60が設けられている。回転円板60は第2結合部52の第2変形部50とは反対側の面から第2変形部50に対して同軸的に突出形成された軸部62に回転可能に軸支されている。回転円板60のロックベース48側の面からは一対の誘導ピン64が突出形成されている。
これらの誘導ピン64に対応して噛合パウル56の各々には長孔66が形成されている。一方の誘導ピン64は一方の噛合パウル56に形成された長孔66に入り込んでおり、他方の誘導ピン64は他方の噛合パウル56に形成された長孔66に入り込んでいる。各噛合パウル56がパウル収容部54の内側に収容されている状態では長孔66の長手方向一端側に誘導ピン64が位置しており、回転円板60がロックベース48に対して相対的に巻取方向に回転すると、誘導ピン64が長孔66の長手方向他端側へ移動しつつ長孔66の内壁を押圧し、噛合パウル56がロックベース48の外方へ移動するように噛合パウル56をパウル支持ピン58周りに回動させる。
また、回転円板60のロックベース48側の端面からは平板状のプレート68が突出形成されている。このプレート68に対応してロックベース48には矩形のばね収容孔70が形成されており、プレート68がばね収容孔70に入り込んでいる。また、ばね収容孔70の内側には回転円板付勢ばね72が収容されている。
回転円板付勢ばね72は圧縮コイルスプリングとされており、その一端がばね収容孔70の内壁に圧接して他端はプレート68に圧接している。また、ばね収容孔70の内側にはストッパ74が入り込んでいる。ストッパ74はプレート68の回転円板付勢ばね72とは反対側に位置しており、回転円板付勢ばね72の付勢力によるプレート68の移動、ひいては、ロックベース48に対する回転円板60の巻取方向への相対回動を規制している。
ストッパ74は上記の第1ロック機構30やスプール20に対するロックベース34の巻取方向への相対回転に機械的に連動してばね収容孔70から抜け出るように構成されており、ばね収容孔70からストッパ74が抜け出ると、回転円板付勢ばね72の付勢力でプレート68がばね収容孔70内を移動し、回転円板60がロックベース48に対して巻取方向へ相対回動する。
一方、第2ロック機構44はロックリング76を備えている。ロックリング76はスプール20に対して同軸的に回動可能な状態でハウジング46に支持されている。ロックリング76はリング状に形成されており、内周部はその半径方向に沿ってロックベース48の外周部に対向している。ロックリング76の内周部はラチェット歯とされており、パウル支持ピン58周りに噛合パウル56がパウル収容部54の外側へ向けて回動して場合には、噛合パウル56に形成されたラチェット歯がロックリング76の内周部に形成されたラチェット歯に噛み合う。噛合パウル56のラチェット歯がロックリング76のラチェット歯に噛み合った状態では、ロックリング76に対するロックベース48の引出方向への相対回転が規制される。
一方、ロックリング76の外周一部にはラチェット歯78が形成されている。このラチェット歯78に対応してロックリング76の外周部の側方にはロックパウル80が配置されている。ロックパウル80はスプール20の軸方向に対して平行な軸周りにロックリング76の外周部に接離する方向へ回動可能とされており、ロックリング76の外周部に接近することでロックパウル80に形成されたラチェット歯がラチェット歯78に噛み合い、ロックリング76の引出方向への回転を規制する。
また、第2ロック機構44は、回転体として切替手段を構成する切替ギヤ82を備えている。切替ギヤ82は脚板18の側へ向けて開口した有底の筒状に形成されており、その外周部には外歯のギヤが形成されている。切替ギヤ82の外歯に対応して上記の軸部62には外歯のギヤ84が軸部62に対して同軸的且つ一体的に設けられている。
ギヤ84と切替ギヤ82とは互いに噛み合っており、スプール20の回転を切替ギヤ82に伝えることができるようになっている。ここで、切替ギヤ82とギヤ84とのギヤ比は、スプール20にそれ以上ウエビングベルト22を巻き取ることができない全格納状態から、ウエビングベルト22をスプール20から全て引き出した全引出状態までに要するスプール20の回転を切替ギヤ82の1回転未満の回転に減速するように設定されている。
また、この切替ギヤ82の内側にはロックパウル80の先端側から突出形成された摺接ピン86が入り込んでいる。この摺接ピン86に対応して切替ギヤ82の内側には切替カム88が切替ギヤ82に対して一体的に設けられている。切替カム88は第1摺接部90を備えている。第1摺接部90は切替ギヤ82の中心軸線を曲率の中心として湾曲している。上記のロックパウル80のラチェット歯がロックリング76のラチェット歯78から離間した状態では第1摺接部90の内周面に摺接ピン86の外周部が摺接している。
上記のように、第1摺接部90は切替ギヤ82の中心軸線を曲率の中心として湾曲しているため、切替ギヤ82が回転している状態であっても第1摺接部90に摺接ピン86の外周部が摺接している状態ではロックパウル80に変化がない。さらに、上記の全格納状態では、カム部92よりも充分に引出方向側で摺接ピン86が第1摺接部90に接している。第1摺接部90の巻取方向側の端部からは連続してカム部92が形成されている。カム部92は第1摺接部90から離間するにつれて漸次切替ギヤ82の半径方向中央側へ変位している。
摺接ピン86がカム部92に摺接した状態で切替ギヤ82が引出方向に回転すると、カム部92が摺接ピン86を押圧してロックパウル80のラチェット歯をラチェット歯78に接近させて噛合させる。カム部92の第1摺接部90とは反対側の端部からは連続して第2摺接部94が形成されている。第2摺接部94は切替ギヤ82の中心軸線を曲率の中心として湾曲しており、摺接ピン86が第2摺接部94の内周部に摺接している状態では、ロックパウル80のラチェット歯がロックリング76のラチェット歯78に噛み合った状態で維持される。
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置10では、車両の座席に着座した乗員の身体にウエビングベルト22が掛け回される際に、ウエビングベルト22がその先端側へ引っ張られてスプール20に巻き取られて収納されているウエビングベルト22が引き出される。ウエビングベルト22が引き出されると、スプール20が引出方向に回転する。
スプール20が引出方向に回転すると、スプール側結合部26がスプール20に一体的に連結されたトーションシャフト24が引出方向に回転する。トーションシャフト24が引出方向に回転すると、ギヤ84が引出方向に回転し、ギヤ84に噛み合っている切替ギヤ82が巻取方向に回転する。切替ギヤ82が巻取方向に回転すると、摺接ピン86は第1摺接部90に摺接したままカム部92に接近する。
座席に着座した乗員の身体が小さい場合(乗員が小柄な場合)、乗員の身体に掛け回されるウエビングベルト22は比較的短くてすむため、スプール20からのウエビングベルト22の引出量(引出長さ)は短い。スプール20からのウエビングベルト22の引出量が一定の長さ未満の場合には、切替ギヤ82が巻取方向へ回転しても摺接ピン86がカム部92に到達しない。したがって、この場合にはロックパウル80のラチェット歯がラチェット歯78に噛み合うことがなく、ロックリング76の引出方向への回転が規制されない。
一方、座席に着座した乗員の身体が大きく(乗員が大柄で)、スプール20からのウエビングベルト22の引出量が一定の長さを超えると、図2に示されるように、摺接ピン86がカム部92に到達した状態で更に切替ギヤ82が巻取方向に回転し、図3に示されるように、摺接ピン86が第2摺接部94に到達する。それ以降、スプール20からウエビングベルト22が引き出されてスプール20が引出方向に回転すると、摺接ピン86は第2摺接部94の内周面に摺接したまま維持される。
このため、上記のようにスプール20からのウエビングベルト22の引出量が一定の長さを超えた際には、カム部92が摺接ピン86を押圧してロックパウル80のラチェット歯をロックリング76のラチェット歯78に接近させる。これにより、スプール20からの一定長さ以上のウエビングベルト22の引き出された場合には、ロックパウル80のラチェット歯がロックリング76のラチェット歯78に噛み合い、ロックリング76の引出方向への回転が規制される。
乗員の身体にウエビングベルト22が掛け回された状態で、車両が急減速状態になったり、また、急激にウエビングベルト22がスプール20から引き出されそうになってスプール20が急激に引出方向に回転を開始したりすると、第1ロック機構30が作動する。第1ロック機構30が作動するとロックベース34のラチェット部40にロックパウル42が噛み合う。このように、ラチェット部40にロックパウル42が噛み合うと、ロックベース34の引出方向への回転が規制される。
ロックベース34の引出方向への回転が規制されことで第1変形部28の引出方向への回転が規制され、ひいては、スプール20の引出方向への回転が規制される。このため、例えば、車両急減速状態で乗員が略車両前方側へ慣性移動して、乗員の身体がウエビングベルト22を急激に引っ張っても、スプール20の引出方向への回転が規制されていることでスプール20からのウエビングベルト22の引き出しが規制されるので、乗員の身体がウエビングベルト22よって保持され、略車両前方側への乗員の身体の慣性移動が制限される。
一方、上記のように、第1ロック機構30が作動した状態で第1変形部28の機械的強度に抗して第1変形部28の結合部38の側に対してスプール側結合部26の側が引出方向に捩じれて変形する程度の回転力がスプール20に付与されて回転すると、ストッパ74によるプレート68の移動規制が解除される。ストッパ74によるプレート68の移動規制が解除されることで回転円板付勢ばね72の付勢力でプレート68が押圧されると、回転円板60がロックベース48に対して巻取方向に相対回転する。
回転円板60がロックベース48に対して巻取方向に相対回転すると、長孔66内で誘導ピン64が移動してパウル支持ピン58周りに噛合パウル56が回動し、噛合パウル56がパウル収容部54から抜け出る。噛合パウル56がパウル収容部54から抜け出ることで、噛合パウル56のラチェット歯がロックリング76の内周部のラチェット歯に噛み合う。
ここで、ロックパウル80がロックリング76のラチェット歯78に噛み合っていると、ロックリング76の引出方向への回転が規制されるため、ロックベース48の引出方向への回転が規制され、ひいては第2変形部50の引出方向への回転が規制される。このため、この状態では、第1変形部28の機械的強度と第2変形部50の機械的強度との和を上回る回転力がスプール20に付与されないと、スプール20が引出方向に回転することができない。
スプール20の引出方向への回転力が第1変形部28の機械的強度と第2変形部50の機械的強度との和を上回ると、第1変形部28及び第2変形部50の捩じり変形分だけスプール20の引出方向への回転が許容され、スプール20からウエビングベルト22が引き出され、許容されたウエビングベルト22の引出量だけ乗員の身体は略車両前方側へ移動できる。また、このように、第1変形部28及び第2変形部50の双方が捩じり変形することで、第1変形部28の機械的強度と第2変形部50の機械的強度との和に対応した大きさエネルギーが吸収される。
一方、上記のように、ウエビングベルト22が掛け回されている乗員の身体が小柄なため、第2摺接部94に到達するまで切替ギヤ82が回転していない場合には、ロックパウル80がロックリング76のラチェット歯78に噛み合わず、ロックリング76の引出方向への回転が規制されない。このため、この状態では、第2変形部50の引出方向への回転が規制されない。この状態では、第1変形部28の機械的強度を上回る回転力がスプール20に付与されれば第1変形部28の捩じり変形分だけスプール20の引出方向への回転が許容されてスプール20からウエビングベルト22が引き出される。
このように、本ウエビング巻取装置10では、ウエビングベルト22が掛け回される乗員が小柄の場合には、第1変形部28の機械的強度を上回る程度の引出方向への回転力が付与されれば第1変形部28が捩じり変形させられ、ウエビングベルト22が掛け回される乗員が大柄の場合には、第1変形部28及び第2変形部50の双方の機械的強度の和を上回る程度の引出方向への回転力が付与されなければ第1変形部28及び第2変形部50が捩じり変形させられることはない。このように、本スプール20では、ウエビングベルト22が掛け回される乗員の体格に応じてトーションシャフト24の捩じり変形で吸収するエネルギーの大きさを切り替えることができる。
しかも、本ウエビング巻取装置10では、このような切り替えを切替ギヤ82で行なうことができ、ガスジェネレータや座席に着座した乗員の体格を検出するためのセンサ等の高価な構成が不要である。
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
図6には本発明の第2の実施の形態に係るウエビング巻取装置120の全体構成の概略が分解斜視図により示されており、図7には本ウエビング巻取装置120の全体構成の概略が正面断面図により示されている。
これらの図に示されるように、本ウエビング巻取装置120はスプール20を備えておらず、代わりにスプール122を備えている。スプール122の内側にはトーションシャフト24が設けられておらず、代わりにエネルギー吸収手段としてのトーションシャフト124が設けられている。トーションシャフト124はスプール側結合部26を備えている。但し、トーションシャフト124のスプール側結合部26はスプール122の軸方向中央部よりも脚板18の側でスプール122に対して同軸的且つ一体的に連結されている。
また、トーションシャフト124は、第1変形部28及び結合部38を備えているが、第2変形部50及び第2結合部52は備えていない。したがって、本ウエビング巻取装置120は前記第1の実施の形態に係るウエビング巻取装置10とは異なり第2ロック機構44は備えていない。
一方、スプール122の回転半径方向側方には第2ベルト巻取軸126が設けられている。この第2ベルト巻取軸126は軸方向がスプール122と同方向とされており、その軸方向一端は脚板16に回転可能に支持され、軸方向他端は脚板18に回転可能に支持されている。また、第2ベルト巻取軸126には巻厚増加ベルトとしてトルク増減手段を構成する第2ベルト128が設けられている。第2ベルト128は長尺帯状に形成されており、その長手方向基端側は第2ベルト巻取軸126に係止されている。第2ベルト128の長手方向先端側はその厚さ方向がウエビングベルト22の厚さ方向に沿った状態でウエビングベルト22の長手方向基端側と共にスプール122に係止されている。
このため、本ウエビング巻取装置120では、スプール122が巻取方向に回転すると、ウエビングベルト22と共に第2ベルト128がスプール122に巻き取られる。したがって、スプール122を軸方向に沿って見た場合、その軸心側からウエビングベルト22と第2ベルト128とが交互に巻き取られる。ここで、第2ベルト128の厚さ寸法に関しては特に限定されるものでないが、本実施の形態では、第2ベルト128の厚さ寸法はウエビングベルト22の厚さ寸法以上に設定されている。
また、本実施の形態では、スプール122の軸方向他端部には渦巻きばね130の一端(渦巻き方向内側の端部)が係止されている。この渦巻きばね130の他端(渦巻き方向外側の端部)は渦巻きばね130を収容するために脚板18に直接又は間接的に固定されたスプリングケース132に係止されており、スプール122が引出方向に回転すると巻き締まり、スプール122を巻取方向に付勢するようになっている。
一方、第2ベルト巻取軸126の軸方向他端部には渦巻きばね134の一端(渦巻き方向内側の端部)が係止されている。この渦巻きばね134の他端(渦巻き方向外側の端部)はスプリングケース132に係止されている。渦巻きばね134は第2ベルト128が第2ベルト巻取軸126から引き出されることで第2ベルト巻取軸126が巻取方向(第2ベルト巻取軸126にとっては第2ベルト128が引き出される際の回転方向)に回転すると巻き締まり、第2ベルト巻取軸126を引出方向(第2ベルト巻取軸126にとっては第2ベルト128を巻き取る際の回転方向)に付勢するようになっている。
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
本ウエビング巻取装置120では、車両の座席に着座した乗員の身体にウエビングベルト22が掛け回される際に、ウエビングベルト22がその先端側へ引っ張られてスプール122に巻き取られて収納されているウエビングベルト22が引き出される。ウエビングベルト22が引き出されると、スプール122が引出方向に回転する。スプール122が引出方向に回転することで第2ベルト128が弛むと、渦巻きばね134の付勢力で第2ベルト巻取軸126が回転し、第2ベルト巻取軸126が第2ベルト128を巻き取って収納する。
ここで、スプール122にはウエビングベルト22と第2ベルト128とが共に巻き取られて収納される。ウエビングベルト22とスプール122とは厚さ方向に重なった状態でスプール122に巻き取られるため、巻取方向にスプール122が1回転することでスプール122にウエビングベルト22が巻き取られた際には、回転前の状態での最外層のウエビングベルト22と、新たに巻き取られることで形成された層のウエビングベルト22との間に第2ベルト128が介在する。したがって、スプール122の回転半径方向に沿ったスプール122の軸心から最外層の第2ベルト128まで径は、単純にウエビングベルト22だけをスプール122が巻き取る構成に比べて、第2ベルト128の厚さとスプール122の回転数との積の寸法だけ大きくなる。
ここで、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要なトルクは一定であるため、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力が作用する位置は、スプール122の中心軸線から離間している方が小さくてすむ。上記のように、本ウエビング巻取装置120では、スプール122の回転半径方向に沿ったスプール122の軸心から最外層の第2ベルト128まで距離は、単純にウエビングベルト22だけをスプール122が巻き取る構成に比べて、第2ベルト128の厚さとスプール122の回転数との積の寸法だけ大きくなる。
このため、スプール122からのウエビングベルト22の引出量が少ないほどトーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力が作用する位置はスプール122の中心軸線から大きく離間し、スプール122からのウエビングベルト22の引出量が多いほどトーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力が作用する位置はスプール122の中心軸線に大きく接近する。このため、単純にウエビングベルト22だけをスプール122が巻き取って収納する構成に比べて、ウエビングベルト22の引き出し量に応じたトーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力の大きさの変化は顕著になる。
このため、乗員が大柄で乗員の身体にウエビングベルト22を掛け回すに際して長いウエビングベルト22を要する場合には、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力は大きく、乗員が小柄で乗員の身体にウエビングベルト22を掛け回すに際して必要なウエビングベルト22が短い場合には、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力は小さくなる。
このように、本ウエビング巻取装置120では、ガスジェネレータや乗員の体格を検出するためのセンサはおろか、前記第1の実施の形態における第2ロック機構44も不要でコストを安価にできる。しかも、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力の大きさを、乗員の体格に応じて無段階に変化させることができる。
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図8には本実施の形態に係るウエビング巻取装置150の全体構成の概略が正面断面図により示されている。
この図に示されるように、本ウエビング巻取装置150は前記第2の実施の形態とは異なり第2ベルト巻取軸126や第2ベルト128を備えていない。また、本ウエビング巻取装置150は、折り曲げ手段としてトルク増減手段を構成する折り畳みガイド152を備えている。折り畳みガイド152は、スプール122の背板14の側で背板14に固定されている。
図9に示されるように、折り畳みガイド152は平板状の基部154を備えている。背板14の幅方向に沿った基部154の両側にはガイド部156が形成されている。両ガイド部156は折り畳みガイド152を形成する平板を基部154の幅方向両端から幅方向中央側へ折り返すことで形成されている。図8に示されるように、本ウエビング巻取装置150ではスプール122から引き出されたウエビングベルト22は折り畳みガイド152の一端(下端)から基部154と両ガイド部156との間を通過して折り畳みガイド152の他端(上端)から折り畳みガイド152の外部へ引き出されている。
ここで、折り畳みガイド152は、一端と他端との間の中間部よりも一端側では基部154の幅寸法がウエビングベルト22の幅寸法よりも僅かに大きいが、一端と他端との間の中間部よりも他端側では基部154の幅寸法がウエビングベルト22の幅寸法よりも小さく且つウエビングベルト22の幅寸法の1/2よりも大きい。さらに、折り畳みガイド152は、一端と他端との間の中間部では一端側から他端側へ向けて基部154の幅寸法がよりも漸次一端側では基部154の幅寸法がウエビングベルト22の幅寸法よりも僅かに大きいが、一端と他端との間の中間部よりも他端側では基部154の幅寸法が小さくなっている。
このような構成の折り畳みガイド152を通過するウエビングベルト22は、折り畳みガイド152の中間部を通過する際に幅方向中央部よりも両側が幅方向中央側へ折り返され、この状態で折り畳みガイド152の下端部から抜け出てスプール122に巻き取られる。このため、スプール122にウエビングベルト22が1周巻き取られると、スプール122の中心軸線から最外層のウエビングベルト22までの半径の増分は、ウエビングベルト22の厚さ寸法の2倍以上になる。これにより、前記第2の実施の形態と同様に、単純にウエビングベルト22の両端側を折り返さずにウエビングベルト22をスプール122が巻き取って収納する構成に比べて、ウエビングベルト22の引き出し量に応じたトーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力の大きさの変化が顕著になる。
このため、乗員が大柄で乗員の身体にウエビングベルト22を掛け回すに際して長いウエビングベルト22を要する場合には、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力は大きく、乗員が小柄で乗員の身体にウエビングベルト22を掛け回すに際して必要なウエビングベルト22が短い場合には、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力は小さくなる。
このように、本ウエビング巻取装置150では、ガスジェネレータや乗員の体格を検出するためのセンサはおろか、前記第1の実施の形態における第2ロック機構44も不要でコストを安価にできる。しかも、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力の大きさを、乗員の体格に応じて無段階に変化させることができる。
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
図10には本実施の形態に係るウエビング巻取装置180の全体構成の概略が車両前方側からの図(側面図)により示されている。
この図に示されるように、本ウエビング巻取装置180はウエビングベルト22を備えておらず、代わりに、ベルトユニット182を備えている。ベルトユニット182は、ベルト部材としての長尺帯状の巻取ベルト184を備えている。巻取ベルト184は長手方向基端部がスプール122に係止されており、スプール122が巻取方向に回転すると巻取ベルト184がその基端側から巻き取られて収納される。また、巻取ベルト184の先端は、車両の車体186に固定されたアンカ188に係止されている。
巻取ベルト184の先端部とスプール122との間には、支持手段としてトルク増減手段を構成する動滑車機構190が設けられている。図11に示されるように、動滑車機構190は正面視略矩形の環状に形成されたフレーム192を備えている。フレーム192には滑車部194が回転自在に支持されており、この滑車部194の外周部に巻取ベルト184が掛け回されて折り返されている。フレーム192の滑車部194の支持部よりも上方側ではフレーム192に拘束ベルト196は長尺帯状の拘束ベルト196の長手方向基端部が係止されている。
この拘束ベルト196はスプール122に巻き取られることはないものの、実質的にはこれまでの実施の形態で説明したウエビングベルト22のうち、乗員の身体に装着される部分に対応する。なお、この意味では、上記の巻取ベルト184は乗員の身体に装着されることはないが、これまでの実施の形態で説明したウエビングベルト22のうち、スプール122に巻き取られる部分に実質的に対応する。ここで、上記の巻取ベルト184の厚さ寸法は、拘束ベルト196の厚さ寸法の1/2よりも大きく、好ましくは、巻取ベルト184の厚さ寸法が拘束ベルト196の厚さ寸法以上に設定されている。
座席198に着座した乗員200が拘束ベルト196を装着する際には、装着に必要な長さだけ拘束ベルト196が引っ張られる。このように、拘束ベルト196が引っ張られると拘束ベルト196の長手方向基端部が変位し、この拘束ベルト196の長手方向基端部の変位に伴い動滑車機構190が変位する。動滑車機構190は所謂動滑車を構成しているため、拘束ベルト196が引っ張られた際の動滑車機構190の変位量の2倍の長さの巻取ベルト184がスプール122から引き出される。このため、スプール122に拘束ベルト196を直接巻き取る構成に比べて拘束ベルト196の引っ張り量に応じたスプール122の引出方向への回転数は多くなる。
さらに、巻取ベルト184の厚さ寸法は拘束ベルト196の厚さ寸法の半分以上で、好ましくは拘束ベルト196の厚さ寸法以上に設定される。このため、拘束ベルト196の引っ張り量に応じたスプール122の中心軸線から最外層のウエビングベルト22までの変化量が、スプール122に拘束ベルト196を直接巻き取る構成に比べて大きくなり、拘束ベルト196の引っ張り量に応じたトーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力の大きさの変化が顕著になる。
これにより、乗員が大柄で乗員の身体に拘束ベルト196を掛け回すに際して長い拘束ベルト196を要する場合には、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力は大きく、乗員が小柄で乗員の身体に拘束ベルト196を掛け回すに際して必要な拘束ベルト196が短い場合には、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力は小さくなる。
このように、本ウエビング巻取装置180では、ガスジェネレータや乗員の体格を検出するためのセンサはおろか、前記第1の実施の形態における第2ロック機構44も不要でコストを安価にできる。しかも、トーションシャフト124を捩じり変形させるために必要な回転力の大きさを、乗員の体格に応じて無段階に変化させることができる。
なお、本実施の形態では、フレーム192に滑車部194が回転自在に支持され、この滑車部194に巻取ベルト184が掛け回された構成であった。このような構成では、拘束ベルト196を引っ張ってフレーム192を移動させた際に、巻取ベルト184との摩擦で滑車部194が回転する。このため、フレーム192を円滑に移動させることができるものである。
しかしながら、支持手段は滑車部194を備えていなくてもよく、滑車部194を有しないフレーム192に巻取ベルト184が掛け回すだけの構成であってもよい。このような滑車部194を有しない構成では、フレーム192と巻取ベルト184との間の摩擦により滑車部194を有する構成に比べれば円滑にフレーム192を移動させることはできない。しかしながら、拘束ベルト196が引っ張られた際のフレーム192の変位量の2倍の長さの巻取ベルト184をスプール122から引き出すことができるので、この点では滑車部194を有する構成と同様の効果を得ることができる。
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。
図12には本実施の形態に係るウエビング巻取装置220の全体構成の概略が正面図により示されている。
この図に示されるように、本ウエビング巻取装置220はスプール222を備えている。スプール222は、ウエビングベルト22の長手方向基端部が係止されているという点では前記第1の実施の形態におけるスプール20と同じであるが、構造的には前記第2の実施の形態における第2ベルト巻取軸126と同じで、基本的には軸方向一端が脚板16に回転自在に支持され他端が脚板18に回転自在に軸支されている。但し、第2ベルト巻取軸126とは異なり、スプール222は渦巻きばね等の付勢手段により引出方向に回転すると、巻取方向に付勢される構成になっている。
このスプール222の回転半径方向側方にはエネルギー吸収手段としてのトーションシャフト224が設けられている。トーションシャフト224は脚板16側の端部が第1ロック機構30を構成するロックベース34に対して同軸的な相対回転が不能な状態でロックベース34の連結部36に連結されている。トーションシャフト224の軸方向他端部は脚板18を貫通して脚板18の脚板16とは反対側に突出している。脚板18の脚板16とは反対側ではトーションシャフト224に外歯のギヤ226がトーションシャフト224に対して同軸的且つ一体的に連結されている。
このギヤ226には、連結手段として回転力伝達手段を構成するチェーン228が掛け回されている。このチェーン228は脚板18の脚板16とは反対側でスプール222に対して同軸的且つ一体的に設けられたトルク増減手段としてのスクリューギヤ230にも掛け回されている。スクリューギヤ230はスプール222の側へ向けて漸次先細となる円錐台形状に形成されていると共に、その外周部にはチェーン228が噛み合う外歯が螺旋状に形成されている。スプール222が引出方向に回転すると、スクリューギヤ230におけるチェーン228の噛み合い位置は漸次スクリューギヤ230の基端側(大径側)へ変位する。
スプール222とトーションシャフト224とはチェーン228により連結され、スプール222の回転はチェーン228を介してトーションシャフト224の他端部に伝えられる。ここで、スクリューギヤ230の先端側(小径側)でチェーン228が外歯232に噛み合っている状態よりも、スクリューギヤ230の基端側(大径側)でチェーン228が外歯232に噛み合っている状態では、トーションシャフト224の他端側に回転力を付与して捩じり変形を生じさせる際に必要な回転力は大きくなる。上記のように、螺旋状に並んだ外歯232に噛み合うチェーン228は、スプール222が引出方向に回転するにつれて漸次スクリューギヤ230の基端側(大径側)に変位するので、スプール222からのウエビングベルト22の引き出し量が大きいほどトーションシャフト224の他端側に回転力を付与して捩じり変形を生じさせる際に必要な回転力は大きくなる。
このため、乗員が大柄で乗員の身体にウエビングベルト22を掛け回すに際して長いウエビングベルト22を要する場合には、トーションシャフト224を捩じり変形させるために必要な回転力は大きく、乗員が小柄で乗員の身体にウエビングベルト22を掛け回すに際して必要なウエビングベルト22が短い場合には、トーションシャフト224を捩じり変形させるために必要な回転力は小さくなる。このように、本ウエビング巻取装置220では、ガスジェネレータや乗員の体格を検出するためのセンサはおろか、前記第1の実施の形態における第2ロック機構44も不要でコストを安価にできる。しかも、トーションシャフト224を捩じり変形させるために必要な回転力の大きさを、乗員の体格に応じて無段階に変化させることができる。