JP5471748B2 - 嫌気性処理設備及び嫌気性処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、嫌気性処理設備及び嫌気性処理方法に関するものである。
クラフトパルプ製造時には、メタノールを多量に含む廃液がエバポレータドレン水として排出される。そして、近年の環境意識の高まりから、エバポレータドレン水を嫌気性処理することによってメタンガスを生成することにより、エネルギ効率の改善や環境負荷の軽減を図る試みがなされている。
例えば、特許文献1には、有機物を含む排水を嫌気性処理するための嫌気性処理設備が開示されている。
このため、特許文献1に開示された嫌気性処理設備をクラフトパルプ製造設備の下流に設置し、当該嫌気性処理設備によってエバポレータドレン水を嫌気性処理することが考えられる。
特許第3846131号公報
しかしながら、エバポレータドレン水をメタン発酵槽に供給すると、度々メタンガスの生成が止まり、安定してメタンガスが得られない事態が生じた。また、クラフトパルプ製造設備からのエバポレータドレン水の供給を停止し、一度嫌気性処理設備をシャットダウンすると、メタン生成菌の活性が低下して再始動後に再び活性が高まるまでに相当の時間を必要とし、この間安定してメタンガスが得られない事態も生じた。
このようにエバポレータドレン水を嫌気性処理した場合には、安定的にメタンガスが得られない事態が生じている。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、嫌気性処理設備において安定的にメタンガスを生成することを目的とし、特にクラフトパルプ製造設備から排出されるエバポレータドレン水を嫌気性処理する場合に安定的にメタンガスを生成することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、有機物を含む排水をメタン発酵槽にて嫌気性処理することによってメタンガスを生成する嫌気性処理設備であって、上記メタン発酵槽に供給される上記排水におけるメタノールと少なくともテレピン油あるいは樹脂酸を含む阻害物質との含有比率を調節する含有比率調節手段を備えるという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記含有比率調節手段が、添加剤を上記排水に供給することにより上記含有比率を調節するという構成を採用する。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記含有比率調節手段が、上記添加剤であるメタノールを貯留するメタノール貯留タンクと、上記メタノール貯留タンクに貯留された上記メタノールを上記排水に送出するメタノール送出ポンプと、上記メタノール送出ポンプによる上記メタノールの供給量を制御するメタノール供給量制御装置とを備えるという構成を採用する。
第4の発明は、上記第3の発明において、上記メタノール供給量制御装置が、上記排水を排出する上流側設備における異常を検知した場合に上記添加剤であるメタノールを上記排水に対して供給するという構成を採用する。
第5の発明は、上記第2の発明において、上記含有比率調節手段が、上記添加剤であるアルカリ剤を貯留するアルカリ剤貯留タンクと、上記アルカリ剤貯留タンクに貯留された上記アルカリ剤を上記排水に送出するアルカリ剤送出ポンプと、上記アルカリ剤送出ポンプによる上記アルカリ剤の供給量を制御するアルカリ剤供給量制御装置とを備えるという構成を採用する。
第6の発明は、上記第5の発明において、上記アルカリ剤が、水酸化マグネシウムであるという構成を採用する。
第7の発明は、上記第1の発明において、上記含有比率調節手段は、上記排水を排出する上流側設備からの上記メタン発酵槽への上記排水の供給が停止される場合に、上記メタン発酵槽を冷却してメタン生成菌の活性を低下させることにより、上記メタン発酵槽に循環供給される上記排水における上記含有比率を調節するという構成を採用する。
第8の発明は、上記第7の発明において、上記含有比率調節手段が、水源からの冷却水を上記メタン発酵槽に循環供給される上記排水に送出する冷却水送出ポンプと、上記冷却水送出ポンプによる上記冷却水の供給量を制御する冷却水供給量制御装置とを備えるという構成を採用する。
第9の発明は、上記第1の発明において、上記含有比率調節手段が、上記排水を上記阻害物質の沸点以上に加熱することにより上記阻害物質を揮発させて上記排水中から除去することにより上記含有比率を調節する阻害物質加熱除去装置であるという構成を採用する。
第10の発明は、上記第1の発明において、上記含有比率調節手段が、上記阻害物質を上記排水中において浮上させて分離除去することにより上記含有比率を調節する阻害物質浮上分離装置であるという構成を採用する。
第11の発明は、上記排水が、クラフトパルプ製造時に発生するエバポレータドレン水であるという構成を採用する。
第12の発明は、有機物を含む排水をメタン発酵槽にて嫌気性処理することによってメタンガスを生成する嫌気性処理方法であって、上記メタン発酵槽に供給される上記排水におけるメタノールと少なくともテレピン油あるいは樹脂酸を含む阻害物質との含有比率を調節するという構成を採用する。
本発明によれば、メタン発酵槽に供給される排水におけるメタノールと阻害物質との含有比率が調節可能とされている。
このため、メタン生成菌の活動の阻害要因と考えられる排水に溶けない阻害物質の含有量を低減させることが可能となり、メタン生成菌の活性を常に高い状態に維持することができる。
したがって、本発明によれば、嫌気性処理設備において安定的にメタンガスを生成することが可能となり、特にクラフトパルプ製造設備から排出される阻害物質を多く含有するエバポレータドレン水を嫌気性処理する場合に安定的にメタンガスを生成することが可能となる。
本発明の第1実施形態における嫌気性処理設備の概略構成を示すフロー図である。 本発明の第2実施形態における嫌気性処理設備の概略構成を示すフロー図である。 本発明の第3実施形態における嫌気性処理設備の概略構成を示すフロー図である。
まず最初に、本発明の嫌気性処理設備及び嫌気性処理方法の考え方について説明する。
本発明以前の嫌気性処理設備を稼動し、クラフトパルプ製造設備から排出されるエバポレータドレン水を嫌気性処理している場合において、メタンガスの生成が停止するタイミングを検証したところ、このタイミングは、クラフトパルプ製造設備において異常が発生したタイミングに同期していることが分かった。
より詳細に説明すると、クラフトパルプ製造設備において針葉樹系チップと広葉樹系チップとを各々原料として並列してクラフトパルプを製造し、針葉樹系チップを原料とした場合に発生するエバポレータドレン水(以下、N材ファウルドレン水)と広葉樹系チップの原料とした場合に発生するエバポレータドレン水(以下、L材ファウルドレン水)とが混合された排水をメタン発酵槽に供給した。
そして、何らかの原因により広葉樹系チップを原料とするクラフトパルプの製造ラインが停止するという異常がクラフトパルプ製造設備において発生するタイミングに同期し、メタンガスの生成が停止していた。
N材ファウルドレン水とL材ファウルドレン水とに含まれる有機物濃度(CODcr)は同程度であるが、N材ファウルドレン水には多くのテレピン油が含まれている。
このため、上述のように広葉樹系チップを原料とするクラフトパルプの製造ラインが停止した場合には、メタン発酵槽に供給される排水中のL材ファウルドレン水の割合がN材ファウルドレン水に対して減少し、結果としてメタン発酵槽に供給される排水中のテレピン油の含有比率が上昇する。
この結果、メタン発酵槽に供給される排水中のテレピン油の含有比率が上昇することにより、メタンガスの生成が停止すると推察することができる。
一方、クラフトパルプ製造設備からメタン発酵槽へのエバポレータドレン水の供給を停止し、いわゆるシャットダウンを本発明以前の嫌気性処理設備に対して行う場合には、嫌気性処理設備に残存する排水をメタン発酵槽に循環供給する。
ところが、上述のように、一度嫌気性処理設備をシャットダウンすると、メタン生成菌の活性が低下して再始動後に再び活性が高まるまでに相当の時間を必要とし、この間安定してメタンガスが得られない事態が生じた。
この事態を解明するために、以下の試験1を行った。
(試験1)
本試験では、上述の排水なる原水として、メタノールのみを含むメタノール人工排水(表1においてメタノールと示す)と、エバポレータドレン水をストリッピング処理したエバポレータドレン水ストリッピング処理水(表1においてKPストと示す)と、エバポレータドレン水(表1においてKPと示す)とを用いた。そして、これらの原水を表1で示す保管温度で保管した際のメタン生成菌の活性低下の度合いを確認した。
なお、本試験においては、メタン生成菌を、メタノールを含む溶液で4回の馴到培養し、供給する原水を用いて35℃で培養し、表1に示す条件で18時間保管を行った。その後、表1で示す各RUN共にエバポレータドレン水(KP)を用いて培養をメタン生成菌の培養を行うことで、各RUNにおけるメタン生成菌の活性低下の度合いを確認した。
Figure 0005471748
この結果を表2に示す。
Figure 0005471748
表2から分かるように、メタン生成菌に対する阻害性がないと思われるメタノール人工排水を用いたRUN1〜3、エバポレータドレン水ストリッピング処理水を用いたRUN4〜6については、保管温度に関わらず、メタン生成菌の活性低下は確認されなかった。しかし、メタン生成菌に対する阻害性があると思われるエバポレータドレン水を用いたRUN7〜9では、保管温度が高いほどにメタン生成菌の活性低下が確認された。
さて、テレピン油に代表されるメタン生成菌の活性を低下させる物質(以下、阻害物質と称する)によるメタン生成菌の活性低下は、メタン生成菌の細胞膜を阻害物質が透過することにより発生する。そして、物質が疎水性(無極性)を示す場合には、細胞膜の内外での物質の濃度勾配により、細胞膜を容易に透過することが可能となる。一方、物質が親水性(極性)の場合やイオン化している場合には、容易に細胞膜を透過することができない。
このことを考慮すると、表2に示す結果は、エバポレータドレン水には阻害物質が含まれ、この阻害物質の濃度が保管温度の上昇に伴って増加することを示唆している。そして、エバポレータドレン水に含まれる阻害物質としては、テレピン油や樹脂酸が考えられるため、保管濃度が高くなるに連れてテレピン油や樹脂酸の濃度が上昇していると考えられる。
保管温度が高い場合には、メタン生成菌の活性が高い状態が維持されるため、循環供給される排水のメタノール濃度が保管中に更に減少していると考えられる。このことと、上述のように排水中の有機物(メタノール)の濃度が一定であるにも関わらず阻害物質の濃度が上昇することによりメタンガスの生成が停止することとを考えると、排水に対するメタノールの含有比率が阻害物質の含有比率に対して相対的に低下することにより、メタン生成菌の活性が低下すると考えられる。
これについて考察すると、阻害物質の一部がメタノールを媒介として水に溶け込んでイオン化することによってメタン生成菌に対して無害化されており、メタノールの減少によって溶け込んでいた阻害物質が元に戻ってメタン生成菌に対して有害化するものとの思われる。
なお、メタノールは水に溶解する極性物質であるが、無極性的性質を示すメチル基を含んでいる。このため、同じ無極性的性質を有する阻害物質は、メタノールに溶けてイオン化すると考えられる。
このような考察に基づくと、エバポレータドレン水をメタン発酵槽に供給した場合において、度々メタンガスの生成が止まることを説明することができる。
より詳細に説明すると、阻害物質は、針葉樹系チップを原料とした場合に発生するエバポレータドレン水(N材ファウルドレン水)に多く含まれ、広葉樹系チップの原料とした場合に発生するエバポレータドレン水(L材ファウルドレン水)には殆ど含有されていない。そして、クラフトパルプ製造設備の稼動が安定している場合においては、N材ファウルドレン水とL材ファウルドレン水との混合水である排水中におけるメタノールの含有比率が阻害物質に対して十分に高く、阻害物質の多くがメタノールを媒介としてイオン化するために、メタン生成菌に対して阻害性を示すことがない。一方、度々起こる広葉樹系チップを原料とするクラフトパルプの製造ラインが停止により、排水に対する阻害物質の含有比率が上昇するとイオン化されていた阻害物質が元に戻り、阻害物質の疎水性(無極性)の性質が強くなり、メタン生成菌に対して阻害性を示すことになる。これによって、度々メタンガスの生成が停止することとなる。
また、上記考察に基づくと、一度嫌気性処理設備をシャットダウンすると、メタン生成菌の活性が低下して再始動後に再び活性が高まるまでに相当の時間を必要とすることについても説明することができる。
より詳細に説明すると、シャットダウン時には排水がメタン発酵槽に対して循環供給されることにより、メタノールがメタン発酵され、メタノールの含有比率が低下し、相対的にテレピン油の含有比率が上昇する。この結果、メタノールの媒介としてイオン化されていた阻害物質が元に戻り、阻害物質の疎水性(無極性)の性質が強くなり、メタン生成菌に対して阻害性を示すことになる。これによって、メタン生成菌の活性が大幅に低下し、再始動時に活性が高まるためで非常に長い時間を要することとなる。
以上の説明のように、メタン発酵槽に供給される排水においてメタノールの含有比率が阻害物質の含有比率に対して相対的に低下した場合には、メタン生成菌の活性が低下し、安定的にメタンガスを生成することが困難となる。
したがって、メタン発酵槽に供給される排水におけるメタノールと阻害物質(テレピン油及び樹脂酸の少なくともどちらか一方)との含有比率とを調節可能とすることによって、メタノールの含有比率を阻害物質に対して十分に高い状態を維持し、常に安定してメタンガスを生成することが可能となる。
具体的には、例えば、メタン発酵槽に供給される排水におけるメタノールの含有比率を増大させることによって、メタノールの含有比率を阻害物質に対して十分に高い状態とすることができる。
したがって、嫌気性処理設備において、メタン発酵槽に供給される排水に対してメタノールを添加剤として供給することによって、メタノールの含有比率を阻害物質に対して十分に高い状態とされ、常に安定してメタンガスを生成することが可能となる。
また、例えば、メタン発酵槽に供給される排水における阻害物質の含有比率を低下させることによっても、メタノールの含有比率を阻害物質に対して十分に高い状態とすることができる。
例えば、阻害物質であるテレピン油は、メタノールとのエステル反応によりエステル化合物となって排水中に溶解しているものと考えられる。このため、メタン発酵槽に供給される排水に対してアルカリ剤を添加剤として供給することによって、エステル化合物を鹸化し、これによって阻害物質が排水中に戻ることを防止することができる。
したがって、嫌気性処理設備において、メタン発酵槽に供給される排水に対してアルカリ剤を添加剤として供給することによって、メタノールの含有比率を阻害物質に対して十分に高い状態とされ、常に安定してメタンガスを生成することが可能となる。
なお、添加剤として排水に供給するアルカリ剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムを用いることができる。
また、例えば、排水を阻害物質の沸点異常に加熱してテレピン油を揮発させて除去することによって、メタン発酵槽に供給される排水における阻害物質の含有比率を低下させることもできる。例えば、テレピン油の沸点は155℃前後であるため、当該沸点以上に排水を加熱し、その後冷却することによって阻害物質の含有比率を低下させることができる。
また、例えば、阻害物質を排水中において浮上させて分離除去することによって、メタン発酵槽に供給される排水における阻害物質の含有比率を低下させることもできる。例えば、テレピン油は、疎水性を示すため、加圧浮上処理あるいは常圧浮上処理によって浮き上がらせることができる。したがって、浮上した過剰なテレピン油を除去することによって、阻害物質の含有比率を低下させることができる。
また、例えば、嫌気性処理設備のシャットダウン時においては、メタン発酵槽を冷却して温度(すなわち上記試験1で示す保管温度)を低下し、メタン生成菌の活性を低下させることが考えられる。これによって、メタン発酵槽に循環供給される排水中のメタノールの含有比率が低下することを抑制し、シャットダウン中にメタン生成菌の大幅な活性低下が抑制される。そして、冷却することによって活性が低下されたメタン生成菌は、休眠状態であるために活性が低下している。このため、再び暖かい排水を供給することによって早期に活性を高めることができ、再始動の際の立ち上げ時間を大幅に短縮することができる。
例えば、シャットダウン時にメタン発酵槽に対して冷却水を供給することによってメタン発酵槽を冷却することができる。
なお、メタン生成菌が群集することによって形作られるグラニュールの粒径が大きい程、阻害物質に対する耐性が向上するため、より大きな粒径のグラニュールが形成されることが好ましい。
これは、グラニュールの粒径が大きい場合には、テレピン油の付着がグラニュールの表層で留まり、グラニュール延滞に阻害性を及ぼすには至らないためと考えられる。
グラニュールの粒径が大きい程、阻害物質に対する耐性が向上することを確かめるために、以下の試験2を行った。
(試験2)
本試験では、特に加工を行っていない通常グラニュール(粒径1〜2mm程度)と、当該通常グラニュールを裏ごしすることで微細化させた微細化グラニュール(粒径0.1〜1mm程度)とを用いた。
また、原水として、上記試験1で用いた、メタノールのみを含むメタノール人工排水(メタノール)と、エバポレータドレン水をストリッピング処理したエバポレータドレン水ストリッピング処理水(KPスト)と、エバポレータドレン水(KP)とに加えて、エバポレータドレン水(KP)にさらに阻害物質が含有されているエバポレータ臭気ドレン水を加えたもの(表3においてはKP+臭気ドレンと示す)とを用いた。
そして、表3に示すRUNごとに、バイヤル瓶にグラニュールを1ml、原水を9ml入れ、ヘッドスペースを不活性ガスで置換後に回転培養を行い、経時的にバイヤル瓶のヘッドスペースのメタン濃度を測定した。なお、メタンガス生成が滞って源水中の有機物が消費されたと判断された時点で一旦試験を終了し、グラニュールをそのまま再利用して同様の試験を合計6回繰り返した。
Figure 0005471748
この結果を表4に示す。
Figure 0005471748
表4に示すように、原水に阻害性がないRUN1〜4では、グラニュールの粒径の如何に関わらず、繰り返し試験によるメタン生成速度(活性)の低下は認められなかった。一方、原水に阻害性があるRUN5〜8では、微細化グラニュールについて、徐々にメタン生成速度(活性)が低下した。このように、微細化グラニュールについてのみ原水との繰り返し接触により活性が低下することから、グラニュールの粒径が大きい程、阻害物質に対する耐性が向上することが分かる。
このように、グラニュールの粒径が大きい程、阻害物質に対する耐性が向上するため、嫌気性処理設備においては、グラニュールの粒径を大きくする工夫を行うことが好ましい。例えば、グラニュールの核となる物質を排水に供給することにより、核が中心となりグラニュールを大型化することができる。
また、グラニュールの比重が大きい程、グラニュールの沈降速度が速まり、メタン発酵槽からのメタン生成菌の流出を抑止することができる。
なお、上述のように、エステル化合物を鹸化する目的でアルカリ剤を排水に供給する場合に、当該アルカリ剤として水酸化マグネシウムを用いる場合には、排水中において水酸化マグネシウムから分離したマグネシウムがグラニュールの核となり、これによってグラニュールの比重が大きくなる。
つまり、排水に水酸化マグネシウムを供給した場合には、阻害物質の含有比率の低下、グラニュールの粒径増大、及びグラニュールの比重増大の3つの効果を同時に得ることができる。
そして、本発明の嫌気性処理設備及び嫌気性処理方法は、上述のような考え方に基づいて成されたものである。
以下、図面を参照して、本発明に係る嫌気性処理設備及び嫌気性処理方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の嫌気性処理設備S1の概略構成を示すフロー図である。
本実施形態の嫌気性処理設備S1は、上流側設備であるクラフトパルプ製造設備からエバポレータドレン水X1を排水として供給され、メタノール(有機物)を含む当該エバポレータドレン水をメタン発酵槽にて嫌気性処理することによりメタンを生成するものである。
そして、本実施形態の嫌気性処理設備S1は、図1に示すように、循環水槽1と、分岐管2と、メタン発酵槽3と、循環ポンプ4と、供給バルブ5と、栄養素貯留タンク6と、栄養素送出ポンプ7と、メタノール貯留タンク8と、メタノール送出ポンプ9と、冷却水送出ポンプ10と、温度センサ11と、制御装置12とを備えている。
また、本実施形態の嫌気性処理設備S1は、排水等流体を案内する配管L1〜L8を備えている。
循環水槽1は、配管L1と接続されており、当該配管L1を介してエバポレータドレン水X1が供給される水槽である。
また、循環水槽1は、配管L2と接続されており、当該配管L2を介して、エバポレータドレン水X1とメタン発酵槽3から返送される排水である上澄み液X3との混合水X2を排出する。
このように循環水槽1は、排水の少なくとも一部をメタン発酵槽3に対して循環供給するために設けられている。
分岐管2は、循環水槽1の内部に設置されており、配管L3を介してメタン発酵槽3と接続されている。
この分岐管2は、配管L3を介してメタン発酵槽3から供給される上澄み液X3の一部を循環水槽1の外部に案内し、残りを循環水槽1内に戻すように構成されている。
具体的には、分岐管2は、上端と下端とが開口端とされた垂直管2aと、循環水槽1の基準液面より高い位置で水平に垂直管2aと接続される排水管2bと、当該基準液面よりも低い位置で水平に垂直管2aと接続される供給管2cとを備えている。そして、供給管2cに上澄み液X3が供給されると、供給量が循環水槽1内の水面が基準液面に到達しない場合には上澄み液X3が垂直管2aを介して循環水槽1内に返送されてエバポレータドレン水X1と混合され、供給量が循環水槽1の水面が基準液面を越える場合には上澄み液X3が排水管2bを介して循環水槽1の外部に排出される。
なお、分岐管2の排水管2bには、配管L4と接続されており、排水管2bから排出された上澄み液X3は、処理水X4として配管L4を介して例えば好気性処理設備に供給されて好気性処理される。
メタン発酵槽3は、配管L2と接続されており、配管L2を介して循環水槽1から排出された混合水X2が供給される。そして、メタン発酵槽3は、内部にメタン生成菌が群集することによりグラニュールが存在しており、メタン生成菌によって混合水X2に含まれるメタノールをメタン発酵させることによってメタンガスを生成する。
なお、メタン発酵槽3の上部には、メタンガスX5を排気するための配管L5が接続されている。そして、配管L5を介して排気されたメタンガスX5は、例えば、上流側設備であるクラフトパルプ製造設備のボイラに供給される。
また、メタン発酵槽3は、その上部が配管L3と接続されており、配管L3を介して上澄み液X3を排出する。
循環ポンプ4は、循環水槽1とメタン発酵槽3とを接続する配管L2の途中部位に設置されており、循環水槽1の内部の混合水X2を強制的にメタン発酵槽3の内部に送出するものである。
供給バルブ5は、循環水槽1にエバポレータドレン水X1を供給するための配管L1の途中部位に設けられており、循環水槽1へのエバポレータドレン水X1の供給量を調節するためのものである。そして、供給バルブ5が完全に配管L1を閉鎖した場合には、エバポレータドレン水X1の循環水槽1への供給が停止される。
栄養素貯留タンク6は、メタン発酵槽3のメタン生成菌の栄養素を蓄えるタンクである。そして、本実施形態の嫌気性処理設備S1においては、当該栄養素貯留タンク6に、上記栄養素に加えて、水酸化マグネシウム(アルカリ剤)を貯留している。すなわち、本実施形態の嫌気性処理設備S1において栄養素貯留タンク6は、本発明のアルカリ剤貯留タンクとして機能する。
そして、栄養素貯留タンク6は、配管L6を介して、供給バルブ5よりも上流側において配管L1と接続されている。
栄養素送出ポンプ7は、配管L6の途中部位に設置されており、栄養素貯留タンク6に貯留された栄養素に加えて水酸化マグネシウムX6を、配管L6を介して配管L1に送出するものである。
このような栄養素送出ポンプ7により、水酸化マグネシウムX6は添加剤として配管L1を流れるエバポレータドレン水X1に送出される。つまり、本実施形態の嫌気性処理設備S1において栄養素送出ポンプ7は、本発明のアルカリ剤送出ポンプとして機能する。
メタノール貯留タンク8は、メタノールを蓄えるタンクであり、配管L7を介して、供給バルブ5よりも上流側において配管L1と接続されている。
メタノール送出ポンプ9は、配管L7の途中部位に設置されており、メタノール貯留タンク8に貯留されたメタノールX7を、配管L6を介して配管L1に送出するものである。このようなメタノール送出ポンプ9により、メタノールX7は添加剤として配管L1を流れるエバポレータドレン水X1に送出される。
冷却水送出ポンプ10は、循環水槽1に接続される配管L8の途中部位に設置されており、水源からの冷却水X8を、配管L8を介して循環水槽1に送出するものである。
このような冷却水送出ポンプ10により、冷却水X8は循環水槽1中の混合水X2に送出される。
温度センサ11は、メタン発酵槽3に取り付けられており、メタン発酵槽3の内部温度を検出して、その温度を示す信号を出力するものである。
そして、当該温度センサ11は、例えば、本実施形態の嫌気性処理設備S1をシャットダウンする際にメタン発酵槽3の内部温度を検出するために用いられる。
制御装置12は、本実施形態の嫌気性処理設備S1の動作全体を制御するものである。この制御装置12は、図1に示すように、循環ポンプ4、供給バルブ5、栄養素送出ポンプ7、メタノール送出ポンプ9、冷却水送出ポンプ10、及び温度センサ11と電気的に接続され、これらの制御を行う。
そして、本実施形態において制御装置12は、送出の停止を含めて、メタノール送出ポンプ9によるエバポレータドレン水X1へのメタノールX7の供給量を制御する。
つまり、本実施形態において制御装置12は、本発明のメタノール供給量制御装置として機能する。
なお、制御装置12は、クラフトパルプ製造設備や操作盤から入力される外部入力信号が、クラフトパルプ製造設備の異常を示す場合、メタノール送出ポンプ9によって添加剤であるメタノールX7をエバポレータドレン水X1に供給する。すなわち、制御装置12は、クラフトパルプ製造設備における異常を検知した場合にメタノールX7をエバポレータドレン水X1に対して供給する。
また、本実施形態において制御装置12は、送出の停止を含めて、栄養素送出ポンプ7による水酸化マグネシウムX6の供給量を制御する。
つまり、本実施形態において制御装置12は、本発明のアルカリ剤供給量制御装置として機能する。
また、本実施形態において制御装置12は、送出の停止を含めて、冷却水送出ポンプ10による冷却水X8の供給量を制御する。
つまり、本実施形態において制御装置12は、本発明の冷却水供給量制御装置として機能する。
そして、制御装置12は、本実施形態の嫌気性処理設備S1のシャットダウン時(すなわち、エバポレータドレン水X1を排出するクラフトパルプ製造設備からのメタン発酵槽3へのエバポレータドレン水X1の供給が停止される場合)に、冷却水送出ポンプ10によって冷却水X8を混合水X2に供給する。
なお、本実施形態においては、栄養素貯留タンク6、栄養素送出ポンプ7、メタノール貯留タンク8、メタノール送出ポンプ9、冷却水送出ポンプ10、温度センサ11及び制御装置12によって、本発明の含有比率調節手段が構成されている。
次に、このように構成された本実施形態の嫌気性処理設備S1の動作(嫌気性処理方法)について説明する。
まず、クラフトパルプ製造設備からエバポレータドレン水X1が供給されて当該エバポレータドレン水X1の嫌気性処理を行う通常稼動時の動作について説明する。
この通常稼動時において制御装置12は、供給バルブ5を開放し、循環ポンプ4を駆動し、栄養素送出ポンプ7を駆動する。
クラフトパルプ製造設備から供給されるエバポレータドレン水X1は、配管L1を介して循環水槽1に供給される。
そして、エバポレータドレン水X1には、配管L1途中において、栄養素送出ポンプ7の駆動により送出される栄養素が供給される。ここで、栄養素貯留タンク6には、アルカリ剤である水酸化マグネシウムX6が栄養素に加えて貯留されているため、エバポレータドレン水X1には、栄養素に加えて水酸化マグネシウムX6が供給される。
上述のように、阻害物質の少なくとも一部は、エバポレータドレン水X1に含まれるメタノールとのエステル反応によりエステル化合物となってエバポレータドレン水X1に溶解しているものと考えられる。このため、エバポレータドレン水X1に対して水酸化マグネシウムX6が供給されることによって、エステル化合物が鹸化し、これによって阻害物質がエバポレータドレン水X1中に戻ることを防止することができる。したがって、エバポレータドレン水X1に対して水酸化マグネシウムX6を添加剤として供給することによって、エバポレータドレン水X1における阻害物質の含有比率が低下することができる。
なお、エステル化合物を鹸化させるだけであれば、水酸化マグネシウムX6に換えて添加剤として水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム等を用いることができる。
水酸化マグネシウムX6が添加されたエバポレータドレン水X1が循環水槽1に供給されると、エバポレータドレン水X1は、循環水槽1に先に貯留されている混合水X2と混合されて混合水X2の一部となる。
循環水槽1に貯留されている混合水X2は、循環ポンプ4の駆動により、配管L2を介してメタン発酵槽3の底部に供給される。
そして、メタン発酵槽3において、混合水X2に含まれる有機物(メタノール)がメタン発酵され、これによってメタンガスX5が生成される。このメタンガスX5は、配管L5を介して外部(例えば、クラフトパルプ製造設備のボイラ)に供給される。
ここで、本実施形態においては、水酸化マグネシウムX6がエバポレータドレン水X1に供給されることによって、エバポレータドレン水X1における阻害物質の含有比率が低下されている。このため、混合水X2においてメタノールの含有比率が阻害物質の含有比率に対して十分に高い状態とされ、混合水X2のメタン生成菌に対する阻害性は低く抑えられている。したがって、メタン発酵槽3におけるメタン生成菌の活性低下を抑制し、常に安定してメタンガスX5が生成される。
また、水酸化マグネシウムX6がエバポレータドレン水X1に供給されることによって、エバポレータドレン水X1にはマグネシウムが含まれる。このマグネシウムは混合水X2中に存在し、混合水X2に乗ってメタン発酵槽3に供給される。
このようなマグネシウムは、上述のようにメタン生成菌が群集することによって形作られるグラニュールの核となり、グラニュールの粒径及び比重を増大させる。このため、マグネシウムが供給されるメタン発酵槽3におけるグラニュールは、粒径が大きく重いものとなる。
上述のように、グラニュールの粒径が大きい程、メタン生成菌の阻害物質に対する耐性を高まる。このため、本実施形態においては、メタン生成菌の活性低下を、より抑制し、常に安定してメタンガスX5が生成される。
また、上述のように、グラニュールの比重が大きい程、沈降速度が速まり、メタン発酵槽3からのメタン生成菌の流出を抑制することができる。このため、本実施形態においては、メタン発酵槽3におけるメタン生成菌の密度を高めることができ、より安定してメタンガスX5が生成される。
メタン発酵槽3の下部に混合水X2が供給されると、混合水X2の供給分だけ、メタン発酵槽3における上澄み液X3が配管L3を介して循環水槽1に返送される。
そして、上澄み液X3は、循環水槽1の基準液面を越えた分が循環水槽1の外部に排出され、残りは再び混合水X2と混合されて混合水X2の一部となる。
以上のような処理を続けることにより、通常稼動時においては、連続的にエバポレータドレン水X1が嫌気性処理され、処理水X4として排出される。
そして、このような通常稼動時において、上流側設備であるクラフトパルプ製造設備において何らかの異常が発生し、エバポレータドレン水X1における阻害物質の含有比率が増加した場合には、制御装置12は、外部入力信号に基づいて当該異常を検知し、メタノール送出ポンプ10を駆動する。
このようにメタノール送出ポンプ10が駆動されると、メタノール貯留タンク8に貯留されたメタノールX7が配管L7を介してエバポレータドレン水X1に供給される。これによって、エバポレータドレン水X1におけるメタノールの含有比率が増加する。
このため、混合水X2においてメタノールの含有比率が阻害物質の含有比率に対して十分に高い状態とされ、混合水X2のメタン生成菌に対する阻害性は低く抑えられている。したがって、メタン発酵槽3におけるメタン生成菌の活性低下を抑制し、常に安定してメタンガスX5が生成される。
続いて、本実施形態の嫌気性処理設備S1のシャットダウン時の動作について説明する。
このシャットダウン時において制御装置12は、供給バルブ5を閉鎖し、循環ポンプ4を駆動し、冷却水送出ポンプ10を駆動する。
供給バルブ5が閉鎖されることにより、循環水槽1へのエバポレータドレン水X1の供給が停止され、循環水槽1の混合水X2と上澄み液X3とが繰り返し循環水槽1とメタン発酵槽3とを循環する状態が作られる。
ここで、本実施形態の嫌気性処理設備S1においては、冷却水送出ポンプ10の駆動により、冷却水X8が配管L8を介して循環水槽1に供給される。この冷却水X8は、混合水X2に対して十分に温度が低いものであり、循環水槽1に供給されることによって混合水X2の一部となり、混合水X2の温度を低下させる。
このような温度が低下された混合水X2がメタン発酵槽3に供給され続けることによって、メタン発酵槽3が冷却されて温度が徐々に低下する。
制御装置12は、温度センサ11によってメタン発酵槽3の温度をモニターし、メタン発酵槽3の温度がメタン生成菌が休眠状態(活性が低下)となる温度となった時点で冷却水送出ポンプ10を停止する。
このようにメタン発酵槽3が冷却されることにより、メタン生成菌の活性を一時的に低下させることができる。これによって、メタン発酵槽3に循環供給される排水中のメタノールの含有比率が低下することを抑制し、シャットダウン中にメタン生成菌の大幅な活性低下が抑制される。そして、冷却することによって活性が低下されたメタン生成菌は、休眠状態であるために活性が低下している。このため、再び暖かい排水(エバポレータドレン水X1等)を供給することによって早期に活性を高めることができ、再始動の際の立ち上げ時間を大幅に短縮することができる。
なお、本実施形態においては、外部から冷却水X8を引き入れることによって、メタン発酵槽3を冷却しているが、例えば、シャットダウン直前にエバポレータドレン水X1を強く冷却することによってメタン発酵槽3を冷却しても良い。ただし、メタン発酵槽3の冷却に伴ってメタン生成菌の活性が低下してメタン発酵槽3におけるメタノール濃度が上昇するため、メタノール濃度がメタン生成菌を死滅させないようにメタノール濃度をモニターする必要がある。
以上説明したように、本実施形態の嫌気性処理設備S1及び嫌気性処理方法によれば、メタン発酵槽3に供給される排水(混合水X2)におけるメタノールと阻害物質との含有比率が調節可能とされている。
このため、メタン生成菌の活動の阻害要因と考えられる排水に溶けない阻害物質の含有量を低減させることが可能となり、メタン生成菌の活性を常に高い状態に維持することができる。
したがって、本実施形態の嫌気性処理設備S1及び嫌気性処理方法によれば、安定的にメタンガスX5を生成することが可能となり、特にクラフトパルプ製造設備から排出される阻害物質を多く含有するエバポレータドレン水X1を嫌気性処理する場合に安定的にメタンガスを生成することが可能となる。
なお、本実施形態の嫌気性処理設備S1においては、栄養素貯留タンク6、栄養素送出ポンプ7及び制御装置12によって添加剤として水酸化マグネシウムX6を供給する構成と、メタノール貯留タンク8、メタノール送出ポンプ9及び制御装置12によってメタノールを添加剤として供給する構成と、冷却水送出ポンプ10及び制御装置12によって冷却水を供給する構成との3つの構成を用いて排水(混合水X2)におけるメタノールと阻害物質との含有比率を調節した。
しかしながら、これらの3つ構成は、各々が含有比率の調節を行うことが可能であるため、いずれかの構成を削除した場合であっても、含有比率の調節を行うことが可能である。このような場合には、必要となくなった設備を本実施形態の嫌気性処理設備S1から削除しても良い。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図2は、本実施形態の嫌気性処理設備S2の概略構成を示すフロー図である。この図に示すように、本実施形態の嫌気性処理設備S2は、メタノール貯留タンク8及びメタノール送出ポンプ9に換えて阻害物質加熱除去装置13を備えている。
阻害物質加熱除去装置13は、エバポレータドレン水X1を阻害物質の沸点以上に加熱することにより阻害物質を揮発させてエバポレータドレン水X1から除去するものであり、配管L1の途中部位に設置されている。
なお、阻害物質加熱除去装置13は、制御装置12と電気的に接続されており、通常稼動時において常に稼動される。
このような構成を有する本実施形態の嫌気性処理設備S2においては、配管L1を流れるエバポレータドレン水X1が阻害物質加熱除去装置13によって阻害物質を揮発除去されるため、エバポレータドレン水X1の阻害物質の含有比率が低下する。
したがって混合水X2においてメタノールの含有比率が阻害物質の含有比率に対して十分に高い状態とされ、混合水X2のメタン生成菌に対する阻害性は低く抑えられる。よって、メタン発酵槽3におけるメタン生成菌の活性低下を抑制し、常に安定してメタンガスX5が生成される。
なお、本実施形態の嫌気性処理設備S2は、メタノール貯留タンク8及びメタノール送出ポンプ9を備えていない。
しかしながら、メタノール貯留タンク8及びメタノール送出ポンプ9を備える構成を採用することもできる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本第3実施形態において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図3は、本実施形態の嫌気性処理設備S3の概略構成を示すフロー図である。この図に示すように、本実施形態の嫌気性処理設備S3は、メタノール貯留タンク8及びメタノール送出ポンプ9に換えて阻害物質浮上分離装置14を備えている。
阻害物質浮上分離装置14は、阻害物質をエバポレータドレン水X1中において浮上させて分離除去するものであり、配管L1の途中部位に設置されている。
なお、阻害物質浮上分離装置14は、制御装置12と電気的に接続されており、通常稼動時において常に稼動される。
このような構成を有する本実施形態の嫌気性処理設備S3においては、配管L1を流れるエバポレータドレン水X1が阻害物質浮上分離装置14によって阻害物質を分離除去されるため、エバポレータドレン水X1の阻害物質の含有比率が低下する。
したがって混合水X2においてメタノールの含有比率が阻害物質の含有比率に対して十分に高い状態とされ、混合水X2のメタン生成菌に対する阻害性は低く抑えられる。よって、メタン発酵槽3におけるメタン生成菌の活性低下を抑制し、常に安定してメタンガスX5が生成される。
なお、本実施形態の嫌気性処理設備S3は、メタノール貯留タンク8及びメタノール送出ポンプ9を備えていない。
しかしながら、メタノール貯留タンク8及びメタノール送出ポンプ9を備える構成を採用することもできる。
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、嫌気性処理される排水が、クラフトパルプ製造設備から排出されたエバポレータドレン水である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、有機物を含み、テレピン油及び樹脂酸の少なくともいずれかを含む阻害物質を含有する排水を嫌気性処理する嫌気性処理設備として用いることが可能である。
S1〜S3……嫌気性処理設備、1……循環水槽、2……分岐管、3……メタン発酵槽、4……循環ポンプ、5……供給バルブ、6……栄養素貯留タンク(アルカリ剤貯留タンク、有比率調節手段)、7……栄養素送出ポンプ(アルカリ剤送出ポンプ、含有比率調節手)、8……メタノール貯留タンク(含有比率調節手段)、9……メタノール送出ポンプ(含有率調節手段)、10……冷却水送出ポンプ(含有比率調節手段)、11……温度センサ含比率調節手段)、12……制御装置(含有比率調節手段)、L1〜L8……配管、X1…エバポレータドレン水(排水)、X2……混合水(排水)、X3……上澄み液(排水)、X4……処理水(排水)、X5……メタンガス、X6……水酸化マグネシウム(添加剤、ルカリ剤)、X7……メタノール(添加剤)、X8……冷却水

Claims (3)

  1. 有機物を含む排水をメタン発酵槽にて嫌気性処理することによってメタンガスを生成する嫌気性処理設備であって、
    前記メタン発酵槽に供給される前記排水におけるメタノールと少なくともテレピン油あるいは樹脂酸を含む阻害物質との含有比率を調節する含有比率調節手段を備え
    前記含有比率調節手段は、
    添加剤であるメタノールを貯留するメタノール貯留タンクと、
    前記メタノール貯留タンクに貯留された前記メタノールを前記排水に送出するメタノール送出ポンプと、
    前記メタノール送出ポンプによる前記メタノールの供給量を制御するメタノール供給量制御装置と
    を備えると共に前記添加剤を前記排水に供給することにより前記含有比率を調節し、
    前記メタノール供給量制御装置は、前記排水を排出する上流側設備における異常を検知した場合に前記添加剤であるメタノールを前記排水に対して供給する
    ことを特徴とする嫌気性処理設備。
  2. 前記排水は、クラフトパルプ製造時に発生するエバポレータドレン水であることを特徴とする請求項記載の嫌気性処理設備。
  3. 有機物を含む排水をメタン発酵槽にて嫌気性処理することによってメタンガスを生成する嫌気性処理方法であって、
    前記排水を排出する上流側設備における異常を検知した場合に添加剤であるメタノールを前記排水に対して供給することで、
    前記メタン発酵槽に供給される前記排水におけるメタノールと少なくともテレピン油あるいは樹脂酸を含む阻害物質との含有比率を調節することを特徴とする嫌気性処理方法。
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