JP5468254B2 - 熱収縮性フィルム - Google Patents
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Description
しかしながら、これらのフィルムは、耐印刷性が悪く、フィルムロール体からフィルムを引出しつつ連続的に印刷を施した場合、印刷後に伸度が低下する。そのため、スリット工程、スリーブ工程、あるいは容器への装着工程などの連続した加工工程中にフィルムが切れるという問題点が発生しやすい。
スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体は、ブタジエンブロックに起因する熱安定性の悪さ故、フィッシュアイ(F.E.)を生成しやすいという問題点を有する。イソプレンブロックを一部導入するなど(特許文献4)の改良により、F.E.の生成はある程度、改善されているものの、なお十分でなく、実用上問題があった。
(1)スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(A)からなるマトリックス相中に、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルがグラフト共重合されたゴム状重合体(B)からなる粒子が島状に分散したゴム変性スチレン系樹脂組成物(C)からなる層(X)を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、前記層(X)において、(i)スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(A)は、スチレン系単量体91〜99重量%、(メタ)アクリル酸エステル9〜1重量%からなり;(ii)樹脂組成物(C)100重量%当たり、白色鉱油の含量が3〜10重量%であり;(iii)メチルエチルケトン/メタノール=90/10(容積比)の混合溶剤に不溶のグラフト共重合されたゴム状重合体(B)からなる粒子の割合が20〜35重量%であり;(iv)樹脂組成物(C)のビカット軟化温度が60〜80℃である熱収縮性フィルム。
(2)90℃、10秒における主延伸方向の熱収縮率が30〜83%である上記(1)項記載の熱収縮性フィルム。
(3)スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(A)における(メタ)アクリル酸エステルがアクリル酸n−ブチルである上記(1)又は(2)項に記載の熱収縮性フィルム。
(4)グラフト共重合されたゴム状重合体(B)粒子のトルエン中での膨潤度が8〜11である上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
(5)ゴム変性スチレン系樹脂組成物(C)からなる層(X)を印刷面とした、上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルムのロール体。
本発明の熱収縮性フィルムに使用するゴム変性スチレン系樹脂組成物(C)は、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを共重合することによって得られる。当該熱収縮性フィルムは、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(A)からなるマトリックス相中に、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルがグラフト共重合されたゴム状重合体(B)からなる粒子が島状に分散したゴム変性スチレン系樹脂組成物(C)からなる層(X)を少なくとも1層有する。
スチレン系単量体と共重合される(メタ)アクリル酸エステル単量体は、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、一種でも、二種以上を併用してもよい。(メタ)アクリル酸エステル単量体の内で、アルコール成分のアルキル鎖の炭素数が4以上のものが、ビカット軟化温度を効果的に下げるために好ましい。これに該当するのは、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等である。
架橋されたグラフトゴム状重合体粒子の形態は特に制限が無く、コアシェル型のものであってもよいし、サラミ型のものであってもよい。
白色鉱油の動粘度は、上記低沸点成分が少なく、かつ、効果的にビカット軟化温度を下げ、ハンドリングも容易な粘度範囲が好適である。40℃で40mm2/s〜120mm2/sの範囲が好ましく、より好ましくは60〜80mm2/sである。
白色鉱油を添加する方法は、特に制限は無く、白色鉱油を重合工程で添加する方法、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練機を用いて混練する方法などがある。これらのうち、白色鉱油を重合工程で添加した場合、混練した場合に比しより均一に混合されるため好ましい。
本発明の熱収縮性フィルムに使用するゴム変性スチレン系樹脂組成物(C)のマトリックス相であるスチレン系共重合体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で10万以上50万以下であることが好ましい。重量平均分子量が10万未満では、得られる熱収縮性フィルムの厚み精度が低下する(厚み斑が増大する)傾向がある。一方、重量平均分子量が50万を超えると、熱収縮フィルムの収縮性能が低下する傾向がある。
本発明の熱収縮性フィルムの製造方法には限定が無く、Tダイシート押出し機によりシート状に成形した後、一軸延伸加工装置、二軸延伸加工装置により、一軸あるいは二軸に延伸する方法、押出されたチューブ状フィルムを円周方向に延伸する方法、インフレーション加工装置等など公知の方法で製造される。
本発明の目的を損なわない範囲でスチレン−ブタジエンブロックゴムを添加することもできる。この場合、本発明の熱収縮性フィルムに使用するゴム変性スチレン系樹脂組成物100重量部に対し、15重量部以下が好ましい。15重量部を超えると、剛性が低下したり、このブロック共重合体に起因するゲル状物質(フィッシュアイの原因)が多発しやすくなる。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物の組成及び特性を以下のとおり測定した。
(1)マトリックス相組成
ゴム変性スチレン系樹脂組成物1gをメチルエチルケトン/メタノール=90/10の比率の溶媒20mlに溶解した後、日立工機株式会社製の高速遠心分離機でR20A2ローターを用い、0℃、20000rpmで1時間遠心分離を行い、上澄み液をデカンテーションで取り出した。200mlのメタノールに攪拌下投入してポリマー分を析出させ、ろ取、乾燥して得たマトリックス相について、1H−NMR(プロトン核磁気共鳴分光法)により芳香環プロトンのシグナルの面積値と0.9ppm付近に現れるブチル基末端メチル基のシグナルの面積比からスチレンとブチルアクリレートの共重合比率を算出した。その他の共重合品の場合は、熱分解ガスクロマトグラフにより構成モノマーを定性、ケン化処理後(メタ)アクリレート中のアルコール成分のガスクロマトグラフによる定量、ケン化された(メタ)アクリル酸成分のメチルエステル化等の公知の分析技術を併用して合理的に決定される。
上記(1)でポリマーをろ取した後のろ液2本分をエバポレータで濃縮し、オイル状物質を得た。オイル状物質全量を20gの順相シリカゲルをn−ヘキサンで充填したカラムクロマトグラフに掛けて、200mlのn−ヘキサンで溜出させた。溜出液を再度エバポレータで濃縮し、80℃に調整した真空乾燥機で乾燥した後、重量を求めた。
上記(1)で延伸分離した沈下物の乾燥重量を求め、樹脂組成物全体に対する割合を計算してゴム状重合体粒子の重量%値とした。
ペレット或いはフィルムを230℃のオーブンに15分間置いて、完全に収縮、配向緩和させた。ウルトラミクロトームで平滑な切削面を出し、四酸化オスミウムの2%水溶液に室温で1昼夜浸漬して染色した。これは、2重結合があるジエン系ゴム状重合体相が鮮明に染まる方法である。染色された表面付近から、ウルトラミクロトームで銀色の超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡で撮影しゲージ入りのネガを得た。ゲージは、金単結晶の格子サイズ(0.143nm及び0.204nm)を基準に校正されたものを用いた。ネガから倍率が5000倍となるよう引き伸ばして印画紙に焼き付け、画像解析に供した。
画像解析は、旭化成株式会社製IP1000−PCにて次の手順で行った。
1.写真の12cm角の領域を200dpiの解像度、白黒256階調にてデジタルデータ化した。1ドットのサイズは、25.4nmになる。
2.周辺の不完全な粒子を排除し、10ドット以上の粒子について、円相当径を求め、面積平均径を算出した。統計計算する粒子数が200を超えるように枚数を試料に応じて調整した。
ゴム変性スチレン系樹脂組成物1gをトルエン溶媒20mlに溶解した後、日立工機株式会社製の高速遠心分離機でR20A2ローターを用い、0℃、20000rpmで1時間遠心分離を行った。上澄み液をデカンテーションで取り除き、残った沈下物の重量を測定した(膨潤重量)。常圧で160℃、45分で乾燥し、ついで160℃、20mmHgで15分真空乾燥した後の重量を測定した(乾燥重量)。膨潤重量を乾燥重量で除して膨潤度を求めた。
膨潤度=膨潤重量÷乾燥重量
JIS K7152(1995)に従ったISO射出成形金型typeAにて、JIS K7139に準拠した多目的試験片を射出成形によって作成し、その中央部を切り出して試験に供した。試験は、JIS K7206(1999)のB 50法(50N荷重、50℃/時間昇温)の条件で行った。
6Lの容量で、独立した3室の温度制御ジャケットと攪拌機を備えたチューブ式重合機3基を直列連結し、その後に二段ベント付き二軸押出機を配置した重合装置を用いて、以下のようにスチレン系樹脂を製造した。
スチレン75.8重量部、アクリル酸ブチル4.8重量部、ポリブタジエンゴム(旭化成ケミカルズ社製ジエン55)4.7重量部、流動パラフィン(三光化学工業株式会社製PS−350S)4.7重量部、エチルベンゼン10重量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.04重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド0.06重量部、α−メチルスチレンダイマー500ppmからなる原料溶液を第1段重合機の滞留時間が2時間になるように供給し重合を行った。第1段重合機は、上流から順に125℃/130℃/135℃に制御し、60rpmで攪拌機を回転させてゴム粒子を析出させ、後続の第2段重合機では130℃/135℃/140℃で重合を継続しゴム粒子を安定化させ、更に第3段重合機にて140℃/145℃/150℃で重合を進めた。その結果、最終重合固形分は75%であった。この重合溶液を220℃、20mmHgのベント圧力の二段ベント付き二軸押出機により脱揮発後、ペレタイズし、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。得られたゴム変性スチレン系樹脂組成物の組成を表1上段に示す。
表1上段に示した組成となるよう原料溶液を調整し、ゴム量、開始剤量、α−メチルスチレンダイマー量および攪拌機の回転数を表1記載のとおり調整して、実施例1と同様の方法でゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。
実施例1と同一重合装置を用い、スチレン71.3重量部、アクリル酸ブチル4.6重量部、ゴム状重合体としてSBブロックタイプ(日本エラストマー株式会社製アサプレン670A)8.4重量部、流動パラフィン(三光化学工業株式会社製PS−350S)4.7重量部、エチルベンゼン11重量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.05重量部、n−ドデシルメルカプタン200ppmからなる原料溶液を重合機に供給し重合を行った。第1段重合機で130℃で100rpmで攪拌機を回転させ重合し、ゴム粒子を析出させ、第2段重合機にて135℃で重合を継続しゴム粒子を安定化させ、更に第3段重合機にて145℃で重合を進め、最終重合固形分75%とした。この重合溶液を220℃、20mmHgのベント圧力の二段ベント付き二軸押出機により脱揮発後、ペレタイズし、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。
二段ベント付き二軸押出機の脱揮発条件を、210℃、20mmHgとした以外は実施例1と同様に重合を行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。
二段ベント付き二軸押出機の脱揮発条件を、250℃、20mmHgとした以外は実施例1と同様に重合を行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。
二段ベント付き二軸押出機の脱揮発条件を、200℃、20mmHgとした以外は実施例1と同様に重合を行い、ゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。
表2上段に示した組成となるよう原料溶液を調整し、ゴム量、開始剤量、α−メチルスチレンダイマー量および攪拌機の回転数を表2記載のとおり調整して、実施例1と同様の方法でゴム変性スチレン系樹脂組成物を得た。
比較のため、ゴム変性スチレン系樹脂組成物の代わりに、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ株式会社製アサフレックス825)を使用した。
MD方向の延伸倍率を1.35倍としたほかは上記と同じ方法で、実施例1のゴム変性スチレン系樹脂組成物の熱収縮性フィルムを作成した。
MD方向の延伸倍率を1.1倍としたほかは上記と同じ方法で、実施例1のゴム変性スチレン系樹脂組成物の熱収縮性フィルムを作成した。
表1、表2下段及び表3に得られたフィルムの評価結果を示した。
(1)90℃熱収縮率の測定
MD方向120mm、TD方向30mmに切出した延伸フィルムのMD方向に100mmの基準線を引き、90℃の温水に10秒間浸漬し、次式により算出した。
90℃熱収縮率(%)=(1−L2/L1)×100
L1:浸漬前の長さ L2:浸漬後の長さ
東京インキ株式会社製グラビア用インキ「SY390」に酢酸エチル、次にイソプロピルアルコールを加えて酢酸エチル/イソプロピルアルコール=45/55(重量比)になるように調整し、バーコーター(RDS#5:ウェット時に10μmにレベリング)で延伸フィルムに印刷し、35℃で通風乾燥した。JIS K7127に準拠して、印刷した延伸フィルムのMD方向にダンベル試験片(形状タイプ5)を切り出し、引張速度100mm/分、雰囲気温度23℃、相対湿度50%RHで引張試験を実施し、印刷後伸びを測定した。
印刷後引張弾性率は、応力2N−4N間の傾きを見かけの引張弾性率とした。
延伸フィルムのMD方向に6MPaの応力をかけて、上記(2)と同様のインキを用い、バーコーター(RDS#40:ウェット厚み約92μm)を使用して印刷し、10時間放置後、(2)と同様の試験片について、(2)と同じ引張試験を実施し、テンション下での印刷後の伸びを測定した。
40℃で7日間フィルムを自然放置した時のTD方向(主延伸方向)の基準点間(元寸法200mm)の距離を0.1mm単位で測定し、次式により算出した。
自然収縮率(%)=(1−L3/L1)×100
L1:放置前の長さ(200mm) L3:放置後の長さ
延伸フィルム(寸法:140mm×240mm)を観察し、下記の通り目視で判定した。
○・・・延伸フィルム一枚において、フィッシュアイが無いか、2個以下である。
×・・・延伸フィルム一枚にフィッシュアイが3個以上である。
Claims (5)
- スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(A)からなるマトリックス相中に、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルがグラフト共重合されたゴム状重合体(B)からなる粒子が島状に分散したゴム変性スチレン系樹脂組成物(C)からなる層(X)を少なくとも1層有する熱収縮性フィルムであって、
前記層(X)において、(i)スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(A)は、スチレン系単量体91〜99重量%、(メタ)アクリル酸エステル9〜1重量%からなり;(ii)樹脂組成物(C)100重量%当たり、白色鉱油の含量が3〜10重量%であり;(iii)メチルエチルケトン/メタノール=90/10(容積比)の混合溶剤に不溶のグラフト共重合されたゴム状重合体(B)からなる粒子の割合が20〜35重量%であり;(iv)樹脂組成物(C)のビカット軟化温度が60〜80℃である熱収縮性フィルム。 - 90℃、10秒における主延伸方向の熱収縮率が30〜83%である請求項1記載の熱収縮性フィルム。
- スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体(A)における(メタ)アクリル酸エステルがアクリル酸n−ブチルである請求項1又は2に記載の熱収縮性フィルム。
- グラフト共重合されたゴム状重合体(B)粒子は、トルエン中での膨潤度が8〜11である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルム。
- ゴム変性スチレン系樹脂組成物(C)からなる層(X)を印刷面とした、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱収縮性フィルムのロール体。
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