JP4516330B2 - 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法及び装置 - Google Patents

油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法及び装置 Download PDF

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Description

本発明は、油脂含有汚濁物質を高効率に浄化するとともに、バイオガスによるエネルギー回収効率を向上することのできる嫌気性処理法(メタン発酵法)に関するものである。
有機性汚濁物質を含有する排水の処理には、従来から好気性の生物処理法が多く用いられているが、この方法はエネルギー消費が多く、かつ、余剰汚泥の処分が大きな問題になっている。これに対して、高濃度の有機性汚濁物質を含有する排水や有機性汚泥の処理には、従来から嫌気性処理方式が多用されている。この方式は曝気動力が不要なのでエネルギー消費量が節約できること、余剰汚泥の発生量が少ないので処理費用が廉価であること、かつエネルギーとして有用なメタンガスを回収できることなどの利点がある。
油脂の大部分は炭素と水素から構成されているため、嫌気的分解に際しては大量のメタンガス生成反応を伴う。したがって、油脂の嫌気性処理法はエネルギー回収の観点から期待される技術である。しかし、油脂を高濃度で含有する排水あるいは汚泥の嫌気性処理においては、高級脂肪酸による反応阻害、すなわち、中性脂肪の加水分解によって生成する高級脂肪酸が分解律速や反応阻害を生じることが技術課題である。
更に、メタン発酵プロセスの連続運転では、有機物負荷が高くなると、メタン発酵汚泥中にプロピオン酸と酢酸の有機酸蓄積が生じ、バイオガス生成反応の安定性が失われる。この状況に陥った場合には、蓄積した有機酸が消費されるまで原水投入を停止するか、または発酵槽内汚泥の大部分を入れかえる等の対応がとられるが、排水処理や廃棄物処理に支障をきたし、経済的負担も大きい。
有機物は、酸生成細菌によって有機酸やアルコールに分解され、最終的に酢酸にまで分解された後に酢酸資化性メタン生成細菌等によってメタンに分解されるが、有機酸の中でプロピオン酸は、一旦生成すると酢酸に分解されにくく、その結果、系内にプロピオン酸が蓄積するという傾向があった。
特開2001−321792号公報
本発明の目的は、多種類の微生物による共同作業の総括的な結果であるメタン発酵反応を最適に制御することにより、油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物の嫌気性処理を安定的かつ効率的に行うことのできる浄化方法及び浄化プロセスを提供することにある。さらにかかる発明により、バイオガスとしてのエネルギー回収効率の向上及び安定化並びに処理水質の向上を目的としたものである。
上述の課題を鋭意検討した結果、本発明者は、油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程においてプロピオン酸濃度をモニターして、モニター値に応じてプロピオン酸の分解に関わる微生物の濃度または活性を制御することによって、バイオガス生産を促進して更に安定に行うことができることを見出した。更に、本発明者は、油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程において、プロピオン酸の生成自体を抑制する処理条件を見出した。
本発明において、「油脂」とは、その主成分が飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のグリセロールエステルであり、遊離の脂肪酸、長鎖アルコール、ステロール、炭化水素、脂溶性ビタミン、色素などの不ケン化物をも含む、天然の動植物内に広く存在する成分或いは人工的にそれらを模して合成したもの(例えばマーガリン等)を指す。油脂は、常温で液体あるいは固体のいずれの場合をも含む。具体例としては、例えば、えの油、あまに油、きり油、大豆油などの乾性油、綿実油、ごま油、なたね油、米油などの半乾性油、落花生油、オリーブ油、ツバキ油などの不乾性油の他、やし油、パーム油などの植物脂も含む植物油脂類、ヘット、ラードなどの動物脂、羊油、鯨油、肝油などの動物油等、及びこれらの混合物が挙げられる。
また、「中性脂肪」とは、脂肪酸のグリセロールエステルであり、加水分解するとグリセリン1分子と脂肪酸1〜3分子を生ずる脂質(油脂)を指す。中性脂肪としては、例えば、グリセリン1分子と脂肪酸1分子がエステル結合したモノアシルグリセロール、グリセリン1分子と脂肪酸2分子がエステル結合したジアシルグリセロール、グリセリン1分子と脂肪酸3分子がエステル結合したトリアシルグリセロール、及びこれらの混合物が挙げられる。
エステル結合を持つO−アシル脂質(中性脂質、ワックスなど)または酸アシド結合を持つN−アシル脂質(スフィンゴ脂質など)の脂質の加水分解生産物として得られた脂肪酸を「遊離脂肪酸」という。遊離脂肪酸には、炭素数の少ない、典型的には炭素数11未満の「低級(短鎖)脂肪酸」(例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸等)と、炭素数の多い、典型的には炭素数11以上の「高級(長鎖)脂肪酸」がある。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸などの不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物が挙げられる。なお、「高級脂肪酸」の炭素数の定義自体は明確なものではなく、例えば、炭素数8以上のものを「高級脂肪酸」とする文献もあり(例えば、津恵直美ら、土木学会第44回年次学術講演会、第1014〜1015頁、平成元年9月)、本願における「高級脂肪酸」も広く解釈されるべきである。
嫌気性処理とは、一般に分子状酸素の存在しない条件下で生育する微生物である嫌気性微生物により行われる処理を指し、特に嫌気性微生物が嫌気的条件下で有機物を分解する嫌気発酵を利用して処理を行うものである。
嫌気性微生物としては、例えば、メタン生成細菌(例えば、Methanosarcina属、Methanothrix属、Methanobacterium属、Methanobrevibacter属)、硫酸還元細菌(例えば、Desulfovibrio属、Desulfotomaculum属、Desulfobacterium属、Desulfobacter属、Desulfococcus属)、酸生成細菌(例えば、Clostridium属、Acetivibrio属、Bacteroides属、Ruminococcus属)、通性嫌気性細菌(例えばBacillus属、Lactobacillus属、Aeromonas属、Streptococcus属、Micrococcus属)等が挙げられる。エネルギー回収の観点からは、メタン生成細菌を用いるのが好ましい。
図1に、油脂を含む有機物が嫌気性環境下で分解される経路を示す。メタン生成細菌の利用可能な基質は非常に限られており、ほとんどの有機物は直接利用されることはない。炭水化物、蛋白質、油脂などは酸生成菌(Fermentative bacteria)によって加水分解、酸発酵され、酢酸、水素、ギ酸などに分解されて初めてメタン生成菌の基質となる。従って、メタン生成菌は嫌気性微生物による炭素連鎖の最終段階を担う菌群としてとらえることができる(上木勝司、永井史郎著、嫌気微生物学、(株)養賢堂、1993年発行、p 103−104)。
しかし、酸生成菌に比べてメタン生成菌の増殖速度が極めて遅いため、酸生成菌の酢酸や水素の生成速度がメタン生成菌による消費速度を上回り、酢酸や水素がメタン生成菌に対する基質阻害を起こす濃度以上に蓄積すると、メタンガス生成反応が停止するに至る。また、蛋白質から酢酸への分解過程においては、中間代謝物である水素の濃度が増加すると、分解経路が切り替わり、酢酸ではなくプロピオン酸が生産されるようになる。密閉型の発酵槽では気相の水素濃度(水素分圧)をモニターすることができるが、分解経路の切り替わりにおいてクリティカルな濃度は、様々な発酵因子によって変動するため、気相の水素濃度をモニターする方法で最適な運転制御を行うことは極めて難しい。
高温メタン発酵においてプロピオン酸や酢酸が蓄積する原因は、プロピオン酸分解菌、水素資化性および酢酸資化性メタン生成菌の活性や増殖速度が低いことが考えられる。プロピオン酸の蓄積を防ぐ方法としては、まず、硫酸イオンの添加により、プロピオン酸を硫酸代謝経路で酢酸まで分解し、メタン発酵反応を促進あるいは安定化させる方法が考えられる。この方法に関しては、硫酸イオンの添加によりプロピオン酸の分解が促進されることが報告されている(Kremer et al., FEMS Microbiology Letters, 1988, No.49, pp.273-277;荒木ら、環境工学論文集、1999、第36巻、pp.11〜18)。しかし、高温メタン発酵の場合、硫酸還元反応によって生成された硫化水素がメタン発酵を阻害することがあるため、連続的に高濃度の硫酸塩を添加することは望ましくない。
プロピオン酸分解菌は、通常、メタン生成菌または硫酸還元菌と共存して働くことが知られている。しかし、フマル酸またはマレイン酸を含む環境下では、メタン生成菌または硫酸還元菌が共存しなくてもプロピオン酸分解菌が増殖して、プロピオン酸をコハク酸と酢酸まで分解できるという報告がある(Stams et al.、 Applied and Environmental Microbiology、 1993、 Vol 59、 No.4、 pp.1114−1119)。この知見に基づき、本発明者らは、反応槽内の汚泥中のプロピオン酸をモニターし、モニターされたプロピオン酸濃度に応じてフマル酸を添加することによりプロピオン酸分解菌の増殖を促進すると共に活性を増大させて、反応槽内のメタンガス生成活性を高く維持し、メタン発酵反応を効率的に進めることができることを見出し、本発明に到った。
即ち、本発明の一態様は、油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程において、反応槽汚泥中のプロピオン酸濃度をモニターし、モニターされたプロピオン酸濃度に応じてフマル酸を添加することを特徴とする油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法に関する。
また、高温メタン発酵においてプロピオン酸の蓄積を防ぐ方法として、プロピオン酸の生成経路を経由せずに、有機物を直接酢酸或いはギ酸にまで分解してメタン発酵を行なう方法も考えられる。かかる方法について、本発明者らは鋭意研究を行なった結果、高濃度の高級脂肪酸を含む油脂排水の貯留槽及び/又は酸発酵槽を4〜15℃に制御することで、プロピオン酸を生成せずに長期間安定的なメタン発酵反応が可能となることを見出した。特に、中性脂肪の加水分解によって生成されるグリセリンと高級脂肪酸のうち、グリセリンからのプロピオン酸生成反応が進行しやすいが、上記のように高濃度の高級脂肪酸を含む油脂排水の貯留槽及び/又は発酵槽を4〜15℃に制御することで、グリセリンからのプロピオン酸生成を抑制しつつ、高級脂肪酸分解を促進して、グリセリンおよび高級脂肪酸からのメタンガス転換を速やかに行うことができることを見出した。油脂含有汚濁物質の実際の処理においては、原水の供給が不安定なために、まず原水を貯留して一定量が貯留された後に生物処理にかける。しかしながら、この貯留の際にも有機物の生物分解が進行して、プロピオン酸が蓄積してしまう。本発明では、この貯留の際の温度を4〜15℃に制御することによって、プロピオン酸の生成を抑制することができる。即ち、本発明の他の態様は、上記に記載した、反応槽汚泥中のプロピオン酸濃度をモニターし、モニターされたプロピオン酸濃度に応じてフマル酸を添加することを特徴とする油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法において、プロピオン酸の生成を抑制する前処理工程として、油脂含有汚濁物質を、15℃以下の温度で貯留する工程、及び/又は、油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で酸発酵処理にかける工程を更に含む油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法に関する。
以上のプロピオン酸蓄積を解消する嫌気性処理方法においては、全ての最終産物が酢酸と水素である。従って、プロピオン酸の蓄積を防ぐための根本的な方法としては、発酵槽内の酢酸および水素の分解活性を高く維持する方法が必要である。メタン生成反応の場合、ほとんどのメタン生成菌は水素とギ酸を基質にできるが、酢酸を基質にできるメタン生成菌は、Methanosarcina 属とMethanothrix(Methanosaeta)属だけである(食品産業における排水・汚泥低減化技術の未来を拓く、食品産業環境保全技術研究組合編、2002年11月版、第7頁)。酢酸資化性メタン生成菌の活性を向上する方法としては、Ni2+およびCo2+の添加、有機物負荷の運転制御方法が知られている(食品産業における排水・汚泥低減化技術の未来を拓く、食品産業環境保全技術研究組合編、2002年11月版、第8頁)。
本発明では、反応槽汚泥中のプロピオン酸の濃度をモニターして、モニター値に応じて上述のプロピオン酸蓄積抑制処理を行なうと共に、反応槽汚泥中の酢酸濃度を同様にモニターし、モニターされた酢酸濃度に応じて、酢酸濃度が所定の範囲内に保持されるように汚泥の返送量を調整することができる。なお、ここでいう「汚泥返送量」とは、嫌気発酵槽から排出される処理液(汚泥混合液)を汚泥沈殿槽にかけて分離液を回収した後の沈殿汚泥を嫌気発酵槽(嫌気発酵槽の前段として前処理槽を設ける場合には、嫌気発酵槽及び/又は前処理槽)に返送する量を意味する。
即ち、本発明の他の態様は、上記に記載した、反応槽汚泥中のプロピオン酸濃度をモニターし、モニターされたプロピオン酸濃度に応じてフマル酸を添加することを特徴とする油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法において、反応槽汚泥中の酢酸濃度をモニターして、酢酸濃度が所定の範囲内に保持されるように汚泥の返送量を調整する工程を更に含む方法に関する。
更に、油脂含有排水・廃棄物のメタン発酵処理の場合、高級脂肪酸による酢酸資化性メタン生成菌の阻害が最も起き易いことが知られている(チュウら、土木学会論文集、1997年、No. 559/VII-2、pp.31-38)。その阻害が起きる主な要因は、高級脂肪酸の酢酸資化性メタン生成菌へ吸着と細胞内浸透が考えられる。従って、高級脂肪酸の分解促進は、高濃度の油脂含有排水・廃棄物の処理において最も重要な課題となっている。そこで、本発明においては、反応槽汚泥中の高級脂肪酸濃度をモニターして、高級脂肪酸濃度が所定の範囲内に保持されるように栄養源を添加することができる。高級脂肪酸の濃度を低下させるために添加することのできる栄養源としては、クエン酸、乳酸、メタノール、ペプトン等の有機栄養源が挙げられる。これらを嫌気処理槽に添加して、嫌気性微生物の働きを活性化させ、脂肪酸のβ酸化分解を促進させることができる。
また、高級脂肪酸の分解は、エネルギー吸収性反応である(Nunn et al., Microbiol. Rev., 1986年, 50, pp.179-192)。例えば、パルミチン酸完全分解に必要な総標準自由能(ΔG0’)は+345.6kJ/molである。したがって、高級脂肪酸の濃度を低下させるためには、メタン発酵系にエネルギー放出性の物質(例えばグルコース、ΔG0’=−457.5〜610.5)を添加して高級脂肪酸分解を促進させることもできる(Beccari et al., Water Res.,1996年, 30, 183-189)。本発明者らは、高濃度の高級脂肪酸を含有する油脂排水・廃棄物のメタン発酵処理において、発酵槽内の高級脂肪酸の濃度をモニターしてグルコース等のエネルギー放出性物質を添加し、高級脂肪酸分解を促進することによっても、メタン生成菌の阻害を防止しながらメタン発酵反応を効率的に進めることができることを見出した。
即ち、本発明の他の態様は、上記に記載した、反応槽汚泥中のプロピオン酸濃度をモニターし、モニターされたプロピオン酸濃度に応じてフマル酸を添加することを特徴とする油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法において、反応槽汚泥中の高級脂肪酸濃度をモニターして、高級脂肪酸濃度が所定の範囲内に保持されるように栄養源及び/又はグルコースを添加する工程を更に含む方法に関する。
以下に、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の記載においては、便宜的にメタン発酵処理による浄化方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の油脂含有排水あるいは油脂含有廃棄物を嫌気性処理法で浄化する方法は、メタン発酵槽内のプロピオン酸をモニターし、モニターされたプロピオン酸濃度に応じて、フマル酸を添加することによりプロピオン酸の濃度および活性を制御しながら、バイオガス生産を安定的に、効率的に行うことを特徴とする。本発明においては、更に、メタン発酵槽内の酢酸濃度をモニターし、モニターされた酢酸濃度に応じて、汚泥の返送量を制御して、酢酸資化性メタン生成菌の濃度及び活性を制御することができる。本発明においては、更に、メタン発酵槽内の高級脂肪酸濃度をモニターし、モニターされた高級脂肪酸濃度に応じて、栄養源やグルコースなどを添加して、高級脂肪酸分解を促進することができる。
酢酸濃度、プロピオン酸濃度を確認するためには、メタン発酵槽内の汚泥を逐次サンプリングし、これをモニターする。酢酸濃度、プロピオン酸濃度のモニター方法は、本浄化装置が微生物菌体と発酵基質、発酵残渣等を含む系であることから、迅速な測定方法をとる必要がある。通常のモニター方法としては液体サンプルをガスクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフなどの測定機器で自動分析する方法がよい。分析キットによる酢酸濃度、プロピオン酸濃度モニターでは、簡便であるが、手分析での操作が主体である。
フマル酸の添加は、粉末状でも溶液状でも可能であるが、溶液状の方が添加操作は簡便であり、また、装置費用も安価である。ただし、フマル酸は水への溶解性が低いことから、多量に投与する場合には粉末状での投与がよい。フマル酸を溶液状で発酵槽に添加する場合、フマル酸濃度として0.5〜2.5%、好ましくは1〜2%濃度で発酵槽に供給する。
油脂含有汚濁物質の前処理工程として、15℃以下の原水貯留工程及び/又は酸発酵工程を行なうためには、油脂含有汚濁物質を目的温度以下にまで冷却する。特に、気温15℃以上となる春〜秋にかけては汚濁物質の温度が高くなるために、冷却操作が必要となる。この際、冷却については冷却装置を新たに設ける必要があり、装置も高価であるために対処が難しい。当該物質が15℃以上の場合、原水貯留工程、酸発酵工程の滞留時間を極力短くすることが効果的である。そして、原水貯留工程、酸発酵工程において15℃以上となる場合、メタン発酵槽でのプロピオン酸生成反応が進行しやすくなることから、メタン発酵槽の酢酸濃度、プロピオン酸濃度のモニター頻度を多くするとともに、フマル酸添加をより厳密に行うことが望ましい。
また、高級脂肪酸濃度を確認するためには、メタン発酵槽内の高級脂肪酸濃度を逐次サンプリングし、これをモニターする。高級脂肪酸濃度のモニター方法は、本浄化装置が酵素・酵素生成微生物体・嫌気性微生物等を含む系であることから、酵素や微生物による高速の分解反応に対応できる手法をとる必要がある。例えば、エタノール性苛性カリを用いた化学的な酸価及びケン化価測定法により、メタン発酵槽内の中性脂肪と脂肪酸濃度とを迅速にモニタリングすることができる。また、試料に高級脂肪酸ラベル試薬、例えばアダム試薬(9-anthryldiazomethane, ADAM)などを添加して高級脂肪酸をラベルし、紫外吸光光度(UV)検出器あるいは蛍光光度(FL)検出器を備えた高速液体クロマトグラフ(HPLC)を用いて、高級脂肪酸を分離・定量することも可能である。この方法は、試料1検体につき1〜2時間で高級脂肪酸濃度を容易に分析できるため、迅速な定量分析の点からは好ましい。さらには、脂質を抽出可能な有機溶媒、例えば、ノルマルヘキサン/イソプロパノール、クロロホルム/メタノール、アセトン、エーテル類等で抽出し、TLC(thin layer chromatography)/FID(flame ionization detector)分析計で中性脂肪を、そしてガスクロマトグラフ分析計で高級脂肪酸を、それぞれ正確に定量分析することができる。この手法を用いると、定量までに約1日を要するが、高級脂肪酸濃度を正確に把握できる点で好ましい。従って、本発明においては、上述の簡易かつ迅速な定量分析法と、TLC/FID分析法、ガスクロマトグラフ分析法とを適宜組み合わせることで、発酵槽内の高級脂肪酸濃度をモニタリングしていくことが望ましい。さらには、例えば、パルミチン酸やステアリン酸等の特定の高級脂肪酸が顕著に生成されることが予め解っている反応系では、それらを特異的に検知できる化学センサもしくは微生物センサを利用することで迅速かつ容易なモニタリングが可能である。
高級脂肪酸の蓄積を抑制する具体的な手段としては、高級脂肪酸濃度のモニター値に応じてエネルギー放出物質を発酵槽に添加して高級脂肪酸の分解を促進することによってメタン菌の阻害を防ぎ、バイオガス生産を効率的に行うことができる。
更に油脂濃度が高い排水・廃棄物を処理する場合は、油脂成分を高級脂肪酸に分解する前処理工程を設けることが望ましい。具体的には、本発明者らが先に出願した特許出願(特開2001−321792号公報)に記載されているように、油脂中の中性脂肪を油脂分解酵素またはその酵素を生成する微生物体と作用させて加水分解する前処理を排水に対して行なうことができる。但し、この場合には、メタン発酵槽中の高級脂肪酸の濃度があまり高くなり過ぎないように、油脂成分の分解反応を制御して行なうことが好ましい。
次に、上記に説明した本発明にかかる油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法を実施するための装置の概要について、図面を参照しながら説明する。図2〜図6は、本発明にかかる油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置の各種態様を示す概念図である。なお、図2〜図6及び以下の説明においては、同じ機能を持つ同じ構成要素に関しては同じ参照番号を付けて、重複する説明を省略する。
図2に示す本発明の一態様にかかる油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置は、主要構成要素として、油脂含有汚濁物質(原水)貯留槽2と;嫌気反応槽3と;フマル酸を貯留する薬液槽1とを具備する。原水貯留槽2に貯留された被処理対象液である油脂含有汚濁物質(原水)は、配管10を通して嫌気反応槽に供給され、上記に説明した所定の条件下で嫌気性処理にかけられて有機物が分解される。また、図2に示す装置においては、嫌気反応槽3内の汚泥中のプロピオン濃度がプロピオン酸濃度測定装置7によって逐次測定される。プロピオン酸濃度測定装置7は、例えば、反応槽3内の汚泥をサンプリングし、これをガスクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフなどで測定するように構成することができる。測定装置7で測定された嫌気反応槽3内の汚泥中のプロピオン酸濃度に応じて、例えば演算装置によって制御信号が発信されて、これが制御信号ライン13を通して送られて、薬液槽1から原水貯留槽2への配管11及び/又は薬液槽1から嫌気反応槽3への配管12に設置されたバルブ(8,9)の制御が行われて、原水貯留槽2及び/又は嫌気反応槽3へのフマル酸の供給量が調整される。これによって、嫌気反応槽3内でのプロピオン酸の蓄積を抑制して、好適な条件下で嫌気反応運転を継続させることが可能になる。
嫌気反応槽3から排出される処理液(汚泥混合液)は、配管14を通して汚泥沈殿槽6に送られ、ここで重力沈降によって汚泥を分離することによって、分離液が得られ、配管15を通して系外に排出される。沈殿した汚泥は、配管16を通して排出され、再処理等の工程に送られる。また、嫌気反応槽3で発生した消化ガスは、配管17を通して消化ガスタンク4に一旦貯留された後、配管18を通してガス利用設備、例えばガスタービン、燃料電池、ガス燈、ガスボイラなどに送ることができる。また、余剰のガスについては、分岐管19を通して余剰ガス燃焼装置5に供給して燃焼処理することができる。
次に、図3に示す装置は、図2の装置において、嫌気性反応槽の前段として前処理槽34を設けたことを特徴とする。原水貯留槽2に貯留された原水は、まず配管33を通して前処理槽34に導入されて、ここでプロピオン酸の生成を抑制する前処理が行われる。当該前処理としては、上記に説明したように、油脂含有汚濁物質を、15℃以下の温度で貯留するか、或いは15℃以下の温度で酸発酵処理にかけることができる。前処理後の原水は、配管35を通して嫌気反応槽3に導入されて、嫌気処理がされる。図2に示す態様の装置と同様に、嫌気反応槽3には、槽内の汚泥中のプロピオン濃度を測定するプロピオン酸濃度測定装置7が設置されており、測定された汚泥中のプロピオン酸濃度に応じて、薬液槽1から原水貯留槽2への配管36及び/又は薬液槽1から前処理槽34への配管31及び/又は薬液槽1から嫌気反応槽3への配管12に設置されたバルブ(37,32,9)の制御が行われて、原水貯留槽2及び/又は前処理槽34及び/又は嫌気反応槽3へのフマル酸の供給量が調整される。これによって、嫌気反応槽3内でのプロピオン酸の蓄積を抑制して、好適な条件下で嫌気反応運転を継続させることが可能になる。
次に、図4に示す装置は、図3に示す装置において、更に、原水貯留槽2及び/又は前処理槽34に油脂分解製剤を供給する手段を設けたことを特徴とする。なお、図を簡略にするために、薬液槽1内の薬液を原水貯留槽へ供給する配管及び嫌気反応槽へ供給する配管及び制御バルブについては、記載を省略している。原水貯留槽2に貯留された原水は、まず配管33を通して前処理槽34に導入されて、ここでプロピオン酸の生成を抑制する前処理が行われる。その際、油脂分解製剤槽40から、配管41を通して油脂分解製剤が原水中に添加される。なお、油脂分解製剤は、配管42を通して原水貯留槽1中に添加することもできる。油脂分解製剤としては、油脂分解酵素又はその酵素を生成する微生物体の溶液を用いることができる。特に、油脂濃度が高い排水・廃棄物を原水として処理する場合には、このように原水貯留槽及び/又は前処理槽において油脂分解製剤を原水に添加して油脂成分を高級脂肪酸に分解することにより、より効率的な嫌気処理を行うことができる。
次に、図5に示す装置は、図4に示す装置において、更に、栄養液及び/又はグルコースを貯留する栄養液槽と;栄養液槽内の栄養液及び/又はグルコースを原水貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給する手段と;嫌気反応槽内の汚泥中の高級脂肪酸濃度を測定する手段と;測定された高級脂肪酸濃度の値に応じて、栄養液槽から原水貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給する栄養液及び/又はグルコースの量を調整する手段と;を設けたことを特徴とする。なお、図を簡略にするために、薬液槽1内の薬液を原水貯留槽へ供給する配管及び嫌気反応槽へ供給する配管及び制御バルブ、並びに油脂分解製剤を原水貯留槽に供給する配管及びバルブについては、記載を省略している。図5に示す装置においては、嫌気反応槽3内の汚泥中の高級脂肪酸の濃度が高級脂肪酸濃度測定手段54で測定され、測定された汚泥中の高級脂肪酸濃度に応じて、例えば演算装置によって制御信号が発信されて、これが制御信号ライン53を通して送られて、栄養液槽50から原水貯留槽2及び/又は前処理槽34及び/又は嫌気反応槽3への配管51に設置されたバルブ(52)の制御が行われて、原水貯留槽2及び/又は前処理槽34及び/又は嫌気反応槽3への栄養液及び/又はグルコースの供給量が調整される。このように、反応槽汚泥中の高級脂肪酸濃度をモニターして、モニター値に応じて嫌気性微生物の働きを活性化させる栄養源、例えば、クエン酸、乳酸、メタノール、ペプトン等の有機栄養源を原水に供給することによって、嫌気反応槽内での脂肪酸のβ酸化分解を促進させることができる。また、同様に、高級脂肪酸濃度のモニター値に応じて、エネルギー放出性の物質(例えばグルコース)を添加することによって、高級脂肪酸分解を促進して、メタン生成菌の阻害を防止しながらメタン発酵反応を効率的に進行させることができる。なお、図5では、図4に示す装置に対して、嫌気反応槽3内の汚泥中の高級脂肪酸濃度をモニターして、そのモニター値に応じて前処理槽へ栄養液及び/又はグルコースを添加する手段を追加した形態を示しているが、このような手段は、図2又は図3に示す構成の装置にも適用することができることは当業者には容易に理解できるであろう。
次に、図6に示す装置は、図2に示す装置において、汚泥沈殿槽6から回収される沈殿汚泥の一部を、汚泥返送管61を通して嫌気反応槽3に返送するラインを設けたことを特徴とする。このように、汚泥の一部を嫌気反応槽に返送することによって、嫌気反応槽内で作用する嫌気性微生物の量を調整することができる。また、汚泥の返送を行うにあたっては、嫌気反応槽内の汚泥中の酢酸濃度を測定して、測定された酢酸濃度値に応じて、汚泥の返送量を調整することが好ましい。図6に示す装置においては、嫌気反応槽に、槽内の汚泥中の酢酸濃度を測定する手段62と;測定された酢酸濃度の値に応じて、返送汚泥量を調整する手段と;を設けている。この構成によって、嫌気反応槽3内の汚泥中の酢酸濃度が酢酸濃度測定手段62によって測定され、測定された汚泥中の酢酸濃度に応じて、例えば演算装置によって制御信号が発信されて、これが制御信号ライン63を通して送られて、汚泥沈殿槽16から嫌気反応槽3への汚泥返送管61に設置されたバルブ(64)の制御が行われて、汚泥の返送量が調整される。このように、反応槽汚泥中の酢酸濃度をモニターして、モニター値に応じて汚泥の返送量を調整することにより、嫌気反応槽3内での酢酸資化性メタン生成菌の濃度及び活性を制御することができる。
なお、図6においては、図2に示す装置において、汚泥沈殿槽からの沈殿汚泥の一部を嫌気反応槽に返送するラインを設けると共に、嫌気反応槽内の汚泥中の酢酸濃度を測定し、測定値に応じて汚泥の返送量を調整する手段を加えた装置が示されているが、これらの手段を同様に図3〜図5に示す形態の装置にも適用することができることは当業者には容易に理解できるであろう。そして、図3〜図5に示すような、嫌気反応槽3の前段として前処理槽34を設置したシステムにおいては、汚泥沈殿槽6からの汚泥は、嫌気反応槽及び/又は前処理槽に返送することができる。この場合、前処理槽に対する汚泥返送についても、反応槽汚泥中の酢酸濃度のモニターによって返送量を調整することができる。
本発明の各種態様は、以下の通りである。
1. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程において、反応槽汚泥中のプロピオン酸濃度をモニターし、モニターされたプロピオン酸濃度に応じてフマル酸を添加することを特徴とする油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法。
2. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程の前段として、プロピオン酸の生成を抑制する前処理工程を含む上記第1項に記載の嫌気性処理方法。
3. 前処理工程が、油脂含有汚濁物質を、15℃以下の温度で貯留する工程、及び/又は、油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で酸発酵処理にかける工程である上記第2項に記載の嫌気性処理方法。
4. 更に、油脂を油脂分解酵素又はその酵素を生成する微生物体と作用させて分解する前処理工程を含む上記第1項〜第3項のいずれかに記載の嫌気性処理方法。
5. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程において、反応槽汚泥中の酢酸濃度をモニターして、酢酸濃度が所定の範囲内に保持されるように汚泥の返送量を調整する上記第1項〜第4項のいずれかに記載の嫌気性処理方法。
6. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程において、反応槽汚泥中の高級脂肪酸濃度をモニターして、高級脂肪酸濃度が所定の範囲内に保持されるように栄養源及び/又はグルコースを添加する上記第1項〜第5項のいずれかに記載の嫌気性処理方法。
7. 嫌気性処理工程が高温メタン発酵を含む上記第1項〜第6項のいずれかに記載の嫌気性処理方法。
8. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置であって、油脂含有汚濁物質貯留槽と;貯留槽内の油脂含有汚濁物質を導入して、これを嫌気性処理するための嫌気反応槽と;フマル酸を貯留する薬液槽と;薬液槽内のフマル酸を油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は嫌気反応槽に供給するための配管と;を具備し、更に、嫌気反応槽内の汚泥中のプロピオン酸濃度を測定する手段と;測定されたプロピオン酸濃度の値に応じて、薬液槽から油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は嫌気反応槽に供給するフマル酸の量を調整する手段と;を有することを特徴とする装置。
9. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置であって、油脂含有汚濁物質貯留槽と;貯留槽内の油脂含有汚濁物質を導入して、15℃以下の温度で貯留するか及び/又は15℃以下の前処理を行う前処理槽と;前処理槽で処理された油脂含有汚濁物質を導入して嫌気性処理するための嫌気反応槽と;フマル酸を貯留する薬液槽と;薬液槽内のフマル酸を油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給するための配管と;を具備し、更に、嫌気反応槽内の汚泥中のプロピオン酸濃度を測定する手段と;測定されたプロピオン酸濃度の値に応じて、薬液槽から油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給するフマル酸の量を調整する手段と;を有することを特徴とする装置。
10. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置であって、油脂含有汚濁物質貯留槽と;貯留槽内の油脂含有汚濁物質を導入して、油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で貯留するか及び/又は15℃以下の温度で酸発酵処理する前処理を行う前処理槽と;前処理槽で処理された油脂含有汚濁物質を導入して嫌気性処理するための嫌気反応槽と;油脂分解製剤として油脂分解酵素又はその酵素を生成する微生物体の溶液を貯留する油脂分解製剤貯留槽と;油脂分解製剤貯留槽内の油脂分解製剤を油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は前処理槽に供給する配管と;フマル酸を貯留する薬液槽と;薬液槽内のフマル酸を油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給するための配管と;を具備し、更に、嫌気反応槽内の汚泥中のプロピオン酸濃度を測定する手段と;測定されたプロピオン酸濃度の値に応じて、薬液槽から油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給するフマル酸の量を調整する手段と;を有することを特徴とする装置。
11. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置であって、油脂含有汚濁物質貯留槽と;貯留槽内の油脂含有汚濁物質を導入して、油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で貯留するか又は酸発酵処理する前処理を行う前処理槽と;前処理槽で処理された油脂含有汚濁物質を導入して嫌気性処理するための嫌気反応槽と;油脂分解製剤として油脂分解酵素又はその酵素を生成する微生物体の溶液を貯留する油脂分解製剤貯留槽と;油脂分解製剤貯留槽内の油脂分解製剤を前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給する配管と;フマル酸を貯留する薬液槽と;栄養液及び/又はグルコースを貯留する栄養液槽と;薬液槽内のフマル酸を油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給するための配管と;栄養液槽内の栄養液及び/又はグルコースを油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給するための配管と;を具備し、更に、嫌気反応槽内の汚泥中のプロピオン酸濃度を測定する手段と;測定されたプロピオン酸濃度の値に応じて、薬液槽から油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給するフマル酸の量を調整する手段と;嫌気反応槽内の汚泥中の高級脂肪酸濃度を測定する手段と;測定された高級脂肪酸濃度の値に応じて、栄養液槽から油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は前処理槽及び/又は嫌気反応槽に供給する栄養液及び/又はグルコースの量を調整する手段と;を有することを特徴とする装置。
12. 嫌気反応槽から排出される汚泥混合液を受容して汚泥と分離液とに分離する汚泥沈殿槽と;汚泥沈殿槽から排出される沈殿汚泥の一部を嫌気反応槽及び/又は前処理槽に返送する配管と;を更に具備する上記第8項〜第11項のいずれかに記載の装置。
13. 嫌気反応槽内の汚泥中の酢酸濃度を測定する手段と;測定された酢酸濃度の値に応じて、汚泥沈殿槽から嫌気反応槽及び/又は前処理槽へ返送する汚泥の量を調整する手段と;を更に具備する上記第12項に記載の装置。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
本発明の実施例で中性脂肪の分解には、50℃で安定性を持つ細菌由来のリパーゼ(10万U/g、ノボ ノルデイスク バイオインダストリー社製)、もしくはCandida cylindracea由来のリパーゼ(36万U/g、名糖産業社製)用いた。1ユニット(U)は、一定標準条件下(pH7.0;30℃;4.8%(m/v)トリブチリン;0.094%(m/v)アラビアゴム)でトリブチリンから酪酸を1分間に1ミリモル遊離させる酵素の量である。
本発明の実施例で行った脂質および高級脂肪酸の定量分析は、以下の手順で行った。油脂含有排水(原水)またはメタン発酵処理液(5mL)をn−ヘキサン/イソプロパノール(5:3(v:v))の有機溶媒(40mL)で抽出した。そのn−ヘキサン抽出液(1.5mL)を用い、ガスクロマトグラフ(島津製作所GC-17A型、検出器FID、キャピラリーカラムDB-FFAP(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)で高級脂肪酸を定量分析した。また、上記のn−ヘキサン抽出液(20mL)を80℃ホットプレートで乾燥し、得られた乾燥重量から試料のn−ヘキサン抽出物濃度を算出した。さらに、乾燥したn−ヘキサン抽出物をクロロホルムで5mg/mL濃度に再溶解し、クロマロッドS-IIIで展開分離してTLC/FID分析計(Iatroscan TH-10)で全脂質成分を定量分析した。
発生ガス中のメタンガス組成の分析には、ジーエルサイエンス320型ガスクロマトグラフ(TCD検出器、カラムActive carbon 30/60)を用いた。
揮発性脂肪酸(Volatile Fatty Acid、 VFA)は、高速液体クロマトグラフ(エルマ光学ERC-8710、検出器RI、カラムShodex Ionpack KC-811、カラム温度60℃、移動相0.1%りん酸)で分析した。米国のCODCrの分析は、米国のStandard Methods (18th Edition、1992年)による閉鎖型還流法で行った。pH測定には、東亜電波工業(株)製のpH複合電極GST-5311Cおよび自動滴定装置AUT-301型を用いた。TS(Total Solids)、VS(Volatile Solids)、SS(Suspended Solids)およびVSS(Volatile Suspended Solids)の分析については下水試験方法(1984年版)に準じた。
実施例1及び比較例1
本実施例及び比較例は、油脂含有排水を低温で貯留することによりプロピオン酸の生成が抑制できることを示すものである。
油脂含有排水としては、市販の豆乳を希釈(豆乳:水=1:3.8で希釈、CODCr=38.9g/L、ヘキサン抽出物質5〜6g/L、中性脂肪2〜3g/L、高級脂肪酸0.4〜1.3g/L)したものを用いた。油脂含有排水(原水)を、保存温度を4〜15℃に制御して1〜4日間貯留した後、油脂分解酵素リパーゼによって50℃で1日間前処理し、メタン発酵槽に連続供給した(実施例1)。上記の連続処理運転を3ヶ月(180日)継続した後、原水の貯留温度を25℃(室温)に切替えて、同様の連続処理運転を3ヶ月(90日)行なった(比較例1)。
メタン発酵の種汚泥としては、豆腐製造排水の高温メタン発酵汚泥を用いた。4〜15℃で保存したリパーゼ前処理豆乳原水を用い、有効容積3.5Lの反応槽中に供給して、55℃、HRT=13日、COD容積負荷2.5g/L・日(汚泥負荷0.5g/gVSS・日)、脂質負荷は、ヘキサン抽出物質79mg/gVSS・日、高級脂肪酸38mg/gVSS・日の条件下でメタン発酵連続実験を行った。
上記連続運転実験における、貯留後の原水中及びメタン発酵槽で19〜29日経過後の発酵槽汚泥中の各種有機酸の濃度を適宜測定した。結果を図7に示す。図7(a)は、連続運転実験において、貯留槽において所定温度で1〜4日間貯留した後の原水中の各種有機酸濃度を示し、図7(b)は、連続運転実験において、その原水をリパーゼ前処理後にメタン発酵槽で18〜25日間処理した後のメタン発酵槽汚泥中の各種有機酸の濃度を示す。また、図7(c)には、メタン発酵槽でのガスの生成量(mL/日)の経時変化を示す。
原水を4〜15℃で貯留した実施例1においては、原水中の主要有機酸は乳酸とギ酸であり、プロピオン酸と酢酸の生成はほとんど認められなかった(図7(a)の左側の180日までのグラフ)。また、原水をリパーゼ前処理後にメタン発酵処理した際のメタン発酵槽汚泥には有機酸の蓄積が起らず、プロピオン酸の蓄積も殆ど認められなかった(図7(b)の左側の180日目までのグラフ)。更に、メタン発酵槽内でのガス生成速度も安定していた(図7(c)の左側の180日目までのグラフ)。
一方、連続実験180日目から、同一の原水を室温で貯留し、リパーゼ前処理後に同条件で高温メタン発酵連続実験を3ヶ月(90日)行ったところ、原水の有機酸組成が実施例1と比べると大きく変わり、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸が主成分になった(図7(a)の右側の180日目以降のグラフ)。メタン発酵により酪酸と吉草酸が除去されたが、酢酸とプロピオン酸、特にプロピオン酸が残留した(図7(b)の右側の180日目以降のグラフ)。図7(a)と図7(b)とを比べると、原水の室温貯留の際に生成したプロピオン酸がほぼそのままメタン発酵槽において残留したことが理解できる。また、メタン発酵槽のガス生成が不安定になり、運転3ヶ月目に入るとガス生成が停止した(図7(c)の右側の180日目以降のグラフ)。
連続運転中のメタン発酵槽内の汚泥性状を表1に示す。表1の数値は、実施例1では安定運転5ヶ月、比較例1では安定運転2ヶ月の平均値を用いた。表中、「除去率」は、原水中の濃度に対する減少率を示す。
Figure 0004516330
実施例2及び比較例2
油脂含有排水として、市販の豆乳を希釈(豆乳:水=1:3.8で希釈、CODCr=38.9g/L、ヘキサン抽出物質5〜6g/L、中性脂肪2〜3g/L、高級脂肪酸0.4〜1.3g/L)したものを用いた。油脂含有排水を、貯留槽で35℃で1〜4日間貯留した後、油脂分解酵素リパーゼによって50℃で前処理した後、有効容積30Lのメタン発酵槽に連続供給した。リパーゼによる酵素前処理においては、有効容積2.0Lの酵素前処理槽で、リパーゼ(5KU/L)によって、50℃、HRT=2.2〜2.6日の条件下で前処理を行なった。
メタン発酵の種汚泥として、豆乳希釈液の高温メタン発酵汚泥(有効容積3.5Lの発酵槽から採取)を用いた。55℃、HRT=18〜25日、COD容積負荷2.1g/L・日(汚泥負荷0.5g/gVSS・日)、脂質負荷は、ヘキサン抽出物質78mg/gVSS・日、高級脂肪酸22mg/gVSS・日の条件下で約1年間のメタン発酵連続実験を行った。連続実験中における発酵槽中の各種有機酸の濃度変動を測定した結果を図8に示す。
まず、比較例2−1として、HRT=18日の条件で、メタン発酵を約4ヶ月継続した。その結果、プロピオン酸と酢酸の蓄積が始まり、メタン生成速度は低下した。そこで、129日目に、有機酸蓄積を解消するため、HRT=25日に負荷を下げて連続メタン発酵処理を5ヶ月間行った(比較例2−2)。その結果、有機酸蓄積は一時的に解消したが、負荷低下後3ヶ月すると、さらに有機酸の蓄積が始まり、ガス生成速度も著しく低下した。
そこで、実施例2として、283日目において、メタン発酵槽内のプロピオン酸分解菌の増殖と分解活性を促進するため、豆乳原水にフマル酸1g/Lを添加して、HRT=18日の条件で再び連続運転を開始した。その結果、1ヶ月間の運転中に、汚泥中のプロピオン酸は約60%除去できたものの、酢酸濃度は変わらなかった。これは、酢酸資化性メタン生成反応が律速になっていると考えられた。そこで、312日目において、メタン生成菌が豊富に存在している生ごみの高温メタン発酵汚泥1Lをメタン発酵槽に添加し、発酵槽内のメタン生成菌濃度を上昇させた。その結果、酢酸とプロピオン酸の蓄積を解消することができた。
実施例3及び比較例3
油脂含有廃棄物として、中性脂肪と高級脂肪酸を高濃度に含有するコーヒー粕粉砕液を用いた。コーヒー粕粉砕液原水の性状を表2に示す。
Figure 0004516330
種汚泥として、30Lメタン発酵装置を用いてコーヒー粕粉砕液で1ヶ月間馴致した高温メタン発酵汚泥を用いた。種汚泥の性状を表3に示す。
Figure 0004516330
コーヒー粕のメタン発酵を促進するために、栄養源としてグルコース(メタン発酵系における最終濃度0.5g/L)を添加したコーヒー粕粉砕液原水を用いて、55℃、有機物負荷=約0.6g添加COD/gVSSの条件下で,メタン発酵回分実験を3週間行った(実施例3)。対照系としてグルコースを添加しないコーヒー粕粉砕液原水でも、同様のメタン発酵回分実験を行った(比較例3)。その結果を図9(a)に示す。
図9(a)から、グルコースを添加してメタン発酵を行なった実施例3においては、グルコースを添加しなかった比較例3と比べてメタン生成量は約30%増加したことが分かる。また、メタン発酵実験を21日目に終了し、汚泥中の脂質を調べた。結果を図9(b)に示す。その結果、グルコースを添加した実施例3においては、汚泥中に高級脂肪酸が検出されなかったのに対し、コーヒー粕のみでメタン発酵した比較例3では、約1,500mg/Lの高級脂肪酸が蓄積していた。この結果から、グルコースの添加によって高級脂肪酸の除去促進効果があることが分かる。また、図9(b)から、グルコースを添加してメタン発酵を行なった実施例1においては、高級脂肪酸及び中性脂肪以外のヘキサン抽出物(図9(b)中の「その他」)の量が増大していることが認められる。これは、微生物の細胞壁中のリン脂質を反映していると考えられ、即ち、有機物の分解に寄与する細菌が増殖して菌体量が増大しているものと考えられる。
本発明によれば、高濃度に油脂を含有する排水を高効率で安定に浄化することが可能となった。さらに、嫌気性生物により有機物を分解するので、バイオガス(特にメタン)として回収することができ、これよりエネルギー回収効率を著しく向上させることが可能となった。
有機物の嫌気的分解の流れを示すフロー図である。 本発明の一態様にかかる油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置の構成を示す概念図である。 本発明の他の態様にかかる油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置の構成を示す概念図である。 本発明の他の態様にかかる油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置の構成を示す概念図である。 本発明の他の態様にかかる油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置の構成を示す概念図である。 本発明の他の態様にかかる油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置の構成を示す概念図である。 実施例1及び比較例1の実験結果を示すグラフである。 実施例2及び比較例2の実験結果を示すグラフである。 実施例3及び比較例3の実験結果を示すグラフである。

Claims (12)

  1. 反応槽汚泥中のプロピオン酸濃度をモニターし、モニターされたプロピオン酸濃度に応じてフマル酸を添加する油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法であって、
    油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程の前段として、当該油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で貯留する工程、及び/又は、当該油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で酸発酵処理にかける工程を含むことを特徴とする嫌気性処理方法。
  2. 前記貯留及び/又は前記酸発酵処理の工程は4℃〜15℃の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載の嫌気性処理方法。
  3. 更に、前記油脂含有汚濁物質を油脂分解酵素又はその酵素を生成する微生物体と作用させて分解する前処理工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の嫌気性処理方法。
  4. 前記油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程において、反応槽汚泥中の酢酸濃度をモニターして、酢酸濃度が所定の範囲内に保持されるように汚泥の返送量を調整することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の嫌気性処理方法。
  5. 前記油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程において、反応槽汚泥中の高級脂肪酸濃度をモニターして、高級脂肪酸濃度が所定の範囲内に保持されるように栄養源及び/又はグルコースを添加することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の嫌気性処理方法。
  6. 前記嫌気性処理工程が高温メタン発酵を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の嫌気性処理方法。
  7. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置であって、
    油脂含有汚濁物質貯留槽と;
    当該油脂含有汚濁物質貯留槽内の油脂含有汚濁物質を導入して、当該油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で貯留するか及び/又は当該油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で酸発酵処理させる前処理槽と;
    当該前処理槽で処理された油脂含有汚濁物質を導入して嫌気性処理するための嫌気反応槽と;
    フマル酸を貯留する薬液槽と;
    当該薬液槽内のフマル酸を当該油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は当該前処理槽及び/又は当該嫌気反応槽に供給するための配管と;
    を具備し、更に、
    嫌気反応槽内の汚泥中のプロピオン酸濃度を測定する手段と;
    測定されたプロピオン酸濃度の値に応じて、当該薬液槽から当該油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は当該前処理槽及び/又は当該嫌気反応槽に供給するフマル酸の量を調整する手段と;
    を有することを特徴とする装置。
  8. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置であって、
    油脂含有汚濁物質貯留槽と;
    当該油脂含有汚濁物質貯留槽内の油脂含有汚濁物質を導入して、油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で貯留するか及び/又は当該油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で酸発酵処理させる前処理を行う前処理槽と;
    当該前処理槽で処理された油脂含有汚濁物質を導入して嫌気性処理するための嫌気反応槽と;
    油脂分解製剤として油脂分解酵素又はその酵素を生成する微生物体の溶液を貯留する油脂分解製剤貯留槽と;
    当該油脂分解製剤貯留槽内の油脂分解製剤を当該油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は当該前処理槽に供給する配管と;
    フマル酸を貯留する薬液槽と;
    当該薬液槽内のフマル酸を当該油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は当該前処理槽及び/又は当該嫌気反応槽に供給するための配管と;
    を具備し、更に、
    当該嫌気反応槽内の汚泥中のプロピオン酸濃度を測定する手段と;
    測定されたプロピオン酸濃度の値に応じて、当該薬液槽から当該油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は当該前処理槽及び/又は当該嫌気反応槽に供給するフマル酸の量を調整する手段と;
    を有することを特徴とする装置。
  9. 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理装置であって、
    油脂含有汚濁物質貯留槽と;
    当該油脂含有汚濁物質貯留槽内の油脂含有汚濁物質を導入して、当該油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で貯留するか及び/又は当該油脂含有汚濁物質を15℃以下の温度で酸発酵処理させる前処理を行う前処理槽と;
    当該前処理槽で処理された油脂含有汚濁物質を導入して嫌気性処理するための嫌気反応槽と;
    油脂分解製剤として油脂分解酵素又はその酵素を生成する微生物体の溶液を貯留する油脂分解製剤貯留槽と;
    当該油脂分解製剤貯留槽内の油脂分解製剤を当該前処理槽に供給する配管と;
    フマル酸を貯留する薬液槽と;
    栄養液及び/又はグルコースを貯留する栄養液槽と;
    当該薬液槽内のフマル酸を当該油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は当該前処理槽及び/又は当該嫌気反応槽に供給するための配管と;
    当該栄養液槽内の栄養液及び/又はグルコースを当該油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は当該前処理槽及び/又は当該嫌気反応槽に供給するための配管と;
    を具備し、更に、
    当該嫌気反応槽内の汚泥中のプロピオン酸濃度を測定する手段と;
    測定されたプロピオン酸濃度の値に応じて、当該薬液槽から当該油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は当該前処理槽及び/又は当該嫌気反応槽に供給するフマル酸の量を調整する手段と;
    当該嫌気反応槽内の汚泥中の高級脂肪酸濃度を測定する手段と;
    測定された高級脂肪酸濃度の値に応じて、当該栄養液槽から当該油脂含有汚濁物質貯留槽及び/又は当該前処理槽及び/又は当該嫌気反応槽に供給する栄養液及び/又はグルコースの量を調整する手段と;
    を有することを特徴とする装置。
  10. 前記前処理槽の温度は4℃〜15℃である、請求項7〜9のいずれかに記載の装置。
  11. 前記嫌気反応槽から排出される汚泥混合液を受容して汚泥と分離液とに分離する汚泥沈殿槽と;
    当該汚泥沈殿槽から排出される沈殿汚泥の一部を前記嫌気反応槽及び/又は前記前処理槽に返送する配管と;
    を更に具備する請求7〜10のいずれかに記載の装置。
  12. 前記嫌気反応槽内の汚泥中の酢酸濃度を測定する手段と;
    測定された酢酸濃度の値に応じて、前記汚泥沈殿槽から前記嫌気反応槽及び/又は前記前処理槽へ返送する汚泥の量を調整する手段と;
    を更に具備する請求項11に記載の装置。
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