JP5477524B2 - 乾燥方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は塗布膜の乾燥方法及び装置に関するものであり、特に塗液に有機溶剤を含み、1%以下の膜厚ムラが製品上欠陥として認識される精密な膜厚精度を要求される例えば光学フイルム等の製造において好適に使用されるものに関する。
近年ウェットコーティング技術を利用して製造される製品に膜厚精度として1%以下の誤差を要求されるような厳しい製品が増えてきている。特にアンチグレア膜に代表される、塗布膜内に微粒子を含む場合には、膜厚のわずかな差が顕著にヘイズ・グロスといった面性に影響を及ぼす。そのような高機能のシートを製造するに当たって、その機能発現のため塗液に入れられる分散物は水性のものは少なく、有機溶剤にのみ溶けるものが多く、一般的に塗液の溶媒として有機溶剤が使われることが多い。この有機溶剤は水に比べると蒸発速度が速いために、塗布後の乾燥過程において精密に乾燥しないと、風紋のようなムラを生じせしめることが知られている。
このような膜の製造過程において、塗液に基材を溶解させる溶剤を含ませて、あるいはあらかじめ基材に基材を溶解させる溶剤を塗布しておいて、基材と塗布膜との密着性を向上させることが一般的に行われている。
この場合、基材の面内において塗液と接触している時間に差が生じると、基材の面内における溶解進行度の差から、膜厚に微小なムラが生じることが明らかになった。
従来は乾燥効率を上げることのみを考えた乾燥装置が多く、例えばノズルやスリットから噴流の熱風を出して走行する基材に当てるだけでなく、基材の両面から熱風を当てかつその温度を高めに制御する方法が提案されているが(例えば特許文献1参照)、この方法では熱風を塗布膜面に当てるためムラが発生し、高い膜厚精度を要求される製品では用いることができない。
一方で乾燥ムラを抑えた精密な塗布膜の形成のために乾燥効率よりも精密に乾燥することに重きをおいた技術も提案されている。例えば特許文献2では乾燥初期に膜面の乾燥風の風速を低くする方法が提案されている。
更に乾燥時の雰囲気溶剤濃度を飽和状態にして極力乾燥速度を抑えることで結果的に精密な乾燥を行なう方法も例えば特許文献3で提案されている。
しかしこれらの方法では乾燥速度を遅くすることでムラのない面状を達成しようというものであり、生産性が落ちるという欠点が存在する。
そこで少しでも乾燥速度を上げるために蒸発した溶剤を効率的に除去しながら乾燥する方法として、例えば特許文献4で提示されている走行する基材を囲み基材搬送部と溶剤除去部に分割して蒸発した溶剤を溶剤除去部の横風で常に除去しながら乾燥する方法が提案されている。この方法は基材搬送部を基材近傍に狭く区切っていることが特徴である。
また、特許文献5では横風で除去するのではなく、凝縮板に蒸発した溶剤を凝縮させて除去する方法も提案されている。
更に乾燥速度を上げるために乾燥風を整流化しながら横風を直接走行する基材に当てる
ことも提案されている。しかし例えば特許文献6に記載の方法では、特に乾燥初期の塗液粘度が1.5倍に上昇するまでは風を当てないことを前提としており、乾燥速度を飛躍的に向上させることまでは出来ていない。
しかし、それらの方法を用いても乾燥速度を大気中に放置したいわゆる自然乾燥の乾燥速度よりも上げることが出来ず、飛躍的な生産性の向上が出来ないことが問題になっている。
特開2002−59074号公報 特開2003−126768号公報 特開2002−320898号公報 特開2003−9395号公報 特表2002−515585号公報 特開2005−81256号公報
本発明は斯かる背景技術に鑑みてなされたもので、わずかな膜厚ムラの発生をも抑制しながら、少なくとも自然乾燥よりも早い乾燥速度を維持でき、面性も生産性も向上できる塗布物の乾燥方法又は装置を提供することを課題とする。
本発明において上記課題を解決するためには、まず請求項1に記載の発明では、
基材を溶解する溶剤を含む塗液が塗布されて塗布膜が形成された連続的に搬送される帯状の前記基材を乾燥炉に通過させながら前記塗布膜を乾燥させる工程を含み、
前記乾燥炉内で乾燥進行中の前記塗布膜中央部位における前記溶剤の初期含有量に対する含有量をy(質量%)、そのyに達するまでに要した時間をx(s)としたとき、yが10以上となる範囲において、yをxで積分した値をS(質量%・s)とすると、Sと塗布幅d(m)との積Sd(質量%・s・m)が、170以下であることによりヘイズ分布の幅が4%未満であり、且つ前記乾燥炉内の前記基材の温度を測定する基材温度測定工程と、
測定した温度の低下が停止して上昇し始めた時間をx0とした場合、前記Sを近似式S=55x 0 で求める工程とを含み、且つ前記乾燥炉は、右側板と、左側板と、前記右側板又は左側板のいずれかに給気口と、前記給気口と対向する前記右側板又は左側板のいずれかに排気口とを有し、
前記給気口を介して前記乾燥炉内へ空気を給気する工程と、
前記排気口を介して前記乾燥炉内から空気を排気する工程とを含むことを特徴とする乾燥方法としたものである。
また請求項の発明では、
前記基材温度測定工程は、前記基材に形成された塗布膜の最も排気口側の温度を測定することを特徴とする請求項1に記載の乾燥方法としたものである。
また請求項の発明では、
前記給気口と前記排気口の開口部の高さが前記天板と底板との距離にほぼ一致していることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥方法としたものである。
また請求項の発明では、
前記乾燥炉は前記基材の搬送方向に複数の乾燥ゾーンに分割されてなり、
各乾燥ゾーンは、前記右側板又は左側板のいずれかに給気口と、前記給気口と対向する前記右側板又は左側板のいずれかに排気口とを1つずつ有し、
各乾燥ゾーンの給気口を介して各乾燥ゾーン内へ空気を給気する工程と、
各乾燥ゾーンの排気口を介して各乾燥ゾーン内から空気を排気する工程と、
隣接する乾燥ゾーン内の差圧を測定する工程と、
測定される差圧を0±2Paの範囲内になるように給気又は排気を制御する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の乾燥方法としたものである。
また請求項の発明では、
前記乾燥炉は、前記右側板又は前記左板の搬入口を含む部分的な場所にのみに前記給気口又は前記排気口を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の乾燥方法としたものである。
また請求項の発明では、
基材を溶解する溶剤を含む塗液が塗布されて塗布膜が形成された連続的に搬送される帯状の前記基材を通過させながら前記塗布膜を乾燥させる乾燥炉を備え、
前記乾燥炉内で乾燥進行中の前記塗布膜中央部位における前記溶剤の初期含有量に対する含有量をy(質量%)、そのyに達するまでに要した時間をx(s)としたとき、yが10以上となる範囲において、yをxで積分した値をS(質量%・s)とすると、Sと塗布幅d(m)との積Sd(質量%・s・m)が、170以下であることによりヘイズ分布の幅が4%未満であり、且つ前記乾燥炉内の前記基材の温度を測定する基材温度測定手段と、
測定した温度の低下が停止して上昇し始めた時間をx0とした場合、前記Sを近似式S=55x 0 で求める手段とを備え、且つ前記乾燥炉は、右側板と、左側板と、前記右側板又は左側板のいずれかに給気口と、前記給気口と対向する前記右側板又は左側板のいずれかに排気口とを有し、
前記給気口を介して前記乾燥炉内へ空気を給気する給気手段と、
前記排気口を介して前記乾燥炉内から空気を排気する排気手段とを備えることを特徴とする乾燥装置としたものである。
また請求項の発明では、
前記基材温度測定手段は、前記基材に形成された塗布膜の最も排気口側の温度を測定することを特徴とする請求項6に記載の乾燥装置としたものである。
また請求項の発明では、
前記給気口と前記排気口の開口部の高さが前記天板と底板との距離にほぼ一致していることを特徴とする請求項6又は7に記載の乾燥装置としたものである。
また請求項の発明では、
前記乾燥炉は前記基材の搬送方向に複数の乾燥ゾーンに分割されてなり、
各乾燥ゾーンは、前記右側板又は左側板のいずれかに給気口と、前記給気口と対向する前記右側板又は左側板のいずれかに排気口とを1つずつ有し、
各乾燥ゾーンの給気口を介して各乾燥ゾーン内へ空気を給気する給気手段と、
各乾燥ゾーンの排気口を介して各乾燥ゾーン内から空気を排気する排気手段と、
隣接する乾燥ゾーン内の差圧を測定する手段と、
測定される差圧を0±2Paの範囲内になるように給気手段又は排気手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の乾燥装置としたものである。
本発明は、わずかな膜厚ムラの発生をも抑制しながら、少なくとも自然乾燥よりも早い乾燥速度を維持でき、面性も生産性も向上できる塗布物の乾燥方法又は装置を提供できるという効果がある。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る塗布物の製造装置の一例を側面から見たときの側面概略図である。塗布装置1aの塗布部1bにおいて基材9a上に塗布膜が塗布される。塗布膜が形成された基材9aは乾燥装置2に搬送される。乾燥装置2は、搬入口3および搬出口4を有し基材9aを囲む筒型の乾燥炉5と、乾燥炉5の側面に設置された給気口6aと、図示していないが給気口6aと対向する位置に設置された排気口6bと、図示していないが給気口6aを介して乾燥炉5内へ空気を給気する給気手段と、同じく図示していないが排気口6bを介して乾燥炉5内から空気を排気する排気手段と、乾燥炉5内の圧力を測定する内圧力測定手段7aと、乾燥炉5外の圧力を測定する外圧力測定手段7bと、図示していないが内圧力測定手段7aにより測定した乾燥炉5内の圧力と外圧力測定手段7bにより測定した乾燥炉5外の圧力との差圧を計算する内外差圧計算手段と、図示していないが内外差圧計算手段により計算された差圧をもとに、給気手段が乾燥炉5内へ給気する空気の給気量、または、排気手段が乾燥炉5外へ排気する空気の排気量、または、その両方を制御する制御手段から構成されている。
基材9aに形成された塗布膜は、搬入口3から乾燥炉5内へ搬入され、搬出口4から乾燥炉5外へ搬出される。ここでは、給気口6aと給気口6aと対向する位置に設置された排気口6bとが4つずつ設置されており、内圧力測定手段7aが搬入口3および搬出口4付近に1つずつ設置されており、外圧力測定手段7bが搬入口3付近に設置されているが、これは本発明の一実施形態を表したものであり、これに限定されるものではない。
図2は、図1に示された乾燥装置の一例のA−A’断面概略図である。乾燥炉5の右側板に給気口の開口部14を有する給気口6aが設置されており、乾燥炉5の左側板の給気口6aと対向する位置に排気口の開口部15を有する排気口6bが設置されている。本発明では、給気口6aから給気手段を用いて乾燥炉5内へ空気を給気し、排気口6bから排気手段を用いて乾燥炉5内から空気を排気している。つまり、給気口6aから排気口6bに向かって、基材9aの搬送方向に対し垂直の方向に空気の流れ17を発生させている。図1および図2では、基材9aの搬送方向に向って右側から左側に空気の流れ17が発生
しているが、これは本発明の一実施形態を表したものであり、基材9aの搬送方向に向って左側から右側に空気の流れが発生していてもよい。つまり、乾燥炉5の左側板に給気口が設置されており、乾燥炉5の右側板の給気口と対向する位置に排気口が設置されていてもよい。
本発明における塗布装置1aは、グラビア、ワイヤーバー、ダイ等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明における乾燥装置2は、塗布装置1aの塗布部1bから塗布膜搬送距離8で0.5m以内の範囲に設置されている。ここで塗布膜搬送距離8とは、塗布部1bと搬入口3との直線距離ではなく、搬送される基材9aに沿った長さのことを指している。塗布膜搬送距離8が0.5mより離れると自然に乾燥していく領域が無視できなくなり、自然乾燥によるムラが生じるため好ましくない。塗布膜搬送距離8が0.5m以内ならばどこからはじめても良いが、搬入口3を外気から遮断するような位置関係にあることは好ましくない。必ず搬入口3が外気の取り入れ口になっている必要がある。
乾燥炉5は、基材9を囲む筒型の形状をしており、基材9aを搬入する搬入口3と、基材9aを搬出し搬入口3に対向して設置された搬出口4と、基材9aの塗布膜9bを形成した側に設置された天板12と、基材9aを挟んで天板12と対向して設置された底板13と、基材9aの搬送方向に向って右側であり、基材9aの幅方向に設置された右側板と、右側板と対向して設置された左側板とで構成されている。ここで、搬送される基材9aに対し、重力方向上面側に塗布膜9bが形成されているか、下面側に塗布膜9bが形成されているかは関係ない。
搬入口3および搬出口4は開口形状を呈しており、それは、乾燥炉5内を密閉する構造が好ましくないためである。特に、搬入口3が開口形状であるのは基材9aを搬入する搬入口3において外気を遮断するような構造が好ましくないためである。
本発明における給気手段と排気手段としては、一般的にブロアが用いられるが、給気量および排気量を調節できるものであればブロアに限定されるものではない。給気手段又は排気手段にブロアが用いられる場合、その回転数を制御して、給気量又は排気量を調節する。
本発明における内圧力測定手段7aと外圧力測定手段7bとしては、乾燥炉5内の圧力と乾燥炉5外の圧力を測定できるものであればよく、特に制約すべき事項ではないが、内圧力測定手段7aにより測定した乾燥炉5内の圧力と、外圧力測定手段7bにより測定した乾燥炉5外の圧力から、その差圧を−2Pa以上〜2Pa以下の範囲に制御するため、その差を把握できる分解能は必要となる。
本発明における内外差圧計算手段としては、マノスターゲージなどのアナログ表示するものからデジタル差圧計などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。ただし、内圧力測定手段7aにより測定された乾燥炉5内の圧力と、外圧力測定手段7bにより測定された乾燥炉5外の圧力との差圧を−2Pa以上〜2Pa以下の範囲に制御するため、その差を把握できる分解能は必要となる。
本発明における制御手段としては、内外差圧計算手段により計算された差圧が−2Pa以上〜2Pa以下の範囲になるように、給気手段により乾燥炉5内へ給気される空気の給気量と排気手段により乾燥炉5内から排気される空気の排気量を制御することができるものであればよく、特に制約すべき事項ではない。
基材9aが搬入口3から乾燥炉5内へ搬入されるとき、搬入口3から乾燥炉5内へ外気が入り込み、これによりムラが発生する。乾燥炉5内の圧力と乾燥炉5外の圧力との差圧が−2Pa以上〜2Pa以下の範囲であると、搬入口3から入り込む外気の風速が適切な範囲に低減できるためムラが発生しない。
ただし、内圧力測定手段7aと外圧力測定手段7bは、塗布開始前の圧力測定に使用するものであり、内外差圧計算手段は、塗布開始前の乾燥炉5内の圧力と乾燥炉5外の圧力との差圧測定に使用するものである。本発明でいう差圧は塗布開始前の乾燥炉5内と乾燥炉5外との圧力の差をいう。また、制御手段は、塗布開始前の給気量、または、排気量、または、その両方の制御に使用するものである。
塗布中は塗布室への入退室などにより乾燥装置2外の気圧の変動は避けられない。その変動の都度、制御手段を用い、乾燥炉5内へ給気される空気の給気量と乾燥炉5内から排気される空気の排気量を変更していたのでは、逆に乾燥装置2内の気流が乱れムラを発生させる原因となる。そのため、塗布開始前の静的な圧力測定用として内圧力測定手段7aと外圧力測定手段7bは使用され、塗布開始前の静的な差圧計算用として内外差圧計算手段は使用され、塗布開始前の静的な給気量、または、排気量、または、その両方の制御用として制御手段は使用される。しかし、圧力測定時、差圧計算時、給気量と排気量の制御時に基材9を搬送させていても停止させていてもよい。
乾燥装置2の長さ(基材の搬送方向)は特に制約すべき事項ではない。乾燥装置2の長さは塗布膜が乾燥するかどうかで決定されるものであり、製品によって異なるものである。ただし、本発明では、5m以上〜100m以下程度の一般的な長さの乾燥装置2を用いている。
本発明における乾燥装置2は、わずかな乾燥ムラの発生をも抑制しながら少なくとも自然乾燥よりも乾燥速度を早く維持することができるため、その効果が最も現れるのは乾燥初期である。乾燥装置の全長すべてが本発明の乾燥装置2によるものではなく、搬入口3を含む乾燥初期段階のみに本発明の乾燥装置2を導入することも可能である。その場合、図1に示すように、前半部に第一乾燥装置として本発明の乾燥装置2を導入し、後半部に第二乾燥装置10として公知の乾燥装置を導入してもよい。
第二乾燥装置10としては、スリットノズルやパンチングメタルから基材に形成された塗布膜に温度を上昇させた噴流を当てるような方式を導入しても良いし、クイックリターン方式のノズルや基材の搬送方向に平行流を流す方式のノズルから熱風を噴出する方式でも良い。また、片面だけでなく両面から加熱手段を設けても良い。市販されているいかなる乾燥装置を使用しても本発明の効果をさまたげるものではない。
さらに、図1には本発明の乾燥装置2と公知の第二乾燥装置10をそれぞれの装置として独立させる場合を示しているが、一つの乾燥装置の中で、前半部が本発明の乾燥装置による方式をとり、後半部が公知の乾燥装置に基づく方式をとる場合でも本発明の効果は変わらない。
本発明における天板と底板との距離11は、天板12と底板13との基材面に対し垂直方向の距離を示している。給気口6aにおける給気量と排気口6bにおける排気量を少なく保ち、かつ、乾燥速度を速めるために、ある程度空気の流れ17が発生する空間を制約する必要がある。そこで天板と底板との距離11は10mm以上〜100mm以下の範囲が好ましい。10mm未満では基材9aが搬送されたときに天板12または底板13への接触などトラブルの原因となるため好ましくない。また、100mmより高くすると乾燥速度を速めるために給気量と排気量を増加させる必要があり、給気手段および排気手段の
増設やエネルギーコストの増加などコスト面の問題があり好ましくない。
乾燥炉5の右側板に設置した給気口と左側板に設置した排気口の開口部の高さは、給気口の開口部14と排気口の開口部15の基材面に対し垂直方向の口径を示している。ここで、天板と底板との距離11と、給気口と排気口の開口部の高さ16とが、大きく異なることは好ましくなく、図2に示すように、ほぼ一致していることが好ましい。ほぼ一致していることで、給気口6aと排気口6b間に発生する空気の流れ17が、乾燥炉5の天板12と底板13との間に一様に発生し、基材9aの塗布膜9bを形成した側と基材9aの塗布膜9bを形成した側とは反対側とに空気の流れ17が発生する。これにより、基材9aを搬送する高さにブレが生じにくくなり、安定性が確保されてムラ発生を防止することができる。
基材9aの塗布膜9bを形成した側と基材9aの塗布膜9bを形成した側とは反対側とのどちらか一方にのみ空気の流れを発生させようとすると、基材9aの搬送する高さを厳密に定めなければならない。しかし、現実的には基材9aを搬送すると基材9aを搬送する高さにブレが生じるため、ムラ発生の原因となる。なお、給気口6aと排気口6b間に発生する空気の流れ17を、より安定して発生させるために、給気口6aにおける給気量と排気口6bにおける排気量を一致させることが好ましい。
さらに、給気量と排気量を管理することが好ましい。基材9aに形成した塗布膜9bと天板12との天板側間隙の高さL1と基材9aと底板13との底板側間隙の高さL2でその量を管理することができる。このとき、高さL1と高さL2が高さL1≦高さL2の関係になっていることが好ましい。天板と底板との距離11が10〜100mmの範囲であり、かつ、高さL1≦高さL2の関係を満たすとき、最も面性と生産性を向上することができる。
また、給気口6aおよび排気口6bは乾燥炉5の全長に対して一箇所以上設けられるべきであるが、その制御を容易にするためにある程度の長さで乾燥炉5を分割することがより好ましい。ここで、分割された一つの乾燥炉を一つの乾燥ゾーンと呼ぶ。各乾燥ゾーンは筒型であり、隣接する各乾燥ゾーンは直線的に配置されていても、屈折して配置されていてもよい。また、各乾燥ゾーンは、給気手段と、排気手段と、各乾燥ゾーン内の圧力を測定する内圧力測定手段と、隣接する各乾燥ゾーン内の差圧を計算するゾーン間差圧計算手段と、ゾーン間差圧計算手段により計算された差圧により給気量、または、排気量、または、その両方を制御する制御手段とをそれぞれ備えている。
図3は、本発明における乾燥装置の一例を側面から見たときの側面概略図である。基材9aに形成された塗布膜は、搬入口3から乾燥炉5内へ搬入され、搬出口4から乾燥炉5外へ搬出される。乾燥炉5は4つの乾燥ゾーン18が直線的に配置されたものであり、各乾燥ゾーン18には、給気口6aと給気口6aと対向する位置に設置され図示されていない排気口6bとが1つずつ設置されており、図示していないが給気口6aを介して乾燥ゾーン18内へ空気を給気する給気手段と、同じく図示していないが排気口6bを介して乾燥ゾーン18内から空気を排気する排気手段とが1つずつ設置されている。また、内圧力測定手段7aが各乾燥ゾーン18内に1つずつ設置されており、外圧力測定手段7bが搬入口3付近に設置されている。これは本発明の一実施形態を表したものであり、これに限定されるものではない。
このとき、隣接する乾燥ゾーン18内の圧力の差圧が−2Pa以上〜2Pa以下の範囲であることが好ましい。基材9aが隣接する各乾燥ゾーン18内を搬送されるとき、基材9aの搬送方向に気流が発生し、これによりムラが発生する。隣接する乾燥ゾーン18内の圧力の差圧を−2Pa以上〜2Pa以下の範囲にすることで、このムラの原因となる気
流の風速を適切な範囲に低減することができるため、ムラを抑制することができる。
またムラを抑制するには塗液中における基材9aを溶解させる溶剤の乾燥履歴を制御する必要がある。膜厚変化に対応するパラメータは塗布膜中の基材9aを溶かす作用のある溶剤の残留量と、溶剤が残留している時間である。また基材を溶かす作用のある溶剤が膜厚変化に影響を及ぼすのは質量%にして10%までであり、それ以下の濃度ではほとんど影響しない。以上から乾燥進行中の該塗布膜中央部位における該溶剤の初期含有量に対する含有量をy(質量%)、そのyに達するまでに要する時間をx(s)としたとき、yが10以上となる範囲において、yをxで積分した値であるS(%・s)というパラメータを導入した。
また本発明では、給気口6aから排気口6bに向かって、基材9aの搬送方向に対し垂直の方向に空気の流れ17を発生させているので、給気側のほうが排気側より乾燥が速く進むために膜厚に勾配がつくことが判明した。この勾配は、塗布幅d(m)が大きいほど顕著になることが確認できた。
そこで前記のSとdの積で表されるパラメータSd(%・s・m)が一定以下の値、具体的には170以下であれば膜厚の変動が一定以内に収めることができ、たとえばアンチグレア膜の製膜においてはヘイズ・グロスといった諸特性を目標とする値以内に収めることができる。
Sの値を求めるには塗布膜を直接分析することも考えられるが現実的ではない。そこでSの値を決定する方法の一つとして、乾燥装置2内に排気中の溶剤濃度を測定できる機構を備え付けておくことが望ましい。複数の乾燥ゾーン18に分割された乾燥炉5において、各乾燥ゾーン18の右側板または左側板のいずれかに配置された給気口6aと、給気口6aと対向するように右側板または左側板のいずれかに配置された排気口6bとを備える乾燥炉5の、排気口6bに溶剤濃度測定器を設けることにより、各乾燥ゾーン18の溶剤蒸発量を測定することができる。
これにより、乾燥装置2のいくつかの部分における溶剤蒸発溶剤量が求められ、そこから塗布膜中の溶剤濃度を求めることができる。
またSの値を決定する方法でより簡便な手法としては、塗布膜中の溶剤蒸発による温度変化から便宜的に求めることもできる。乾燥進行により溶剤が蒸発することで溶剤の蒸発潜熱分の熱量が奪われ基材9aの温度が低下する。この蒸発潜熱より周りの空気から供給される熱量のほうが大きくなったときにいったん低下した基材9aの温度は上昇し始める。この点を便宜的に溶剤濃度10%点とみなし、溶剤蒸発量を時間に対してプロットしたグラフが直線近似できると仮定した場合、Sは,横軸が時間、縦軸が残存溶剤量のグラフにおける台形の面積であり、S=55x0と近似できる。ここでx0は、溶剤濃度10%とみなされるまでに要した時間、すなわち基材9aの温度が低下から上昇に転ずるまでに要した時間である。
この場合温度測定点は最も乾燥が遅れている点、すなわち塗布膜の最も排気側を測定することが面全体の膜厚ムラを把握する点から望ましい。
本発明に係る塗布膜の乾燥の実施例を、以下に光学補償フイルムの一例で説明する。
塗布に関しては幅320mmのトリアセチルセルロース基材を使用し、エクストルージョン型のダイヘッドを用いてトルエンと1,3−ジオキソランを希釈溶剤とし、粒径1〜2μmのシリカ粒子を固形分に対して30%含む、60wt%のアクリル系のUV硬化樹脂塗布液を湿潤膜厚10μmとなるように10m/minの速度で塗布した。この場合1,3−ジオキソランが基材を溶解する溶剤種である。
乾燥装置2は、塗布装置1aの塗布部1bから塗布膜搬送距離8で0.2mに設置した。L1は5mm、L2は10mmであり、乾燥炉5は全長10.2mであった。乾燥炉5は10個の乾燥ゾーン18(長さ1m)に分割されており、各乾燥ゾーン18の一方の側面には給気口6a、もう一方の側面には排気口6bが設けられている。各乾燥ゾーン18の排気口6bには、溶剤濃度測定器が設けられており、各乾燥ゾーン18における溶剤の蒸発量を求めることができる。
乾燥装置2を通過した後、第二乾燥装置10として50℃の熱風乾燥機で4秒間乾燥させた後、電子線で硬化させた。
乾燥装置2の給気口6aから排気口6bへ通過させる空気の流れ17の風量を調整することで、Sを変化させた。実施例と比較例を表1に示した。膜厚ムラの指標としては膜厚が顕著に影響を受けるヘイズ(濁度)を面内の分布で表した。評価としてはヘイズ分布の幅が4%未満であれば○、4%以上であれば×とした。
Figure 0005477524
表1の結果からわかるように風量と塗布幅とを調整して、実施例1〜3のように、Sdの値を170以下にしてあればヘイズの分布が小さくムラのない良好な面状が得られるが、比較例1〜3のように、Sdの値が170以上であればヘイズ分布の大きい悪い面状しか得られなかった。
本発明に係る塗布膜の製造装置の一例を側面から見たときの側面概略図。 図1に示された乾燥装置の一例のA−A’断面概略図。 本発明の乾燥装置の一例を側面から見たときの側面概略図。
符号の説明
1a…塗布装置
1b…塗布部
2…乾燥装置
3…搬入口
4…搬出口
5…乾燥炉
6a…給気口
6b…排気口
7a…内圧力測定手段
7b…外圧力測定手段
8…塗布膜搬送距離
9a…基材
9b…塗布膜
10…第二乾燥装置
11…天板と底板との距離
12…天板
13…底板
14…給気口の開口部
15…排気口の開口部
16…給気口と排気口の開口部の高さ
17…空気の流れ
18…乾燥ゾーン

Claims (9)

  1. 基材を溶解する溶剤を含む塗液が塗布されて塗布膜が形成された連続的に搬送される帯状の前記基材を乾燥炉に通過させながら前記塗布膜を乾燥させる工程を含み、
    前記乾燥炉内で乾燥進行中の前記塗布膜中央部位における前記溶剤の初期含有量に対する含有量をy(質量%)、そのyに達するまでに要した時間をx(s)としたとき、yが10以上となる範囲において、yをxで積分した値をS(質量%・s)とすると、Sと塗布幅d(m)との積Sd(質量%・s・m)が、170以下であることによりヘイズ分布の幅が4%未満であり、且つ前記乾燥炉内の前記基材の温度を測定する基材温度測定工程と、
    測定した温度の低下が停止して上昇し始めた時間をx0とした場合、前記Sを近似式S=55x0で求める工程とを含み、且つ前記乾燥炉は、右側板と、左側板と、前記右側板又は左側板のいずれかに給気口と、前記給気口と対向する前記右側板又は左側板のいずれかに排気口とを有し、
    前記給気口を介して前記乾燥炉内へ空気を給気する工程と、
    前記排気口を介して前記乾燥炉内から空気を排気する工程とを含むことを特徴とする乾燥方法。
  2. 前記基材温度測定工程は、前記基材に形成された塗布膜の最も排気口側の温度を測定することを特徴とする請求項1に記載の乾燥方法。
  3. 前記給気口と前記排気口の開口部の高さが前記天板と底板との距離にほぼ一致していることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥方法。
  4. 前記乾燥炉は前記基材の搬送方向に複数の乾燥ゾーンに分割されてなり、
    各乾燥ゾーンは、前記右側板又は左側板のいずれかに給気口と、前記給気口と対向する前記右側板又は左側板のいずれかに排気口とを1つずつ有し、
    各乾燥ゾーンの給気口を介して各乾燥ゾーン内へ空気を給気する工程と、
    各乾燥ゾーンの排気口を介して各乾燥ゾーン内から空気を排気する工程と、
    隣接する乾燥ゾーン内の差圧を測定する工程と、
    測定される差圧を0±2Paの範囲内になるように給気又は排気を制御する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の乾燥方法。
  5. 前記乾燥炉は、前記右側板又は前記左側板の搬入口を含む部分的な場所にのみに前記給気口又は前記排気口を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の乾燥方法。
  6. 基材を溶解する溶剤を含む塗液が塗布されて塗布膜が形成された連続的に搬送される帯状の前記基材を通過させながら前記塗布膜を乾燥させる乾燥炉を備え、
    前記乾燥炉内で乾燥進行中の前記塗布膜中央部位における前記溶剤の初期含有量に対する含有量をy(質量%)、そのyに達するまでに要した時間をx(s)としたとき、yが10以上となる範囲において、yをxで積分した値をS(質量%・s)とすると、Sと塗布幅d(m)との積Sd(質量%・s・m)が、170以下であることによりヘイズ分布の幅が4%未満であり、且つ前記乾燥炉内の前記基材の温度を測定する基材温度測定手段と、
    測定した温度の低下が停止して上昇し始めた時間をx0とした場合、前記Sを近似式S=55x0で求める手段とを備え、且つ前記乾燥炉は、右側板と、左側板と、前記右側板又は左側板のいずれかに給気口と、前記給気口と対向する前記右側板又は左側板のいずれかに排気口とを有し、
    前記給気口を介して前記乾燥炉内へ空気を給気する給気手段と、
    前記排気口を介して前記乾燥炉内から空気を排気する排気手段とを備えることを特徴とする乾燥装置。
  7. 前記基材温度測定手段は、前記基材に形成された塗布膜の最も排気口側の温度を測定することを特徴とする請求項6に記載の乾燥装置。
  8. 前記給気口と前記排気口の開口部の高さが前記天板と底板との距離にほぼ一致していることを特徴とする請求項6又は7に記載の乾燥装置。
  9. 前記乾燥炉は前記基材の搬送方向に複数の乾燥ゾーンに分割されてなり、
    各乾燥ゾーンは、前記右側板又は左側板のいずれかに給気口と、前記給気口と対向する前記右側板又は左側板のいずれかに排気口とを1つずつ有し、
    各乾燥ゾーンの給気口を介して各乾燥ゾーン内へ空気を給気する給気手段と、
    各乾燥ゾーンの排気口を介して各乾燥ゾーン内から空気を排気する排気手段と、
    隣接する乾燥ゾーン内の差圧を測定する手段と、
    測定される差圧を0±2Paの範囲内になるように給気手段又は排気手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の乾燥装置。
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