JP2004285132A - スチレン系重合体樹脂 - Google Patents
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Abstract
【課題】スチレン−ブタジエンブロック共重合体とスチレン−(メタ)アクリル酸エステル(例えばアクリル酸ブチル)共重合体からなる重合体樹脂において、透明性、低温収縮性、腰の強さ、寸法収縮性、強靱性等における優れた特長を維持し、フィルムへの流動ムラの発生や、フィルム表面が非平滑化する等の問題解決を図ること。
【解決手段】(A)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体5〜95重量%と(B)スチレン−共役ジエンブロック共重合体95〜5重量%と(C)前記(A)あるいは(B)のスチレン系重合体に相溶な重合体0〜30重量%からなる組成物であって、且つ、
(e)スチレン−共役ジエンブロック共重合体を構成する共役ジエン結合単位におけるイソプレン結合単位の含有率が2重量%以上、45重量%未満であることを特徴とするスチレン系重合体樹脂。
【選択図】 図1
【解決手段】(A)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体5〜95重量%と(B)スチレン−共役ジエンブロック共重合体95〜5重量%と(C)前記(A)あるいは(B)のスチレン系重合体に相溶な重合体0〜30重量%からなる組成物であって、且つ、
(e)スチレン−共役ジエンブロック共重合体を構成する共役ジエン結合単位におけるイソプレン結合単位の含有率が2重量%以上、45重量%未満であることを特徴とするスチレン系重合体樹脂。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明のスチレン系重合体樹脂は、主として包装材料等の用途に供する。特に耐衝撃性、経時安定性(寸法変化、物性低下に対する経時耐性)、機械的強度、腰強さ、透明性、収縮性に優れるとの特長を生かし、硬質の熱収縮フィルム用途に好ましく利用できる。
【0002】
【従来の技術】
従来、硬質フィルム分野での包装用熱収縮性フィルムとして、硬質塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエステル(PET)系フィルム、スチレン系フィルム、等が一般的に用いられてきた。
硬質PVCフィルムは、可塑剤使用による衛生上、品質上(温水中での白化現象等)の問題に加えて、焼却時に発生する塩素系ガスの問題があり、環境への対応は未だ不充分な点が残る。
PET系フィルムは衛生上、または焼却時の上記問題点に対するクリーン性や燃焼熱が少ないこと等に特長がある。しかし、透明PETの非晶性共重合体は高価であり、また非晶質化の技術が充分でなく、品質安定性に問題がある。そのため熱収縮時の微妙な挙動特性が変動して、包装用熱収縮性フィルムとして安定性に欠ける。
スチレン系延伸フィルムには、ポリスチレン(GPPS)、またはポリスチレン(PS)とブタジエン系ゴム(BR)のグラフト共重合体を含む耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、またはスチレンとブタジエンとのブロック共重合体(SBBC)、あるいはこれらを含む組成物等が使用されている。
【0003】
GPPSフィルムは、透明性に優れるがビカット軟化点(VSPと称するASTM−D1525法に準じて荷重1kg、昇温スピード20℃/分で測定したもの)が100〜106℃と比較的高いために熱収縮開始温度が高く、低温での収縮性が悪い。また脆くて裂け易く、フィルムを曲げた部分が切れる等の問題がある。
HIPSフィルムは、GPPSの脆さと低温収縮性が改良されているが、透明性が劣る。また、フィルムの腰が弱く、自然収縮しやすいとの問題がある。(特許文献1参照)。
HIPSの透明性を改良したSBBCは低温収縮性も改良されている。しかし、フィルムの腰が更に弱くなり、加えて寸法の自然収縮や物性の低下が大きく、硬質収縮性フィルムとして性能は不十分である。またSBBCとPSとのブレンドフィルムはSBBCフィルムより腰の改良に効果が見られる(特許文献2および3参照)が、低温収縮性と衝撃強度および透明性の低下に問題が残る。
【0004】
これらの改良のため、SBBCと、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メタアクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルを意味する。)共重合体との組成物フィルムの提案がある(特許文献4および5参照)。これらのフィルム、シートは透明性、低温収縮性、腰の強さ、熱収縮性、強靱性等の点で前述の各種フィルムよりバランスに優れている。
SBBCの改良技術として、イソプレン結合単位を含有するスチレン−共役ジエンブロック共重合体とスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との組成物、および該組成物のフィルム用途等への利用も開示されている。共役ジエン単位のイソプレン結合単位の含有量は45重量%以上に限定されており、作用効果に高温条件下のゲル発生防止を挙げている。しかし、イソプレン結合単位の含有量が45重量%未満では、高温加工下にゲルが生成し好ましくないとしている。(特許文献6参照)
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−48325号公報
【特許文献2】
特公昭60−30705号公報
【特許文献3】
特開昭60−6414号公報
【特許文献4】
特公平3−12535号公報
【特許文献5】
特公平3−18813号公報
【特許文献6】
国際公開01/090207号パンフレット(2001)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
SBBCと、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル(例えばアクリル酸ブチル)共重合体からなる重合体樹脂は、樹脂性能上の優れた特長を有するものの、加工条件によってはフィルムの流動ムラの発生や、フィルム表面が非平滑化する等の問題があった。
例えば、条件によっては押出フィルムに樹脂組成が不均一なスポットあるいはライン状のムラが認められる。この流動ムラは小さなものであるが、装飾性の求められるフィルム用途からして、致命的な欠陥となるものであり、改善が強く求められている。
即ち、本発明の解決しようとする課題は、SBBCとスチレン−(メタ)アクリル酸エステル(例えばアクリル酸ブチル)共重合体からなる重合体樹脂において、透明性、低温収縮性、腰の強さ、寸法収縮性、強靱性等における優れた特長を維持し、かつ欠点である加工上の性能問題を解決することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題解決を鋭意検討し、特定構造のスチレン−共役ジエンブロック共重合体を用いることによって、上記問題を解決できることを見出し、本発明を達成するに至った。
即ち、従来技術のSBBCとスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる重合体樹脂は機械的に混合しても、両重合体成分の相溶性が乏しいために、溶融状態では経時的に分離が進み、かつ例えば180℃を超える温度では相分離速度が大きく増大することが検討の結果判明した。このため加工時の混練り不足、部分的な樹脂の滞留あるいは部分的な樹脂温度の上昇によって、樹脂の相分離あるいは不均一化が起こり、得られるフィルムに不均一な樹脂組成のスポットあるいはライン状ムラの発生を来す。
これに対して、共役ジエン結合単位にイソプレン結合単位を一部導入したスチレン−共役ジエンブロック共重合体は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との相溶性が大きく向上し、樹脂組成が不均一なスポットあるいはライン状のムラ等の押出フィルムにおける問題が顕著に改善することを、本発明者が見出し、本発明を達成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、次に示すところのものである。
の組成物であるスチレン系重合体樹脂。
ここに、(A)成分のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が下記(a)および(b)項の特徴を有し、(B)成分のスチレン−共役ジエンブロック共重合体が下記(c)〜(f)項の特徴を有し、更にスチレン系重合体樹脂として下記(g)および(h)項の特徴を有する。
(a)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する結合単位がスチレン系結合単位60〜97重量%と(メタ)アクリル酸エステル系結合単位40〜3重量%とから成り、
(b)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量が15万〜60万の範囲であり、
(c)スチレン−共役ジエンブロック共重合体のブロック構造が、少なくとも2つのスチレン系重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン系重合体ブロックから構成され、
(d)スチレン−共役ジエンブロック共重合体を構成する結合単位がスチレン系結合単位40〜95重量%と共役ジエン結合単位60〜5重量%から成り、
(e)スチレン−共役ジエンブロック共重合体を構成する共役ジエン結合単位におけるイソプレン結合単位の含有率が2重量%以上、45重量%未満であり、
(f)スチレン−共役ジエンブロック共重合体の重量平均分子量が5万〜40万の範囲であり、
(g)スチレン系重合体樹脂のビカット軟化温度が50〜99℃の範囲であり、
(h)スチレン系重合体樹脂の1mm厚平板の全光線透過率が75%以上である。
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成するスチレン系単量体は、スチレンの他に、少量の公知のビニル芳香族単量体を含んでいても構わない、この例としてα−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tertブチルスチレン、およびこれらの混合物等を挙げることができる。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体は、C1〜C8の範囲のアルコールとアクリル酸およびメタアクリル酸のエステル化合物から選ばれる。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸ペンチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0010】
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体には、本発明の目的を阻害しない範囲で、共重合可能な他のビニル系単量体を含んでいても構わない。この好ましい具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸およびその塩が挙げられる。
また、これらの単量体の2種以上を組み合わせても構わない。特にメタクリル酸メチルは、得られる重合体の軟化温度を調整するため、他の(メタ)アクリル酸エステルと組み合わせることが好ましい。
得られるスチレン系重合体樹脂の低温加工性、耐候性、強度等のバランスの面で、(メタ)アクリル酸エステル単量体はアクリル酸エステル単量体であることが好ましい。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチルが更に好ましく、アクリル酸n−ブチルが最も好ましい。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体組成は、スチレン系単量体60〜97重量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体40〜3重量%の範囲である。好ましくは、スチレン系単量体65〜95重量%、更に好ましくは70〜93重量%、特に好ましくは75〜90重量%の範囲であり、残余の成分は(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0011】
スチレン系単量体が60重量%未満では、得られるスチレン系重合体樹脂の耐熱性が過度に低下して好ましくない。具体的には成型品の熱的変形や延伸フィルムの自然収縮が起こり易くなり、好ましくない。また、スチレン系単量体が97重量%を越えると、得られるスチレン系重合体樹脂の冷間延伸加工時の適正温度幅が著しく狭まり、また強度性能が低下して好ましくない。更には、(メタ)アクリル酸エステル単量体の導入量の低下に伴い、耐熱安定性や耐加工安定性が低下を来して好ましくない。
また用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体は、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上がアクリル酸エステルである。また、アクリル酸エステルとしてはアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、15万〜55万の範囲であることが好ましい。更に好ましくは18万〜50万の範囲、特に好ましくは20万〜45万の範囲である。
【0012】
重量平均分子量が15万未満では、得られるスチレン系重合体樹脂の強度性能、特に引裂き強度、引っ張り強度が著しく低下して、好ましくない。また、重量平均分子量が55万を越えると、得られるスチレン系重合体樹脂の加工性、特に成型加工性が著しく低下して、やはり好ましくない。
重量平均分子量/数平均分子量の比は好ましくは1.5〜3.9範囲、特に好ましくは1.8〜3.2範囲である。分子量分布があまりに狭いと、得られるスチレン系重合体樹脂の加工性、特にフィルムおよびシートの高延伸倍率の延伸加工が困難となり好ましくない。分子量分布があまりに広いと、強度性能、例えば引張り破断強度や表面硬度が低下して好ましくない。
また、メルトフローレート(ISO R1133に準拠して測定(条件:200℃、荷重5kgf))は1〜20g/10分の範囲が好ましく、2〜15g/10分の範囲が特に好ましい。この範囲内に設定することにより、得られるスチレン系重合体樹脂のシートおよびフィルム、更に二次加工して得られる成形品の厚み斑が少なくなる。また、低温での高延伸倍率の加工が容易となり、強度性能にも優れて好ましい。
【0013】
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のスチレン系単量体含有量は、好ましくは1000ppm未満である。更に好ましくは500ppm未満、最も好ましくは100ppm未満である。スチレン系単量体の含有量が1000ppm以上では、得られるスチレン系重合体樹脂の成型加工時の金型やノズル等の汚染が起こり易く、更に成型体表面に対する印刷性の低下が起こり、好ましくない。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは1000ppm未満である。更に好ましくは500ppm未満、最も好ましくは100ppm未満である。(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が1000ppm以上では、得られるスチレン系重合体樹脂の成型加工時の金型やノズル等の汚染が起こり易なる。また得られる樹脂の耐候性が低下し、また臭気を来す場合があり好ましくない。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、共重合体を構成する単量体の混合溶液をラジカル重合することによって得られる。
重合には、スチレン系重合体で公知のラジカル重合法が利用できる。方式分類して塊状重合法、溶液重合法および縣濁重合法、プロセス分類してバッチ重合法および連続重合法、開始剤分類して熱重合法および開始剤重合法等に分類でき、何れの方法も利用できる。
【0014】
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、二基以上の重合槽を直列に連結し、重合槽の一端から原料を連続的に供給し、他端より生成物を連続的に抜き出す連続プロセスの塊状あるいは溶液重合法で、好ましく製造できる。更には、二基以上の重合槽を直列に連結し、最終重合槽の混合状態がプラグフロー流れの重合プロセスであることがより好ましい。最も好ましくは、前段に完全混合重合槽、後段にプラグフロー重合槽を含む重合プロセスである。これにより、耐熱安定性、耐加工安定性に優れたスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が得られる。
一般に、バッチ重合プロセスにより得られるスチレン系重合体は、スチレンおよび(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合性の差異に基づき、重合中に単量体組成が変化する。結果としてスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の組成分布も大きくなる。そのため得られるスチレン系重合体樹脂の特定樹脂性能、例えば低温シーティング時の伸び等の低温加工性が低下して、好ましくない。
【0015】
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法においては、有機ラジカル発生剤を開始剤に用いることが好ましい。有機ラジカル発生剤としては、有機過酸化物およびアゾ化合物等が挙げられる。好ましい有機ラジカル発生剤は有機過酸化物である。
有機過酸化物の種類は、実施する重合温度での半減期が好ましくは10分から10時間の化合物から選ばれる。重合温度条件にもよるが、更に好ましくは10時間の半減期を得る温度が50〜130℃の範囲、特に好ましくは80〜120℃の範囲の有機過酸化物から選ばれる。
最も好ましい有機過酸化物は1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
有機ラジカル発生剤の使用量は、全単量体あたり、好ましくは5〜5,000ppmの範囲である。より好ましくは50〜2,000ppmの範囲、特に好ましくは100〜1,000ppmの範囲である。
【0016】
重合時に連鎖移動剤や分子量調整剤を添加することもできる。これらの連鎖移動剤や分子量調整剤は、スチレン重合体製造において公知の化合物から選ぶことができる。この具体的化合物として、四塩化炭素等の有機ハロゲン化合物、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン化合物、α−メチルスチレンダイマー等のベンゼン環に対するα位炭素に活性水素を有する炭化水素化合物が挙げられる。最も好ましい化合物はα−メチルスチレンダイマーである。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造は、無溶媒もしくは少量の有機溶媒を使用して実施される。好ましい有機溶媒は、得られるスチレン系重合体を溶解可能で、重合反応時のラジカルに対する反応性が低く、かつ重合後に溶媒の脱揮除去が容易な有機化合物から選ばれる。この好ましい例としてC6〜C10の芳香族炭化水素化合物および環状の脂肪族炭化水素化合物が挙げられる。具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサンおよびこれらの混合溶媒等が挙げられる。また、一部に鎖状の脂肪族炭化水素を含んでいても構わない。重合溶媒の使用量は、スチレン系重合体100重量部当たり、好ましくは200重量部以下、更に好ましくは100重量部以下、特に好ましくは50重量部以下である。
【0017】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造は、主たる重合温度を70〜150℃の範囲で実施することが好ましい。主たる重合温度とは、得られる重合体の少なくとも50重量%の重合が進行する温度を意味する。例えば、数基の重合槽を直列連結したシステムでは、重合の初段階または後段階の一部の重合に、上述の温度範囲を外れて実施することもできる。また、数基の重合槽を並列連結したシステムでは、一部の重合槽の温度をこの範囲を超えて制御して実施することが好ましい場合がある。
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造においては、重合転化率は好ましくは60重量%以上に制御する。高い転化率は、当然生産効率の点で好ましい。重合転化率が60重量%を下回ると、生産効率低下、脱揮工程の設備的およびエネルギー的負荷の過大を来たし、好ましくない。また、脱揮工程で残存単量体を取りきれず、得られる重合体の樹脂性能や臭気が問題になり易い。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、含有する未反応単量体や重合溶媒を脱揮、除去することにより、重合体が回収される。未反応単量体や重合溶媒の脱揮、除去の方法は、特に限定するものではない。ベント付押出機、フラッシュタンク等の既存スチレン重合体の製造で公知の方法が利用できる。
【0018】
脱揮時の平均重合体温度は、好ましくは180〜250℃の範囲の範囲である。極度に低い脱揮温度では、重合体中に残る単量体含有量が多くなり、好ましくない。また極度に高い温度では、重合体の熱分解により生成するオリゴマーが増加し好ましくない。但し、脱揮の最終段階で短時間この範囲を超える温度で脱揮することは、得られスチレン系重合体の熱的分解を抑え、かつ残存する単量体量を減らす上で好ましい場合がある。
脱揮時の真空度は常圧でも可能であるが、好ましくは50torr以下である。真空度を上げる(絶対圧を低くする)ことにより、低い重合体温度で脱揮効率を高めることができ、好ましい。しかし、真空度を余りに上げることは設備的な限界があり、通常5torr以上の圧で実施される。
また、一連の脱揮プロセス内で一度脱揮処理した重合体に、水、アルコール、炭酸ガス等の重合体に非溶解性の揮発性物質を圧入、これに同伴する形で揮発成分を脱揮する方法は好ましく利用できる。
本発明のスチレン系重合体樹脂を構成する(B)成分はスチレン−共役ジエンブロック共重合体である。該スチレン−共役ジエンブロック共重合体は、スチレン結合単位を主成分とする2つ以上のブロックと、共役ジエン結合単位を主成分とする1つ以上のブロックを有する。
【0019】
具体的なスチレン−共役ジエンブロック共重合体の構造は、例えば一般式(1)〜(3)で表される直鎖ブロック共重合体および一般式(4)〜(7)で表されるラジアル状ブロック共重合体である。
【化1】
(A−B)n A (1)
【化2】
(A−B)m (2)
【化3】
(B−A)m B (3)
【化4】
[(A−B)n ]m −X (4)
【化5】
[(B−A)n+1 ]m −X (5)
【化6】
[(A−B)n −A]m −X (6)
【化7】
[(B−A)n −B]m −X (7)
(式中、Aはスチレン結合単位を主成分とし、数平均分子量5,000〜200,000の範囲のブロックであり、各Aは同一構造でも、異なった構造であっても構わない。Bは共役ジエン結合単位を主成分とし、数平均分子量10,000〜500,000の範囲のブロックであり、各Bは同一構造でも、異なった構造であっても構わない。Xは多官能のカップリング剤、nは1以上、mは2以上の整数を表す。また、本発明の趣旨からして、B−X−BおよびA−X−Aのブロック連鎖構造は、他のブロックで分割されているわけではなく、本ブロック分子量規定においては1つのブロックに対応すると考える。)
【0020】
また、該スチレン−共役ジエンブロック共重合体は、上記のブロック構造規定に該当しない不完全なブロック重合体、例えばAの単独重合体、Bの単独重合体、あるいはA−Bジブロック共重合体等を、本発明の効果を阻害しない範囲で、一部含んでいても構わない。またAブロックとBブロックとの間に、共重合組成の順次変化する傾斜部分を含んでいても構わない。
Aブロックはスチレン結合単位を主成分とするブロックであるが、少量の共重合可能な他の重合体、例えばスチレン以外のビニル芳香族化合物または共役ジエン類からなる結合単位を含んでいても構わない。
Bブロックは共役ジエン結合単位を主成分とするブロックであるが、少量の共重合可能な他の単量体、例えばビニル芳香族炭化水素からなる結合単位を少量含んでいても構わない。最も好ましい共役ジエンはブタジエンおよびイソプレンである。
【0021】
該スチレン−共役ジエンブロック共重合体におけるスチレン系結合単位の含有率は40〜95重量%の範囲であり、共役ジエン結合単位の含有率は60〜5重量%の範囲である。さらに好ましいスチレン系結合単位の含有率は50〜90重量%、特に好ましくは60〜85重量%の範囲であり、残余の成分は共役ジエン結合単位である。ここに、スチレン系結合単位とはスチレンおよびその他のビニル芳香族化合物からなる結合単位の和である。
該スチレン−共役ジエンブロック共重合体における共役ジエン結合単位の2重量%以上、45重量%未満はイソプレン結合単位でなければならない。好ましくは5〜45重量%、更に好ましくは10〜45重量%がイソプレン結合単位である。
共役ジエンブロックにおけるイソプレン結合単位の分布は、特に限定するものではない。均一な分布であっても、濃度傾斜した分布やブロック的な分布であっても構わない。また、一部のブロックあるいは一部の重合体分子に存在が偏っていても構わない。しかし、この場合でもスチレン系重合体樹脂としての共役ジエン結合単位における平均イソプレン含有率が上記の範囲になければならない。
【0022】
共役ジエン単位のイソプレン結合単位が2%重量未満では、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とスチレン−共役ジエンブロック共重合体の相溶性が乏しくなる。このため加工条件にもよるが、樹脂の相分離あるいは不均一化が起こり、得られるフィルムに不均一な樹脂組成のスポットあるいはライン状のムラが発生し、光沢が低下し、熱収縮フィルムとした場合にその熱収縮性が低下して好ましくない。
共役ジエン単位のイソプレン結合単位が45重量%以上でも、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とスチレン−共役ジエンブロック共重合体の相溶性は優れ、スポットあるいはライン状のムラの発生は極めて少なく維持される。しかし、得られるシートやフィルムの強度性能、例えば耐折強度や引っ張り破断強度及び破断伸びが著しく低下して好ましくない。
該スチレン−共役ジエンブロック共重合体の数平均分子量は5万〜40万でなければならない。好ましくは6万〜30万、さらに好ましくは7万〜20万の範囲である。分子量が低過ぎると、得られるスチレン系重合体樹脂の機械的強度が低下して好ましくない。また分子量が高過ぎると加工性や、重合体成分の混合分散性が低下して、均一なスチレン系重合体樹脂が得られず、好ましくない。
【0023】
該スチレン−共役ジエンブロック共重合体は公知の方法により製造できる。例えば、炭化水素溶媒中で、有機リチウム開始剤を用い、バッチプロセスあるいは連続重合プロセスで、スチレン系単量体および共役ジエン単量体を順次ブロック共重合することにより得られる。または共重合後、リチウム活性末端をカップリング反応することによりラジアル構造にブロック共重合体化することもできる。スチレン−共役ジエンブロック共重合体の具体的製造法としては、例えば、特公昭45−19388号公報、特公昭47−43618号公報の技術を挙げることができる。
重合時に利用できる溶媒は、基本的に有機リチウム開始剤に対して不活性で、単量体および生成重合体を溶解できる炭化水素溶媒であって、重合時に液状を保ち、重合後の脱溶媒工程で脱揮除去が容易な溶媒が挙げられる。例えばC5〜C9の脂環式炭化水素溶媒、C5〜C9の脂肪族炭化水素およびC6〜C9の芳香族系溶媒が挙げられる。特にC5〜C9の脂環式炭化水素溶媒が好ましく利用できる。具体的にはシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロヘキセンおよびこれらの混合物等が挙げられる。また、エーテル化合物や第3アミン化合物の混合は、有機リチウムの単量体に対する重合活性を改善できる。重合溶媒の使用量は、好ましくは単量体1Kg当たり0.1〜3Kgの範囲である。より好ましくは0.5〜2.0Kg、特に好ましくは0.67〜1.5Kgの範囲である。
【0024】
重合温度は好ましくは0〜130℃の範囲で制御する。より好ましくは10〜120℃、特に好ましくは20〜110℃の範囲で制御する。バッチプロセスの重合温度は、一般に各ブロックの重合が断熱的に昇温しながら重合することになるが、この温度範囲で制御することが好ましい。重合温度が極度に低いと反応速度が低下して実用性がない。また、重合温度が極度に高いと、リビング活性末端が失活してスチレン−共役ジエンブロック共重合体のブロック構造が不完全となり、得られるスチレン系重合体樹脂の耐衝撃性等の性能が低下して好ましくない。
重合終了後、該スチレン−共役ジエンブロック共重合体は、含有する未反応単量体や重合溶媒を脱揮、除去することにより、重合体が回収される。未反応単量体や重合溶媒の脱揮、除去の方法は、特に限定するものではない。ダブルドラムドライヤー、水に分散させてのスチームストリッピング、ベント付押出機、フラッシュタンク等の既存スチレンの重合体やゴムの製造で公知の方法が利用できる。
残存する単量体や溶媒の量や揮発性にもよるが、一般には温度を100〜250℃、好ましくは120〜200℃、真空度は好ましくは0〜常圧、さらに好ましくは100Pa〜50KPa にて揮発性成分を脱揮除去する。複数の脱揮除去装置を直列に接続する方法は高度な脱揮に効果的である。また、例えば1段目と2段目の間に水を添加して2段目の脱揮能力を高める方法も、好ましく利用できる。
【0025】
本発明のスチレン系重合体樹脂を構成する(C)成分は前記(A)あるいは(B)のスチレン系重合体に相溶な重合体である。具体的にはスチレン、あるいはスチレンと他のビニル芳香族単量体との共重合体、耐衝撃性ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、石油系樹脂等が挙げられる。
本発明のスチレン系重合体樹脂は、(A)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(B)スチレン−共役ジエンブロック共重合体、更に必要により(C)前記(A)あるいは(B)のスチレン重合体に相溶な重合体から構成されるが、必ずしもこれに限定するものではない。例えばスチレン系樹脂において使用が一般的な各種添加剤を、公知の作用効果を達成するために添加することもできる。例えば滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤等を、同様な効果を達成するために添加することができる。
また更に用途にもよるが、例えばフィルムに使用する場合、フィルム用途で一般的な添加剤である帯電防止剤、防曇剤、無機微粉体等を混合してもよい。
【0026】
酸化防止剤として、フェノール系またはフェノールアクリレート系〔例えば:2−tert−ブチル−6(3′−tert−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートおよびこれ等の誘導体がある〕が好ましい。上記化合物に加え燐系の酸化防止剤〔例えば:トリ(2,4−ジ−tert−ブチル)−フェニルフォスファイト,トリ(4−ノニル)−フェニルフォスファイト等〕を使用するのがより好ましい。更に上記2種のタイプに加え、イオウ含有系の酸化防止剤を加えるのが良い場合が多い。またこれ等はそれぞれ単独に使用しても良いし、組み合わせても良い。
各酸化防止剤の添加量は、混合樹脂100重量部に対してそれぞれ0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜3.0重量部、より好ましくは0.10〜2.0重量部、更に好ましくは0.2〜1.0重量部である。0.01重量部未満では樹脂の熱劣化(例えば、架橋や分子量低下等)の防止作用が発現せず、また5.0重量部を超える分散不良、強度低下、透明性の低下、コスト高等の問題が起こり、好ましくない。
【0027】
帯電防止剤としては、アミン系、アミド系のものが好ましい。例えばアミン系として、ヒドロキシエチルアルキルアミンおよびその誘導体、アミド系としてはヒドロキシエチル脂肪酸アミドおよびその誘導体等が好ましく利用できる。
帯電防止剤の添加量は、樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜3. 0重量部、より好ましくは0.4〜2.0重量部である。0.1重量部未満では帯電防止効果が現れ難いし、5重量部を超えると成型体表面の光沢が失われ、印刷適性が低下を来す等の問題がある。
また、可塑剤としては、DOP、DOA、ATBC、DBS等の酸エステル類、ミネラルオイルのごとき流動パラフィン類を0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%加えても良い。
【0028】
本発明のスチレン系重合体樹脂は、
(A)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体 5〜95重量%、
(B)スチレン−共役ジエンブロック共重合体5〜95重量%および
(C)前記(A)あるいは(B)のスチレン重合体に相溶な重合体 0〜30重量%から成る。
(A)成分の組成は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは50〜80重量%の範囲である。用途にもよるが、例えば熱収縮フィルム等においては、5重量%未満では混合効果が発現せず、スチレン系重合体樹脂の剛性が不足し、熱収縮フィルム等の用途により好ましくない。また、95重量%を超えるとフィルムが硬くて脆くなり好ましくない。
(B)成分の組成は、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲であり、上述の(A)成分単独の欠点である脆さ、柔軟性、伸び等の性能を顕著に改善できる。
(C)成分の組成は、好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜10重量%の範囲である。(C)成分の混合により、軟化温度、剛性および流動性のバランスを改善でき、目的に応じてスチレン系重合体樹脂の性能を調整できる。
【0029】
本発明のスチレン重合体樹脂は、各重合体成分の混合方法は特に規定しない。各種加工機器、例えばニーダー、バンバリーミキサー、押出し機を用いた機械的混合、溶媒に溶かして、あるいは重合完了後の重合体溶液での溶液混合が利用できる。
本発明のスチレン系重合体樹脂は、ASTM―D1525法に準じて荷重1kg、昇温スピード20℃/分で測定されるビッカット軟化温度は50〜99℃の範囲でなければならない。好ましくは55〜95℃の範囲、特に好ましくは60〜90℃の範囲である。例えば熱収縮フィルム用途では、低温での収縮性を重視する場合は、ビッカット軟化温度は70℃程度のものが良好であり、また比較的高温での収縮性を必要とする場合は90℃程度のものが良好である。実際には使用条件に合わせて最適なビカット軟化温度の重合体樹脂を選ぶのが好ましい。
軟化温度が余りに低いと、延伸シートおよびフィルムを常温保管中に寸法変化、収縮力低下現象等を発生するため実用的でなくなり、また強度が低下して好ましくない。一方、軟化温度が余りに高いと、重合体の柔軟性が低下して脆くなり、また低温加工性が著しく低下する。この場合加工温度を高くすれば、シーティングや延伸およびこれらの二次成形加工は可能となるが、加熱時の適正温度幅が狭く、加工操作が難しくなり好ましくない。
【0030】
本発明のスチレン系重合体樹脂は、1mm厚平板の全光線透過率を75%以上に限定する。好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。本発明のスチレン系重合体樹脂の大きな特長の一つは透明性にある。全光線透過率が75%未満では、本発明の目的とする透明樹脂用途に使用出来ない。
優れた透明性を発現するには、各重合体各成分が微分散していること、および重合体各成分の屈折率が近いことが望まれる。特に重合体の(A)成分および(B)成分の分散粒子系は、重量平均の長径は好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm、特に好ましくは1μm以下である。また、両成分の屈折率の差異は好ましくは0.01以下、更に好ましくは0.005以下、特に好ましくは0.002以下である。
本発明のスチレン系重合体樹脂は、シートおよびフィルムあるいは更に二次加工して、各種包装、容器材料、ブリスターキャアップ、熱収縮ラベル材料に特に好ましく使用できる。しかし、本発明のスチレン系重合体樹脂の利用はこれらに限定するものではない。本発明のスチレン系重合体樹脂の達成する特長を発揮できる各種用途に広く使用できる。例えば、射出成形やインジェクションブロー成形等からなる食品容器、日用品、雑貨、OA機器部品、弱電部品等に使用することもできる。
【0031】
本発明のスチレン系重合体樹脂を成型、延伸加工してなる熱収縮フィルムは、その特性およびフィルム製法を限定するものではない。一般的な熱収縮フィルムの延伸倍率は主延伸方向に2.0〜10.0倍、好ましくは2.5〜8.0倍で、同様に対直角方向には1.1〜2.5倍、好ましくは1.2〜2.0倍の範囲である。また好ましい延伸倍率比は前者/後者比で1.8〜9.1、より好ましくは2.0〜6.7の範囲である。該スチレン系重合体樹脂の軟化温度にも依存するが、延伸温度は一般に60〜150℃の範囲である。好ましくは70〜120℃の範囲である。
本発明の熱収縮フィルムは落錘衝撃強度が少なくとも5kg・cmであることがフィルムの実用性能に重要で、好ましくは10kg・cm以上、より好ましくは20kg・cm以上、更により好ましくは30kg・cm以上である。5kg・cm未満では、包装機械で繰り出した(引張り)ときフィルム切れが発生し好ましくない。
【0032】
熱収縮フィルムの層構造も特に限定するものではない。本発明のスチレン系重合体樹脂は多層フィルムの少なくとも1層として利用すれば良い。その場合、同種(本発明のスチレン系重合体樹脂)を組み合わせた多層フィルム、または異種(本発明のスチレン系重合体樹脂以外のもの)との組み合わせによる多層フィルムの少なくとも1層(表層あるいは内部層)として利用しても良い。
また、フィルムの厚みは、その用途により異なるが通常5〜800μで、好ましくは10〜500μ、より好ましくは20〜300μの範囲である。
熱収縮フィルムへの成形加工方法は特に限定するものではない。同時2軸や逐次2軸など一般的に使用されている設備、例えばテンター延伸法、バブル延伸法、ローラー延伸法等で代表される延伸成膜設備等での延伸加工が利用できる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例および比較例をもって具体的に説明する。この説明は例であって何ら本発明を限定するものではない。
各種性能評価項目の評価手法および意義は、次の評価方法、評価尺度に基づく。特に断りがない限り、評価するフィルムは成膜1日から3日の間、23℃で経過したものを用いた。
ビカット軟化温度は、樹脂構造や樹脂組成で調整可能な性能であって、必ずしも本発明の作用効果を示すものではない。
1.ビカット軟化温度:
ASTM―D1525法に準じて荷重1kg、昇温スピード20℃/分で測定。
性能評価基準
2.熱収縮フィルム仕上性:
1.5リットルのPETボトル(30℃の水が充填された、最大径91mm、高さ310mmの円筒こけし状容器)に、筒状にした熱収縮フィルム(折り幅148mm、高さ90mm)をセットしたものを、熱風式加熱装置で内温度135℃、滞留時間10秒で熱収縮させ、熱収縮したフィルムがボトルにフィットする状態を評価した。
熱収縮させてボトルにセットされたフィルムを指先で円周方向に軽く回転させてその動きの程度をみる。(10個ずつ評価して1つでも下記のものがあればそのランクとする)。
◎:ボトルとの間の隙間がなく、全く回転しない。
○:僅かに隙間があるが、回転しない。
△:僅かに回転(1mm以内)する。
×:緩くてクルクル回転する。
【0034】
3.引張破断強度:
ASTM−D882に準拠して主延伸方向の対直角方向の値を測定した。(n=5の平均値)
フィルムの機械的強度を判定するもので、引張破断強度の高いものが優れる。
◎:3.5kg/mm2 以上。
○:3.0〜3.5kg/mm2 未満。
△:2.5〜3.0kg/mm2 未満。
×:2.5kg/mm2 未満。
4.引張破断伸度:
フィルムの伸び易さを成膜1日後のフィルムで測定した。ASTM−D882に準拠して主延伸方向の対直角方向の値を測定した。(n=5の平均値)。
引張破断伸度が高くて経時低下しないものが、包装機械でのフィルム切れがすくなく、また印刷工程での溶剤や加熱等による品質低下がなく優れている。引張破断伸度は高いのが良い。
◎:170〜210%
○:150〜170%未満
△:120〜150%未満
×:120%未満
【0035】
5.耐折強度:
ASTM−D2176に準拠して荷重2kgで主延伸方向の対直角方向の値(2枚折りで重ねた状態)を測定した。(n=5の平均値で小数点以下は四捨五入)
フィルムは折り曲げて筒状にして使用するので、折り曲げた時の折り目に傷が付いて切れ難いかどうか判定する。切れるまでの折り曲げ回数の多いものが優れる。
◎:101回以上。
○:31〜100回。
△:11〜30回。
×:10回未満。
6.自然収縮率:
主延伸方向のフィルム長さL0 に対する30℃で30日間オーブン中に保管後の同フィルム長さL1 を用いて、次式で計算し、寸法収縮率Lを求める。
フィルムの例えば流通時の保管状態(雰囲気温度、保管時間)によって、フィルムの寸法変化(収縮)は、サイズが小さくなって容器にはまり難くなるなどのトラブルの原因になるので、寸法変化率は少ないことがフィルムの品質上重要である。
L(%)=(L0 −L1 )×100/L0
◎:1.0%未満
○:1.0〜2.0%未満
△:2.0〜5.0%未満
×:5.0%以上
【0036】
7.光学特性:
フィルムの透明性や光沢は、フィルムの商品価値を大きく左右する。透明で、光沢の良いものが優れている。HAZEは小さい値、GLOSSは大きい値ほど良い。
a.透明性:
1mm厚のシートを射出成形し、その全光線透過率を求めた。
◎:全光線透過率85%以上
○:同80〜85%
△:同75〜80%
×:75%未満
b.光沢:
ASTM−D2457(角度45°)に準拠して延伸フィルムのGLOSS値(%)測定した。(n=5の平均値)
◎:165%以上
○:125〜165%未満
△:100〜125%未満
×:100%未満
8.総合評価:
上記の2〜7a、7bまでの測定評価の7項目の結果をもとに熱収縮性硬質フィルムとしての総合判定を実施。判定基準は次の通り。
◎最も良いレベル:各評価項目で◎または○。
○良いレベル:△が1つ以下で、×がない。
△不合格レベル:△が2以上で、×がない。
×不合格レベル:×がある。
総合判定が◎と○までのランクにあるものは実用上合格のレベルであり、◎は特に品質が優れる。
【0037】
〈重合体製造例1(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造)〉
第1重合槽として攪拌機を備えた完全混合型重合槽(容量4リットル)、第2重合槽として攪拌機を備えた層流型重合槽(容量2リットル)を2基直列に連結した重合装置を準備した。第1重合槽と第2重合槽との間には攪拌機を備えたラインミキサーを挿入した。
第1重合槽に、スチレン73.6重量%、アクリル酸n−ブチル18.4重量%、エチルベンゼン8重量%、有機過酸化物として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン300ppmを含む原料溶液を0.9リットル/hrの速度で、重合槽上部に供給し、下部より抜き出した。
次いで、前記に同組成の原料溶液0.1リットル/hrを追加供給し、ラインミキサーにて混合した後、第2重合槽を上部より下部に通過させた。第1重合槽の内温を105℃、第2重合槽の内温を120〜140℃に制御した。
得られた重合溶液は二段ベント付き脱揮押出機に連続的に供給し、未反応単量体および溶媒を脱揮して、重合体を得た。脱揮押出機は重合体温度を200〜240℃、真空度を20torrに制御した。得られた重合体の構造を表1に記載した。
〈重合体製造例2〜4(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造)〉
スチレンと(メタ)アクリル酸エステル単量体の組成比、(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類を変え、その他は重合体製造例1と同様に実施した。得られた重合体の構造は表2に記載した。
【0038】
〈重合体製造例5(スチレン−共役ジエンブロック共重合体製造)〉
攪拌器を備えた容量100リッターの反応器に、溶媒としてシクロヘキサン50Kgを仕込み、その後50℃に保ちながら、重合開始剤であるセカンダリーブチルリチウム9.8ミリモル、スチレン単量体3.6Kg、次いでブタジエン1.68Kgとイソプレン単量体1.12Kgの共役ジエン単量体混合液、さらにスチレン単量体3.6Kgを順次仕込み、各ブロックを50℃〜80℃の温度範囲で、各1時間、2時間および1時間かけて重合した。
得られた重合体溶液はリチウム量の10倍当量のメタノールを添加することによりアニオン活性末端を失活させた。その後、重合体をメタノールにて沈殿分離した後、重合体100g当たり、0.05gの酸化防止剤を加えた後、ベント付き脱揮押し出し機を用い、160℃で揮発成分を除去した。
この様にして得られた重合体は、A−B−Aタイプのトリブロック構造を有し、共役ジエン結合単位におけるイソプレン結合単位の割合は40重量%であり、重量平均分子量12.3万、数平均分子量11.2万、スチレン含有率72重量%であった。
【0039】
〈重合体製造例6〜10(スチレン−共役ジエンブロック共重合体製造)〉
共役ジエン中のブタジエンとイソプレンの割合を調整し、他の条件は重合体製造例5と同様にして重合、脱揮処理した。得られた重合体は、A−B−Aタイプのトリブロック構造を有した。得られた重合体の構造は表1に記載した。
〈重合体製造例11(スチレン−共役ジエンブロック共重合体製造)〉
攪拌器を備えた容量100リッターの反応器に、溶媒としてシクロヘキサン50Kg、ブタジエン単量体0.36Kg、スチレン単量体3.6Kgおよびノルマルブチルリチウム9.4ミリモルを仕込み、徐々に昇温しながら2時間かけて重合した。その後一度30℃まで冷却し、次いでブタジエン単量体1.32Kgおよびイソプレン単量体1.12Kgを仕込み、徐々に昇温しながら1時間かけて重合、更にスチレン単量体3.6Kgを仕込み、再度昇温しながら2時間かけて重合した。
他の条件は重合体製造例5と同様にして重合、脱揮処理した。得られた重合体は、B−A−B−Aタイプのスチレン分布が一部傾斜のテトラブロック構造を有した。得られた重合体の構造は表1に記載した。
【0040】
〈重合体製造例12(スチレン−共役ジエンブロック共重合体製造)〉
攪拌器を備えた容量100リッターの反応器に、溶媒としてシクロヘキサン50Kgを仕込み、その後50℃に保ちながら、重合開始剤であるセカンダリーブチルリチウム28ミリモル、スチレン単量体7.2Kgを1時間かけて重合。次いでブタジエン1.68Kg、イソプレン単量体1.12Kgを仕込み、徐々に昇温しながら2時間かけて重合した。重合完結後、8ミリモルのトリクロルメチルシラン8ミリモルを添加、混合し、アニオン末端をカップリングした。
得られた重合体は、微量の未反応A−Bジブロック構造体を含む、(A−B)3 −Siタイプのラジアルのブロックポリマー構造をであった。他の条件は重合体製造例5と同様にして重合、脱揮処理した。得られた重合体の構造は表2に記載した。
【0041】
【実施例1〜3】および
【比較例1〜3】
本発明のスチレン系重合体樹脂の(A)成分であるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下(A)成分と略する)として重合体製造例1で得た重合体を用いた。本発明のスチレン系重合体樹脂の(B)成分(以下(B)成分と略する)であるスチレン共役ジエンブロック共重合体、および比較例として共役ジエン部のイソプレン含有率が本発明の構造を外れるスチレン共役ジエンブロック共重合体を用いた。これらの重合体は重合体製造例5〜10で得た。
(A)成分70重量部および(B)成分30重量部に、添加剤混合物(フェノールアクリレート系の酸化防止剤(2−tert−ブチル−6(3′−tert−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート)を0.5重量部、燐系の酸化防止剤(トリ(2,4−ジ−tert−ブチル)−フェニルフォスファイト)を0.2重量部、さらに他の燐系の酸化防止剤(トリ(4−ノニル)−フェニルフォスファイト)を0.3重量部、アミン系の帯電防止剤(ヒドロキシエチルアルキルアミン)0.7重量部を含む)を添加し、ブレンダーにて混合した。
【0042】
この混合物を押出機中で190℃の温度で混合溶融しTダイより押出し均一なシートに成形した。更に、該シートをロール延伸機を用い、90℃でMD方向(シート引出し方向)に1.6倍延伸した後、テンター延伸設備を用い、オーブン温度85℃でTD方向(ロール平行方向)に6.0倍に延伸して50μの逐次二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルム特性および樹脂特性について評価した。その結果を表1に示す。表1の比較例1、実施例1〜4および比較例2は、(B)成分であるスチレン−共役ジエンブロック共重合体共役ジエン部のイソプレン結合単位含有率の樹脂性能への影響を示す。
イソプレン結合単位が少ないと、熱収縮フィルム仕上性やフィルム光沢の顕著な低下が認められる。反面、イソプレン結合単位が多過ぎると、樹脂の強度に関わる性能が大きく低下する。それ故、樹脂性能のバランスにおいてイソプレン結合単位の含有率に適正範囲があることが明らかである。
また、実施例3と比較例1で得たTダイ押出シートの透過型電顕写真を、それぞれ図1および図2に示す。イソプレン共重合(実施例3)によって、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体をマットリックスとし、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の分散が、イソプレンなしの例(比較例1)に比較して、顕著に微細でかつ均一であることが分かる。このことは分散粒子が安定であることを示し、加工時の樹脂の滞留や混合不足による流れムラを起こし難いことを示すものである。
【0043】
【比較例4】
比較例4は、スチレン−共役ジエンブロック共重合体を含まない例である。この様な樹脂は、熱収縮フィルムとしての基本特性に欠けるものである。
【実施例4〜6】
(A)成分におけるスチレンと(メタ)アクリル酸エステル単量体の組成比、(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類を変え、その他は実施例3と同様に行った実施例である。各種の(メタ)アクリル酸エステルを用いても、得られるスチレン系樹脂材料のビカット軟化温度等を調整することによって、優れた性能を発現できることを示すものである。
【0044】
【実施例7〜10】
(B)成分の含有量およびブロック構造を変えた以外は実施例1と同様に行った実施例である。
(B)成分の各種構造で得られるスチレン系樹脂材料は優れた性能を発現できることを示すものである。
【実施例11】
(C)成分として、石油系炭化水素樹脂として、テルペン系水素付加樹脂を5重量%添加した例である。テルペン系水素付加樹脂の添加によりビカット軟化温度の調整やフィルム光沢の向上が認められた。
【比較例5】
実験室で重合した耐衝撃ポリスチレン(ポリブタジエンゴム18重量%含有)を用いた比較例である。HIPSはある程度透明性の改良されたグレードも開発されてはいるが、それでもフィルムの透明性は不十分で、光沢性能に劣るものである。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
本発明のスチレン−ブタジエンブロック共重合体とスチレン−(メタ)アクリル酸エステル(例えばアクリル酸ブチル)共重合体の組成物であるスチレン系重合体樹脂は透明性、低温収縮性、腰の強さ、寸法収縮性、強靱性等における優れた特長を維持し、かつフィルム加工時の流動ムラの発生や、フィルム表面が非平滑化を顕著に解決するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3で得たTダイ押出シートの透過型電顕写真である。
【図2】比較例1で得たTダイ押出シートの透過型電顕写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明のスチレン系重合体樹脂は、主として包装材料等の用途に供する。特に耐衝撃性、経時安定性(寸法変化、物性低下に対する経時耐性)、機械的強度、腰強さ、透明性、収縮性に優れるとの特長を生かし、硬質の熱収縮フィルム用途に好ましく利用できる。
【0002】
【従来の技術】
従来、硬質フィルム分野での包装用熱収縮性フィルムとして、硬質塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリエステル(PET)系フィルム、スチレン系フィルム、等が一般的に用いられてきた。
硬質PVCフィルムは、可塑剤使用による衛生上、品質上(温水中での白化現象等)の問題に加えて、焼却時に発生する塩素系ガスの問題があり、環境への対応は未だ不充分な点が残る。
PET系フィルムは衛生上、または焼却時の上記問題点に対するクリーン性や燃焼熱が少ないこと等に特長がある。しかし、透明PETの非晶性共重合体は高価であり、また非晶質化の技術が充分でなく、品質安定性に問題がある。そのため熱収縮時の微妙な挙動特性が変動して、包装用熱収縮性フィルムとして安定性に欠ける。
スチレン系延伸フィルムには、ポリスチレン(GPPS)、またはポリスチレン(PS)とブタジエン系ゴム(BR)のグラフト共重合体を含む耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、またはスチレンとブタジエンとのブロック共重合体(SBBC)、あるいはこれらを含む組成物等が使用されている。
【0003】
GPPSフィルムは、透明性に優れるがビカット軟化点(VSPと称するASTM−D1525法に準じて荷重1kg、昇温スピード20℃/分で測定したもの)が100〜106℃と比較的高いために熱収縮開始温度が高く、低温での収縮性が悪い。また脆くて裂け易く、フィルムを曲げた部分が切れる等の問題がある。
HIPSフィルムは、GPPSの脆さと低温収縮性が改良されているが、透明性が劣る。また、フィルムの腰が弱く、自然収縮しやすいとの問題がある。(特許文献1参照)。
HIPSの透明性を改良したSBBCは低温収縮性も改良されている。しかし、フィルムの腰が更に弱くなり、加えて寸法の自然収縮や物性の低下が大きく、硬質収縮性フィルムとして性能は不十分である。またSBBCとPSとのブレンドフィルムはSBBCフィルムより腰の改良に効果が見られる(特許文献2および3参照)が、低温収縮性と衝撃強度および透明性の低下に問題が残る。
【0004】
これらの改良のため、SBBCと、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メタアクリル酸エステルおよびアクリル酸エステルを意味する。)共重合体との組成物フィルムの提案がある(特許文献4および5参照)。これらのフィルム、シートは透明性、低温収縮性、腰の強さ、熱収縮性、強靱性等の点で前述の各種フィルムよりバランスに優れている。
SBBCの改良技術として、イソプレン結合単位を含有するスチレン−共役ジエンブロック共重合体とスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との組成物、および該組成物のフィルム用途等への利用も開示されている。共役ジエン単位のイソプレン結合単位の含有量は45重量%以上に限定されており、作用効果に高温条件下のゲル発生防止を挙げている。しかし、イソプレン結合単位の含有量が45重量%未満では、高温加工下にゲルが生成し好ましくないとしている。(特許文献6参照)
【0005】
【特許文献1】
特開昭60−48325号公報
【特許文献2】
特公昭60−30705号公報
【特許文献3】
特開昭60−6414号公報
【特許文献4】
特公平3−12535号公報
【特許文献5】
特公平3−18813号公報
【特許文献6】
国際公開01/090207号パンフレット(2001)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
SBBCと、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル(例えばアクリル酸ブチル)共重合体からなる重合体樹脂は、樹脂性能上の優れた特長を有するものの、加工条件によってはフィルムの流動ムラの発生や、フィルム表面が非平滑化する等の問題があった。
例えば、条件によっては押出フィルムに樹脂組成が不均一なスポットあるいはライン状のムラが認められる。この流動ムラは小さなものであるが、装飾性の求められるフィルム用途からして、致命的な欠陥となるものであり、改善が強く求められている。
即ち、本発明の解決しようとする課題は、SBBCとスチレン−(メタ)アクリル酸エステル(例えばアクリル酸ブチル)共重合体からなる重合体樹脂において、透明性、低温収縮性、腰の強さ、寸法収縮性、強靱性等における優れた特長を維持し、かつ欠点である加工上の性能問題を解決することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題解決を鋭意検討し、特定構造のスチレン−共役ジエンブロック共重合体を用いることによって、上記問題を解決できることを見出し、本発明を達成するに至った。
即ち、従来技術のSBBCとスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる重合体樹脂は機械的に混合しても、両重合体成分の相溶性が乏しいために、溶融状態では経時的に分離が進み、かつ例えば180℃を超える温度では相分離速度が大きく増大することが検討の結果判明した。このため加工時の混練り不足、部分的な樹脂の滞留あるいは部分的な樹脂温度の上昇によって、樹脂の相分離あるいは不均一化が起こり、得られるフィルムに不均一な樹脂組成のスポットあるいはライン状ムラの発生を来す。
これに対して、共役ジエン結合単位にイソプレン結合単位を一部導入したスチレン−共役ジエンブロック共重合体は、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体との相溶性が大きく向上し、樹脂組成が不均一なスポットあるいはライン状のムラ等の押出フィルムにおける問題が顕著に改善することを、本発明者が見出し、本発明を達成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、次に示すところのものである。
の組成物であるスチレン系重合体樹脂。
ここに、(A)成分のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が下記(a)および(b)項の特徴を有し、(B)成分のスチレン−共役ジエンブロック共重合体が下記(c)〜(f)項の特徴を有し、更にスチレン系重合体樹脂として下記(g)および(h)項の特徴を有する。
(a)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する結合単位がスチレン系結合単位60〜97重量%と(メタ)アクリル酸エステル系結合単位40〜3重量%とから成り、
(b)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量が15万〜60万の範囲であり、
(c)スチレン−共役ジエンブロック共重合体のブロック構造が、少なくとも2つのスチレン系重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン系重合体ブロックから構成され、
(d)スチレン−共役ジエンブロック共重合体を構成する結合単位がスチレン系結合単位40〜95重量%と共役ジエン結合単位60〜5重量%から成り、
(e)スチレン−共役ジエンブロック共重合体を構成する共役ジエン結合単位におけるイソプレン結合単位の含有率が2重量%以上、45重量%未満であり、
(f)スチレン−共役ジエンブロック共重合体の重量平均分子量が5万〜40万の範囲であり、
(g)スチレン系重合体樹脂のビカット軟化温度が50〜99℃の範囲であり、
(h)スチレン系重合体樹脂の1mm厚平板の全光線透過率が75%以上である。
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成するスチレン系単量体は、スチレンの他に、少量の公知のビニル芳香族単量体を含んでいても構わない、この例としてα−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tertブチルスチレン、およびこれらの混合物等を挙げることができる。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体は、C1〜C8の範囲のアルコールとアクリル酸およびメタアクリル酸のエステル化合物から選ばれる。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸ペンチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0010】
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体には、本発明の目的を阻害しない範囲で、共重合可能な他のビニル系単量体を含んでいても構わない。この好ましい具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸およびその塩が挙げられる。
また、これらの単量体の2種以上を組み合わせても構わない。特にメタクリル酸メチルは、得られる重合体の軟化温度を調整するため、他の(メタ)アクリル酸エステルと組み合わせることが好ましい。
得られるスチレン系重合体樹脂の低温加工性、耐候性、強度等のバランスの面で、(メタ)アクリル酸エステル単量体はアクリル酸エステル単量体であることが好ましい。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチルが更に好ましく、アクリル酸n−ブチルが最も好ましい。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体組成は、スチレン系単量体60〜97重量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体40〜3重量%の範囲である。好ましくは、スチレン系単量体65〜95重量%、更に好ましくは70〜93重量%、特に好ましくは75〜90重量%の範囲であり、残余の成分は(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0011】
スチレン系単量体が60重量%未満では、得られるスチレン系重合体樹脂の耐熱性が過度に低下して好ましくない。具体的には成型品の熱的変形や延伸フィルムの自然収縮が起こり易くなり、好ましくない。また、スチレン系単量体が97重量%を越えると、得られるスチレン系重合体樹脂の冷間延伸加工時の適正温度幅が著しく狭まり、また強度性能が低下して好ましくない。更には、(メタ)アクリル酸エステル単量体の導入量の低下に伴い、耐熱安定性や耐加工安定性が低下を来して好ましくない。
また用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体は、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上がアクリル酸エステルである。また、アクリル酸エステルとしてはアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は、15万〜55万の範囲であることが好ましい。更に好ましくは18万〜50万の範囲、特に好ましくは20万〜45万の範囲である。
【0012】
重量平均分子量が15万未満では、得られるスチレン系重合体樹脂の強度性能、特に引裂き強度、引っ張り強度が著しく低下して、好ましくない。また、重量平均分子量が55万を越えると、得られるスチレン系重合体樹脂の加工性、特に成型加工性が著しく低下して、やはり好ましくない。
重量平均分子量/数平均分子量の比は好ましくは1.5〜3.9範囲、特に好ましくは1.8〜3.2範囲である。分子量分布があまりに狭いと、得られるスチレン系重合体樹脂の加工性、特にフィルムおよびシートの高延伸倍率の延伸加工が困難となり好ましくない。分子量分布があまりに広いと、強度性能、例えば引張り破断強度や表面硬度が低下して好ましくない。
また、メルトフローレート(ISO R1133に準拠して測定(条件:200℃、荷重5kgf))は1〜20g/10分の範囲が好ましく、2〜15g/10分の範囲が特に好ましい。この範囲内に設定することにより、得られるスチレン系重合体樹脂のシートおよびフィルム、更に二次加工して得られる成形品の厚み斑が少なくなる。また、低温での高延伸倍率の加工が容易となり、強度性能にも優れて好ましい。
【0013】
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のスチレン系単量体含有量は、好ましくは1000ppm未満である。更に好ましくは500ppm未満、最も好ましくは100ppm未満である。スチレン系単量体の含有量が1000ppm以上では、得られるスチレン系重合体樹脂の成型加工時の金型やノズル等の汚染が起こり易く、更に成型体表面に対する印刷性の低下が起こり、好ましくない。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは1000ppm未満である。更に好ましくは500ppm未満、最も好ましくは100ppm未満である。(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が1000ppm以上では、得られるスチレン系重合体樹脂の成型加工時の金型やノズル等の汚染が起こり易なる。また得られる樹脂の耐候性が低下し、また臭気を来す場合があり好ましくない。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、共重合体を構成する単量体の混合溶液をラジカル重合することによって得られる。
重合には、スチレン系重合体で公知のラジカル重合法が利用できる。方式分類して塊状重合法、溶液重合法および縣濁重合法、プロセス分類してバッチ重合法および連続重合法、開始剤分類して熱重合法および開始剤重合法等に分類でき、何れの方法も利用できる。
【0014】
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、二基以上の重合槽を直列に連結し、重合槽の一端から原料を連続的に供給し、他端より生成物を連続的に抜き出す連続プロセスの塊状あるいは溶液重合法で、好ましく製造できる。更には、二基以上の重合槽を直列に連結し、最終重合槽の混合状態がプラグフロー流れの重合プロセスであることがより好ましい。最も好ましくは、前段に完全混合重合槽、後段にプラグフロー重合槽を含む重合プロセスである。これにより、耐熱安定性、耐加工安定性に優れたスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が得られる。
一般に、バッチ重合プロセスにより得られるスチレン系重合体は、スチレンおよび(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合性の差異に基づき、重合中に単量体組成が変化する。結果としてスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の組成分布も大きくなる。そのため得られるスチレン系重合体樹脂の特定樹脂性能、例えば低温シーティング時の伸び等の低温加工性が低下して、好ましくない。
【0015】
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造方法においては、有機ラジカル発生剤を開始剤に用いることが好ましい。有機ラジカル発生剤としては、有機過酸化物およびアゾ化合物等が挙げられる。好ましい有機ラジカル発生剤は有機過酸化物である。
有機過酸化物の種類は、実施する重合温度での半減期が好ましくは10分から10時間の化合物から選ばれる。重合温度条件にもよるが、更に好ましくは10時間の半減期を得る温度が50〜130℃の範囲、特に好ましくは80〜120℃の範囲の有機過酸化物から選ばれる。
最も好ましい有機過酸化物は1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
有機ラジカル発生剤の使用量は、全単量体あたり、好ましくは5〜5,000ppmの範囲である。より好ましくは50〜2,000ppmの範囲、特に好ましくは100〜1,000ppmの範囲である。
【0016】
重合時に連鎖移動剤や分子量調整剤を添加することもできる。これらの連鎖移動剤や分子量調整剤は、スチレン重合体製造において公知の化合物から選ぶことができる。この具体的化合物として、四塩化炭素等の有機ハロゲン化合物、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン化合物、α−メチルスチレンダイマー等のベンゼン環に対するα位炭素に活性水素を有する炭化水素化合物が挙げられる。最も好ましい化合物はα−メチルスチレンダイマーである。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造は、無溶媒もしくは少量の有機溶媒を使用して実施される。好ましい有機溶媒は、得られるスチレン系重合体を溶解可能で、重合反応時のラジカルに対する反応性が低く、かつ重合後に溶媒の脱揮除去が容易な有機化合物から選ばれる。この好ましい例としてC6〜C10の芳香族炭化水素化合物および環状の脂肪族炭化水素化合物が挙げられる。具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサンおよびこれらの混合溶媒等が挙げられる。また、一部に鎖状の脂肪族炭化水素を含んでいても構わない。重合溶媒の使用量は、スチレン系重合体100重量部当たり、好ましくは200重量部以下、更に好ましくは100重量部以下、特に好ましくは50重量部以下である。
【0017】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造は、主たる重合温度を70〜150℃の範囲で実施することが好ましい。主たる重合温度とは、得られる重合体の少なくとも50重量%の重合が進行する温度を意味する。例えば、数基の重合槽を直列連結したシステムでは、重合の初段階または後段階の一部の重合に、上述の温度範囲を外れて実施することもできる。また、数基の重合槽を並列連結したシステムでは、一部の重合槽の温度をこの範囲を超えて制御して実施することが好ましい場合がある。
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造においては、重合転化率は好ましくは60重量%以上に制御する。高い転化率は、当然生産効率の点で好ましい。重合転化率が60重量%を下回ると、生産効率低下、脱揮工程の設備的およびエネルギー的負荷の過大を来たし、好ましくない。また、脱揮工程で残存単量体を取りきれず、得られる重合体の樹脂性能や臭気が問題になり易い。
該スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、含有する未反応単量体や重合溶媒を脱揮、除去することにより、重合体が回収される。未反応単量体や重合溶媒の脱揮、除去の方法は、特に限定するものではない。ベント付押出機、フラッシュタンク等の既存スチレン重合体の製造で公知の方法が利用できる。
【0018】
脱揮時の平均重合体温度は、好ましくは180〜250℃の範囲の範囲である。極度に低い脱揮温度では、重合体中に残る単量体含有量が多くなり、好ましくない。また極度に高い温度では、重合体の熱分解により生成するオリゴマーが増加し好ましくない。但し、脱揮の最終段階で短時間この範囲を超える温度で脱揮することは、得られスチレン系重合体の熱的分解を抑え、かつ残存する単量体量を減らす上で好ましい場合がある。
脱揮時の真空度は常圧でも可能であるが、好ましくは50torr以下である。真空度を上げる(絶対圧を低くする)ことにより、低い重合体温度で脱揮効率を高めることができ、好ましい。しかし、真空度を余りに上げることは設備的な限界があり、通常5torr以上の圧で実施される。
また、一連の脱揮プロセス内で一度脱揮処理した重合体に、水、アルコール、炭酸ガス等の重合体に非溶解性の揮発性物質を圧入、これに同伴する形で揮発成分を脱揮する方法は好ましく利用できる。
本発明のスチレン系重合体樹脂を構成する(B)成分はスチレン−共役ジエンブロック共重合体である。該スチレン−共役ジエンブロック共重合体は、スチレン結合単位を主成分とする2つ以上のブロックと、共役ジエン結合単位を主成分とする1つ以上のブロックを有する。
【0019】
具体的なスチレン−共役ジエンブロック共重合体の構造は、例えば一般式(1)〜(3)で表される直鎖ブロック共重合体および一般式(4)〜(7)で表されるラジアル状ブロック共重合体である。
【化1】
(A−B)n A (1)
【化2】
(A−B)m (2)
【化3】
(B−A)m B (3)
【化4】
[(A−B)n ]m −X (4)
【化5】
[(B−A)n+1 ]m −X (5)
【化6】
[(A−B)n −A]m −X (6)
【化7】
[(B−A)n −B]m −X (7)
(式中、Aはスチレン結合単位を主成分とし、数平均分子量5,000〜200,000の範囲のブロックであり、各Aは同一構造でも、異なった構造であっても構わない。Bは共役ジエン結合単位を主成分とし、数平均分子量10,000〜500,000の範囲のブロックであり、各Bは同一構造でも、異なった構造であっても構わない。Xは多官能のカップリング剤、nは1以上、mは2以上の整数を表す。また、本発明の趣旨からして、B−X−BおよびA−X−Aのブロック連鎖構造は、他のブロックで分割されているわけではなく、本ブロック分子量規定においては1つのブロックに対応すると考える。)
【0020】
また、該スチレン−共役ジエンブロック共重合体は、上記のブロック構造規定に該当しない不完全なブロック重合体、例えばAの単独重合体、Bの単独重合体、あるいはA−Bジブロック共重合体等を、本発明の効果を阻害しない範囲で、一部含んでいても構わない。またAブロックとBブロックとの間に、共重合組成の順次変化する傾斜部分を含んでいても構わない。
Aブロックはスチレン結合単位を主成分とするブロックであるが、少量の共重合可能な他の重合体、例えばスチレン以外のビニル芳香族化合物または共役ジエン類からなる結合単位を含んでいても構わない。
Bブロックは共役ジエン結合単位を主成分とするブロックであるが、少量の共重合可能な他の単量体、例えばビニル芳香族炭化水素からなる結合単位を少量含んでいても構わない。最も好ましい共役ジエンはブタジエンおよびイソプレンである。
【0021】
該スチレン−共役ジエンブロック共重合体におけるスチレン系結合単位の含有率は40〜95重量%の範囲であり、共役ジエン結合単位の含有率は60〜5重量%の範囲である。さらに好ましいスチレン系結合単位の含有率は50〜90重量%、特に好ましくは60〜85重量%の範囲であり、残余の成分は共役ジエン結合単位である。ここに、スチレン系結合単位とはスチレンおよびその他のビニル芳香族化合物からなる結合単位の和である。
該スチレン−共役ジエンブロック共重合体における共役ジエン結合単位の2重量%以上、45重量%未満はイソプレン結合単位でなければならない。好ましくは5〜45重量%、更に好ましくは10〜45重量%がイソプレン結合単位である。
共役ジエンブロックにおけるイソプレン結合単位の分布は、特に限定するものではない。均一な分布であっても、濃度傾斜した分布やブロック的な分布であっても構わない。また、一部のブロックあるいは一部の重合体分子に存在が偏っていても構わない。しかし、この場合でもスチレン系重合体樹脂としての共役ジエン結合単位における平均イソプレン含有率が上記の範囲になければならない。
【0022】
共役ジエン単位のイソプレン結合単位が2%重量未満では、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とスチレン−共役ジエンブロック共重合体の相溶性が乏しくなる。このため加工条件にもよるが、樹脂の相分離あるいは不均一化が起こり、得られるフィルムに不均一な樹脂組成のスポットあるいはライン状のムラが発生し、光沢が低下し、熱収縮フィルムとした場合にその熱収縮性が低下して好ましくない。
共役ジエン単位のイソプレン結合単位が45重量%以上でも、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体とスチレン−共役ジエンブロック共重合体の相溶性は優れ、スポットあるいはライン状のムラの発生は極めて少なく維持される。しかし、得られるシートやフィルムの強度性能、例えば耐折強度や引っ張り破断強度及び破断伸びが著しく低下して好ましくない。
該スチレン−共役ジエンブロック共重合体の数平均分子量は5万〜40万でなければならない。好ましくは6万〜30万、さらに好ましくは7万〜20万の範囲である。分子量が低過ぎると、得られるスチレン系重合体樹脂の機械的強度が低下して好ましくない。また分子量が高過ぎると加工性や、重合体成分の混合分散性が低下して、均一なスチレン系重合体樹脂が得られず、好ましくない。
【0023】
該スチレン−共役ジエンブロック共重合体は公知の方法により製造できる。例えば、炭化水素溶媒中で、有機リチウム開始剤を用い、バッチプロセスあるいは連続重合プロセスで、スチレン系単量体および共役ジエン単量体を順次ブロック共重合することにより得られる。または共重合後、リチウム活性末端をカップリング反応することによりラジアル構造にブロック共重合体化することもできる。スチレン−共役ジエンブロック共重合体の具体的製造法としては、例えば、特公昭45−19388号公報、特公昭47−43618号公報の技術を挙げることができる。
重合時に利用できる溶媒は、基本的に有機リチウム開始剤に対して不活性で、単量体および生成重合体を溶解できる炭化水素溶媒であって、重合時に液状を保ち、重合後の脱溶媒工程で脱揮除去が容易な溶媒が挙げられる。例えばC5〜C9の脂環式炭化水素溶媒、C5〜C9の脂肪族炭化水素およびC6〜C9の芳香族系溶媒が挙げられる。特にC5〜C9の脂環式炭化水素溶媒が好ましく利用できる。具体的にはシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロヘキセンおよびこれらの混合物等が挙げられる。また、エーテル化合物や第3アミン化合物の混合は、有機リチウムの単量体に対する重合活性を改善できる。重合溶媒の使用量は、好ましくは単量体1Kg当たり0.1〜3Kgの範囲である。より好ましくは0.5〜2.0Kg、特に好ましくは0.67〜1.5Kgの範囲である。
【0024】
重合温度は好ましくは0〜130℃の範囲で制御する。より好ましくは10〜120℃、特に好ましくは20〜110℃の範囲で制御する。バッチプロセスの重合温度は、一般に各ブロックの重合が断熱的に昇温しながら重合することになるが、この温度範囲で制御することが好ましい。重合温度が極度に低いと反応速度が低下して実用性がない。また、重合温度が極度に高いと、リビング活性末端が失活してスチレン−共役ジエンブロック共重合体のブロック構造が不完全となり、得られるスチレン系重合体樹脂の耐衝撃性等の性能が低下して好ましくない。
重合終了後、該スチレン−共役ジエンブロック共重合体は、含有する未反応単量体や重合溶媒を脱揮、除去することにより、重合体が回収される。未反応単量体や重合溶媒の脱揮、除去の方法は、特に限定するものではない。ダブルドラムドライヤー、水に分散させてのスチームストリッピング、ベント付押出機、フラッシュタンク等の既存スチレンの重合体やゴムの製造で公知の方法が利用できる。
残存する単量体や溶媒の量や揮発性にもよるが、一般には温度を100〜250℃、好ましくは120〜200℃、真空度は好ましくは0〜常圧、さらに好ましくは100Pa〜50KPa にて揮発性成分を脱揮除去する。複数の脱揮除去装置を直列に接続する方法は高度な脱揮に効果的である。また、例えば1段目と2段目の間に水を添加して2段目の脱揮能力を高める方法も、好ましく利用できる。
【0025】
本発明のスチレン系重合体樹脂を構成する(C)成分は前記(A)あるいは(B)のスチレン系重合体に相溶な重合体である。具体的にはスチレン、あるいはスチレンと他のビニル芳香族単量体との共重合体、耐衝撃性ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、石油系樹脂等が挙げられる。
本発明のスチレン系重合体樹脂は、(A)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(B)スチレン−共役ジエンブロック共重合体、更に必要により(C)前記(A)あるいは(B)のスチレン重合体に相溶な重合体から構成されるが、必ずしもこれに限定するものではない。例えばスチレン系樹脂において使用が一般的な各種添加剤を、公知の作用効果を達成するために添加することもできる。例えば滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤等を、同様な効果を達成するために添加することができる。
また更に用途にもよるが、例えばフィルムに使用する場合、フィルム用途で一般的な添加剤である帯電防止剤、防曇剤、無機微粉体等を混合してもよい。
【0026】
酸化防止剤として、フェノール系またはフェノールアクリレート系〔例えば:2−tert−ブチル−6(3′−tert−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートおよびこれ等の誘導体がある〕が好ましい。上記化合物に加え燐系の酸化防止剤〔例えば:トリ(2,4−ジ−tert−ブチル)−フェニルフォスファイト,トリ(4−ノニル)−フェニルフォスファイト等〕を使用するのがより好ましい。更に上記2種のタイプに加え、イオウ含有系の酸化防止剤を加えるのが良い場合が多い。またこれ等はそれぞれ単独に使用しても良いし、組み合わせても良い。
各酸化防止剤の添加量は、混合樹脂100重量部に対してそれぞれ0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜3.0重量部、より好ましくは0.10〜2.0重量部、更に好ましくは0.2〜1.0重量部である。0.01重量部未満では樹脂の熱劣化(例えば、架橋や分子量低下等)の防止作用が発現せず、また5.0重量部を超える分散不良、強度低下、透明性の低下、コスト高等の問題が起こり、好ましくない。
【0027】
帯電防止剤としては、アミン系、アミド系のものが好ましい。例えばアミン系として、ヒドロキシエチルアルキルアミンおよびその誘導体、アミド系としてはヒドロキシエチル脂肪酸アミドおよびその誘導体等が好ましく利用できる。
帯電防止剤の添加量は、樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜3. 0重量部、より好ましくは0.4〜2.0重量部である。0.1重量部未満では帯電防止効果が現れ難いし、5重量部を超えると成型体表面の光沢が失われ、印刷適性が低下を来す等の問題がある。
また、可塑剤としては、DOP、DOA、ATBC、DBS等の酸エステル類、ミネラルオイルのごとき流動パラフィン類を0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%加えても良い。
【0028】
本発明のスチレン系重合体樹脂は、
(A)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体 5〜95重量%、
(B)スチレン−共役ジエンブロック共重合体5〜95重量%および
(C)前記(A)あるいは(B)のスチレン重合体に相溶な重合体 0〜30重量%から成る。
(A)成分の組成は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜85重量%、特に好ましくは50〜80重量%の範囲である。用途にもよるが、例えば熱収縮フィルム等においては、5重量%未満では混合効果が発現せず、スチレン系重合体樹脂の剛性が不足し、熱収縮フィルム等の用途により好ましくない。また、95重量%を超えるとフィルムが硬くて脆くなり好ましくない。
(B)成分の組成は、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは20〜50重量%の範囲であり、上述の(A)成分単独の欠点である脆さ、柔軟性、伸び等の性能を顕著に改善できる。
(C)成分の組成は、好ましくは0〜20重量%、更に好ましくは0〜10重量%の範囲である。(C)成分の混合により、軟化温度、剛性および流動性のバランスを改善でき、目的に応じてスチレン系重合体樹脂の性能を調整できる。
【0029】
本発明のスチレン重合体樹脂は、各重合体成分の混合方法は特に規定しない。各種加工機器、例えばニーダー、バンバリーミキサー、押出し機を用いた機械的混合、溶媒に溶かして、あるいは重合完了後の重合体溶液での溶液混合が利用できる。
本発明のスチレン系重合体樹脂は、ASTM―D1525法に準じて荷重1kg、昇温スピード20℃/分で測定されるビッカット軟化温度は50〜99℃の範囲でなければならない。好ましくは55〜95℃の範囲、特に好ましくは60〜90℃の範囲である。例えば熱収縮フィルム用途では、低温での収縮性を重視する場合は、ビッカット軟化温度は70℃程度のものが良好であり、また比較的高温での収縮性を必要とする場合は90℃程度のものが良好である。実際には使用条件に合わせて最適なビカット軟化温度の重合体樹脂を選ぶのが好ましい。
軟化温度が余りに低いと、延伸シートおよびフィルムを常温保管中に寸法変化、収縮力低下現象等を発生するため実用的でなくなり、また強度が低下して好ましくない。一方、軟化温度が余りに高いと、重合体の柔軟性が低下して脆くなり、また低温加工性が著しく低下する。この場合加工温度を高くすれば、シーティングや延伸およびこれらの二次成形加工は可能となるが、加熱時の適正温度幅が狭く、加工操作が難しくなり好ましくない。
【0030】
本発明のスチレン系重合体樹脂は、1mm厚平板の全光線透過率を75%以上に限定する。好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上である。本発明のスチレン系重合体樹脂の大きな特長の一つは透明性にある。全光線透過率が75%未満では、本発明の目的とする透明樹脂用途に使用出来ない。
優れた透明性を発現するには、各重合体各成分が微分散していること、および重合体各成分の屈折率が近いことが望まれる。特に重合体の(A)成分および(B)成分の分散粒子系は、重量平均の長径は好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm、特に好ましくは1μm以下である。また、両成分の屈折率の差異は好ましくは0.01以下、更に好ましくは0.005以下、特に好ましくは0.002以下である。
本発明のスチレン系重合体樹脂は、シートおよびフィルムあるいは更に二次加工して、各種包装、容器材料、ブリスターキャアップ、熱収縮ラベル材料に特に好ましく使用できる。しかし、本発明のスチレン系重合体樹脂の利用はこれらに限定するものではない。本発明のスチレン系重合体樹脂の達成する特長を発揮できる各種用途に広く使用できる。例えば、射出成形やインジェクションブロー成形等からなる食品容器、日用品、雑貨、OA機器部品、弱電部品等に使用することもできる。
【0031】
本発明のスチレン系重合体樹脂を成型、延伸加工してなる熱収縮フィルムは、その特性およびフィルム製法を限定するものではない。一般的な熱収縮フィルムの延伸倍率は主延伸方向に2.0〜10.0倍、好ましくは2.5〜8.0倍で、同様に対直角方向には1.1〜2.5倍、好ましくは1.2〜2.0倍の範囲である。また好ましい延伸倍率比は前者/後者比で1.8〜9.1、より好ましくは2.0〜6.7の範囲である。該スチレン系重合体樹脂の軟化温度にも依存するが、延伸温度は一般に60〜150℃の範囲である。好ましくは70〜120℃の範囲である。
本発明の熱収縮フィルムは落錘衝撃強度が少なくとも5kg・cmであることがフィルムの実用性能に重要で、好ましくは10kg・cm以上、より好ましくは20kg・cm以上、更により好ましくは30kg・cm以上である。5kg・cm未満では、包装機械で繰り出した(引張り)ときフィルム切れが発生し好ましくない。
【0032】
熱収縮フィルムの層構造も特に限定するものではない。本発明のスチレン系重合体樹脂は多層フィルムの少なくとも1層として利用すれば良い。その場合、同種(本発明のスチレン系重合体樹脂)を組み合わせた多層フィルム、または異種(本発明のスチレン系重合体樹脂以外のもの)との組み合わせによる多層フィルムの少なくとも1層(表層あるいは内部層)として利用しても良い。
また、フィルムの厚みは、その用途により異なるが通常5〜800μで、好ましくは10〜500μ、より好ましくは20〜300μの範囲である。
熱収縮フィルムへの成形加工方法は特に限定するものではない。同時2軸や逐次2軸など一般的に使用されている設備、例えばテンター延伸法、バブル延伸法、ローラー延伸法等で代表される延伸成膜設備等での延伸加工が利用できる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例および比較例をもって具体的に説明する。この説明は例であって何ら本発明を限定するものではない。
各種性能評価項目の評価手法および意義は、次の評価方法、評価尺度に基づく。特に断りがない限り、評価するフィルムは成膜1日から3日の間、23℃で経過したものを用いた。
ビカット軟化温度は、樹脂構造や樹脂組成で調整可能な性能であって、必ずしも本発明の作用効果を示すものではない。
1.ビカット軟化温度:
ASTM―D1525法に準じて荷重1kg、昇温スピード20℃/分で測定。
性能評価基準
2.熱収縮フィルム仕上性:
1.5リットルのPETボトル(30℃の水が充填された、最大径91mm、高さ310mmの円筒こけし状容器)に、筒状にした熱収縮フィルム(折り幅148mm、高さ90mm)をセットしたものを、熱風式加熱装置で内温度135℃、滞留時間10秒で熱収縮させ、熱収縮したフィルムがボトルにフィットする状態を評価した。
熱収縮させてボトルにセットされたフィルムを指先で円周方向に軽く回転させてその動きの程度をみる。(10個ずつ評価して1つでも下記のものがあればそのランクとする)。
◎:ボトルとの間の隙間がなく、全く回転しない。
○:僅かに隙間があるが、回転しない。
△:僅かに回転(1mm以内)する。
×:緩くてクルクル回転する。
【0034】
3.引張破断強度:
ASTM−D882に準拠して主延伸方向の対直角方向の値を測定した。(n=5の平均値)
フィルムの機械的強度を判定するもので、引張破断強度の高いものが優れる。
◎:3.5kg/mm2 以上。
○:3.0〜3.5kg/mm2 未満。
△:2.5〜3.0kg/mm2 未満。
×:2.5kg/mm2 未満。
4.引張破断伸度:
フィルムの伸び易さを成膜1日後のフィルムで測定した。ASTM−D882に準拠して主延伸方向の対直角方向の値を測定した。(n=5の平均値)。
引張破断伸度が高くて経時低下しないものが、包装機械でのフィルム切れがすくなく、また印刷工程での溶剤や加熱等による品質低下がなく優れている。引張破断伸度は高いのが良い。
◎:170〜210%
○:150〜170%未満
△:120〜150%未満
×:120%未満
【0035】
5.耐折強度:
ASTM−D2176に準拠して荷重2kgで主延伸方向の対直角方向の値(2枚折りで重ねた状態)を測定した。(n=5の平均値で小数点以下は四捨五入)
フィルムは折り曲げて筒状にして使用するので、折り曲げた時の折り目に傷が付いて切れ難いかどうか判定する。切れるまでの折り曲げ回数の多いものが優れる。
◎:101回以上。
○:31〜100回。
△:11〜30回。
×:10回未満。
6.自然収縮率:
主延伸方向のフィルム長さL0 に対する30℃で30日間オーブン中に保管後の同フィルム長さL1 を用いて、次式で計算し、寸法収縮率Lを求める。
フィルムの例えば流通時の保管状態(雰囲気温度、保管時間)によって、フィルムの寸法変化(収縮)は、サイズが小さくなって容器にはまり難くなるなどのトラブルの原因になるので、寸法変化率は少ないことがフィルムの品質上重要である。
L(%)=(L0 −L1 )×100/L0
◎:1.0%未満
○:1.0〜2.0%未満
△:2.0〜5.0%未満
×:5.0%以上
【0036】
7.光学特性:
フィルムの透明性や光沢は、フィルムの商品価値を大きく左右する。透明で、光沢の良いものが優れている。HAZEは小さい値、GLOSSは大きい値ほど良い。
a.透明性:
1mm厚のシートを射出成形し、その全光線透過率を求めた。
◎:全光線透過率85%以上
○:同80〜85%
△:同75〜80%
×:75%未満
b.光沢:
ASTM−D2457(角度45°)に準拠して延伸フィルムのGLOSS値(%)測定した。(n=5の平均値)
◎:165%以上
○:125〜165%未満
△:100〜125%未満
×:100%未満
8.総合評価:
上記の2〜7a、7bまでの測定評価の7項目の結果をもとに熱収縮性硬質フィルムとしての総合判定を実施。判定基準は次の通り。
◎最も良いレベル:各評価項目で◎または○。
○良いレベル:△が1つ以下で、×がない。
△不合格レベル:△が2以上で、×がない。
×不合格レベル:×がある。
総合判定が◎と○までのランクにあるものは実用上合格のレベルであり、◎は特に品質が優れる。
【0037】
〈重合体製造例1(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造)〉
第1重合槽として攪拌機を備えた完全混合型重合槽(容量4リットル)、第2重合槽として攪拌機を備えた層流型重合槽(容量2リットル)を2基直列に連結した重合装置を準備した。第1重合槽と第2重合槽との間には攪拌機を備えたラインミキサーを挿入した。
第1重合槽に、スチレン73.6重量%、アクリル酸n−ブチル18.4重量%、エチルベンゼン8重量%、有機過酸化物として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン300ppmを含む原料溶液を0.9リットル/hrの速度で、重合槽上部に供給し、下部より抜き出した。
次いで、前記に同組成の原料溶液0.1リットル/hrを追加供給し、ラインミキサーにて混合した後、第2重合槽を上部より下部に通過させた。第1重合槽の内温を105℃、第2重合槽の内温を120〜140℃に制御した。
得られた重合溶液は二段ベント付き脱揮押出機に連続的に供給し、未反応単量体および溶媒を脱揮して、重合体を得た。脱揮押出機は重合体温度を200〜240℃、真空度を20torrに制御した。得られた重合体の構造を表1に記載した。
〈重合体製造例2〜4(スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造)〉
スチレンと(メタ)アクリル酸エステル単量体の組成比、(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類を変え、その他は重合体製造例1と同様に実施した。得られた重合体の構造は表2に記載した。
【0038】
〈重合体製造例5(スチレン−共役ジエンブロック共重合体製造)〉
攪拌器を備えた容量100リッターの反応器に、溶媒としてシクロヘキサン50Kgを仕込み、その後50℃に保ちながら、重合開始剤であるセカンダリーブチルリチウム9.8ミリモル、スチレン単量体3.6Kg、次いでブタジエン1.68Kgとイソプレン単量体1.12Kgの共役ジエン単量体混合液、さらにスチレン単量体3.6Kgを順次仕込み、各ブロックを50℃〜80℃の温度範囲で、各1時間、2時間および1時間かけて重合した。
得られた重合体溶液はリチウム量の10倍当量のメタノールを添加することによりアニオン活性末端を失活させた。その後、重合体をメタノールにて沈殿分離した後、重合体100g当たり、0.05gの酸化防止剤を加えた後、ベント付き脱揮押し出し機を用い、160℃で揮発成分を除去した。
この様にして得られた重合体は、A−B−Aタイプのトリブロック構造を有し、共役ジエン結合単位におけるイソプレン結合単位の割合は40重量%であり、重量平均分子量12.3万、数平均分子量11.2万、スチレン含有率72重量%であった。
【0039】
〈重合体製造例6〜10(スチレン−共役ジエンブロック共重合体製造)〉
共役ジエン中のブタジエンとイソプレンの割合を調整し、他の条件は重合体製造例5と同様にして重合、脱揮処理した。得られた重合体は、A−B−Aタイプのトリブロック構造を有した。得られた重合体の構造は表1に記載した。
〈重合体製造例11(スチレン−共役ジエンブロック共重合体製造)〉
攪拌器を備えた容量100リッターの反応器に、溶媒としてシクロヘキサン50Kg、ブタジエン単量体0.36Kg、スチレン単量体3.6Kgおよびノルマルブチルリチウム9.4ミリモルを仕込み、徐々に昇温しながら2時間かけて重合した。その後一度30℃まで冷却し、次いでブタジエン単量体1.32Kgおよびイソプレン単量体1.12Kgを仕込み、徐々に昇温しながら1時間かけて重合、更にスチレン単量体3.6Kgを仕込み、再度昇温しながら2時間かけて重合した。
他の条件は重合体製造例5と同様にして重合、脱揮処理した。得られた重合体は、B−A−B−Aタイプのスチレン分布が一部傾斜のテトラブロック構造を有した。得られた重合体の構造は表1に記載した。
【0040】
〈重合体製造例12(スチレン−共役ジエンブロック共重合体製造)〉
攪拌器を備えた容量100リッターの反応器に、溶媒としてシクロヘキサン50Kgを仕込み、その後50℃に保ちながら、重合開始剤であるセカンダリーブチルリチウム28ミリモル、スチレン単量体7.2Kgを1時間かけて重合。次いでブタジエン1.68Kg、イソプレン単量体1.12Kgを仕込み、徐々に昇温しながら2時間かけて重合した。重合完結後、8ミリモルのトリクロルメチルシラン8ミリモルを添加、混合し、アニオン末端をカップリングした。
得られた重合体は、微量の未反応A−Bジブロック構造体を含む、(A−B)3 −Siタイプのラジアルのブロックポリマー構造をであった。他の条件は重合体製造例5と同様にして重合、脱揮処理した。得られた重合体の構造は表2に記載した。
【0041】
【実施例1〜3】および
【比較例1〜3】
本発明のスチレン系重合体樹脂の(A)成分であるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下(A)成分と略する)として重合体製造例1で得た重合体を用いた。本発明のスチレン系重合体樹脂の(B)成分(以下(B)成分と略する)であるスチレン共役ジエンブロック共重合体、および比較例として共役ジエン部のイソプレン含有率が本発明の構造を外れるスチレン共役ジエンブロック共重合体を用いた。これらの重合体は重合体製造例5〜10で得た。
(A)成分70重量部および(B)成分30重量部に、添加剤混合物(フェノールアクリレート系の酸化防止剤(2−tert−ブチル−6(3′−tert−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート)を0.5重量部、燐系の酸化防止剤(トリ(2,4−ジ−tert−ブチル)−フェニルフォスファイト)を0.2重量部、さらに他の燐系の酸化防止剤(トリ(4−ノニル)−フェニルフォスファイト)を0.3重量部、アミン系の帯電防止剤(ヒドロキシエチルアルキルアミン)0.7重量部を含む)を添加し、ブレンダーにて混合した。
【0042】
この混合物を押出機中で190℃の温度で混合溶融しTダイより押出し均一なシートに成形した。更に、該シートをロール延伸機を用い、90℃でMD方向(シート引出し方向)に1.6倍延伸した後、テンター延伸設備を用い、オーブン温度85℃でTD方向(ロール平行方向)に6.0倍に延伸して50μの逐次二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルム特性および樹脂特性について評価した。その結果を表1に示す。表1の比較例1、実施例1〜4および比較例2は、(B)成分であるスチレン−共役ジエンブロック共重合体共役ジエン部のイソプレン結合単位含有率の樹脂性能への影響を示す。
イソプレン結合単位が少ないと、熱収縮フィルム仕上性やフィルム光沢の顕著な低下が認められる。反面、イソプレン結合単位が多過ぎると、樹脂の強度に関わる性能が大きく低下する。それ故、樹脂性能のバランスにおいてイソプレン結合単位の含有率に適正範囲があることが明らかである。
また、実施例3と比較例1で得たTダイ押出シートの透過型電顕写真を、それぞれ図1および図2に示す。イソプレン共重合(実施例3)によって、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体をマットリックスとし、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の分散が、イソプレンなしの例(比較例1)に比較して、顕著に微細でかつ均一であることが分かる。このことは分散粒子が安定であることを示し、加工時の樹脂の滞留や混合不足による流れムラを起こし難いことを示すものである。
【0043】
【比較例4】
比較例4は、スチレン−共役ジエンブロック共重合体を含まない例である。この様な樹脂は、熱収縮フィルムとしての基本特性に欠けるものである。
【実施例4〜6】
(A)成分におけるスチレンと(メタ)アクリル酸エステル単量体の組成比、(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類を変え、その他は実施例3と同様に行った実施例である。各種の(メタ)アクリル酸エステルを用いても、得られるスチレン系樹脂材料のビカット軟化温度等を調整することによって、優れた性能を発現できることを示すものである。
【0044】
【実施例7〜10】
(B)成分の含有量およびブロック構造を変えた以外は実施例1と同様に行った実施例である。
(B)成分の各種構造で得られるスチレン系樹脂材料は優れた性能を発現できることを示すものである。
【実施例11】
(C)成分として、石油系炭化水素樹脂として、テルペン系水素付加樹脂を5重量%添加した例である。テルペン系水素付加樹脂の添加によりビカット軟化温度の調整やフィルム光沢の向上が認められた。
【比較例5】
実験室で重合した耐衝撃ポリスチレン(ポリブタジエンゴム18重量%含有)を用いた比較例である。HIPSはある程度透明性の改良されたグレードも開発されてはいるが、それでもフィルムの透明性は不十分で、光沢性能に劣るものである。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【発明の効果】
本発明のスチレン−ブタジエンブロック共重合体とスチレン−(メタ)アクリル酸エステル(例えばアクリル酸ブチル)共重合体の組成物であるスチレン系重合体樹脂は透明性、低温収縮性、腰の強さ、寸法収縮性、強靱性等における優れた特長を維持し、かつフィルム加工時の流動ムラの発生や、フィルム表面が非平滑化を顕著に解決するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3で得たTダイ押出シートの透過型電顕写真である。
【図2】比較例1で得たTダイ押出シートの透過型電顕写真である。
Claims (5)
- (A)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体 5〜95重量%
(B)スチレン−共役ジエンブロック共重合体 95〜5重量%
(C)前記(A)あるいは(B)のスチレン系重合体に相溶な重合体 0〜30重量%の組成物であるスチレン系重合体樹脂。
ここに、(A)成分のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体が下記(a)および(b)項の特徴を有し、(B)成分のスチレン−共役ジエンブロック共重合体が下記(c)〜(f)項の特徴を有し、更にスチレン系重合体樹脂として下記(g)および(h)項の特徴を有する。
(a)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する結合単位がスチレン系結合単位60〜97重量%と(メタ)アクリル酸エステル系結合単位40〜3重量%とから成り、
(b)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量が15万〜60万の範囲であり、
(c)スチレン−共役ジエンブロック共重合体のブロック構造が、少なくとも2つのスチレン系重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン系重合体ブロックから構成され、
(d)スチレン−共役ジエンブロック共重合体を構成する結合単位がスチレン系結合単位40〜95重量%と共役ジエン結合単位60〜5重量%から成り、
(e)スチレン−共役ジエンブロック共重合体を構成する共役ジエン結合単位におけるイソプレン結合単位の含有率が2重量%以上、45重量%未満であり、
(f)スチレン−共役ジエンブロック共重合体の重量平均分子量が5万〜40万の範囲であり、
(g)スチレン系重合体樹脂のビカット軟化温度が50〜99℃の範囲であり、
(h)スチレン系重合体樹脂の1mm厚平板の全光線透過率が75%以上である。 - (A)スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル結合単位の70重量%以上がアクリル酸n−ブチルであることを特徴とする請求項1記載のスチレン系重合体樹脂。
- (B)スチレン−共役ジエンブロック共重合体を構成する共役ジエン結合単位が、ブタジエン結合単位およびイソプレン結合単位からなることを特徴とする請求項1又は2記載のスチレン系重合体樹脂。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系重合体樹脂を成形後、延伸加工してなる熱収縮フィルム。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系重合体樹脂をシート加工後、再成形加工してなる透明包装容器。
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