JP5464116B2 - リチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、ジフルオロリン酸塩を含有する電解液を用いたリチウムイオン二次電池が提案されている。ジフルオロリン酸塩を含有する電解液を用いることで、低温放電特性(低温出力特性)などが良好になることが記載されている。
第2自己放電工程では、電池列をなす各々の電池について、放置前後の電池電圧値を測定し、放置前後の電池電圧差に基づいて、各々の電池に内部短絡が生じているか否かを判断する。内部短絡が生じている電池では、内部短絡が生じていない電池(正常な電池)に比べて、放置による自己放電量が大きくなるので、電池電圧値が小さくなり、放置前後の電池電圧差も大きくなると考えられる。従って、放置前後の電池電圧差に基づいて、電池に内部短絡が生じているか否かを判断することが可能となる。
(1)上記正極活物質は、LiXMO2(Mは、Niである、または、主成分であるNiの他にAl,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Zn,Mg,Ga,Zr,Siの少なくともいずれかを含むもの)であって、1.04≦X≦1.15を満たす。
(2)上記負極活物質の粒子のBET比表面積が、2.8〜5.2m2/gの範囲内である。
(3)上記負極活物質の粒子は、黒鉛と非晶質炭素とからなり、上記負極活物質の粒子における上記非晶質炭素の割合が、2.5〜7.1wt%の範囲内である。
(4)上記電解液中の上記LiPF 2 O 2 の濃度が、0.01〜0.076mol/Lの範囲内である。
具体的には、(1)正極活物質として、「LiXMO2(Mは、Niである、または、主成分であるNiの他にAl,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Zn,Mg,Ga,Zr,Siの少なくともいずれかを含むものである)であって、1.04≦X≦1.15を満たす」正極活物質を用いる。
本発明者が調査したところ、負極活物質の粒子のBET比表面積を大きくするにしたがって、上述の第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮できることが判明した。しかしながら、その一方で、負極活物質の粒子のBET比表面積を大きくするにしたがって、電池の高温耐久性が低下する(高温保存容量維持率が低下する)ことが判明した。調査の結果、負極活物質として、粒子のBET比表面積が2.8〜5.2m2/gの範囲内である負極活物質を用いることで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することができ、且つ、電池の高温耐久性も良好にすることができる。なお、BET比表面積とは、BET法(例えば、N2ガス吸着法)により求められた比表面積である。
本発明者が調査したところ、負極活物質の粒子における非晶質炭素の割合(含有率)を小さくするにしたがって、上述の第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮できることが判明した。但し、負極活物質の粒子における非晶質炭素の割合(含有率)を小さくし過ぎると、電池の低温特性(特に、低温時のハイレート充放電特性)が悪化する(低温パルス充放電による容量低下が大きくなる)ことが判明した。調査の結果、負極活物質として、「負極活物質の粒子が黒鉛と非晶質炭素とからなり、負極活物質の粒子における非晶質炭素の割合(含有率)が、2.5〜7.1wt%の範囲内である」負極活物質を用いることで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することができ、且つ、電池の低温特性(特に、低温時のハイレート充放電特性)を良好にすることができる(低温パルス充放電による容量低下を小さくすることができる)。
本発明者が調査したところ、電解液中のジフルオロリン酸塩の濃度を低くするにしたがって、上述の第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮できることが判明した。一方、電解液中のジフルオロリン酸塩の濃度を低くし過ぎると、電池内部抵抗(特に、低温環境下の内部抵抗)が大きくなることが判明した。調査の結果、電解液中のジフルオロリン酸塩の濃度を、0.01〜0.076mol/Lの範囲内とすることで、第2自己放電工程における放置開始後の電池電圧上昇期間を短縮することができ、且つ、低温環境下の電池内部抵抗も小さくすることができる。
リチウムイオン二次電池100は、図1に示すように、電極体110と、これを収容する電池ケース180とを備える。電極体110は、正極板130、負極板120、及びセパレータ150を備えている。セパレータ150は、ポリエチレンからなり、正極板130と負極板120との間に介在して、これらを離間させている。このセパレータ150には、リチウムイオンを有する電解液160を含浸させている。
図5に示すように、ステップS1(組み付け工程)において、電池ケース180内に電極体110と電解液160と収容した電池を作製する。具体的には、まず、正極活物質137とアセチレンブラックとPEO(ポリエチレンオキサイド)とCMC(カルボキシメチルセルロース)とを、重量比88:10:1:1の割合で混合し、これに水(溶媒)を混合して、正極スラリを作製した。次いで、この正極スラリを、アルミニウム箔からなる正極集電板138(表面に炭素層139を備えている)の表面に塗布し、乾燥させた後、プレス加工を施した。これにより、正極板130を得た。
なお、炭素層139の厚みは、1〜5μmとするのが好ましい。後述するように、第2自己放電工程(ステップS10)に要する期間を短縮することができるからである。
なお、正極活物質137として、1.04≦X≦1.15の関係を満たすLiXMO2 を用いるのが好ましい。換言すれば、LiとMとのモル比(Liのモル量/Mのモル量)の値が、1.04以上1.15以下の範囲内であるLiXMO2 を用いるのが好ましい。後述するように、第2自己放電工程(ステップS10)に要する期間を短縮することができるからである。
また、負極活物質127として、負極活物質粒子のBET比表面積が、2.8〜5.2m2/gの範囲内である負極活物質を用いるのが好ましい。後述するように、第2自己放電工程(ステップS10)に要する期間を短縮することができるからである。なお、本実施形態では、BET比表面積の値として、公知のBET法(詳細には、N2ガス吸着法)により求められた比表面積の値を採用している。
なお、金属酸化物絶縁層129の厚みは、2〜8μmとするのが好ましい。後述するように、第2自己放電工程(ステップS10)に要する期間を短縮することができるからである。
また、電解液160中のジフルオロリン酸塩の濃度は、0.01〜0.076mol/Lの範囲内とするのが好ましい。後述するように、第2自己放電工程(ステップS10)に要する期間を短縮することができるからである。なお、本実施形態では、ジフルオロリン酸塩として、LiPF2O2を用いている。
また、ステップS6(容量測定工程)でも、リチウムイオン二次電池100は、押圧治具30,40で拘束した状態(図6に示す状態)のままである。
また、SOCは、State Of Charge(充電状態、充電率)の略である。
本実施例1では、次のようにして、リチウムイオン二次電池100を製造する。
まず、ステップS1(組み付け工程)において、前述のようにして、電池ケース180内に電極体110と電解液160と収容した電池を作製する。
また、正極活物質137として、Xの値が1.08であるLiXMO2 を用いる。すなわち、正極活物質137として、Li1.08MO2 を用いている。詳細には、正極活物質137として、Li1.08Ni0.8Co0.15Al0.05O2 を用いる。このように、本実施例1では、Li1.08MO2 の「M」が、主成分であるNiの他にCoとAlを含むものを、正極活物質137として用いる。
また、負極板120の金属酸化物絶縁層129の厚みを、4μmとする。
また、正極容量と負極容量との容量比(負極容量/正極容量)を、1.5とする。
また、電解液160中のジフルオロリン酸塩の濃度を、0.038mol/Lとする。
その後、前述のように、ステップS10(第2自己放電工程)の処理を行う。
ここで、実施例1のステップS10(第2自己放電工程)における各条件を決定するために行った放置試験の結果を、図8に示す。具体的には、実施例1の条件で、ステップS1〜S9までの処理を行い、内部短絡が生じている電池100と内部短絡が生じていない電池100とを複数用意した。その後、ステップS10(第2自己放電工程)と同一条件で、内部短絡が生じている電池100と生じていない電池100とを含む電池列200を、11日間放置し、放置期間中、各々の電池100の電池電圧値を測定した。図8には、これらの測定結果のうち、2つの電池100(内部短絡が生じている電池100と内部短絡が生じていない電池100)の測定結果を、放置開始時点の電池電圧値を基準にして、その変化量を示している。
さらに、電圧上昇期間(2日間)が経過した後、内部短絡が生じている電池100は、内部短絡が生じていない電池100に比べて、電池電圧値が大きく低下してゆくことがわかる。そして、電圧上昇期間(2日間)の経過後、さらに3日間放置することで、内部短絡が生じている電池100と内部短絡が生じていない電池100とでは、電圧上昇期間(2日間)経過時からの電池電圧変化量に、大きな差が生じることがわかる。
次に、組み付け工程で用いる正極活物質137(LiXMO2 )について、好ましいXの値(LiとMとのモル比)を調査した。
具体的には、まず、実施例1のステップS1〜S9と同様にして、電池100を作製した。但し、正極活物質137(LiXMO2 )については、Xの値のみが異なる11種類の正極活物質を用意し、正極活物質137(LiXMO2 )についてXの値のみが異なる電池100を、11種類用意した(図9参照)。その後、前述の放置試験(第2自己放電工程と同様な放置)を行い、各々の電池100について、放置開始からの電池電圧上昇期間を調査した。その結果を、Xの値と電池電圧上昇期間との関係として、図9に○印で示す。
次に、組み付け工程で用いる負極活物質127について、BET比表面積の好ましい値を調査した。
具体的には、まず、実施例1のステップS1〜S9と同様にして、電池100を作製した。但し、負極活物質127については、BET比表面積の値のみが異なる13種類の負極活物質を用意し、負極活物質127のBET比表面積の値のみが異なる電池100を、13種類用意した(図10参照)。その後、前述の放置試験(第2自己放電工程と同様な放置)を行い、各々の電池100について、放置開始からの電池電圧上昇期間を調査した。その結果を、BET比表面積と電池電圧上昇期間との関係として、図10に○印で示す。
次に、組み付け工程で用いる負極活物質127について、非晶質炭素含有率の好ましい値を調査した。
具体的には、まず、実施例1のステップS1〜S9と同様にして、電池100を作製した。但し、負極活物質127については、非晶質炭素含有率の値のみが異なる12種類の負極活物質を用意し、負極活物質127の非晶質炭素含有率の値のみが異なる電池100を、12種類作製した(図11参照)。その後、前述の放置試験(第2自己放電工程と同様な放置)を行い、各々の電池100について、放置開始からの電池電圧上昇期間を調査した。その結果を、非晶質炭素含有率と電池電圧上昇期間との関係として、図11に○印で示す。
次に、組み付け工程で用いる電解液160について、電解液中のジフルオロリン酸塩濃度の好ましい値を調査した。
具体的には、まず、実施例1のステップS1〜S9と同様にして、電池100を作製した。但し、電解液については、ジフルオロリン酸塩濃度のみが異なる9種類の電解液を用意し、電解液中のジフルオロリン酸塩濃度のみが異なる電池100を、9種類作製した(。その後、前述の放置試験(第2自己放電工程と同様な放置)を行い、各々の電池100について、放置開始からの電池電圧上昇期間を調査した。その結果を、ジフルオロリン酸塩濃度と電池電圧上昇期間との関係として、図12に○印で示す。なお、ジフルオロリン酸塩として、LiPF2O2を用いている。
次に、組み付け工程で用いる正極板130と負極板120とについて、好ましい容量比(負極容量/正極容量)の値を調査した。なお、この容量比(正極容量に対する負極容量の割合)は、正極活物質層131と負極活物質層121の対向部122との容量比である。
次に、組み付け工程で用いる負極板の金属酸化物絶縁層129について、好ましい厚みを調査した。なお、金属酸化物絶縁層129は、酸化アルミニウム(アルミナ)とポリフッ化ビニリデンとを重量比95:5の割合で含んでいる。
次に、組み付け工程で用いる正極板の炭素層139について、好ましい厚みを調査した。なお、炭素層139は、アセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンとを重量比3:7の割合で含んでいる。
例えば、実施形態では、ステップS2(電池拘束工程)及びステップS8(拘束解除工程)を設けたが、これらの工程を設けることなく、リチウムイオン二次電池を製造するようにしても良い。すなわち、組み付け工程(ステップS1)において作製されたリチウムイオン二次電池100を押圧治具30,40で挟んで拘束状態にすることなく、ステップS3〜S7の処理を行うようにしても良い。
100 リチウムイオン二次電池(電池)
110 電極体
120 負極板
121 負極活物質層
122 対向部
127 負極活物質
128 負極集電板
130 正極板
131 正極活物質層
137 正極活物質
138 正極集電板
150 セパレータ
160 電解液
180 電池ケース
200 電池列
Claims (6)
- 正極活物質及び負極活物質を有する電極体と、LiPF 2 O 2 を含有する電解液とを、電池ケース内に収容した電池を作製する組み付け工程と、
上記組み付け工程を終えた上記電池を初期充電する初期充電工程と、
上記初期充電工程を終えた上記電池を、所定の温度で一定時間安置してエージングするエージング工程と、
上記エージング工程を終えた上記電池を、所定期間放置することにより自己放電させる第1自己放電工程と、
上記自己放電工程を終えた上記電池の電池容量の一部または全部を測定する容量測定工程と、
上記容量測定工程を終えた上記電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定工程と、
上記内部抵抗測定工程を終えた上記電池を複数用意し、これらの電池を一列または複数列に列置して1または複数列の電池列にすると共に、上記電池列を、その両端側から押圧治具で挟んで拘束状態にする電池列拘束工程と、
上記拘束状態の上記電池列を放置することにより、上記電池列をなす各々の上記電池を自己放電させる第2自己放電工程と、を備える
リチウムイオン二次電池の製造方法であって、
上記第2自己放電工程は、
上記電池列の放置を開始してから上記電池電圧値が上昇する場合は、上記電池電圧値の上昇期間が経過した後から規定期間、上記拘束状態の上記電池列を放置する一方、
上記電池列の放置を開始してから上記電池電圧値が上昇することなく低下する場合は、上記電池列の放置を開始してから上記規定期間、上記拘束状態の上記電池列を放置して、
上記電池列をなす上記電池を自己放電させる工程であり、
上記組み付け工程では、下記の(1)〜(4)の全ての条件を満たす電池を作製する
リチウムイオン二次電池の製造方法。
(1)上記正極活物質は、LiXMO2(Mは、Niである、または、主成分であるNiの他にAl,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Cu,Zn,Mg,Ga,Zr,Siの少なくともいずれかを含むもの)であって、1.04≦X≦1.15を満たす。
(2)上記負極活物質の粒子のBET比表面積が、2.8〜5.2m2/gの範囲内である。
(3)上記負極活物質の粒子は、黒鉛と非晶質炭素とからなり、上記負極活物質の粒子における上記非晶質炭素の割合が、2.5〜7.1wt%の範囲内である。
(4)上記電解液中の上記LiPF 2 O 2 の濃度が、0.01〜0.076mol/Lの範囲内である。 - 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
前記(1)の条件について、1.09≦X≦1.15を満たすLiXMO2 とする
リチウムイオン二次電池の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
前記(2)の条件について、前記負極活物質の粒子のBET比表面積を、4.0〜5.2m2/gの範囲内とする
リチウムイオン二次電池の製造方法。 - 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
前記(3)の条件について、前記負極活物質の粒子における前記非晶質炭素の割合を、2.5〜4.6wt%の範囲内とする
リチウムイオン二次電池の製造方法。 - 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
前記(4)の条件について、前記電解液中の前記LiPF 2 O 2 の濃度を、0.01〜0.015mol/Lの範囲内とする
リチウムイオン二次電池の製造方法。 - 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
前記組み付け工程の後、前記初期充電工程の前に、上記組み付け工程を終えた前記電池を、押圧治具で挟んで拘束状態にする電池拘束工程を備え、
前記内部抵抗測定工程の後、前記電池列拘束工程の前に、上記電池拘束工程において行った上記電池の拘束を解除する拘束解除工程を備え、
前記初期充電工程、前記エージング工程、前記第1自己放電工程、前記容量測定工程、及び上記内部抵抗測定工程では、いずれも、前記電池は上記拘束状態である
リチウムイオン二次電池の製造方法。
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