JP5670081B2 - スラリー状、スラッジ状、ペースト状物質のモニタリング方法及び装置 - Google Patents

スラリー状、スラッジ状、ペースト状物質のモニタリング方法及び装置 Download PDF

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Description

本発明は、モニタリング方法及び装置に関し、詳しくは、スラリー状、スラッジ状、ペースト状物質を直接モニタリングする方法及び装置に関する。
メタン発酵においては、酸敗防止の観点から、メタン発酵残渣(消化液)中のプロピオン酸や酢酸等の揮発性有機酸濃度を監視することは大変重要なことである。
特許文献1では、0028に「通常のモニター方法としては液体サンプルをガスクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフなどの測定機器で自動分析する方法がよい。」との記載があるが、実施例では液体クロマトグラフを用いて行っている。
ガスクロマトグラフは、気体を分析するものである。ガスクロマトグラフで、液体状の試料を分析する場合、気化室において試料を気化させ、キャリアガスでカラムに運んで分析している。通常、気化室で気化させる液体試料は、全量が気化するように固形物を含まない状態に精製されていることが必要である。
一方、メタン発酵残渣は、固形分を含んだスラリー状であるので、これをガスクロマトグラフで分析する場合は、従来、あらかじめヘッドスペース法あるいはパージトラップ法により、揮発成分のみを捕集しておく必要があった。しかも、ヘッドスペース法あるいはパージトラップ法は、温度の制御など、必要な精度の維持が難しく、実プラントなどで用いるには実用的でなかった。
そこで本発明者は鋭意研究を重ね、一定量のスラリー試料の固形分がカラムに混入することが無いように、スラリーそのものを熱し、蒸発した全量をガスクロマトグラフで測定することでこの問題を解決できることを見出した。
さらに、この方法は、水分量を定量することが可能であるので、水分量を測定したい脱水汚泥や焼酎粕濃縮液など他のスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質においても、オンラインで計測が可能なモニタリング方法として有効であることが分かった。
従来、脱水汚泥や焼酎粕濃縮液などの水分測定には、ケット水分計等を用いる方法、赤外線吸収式の水分計等を用いる方法、中性子吸収式の水分計等を用いる方法などがあったが、いずれもオンラインで計測するには欠点があった。
すなわち、ケット水分計は、正確ではあるものの、一回の採取サンプル量が数g必要で時間がかかり、10分〜10数分で誤差1%以内の精度が高い結果を得るのは困難である上、自動的に一定量採取し、乾燥する方法は確立されていなかった。
また、スラリー状物質は表面が不均一で、含水率が内部と同一でないために赤外線吸収式の水分計では正確な値が得られず、中性子吸収式の水分計は、正確ではあるが放射線を用いるので、そもそも一般分析計としては普及が難しい。
特開2005−246119号公報
そこで、本発明の課題は、従来測定が困難であったスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質のモニタリングをオンラインで、正確に行うことができるモニタリング方法及び装置を提供することにある。
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
(請求項
気化室と、カラムオーブンと、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフ装置からなるスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質のモニタリング装置であって、
気化室は、ヒータ、キャリアガス導入流路、カラムに接続されているキャリアガス送出流路、試料導入流路を備え、
該試料導入流路から導入した一定量のスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質を加熱し、揮発性成分を気化させ、キャリアガスと共にカラムオーブンへ送ることを特徴とするスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質のモニタリング装置。
本発明によれば、従来測定が困難であったスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質のモニタリングをオンラインで、正確に行うことができるモニタリング方法及び装置を提供することができる。
本発明のモニタリング装置の構成を示すブロックフロー図 気化室の一態様について主要構造を模式的に表した図 気化室の別の態様について主要構造を模式的に表した図 実施例1において得られたクロマトグラム 実施例2において得られたクロマトグラム 酢酸及びプロピオン酸濃度とピーク面積の相関を示すグラフ 下水汚泥の含水率とピーク面積の相関を示すグラフ 焼酎粕濃縮液の含水率とピーク面積の相関を示すグラフ
本発明において、スラリー状物質とは、不均一な粒径の固体粒子が分散している濃厚な懸濁液(泥状の流動体)、スラッジ状物質とは、泥状物あるいは汚泥であり、ペースト状物質とは、流動性と高い粘性のある物質を指す。スラリー状、スラッジ状、ペースト状物質の具体例としては、メタン発酵消化液、焼酎粕濃縮液などの発酵蒸留残渣、脱水汚泥などが挙げられる。
本発明において、揮発性成分とは、沸点以上の加熱によって気化する成分全般を指し、被測定成分として挙げられる揮発性成分としては、水、酢酸、プロピオン酸などが挙げられる。
以下、本発明のモニタリング方法および、モニタリング装置について図に沿って説明する。
図1は、本発明のモニタリング装置の構成を示すブロックフロー図である。
図1において1は、気化室であり、2はカラムオーブン、3は熱伝導度検出器(thermal conductivity detector;TCD)、4はデータ処理部、5は中央制御部、6は分析制御部、7は表示部、8は入力部である。
図2は、気化室1の一態様について主要構造を模式的に表した図である。
図2において、11は気化室本体であり、ヒータ12、キャリアガスを導入するキャリアガス導入流路13、カラムに接続されているキャリアガス送出流路14、一定量のスラリー状、スラッジ状、ペースト状物質を試料として導入する試料導入流路15、試料排出口16を備える。
気化室本体11の内部は、微多孔膜17により、モニタリング対象のスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質(以下、試料という)が導入される気化室A(11a)と、キャリアガスが導入される気化室B(11b)とに区分されている。
微多孔膜17は、孔径が数μmのガス透過性の膜であり、試料中の固形分などが、分析機器に混入するのを防ぐ働きがある。
微多孔膜17は必ずとも必要ではないので、微多孔膜を設けない気化室も本発明の好ましい別の態様である。
スラリー試料は、シリンダポンプ19により一定量計量されて、試料導入流路15より供給され、気化室A(11a)内でヒータ12により、被測定成分の沸点以上の温度に熱せられる。常圧であれば、目的とする被測定成分が水の場合110℃、酢酸やプロピオン酸の場合は100数十℃が想定される。
気化室A(11a)内では、試料中の揮発性成分は全量気化するので、気化室A(11a)内には、固形分が残される。この固形分は、蒸発残留物(TS)に相当する。
このように本発明において、試料は、固形分を除いて全量が気体となって分析されるので、内容する成分が正確に測定することができる。
気化して気体となった被測定成分は、微多孔膜17を通過して、気化室B(11b)へ移動し、キャリアガスによってカラムに運ばれる。
キャリアガスとしては、通常ガスクロマトグラフ装置に用いられる不活性ガスを使用することができ、具体的には、ヘリウム、窒素、アルゴンなどが挙げられる。本発明においては、熱伝導度が高く、検出感度が高いため、ヘリウムガスが好ましく用いられる。
気化室A(11a)内には、試料中の固形分が残るので、これを除くために掻き出し翼等を設けて試料排出口16より排出することが好ましく、必要に応じて試料導入流路15より洗浄液を導入し、試料排出口16より排出することも好ましい。
また、図3のように気化室本体11の底部に交換可能な皿状の部品18を設け、試料を皿状の部品18の上で気化させて、残留した固形分がたまったところで新たなものに交換しても良い。
カラムオーブン2は、カラムを備える。カラムは、ガラス管内に充填材を詰めた充填カラム(パックドカラム)が好ましい。充填材は分析対象により適宜選択することができるが、水や酢酸、プロピオン酸などの低級脂肪酸を測定する場合には、「ポラパックQ」が好ましく、メタンや二酸化炭素などを測定する場合には活性炭が好ましい充填材として使用できる。
試料は、カラムオーブン2において、カラムによって各成分に分離され、分離された各成分はTCD検出器3によって検出される。
TCD検出器3による検出信号はデータ処理部4に送られ、データ処理部4で解析され、検出された各種成分の定量分析、及び、定性分析が実行される。
中央制御部5はデータ処理部4を制御するとともに、データ処理部4より処理結果を受け取って表示部7に表示する。中央制御部5には分析条件を始めとする各種の入力設定を行うための入力部8と分析条件や分析結果などを表示するための表示部7とが接続されている。中央制御部5及びデータ処理部4の実体は汎用のパーソナルコンピュータであって、制御・処理にあたってはこのパーソナルコンピュータに所定の制御・処理プログラムをインストールし行うことが好ましい。
なお、気化室1、カラムオーブン2は、図示しないが、通常ガスクロマトグラフ装置が備えるインジェクタやバルブなどを備えており、その動作は、中央制御部5の統括的な指示の下に分析制御部6により制御されている。
本発明において、スラリー状、スラッジ状又はペースト状物質のモニタリングを行ううえでは、pH調整の必要がなく、この点が特徴のひとつである。
なお、特定のpH値におけるスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質のモニタリングをおこなうという特別の要請の場合には、気化室A(11a)内に、スラリー試料に接するように作用極と対極を配置し、作用極と対極を電気的に接続して電気化学的にpHを調整することもできる。
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
(実施例1)
酢酸及びプロピオン酸が含まれていないメタン発酵消化液に、それぞれ1000mg/Lの酢酸及びプロピオン酸を添加して、図2の気化室を備えた図1のガスクロマトグラフ装置で分析を行った。
なお、カラムはポラパックQ(1m)、カラム温度は175℃、キャリアガスはヘリウムである。
得られたクロマトグラムを図4に示す。各成分が分離され、明確なピークがみられた。
(実施例2)
メタン発酵消化液について、カラム充填材を活性炭に代えて実施例1と同様に分析を行った。
得られたクロマトグラムを図5に示す。
(実施例3)
実施例1において、添加する酢酸及びプロピオン酸をそれぞれ2000mg/Lとして同様に分析を行った。
実施例1および3の結果を基に、酢酸及びプロピオン酸濃度とピーク面積をグラフにしたところ、直線状の線形が得られ、定量分析として有効であることが示された(図6)。
(実施例4)
遠心脱水機で脱水した下水汚泥及び電気浸透脱水機で脱水した下水汚泥について、実施例1と同様の手法で水分量を測定したところ、遠心脱水機で脱水した下水汚泥は含水率が85%であり、電気浸透脱水機で脱水した下水汚泥は含水率が70%であった。(図7)。
(実施例5)
米焼酎粕を三重効用缶で濃縮途中の液をサンプリングし、実施例1と同様の手法で水分量を測定したところ、含水率60%、70%及び80%であった(図8)。
1:気化室
11:気化室本体
11a:気化室A
11b:気化室B
12:ヒータ
13:キャリアガス導入流路
14:キャリアガス送出流路
15:試料導入流路
16:試料排出口
17:微多孔膜
18:皿状の部品
19:シリンダポンプ 2:カラムオーブン
3:熱伝導度検出器(TCD)
4:データ処理部
5:中央制御部
6:分析制御部
7:表示部
8:入力部

Claims (1)

  1. 気化室と、カラムオーブンと、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフ装置からなるスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質のモニタリング装置であって、
    気化室は、ヒータ、キャリアガス導入流路、カラムに接続されているキャリアガス送出流路、試料導入流路を備え、
    該試料導入流路から導入した一定量のスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質を加熱し、揮発性成分を気化させ、キャリアガスと共にカラムオーブンへ送ることを特徴とするスラリー状、スラッジ状又はペースト状物質のモニタリング装置。
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