JP4006827B2 - シートベルトリトラクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車等の車両に用いられるシートベルトリトラクタに関するものであり、特にトーションバーが組み込まれており、該トーションバーのねじり回転数の上限を規制する機構を有したシートベルトリトラクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トーションバーをスプールの内孔に挿通し、該トーションバーの一端をスプールに固定し、トーションバーの他端をクラッチによりシートベルトリトラクタのフレームに係止可能としたシートベルトリトラクタが公知である。車両の衝突時等の緊急時には、このクラッチによりトーションバーの他端がフレームに対しロックされる。トーションバーの一端はスプールに固定されているため、該スプールに対しウェビング巻出し方向の力が加えられることによりトーションバーがねじられ、スプールが徐々に回転し、ウェビングが徐々に引き出される。これにより、乗員の身体に加えられる運動エネルギーの一部がトーションバーのねじりによって吸収され、衝撃が緩和される。
【0003】
このようなトーションバーを有したシートベルトリトラクタの従来例(実公昭61−11085号)について第5図〜第8図を参照して説明する。
【0004】
第5図および第6図において、1はリトラクタ本体で、そのフレームに設けた穴11においてボルト等により車体に固定される。
【0005】
フレーム本体1には相対向する一対の側壁12,13が形成され、これ等にはスプール2が回転自在に支承されている。スプール2は筒状で、その内孔にトーションバー部材3が配設されている。
【0006】
トーションバー部材3は棒状のねじれ部31と、その一端に形成されたスプール2への結合部32と、他端に形成されねじれ部31より大径でその外周にネジ331を設けたネジ部33と、更にネジ部33の側端に形成されたフランジ状の円形プレート341の外周にのこぎり歯状の一方向作動ギヤ342を有するギヤ部34とより成る。そして、ねじれ部31はスプール2の内腔にこれと同軸的に配設されており、四角頭をなす結合部32がスプール2の一端に形成した壁面21の四角形の穴に嵌着されている。従ってトーションバー部材3の一端の上記結合部32はスプール2と一体に回転する。また、ネジ部33の外周にはスプール2の内周面と対向する部分にリング35が嵌着され、上記スプール2と摺動可能としてある。
【0007】
スプール2の一端にはフランジ22が形成されており、その一方の面はリトラクタ本体1の側壁13に摺動可能に接触し、ギヤ部34のプレート341と所定の間隔で対向する他方の面には周方向位置に断面四角形の複数の突起23,23,……が突設されている。
【0008】
トーションバー部材3のネジ部33には、内周にネジを設けた環状のストッパー部材4が容易に回転し得るように螺合されている。このストッパー部材4には上記突起部23,23,……と対向する位置に穴41,41,……が設けてあり、この穴に突起部23,23,……が遊嵌されている。
【0009】
トーションバー部材3のねじれ部31にはウェビングSの一端が連結され、ウェビングSはスプール2に巻回されて導出され、導出端は図示しないアンカー、バックル等に固着されている。リトラクタ本体1の側壁12の側面にはケース14が設置されてゼンマイバネ(図示せず)が内設されており、このゼンマイバネはスプール2にウェビング巻取り方向(第6図の矢印Y1方向)の軽い付勢力を与えている。そしてウェビングSは乗員の体位に応じて巻出される(第6図の矢印Y2方向)。
【0010】
リトラクタ本体1の両側壁12,13の下端にはブラケット15が固着され、振子5を可動状態に支持している。また、振子5の上端にはラチェット6が支持されており、振子5の振動によりラチェット6が傾斜して持ち上げられ、その一端がこれと対向するトーションバー部材3の一方向作動ギヤ342と噛合い、トーションバー部材3の一端の回転をロックするように構成されている。
【0011】
上記のシートベルト巻取り装置において、通常時にはトーションバー部材3はラチェット6によりロックされていないため、トーションバー部材3およびスプール2は回転可能であって、ウェビングSは乗員の体位に応じて引出し巻取りが行なわれる。
【0012】
車両衝突時には、第7図および第8図に示す如く、振子5が振動してラチェット6を持ち上げる。これによりラチェット6はトーションバー部材3のギヤ部34のギヤ342と噛合い、ウェビング引出し方向(第8図矢印Y2方向)の回転を阻止する。
【0013】
一方、ウェビングSには車両衝突時の乗員の移動による引張力が加えられ、スプール2をウェビング引出し方向に回転させようとする。このとき、スプール2の回転力が一端を該スプール2と結合したトーションバー部材3のねじれ部31の応力限界を越えると、上記スプール2はねじれ部31をねじりつつ回転する。そしてこれにより乗員の衝撃エネルギが吸収されるのである。
【0014】
スプール2が回転するとその一端に設けた突起23,23,……に係合されているストッパー部材4も回転する。この場合、ストッパー部材4は、トーションバー部材3のネジ部33と回転可能に螺合するとともにスプール2の突起部23とは遊嵌関係にあることにより、ストッパー部材4は外周にギヤを形成したプレート341方向に移動する。そして、スプール2が回転し、トーションバー部材3のねじれ部31が破断することのない所定角だけねじれるとストッパー部材4はプレート341に当接し、これによりスプール2の回転は停止される。従って、ウェビングSに過度の乗員荷重が加えられてもトーションバー部材3は破断することはない。
【0015】
第5〜8図に示す従来例にあっては、ストッパ部材4がスプール2のフランジ22の外側に配置されており、ストッパ部材4の厚みと該ストッパ部材4が突起部23に沿って進退するストロークとの合計の長さだけシートベルトリトラクタがフレーム側方に出っ張っている。
【0018】
本発明は、このような出っ張りを無くし、シートベルトリトラクタを小型化することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明のシートベルトリトラクタは、ウェビングを巻き取る筒状のスプールと、該スプールを支持するフレームと、該スプールの内孔に挿通され、該スプールに対し一端側が連結されたトーションバーと、所定値以上の加速度が検知されたときに該トーションバーの他端側をロックするためのロック手段とを備えてなり、該ロック手段がトーションバーの該他端側をロックした状態においてウェビングに所定値以上の引張力が加えられると該トーションバーがねじり変形するシートベルトリトラクタにおいて、該ロック手段は、所定値以上の加速度が検知されたときに該フレームに対しロックされるパウルホルダと、該パウルホルダから突設され、該スプールの内孔に挿入されたカラムと、該カラムの外周に設けられた雄ネジと、該雄ネジに対し内周の雌ネジが噛合しており、該カラムに沿ってスプール軸心線方向に進退可能なストッパ部材と、該ストッパ部材から放射方向を含む方向に突設された1対又はそれ以上の突部と、該スプールの内孔から凹設され、該突部が係合している凹部と、を備え、前記ロック手段が作動し且つウェビングに所定値以上の引張力が加えられてトーションバーがねじり変形したときに、該ストッパ部材がパウルホルダに向って螺進し、このストッパ部材がパウルホルダに当接することによりスプールのトルクが該ストッパ部材を介してパウルホルダに直に伝達され、スプールの回転が阻止されることを特徴とするものである。
請求項2のシートベルトリトラクタは、請求項1において、前記スプールは、前記トーションバーが挿通される前記内孔を有した筒部を有しており、該筒部に、筒軸心と垂直な断面において弦方向に延在するウェビング挿通用スリットが複数個設けられており、ウェビングの端部をこれらのスリットに通してスプールに留め付け可能となっていることを特徴とするものである。
請求項3のシートベルトリトラクタは、請求項2において、前記スリットは2個設けられ、これらのスリットは前記断面において平行方向に延在していることを特徴とするものである。
請求項4のシートベルトリトラクタは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記内孔の一端側から該内孔に前記カラムが挿入されており、該内孔のうち、該カラムを取り巻く該一端側の部分は、それよりも該内孔の他端側の部分よりも大径となっており、該内孔の該一端側の大径部分と該他端側の小径部分との境界部に段差部が存在しており、該段差部に前記ストッパ部材が当接しうるものとなっていることを特徴とするものである。
請求項5のシートベルトリトラクタは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記内孔の一端側から該内孔に前記カラムが挿入されており、該内孔のうち、該カラムを取り巻く該一端側の部分と、それよりも該内孔の他端側の部分とが等径となっていることを特徴とするものである。
請求項6のシートベルトリトラクタは、請求項5において、該カラムの先端から該カラムと同軸状に筒状部が突設されており、該筒状部にブッシュが外嵌しており、該ブッシュが前記内孔の内周面に摺動自在に接していることを特徴とするものである。
請求項7のシートベルトリトラクタは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記カラムの先端側の外周と前記内孔との間に樹脂製又はゴム製のリングが介在していることを特徴とするものである。
【0023】
かかるシートベルトリトラクタにあっては、ストッパ部材がスプールの内孔の内部に配置されているため、第5〜8図の従来例に比べフレーム外方の出っ張りが小さなものとなり、シートベルトリトラクタが小型化される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。第1図は本発明の実施の形態に係るシートベルトリトラクタのスプールを示すものであり、(a)図は斜視図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。第2図はこの実施の形態に係るシートベルトリトラクタの縦断面図、第3図はこのシートベルトリトラクタの作動状態の断面図、第4図はこのシートベルトリトラクタの分解斜視図である。
【0025】
このスプール50は、内孔52(第4図)を備えた筒状のものであり、この内孔52にトーションバー54が挿通されている。このトーションバー54の一端は第1の六角部56となっており、この第1の六角部56にパウルホルダ58の内孔に設けられた六角部60が係合している。このパウルホルダ58は、フランジ62と、該フランジ62から突設されたカラム64とを備えており、フランジ62からカラム64にかけて六角形の内孔60が穿設されている。カラム64の外周面には雄ネジ66が刻設されている。
【0026】
この雄ネジ66と噛合した雌ネジ68を有するストッパ部材70がカラム64の外周に螺着されている。このストッパ部材70は、直径方向に突出する一対の突部70aを有しており、この突部70aがスプール50の内孔52に設けられた凹部72に係合している。
【0027】
パウルホルダ58のフランジ62に対しパウル74が枢着されている。パウルホルダ58のフランジ62の表側には、トーションバー54と同軸配置されたロックリング76が配置されている。このロックリング76にはロックスタータ78及びバネ80,82等の部材が装着されており、車両の衝突時或いはスプール50の高速回転時にパウル74をフランジ62の外周から突出させ、フレーム84の内歯付き開口86の該内歯に対しパウル74を係止させる。なお、フレーム84は1対のフレームサイド84a、84bを備えており、その間にスプール50が配置される。
【0028】
ロックリング76はカバー88で覆われている。このロックリング76をロックさせるためのロック起動機構90が前記フレーム84に保持され、同様にカバー88で覆われている。
【0029】
このロック起動機構90は、ホルダ92に保持され、傾転可能とされた重り94と、ホルダ92に枢支されており、重り94に重ね合わされたレバー96を備えている。車両に所定以上の加速度が生じると、重り94が傾転し、レバー96が跳ね上げられ、レバー96の先端がロックリング76の外周の外歯と係合し、ロックリング76が回転停止状態となる。そして、これによりパウル74がフランジ62の外周から突出し、パウル74がフレーム84の内歯付き開口86に係合するようになる。なお、このようなロック機構100の構成は周知のものである。
【0030】
トーションバー54の前記六角部56を配置した一端と反対側の端部に第2の六角部102が設けられている。この第2の六角部102は、スプール50の内孔52に設けられた六角部104(第2,3図)に係合している。
【0031】
このようにトーションバー54等が装着されたスプール50がフレーム84のフレームサイド84a,84b内に配置される。トーションバー54の六角部102よりもさらに先端側には逆ネジ105が設けられており、この逆ネジ105に対しスプライン付きナット106が螺着される。このナット106がプリテンショナ110の内孔112に挿入される。
【0032】
このプリテンショナ110は、車両衝突時にスプール50をウェビング巻取り方向に所定回数だけ大トルクにて巻取り、ウェビングの緩みを除去するためのものである。このプリテンショナ110は、車両衝突時にガスを発生させるガス発生器114と、このガス発生器114で発生したガスによってトルクを発生させるトルク発生手段116と、このトルク発生手段116で発生したトルクをナット106に伝えるトルク伝達手段118等を備えている。なお、トルク伝達手段118は、トルク発生手段116からナット106に向かうトルクのみを伝達し、ナット106から伝えられるトルクはトルク発生手段116に伝達しない構成のものとなっている。
【0033】
トーションバー54の先端は、このプリテンショナ110を貫通し、ゼンマイバネユニット120の内孔122に係合されている。このゼンマイバネユニット120は、トーションバー54を介してスプール50を常にウェビング巻取り方向に付勢するものである。
【0034】
前記スプール50には、第1図(b)に明瞭に示される通り、該スプール50の軸心線と垂直な断面において弦方向に延在する第1のスリット124と第2のスリット126とが設けられている。ウェビング130の端部はこれらのスリット124,126に順次に挿通されている。ウェビング130の端部は折り返されて重ね合わされ、この重ね合わされた部分が縫い合わされている。縫い合わされてループ状となった部分に巻込まれるようにしてウェビングストッパ132が設けられている。このウェビングストッパ132が第2のスリット126の入口に係合することにより、ウェビング130の抜け留めがなされている。
【0035】
なお、第1図(b)の通り、第1のスリット124と第2のスリット126は互いに平行方向に延在している。
【0036】
次に、このシートベルトリトラクタの作動について説明する。車両が定常状態にあるときには、ストッパ部材70は第2図に示すようにパウルホルダ58のフランジ62から離反している。この場合、ロック機構100及びプリテンショナ110は作動しておらず、スプール50はゼンマイバネユニット120によって巻取り方向に付勢されている。ウェビング130が引出される時には、スプール50はゼンマイバネユニット120によって巻取り方向に付勢されながらウェビング引出し方向に回転する。
【0037】
車両が衝突した場合、プリテンショナ110が作動し、トーションバー54に対しウェビング巻取り方向に強いトルクが加えられる。このトルクは、トーションバー54の六角部102とスプール50の六角部104とを介してスプール50を回転させ、ウェビング130を所定長さだけ巻取る。
【0038】
また、車両衝突時には、ロック起動機構90の重り94が傾転し、ロックリング76が該ロック起動機構90のレバー96によって係止され、パウル74がフランジ62の外周から突出して内歯付き開口86に係合し、パウルホルダ58がウェビング引出し方向に回転することが阻止される。
【0039】
車両衝突時には、車両の乗員は前方へ投げ出されるように身体が移動し、ウェビング130には強い引出し方向の力が加えられる。前記の通り、スプール50の六角部104とトーションバー54の六角部102とが係合しているため、パウルホルダ58がウェビング引出し方向回転不能状態になると、トーションバー54は2つの六角部56,102の間がねじられる。そして、スプール50は、トーションバー54をねじりつつウェビング引出し方向に回転し、トーションバー54のねじりによって乗員に加えられる衝撃が吸収される。
【0040】
パウルホルダ58がフレーム84に対して回転不能状態に係止された状態で上記の如くスプール50がウェビング引出し方向に回転するときに、スプール50に対し凹部72、突部70aの係合により一体とされているストッパ部材70が、該スプール50と一体的に回転する。そして、このストッパ部材70はその雌ネジ68がパウルホルダ58の雄ネジ66に噛合しているため、スプール50のウェビング引出し方向の回転に伴ってストッパ部材70が回転すると、このストッパ部材70はパウルホルダ58のフランジ62に向かって螺進し、ついには該ストッパ部材70がフランジ62の裏面に当接する(第3図)。
【0041】
これにより、ストッパ部材70のそれ以上の回転が阻止され、スプール50の回転も阻止される。即ち、スプール50は、ストッパ部材70が第2図の状態から第3図の状態にまで移動する間だけ回転が許容され、それ以上のウェビング引出し方向の回転が阻止される。このようにしてトーションバー54の最大ねじり回転数が規定され、トーションバー54が断裂することが防止される。
【0042】
この実施の形態にあっては、ストッパ部材70がスプール50の内孔52の内部に配置されているため、ストッパ部材をフレームの外側に配置した第5〜8図の従来例に比べフレーム84の側外方(第2,3図の右方向)への出っ張りが小さく、シートベルトリトラクタが従来例に比べて小型化される。
【0043】
なお、第3図の如くストッパ部材70がフランジ62に当接した状態においては、スプール50に対しウェビング130の引き出し方向に加えられるトルクは、該スプール50及びカラム64を介してパウルホルダ58に伝達される。このストッパ部材70から直径方向に突出した一対の突部70aとスプール50の凹部72とが係合しているため、スプール50とストッパ部材70との連結部はきわめて堅固であり、大トルクに十分に耐えることができる。また、ストッパ部材70とパウルホルダ58との間にあっても、該ストッパ部材70の雌ネジ68がパウルホルダ58と一体のカラム64の雄ネジ66と噛合しパウルホルダ58に対しストッパ部材70が直接に押し付けられることによりトルクが伝達されるため、スプール50とストッパ部材70との間でも十分に大トルクを伝達することができる。従って、ウェビング130に著しく大きな引出力が加えられたときでも、スプール50はフレームサイド84aにしっかりと係止される。
【0044】
第9図は別の実施の形態に係るシートベルトリトラクタの断面図であり、上記実施の形態の第2図に相当する状態の断面図である。この実施の形態にあっては、スプール50の内孔52は、図の左端側の六角部104の部分を除いて等径の孔となっている。即ち、第1図〜第4図の実施の形態にあっては、第2,3図の通り、内孔52のうちカラム64を取り巻く右端側部分はそれよりも左側の部分よりも大径となっており、この右端側の大径部分と左端側の小径部分との境界部に段差部が存在し、該段差部にストッパ部材70が第2図の通り当接しうるものとなっている。
【0045】
これに対し、この第9図にあっては、内孔52のうち六角部104以外の部分を等径の孔としたことにより、かかる段差部が存在しないものとなっている。
【0046】
第9図のシートベルトリトラクタのその他の構成は第1〜4図のシートベルトリトラクタと同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0047】
第10図は本発明のさらに別の実施の形態に係るシートベルトリトラクタの断面図であり、第9図に相当する状態を示している。
【0048】
この実施の形態においても、内孔52は六角部104の部分を除いて等径の孔となっている。
【0049】
この実施の形態にあっては、パウルホルダ58のカラム64の先端から筒状部58Aがカラム64と同軸状に突設されており、この筒状部58Aにブッシュ150が外嵌している。このブッシュ150は内孔52の内周面に対し摺動自在に接している。このブッシュ150を設けたことにより、トーションバー54及びパウルホルダ58とスプール50とが確実に同軸状の位置関係をとるようになる。第10図のシートベルトリトラクタのその他の構成は第1〜4図のシートベルトリトラクタと同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0050】
第9図及び第10図のシートベルトリトラクタの作動は第1〜4図のシートベルトリトラクタと同じである。即ち、車両が定常状態にあるときには、ストッパ部材70は第9図及び第10図に示すようにパウルホルダ58のフランジ62から離反し、カラム64の雄ネジ66の左端側に位置している。この場合、ロック機構100及びプリテンショナ110は作動しておらず、スプール50はゼンマイバネユニット120によって巻取り方向に付勢されている。ウェビング130が引出される時には、スプール50はゼンマイバネユニット120によって巻取り方向に付勢されながらウェビング引出し方向に回転する。
【0051】
車両が衝突した場合、プリテンショナ110が作動し、トーションバー54に対しウェビング巻取り方向に強いトルクが加えられる。このトルクは、トーションバー54の六角部102とスプール50の六角部104とを介してスプール50を回転させ、ウェビング130を所定長さだけ巻取る。
【0052】
また、車両衝突時には、ロック起動機構90の重り94が傾転し、ロックリング76が該ロック起動機構90のレバー96によって係止され、パウル74がフランジ62の外周から突出して内歯付き開口86に係合し、パウルホルダ58がウェビング引出し方向に回転することが阻止される。
【0053】
車両衝突時には、車両の乗員は前方へ投げ出されるように身体が移動し、ウェビング130には強い引出し方向の力が加えられる。前記の通り、スプール50の六角部104とトーションバー54の六角部102とが係合しているため、パウルホルダ58がウェビング引出し方向回転不能状態になると、トーションバー54は2つの六角部56,102の間がねじられる。そして、スプール50は、トーションバー54をねじりつつウェビング引出し方向に回転し、トーションバー54のねじりによって乗員に加えられる衝撃が吸収される。
【0054】
パウルホルダ58がフレーム84に対して回転不能状態に係止された状態で上記の如くスプール50がウェビング引出し方向に回転するときに、スプール50に対し凹部72、突部70aの係合により一体とされているストッパ部材70が、該スプール50と一体的に回転する。そして、このストッパ部材70はその雌ネジ68がパウルホルダ58の雄ネジ66に噛合しているため、スプール50のウェビング引出し方向の回転に伴ってストッパ部材70が回転すると、このストッパ部材70はパウルホルダ58のフランジ62に向かって螺進し、ついには該ストッパ部材70がフランジ62の裏面に当接する(前記第3図と同様である。)。
【0055】
これにより、ストッパ部材70のそれ以上の回転が阻止され、スプール50の回転も阻止される。即ち、スプール50は、ストッパ部材70が第9図又は第10図の状態からフランジ62に当接する間だけ回転が許容され、それ以上のウェビング引出し方向の回転が阻止される。このようにしてトーションバー54の最大ねじり回転数が規定され、トーションバー54が断裂することが防止される。
【0056】
なお、この第9,10図のシートベルトリトラクタにおいても、ストッパ部材70をスプール50の内孔52内に配置しており、フレーム84の側外方への出っ張りが小さく、シートベルトリトラクタが小型化される。
【0057】
本発明のシートベルトリトラクタでは、第11図の如くカラム64の先端側の外周とスプールの内孔52との間に樹脂製又はゴム製のリング160を介在させ、カラム64の振動による異音発生を防止するよう構成しても良い。第11図のその他の構成は第2図と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0058】
上記実施の形態にあっては、スプール50に2本のスリット124,126が設けられているが、3本以上のスリットが設けられても良い。但し、通常の大きさのシートベルトリトラクタの場合、第1図の如く2個のスリット124,126を設けるのが好ましく、また、この場合、スプール50に加えられる応力を平均化するためにスリット124,126を平行に設けるのが好ましい。
【0059】
上記実施の形態にあってはプリテンショナ110が用いられているが、本発明はこのプリテンショナを有しないタイプのシートベルトリトラクタにも適用できる。
【0060】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によると、ストッパ部材をスプールの内孔の内部に配置することによりシートベルトリトラクタを小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態に係るシートベルトリトラクタのスプールの構成図である。
【図2】 実施の形態に係るシートベルトリトラクタの縦断面図である。
【図3】 図2のシートベルトリトラクタの作動状態の断面図である。
【図4】 実施の形態に係るシートベルトリトラクタの分解斜視図である。
【図5】 従来のシートベルトリトラクタの縦断面図である。
【図6】 図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】 図5のシートベルトリトラクタの作動状態の縦断面図である。
【図8】 図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】 別の実施の形態に係るシートベルトリトラクタの縦断面図である。
【図10】 さらに別の実施の形態に係るシートベルトリトラクタの縦断面図である。
【図11】 異なる実施の形態に係るシートベルトリトラクタの縦断面図である。
Claims (7)
- ウェビングを巻き取る筒状のスプールと、該スプールを支持するフレームと、該スプールの内孔に挿通され、該スプールに対し一端側が連結されたトーションバーと、所定値以上の加速度が検知されたときに該トーションバーの他端側をロックするためのロック手段とを備えてなり、
該ロック手段がトーションバーの該他端側をロックした状態においてウェビングに所定値以上の引張力が加えられると該トーションバーがねじり変形するシートベルトリトラクタにおいて、
該ロック手段は、所定値以上の加速度が検知されたときに該フレームに対しロックされるパウルホルダと、
該パウルホルダから突設され、該スプールの内孔に挿入されたカラムと、
該カラムの外周に設けられた雄ネジと、
該雄ネジに対し内周の雌ネジが噛合しており、該カラムに沿ってスプール軸心線方向に進退可能なストッパ部材と、
該ストッパ部材から放射方向を含む方向に突設された1対又はそれ以上の突部と、
該スプールの内孔から凹設され、該突部が係合している凹部と、
を備え、前記ロック手段が作動し且つウェビングに所定値以上の引張力が加えられてトーションバーがねじり変形したときに、該ストッパ部材がパウルホルダに向って螺進し、このストッパ部材がパウルホルダに当接することによりスプールのトルクが該ストッパ部材を介してパウルホルダに直に伝達され、スプールの回転が阻止されることを特徴とするシートベルトリトラクタ。 - 請求項1において、前記スプールは、前記トーションバーが挿通される前記内孔を有した筒部を有しており、
該筒部に、筒軸心と垂直な断面において弦方向に延在するウェビング挿通用スリットが複数個設けられており、ウェビングの端部をこれらのスリットに通してスプールに留め付け可能となっていることを特徴とするシートベルトリトラクタ。 - 請求項2において、前記スリットは2個設けられ、これらのスリットは前記断面において平行方向に延在していることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記内孔の一端側から該内孔に前記カラムが挿入されており、
該内孔のうち、該カラムを取り巻く該一端側の部分は、それよりも該内孔の他端側の部分よりも大径となっており、
該内孔の該一端側の大径部分と該他端側の小径部分との境界部に段差部が存在しており、
該段差部に前記ストッパ部材が当接しうるものとなっていることを特徴とするシートベルトリトラクタ。 - 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記内孔の一端側から該内孔に前記カラムが挿入されており、
該内孔のうち、該カラムを取り巻く該一端側の部分と、それよりも該内孔の他端側の部分とが等径となっていることを特徴とするシートベルトリトラクタ。 - 請求項5において、該カラムの先端から該カラムと同軸状に筒状部が突設されており、
該筒状部にブッシュが外嵌しており、
該ブッシュが前記内孔の内周面に摺動自在に接していることを特徴とするシートベルトリトラクタ。 - 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記カラムの先端側の外周と前記内孔との間に樹脂製又はゴム製のリングが介在していることを特徴とするシートベルトリトラクタ。
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