JP3816059B2 - スチレン系重合体の製造方法およびスチレン系重合体樹脂 - Google Patents

スチレン系重合体の製造方法およびスチレン系重合体樹脂 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマーを一定量含有するスチレン系重合体の製造方法、および得られるスチレン系重合体を主体とするスチレン系重合体樹脂に関する。
該スチレン系重合体樹脂は、熱安定性および加工安定性に優れ、リワーク(再加工)に対する耐性が顕著に優れる。この加工安定性、低温下の成形および延伸等の加工性、およびスチレン系樹脂の本来の特長である透明性を生かし、包装フィルム、熱収縮フィルム、包装容器、あるいは更に各種成形用途に好ましく使用できる。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系重合体樹脂は、その優れた成形加工性と樹脂性能のバランスにより、電気製品等の各種工業材料、雑貨、緩衝材、断熱材および食品容器等に広く用いられる。近年はシートあるいはフィルム状に加工して、あるいは更に二次加工して、食品包装および食品容器のラベル等に用いられるようになった。
この種の用途においてシートおよびフィルムは、一般に表面が平滑、透明で厚み斑が少なく、強度特性に優れたものが望まれる。スチレン系重合体樹脂は、一般に未延伸のシートおよびフィルムでは強度的に使いものにならないが、延伸によって優れた透明性、表面光沢を有する、強靱で腰に強いシートおよびフィルムにすることができる。これを達成するために、低温でシーティングや延伸、必要により更には低温で二次加工する方策がとられる。
【0003】
しかし、スチレン系重合体樹脂の代表であるポリスチレン樹脂は、軟化温度がやや高く、また硬くて脆い性質のため、シートまたはフィルムへの加工性に劣る。具体的にはシーティングや延伸加工、更には低温での二次加工において、ポリスチレン樹脂は流動性不足から厚み斑を来たし、シートが破断し易い等、加工性が劣る。それ故、強度特性に優れた高延伸倍率のシートおよびフィルムを得ることは極めて難しい。
この種の用途において、ポリスチレン樹脂の欠点を改善したスチレン系単量体と、アクリル酸エステル単量体またはメタアクリル酸エステル単量体(以後、(メタ)アクリル酸エステル単量体と略す。)からなる共重合体が既に知られている。
【0004】
スチレンに(メタ)アクリル酸エステルを共重合することにより、軟化温度を調整でき、且つポリスチレン樹脂の硬くて脆い欠点を改善できる。更にスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体を成形、加工して得られるシートあるいはフィルムは強度特性にも優れることが、既に知られている。
具体的には、「ビニル芳香族炭化水素系組成物」に関する技術において、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体等((メタ)アクリル酸エステル単量体を含む。)の共重合体と、スチレン−共役ジエンのブロック共重合体(以後、スチレン系ブロック共重合体と略す)との組成物において、フィルムの冷間延伸加工性、延伸特性および耐クラック性等に優れるものが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
「低温収縮フィルムおよびその製造方法」に関する技術において、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸系誘導体等の共重合体と、スチレン系ブロック共重合体との組成物を一軸に延伸した低温収縮性フィルムが、低温収縮性能、低温収縮応力、腰硬さ、透明性、耐クラック特性、寸法安定性等に優れることが開示されている(特許文献2参照)。
また、「スチレン系共重合体組成物」に関する技術において、具体的にはスチレンとアクリル酸n−ブチルエステルの共重合体と、限定された構造あるいは特性を有するスチレン系ブロック共重合体との重合体組成物のシートおよびフィルムが、物性バランスに優れることが開示されている(特許文献3参照)。
【0006】
しかし、これらの重合体組成物に用いられたスチレン系重合体は、シートおよびフィルムの物性バランスに優れるものの、使用条件によっては熱的安定性および加工安定性に問題を有する。特に、近年のコスト削減および環境問題に対する意識の高まりによって、産業廃棄物削減の要求は強く、成形加工工程で発生する成形クズのリワークが必須になっている。このため、リワークに耐える樹脂の加工安定性要求が強い。(ここで言うリワークとは、成形不良品やシート成形時にトリミングされるミミ等の破断片樹脂等のリサイクルである。)
この点で、従来のスチレン系重合体の加工安定性は必ずしも十分でなかった。
特に、本発明が一つの目標とするシートおよびフィルム用途においては、樹脂劣化により発生する異物、着色あるいは流れムラは、極めて目立つもので、樹脂リワークの致命的欠点となる。それ故、バージン樹脂に選定された少量のリワーク樹脂を混合する等の対応が現状技術であった。
【0007】
スチレン系重合体の熱的安定性および加工安定性問題が、樹脂中に存在する環状スチレンオリゴマーに大きく起因するとの考え方がある。具体的には、スチレン系重合体中に存在する環状オリゴマーが熱的に分解してラジカルが発生し、これが重合体鎖の切断や架橋を引き起こすことが劣化原因とする考え方である。
この解決の方策として、アニオン重合法により得られるスチレン系重合体を用いる技術が提案されている。アニオン重合法により得られるポリスチレン樹脂は環状スチレンオリゴマーを含まず、極めて優れた安定性を有するとされている。
(例えば、特許文献4参照)。しかし、コスト問題もあってか、工業的な実施には至っていない。
【0008】
「成形性良好なスチレン系樹脂」に関する技術において、単量体、ダイマー、
トリマーおよび溶媒の総量が0.8重量%以下で、その構成単位がスチレン系単量体80〜99.5モル%、(メタ)アクリル酸エステル単量体0.5〜20モル%、かつ限定された溶液粘度を有するスチレン系樹脂は、成形条件幅が広く、
成形性と強度のバランスに優れるとされている。該樹脂の製造方法は塊状重合法、溶液重合法、縣濁重合法および乳化重合のいずれの方法も用いることができるとしている。(特許文献5参照)
また、オリゴマーの少ない点では、縣濁ラジカル重合法のスチレン系重合体が公知である。媒体に水を用いて低目の温度で重合することで、スチレンダイマーおよびスチレントリマーの含有量が400ppm以下のスチレン系の樹脂が開示されている。更に、共重合単量体として50重量%未満の(メタ)アクリル酸エステル類の使用、溶出オリゴマーの少ない点を生かし食品包材用途への利用が開示あるいは提案されている。(特許文献6参照)。
【0009】
未反応単量体1,000ppm以下で、スチレン系単量体50〜80重量%と(メタ)アクリル酸エステル単量体20〜50重量%からなる共重合体で、かつスチレンダイマーとスチレントリマーの合計量が1,000ppm以下のスチレン系樹脂が、加工時の生産性および成形品の外観に優れ、臭気が少なく、食品包装容器等の用途に好適とされている。(特許文献7参照。)
しかし、これらの従来技術の実施例で開示された製造方法は縣濁ラジカル重合法に限定されている。縣濁重合法は通常バッチプロセスに限定され、かつ重合時に分散剤の使用を避けられない。このためか、リワーク等の加工履歴による樹脂の着色または吸湿による白化、コスト的不利等の問題があった。
【0010】
【特許文献1】
特開昭62−025701号公報
【特許文献2】
特開平03−012535号公報
【特許文献3】
特開2001−002870号公報
【特許文献4】
特開平09−111073号公報
【特許文献5】
特開平04−239551号公報
【特許文献6】
特開2000−159920号公報
【特許文献7】
特開2001−026619号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はスチレン系重合体樹脂の熱安定性、加工安定性およびリワーク特性を顕著に改善すると共に、シートおよびフィルム用樹脂としての優れた特性を併せ持ったスチレン系重合体樹脂の提供、およびその効率的な製造方法の提供を課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題解決について鋭意検討の結果、限定された重合条件下に、限定された構造および特性を有するスチレン系重合体を重合し、この重合体を用いることによって、従来技術の課題を改善できることを見出し、本発明を達成した。
本発明は、特許請求の範囲の請求項にも示すとおり、次の1)項および2)項に関するものである。即ち、
1) 二基以上の攪拌機を備えたタンクリアクターを直列に連結し、重合槽の一端から原料を連続的に供給し、他端より生成物を連続的に抜き出す連続プロセスの塊状あるいは溶液重合法で、5〜5,000ppmの有機ラジカル発生剤を開始剤に用い、スチレン系単量体を(メタ)アクリル酸エステル単量体の共存下に、重合温度を70〜150℃の範囲で重合してなり、下記(a)および(b)項に制御する、得られるスチレン系重合体が下記(c)〜(e)項の特徴を有することを特徴とするスチレン系重合体の製造方法。
(a)供給する単量体構成をスチレン系単量体60〜97重量%および(メタ)アクリル酸エステル単量体3〜40重量%の範囲とし、
(b)重合槽各部位における(メタ)アクリル酸エステル単量体濃度が、常に全単量体に対して1wt%を超える。
(c)スチレン系重合体の重量平均分子量が15万〜55万の範囲であり、
(d)スチレン系重合体が、スチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合 単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマーを、1,000〜10,000ppmの範囲で含有し、
(e)スチレン系重合体のビカット軟化温度が50〜99℃の範囲にある。
【0013】
2) 二基以上の重合槽を直列に連結し、重合槽の一端から原料を連続的に供給し、他端より生成物を連続的に抜き出す連続プロセスの塊状あるいは溶液重合法で、有機ラジカル発生剤を開始剤に用い、スチレン系単量体を(メタ)アクリル酸エステル単量体の共存下に重合して得られる、下記(a’)〜(d’)項の特徴を有するスチレン系重合体を主体とするスチレン系重合体樹脂。
(a’)スチレン系重合体の構成単位がスチレン系単量体60〜97重量%および(メタ)アクリル酸エステル単量体3〜40重量%の範囲であり、
(b’)スチレン系重合体の重量平均分子量が15万〜55万の範囲であり、
(c’)スチレン系重合体が、スチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマーを1,000〜10,000ppmの範囲で含有し、
(d’)スチレン系重合体のビカット軟化温度が50〜99℃の範囲にある。
ここに、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、アクリル酸エステル単量体およびメタアクリル酸エステル単量体から選ばれる単量体を意味する。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
スチレン系重合体の重合方法は、ラジカル重合法、アニオン重合法、配位アニオン重合法およびカチオン重合法が、技術的に公知である。この中で、本発明のスチレン系重合体の製造方法はラジカル重合法に限定する。
スチレン系重合体のラジカル重合法をプロセスから分類すると、塊状重合法、
溶液重合法、縣濁重合法および乳化重合法が公知であり、それぞれに特徴があって、工業的にも実施されている。また、ラジカル重合法を開始剤の面から分類すると熱ラジカル重合法、開始剤ラジカル重合法が公知である。
この中で、本発明のスチレン系重合体の製造方法は塊状および溶液の開始剤ラジカル重合に限定する。
【0015】
縣濁重合法は水中に単量体を分散させ、且つ開始剤を用いて重合する方法である。縣濁重合法は重合時の混合性や除熱性に優れるが、分散剤の添加が必要であり、分散剤が製品に混入する。また、縣濁重合法は通常バッチプロセスで実施される。それ故、コスト的に不利なこと等から、利用は限定されている。先に挙げた特開2000−159920号公報および特開2001−026619号公報の具体的開示は、縣濁重合技術に限定されている。
スチレン系重合体の塊状重合法と溶液重合法とは、それぞれ目的に応じて広く利用される。
【0016】
熱ラジカル重合法は、スチレン系単量体液を加熱して熱ラジカルを発生させ、
重合を開始させる方法で、低コストおよび不純物が入り難いことに特長を有する。これに対して、開始剤ラジカル重合法はラジカル開始剤を使用する。使用されるラジカル開始剤は、通常は熱的に分解してラジカルを発生する化合物で、有機過酸化物やアゾ化合物等が知られる。この方法ではラジカル開始剤の分解温度、
ひいては重合温度をある程度自由に設定できるとの特徴を有するが、開始剤コスト的にやや不利となる。
それ故、現在は不純物の混入が少ないこと、コスト的に有利なこと等により、
塊状の熱重合法が工業的に多用されている。この技術分類における有用性の差異は、工業的実施の少ないスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(スチレン系重合体と略す。)の製造においても同様と推量できる。
【0017】
先に挙げた特開昭62−025701号公報および特開平03−012535号公報におけるスチレン系重合体重合法の具体的開示は、熱ラジカル重合法に限定される。また、特開2001−002870号公報は開始剤ラジカル重合を具体的に開示しているが、バッチプロセスに関するものである。
特開平09−111073号公報は、その記載によれば、良好な透明性のスチレン系樹脂を得るためには、開始剤を用いた完全混合型反応基での重合が好ましい、としている。また、実施例の記載は一基の完全混合型重合槽を用いた重合に限定されている。
【0018】
完全混合型重合槽は、槽内の原料組成が完全に混合されて均一であるため、得られる重合体に組成分布がない。組成が均一な樹脂は屈折率の偏りがないため、
光散乱が少なく透明性に優れることは当然の帰結である。
完全混合型重合槽は上記の優れた特徴を有するが、工業的には大きな欠点を有する。一つはショートパスする供給原料が常にあることから、滞留時間に比して極端に転化率が上がらない点である。このことは、該公報の実施例が滞留時間6〜7時間の条件で、重合体濃度51〜52重量%(転化率52.6〜55.9重量%相当)あることからも判断できる。
しかし、重合反応を加速するため開始剤濃度を極端に上げることは、開始剤コストの点で不利なだけでなく、得られる重合体分子量の低下を来す。またショートパスした開始剤が脱揮工程に到達し、重合体鎖の切断や分解を引き起こすとの問題がある。
【0019】
これらの従来技術に対して、本発明は二基以上の重合槽を直列に連結し、重合槽の一端から原料を連続的に供給し、他端より生成物を連続的に抜き出す連続プロセスの塊状あるいは溶液重合法で、有機ラジカル発生剤を開始剤に用い、スチレン系単量体を(メタ)アクリル酸エステル単量体の共存下に重合してなり、下記(a)および(b)項に制御することを特徴とするスチレン系重合体の製造方法である。
(a)供給する単量体構成をスチレン系単量体60〜97重量%および(メタ)アクリル酸エステル単量体3〜40重量%の範囲とし、
(b)重合槽各部位における(メタ)アクリル酸エステル単量体濃度が、常に全単量体に対して1wt%を超える。
【0020】
本発明のスチレン系重合体の製造方法は、スチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマーを一定量含有するスチレン系重合体を、高効率に製造することを一つの特徴とする。
即ち、重合体に含まれるスチレン結合単位のみから構成される環状スチレントリマー(以降は単に「環状スチレントリマー」と略す)の生成を抑制し、大半の環状トリマーをスチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマー(以降は「共反応環状トリマー」と略す)にすることを一つの特徴とする。ここで言う環状トリマーとは、分子中にテトラリン骨格を有するトリマーを意味する。
【0021】
このようにして得られるスチレン系重合体は、熱安定性および加工安定性が顕著に向上する。この作用効果の発現機構は、必ずしも明確に解明できていないが、次のように考えている。
スチレン系重合体の重合時、スチレン分子(ジエン構造)と他のスチレン分子(オレフィン構造)とはディールスアルダー型反応により環状ダイマー、例えば1−フェニル−2,3−ジヒドロナフタレンを生成する。この種の環状ダイマーは不安定でラジカルを生成し易く、スチレン重合体の安定性低下の大きな原因となる。
【0022】
本発明では重合時に少量の(メタ)アクリル酸エステルを共存させる。これが環状ダイマーに高い反応速度で付加して、(メタ)アクリル酸エステル1分子あるいは2分子が付加した安定なトリマーを形成する。それ故、スチレン系重合体中にはスチレン3分子からなるトリマーは、仕込み単量体組成に比して極めて少なくなる。
この結果、本発明の製造方法で得られるスチレン系重合体は、従来のスチレン重合体に比して驚くべき熱安定性および加工安定性を発現する。スチレン系重合体に含まれる環状折オリゴマー構造の限定、特に環状トリマー構造の限定による作用効果およびその制御方法は、従来は全く知られていなかった。
ここで言う環状オリゴマーとは、スチレン結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位の合計2〜3結合単位から構成されるものである。これらの環状オリゴマーの構造式は、それぞれが立体異性体を有し、ガスクロマトグラフィー等での分析時にはいくつかの成分が分離、観測される。
【0023】
次に、環状トリマーの具体例を挙げる。ここではスチレン系単量体の具体例としてスチレン、(メタ)アクリル酸エステルの例としてアクリル酸のアルキルアルコールエステルからなるトリマーを例にするが、これらは例であってこれらの構造に限定されるものではない。他のスチレン系単量体、メタアクリル酸エステルを用いた場合、それぞれに対応するオリゴマーが生成することは当然である。
スチレンの3結合単位からなる環状トリマーの主な化合物の例として1−フェニル−4−(1−フェニルエチル)テトラリン、1−フェニル−4−(2−フェニルエチル)テトラリン、1,3,5−トリフェニルシクロヘキサンが挙げられる。
【0024】
スチレン系結合単位およびアクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する共反応環状トリマーを次に挙げる。
スチレンの2結合単位とアクリル酸エステルの1結合単位からなる環状トリマーの主な化合物の例として1−フェニル−(1−アルコキシカルボニルエチル)テトラリン、1−(1−フェニルエチル)−4−(アルコキシカルボニル)テトラリン、1−(2−フェニルエチル)−4−(アルコキシカルボニル)テトラリン、1,3−ジフェニル−5−アルコキシカルボニルシクロヘキサンが挙げられる。
【0025】
スチレンの1結合単位とアクリル酸エステルの2結合単位からなる環状トリマーの主な化合物の例として1−アルコキシカルボニル−4−(1−アルコキシカルボニルエチル)テトラリン、1−アルコキシカルボニル−4−(2−アルコキシカルボニルエチル)テトラリン、1−フェニル−3,5−ジアルコキシカルボニル)シクロヘキサンが挙げられる。
アクリル酸エステル3結合単位からなるトリマーの存在は確認できなかった。
ここで言うアルコキシ基はアクリル酸エステルを構成するアルコールの構成残基である。
【0026】
これらの環状トリマー類は、前述の如く重合体製造時に単量体の副反応により生成する。これに対して、重合後の重合体の酸化劣化や熱分解、機械的分解等によってもオリゴマー類は生成する。生成するオリゴマーは、主に上述の環状構造(テトラリン骨格)を有さない鎖状オリゴマーである。
この種の鎖状トリマーの内、スチレン結合単位とアクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する鎖状トリマーの主な例として2,4−ジフェニル−6−アルコキシカルボニル−1−ヘキセン、2,6−ジフェニル−4−アルコキシカルボニル−1−ヘキセン、4,6−ジフェニル−2−アルコキシカルボニル−1−ヘキセン、2−フェニル−4,6−ジアルコキシカルボニル−1−ヘキセン、4−フェニル−2、6−ジアルコキシカルボニル−1−ヘキセン、6−フェニル−2,4−ジアルコキシカルボニル−1−ヘキセンが挙げられる。
【0027】
更に、スチレン系重合体には、その単量体構成単位の整数倍に一致しないトリマー近似化合物が少量含まれる。ここでは具体的化合物名を示さないが、例えば二重結合が飽和(水素が付加)した鎖状トリマー類や炭素原子の1つ足りない鎖状トリマー類等が存在する場合がある。これらは主に重合後、重合体の分解により生成するオリゴマー関連化合物であって、重合プロセス、重合条件には基本的に依存しない。
本発明におけるスチレン系重合体に含まれる共反応環状トリマーの含有量は1, 000〜10,000ppmの範囲である。好ましくは1,000〜6,500ppmの範囲である。
【0028】
共反応環状トリマー量をこの範囲に限定することによって、スチレン系重合体の熱安定性および加工安定性が顕著に改善する。これにより、成形の加工条件幅を大きく拡大でき、スチレン系重合体樹脂のリワークを容易にする等、実用的効果は極めて大きい。
しかし、共反応環状トリマーの含有量が極度に多いと、スチレン系重合体樹脂のシートおよびフィルム等の自然収縮や強度性能の低下、更には成形時の金型やダイの汚染を来して好ましくない。
共反応環状トリマーの含有量が1,000ppm未満の重合体の製造には低温での重合が要求され、コスト的に不利である。また、得られるスチレン系重合体樹脂の加工安定性が低下し、且つシートの延伸加工特性等の低温加工性も低下傾向にあり好ましくない。
【0029】
本発明のスチレン系重合体の製造方法においては、スチレン系単量体を(メタ)アクリル酸エステル単量体の共存下に重合する。
スチレン系単量体は、スチレンの他に、少量の公知のビニル芳香族単量体を含んでいても構わない、この例としてα−メチルスチレン、o−メチルスチレン、
m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tertブチルスチレン、およびこれらの混合物等を挙げることができる。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、C1〜C8の範囲のアルコールとアクリル酸およびメタアクリル酸のエステル化合物から選ばれる。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸ペンチル、メタアクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル等を挙げることができる。
また、これらの単量体の2種以上を組み合わせて用いても構わない。特にメタクリル酸メチルを用いる場合、得られる重合体の軟化温度を調整するため、他の(メタ)アクリル酸エステルと組み合わせて用いることが好ましい。
【0031】
低温加工性、耐候性、強度等のバランスの面で、(メタ)アクリル酸エステル単量体はアクリル酸エステル単量体であることが好ましい。アクリル酸エステルはメタアクリル酸エステルに比較して、少量の使用でスチレントリマーの生成を抑制できる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチルが更に好ましく、アクリル酸n−ブチルが最も好ましい。アクリル酸n−ブチルを用いることによって、得られる低温加工性シートおよびフィルム等の加工性や物性をバランス良く改良できる。
【0032】
また、本発明のスチレン系重合体製造方法における単量体は、本発明の目的を阻害しない範囲で、共重合可能な他のビニル系単量体を含んでいても構わない。
この好ましい具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸およびその塩が挙げられる。
本発明のスチレン系重合体製の製造方法における単量体組成は、スチレン系単量体60〜97重量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体40〜3重量%の範囲である。好ましくは、スチレン系単量体65〜95重量%、更に好ましくは70〜93重量%、特に好ましくは75〜90重量%の範囲であり、残余の成分は(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0033】
スチレン単量体が60重量%未満では、得られるスチレン系重合体の耐熱性が過度に低下して好ましくない。具体的には成型品の熱的変形や延伸フィルムの自然収縮が起こり易く、好ましくない。また、スチレン系単量体が97重量%を越えると、得られるスチレン系重合体の冷間延伸加工時の適正温度幅が著しく狭まり、また強度性能が低下して好ましくない。更には、(メタ)アクリル酸エステル単量体の導入量の低下に伴い、環状スチレントリマーが増大し、熱安定性や加工安定性が低下を来して好ましくない。
また用いる(メタ)アクリル酸エステル単量体は、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは80重量%以上がアクリル酸エステルである。また、アクリル酸エステルとしてはアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。
【0034】
これにより、環状トリマー中の共反応環状トリマー含有率を更に高くでき、得られるスチレン系重合体の熱安定性や加工安定性を一層改善できる。
一般に、バッチ重合プロセスにより得られるスチレン系重合体は、スチレンおよび(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合性の差異に基づき、重合中に単量体組成が変化する。結果として重合体組成分布も大きくなる。そのため特定の樹脂性能、例えば低温シーティング時の伸び等の低温加工性が低下して、好ましくない。
また、共重合反応性の違いにより残存(メタ)アクリル酸エステル単量体濃度が低下すると、環状スチレントリマーの生成量が増大する。この結果、得られるスチレン系重合体樹脂の熱的安定性および加工安定性の改善効果が低減して好ましくない。
【0035】
本発明のスチレン系重合体の製造方法は、二基以上の重合槽を直列に連結し、
重合槽の一端から原料を連続的に供給し、他端より生成物を連続的に抜き出す連続プロセスの塊状あるいは溶液重合法である。また、プロセスの一部に重合槽を並列に連結することは、重合体の組成分布を拡大あるいは調整する上で好ましい場合がある。
更には、二基以上の重合槽を直列に連結し、最終重合槽の混合状態がプラグフロー流れの重合プロセスであることが好ましい。最も好ましくは、前段に完全混合重合槽、後段にプラグフロー重合槽を含む重合プロセスである。これにより、
得られるスチレン系重合体の熱安定性および加工安定性を保持したまま、高い重合転化率を効率的に達成できる。
【0036】
各重合槽の具体的形状は、その混合状態を達成する限り、特に限定するものではない。例えば、完全混合重合槽とは攪拌機を備え、上下混合の利いたタンクリアクターである。例えば、プラグフロー重合槽は上下攪拌の少ない塔状重合槽、
スタティックミキサー、または温度制御された単なる配管でも構わない。
各重合槽の容量は特に限定するものではない。全重合槽容量の和は、重合温度条件や原材料仕込み速度によるが、仕込み単量体の好ましくは60重量%以上、
更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上の重合に要する滞留時間を達成するに要する容量である。
【0037】
各重合槽の容量比は、その混合状態にも依存するが、極端な容量差がないことが好ましい。他の反応槽容量に対して、極端に小さい重合槽を連結しても、重合槽直列連結の意味は少ない。
特に最終重合槽の混合状態が、プラグフロー流れである場合、その重合槽の全重合槽容量に占める割合は、好ましくは5〜80%、更に好ましくは10〜60%の範囲である。
また、直列に連結した重合槽を用い、2つ以上の部位に単量体を分割して仕込むことは、重合槽の各部位の全単量体に対する(メタ)アクリル酸エステル濃度を制御するに好ましい。それぞれ原料組成を調整し、原料供給を一箇所もしくは数カ所に分割することが出来る。
【0038】
本発明のスチレン系重合体の製造方法においては、重合槽各部位における(メタ)アクリル酸エステル単量体濃度を、常に全単量体に対して1wt%を超える濃度に制御する必要がある。好ましくは2%を超え、更に好ましくは3%、特に好ましくは5%を超える濃度に制御する。
共存する(メタ)アクリル酸エステル単量体濃度が著しく低減すると、環状スチレントリマーの生成量が増大し、本発明の目的を達成できない。(メタ)アクリル酸エステル濃度の均一化を達成する方策は、(メタ)アクリル酸濃度の低下する箇所に該単量体を分割的に仕込むことで達成できるし、重合液流れと逆の混合流れを一部作ることによっても達成できる。
【0039】
本発明のスチレン系重合体の製造方法においては、有機ラジカル発生剤を開始剤に用いる。有機ラジカル発生剤としては、有機過酸化物およびアゾ化合物等が挙げられる。特に好ましい有機ラジカル発生剤は有機過酸化物である。
有機過酸化物の種類は、実施する重合温度での半減期が好ましくは10分から10時間の化合物から選ばれる。重合温度条件にもよるが、更に好ましくは10時間の半減期を得る温度が50〜130℃の範囲、特に好ましくは80〜120℃の範囲の有機過酸化物から選ばれる。
【0040】
具体的な好ましい有機過酸化物の例としては、オクタノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシル2−エチルヘイサノエート、サクシニックパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、m−トルオルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサノエート、1,2−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカルボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2、5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α、α' −ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
【0041】
最も好ましい有機過酸化物は1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
有機ラジカル発生剤の使用量は、全単量体あたり、好ましくは5〜5,000ppmの範囲である。より好ましくは50〜2,000ppmの範囲、特に好ましくは100〜1,000ppmの範囲である。
有機ラジカル発生剤の使用量が5ppm未満では、開始剤ラジカル重合と平行して、熱ラジカル重合が進行するためか、共反応環状トリマー生成量が著しく増大する。このため、本発明の作用効果、即ち熱安定性、加工安定性の他、シートおよびフィルム加工時の厚みの均一性、得られるシートおよびフィルムの強度等の樹脂性能が低下して好ましくない。また、有機ラジカル発生剤が5,000ppmを越えるとコスト的に不利なだけでなく、重合反応が不安定となり、好ましくない。
【0042】
重合時に連鎖移動剤や分子量調整剤を添加することもできる。これらの連鎖移動剤や分子量調整剤は、スチレン重合体製造において公知の連鎖移動剤や分子量調整剤から選ぶことができる。これらの具体的化合物として、四塩化炭素等の有機ハロゲン化合物、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン化合物、α−メチルスチレンダイマー等のベンゼン環に対するα位炭素に活性水素を有する炭化水素化合物が挙げられる。最も好ましい化合物はα−メチルスチレンダイマーである。
【0043】
本発明のスチレン系重合体の製造方法は、無溶媒もしくは少量の有機溶媒を使用して実施される。好ましい有機溶媒は、得られるスチレン系重合体を溶解可能で、重合反応時のラジカルに対する反応性が低く、且つ重合後に溶媒の加熱除去が容易な有機化合物から選ばれる。この好ましい例としてC6〜C10の芳香族炭化水素化合物および環状の脂肪族炭化水素化合物が挙げられる。具体的にはトルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサンおよびこれらの混合溶媒等が挙げられる。また、一部に鎖状の脂肪族炭化水素を含んでいても構わない。
重合溶媒の使用量は、スチレン系重合体100重量部当たり、好ましくは200重量部以下、更に好ましくは100重量部以下、特に好ましくは50重量部以下である。
【0044】
本発明のスチレン系重合体の製造においては、主たる重合温度を70〜150℃の範囲で実施することが好ましい。主たる重合温度とは、得られる重合体の少なくとも50重量%、好ましくは70重量%、特に好ましくは90重量%の重合が進行する温度を意味する。更に好ましくは80〜140℃、特に好ましくは90〜130℃の温度範囲である。
主たる重合温度がこの範囲に制御されている限り、重合体の一部を重合する温度がこの範囲を外れても構わない。例えば、数基の重合槽を直列連結したシステムでは、重合の初段階または後段階の一部の重合に、上述の温度範囲を外れて実施することはできる。また、数基の重合槽を並列連結したシステムでは、一部の重合槽の温度をこの範囲を超えて制御して実施することが好ましい場合がある。
【0045】
具体的には、重合後期に重合を完結させるために、該温度範囲を超えることは目的によっては好ましい。また、重合槽の冷却を補助するために冷却した原材料を連続的に仕込む場合、一部の重合ゾーンの温度が該温度範囲を下回る場合がある。
主たる重合温度が過度に高いと環状スチレントリマーの生成量が増大し、得られるスチレン系重合体樹脂の熱的安定性および加工安定性の改善効果が低減して好ましくない。過度に低い温度は重合液の粘度が著しく増大して、重合槽の混合が困難となり、また重合速度が低下する等して実用的でない。
【0046】
本発明のスチレン系重合体の製造方法では、重合転化率は好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上に制御する。高い転化率は、当然生産効率の点で好ましい。重合転化率が60重量%を下回ると、生産効率低下、脱揮工程の設備的およびエネルギー的負荷の過大を来たし、好ましくない。また、脱揮工程で残存単量体を取りきれず、得られる重合体の樹脂性能や臭気が問題になり易い。
本発明のスチレン系重合体の製造方法では、含有する未反応単量体や重合溶媒を脱揮、除去することにより、重合体が回収される。未反応単量体や重合溶媒の脱揮、除去の方法は、特に限定するものではない。ベント付押出機、フラッシュタンク等の既存スチレンの重合体の製造で公知の方法が利用できる。
【0047】
脱揮時の平均重合体温度は、好ましくは180〜250℃の範囲、更に好ましくは190〜240℃の範囲、特に好ましくは200〜230℃の範囲である。
極度に低い脱揮温度では、重合体中に残る単量体含有量が多くなり、好ましくない。また極度に高い温度では、重合体の熱分解により生成する鎖状オリゴマーが増加し好ましくない。但し、脱揮の最終段階で短時間この範囲を超える温度で脱揮することは、得られスチレン系重合体の熱的分解を抑え、且つ残存する単量体量を減らす上で好ましい場合がある。
脱揮時の真空度は常圧でも可能であるが、好ましくは50torr以下、より好ましくは20torr以下である。真空度を上げる(絶対圧を低くする)ことにより、低い重合体温度で脱揮効率を高めることができ、好ましい。しかし、真空度を余りに上げることは設備的な限界があり、通常5torr以上の圧で実施される。
また、一連の脱揮プロセス内で一度脱揮処理した重合体に、水、アルコール、炭酸ガス等の重合体に非溶解性の揮発性物質を圧入、これに同伴する形で揮発成分を脱揮する方法は好ましく利用できる。
【0048】
本発明の今一つの目的は、スチレン系重合体樹脂の提供にある。即ち、二基以上の重合槽を直列に連結し、重合槽の一端から原料を連続的に供給し、他端より生成物を連続的に抜き出す連続プロセスの塊状あるいは溶液重合法で、有機ラジカル発生剤を開始剤に用い、スチレン系単量体を(メタ)アクリル酸エステル単量体の共存下に重合して得られる、下記(a’)〜(d’)項の特徴を有するスチレン系重合体を主体とするスチレン系重合体樹脂の提供にある。
(a’)スチレン系重合体の構成単位がスチレン系単量体60〜97重量%および(メタ)アクリル酸エステル単量体3〜40重量%の範囲であり、
(b’)スチレン系重合体の重量平均分子量が15万〜55万の範囲であり、
(c’)スチレン系重合体が、スチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマーを1,000〜10,000ppmの範囲で含有し、
(d’)スチレン系重合体のビカット軟化温度が50〜99℃の範囲にある。
【0049】
本発明の製造方法で得られるスチレン系重合体の重量平均分子量は、15万〜55万の範囲であることが好ましい。更に好ましくは18万〜50万の範囲、特に好ましくは20万〜45万の範囲である。
スチレン系重合体の重量平均分子量が15万未満では、得られる樹脂の強度性能、特に引き裂き強度、引っ張り強度が著しく低下して、好ましくない。また、
スチレン系重合体の重量平均分子量が55万を越えると、得られる樹脂の加工性、特に成型加工性が著しく低下して、やはり好ましくない。
【0050】
重量平均分子量/数平均分子量の比は好ましくは1.5〜3.9範囲、特に好ましくは1.8〜3.2範囲である。分子量分布があまりに狭いと、加工性、特にフィルムおよびシートの高延伸倍率の延伸加工が困難となり好ましくない。分子量分布があまりに広いと、強度性能、例えば引張り破断強度や表面硬度が低下して好ましくない。
また、MFR(ISO R1133に準拠して測定(条件:200℃、荷重5kgf))は1〜20g/10分の範囲が好ましく、2〜15g/10分の範囲が特に好ましい。この範囲内に設定することにより、得られるシートおよびフィルム、更に二次加工して得られる成形品の厚み斑が少なくなる。また、低温での高延伸倍率の加工が容易となり、強度性能にも優れて好ましい。
【0051】
本発明のスチレン系重合体樹脂のスチレン系単量体含有量は、好ましくは500ppm未満である。更に好ましくは300ppm未満、特に好ましくは200ppm未満、最も好ましくは100ppm未満である。スチレン系単量体の含有量が500ppm以上では、成型加工時の金型やノズル等の汚染が起こり易く、
更に成型体表面に対する印刷性の低下が起こり、好ましくない。
本発明のスチレン系重合体樹脂の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、好ましくは500ppm未満である。更に好ましくは300ppm未満、特に好ましくは200ppm未満、最も好ましくは100ppm未満である。(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が500ppm以上では、成型加工時の金型やノズル等の汚染が起こり易なる。また得られる樹脂の耐候性が低下し、また臭気を来す場合があり好ましくない。
【0052】
本発明のスチレン系重合体のビカット軟化温度で定義する軟化温度は50〜99℃の範囲である。好ましくは55〜95℃の範囲、特に好ましくは60〜90℃の範囲である。軟化温度が余りに低いと、延伸シートおよびフィルムの自然収縮率が大きくなり、また強度が低下して好ましくない。一方、軟化温度が余りに高いと、重合体の柔軟性が低下して脆くなり、また低温加工性が著しく低下する。加工温度を高くすれば、シーティングや延伸およびこれらの二次成形加工は可能となるが、加熱時の適正温度幅が狭くなり、加工操作が難しくなり好ましくない。
本発明のスチレン系重合体樹脂は、該スチレン系重合体の他に、ポリスチレン樹脂で公知の各種添加剤、例えば滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤等を、同様な効果を達成するために添加して、含むことができる。
【0053】
また、スチレン重合体で好ましく混合できることが公知な他の重合体、例えばポリフェニレンエーテル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、これらを部分的にまたは完全に水素添加された共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ニトリルゴム、天然ゴム等の樹脂あるいはゴム成分は、ポリスチレン樹脂で公知な効果を達成するために、本発明の製造方法によるシートおよびフィルム用スチレン系重合体樹脂においても混合して含むことができる。ポリスチレン樹脂を混合して用いることにより、軟化温度や剛性を調整できる。
特に好ましく混合できる重合体は、スチレン重量含有率60〜95重量%の範囲のスチレン−共役ジエンブロック共重合体である。この種の重合体の混合によって透明性を保持したまま、強度性能、低温延伸性能や熱収縮特性を大きく改善できる。
【0054】
本発明のスチレン系重合体樹脂は、シートおよびフィルムあるいはこれらを、
更に二次加工して、各種包装、容器材料、熱収縮ラベル材料に特に好ましく使用できる。しかし、本発明のスチレン系重合体樹脂の利用はこれらに限定するものではない。本発明のスチレン系重合体樹脂の達成する特長を発揮できる各種用途に使用することもできる。例えば、射出成形やインジェクションブロー成形等からなる食品容器、日用品、雑貨、OA機器部品、弱電部品等に使用することもできる。
【0055】
【発明の実施の形態】
本発明の態様を実施例により具体的に説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定するものではない。
本発明では、下記の測定法および測定条件を用いた。
(1)重合体中の単量体結合単位の含有量測定:
13C−NMRで測定し、それぞれの単量体の結合単位に起因するスペクトルピークの面積比より共重合組成を算出した。
(2)ビカット軟化温度の測定:
ASTM D1525に準拠して測定した。
【0056】
(3)数、重量平均分子量の測定
手法:
ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した。なお単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成し、ポリスチレン換算して分子量を求めた。
測定条件:
試料調製:テトラヒドロフランに重合体約1,000ppmを溶解。
測定機器:昭和電工(株)製 Shodex21
サンプルカラム:KF−806L2本
リファレンスカラム:KF−800RL2本
カラム温度:40℃
キャリア液および流量:THF、1ml/min
検出器:RI、UV(波長254nm)
検量線:東ソー(株)製の単分散PS使用
データ処理:Sic−480
【0057】
(4)スチレン系重合体のスチレン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体含有量測定
手法:
ガスクロマトグラフィーで測定した。
測定条件:
試料調製:重合体1gをジメチルフォルアミド25mlに溶解。
測定機器:島津製製作所 GC14B
カラム:CHROMAPACK CP WAX 52CB、100m、膜厚2μ
m、0.52mmφ
カラム温度:110℃−10分→15℃/分で昇温→130℃−2分
注入口温度:150℃、検出方法:FID
検出器温度:150℃キャリアガス:ヘリウム
【0058】
(5)スチレン系重合体中のオリゴマー類の含有量測定
測定手法:
スチレン系重合体の溶液サンプルを、昇温ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。スチレントリマー(分子量312)のリテンションタイム付近にスチレントリマー以外に、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル単量体の単量体に起因するオリゴマー類のピークが多数検出された。
このオリゴマー類の含有量は、各オリゴマー類の面積を合計し、標準物質として1−フェニル−4−(1' −フェニルエチル)テトラリンを用い、換算して全オリゴマー量を求めた。
測定条件:
試料調製:樹脂1gをメチルエチルケトン/メタノール混合液(9/1容積比)20mlに溶解
測定機器:AGILENT製 6890
カラム固定相:5%ジフェニルジメチルポリシロキサン 30m 内径0.25
mm 膜厚 0.25μm
オーブン温度:40℃−1分→20℃/分で昇温→320℃
注入口温度:200℃
キャリアガス:He 80ml/min
検出方法:FID
検出器温度:200℃
【0059】
(6)GC/MS測定条件
測定条件
試料調製:抽出オリゴマーサンプル
測定機器:ヒューレッドパッカード製 GC−6890、MSD−5973A
カラム:0.25mm径、30m、HP−5(ポリジメチルシロキサン 95%
、ポリフェニルシロキサン 5%)、膜厚0.25μm
キャリアガス:ヘリウム
イオン化法:EI(電子イオン化法)
検出器:MSD(質量分析計)
インジェクション温度:325℃
オーブン温度:50℃−5分 → 10℃/分で昇温 → 325℃
【0060】
(7)MFRの測定:
ISO R1133に準拠して測定した(条件:200℃、荷重5kgf)。
(8)重合液中の残存(メタ)アクリル酸エステル濃度の割合
連続重合プロセスにおいては重合反応が安定した段階で、各重合槽の各部位から重合液をサンプリングし、その残存単量体中の(メタ)アクリル酸エステル濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。表中には、その最小値を記載した。
また、バッチ重合プロセスにおいては重合終了後の重合液中の(メタ)アクリル酸エステル濃度を測定した。
(9)重合転化率の測定
重合終了後の残存単量体濃度をクロマトグラフィーで測定した。
【0061】
【実施例】
実施例および比較例で使用したスチレン系重合体を以下の方法で製造した。
(実施例1)
第1重合槽として攪拌機を備えた完全混合型重合槽(容量4リットル)、第2重合槽として攪拌機を備えた層流型重合槽(容量2リットル)を2基直列に連結した重合装置を準備した。第1重合槽と第2重合槽との間には攪拌機を備えたラインミキサーを挿入した。
第1重合槽に、スチレン73.6重量%、アクリル酸n−ブチル18.4重量%、エチルベンゼン8重量%、有機過酸化物として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン300ppmを含む原料溶液を0.9リットル/hrの速度で、重合槽上部に供給し、下部より抜き出した。
【0062】
次いで、前記に同組成の原料溶液0.1リットル/hrを追加供給し、ラインミキサーにて混合した後、第2重合槽を上部より下部に通過させた。第1重合槽の内温を105℃、第2重合槽の内温を120〜140℃に制御した。
得られた重合溶液は二段ベント付き脱揮押出機に連続的に供給し、未反応単量体および溶媒を脱揮して、重合体を得た。脱揮押出機は重合体温度を200〜240℃、真空度を20torrに制御した。
得られたスチレン系重合体から抽出したオリゴマー類を、前述の方法で測定した。得られたガスクロマトグラフィーの出力チャートを図1に示す。トリマー類の主な検出ピークとしてT01〜T21の21ピークが認められた。また、一例としてT11ピークについてGC/MSによるフラグメントイオン出力チャートを図2に示す。
得られた各オリゴマー成分の基本構造の解析結果を表1に示す。
スチレン系重合体が含有する共反応環状トリマー量は、4400ppmであった。
【0063】
【表1】
Figure 0003816059
【0064】
(実施例2〜6)、(比較例1および2)
実施例1と同じ装置を用いて、同様の方式で重合を行なった。重合体組成が表2になるようにスチレン、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルの原料溶液中の比率を変えた。
また、必要に応じて原料溶液中のエチルベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの濃度を調整あるいは連鎖移動剤(α−メチルスチレンダイマー)を添加した。更に重合温度も目的に応じて制御した。
【0065】
(実施例7)
実施例1と同一の重合装置を用いた。第1重合槽に、スチレン73.6重量%、アクリル酸n−ブチル18.4重量%、エチルベンゼン8重量%および有機過酸化物として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン300ppmを含む原料溶液を1.0リットル/hrの速度で、重合槽上部に供給し、下部より抜き出した。次いで、そのままの重合溶液を第2重合槽の上部より、下部に通過させた。各重合槽の内温は実施例1と同様に制御した。得られた重合溶液を実施例1と同様に処理し、重合体を得た。
【0066】
(比較例3)
実施例1と同一の重合装置を用い、開始剤なしで熱的に重合した。第1重合槽の内温を120℃、第2重合槽の内温を150〜170℃に制御した。その他の条件は実施例7と同様にして実施した。
(比較例4)
第1重合槽に、スチレン77.6重量%、アクリル酸n−ブチル19.4重量%、エチルベンゼン3重量%および1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン300ppmを含む原料溶液を1リットル/hrの速度で、重合槽上部に供給し、下部より抜き出した。次いで、単に第2重合槽を上部より、下部に通過させた。第1重合槽の内温を120℃、第2重合槽の内温を150〜170℃に制御した。
得られた重合溶液を実施例1と同様に処理し、重合体を得た。
【0067】
(比較例
攪拌機を備えた10リットル重合槽にてバッチ重合した。スチレン78.2重量%、アクリル酸n−ブチル13.8重量%、エチルベンゼン8重量%、有機過酸化物として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン300ppmを含む原料溶液を7リットル供給、重合温度90℃で2時間、130℃で2時間、150℃で2時間、180℃で2時間重合した。
得られた重合溶液を実施例1と同様に処理し、重合体を得た。
【0068】
(比較例
攪拌機を備えた130リットル重合槽に、純水50kg、ポリビニルアルコール50gを供給、攪拌混合した。次に、スチレン35kg、メチルメタアクリレート15kg、アルファーメチルスチレンダイマー25gを供給、95℃に昇温して6時間重合を行った。更に130℃で6時間重合を継続した。
重合して得られたビーズは洗浄、脱水、乾燥した後、220℃のベント付き押出機を通した。
(比較例
攪拌機を備えた完全混合型重合槽(容量4リットル)単独による連続重合を実施した。全反応槽滞留時間およびその他の条件はほぼ実施例1と同一にした。
具体的には、スチレン73.6重量%、アクリル酸n−ブチル18.4重量%、エチルベンゼン8重量%、有機過酸化物として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン300ppmを含む原料溶液を0.6リットル/hrの速度で、重合槽上部に供給し、下部より抜き出した。重合槽の内温を120℃に制御した。
得られた重合溶液を実施例1と同様に処理し、重合体を得た。
【0069】
実施例1〜7および比較例1〜で得られたスチレン系重合体を、40mmシート押出機を用いてシートを作成した。押出温度は、対応樹脂のビカット軟化温度+100℃とし、比較例2のみ170℃とした。厚さ0.25mmのシートを作成し、低温加工性、シートから二次加工成形で得られた成形品の厚み斑、落錘衝撃強度、引張破断伸び、自然収縮率を下記の方法で測定した。耐候性は50×50×2mmの平板を射出成形機で成形し、下記の方法で評価した。得られた測定、評価結果を表2および表3に示した。
【0070】
(1)低温加工性:厚さ0.25mmのシートを用いてビカット軟化温度+30℃、あるいはビカット軟化温度+30℃が125℃を超えるものは125℃を上限に加熱して、延伸機で二軸方向にそれぞれ2倍に延伸し、厚さ約60μmの延伸フィルムを10枚作成、評価した。延伸時に6枚以上フィルムが破れる場合を×、1〜3枚破れる場合を○、全く破れない場合を◎として判定した。
(2)成形品の厚み斑:(1)で得られた延伸フィルムを用いて、同じ位置に等間隔に印を付けた16点について、厚みの平均値を測定し、平均値より±5μmを越える測定点の割合が3割以上ある場合を厚み斑不良とした。これをフィルム10枚について行い、厚み斑不良が6枚以上の場合を×、1〜3枚の場合を○、0枚の場合を◎として、成形品の厚み斑の判定を行った。なお、(1)でフィルム10枚作成時に、延伸で破れたフィルムは厚み斑不良として数えた。
【0071】
(3)落錘衝撃強度:(1)と同じ方法で得た厚さ約60μmのフィルムを東洋精機社製のデュポン式ダート試験器(B−50)、ミサイルの重錘形状を半径1/8インチ、荷重100gを用いて、高さを変え、50%破壊値を求めた。
(4)引張破断伸び:厚さ0.25mmのシートを用いて、ASTMD882−67に準拠して測定した。
(5)自然収縮率:(1)と同じ方法で得た延伸フィルムを用いて、37℃の恒温槽に21日間放置し、次式により算出した。自然収縮率(%)=(L1−L2)/L1×100、L1:放置前の長さ、L2:放置後の長さ。
【0072】
(6)耐候性:ダイプラ・メタルウェザー試験機(型式:KU−R5CI−A)、ダイプラ・ウィンテス社製を使用した。光源はメタルハライドランプ(KF−1フィルター使用)を用い、30℃、湿度98RH%と55℃、湿度50RH%の各4時間のサイクルで400時間まで照射し、色の変化(ΔE)を測定した。なお測定には、射出成形機で成形した50×50×2mmの平板を用いた。
(7)リワーク樹脂性能:
各樹脂をビカット軟化温度+100℃、比較例2のみは150℃で押し出し、
ペレタイジング処理を三度繰り返した。その後、前記の低温加工性および成形品の厚み斑と同様に成形・評価した。
【0073】
【表2】
Figure 0003816059
【0074】
【表3】
Figure 0003816059
【0075】
表2および表3より、実施例1〜7の樹脂が、低温加工性、製品の厚み斑、落錘衝撃強度、引張破断伸び、自然収縮率、耐候性およびリワーク性のバランス面で極めて優れることが分る。また(メタ)アクリル酸エステルが同一含有量の樹脂で耐候性を比較した場合、アクリル酸n−ブチルの耐候性が最も優れていた。
比較例1はポリスチレンを用いた場合である。実施例に比較して耐候性、リワーク樹脂性能および強度性能が劣る。また、ビカット軟化温度が105℃と高く、低温加工性が非常に劣る。
比較例2はビカット軟化温度が40℃未満と低く、自然収縮が極めて大きく、
低温加工性も劣る。
【0076】
実施例7と比較例3は開始剤ラジカル重合と熱ラジカル重合法の比較になる。
熱ラジカル重合法の重合体は、含まれる環状スチレントリマー成分が増大するため、開始剤ラジカル重合法の重合体に比較してリワーク樹脂性能に劣る。また、耐候性の低下がある。
比較例4は重合温度が高いため、分子量分布の拡大や環状スチレントリマー含量の増大を来しており、リワーク樹脂性能や強度性能、耐候性が低下して好ましくない。
比較例5は単量体含有量が多い例であり、耐候性、低温加工性、リワーク樹脂性能に劣る。
【0077】
比較例はバッチプロセスで重合体を得た例であり、成形品の厚み斑、リワーク樹脂性能に劣る。
比較例は縣濁重合プロセスで重合体を得た例であり、低温加工性、リワーク樹脂性能、耐候性、強度に劣るものであった。
比較例完全混合槽重合槽のみにより重合体を得た例であり、重合転化率が著しく低く、重合体に残る単量体も多くなった。重合体性能としては強度、バージン樹脂及びリワーク樹脂の成形品の厚み斑に劣るものであった。
【0078】
【発明の効果】
本発明の製造方法によるシートおよびフィルム用スチレン系重合体樹脂は優れたリワーク性能を有すると共に、低温での加工性、耐候性、各種の強度特性、延伸加工時の均一性に優れ、延伸フィルムの自然収縮が少ないとの特長を有する。
得られたシートおよびフィルムは包装容器、蓋材等の各種包装材料や容器のラベル材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得た重合体のオリゴマー類のガスクロマトグラフィー検出ピークを示す図である。
【図2】 図1のT11ピークのGC/MSによるフラグメントイオン出力チャート図である。

Claims (10)

  1. 二基以上の攪拌機を備えたタンクリアクターを直列に連結し、重合槽の一端から原料を連続的に供給し、他端より生成物を連続的に抜き出す連続プロセスの塊状あるいは溶液重合法で、5〜5,000ppmの有機ラジカル発生剤を開始剤に用い、スチレン系単量体を(メタ)アクリル酸エステル単量体の共存下に、重合温度を70〜150℃の範囲で重合してなり、下記(a)および(b)項に制御する、得られるスチレン系重合体が下記(c)〜(e)項の特徴を有することを特徴とするスチレン系重合体の製造方法。
    (a)供給する単量体構成をスチレン系単量体60〜97重量%および(メタ)アクリル酸エステル単量体3〜40重量%の範囲とし、
    (b)重合槽各部位における(メタ)アクリル酸エステル単量体濃度が、常に全単量体に対して1wt%を超える。
    (c)スチレン系重合体の重量平均分子量が15万〜55万の範囲であり、
    (d)スチレン系重合体が、スチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマーを、1,000〜10,000ppmの範囲で含有し、
    (e)スチレン系重合体のビカット軟化温度が50〜99℃の範囲にある。
  2. 重合槽構成として、少なくとも最終重合槽の混合状態がプラグフロー流れであることを特徴とする請求項1記載のスチレン系重合体の製造方法。
  3. スチレン系重合体が、スチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマーを、1,000〜6,500ppmの範囲で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のスチレン系重合体の製造方法。
  4. スチレン系重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体結合の少なくとも20重量%がアクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のスチレン系重合体の製造方法。
  5. スチレン系重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体結合の少なくとも20重量%がアクリル酸n−ブチルであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のスチレン系重合体の製造方法。
  6. 得られる重合体の少なくとも50重量%の重合を70〜150℃の温度範囲で実施することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のスチレン系重合体の製造方法。
  7. 二基以上の重合槽を直列に連結し、重合槽の一端から原料を連続的に供給し、他端より生成物を連続的に抜き出す連続プロセスの塊状あるいは溶液重合法で、有機ラジカル発生剤を開始剤に用い、スチレン系単量体を(メタ)アクリル酸エステル単量体の共存下に重合して得られる、下記(a’)〜(d’)項の特徴を有するスチレン系重合体を主体とするスチレン系重合体樹脂。
    (a’)スチレン系重合体の構成単位がスチレン系単量体60〜97重量%および(メタ)アクリル酸エステル単量体3〜40重量%の範囲であり、
    (b’)スチレン系重合体の重量平均分子量が15万〜55万の範囲であり、
    (c’)スチレン系重合体が、スチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマーを1,000〜10,000ppmの範囲で含有し、
    (d’)スチレン系重合体のビカット軟化温度が50〜99℃の範囲にある。
  8. スチレン系重合体が、スチレン系結合単位および(メタ)アクリル酸エステル結合単位を分子中に少なくとも各一単位含有する環状構造トリマーを1, 000〜6,500ppmの範囲で含有することを特徴とする請求項に記載のスチレン系重合体樹脂。
  9. スチレン系重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体結合の少なくとも20重量%がアクリル酸エステルであることを特徴とする請求項又は請求項に記載のスチレン系重合体樹脂。
  10. スチレン系重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体結合の少なくとも20重量%がアクリル酸n−ブチルであることを特徴とする請求項又は請求項に記載のスチレン系重合体樹脂。
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