JP2003260490A - 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法 - Google Patents
油脂含有汚濁物質の嫌気性処理方法Info
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Abstract
性処理を安定的かつ効率的に行うことのできる浄化方法
及び浄化プロセスを提供する。 【解決手段】 本発明は、油脂含有汚濁物質の嫌気性処
理工程において、反応槽内汚泥中の水素生産性酢酸生成
菌濃度(a)と水素資化性メタン生成菌濃度(b)と酢酸資化
性メタン生成菌濃度(c)の比率(a:b:c)をモニターし、
当該比率が所定の範囲内に保持されるように運転条件を
制御することを特徴とする嫌気性処理方法に関する。
Description
効率で浄化するとともに、バイオガスによるエネルギー
回収効率を向上することのできる嫌気性処理法(メタン
発酵法)に関するものである。
は、従来から好気性の生物処理法が多く用いられている
が、この方法はエネルギー消費が多く、かつ、余剰汚泥
の処分が大きな問題になっている。これに対して、高濃
度の有機性汚濁物質を含有する排水や有機性汚泥の処理
には、従来から嫌気性処理方式が多用されている。この
方式は曝気動力が不要なのでエネルギー消費量が節約で
きること、余剰汚泥の発生量が少ないので処理費用が廉
価であること、かつエネルギーとして有用なメタンガス
を回収できることなどの利点がある。
いるため、嫌気的分解に際して大量のメタンガスを生成
することから、油脂の嫌気性処理法はエネルギー回収の
観点から期待される技術である。しかし、高濃度油脂含
有排水あるいは汚泥の嫌気性処理においては、高級脂肪
酸による反応阻害、すなわち、中性脂肪の加水分解によ
って生成する高級脂肪酸が分解律速や阻害を生じること
が技術課題である。高級脂肪酸はメタン生成菌、とりわ
け酢酸利用メタン生成菌を阻害し、高級脂肪酸自身を分
解する菌も阻害を受ける。高級脂肪酸が一旦蓄積し始め
ると阻害作用によってさらに蓄積が進み、メタン生成が
停止するといった悪循環におちいる。したがって、従来
は高濃度油脂含有排水・廃棄物はメタン発酵処理の対象
とされにくかった。
s:蒸発残留物)ベース、油脂濃度としては9〜44g/
L)に成分調整した油脂系食品廃棄物を用いて、HRT
=7.5日で高温(55℃)メタン発酵した室内実験で
は、CODCr分解率は73〜80%、VS分解率は76
〜80%と高い有機物分解率であったことが報告されて
いる(山下耕司ら、第11回廃棄物学会研究発表会講演
論文集I、第283〜285頁、2000年11月8
日)。しかしながら、ここに報告されたデータを基にガ
ス発生率を算出してみると、油脂含有率40%の場合は0.
176L-CH4/g-投入CODCr、0.220L-CH4/g-分解CODCr、油
脂含有率23%の場合は0.167L-CH4/g-投入CODCr、0.214
L-CH4/g-分解CODCrである。これに対して、分解された
有機物(CODCr)当たりのメタンガス発生率を化学量
論的に算出すると、理論上は0.35L-CH 4/g-分解CODCrと
なる(なお、上記において、HRTはhydraulic retent
ion time(水理学的滞留時間)、CODCrはchemical oxy
gen demand(重クロム酸カリウムによる酸素消費量)、V
Sはvolatile solids:揮発性固形分である)。従って、
この油脂系食品廃棄物のメタン発酵事例より、油脂系廃
棄物の高温メタン発酵においては有機物分解率は高く取
れると言えるものの、有機物分解量に相当分のメタンガ
ス回収が得られず、メタン発酵槽において高級脂肪酸な
どの中間代謝産物が蓄積したり、油分が発酵槽内で浮上
分離していることが推察される。
ように嫌気性処理に有用な微生物の活性を阻害し、これ
により分解されなくなった高級脂肪酸がいっそう蓄積さ
れることになり、最終的にはメタン生成反応を停止させ
る。つまり、中性脂肪の加水分解によって生成する高級
脂肪酸が多大であると、メタン発酵阻害が大きくなり、
ひいてはメタン生成反応自体が進行しなくなるという問
題が生じる。(チュウ・シュンホウら、土木学会論文
集、No.559/VII-2、第31〜38頁、1997年)。
タン発酵を主とする嫌気性処理法の技術的問題点を要約
すると以下のようになる。 中性脂肪が分解されて生じる高級脂肪酸のうち、不飽
和脂肪酸は飽和脂肪酸に変換してからβ酸化分解され
る。しかし、飽和脂肪酸の分解速度が遅いため、それが
油脂分解の反応律速になっている。 高級脂肪酸の蓄積により、高級脂肪酸の分解反応と酢
酸資化性メタン生成反応が阻害されやすい。この阻害作
用は、飽和脂肪酸より不飽和高級脂肪酸の方が強い。 メタン発酵プロセスの連続運転では、有機物負荷が高
くなると、メタン発酵汚泥中にプロピオン酸と酢酸の有
機酸蓄積が生じ、バイオガス生成の安定性が失われる。
塩、亜硫酸塩、リン酸塩等の金属塩)または栄養分(例
えば、クエン酸、乳酸、メタノール、ペプトン類等)を
嫌気処理槽に添加して、嫌気性微生物の働きを活性化さ
せ、脂肪酸のβ酸化分解を促進する方法が従来からとら
れている。しかし、嫌気性微生物の種類、構成が把握さ
れずに実施された場合、期待される効果は十分に発揮さ
れない。
脂肪酸/VSSの比率を所定以下に調節することで解決
できる方法が提案された。この方法では、VSSを微生
物菌体濃度に近似できることを前提にしているが、嫌気
性処理槽におけるVSSは正確には未分解有機物と微生
物とが混在している。このため、有機物負荷が適正で、
有機物除去率が高い場合にはVSSは菌体濃度をある程
度反映できるが、特に固形物濃度が高い廃水や廃棄物処
理の場合、有機物負荷が高くなると未分解有機物が増加
するため菌体濃度を正確に把握することが難しくなり、
嫌気性処理を確実に制御することが難しくなる。
活性低下すなわちメタンガス発生量の極端な低下が生じ
た場合の反応槽内汚泥の状況として、有機酸、特にプロ
ピオン酸と酢酸の蓄積が観察されているが、この状況に
陥った場合には、有機酸が消費されるまで原水投入を停
止又は縮減するか、または反応槽内汚泥の大部分を入れ
かえる等の対応がとられているが、処理に支障をきた
し、経済的負担も大きい。
類の微生物による共同作業の総括的な結果であるメタン
醗酵反応を最適に制御することにより、油脂含有排水あ
るいは油脂含有廃棄物の嫌気性処理を安定的かつ効率的
に行うことのできる浄化方法及び浄化プロセスを提供す
ることにある。さらにかかる発明により、バイオガスと
してのエネルギー回収効率の向上及び安定化並びに処理
水質の向上を目的としたものである。
た結果、本発明者は、油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工
程において、微生物菌群濃度、プロピオン酸濃度、高級
脂肪酸濃度をモニターし、当該比率が所定の範囲内に保
持されるように運転条件を制御するというフィードバッ
ク制御を行うことによって、嫌気性処理を安定に行うと
共に、バイオガス生産を促進できることを見出し、高級
脂肪酸や有機酸の蓄積を抑制する具体的な手段を提供す
ることによって、上記の課題を解決した。
分が飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のグリセロールエステ
ルであり、遊離の脂肪酸、長鎖アルコール、ステロー
ル、炭化水素、脂溶性ビタミン、色素などの不ケン化物
をも含む、天然の動植物内に広く存在する成分を指す。
油脂は、常温で液体あるいは固体のいずれの場合をも含
む。油脂としては、例えば、えの油、あまに油、きり
油、大豆油などの乾性油、綿実油、ごま油、なたね油、
米油などの半乾性油、落花生油、オリーブ油、ツバキ油
などの不乾性油の他、やし油、パーム油などの植物脂も
含む植物油脂類、ヘット、ラードなどの動物脂、羊油、
鯨油、魚油、肝油などの動物油等、及びこれらの混合物
が挙げられる。
エステルであり、加水分解するとグリセリン1分子と脂
肪酸1〜3分子を生ずる脂質を指す。中性脂肪として
は、例えば、グリセリン1分子と脂肪酸1分子がエステ
ル結合したモノアシルグリセロール、グリセリン1分子
と脂肪酸2分子がエステル結合したジアシルグリセロー
ル、グリセリン1分子と脂肪酸3分子がエステル結合し
たトリアシルグリセロール、及びこれらの混合物が挙げ
られる。
脂肪、ワックスなど)または酸アシド結合を持つN−ア
シル脂質(スフィンゴ脂質など)の脂質の加水分解生産
物として得られた脂肪酸を「遊離脂肪酸」という。遊離
脂肪酸には、炭素数の少ない、典型的には炭素数11未
満の「低級(短鎖)脂肪酸」(例えば、酪酸、吉草酸、
カプロン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸
等)と、炭素数の多い、典型的には炭素数11以上の
「高級(長鎖)脂肪酸」がある。高級脂肪酸としては、
例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペ
ンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステア
リン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノ
セリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、
メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、オレイン
酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジ
ン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステア
ロール酸などの不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物が挙
げられる。尚、「高級脂肪酸」の炭素数の定義自体は明
確なものではなく、例えば、炭素数8以上のものを「高
級脂肪酸」とする文献もある(例えば、津恵直美、原田
秀樹、桃井清至、滝沢智、亀井昌敏ら、土木学会第44
回年次学術講演会、第1014〜1015頁、平成元年
9月等を参照のこと)。従って、本発明における「高級
脂肪酸」も、広く解釈されるべきである。
しない条件下で生育する微生物である嫌気性微生物によ
り行われる処理を指し、特に嫌気性微生物が嫌気的条件
下で有機物を分解する嫌気発酵を利用して処理を行うも
のである。
成細菌(例えば、Methanosarcina属、Methanothrix属、
Methanobacterium属、Methanobrevibacter属)、硫酸還
元細菌(例えば、Desulfovibrio属、Desulfotomaculum
属、Desulfobacterium属、Desulfobacter属、Desulfoco
ccus属)、酸生成細菌(例えば、Clostridium属、Aceti
vibrio属、Bacteroides属、Ruminococcus属)、通性嫌
気性細菌(例えばBacillus属、Lactobacillus属、Aerom
onas属、Streptococcus属、Micrococcus属)等が挙げら
れる。エネルギー回収の観点からは、メタン生成細菌を
用いるのが好ましい。
で分解される経路を示す。メタン生成細菌が利用可能な
基質は非常に限られており、ほとんどの有機物は直接利
用されることはない。炭水化物、蛋白質、油脂などは酸
生成菌(Fermentative bacteria)によって加水分解、
酸発酵され、酢酸、水素、蟻酸などに分解されて初めて
メタン生成菌の基質となる。従って、メタン生成菌は嫌
気微生物による炭素連鎖の最終段階を担う菌群としてと
らえることができる(上木 勝司、永井 史郎著、嫌気微
生物学、(株)養賢堂、1993年発行、p 103−104)。
増殖速度が1/3〜1/10倍と極めて遅いため、酸生
成菌による酢酸や水素の生成速度がメタン生成菌による
酢酸や水素の消費速度を上回ると、酢酸や水素が蓄積し
てメタン生成菌に対する基質阻害を起こすようになり、
最終的にはメタンガス発生が停止するに至る。また、蛋
白質から酢酸への分解過程においては、中間代謝物であ
る水素の濃度が増加すると、分解経路が切り替わり、酢
酸ではなくプロピオン酸が生産されるようになる。密閉
型の反応槽では気相の水素濃度をモニターすることがで
きるが、分解経路の切り替わりにおいてクリティカルな
濃度は、様々な条件によって変動するため、気相の水素
濃度をモニターすることにより運転条件を制御すること
は極めて難しい。
度、特に水素生産性酢酸生成菌濃度(a)と、水素資化性
メタン生成菌濃度(b)及び酢酸資化性メタン生成菌濃度
(c)をモニターし、それらの比率(a:b:c)が適性範囲に維
持されるように運転条件を制御するフィードバック制御
を行うことにより、反応槽内のメタンガス生成活性を高
く維持し、メタン醗酵反応を効率的に進めることができ
ることを見出し、本発明に至った。
或いは上記の制御と組み合わせて、反応槽内汚泥中のプ
ロピオン酸濃度を常にモニターし、その濃度が適性値以
下になるように運転条件を制御するフィードバック制御
を行うことによっても、反応槽内のメタンガス生成活性
を高く維持し、メタン醗酵反応を効率的に進めることが
できることを見出し、本発明に至った。
比率及び/またはプロピオン酸濃度のモニター値に応じ
て原水投入量、汚泥返送量、汚泥添加量、栄養源添加量
のいずれか1つ以上を変化させることにより、菌濃度比
率及び/またはプロピオン酸濃度を適性に維持すること
ができる。
理において最も重要な課題となっている高級脂肪酸の分
解は、主として硫酸還元菌、水素生産性酢酸生成菌、及
び水素資化性メタン生成菌の共同作業によってなされ
る。すなわち、高級脂肪酸から酢酸への分解反応はいわ
ゆるβ酸化であり、このようなβ酸化反応により生成さ
れた酢酸と水素は、酢酸資化性及び水素資化性メタン生
成菌により利用され、メタンガスへと転換される。
生成菌と、水素資化性メタン生成菌及び酢酸資化性メタ
ン生成菌の濃度比率及び/またはプロピオン酸濃度とと
もに高級脂肪酸濃度をモニターし、その濃度が適性値以
下になるように、運転条件を制御するフィードバック制
御を行うことにより、反応槽内のメタンガス生成活性を
更に高く維持し、メタン醗酵反応を更に効率的に進める
ことができることを見出した。
する具体的な手段とは、高級脂肪酸濃度のモニター値に
応じて原水投入量、汚泥返送量、汚泥添加量、栄養源添
加量のいずれか1つ以上を変化させること及び/または
カルシウム含有物質でpH 5.5〜6.5に調整することによ
り高級脂肪酸分解を促進させることである。さらに油脂
濃度が高い廃水・廃棄物の場合は、油脂成分を高級脂肪
酸に分解する前処理工程を設けることが望ましい。
入量、汚泥返送量、汚泥添加量等を変化させる場合、反
応槽内の硫酸イオン濃度100mg/L以下に維持すると、メ
タン生成菌と基質(酢酸及び水素)が競合する完全酸化
型硫酸還元菌の増殖を抑制し、メタン発酵反応を促進で
きる。
なった場合には、反応槽内の硫酸イオン濃度が300mg/L
以下になるように原水投入量、汚泥返送量、汚泥添加
量、栄養源添加量のいずれか1つ以上を制御すれば、メ
タン菌よりも増殖速度が速い完全酸化型硫酸還元菌の増
殖を促進し、過剰の水素を速やかに消費することで酸醗
酵菌によるプロピオン酸生成を防止して酢酸生成を促進
し、結果的にメタン生成を促進することができる。
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以降、便宜的にメタン発酵処理による浄化方法について
説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
棄物を嫌気性処理法で浄化する方法は、油脂含有汚濁物
質の嫌気性処理工程において、水素生産性酢酸生成菌濃
度と水素資化性メタン生成菌濃度と酢酸資化性メタン生
成菌濃度との比率、プロピオン酸濃度、高級脂肪酸濃度
のいずれか1つ以上をモニターし、これらのモニター値
が所定の範囲内若しくは所定の値以下に保持されるよう
に運転条件を制御するというフィードバック制御を行う
ことによってバイオガス生産を効率的に行うことを特徴
とする。
生成菌及び酢酸資化性メタン生成菌濃度を測定する方法
は、目的とする細菌を選択的に培養できる基質を用いた
培養法や、遺伝子に基づいた分子生物学的測定法を用い
ることができる。特に、メタン生成菌は増殖が遅く、培
養法では結果が得られるまで4週間程度必要とするた
め、分子生物学的手法を用いることが好ましい。遺伝子
に基づいた菌濃度測定法としては、定量的PCR法ある
いは、ハイブリダイゼーション法を用いることができ
る。
行なうにあたって反応槽内汚泥試料から遺伝子を抽出す
るが、遺伝子の抽出方法としては常法(Miller et al.,
Evaluation and Optimization of DNA Extraction and
Purification Procedures for Soil and Sediment Sam
ples, Applied and Environmental Microbiology, Vol.
65, No.11, p.4175,1999など)を用いることができる
が、それ以外の方法を用いても良い。目的とする菌のD
NAを増幅させるためには、その菌の特異的遺伝子配列
をもとに特異性の高いPCRプライマーを設計するが、
プライマー設計のためにはリボソーマルDNA(rDNA)
やジャイレースβサブユニットをコードするDNA(gy
rB DNA)を用いることができる。定量的PCR法として
は競合的PCR法(中山広樹、細胞工学別冊バイオ実験
イラストレイテッド3、秀潤社、1996)やリアルタイム
PCR法(Taq Man PCR、ライトサイクラー等、磯野一
宏、臨床病理、45、p.218、1997)等を用いることがで
きる。
素で標識したDNAプローブを用いるFISH法(fluoresc
ence in situ hybridization法、Amann et al., In sit
u identification of microorganisms by whole cell h
ybridization with rRNA-targeted nucleic acid probe
s, In Molecular Microbial Ecology Manual, Kluwerac
ademic publishers, 3.3.6, 1-15, 1995)等を用いるこ
とができる。特異性の高いDNAプローブ設計のために
はリボソーマルDNA(rDNA)やジャイレースβサブユ
ニットをコードするDNA(gyrB DNA)を用いることが
できる。
素資化性メタン生成菌濃度(b)と酢酸資化性メタン生成
菌濃度(c)の比率(a:b:c)は、原水の性状や反応温度に
よって異なるが、あらかじめ供給原水で馴致したメタン
醗酵汚泥を用いて様々な条件で回分実験を行なって、適
正範囲を決定することができる。同様に、適正なプロピ
オン酸濃度についても、あらかじめ供給原水で馴致した
メタン醗酵汚泥を用いて回分実験を行なって、適正範囲
を決定することができる。
資化性メタン生成菌及び酢酸資化性メタン生成菌の濃度
比率及び/またはプロピオン酸濃度のモニター値により
変化させる条件としては、原水投入量、汚泥返送、汚泥
添加、栄養源添加のいずれか一つ以上を採用することが
できる。返送汚泥中には水素生産性酢酸生成菌、水素資
化性メタン生成菌及び酢酸資化性メタン生成菌が存在し
ているため、返送開始もしくは返送率増加により、反応
槽内に蓄積した酢酸や水素の消費が促進され、メタン醗
酵反応が効率的に進行するようになる。例えば、水素資
化性メタン生成菌(b)が少ない状態は、そのために(b)の
基質である水素が過剰に存在しているが、水素生産性酢
酸生成菌(a)の基質(糖、タンパク質等)や酢酸資化性
メタン生成菌(c)の基質(酢酸)は残存していないか或
いは相対的に少ない状態である。そこへ、(a)、(b)、
(c)がいずれも含まれている汚泥を返送すると、基質が
多い(b)のみが増殖可能となり、結果的に(b)の割合が増
加することになる。また、酸生成菌(a)の割合が大きく
なった場合には、(1)原水投入量を縮減することで、酸
生成菌の基質を減少させて酸生成菌の増殖を抑える方
法;(2)酢酸以外の有機酸(特に嫌気性分解の難しいプ
ロピオン酸)の生成系の活性阻害剤(例えば、マロン
酸、オキザロ酸、ピロリ酸など)を酸発酵系に添加する
ことで、酢酸を優先的に生成させて安定運転を行う方
法;などが考えられる。さらに積極的に、反応槽内で比
率が適正値より減少した菌を含む汚泥または培養液を添
加しても良い。栄養源としてはクエン酸、乳酸、メタノ
ール、ペプトン類等の有機栄養分や、無機塩類を用いる
ことができるが、無機塩類の中では特にニッケル塩、コ
バルト塩、鉄塩等が望ましい。例えば、メタン生成菌に
対しては、鉄、ニッケル、コバルトの添加による増殖効
果が高く、また酸生成菌に対しては、Caイオン又はM
gイオン、NH4Clや(NH4)2HPO4等の塩を含有す
るか若しくはこれらの塩を代謝生産物として生産できる
物質(例えばタンパク質、糖類)を添加したり、雰囲気
を弱アルカリ条件にすることによって増殖効果を高める
ことができる。なお、高負荷条件下で安定なメタン発酵
処理を実施するためには、水素資化性及び酢酸資化性メ
タン生成菌の割合を高くすることが望ましい。その方法
としては、(1)前述した汚泥返送による方法;(2)水素と
酢酸の両方を資化できる増殖速度の速いメタン生成菌
(例えば、Methanosarcina属)を外部から導入する方
法;等が挙げられる。
とは、高級脂肪酸濃度のモニター値に応じて原水投入
量、汚泥返送量、汚泥添加量、栄養源添加量のいずれか
1つ以上を変化させることが挙げられる。具体的には、
高級脂肪酸濃度値が上昇して所定値を超えそうになった
ら、原水投入を停止させたり、汚泥返送率や余剰汚泥投
入比率を増加させたりすれば、高級脂肪酸の蓄積を抑制
するのに効果的である。また、カルシウム含有物質で発
酵槽内のpHを5.5〜6.5に調整することによっても高級脂
肪酸分解を促進させることでできる。この目的で用いら
れるカルシウム含有物質としては、消石灰粉末あるいは
その水溶液を用いることができる。
は、油脂成分を高級脂肪酸に分解する前処理工程を設け
ることが望ましい。前処理工程では、油脂を油脂分解酵
素又はその酵素を生成する微生物体と作用させて分解す
る。
トリアシルグリセロールリパーゼ、モノアシルグリセロ
ールリパーゼ、リポタンパク質リパーゼなどに代表され
るような、グリセロールエステルを加水分解して脂肪酸
を遊離する活性を持つ酵素が挙げられる。これらを単独
で、または幾つかの種類からなるグリセロールエステル
分解酵素を混合した形態で用いても良い。また、通常排
水あるいは廃棄物には、油脂だけでなく糖質、タンパク
質等も混在しているので、これらグリセロールエステル
分解酵素の他に、α−グルコシダーゼ、アミラーゼ、セ
ルラーゼ、β−グルコシダーゼ、アビセラーゼ、キシラ
ナーゼ、マンノシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等の糖
質分解酵素あるいは、エキソペプチダーゼ、エンドペプ
チダーゼ、ペプシン、トリプシン、キモトリプシンなど
に代表されるタンパク質分解酵素とを混合して用いても
よい。
ず、上述の酵素を生成する微生物菌体(本発明では、
「酵素生成微生物体」あるいは「酵素を生成する微生物
体」という)が含まれていてもよい。酵素生成微生物体
から酵素を精製する工程を簡略化し、酵素と微生物菌体
とが混合した産物を用いて本発明を実施すれば、より安
価に油脂を分解させることが可能となる。かかる酵素生
成微生物体としては、例えば好気性微生物として、Cand
ida属、Rhizopus属、Pseudomonas属等、嫌気性微生物と
して、Anaerovibrio属、Butyrivibrio属、Desulfovibri
o属、Clostridium属、Ruminococcus属、Enterobacteriu
m属等が挙げられる。さらに、本発明方法の後段の処理
工程である嫌気性処理は、後述の通り、45〜70℃で
行うことが好適であるため、酵素あるいは酵素生成微生
物体は、かかる45〜70℃の温度条件で活性を維持で
きる、あるいは至適反応温度がかかる温度領域にある酵
素若しくは酵素生成微生物体であることが望ましい。
素)が競合する完全酸化型硫酸還元菌の増殖を抑制し、
メタン発酵反応を促進するためには、原水投入量や汚泥
返送量を変化させて反応槽内の硫酸イオン濃度100mg/L
以下に維持することが有効である。また、原水貯留槽ま
たは酸発酵槽などの嫌気性処理工程に、不完全酸化型硫
酸還元菌の含まれる汚泥を導入あるいは添加し、油脂等
の有機物をメタン発酵槽へ投入する前にできるだけ有機
酸へ分解し、かつ硫酸イオン濃度を低減し、メタン醗酵
槽での完全酸化型硫酸還元菌の増殖を抑制してメタン生
成菌の増殖を促進させることができる。
なった場合には、反応槽内の硫酸イオン濃度が300mg/L
以下になるように原水投入量、汚泥返送量、汚泥添加
量、栄養源添加量のいずれか1つ以上を制御すれば、メ
タン菌よりも増殖速度が速い完全酸化型硫酸還元菌の増
殖を促進し、過剰の水素を速やかに消費することで酸醗
酵菌によるプロピオン酸生成を防止して酢酸生成を促進
し、結果的にメタン生成を促進することができる。
る。ただし、本発明はこれら実施例のみに限定されるも
のではない。
℃で安定性を持つ細菌由来のリパーゼ(10万U/g、ノボ
ノルデイスク バイオインダストリー社製)、もしくはC
andida cylindracea由来のリパーゼ(36万U/g、名糖産
業社製)用いた。1ユニット(U)は、一定標準条件下
(pH 7.0、30℃、4.8%m/vトリブチリン、0.094%m/vアラ
ビアゴム)でトリブチリンから酪酸を1分間に1ミリモル
遊離させる酵素の量である。
肪酸の定量分析は、以下の手順で行った。油脂含有排水
(原水)またはメタン発酵処理液(5ml)をn-ヘキサン/
イソプロパノール(5:3 (v:v))の有機溶媒(40m
l)で抽出した。そのn-ヘキサン抽出液(1.5ml)を用
い、ガスクロマトグラフ(島津製作所GC−17A型、検出
器FID、キャピラリーカラム DB-FFAP(長さ30m、内径0.
25mm、膜厚0.25μm)で高級脂肪酸を定量分析した。ま
た、上記のn-ヘキサン抽出液(20ml)を80℃ホットプレ
ートで乾燥し、得られた乾燥重量から試料のn-ヘキサン
抽出物濃度を算出した。さらに、乾燥したn-ヘキサン抽
出物をクロロホルムで5mg/ml濃度に再溶解し、クロマロ
ッドS-IIIで展開分離してTLC/FID分析計(Iatroscan TH
-10)で全脂質成分を定量分析した。
GLサイエンス320型ガスクロマトグラフ(TCD検出器、
カラムActive carbon 30/60)を用いた。揮発性脂肪酸
(Volatile Fatty Acid, VFA)は、高速液体クロマトグ
ラフ(エルマ光学ERC-8710、検出器RI、カラムShodex I
onpack KC-811、カラム温度60℃、移動相0.1%りん酸)
で分析した。米国のCODCrの分析は、米国のStandard Me
thods(18th Edition,1992年)による閉鎖型還流法で
行った。pH測定には,東亜電波工業(株)製のpH複合電
極GST-5311Cおよび自動適定装置AUT-301型を用いた。TS
(Total Solids)、VS(Volatile Solids)、SS(Suspended
Solids)およびVSS(Volatile Suspended Solids)の分析
については下水試験方法(1984年阪)に準じた。
汚泥を種汚泥として、豆腐製造排水に豆腐揚げ廃油を1m
l/L添加した油脂含有排水によるメタン発酵馴致をおこ
なった。馴致運転条件を表1に示す。
U/L)、55℃、1日前処理した排水を原水とした。この原
水15mlと前述の馴致各汚泥40mlをバイアル瓶(125ml)
に嫌気的に調整し、中温および高温メタン発酵を行った
(対照系)。また、脂肪酸分解菌に関する阻害実験で
は、硫酸還元菌の生育阻害剤としてモリブデン酸ナトリ
ウム(Na2MoO4)20mM、高級脂肪酸資化性の水素生産性
酢酸生成菌の代謝阻害剤として水素(H2,150kPa)と酢
酸(acetate,1000mg/L)を用いた。
プローブ(表2)によるFISH法を用いた。そして、核酸
染色法であるDAPIを用いて全菌数を計数し、FISH法での
各種菌数の全菌数に占める割合を算出した。
級脂肪酸除去特性の影響 硫酸還元反応の阻害剤としてNa2MoO4を用いた場合に
は、汚泥A>汚泥C>汚泥Bの順でメタン生成量が大幅に
減少した(図2)。水素生産性酢酸生成反応の阻害剤と
してH2+acetateを用いた場合、高温汚泥AとBでのメタ
ン生成が一時的に阻害されたのに対し、中温汚泥Cには
影響がなかった。
を行った。結果を図3に示す。汚泥A,CではNa2MoO4
を加えたバイアルにおいて高級脂肪酸の残留が見られ、
汚泥Bでは特に蓄積が見られた。この事から汚泥A、C
では高級脂肪酸の分解に硫酸還元菌が寄与しているこ
と、汚泥Bでは、主に水素生産性酢酸生成細菌が高級脂
肪酸の分解をしていることがわかった。MPN法による嫌
気性脂肪酸分解菌相の解析もこの結果を支持するもので
あった(表3、図4参照)。
は、高温汚泥AとBではH-MPBの割合がA-MPBより多く、中
温汚泥Cでは逆の結果であった。不完全酸化型硫酸還元
菌(I-SRB)の割合は、汚泥C>汚泥A>汚泥Bの順であっ
た(図5参照)。また汚泥Cでは不完全酸化型硫酸還元
菌(I-SRB)の割合が汚泥A、汚泥Bに比べて多かっ
た。発酵槽Cでは、脂質の除去率は高く、CODCr除去率も
84%と高かったが、メタンガス回収量は除去CODCrの内の
29%と非常に少なかった。完全酸化型硫酸還元菌が多い
とメタン生成菌が基質競合を起こし、メタンガス発生が
少なくなることがわかる。
む豆腐製造排水のメタン発酵では、酸生成菌、水素資化
性メタン生成菌、酢酸資化性メタン生成菌の全菌数に占
める割合は、各々30〜50%、20〜30%、10〜20%が望ま
しいこと、また、特に油脂負荷を高める場合には、酸生
成菌は30〜50%以下、メタン生成菌は30%〜50%以上と
すること、硫酸還元菌、特に完全酸化型硫酸還元菌の割
合は10〜15%以下に抑えることが望ましいことがわかっ
た。この比率が適正範囲であることに関しては、以下の
実施例1に示されるメタン発酵連続実験でのデータから
も認められる。
率化 油脂含有排水をリパーゼで50℃、1日間前処理し、130
〜180日間高温メタン発酵の連続実験を行った。実験で
は、一定の率で汚泥の返送を行なった系、メタン醗酵槽
内汚泥の水素生産性酢酸生成菌濃度(a)と水素資化性メ
タン生成菌濃度(b)と酢酸資化性メタン生成菌濃度(c)を
3日ごとに測定し、これらの比率(a:b:c)が30〜50:20
〜30:10〜20になるように汚泥返送率を調節した系およ
び汚泥返送を全く行なわない系の3系列で処理性能を比
較した。汚泥の返送時には遠心濃縮法(3,000r/min、5
min)で濃縮をした汚泥を用いた。汚泥返送を一定間隔
で行った系では、180日間の高温メタン発酵運転中に、
週に1回定期的に汚泥返送を行い、汚泥返送操作を合計
26回行った。この運転中には、汚泥の微生物比率のモニ
ターは行わなかった。汚泥返送率を調節した系では、最
初の1ヶ月間は汚泥返送せずに運転を行ったところ、運
転36日目にはメタン発酵槽汚泥の微生物比率(a:b:c)
が70:5:5となり、有機酸濃度も3,000 mg/Lにまで蓄積
したので、汚泥返送を3日間隔で開始した。この運転条
件で2週間運転した結果、汚泥の微生物比率(a:b:c)
は60:20:10となり、有機酸も2,000 mg/Lにまで減少し
たので、汚泥返送頻度を2週間間隔に減らした。この条
件で2ヶ月運転を続けたところ(汚泥返送操作4回)、
汚泥の微生物比率(a:b:c)は50:30:20となり、有機
酸濃度が500 mg/Lとなったので、汚泥返送操作を止め
た。その後の連続運転では、汚泥の微生物比率のモニタ
ーと汚泥返送頻度の調整を同様に行って、汚泥の微生物
比率を50:30:20に維持して運転を行った。180日間の
運転中の汚泥返送操作は合計12回であった。
果を表4に示す。
方法(汚泥返送を一定)では、汚泥返送操作によってS
S濃度(即ち微生物濃度)が26,000 mg SS/Lと、本発明
方法(汚泥返送を可変)での13,700 mg SS/Lよりも高濃
度の汚泥(微生物)条件となった。このため、微生物あ
たりの有機物負荷は低かった。一方、本発明では、汚泥
濃度を変化させることによる効率的な運転操作(微生物
濃度比のモニター)によって、微生物あたりの有機物負
荷を高くとっても、従来方法の場合と同等若しくはそれ
以上の有機物分解率(処理性能)とバイオガス回収を得
るに至った。そして、本発明によって高負荷型のメタン
発酵槽の確立、汚泥返送操作の効率化、汚泥発泡トラブ
ルの解消、槽内撹拌動力の節減などの効果を得た。
高効率化 油脂含有排水をリパーゼで50℃、1日間前処理し、180
日間高温メタン発酵の連続実験を行った。Run1では実験
開始90日付近からプロピオン酸が約2000mg/L蓄積し、そ
れ以降のガス生成が著しく阻害された。一方、Run2で
は、Run1と同様に実験開始90日付近からプロピオン酸蓄
積がみとめられたため、原水に硫酸イオンの添加を開始
した。添加開始当初は硫酸イオン濃度として300mg/L添
加したが、メタン醗酵槽内汚泥のプロピオン酸濃度測定
しながら添加量を徐々に削減し、110日以降は添加を停
止した。
プロピオン酸濃度が300mg/L以下になるとガス生成が復
活した。
る排水を高効率で安定に浄化することが可能となった。
さらに、嫌気性生物により有機物を分解するので、バイ
オガス(特にメタン)として回収することができ、これ
よりエネルギー回収効率を著しく向上させることが可能
となった。
解される経路を示す模式図である。
を示すグラフである。
度を示すグラフである。
寄与度を示すグラフである。
示すグラフである。
験装置の概要図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程にお
いて、反応槽内汚泥中の水素生産性酢酸生成菌濃度(a)
と水素資化性メタン生成菌濃度(b)と酢酸資化性メタン
生成菌濃度(c)の比率(a:b:c)をモニターし、当該比率
が所定の範囲内に保持されるように運転条件を制御する
ことを特徴とする嫌気性処理方法。 - 【請求項2】 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程にお
いて、反応槽内汚泥中のプロピオン酸濃度をモニター
し、その濃度を所定の値以下に保持されるように運転条
件を制御することを特徴とする嫌気性処理方法。 - 【請求項3】 前記嫌気性処理工程において、モニター
値に応じて、原水投入量、汚泥返送量、汚泥添加量、栄
養源添加量のいずれか1つ以上を変化させることで運転
条件を制御する請求項1または2記載の方法。 - 【請求項4】 前記嫌気性処理工程において、反応槽内
汚泥中の高級脂肪酸濃度を同時にモニターして、そのモ
ニター値によって運転条件を制御することを特徴とする
請求項1または2記載の方法。 - 【請求項5】 前記嫌気性処理工程において、水素生産
性酢酸生成菌、水素資化性メタン生成菌、酢酸資化性メ
タン生成菌の濃度測定を、定量的PCR法あるいは、ハ
イブリダイゼーション法によって行うことを特徴とする
請求項1記載の方法。 - 【請求項6】 油脂含有汚濁物質の嫌気性処理工程にお
いて、反応槽内汚泥中の水素生産性酢酸生成菌濃度(a)
と水素資化性メタン生成菌濃度(b)と酢酸資化性メタン
生成菌濃度(c)の比率(a:b:c)並びにプロピオン酸濃度
をモニターし、当該比率が所定の範囲内に保持され且つ
プロピオン酸濃度が所定の値以下に保持されるように運
転条件を制御することを特徴とする嫌気性処理方法。
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