JP3912202B2 - ガスクロマトグラフ分析システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスクロマトグラフを用いた分析システムに係わり、特に、水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ分析システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガスクロマトグラフは、一般に常温で気体のものから、液体または固体状のものでも500℃ぐらいまでの沸点を持ち、熱的に安定な化合物を分析するのに用いられる。
ガスクロマトグラフは、キャリアガス(移動相)と呼ばれる定流量で流れている不活性ガス気流中に、気化させた試料を導入すると、試料ガスが分離管(カラム)と呼ばれる部分に運ばれ、分離管内につめられた充填剤(固定相)の中を試料成分が通過する間に、移動相と固定相の間で吸着あるいは吸収分配による繰り返し濃度平衡が行われ、各成分の極めて僅かな移動速度の違いが次第に拡大されて、分離管の出口から各成分が分離して出てくる。分離管の出口に検出器を置くことで、各成分が検出器内を通過するたびにピーク状の電気信号が検出され、記録計にクロマトグラムと呼ばれる図形が記録される。得られたクロマトグラム上で一成分は一つのピークとして記録され、試料導入時からピーク頂点までの時間(保持時間)によって、その成分が何であるか(定性)を知ることができ、ベースラインより上の面積の大きさから、その成分の量がどれくらいか(定量)を知ることができる。
【0003】
図7に、水素炎イオン化検出器(FID)10aを備えたガスクロマトグラフ分析システムの一例を示す。このガスクロマトグラフ分析システムは、ガスクロマトグラフの本体と、記録計16を備えたデータ処理部15と、キャリアガスを圧縮封入し減圧弁18を備えたキャリアガスボンベ17と、助燃用の補助ガスを圧縮封入し減圧弁12を備えた補助ガスボンベ11と、燃焼ガスを圧縮封入し減圧弁2を備えた可燃性ガスボンベ1とから構成されている。
ガスクロマトグラフの本体は、補助ガス用の流量制御部13と、キャリアガス用の流量制御部19と、燃焼ガス用の流量制御部3と、試料導入口5を備えた試料気化室4と、充填剤入りカラムからなる分離管7を内部に備え温度調節部8によって温度制御されるカラム槽6と、分離管7から流出する試料分離ガスを検出する水素炎イオン化検出器(FID)10aを備え排出口14を有する検出器槽9aとから構成されている。
そして、キャリアガス(窒素)がキャリアガスボンベ17から、減圧弁18によって600〜1000kPaに減圧して取り出され、その配管がガスクロマトグラフの本体に接続されて、さらに必要な所定流量に流量制御部19で精密に制御される。このキャリアガスは、試料気化室4、分離管7、水素炎イオン化検出器(FID)10aを経由して検出器槽9aの排出口14から系外に排出される。試料気化室4、カラム槽6、検出器槽9aは、それぞれ独立の恒温槽に収められて取り扱う試料に応じた温度に、温度調節部8により保たれる。
試料気化室4には分離管7に接続され、常にキャリアガスが通過しているガラス製又は金属製の一定量のパイプが設けられ、これに試料ガスを試料導入口5から注入し、試料気化室4のキャリアガス流路中に流入させる。このとき試料圧および一定量のパイプ温度が正確に制御される。
試料気化室4からキャリアガスで運ばれる試料ガスは、所定温度に制御されたカラム槽6の内部にセットされた分離管7に導入される。分離管7は、耐熱強化ガラスやステンレス鋼などの普通内径1〜4mm、長さ1〜5m程度のU字管連結やスパイラル状に巻いた型式の充填剤入りカラム、または、毛細管の内壁に吸収剤を塗布して使用する毛細管カラムが用いられる。
分離管7を流出したキャリアガスで運ばれる試料分離ガスは、検出器槽9aの中に設けられた水素炎イオン化検出器(FID)に導入される。同時に試料分離ガスを燃焼させる水素炎を形成するための燃料ガス(水素)が可燃性ガスボンベ1から減圧弁2、流量制御部3を経由して、さらに、燃焼を補助する補助ガス(空気)が補助ガスボンベ11から減圧弁12、流量制御部13を経由して、水素炎イオン化検出器(FID)10aに導入される。
【0004】
図8に、水素炎イオン化検出器(FID)10aの構造の一例を示す。水素炎イオン化検出器(FID)10aは、分離管7から導入されるキャリアガス(窒素ガス)と水素ガス導入口21から導入される水素がノズル22の下部で混合され、ノズル22の先端に水素炎が形成される。有機化合物などの試料が、図7に示す試料気化室4に試料導入口5から注入され、キャリアガスにより分離管7を経由し、キャリアガスと分離された試料の混入ガスが水素炎内に導入されると、水素炎の熱エネルギーにより正負のイオンが生じる。検出器槽9aの側面に設けられたセラミック端子26から導線が導入され、水素炎を挟んで300V程度の直流電圧をかけた電極(−)25、電極(+)24が設置されており、両電極間に微小のイオン電流が有機化合物の存在する間だけ流れる。この電流をデータ処理部15に導き、高インピーダンス増幅器で適当な電圧にして図7に示す記録計16に記録する。そして、水素炎の助燃用と、燃焼生成物の排除のため、ノズル外周方向に設けられた補助ガス導入口23から空気が加えられている。
この検出器槽9aは始動時から安定するまで時間が短くてすみ、最も扱いやすい検出器である。しかし、無機化合物等の化合物に対して感度がなく、検出できないという欠点がある。一方、有機化合物に対しては極めて高感度であり、定量範囲も広いため、最も汎用性の高い検出器として多く用いられている。
【0005】
データ処理部15は、一つのマイクロコンピュータでガスクロマトグラフの本体とデータ処理部15の全制御を行い、記録計16(プリンタプロッタなど)を備えている。分析に必要なパラメータが自動設定できるようにデータが組み込まれ、クロマトグラムからの信号を処理してピーク検出を行い、精度の良い面積と保持時間を求め、定量計算を行い、検量線作成はもちろん、最終的に得られる試料成分の含有量データのディジタル値と同様に、分離の様子、ベースラインの様子を一見できるクロマトグラムなどを分析レポートとして作成する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ分析システムは以上のように構成されており、有機化合物などに対して広い範囲にわたって高感度を有し汎用性の高いシステムであるが、無機化合物等の化合物は検出できないという問題がある。そのため無機化合物を分析する場合は、熱伝導検出器(TCD)を使わなければならなかった。
熱伝導検出器(TCD)は、あらかじめ直流電流を流して加熱されたコイル状の細いタングステン‐レニウム製のフィラメント表面に、キャリアガス(ヘリウム)を流し、フィラメント温度がある温度で平衡した状態で、試料気化室から試料を導入し分離管を経由して試料分離ガスを導入すると、試料成分の分離された各ガスの熱伝導度がキャリアガスと異なり、フィラメントの温度がその各成分濃度に比例して変化し、フィラメントの電気抵抗が変化するので、その値をブリッジ回路で検出する。この検出器は、構造が簡単であり有機物、無機物を問わず検出することができ、定量範囲も広いので使用しやすい。しかし、始動時に温度が安定するまでに時間がかかるという問題があり、有機物については上記のFIDが主に用いられ、TCDは主に無機分析に使用されている。
従来から無機化合物の分析に使用されている熱伝導検出器(TCD)では、始動時に時間がかかるという問題があり、水素炎イオン化検出器(FID)で無機化合物の分析ができれば、始動時から安定するまで時間が短くてすみ、最も扱いやすい検出器として、無機および有機化合物の両検出、定量が簡便に安価にできることになる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフを用いて無機化合物の分析ができるようにしたガスクロマトグラフ分析システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のガスクロマトグラフ分析システムは、試料を気化しキャリアガスに混入して分離管に通し、分離管から流出する分離成分を水素炎中に導入し、イオン化されたイオンを捕獲し試料成分を検出する水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ分析システムにおいて、前記キャリアガスに可燃性ガスもしくは可燃性ガスを混入させたキャリアガスを用い、前記分離管を通して水素炎イオン化検出器に入れ、前記水素炎を前記キャリアガスの燃焼によって形成し、このとき燃焼ガス濃度の変化によって酸素以外の無機成分を検出するものである。
【0009】
本発明のガスクロマトグラフ分析システムは上記のように構成されており、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフのキャリアガスに、可燃性ガス(水素)もしくは可燃性ガス(水素)を混入させたキャリアガスを用いる。試料を気化し、キャリアガスとともに分離管(カラム)を通し、試料を分離されたガス成分にして、水素炎イオン化検出器に入れ、キャリアガス(水素)の燃焼によって形成された水素炎に入れる。分離成分が検出器に入るときには、分離成分の濃度分だけキャリアガス(水素)分が減り、燃焼ガス濃度が減少することになる。そのため、FIDの燃焼状態が変化し、正もしくは負のベースライン変動を起こす。このベースライン変動をピークとみなし、面積を測定する。この面積値は注入成分濃度と比例しているため、既知濃度の成分を注入し、感度補正係数を得れば、未知試料の定量が可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のガスクロマトグラフ分析システムの一実施例を、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明のガスクロマトグラフ分析システムの構成を示す図である。
本ガスクロマトグラフ分析システムは、水素炎イオン化検出器(FID)10を用いたガスクロマトグラフの本体と、記録計16を備えたデータ処理部15と、キャリアガスとして水素ガスを圧縮封入し減圧弁2を備えた可燃性ガスボンベ1と、助燃用の補助ガスとして空気を圧縮封入し減圧弁12を備えた補助ガスボンベ11とから構成されている。
ガスクロマトグラフの本体は、補助ガス用の流量制御部13と、キャリアガス用の流量制御部3と、試料導入口5を備えた試料気化室4と、充填剤入りカラムからなる分離管7を内部に備え温度調節部8によって温度制御されるカラム槽6と、分離管7から流出する試料分離ガスを検出する水素炎イオン化検出器(FID)10を備え排出口14を有する検出器槽9とから構成されている。
【0011】
本ガスクロマトグラフ分析システムと従来の分析システムと異なるところは、従来の分析システムでは、図7に示すように、キャリアガス(流動相)に通常窒素ガスが用いられ、試料が混入され分離管7を経由して水素炎イオン化検出器10aに導入され、図8に示すように、別に準備された可燃性ガスボンベ1の燃焼用の水素ガスがノズル22下端で混合され、水素炎で燃焼されるが、これに対し、本分析システムでは、キャリアガス(流動相)に水素ガスが用いられ、試料が混入され分離管7を経由して、水素炎イオン化検出器10に導入され、キャリアガス(流動相)が燃焼ガスを兼ねて形成される水素炎に、分離管7で分離された試料成分がキャリアガス(水素)とともに運ばれる。そのため、水素炎では分離成分の濃度分だけキャリアガス(水素)分が減り、燃焼ガス濃度が減少して燃焼状態が変動する。その変動するイオン電流を検出してクロマトグラムを得る。
【0012】
本ガスクロマトグラフ分析システムの各構成について流路に沿って説明する。可燃性ガスボンベ1は、キャリアガスおよび燃焼ガス用としての水素ガスが、圧縮封入され、減圧弁2によって600〜1000kPaに減圧されて、ガスクロマトグラフの流量制御部3に供給する。
流量制御部3は、分離管7の充填剤入りのカラムの種類と分析する試料のキャリアガス用、および水素炎の燃焼ガス用として適正なキャリアガス流量を精密に設定する。
試料気化室4は、分離管7に接続され、常にキャリアガスが内部を通過しているガラス製又は金属製の一定量のパイプが設けられ、これに試料ガスを試料導入口5から注入し、試料気化室4のキャリアガス流路中に流入させる。このとき試料圧および一定量のパイプ温度を正確に制御する。
カラム槽6は、温度調節部8によって温度管理された恒温槽からなり、内部に充填剤入りカラムの分離管7がセットされている。分離管7は、耐熱強化ガラスやステンレス鋼などの普通内径1〜4mm、長さ1〜5m程度のU字管連結やスパイラル状に巻いた型式の充填剤入りカラム、または、毛細管の内壁に吸収剤を塗布して使用する毛細管カラムが用いられる。また、充填剤または吸収剤は分析する試料によって選択される。
補助ガスボンベ11は、水素炎イオン化検出器(FID)10の水素炎の助燃用と、燃焼生成物の排除用のために、空気が圧縮封入され、減圧弁12によって減圧され、ガスクロマトグラフの流量制御部13に供給される。
流量制御部13は、水素炎の助燃用と、燃焼生成物の排除用のための空気が、ノズル外周方向に設けられた補助ガス導入口から加えられ、助燃と排出に適した流量に設定される。
検出器槽9は、図2に示すような断面構造をしており、水素炎イオン化検出器(FID)10を内部に備え、ノズル22下部に分離管7が、検出器槽9の下部に補助ガス導入口23が、上部に燃焼生成物の排出用の排出口14が設けられている。
水素炎イオン化検出器(FID)10は、分離管7から導入されるキャリアガスの水素が、ノズル22に供給され、ノズル22の先端に水素炎が形成される。試料が、図1に示す試料導入口5から試料気化室4に注入され、キャリアガスに混入されて運ばれ、分離管7を経由し、キャリアガス(可燃性ガス:水素)と分離された試料との混合ガスが水素炎内に導入されると、水素炎の熱エネルギーにより正負のイオンが生じる。そして、分離成分の濃度分だけキャリアガス(水素)分が減り、燃焼ガス濃度が減少することになる。そのため、FIDの燃焼状態が変化し、正もしくは負のベースライン変動を起こす。検出器槽9の側面に設けられたセラミック端子26から導線が導入され、水素炎を挟んで300V程度の直流電圧をかけた電極(−)25、電極(+)24が設置されており、両電極間に微小のイオン電流が分離された試料の成分が存在する間だけ変動して流れる。この電流をデータ処理部15に導き、高インピーダンス増幅器で適当な電圧にして図1に示す記録計16に記録する。そして、流量制御部13から供給された空気が、検出器槽9の下部に設けられた補助ガス導入口23から内部に導入され、水素炎の助燃と同時に、上部に設けられた排出口から外部に燃焼生成物の排出が行われる。
データ処理部15は、一つのマイクロコンピュータでガスクロマトグラフの本体とデータ処理部15の全制御を行い、記録計16(プリンタプロッタなど)を備え、分析に必要なパラメータが自動設定できるようにデータが組み込まれている。そして、分離成分の濃度分だけキャリアガス(水素)分が減って、燃焼ガス濃度が減少することによる燃焼状態の変化を、正もしくは負のベースライン変動から捕らえ、このベースライン変動をピークとみなす。そして、精度の良い面積と保持時間を求める。この面積値は注入成分濃度と比例しているため、既知濃度の成分を注入し、検量線を作成し、感度補正係数を得れば、分析する試料の定量計算を行うことができる。最終的に得られる試料成分の含有量データのディジタル値と同様に、分離の様子、ベースラインの様子を一見できるクロマトグラムなどを分析レポートとして作成する。
【0013】
次に、本ガスクロマトグラフ分析システムを用いて、試料としてヘリウムを分析した。図3、図4を参照しながらそのデータについて説明する。図3は、試料注入量を変えて検出した各クロマトグラム、図4は、その結果を集計してヘリウムの検量線を作成したデータを示す。
図3において、四角線で囲まれた図形はクロマトグラムを示し、縦軸が経過時間を示し、‐0.0および‐1.0は分単位を示す。また、/0.xxxは保持時間を示す。そして、定量計算結果については、CHは装置のチャンネル、PKNOはピーク番号、TIMEは分単位の保持時間、AREAは面積値(相対値)、HEIGHTはピークの高さ(相対値)を表す。
分析の方法は、次のような手順で行った。図1において、可燃性ガスボンベ1からキャリアガス(水素ガス)を減圧弁2で減圧し、流量制御部3で20ml/minに設定して、試料気化室4に流入する。キャリアガス(水素)は分離管7を経由して水素炎イオン化検出器(FID)10に導入され、水素炎が形成される。同時に、補助ガスボンベ11から補助ガス(空気)を減圧弁12で減圧し、流量制御部13で300ml/minに設定して、検出器槽9の補助ガス導入口23に流入する。
試料気化室4を温度調節部8によって100℃に保温し、試料導入口5から試料を所定の量だけ注入する。試料としてヘリウムを用い、サンプル量として2μl、10μl、50μl、100μl、200μl、500μl、1000μlを注入した。ヘリウム試料はキャリアガス(水素)に混入され分離管7に入る。分離管7はカラム槽6内に設置され、温度調節部8によってカラム(分離管7)温度が40℃に保温される。カラム(分離管7)はモレキュラシーブ5A(3mmID×2mL、SUS)を用いた。キャリアガス(水素)によって運ばれ分離管7で分離された試料ガスが、水素炎イオン化検出器(FID)10に導入される。図2に示す水素炎の近傍に配置された電極(−)25からイオン電流を検出し、分離管7(カラム)と電極(+)24を同電位とした。
キャリアガス(水素)によって運ばれ分離管7で分離された試料ガスが、水素炎イオン化検出器(FID)10に導入されると、定常状態で燃焼していた水素炎は、分離された試料ガス分が流入することで、その分燃焼ガスのキャリアガス(水素)分が減少するので、イオン化電流が減少する。この燃焼変化の変動を検出した。
【0014】
ヘリウム2μl注入時は、保持時間が0.264分、面積が100、ピーク高さが45となった。次に10μl注入時は、0.269分、面積515、ピーク高さ230となった。以下同様に50μl、100μl、200μl、500μl、1000μlについて測定し、図3に示すデータが得られた。
得られたヘリウムの注入量とピーク面積値を整理したものが図4である。(a)は注入量(μl)とヘリウムの検出面積を表にしたもの、(b)はそのデータをプロットしたものである。横軸に注入体積(μl)、縦軸にピーク面積値(μV*s:sは換算係数)を示す。プロットすると一直線に近似することができ、その近似式は、y=33.359x+870.97となり、そのばらつきの度合R2は、0.9992となった。
【0015】
次に、本ガスクロマトグラフ分析システムを用いて、試料として酸素と窒素の混合ガスを同時分析した。図5、図6を参照しながら、そのデータについて説明する。図5は、試料注入量を変えて検出した各クロマトグラフを示し、図6は、その結果を集計して酸素および窒素の検量線を作成したデータを示す。
分析の方法は、次のような手順で行った。図1において、可燃性ガスボンベ1からキャリアガス(水素ガス)を減圧弁2で減圧し、流量制御部3で15ml/minに設定して、試料気化室4に流入する。キャリアガス(水素)は分離管7を経由して水素炎イオン化検出器(FID)10に導入され、水素炎が形成される。同時に、補助ガスボンベ11から補助ガス(空気)を減圧弁12で減圧し、流量制御部13で300ml/minに設定して、検出器槽9の補助ガス導入口23に流入する。
試料気化室4を温度調節部8によって100℃に保温し、試料導入口5から試料を所定の量だけ注入する。試料として酸素(20%)と窒素(80%)の混合ガスを用い、サンプル量として20μl、50μl、100μl、200μl、500μl、1000μlを注入した。試料はキャリアガス(水素)に混入され分離管7に入る。分離管7はカラム槽6内に設置され、温度調節部8によってカラム(分離管7)温度が40℃に保温される。カラム(分離管7)はモレキュラシーブ5A(3mmID×2.5mL、SUS)を用いた。キャリアガス(水素)によって運ばれ分離管7で分離された試料ガスが、水素炎イオン化検出器(FID)10に導入される。図2に示す水素炎の近傍に配置された電極(−)25からイオン電流を検出し、分離管7(カラム)と電極(+)24を同電位とした。そして、窒素がヘリウムや酸素と逆のピーク変動をするので、負ピーク反転処理のために、スタート後0.6minで電極(+)24からイオン電流を検出し、分析官7(カラム)と電極(−)25を同電位とした。
【0016】
試料20μl注入時は、酸素に関して保持時間が0.478分、面積が962、ピーク高さが309、窒素に関して保持時間が0.854分、面積が1122、ピーク高さが193となり、そのときの混合ガス比(CONC)は酸素46.173%、窒素53.827%であった。次に、50μl注入時は、酸素に関して保持時間が0.477分、面積が2884、ピーク高さが806、窒素に関して保持時間が0.844分、面積が2079、ピーク高さが384となり、そのときの混合ガス比(CONC)は酸素43.9228%、窒素31.6678%であった。以下同様に、100μl、200μl、500μl、1000μlについて測定し、図6に示すデータが得られた。
得られた酸素および窒素の注入量とピーク面積値を整理したものが図6である。(a)は酸素についての注入量(μl)と酸素の検出面積を表にしたもの、(b)はそのデータをプロットしたものである。プロットすると一直線に近似することができ、その近似式は、y=33.359x+870.97となり、そのばらつきの度合R2は、0.9992となった。(c)は窒素についての注入量(μl)と窒素の検出面積を表にしたもの、(d)はそのデータをプロットしたものである。プロットすると一直線に近似することができ、その近似式は、y=59.737x−1232となり、そのばらつきの度合R2は、0.9985となった。
【0017】
上記の実験結果から、本ガスクロマトグラフ分析システムは、流動相(キャリアガス)に水素ガスを用い、それに試料を混入し、カラム(分離管7)を通して、水素炎イオン化検出器(FID)10の水素炎で燃焼させることで、定常状態で燃焼していた水素炎は、分離された試料ガス分が流入することで、その分、燃焼ガスのキャリアガス(水素)分が減少し、イオン化電流が減少して、正もしくは負のベースライン変動を起こし、このベースライン変動をピークとみなし、面積を測定した。この面積値は上記の分析結果から注入成分濃度と比例しているため、既知濃度成分を注入し、感度補正係数を得れば検量線によって未知試料の分析ができる。これにより、従来からFIDで感度が得られなかった有機以外の無機成分の化合物も分析できるようになった。
【0018】
上記の実施例ではキャリアガスに水素ガスを用いて説明したが、水素以外の可燃性ガスを用いても同様の効果を得ることができる。また、キャリアガスに可燃性ガスを混入させたキャリアガスを用いても良い。
【0019】
【発明の効果】
本発明のガスクロマトグラフ分析システムは上記のように構成されており、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を備え、キャリアガスに水素ガスもしくは水素ガスを混入させたキャリアガスを用いて、キャリアガス(水素)の燃焼によって形成された水素炎に、分離管(カラム)からキャリアガスによって運ばれた試料分離ガスを入れると、分離成分の濃度分だけキャリアガス(水素)分が減り、燃焼ガス濃度が減少するので、イオン化電流がその分変動する。この変化を検出するので、従来、水素炎イオン化検出器(FID)で感度が無いといわれていた化合物の検出、定量を、簡便に安価に行うことができる。また、FIDで感度のある有機成分と感度が無いといわれていた無機成分の同時定量も、簡便に安価に行うことができる。これによって、無機成分の分析も熱伝導検出器(TCD)を用いなくても水素炎イオン化検出器(FID)で分析できるようになり、始動時間もTCDのように時間をとることなく短時間で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のガスクロマトグラフ分析システムの一実施例を示す図である。
【図2】 本発明のガスクロマトグラフ分析システムの検出器槽の構造を示す図である。
【図3】 本発明のガスクロマトグラフ分析システムを用いたヘリウムガスの分析結果を説明するための図である。
【図4】 本発明のガスクロマトグラフ分析システムを用いたヘリウムガスの検量線データを示す図である。
【図5】 本発明のガスクロマトグラフ分析システムを用いた酸素と窒素の混合ガスの分析結果を説明するための図である。
【図6】 本発明のガスクロマトグラフ分析システムを用いた酸素と窒素の混合ガスの各検量線データを示す図である。
【図7】 従来のガスクロマトグラフ分析システムの構成を示す図である。
【図8】 従来のガスクロマトグラフ分析システムの検出器槽の構造を示す図である。
【符号の説明】
1…可燃性ガスボンベ
2…減圧弁
3…流量制御部
4…試料気化室
5…試料導入口
6…カラム槽
7…分離管
8…温度調節部
9、9a…検出器槽
10、10a…水素炎イオン化検出器(FID)
11…補助ガスボンベ
12…減圧弁
13…流量制御部
14…排出口
15…データ処理部
16…記録計
17…キャリアガスボンベ
18…減圧弁
19…流量制御部
21…水素ガス導入口
22…ノズル
23…補助ガス導入口
24…電極(+)
25…電極(−)
26…セラミック端子
Claims (1)
- 試料を気化しキャリアガスに混入して分離管に通し、分離管から流出する分離成分を水素炎中に導入し、イオン化されたイオンを捕獲し試料成分を検出する水素炎イオン化検出器を備えたガスクロマトグラフ分析システムにおいて、前記キャリアガスに可燃性ガスもしくは可燃性ガスを混入させたキャリアガスを用い、前記分離管を通して水素炎イオン化検出器に入れ、前記水素炎を前記キャリアガスの燃焼によって形成し、このときの燃焼ガス濃度の変化によって酸素以外の無機成分を検出することを特徴とするガスクロマトグラフ分析システム。
Priority Applications (1)
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JP2002187271A JP3912202B2 (ja) | 2002-06-27 | 2002-06-27 | ガスクロマトグラフ分析システム |
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JP2002187271A JP3912202B2 (ja) | 2002-06-27 | 2002-06-27 | ガスクロマトグラフ分析システム |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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